説明

粉体化粧料

【課題】化粧料塗布時の滑らかな伸び広がりに優れ、肌への付着力や保湿感、皮膚の凹凸を目立たなくする効果に優れ、固形状の場合には、さらに充填成形性に優れる粉体化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】次の成分(a)及び(b)を配合することを特徴とする粉体化粧料。
(a)複数の略球状粒子が凝集合一し、表面に複数の凹凸を有する形状の異形複合粉体
(b)ポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体化粧料、更に詳しくは、複数の略球状粒子が凝集合一し、表面に複数の凹凸を有する形状の異形複合粉体、及びポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩を配合する粉体化粧料に関する。また、化粧料塗布時の滑らかな伸び広がりに優れ、肌への付着力や保湿感に優れ、皮膚の凸凹が目立たず、特に固形状である場合は、充填成形性にも優れる粉体化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
人の皮膚は、角質層によって覆われており、乾燥した大気中においても水分を失うことなく生命活動を維持できるのは、外界と接しているこの角質層が存在しているからであることはよく知られている。角質層は薄く柔軟で且つ体内の水分を保ち、健常な皮膚状態を維持するように調節している。
【0003】
しかしながら、我々は環境要因等(例えば、温度変化、湿度変化、光、水との接触、洗剤の使用等)により、しばしば表皮に何らかの損傷をきたすことがある。ダメージを受けた皮膚は、硬く、弾力性も失われ、カサカサとした肌荒れ状態となる。こうした肌荒れ皮膚は、近年、急増傾向にあるアトピー性皮膚炎との関連性も指摘されており、深刻なスキントラブルを招く恐れもある。
【0004】
荒れ肌には、角質細胞の剥離によるものと、乾燥により皮膚の健康状態が悪化して表皮の硬化や損傷に至るものがある。前者の荒れ肌はコレステロール、セラミド、脂肪酸等の角質細胞間脂質の溶出、および紫外線、洗剤等に起因する角質細胞の変性や表皮細胞の増殖・角化バランスの崩壊による角層透過バリアの形成不全等によって発生する。この荒れ肌を予防または治癒する目的で、角質細胞間脂質成分又はそれに類似する合成の角質細胞間脂質を供給するなどの検討が行われている。この角層細胞間脂質は、有棘層と顆粒層の細胞で生合成された層板顆粒が、角層直下で細胞間に放出され、伸展し、層板(ラメラ)構造をとり、細胞間に広がったものである。層板顆粒はグルコシルセラミド、コレステロール、セラミド、リン脂質等から構成されるが、角層細胞間脂質にはグルコシルセラミドは殆ど含まれていない。すなわち、層板顆粒中のグルコシルセラミドは、β−グルコセレブロシダーゼによって加水分解を受け、セラミドに変換され、このセラミドがラメラ構造をとる結果、角層細胞間脂質として角層透過バリアの形成を改善し、荒れ肌防御のバリアの働きを持つと考えられる。洗浄剤による肌荒れはセラミドの補充が有効であり、肌荒れの改善に高い効果を示すことが報告されている(非特許文献1)。
【0005】
一方、後者の荒れ肌には、粉体化粧料には皮膚の恒常性維持の他、皮膚からの水分揮散を防止し、皮膚を構成する表皮、角質層に水分を保持させ皮膚に保湿性、柔軟性を保たせみずみずしい肌を保持する等の目的で保湿剤が配合されている。従来より用いられてきた保湿剤としては、オリーブ油、等の植物油やラノリンのような動物由来の脂質に代表される親油性の保湿剤の他に親水性の保湿剤としては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の水溶性多価アルコール、ヒアルロン酸及びキサンタンガムのような多糖類、ポリエチレングリコールなどの水溶性高分子、ピロリドンカルボン酸塩及びアミノ酸に代表される低分子量の天然保湿因子、植物抽出エキス等が知られている。
【0006】
このように様々な種類の親水性、親油性の保湿剤が存在するが、安全性を重要視する風潮などから、昨今では動物由来のものや化学合成品は避けられる傾向にあり、好ましくは天然物や微生物による発酵生産物で、さらには生体のみならず環境にも負荷の少ない生分解性の素材が期待され注目を浴びている。
【0007】
一方で、微生物が生産するバイオポリマーが有望視されている。バイオポリマーの中でも、アミノ酸が縮重合して構成されるポリアミノ酸と呼ばれる一群のバイオポリマーには、様々な機能が見出されており、その潜在能力に注目が集まっている。従来、ポリアミノ酸として、ポリ−γ−グルタミン酸(以下、「PGA」と表記することがある)、ポリ−ε−リジンおよびシアノファイシンの3種類が同定されている。
【0008】
PGAは、グルタミン酸のα−アミノ基とγ−カルボキシル基とがアミド結合したポリアミノ酸である。PGAは、古くから日本人に親しまれている納豆の糸引きの主体物質として知られる、吸水性のポリアミノ酸であるが、このように親しまれてきた背景として、その魅力的な機能性によるところが大きい。PGAの魅力的な機能としては、生分解性及び高吸水性を兼ね備えている点が知られている。これらの機能を利用して、上述した粉体化粧料をはじめ、医療品、食品等、種々の分野、用途で用いられることが期待されている。
【0009】
最近、ポリアミノ酸の構造的特徴(構成アミノ酸の光学活性や種類、分子サイズ、結合様式など)がその機能性に強く反映されていることが分かってきた。よく知られているところでは、生分解性と高吸水性を兼ね備えている点が挙げられる。それらの機能を利用し、食品、化粧品、医療品などの多くの分野で、種々の用途があるものと期待されている。しかし、現在、製品化されているPGAは、化学的にヘテロなDL−PGAである。具体的には、PGAは、納豆菌やその類縁菌から生産され、D−グルタミン酸及びL−グルタミン酸が不規則に結合しており、その含有比率や、配列は生産菌の培養毎に変動する。一般に、ポリアミノ酸の構造的特徴(構成するアミノ酸の光学活性や種類、分子サイズ、結合様式など)は、その機能に強く影響を与える。上記DL−PGAは、分子毎に構造が異なるため、その性質も分子毎に異なる。これでは、所望の品質を有するDL−PGAを安定して製造することが困難である。
【0010】
ホモポリ−γ−グルタミン酸を生産する菌も報告されている。例えば、炭疸菌Bacillus anthracisはD−グルタミン酸のみからなるポリ−γ−D−グルタミン酸(以下、D−PGAと記載することもある)を生産する事が報告されている(非特許文献2)。しかし、本菌は強い病原性を有する細菌であるため、工業的なPGA生産菌としては不適切であり、生産されるD−PGAの分子量も小さい。また、好アルカリ性細菌Bacillus haloduransは、L−グルタミン酸のみからなるポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩(以下L−PGAと記載することもある)を生産する事も報告されている(非特許文献3)。しかし、本菌の生産するL−PGAは分子量が極めて小さく、実用的な性能を得るには不十分である。
【0011】
一方、高分子量のホモポリ−γ−グルタミン酸の生産菌として、好塩性古細菌Natrialba aegyptiacaが分子量10万〜100万程度のL−PGAを生産することが報告されている。しかし、本菌は液体培養条件下では分子量が10万程度と小さい、かつ殆どポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩を生産しないため、工業的な生産菌として問題があった(非特許文献4、特許文献1)。
【0012】
上記以外に、L−PGAを生産する生物としては、ヒドラ等が挙げられるが、ヒドラの場合も同様に分子量が極めて小さいという問題がある(非特許文献3)。
【0013】
一方本発明者らは、均一な光学純度でかつ高分子量のポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩を液体培養などで大量に調製することを可能とした。より具体的には、数平均分子量が130万以上で、かつ均一な光学純度のポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩を、培養液1Lあたり4.99g以上の高い生産性で取得している(特許文献2)。
【0014】
また、ポリ−γ−L−グルタミン酸の架橋方法と架橋体(特許文献3)、並びにポリ−γ−L−グルタミン酸及びポリ−γ−L−グルタミン酸架橋体のうち少なくとも一方を含むことを特徴とする粉体化粧料(特許文献4)の報告がある。
【0015】
粉体化粧料は、粉体が主骨格となるので、他の化粧品剤型に比べて、粉っぽい仕上がりになりやすく、肌への付着力や保湿感に劣る場合が多かった。そのため、粉体化粧料の粉っぽさを低減する目的で、油剤が添加されているが、油剤は粉体表面に均一に分散しないため、良好な付着性が得られないばかりか、油剤を核とした造粒物を形成し、固形状の場合には充填成形性にも問題を生じる場合があった。そこで、これらの問題点を解決するために、様々な検討がなされており、具体的には、板状粉体の表面にポリグルタミン酸と水素添加レシチンとを吸着処理し、更に金属塩溶液にて処理することで、付着力の高い保湿性処理粉体を得る技術(例えば、特許文献5)等が開示されている。
【0016】
しかしながら、板状粉体の表面に特定の処理をして保湿性処理粉体を得る方法では、化粧料塗布時の滑らかな伸び広がりや肌への付着力や保湿感の点では優れているが、肌への密着力が高すぎて粉が皮膚の凹凸に沿って付着するため、しわや毛穴等の好ましくない凹凸を強調する結果となっていた。このため、肌への付着力や保湿感に優れ、且つ、皮膚の凹凸を目立たせない効果を兼ね備えた粉体化粧料、すなわち、化粧料塗布時の滑らかな伸び広がりに優れ、肌への付着力や保湿感が良好で、皮膚の凹凸を目立たせない効果に優れ、固形状の場合は充填成形性にも優れる粉体化粧料の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特表2002−517204号公報
【特許文献2】特開2007−314434号公報
【特許文献3】特開2008−120910号公報
【特許文献4】特開2008−120725号公報
【特許文献5】特開平01−224309号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】ジャーナル オブ バイオサイエンス アンド バイオエンジニアリング、94,187(2002)
【非特許文献2】Handy, W. E., and H.N. Rydon,Biochem J., 40, 297-309 (1946)
【非特許文献3】生物と化学 Vol.40, No.4, p212-214 (2002)
【非特許文献4】Hezayen, F. F., B. H. A. Rehm, B. J. Tindall and A. Steinbuchel, Int. J. Syst. E., 51, 1133-1142(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、化粧料塗布時の滑らかな伸び広がりに優れ、肌への付着力や保湿感、皮膚の凹凸を目立たなくする効果に優れ、固形状の場合には、さらに充填成形性に優れる粉体化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
斯かる実情において、本発明者らは鋭意研究を行ったところ、粉体化粧料において、複数の略球状粒子が凝集合一し、表面に複数の凹凸を有する形状の異形複合粉体と、アミノ酸、ポリアミノ酸、これらの誘導体又は塩から選ばれる一種又は二種以上の水溶性成分とを配合することにより、滑らかな伸び広がりに優れ、肌への付着力や保湿感が良好で、皮膚の凹凸を目立たせない効果をもたらすことを見出し、本発明を完成した。また、化粧料が固形状である場合には、充填成形性も向上することを見出した。
【0021】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)次の成分(a)及び(b)を配合することを特徴とする粉体化粧料。
(a)複数の略球状粒子が凝集合一し、表面に複数の凹凸を有する形状の異形複合粉体
(b)ポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩
(2)ポリ−γ−L−グルタミン酸が、ポリ−γ−L−グルタミン酸分子同士の架橋構造を有することを特徴とするポリ−γ−L−グルタミン酸架橋体であることを特徴とする(1)の粉体化粧料。
(3)ポリ−γ−L−グルタミン酸の平均分子量が100万以上であることを特徴とする(1)または(2)の粉体化粧料。
(4)ポリ−γ−L−グルタミン酸の平均分子量が200万以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの粉体化粧料。
(5)ポリ−γ−L−グルタミン酸の平均分子量が350万以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの粉体化粧料。
(6)ポリ−γ−L−グルタミン酸の吸水倍率が10倍以上5000倍以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの粉体化粧料。
(7)成分(a)の異形複合粉体が、ポリアクリル酸アルキル及び/又はポリメタクリル酸アルキルとポリイソプレンを主成分とすることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの粉体化粧料。
(8)成分(a)の配合量が1〜40質量%、成分(b)の配合量が0.0001〜5質量%であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかの粉体化粧料。
(9)前記粉体化粧料が固形状であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかの粉体化粧料。
(10)成分(b)を水に溶解し、成分(a)を含む粉体基材と混合し、乾燥することにより得られることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかの粉体化粧料。
【発明の効果】
【0022】
本発明の粉体化粧料は、化粧料塗布時の滑らかな伸び広がりに優れ、肌への付着力や保湿感、皮膚の凹凸を目立たせない効果に優れ、特に固形状の場合には充填成形性にも優れた粉体化粧料である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の「ポリ−γ−L−グルタミン酸」とは、L−グルタミン酸のみからなるホモポリマ−である。その構造は式(I)にて示される構造である。α−COOHの水素は水素であっても良いし他の金属対イオンでも良い。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、亜鉛及び鉄等一般的なものあれば限定する必要はない。そのなかでも好ましくはナトリウムである。
【0024】
【化1】

【0025】
本発明の「分子量」とはプルラン標準物質の分子量換算にて算出した数平均分子量(Mn)のことを指す。
【0026】
本発明のポリ−γ−L−グルタミン酸は、既存の方法で得ることができる。たとえば、特許文献2(特開2007−314434号公報)に記載された方法で、ポリ−γ−L−グルタミン酸を得ることができる。以下に、一例として、特許文献2を参考にしたポリ−γ−L−グルタミン酸の製造方法を述べるがこれに限定されるものではない。
【0027】
たとえば、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センタ−に、ナトリアルバ エジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)0830−82株(受託機関名:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センタ−、受託日:平成18年4月4日、受託番号:FERM BP−20872)、ナトリアルバ エジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)0830−243株(受託機関名:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センタ−、受託日:平成18年4月4日、受託番号:FERM BP−20873)、またはナトリアルバ エジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)0831−264株(受託機関名:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センタ−、受託日:平成18年4月4日、受託番号:FERM BP−20874)として寄託されている菌株をもちいてポリ−γ−L−グルタミン酸を得る場合、液体培養によりポリ−γ−L−グルタミン酸を得ることができる。または、特許文献2(特開2007−314434号公報)に記載された方法で微生物を変異処理し、液体培養によりポリ−γ−L−グルタミン酸を生産できる微生物を作製し、ポリ−γ−L−グルタミン酸を生産することもできる。また、ナトリアルバ エジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)を常法により固相培養し、ポリ−γ−L−グルタミン酸を生産することもできる。
【0028】
液体培養する場合には、振とう培養、通気攪拌培養など好気条件などで行うことが望ましい。その際の培養温度は、30〜50℃、好ましくは35〜45℃が適当である。また、培地のpHは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、塩酸、硫酸またそれらの水溶液などによって調整できるが、pH調整できれば限定されない。培養pH5.0−9.0、好ましくはpH6.0−8.5で培養するのが望ましい。また、培養期間は、通常2〜7日間程度でよい。また、培養時のNaCl濃度は10〜30%、好ましくは15〜25%で培養するのが望ましい。また、Yeast Extract濃度は0.1〜10%、好ましくは0.5〜5.0%濃度で培養するのが望ましい。また、固体培養の場合においても前期液体培養の場合と応用に、培養温度は30〜50℃、好ましくは35〜45℃、培養時のpHは5.0−9.0、好ましくはpH6.0−8.5、培養時のNaCl濃度は10−30%、好ましくは15〜25%、Yeast Extract濃度は0.1−10%、好ましくは0.5−5%濃度が採用される。このようにして培養すると、ポリ−γ−L−グルタミン酸は、主として菌体外に蓄積されて前記した培養物中に含まれる。特に限定はされないが、PGA生産液体培地−1(22.5% NaCl、2% MgSO・7HO、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino acid)を使用してもよく、各添加量は菌株にあわせて適宜調整すればよい。
【0029】
培養液中のポリ−γ−L−グルタミン酸の定量方法としては、ポリ−γ−L−グルタミン酸を含む試料から、硫酸銅やエタノ−ルを用いて沈澱させ、その沈殿物の重量測定およびKijerder法による総窒素の測定を行なうもの(M.Bovarnick,J.Biol.Chem.,145巻、415ペ−ジ、1942年)、塩酸加水分解後のグルタミン酸量を測定する方法(R.D.Housewrigt,C.B.Thorne,J.Bacteriol.,60巻、89ペ−ジ、1950年)及び、塩基性色素との定量的な結合を利用した比色法(M.Bovarnick et al.,J.Biol.Chem.,207巻、593ペ−ジ、1954年)が知られているが好ましくは、塩基性色素との定量的な結合を利用した比色法である。
【0030】
塩基性色素としてはクリスタルバイオレット、アニリンブル−、サフラニンオ−、メチレンブル−、メチルバイオレット、トルイジネブル−、コンゴレッド、アゾカルマイン、チオニン、ヘマトキシリンなどがあげられるが、サフラニンオ−が好ましい。
【0031】
この培養物からポリ−γ−L−グルタミン酸を分離、採取するには、硫酸銅やエタノ−ルを用いて沈澱させるなどの前記の公知の方法を用いればよい。一例を挙げると、例えば、培養液を遠心分離し、菌体を取り除く。続いて、得られた上清液に3倍量の水を加え希釈した後、pHを3.0に調整する。pH調整後、5時間 室温で攪拌した。その後、3倍量のエタノ−ルを加え、ポリ−γ−L−グルタミン酸を沈殿物として回収した。沈殿物を0.1mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)に溶解させ、低分子物質を透析により除去する。透析後、得られた液を核酸除去のため、DNase、RNase処理を行っても良いし、次いでタンパク質除去のために、Proteinase処理を行っても良い。Proteinase処理後、透析により低分子物質を除去しても良い。透析後、凍結乾燥等により、乾燥ポリ−γ−L−グルタミン酸を得ればよい。また、必要により陰イオン交換樹脂を用いた精製を行うことができるが、一般的な条件で精製可能である。
【0032】
本発明に使用するポリ−γ−L−グルタミン酸の分子量は、特に限定されないが、好ましくは50万以上、より好ましくは80万以上、さらに好ましくは100万以上、特に好ましくは130万以上である。
【0033】
L−PGAの分子量の上限値は特に限定されるものではないが、前述のL−PGAの製造方法によれば、例えば、600万、最大で1500万のL−PGAを得ることができる。
【0034】
このポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩は、古細菌によって生産されるために、納豆菌によって生産されるポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩と比べて特有の臭気が軽減することで、化粧品、医薬部外品、医療用品、衛生用品または医薬品の用途に利用しても品質を損なうことがない。
【0035】
本発明の粉体化粧料に用いられる成分(a)の異形複合粉体は、複数の略球状粒子が凝集合一し、表面に複数の凹凸を有する形状の異形複合粉体(以下、「異形複合粉体」という)であり、特開2004−285014号公報等に記載されている粉体である。異形複合粉体は、表面の複数の凹凸が照射された光を多方向に散乱させる特性に優れるため、肌上での好ましくない光沢(テカリ)を低減させることができ、肌の凹凸を目立たなくすることができる。さらに、複数の略球状粒子が凝集していることにより、弾力性に優れ、粉っぽさのない滑らかな伸び広がりを付与することができる。
【0036】
成分(a)の異形複合粉体における、略球状粒子とは、球状、楕円状等の概ね球に近い形状の粒子であり、その平均粒径は0.1〜10μmが好ましい。また、成分(a)の異形複合粉体は、一粒子中に前記略球状粒子が5〜30個凝集合一しているような形状が好ましい。その平均粒径は、特に限定されないが、1〜35μmが好ましく、更に5〜10μmが好ましい。
【0037】
成分(a)の異形複合粉体は、組成は特に限定されないが、ポリアクリル酸アルキル及び/又はポリメタクリル酸アルキルとポリイソプレンを主成分とするものが好ましい。これらの組成である場合、ナイロンやウレタン様の滑らかな使用感を持ちながら、防腐性が高いという利点を有する。アクリル酸アルキルとしては、特に限定されないが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられ、メタクリル酸アルキルとしては、特に限定されないが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。また、ポリアクリル酸アルキル及び/又はポリメタクリル酸アルキルとポリイソプレンの組成比は、特に限定されないが、質量比で90〜98:2〜10が好ましい。
【0038】
成分(a)の異形複合粉体は、特開平11−140139号公報等に記載されている方法等により調製することができる。具体的には、ポリアクリル酸アルキル及び/又はポリメタクリル酸アルキルのモノマー、ポリイソプレンのモノマー及び架橋モノマーを水中で、分散剤、安定化剤及び触媒の存在下、重合開始剤を添加して、重合、脱水、乾燥、脱モノマー後、粉砕する方法等が挙げられる。ここで用いられる架橋剤としては、特に限定されないが、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等が挙げられる。
【0039】
このような成分(a)の異形複合粉体の市販品としては、ポリアクリル酸アルキルとポリイソプレンの混合比(質量比)が95/5で、平均粒径8μmのガンツパ−ルGMI−0804(ガンツ化成社製)を用いることができる。
【0040】
本発明の粉体化粧料に用いられる成分(a)の配合量は、特に限定されないが、1〜40質量%(以下、単位に「%」と略す)が好ましく、2〜20%がより好ましい。成分(a)の配合量がこの範囲であると、化粧料塗布時の滑らかな伸び広がりや皮膚の凹凸を目立たなくする効果に特に優れる粉体化粧料を得ることができる。
【0041】
本発明の粉体化粧料に用いられる成分(b)の配合量は、特に限定はされないが0.0001〜3%が好ましく、0.0002〜1%がより好ましい。成分(b)の配合量がこの範囲であると、粉の適度な密着力が付与でき、密着しすぎて伸びの重さを感じることがなく、保湿感に優れ、皮膚の凹凸を目立たせない効果に優れる粉体化粧料を得ることができる。また、化粧料が固形状の場合には、充填成形性を向上させることができる。
【0042】
また、本発明の粉体化粧料への成分(b)の添加方法は、特に限定はされないが、具体的には、成分(b)を揮発性の溶媒に分散して、粉体基材に噴霧又は混合し乾燥する方法、あるいは、油剤中に分散し、粉体基材と油剤分散物を混合分散する方法などが挙げられる。好ましくは、成分(b)を水に溶解し、成分(a)を含む粉体基材と混合し、乾燥して前記水を除去することにより、より均質で使用感に優れる粉体化粧料を製造することができる。
【0043】
本発明の粉体化粧料における粉体基材とは、成分(a)を含む、通常の化粧料に用いられる粉体及びその処理物であり、成分(a)以外の粉体では、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等を用いることができる。具体的には、酸化チタン、黒色酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成雲母、合成雲母鉄、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカチタン、酸化鉄・酸化チタン焼結体、有機顔料被覆マイカチタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体パウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロースパウダー等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン内包シリカ、酸化亜鉛内包シリカ等の複合粉体等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を用いることができる。また、これらの処理物としては、フッ素化合物、シリコーン化合物、金属石ケン、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等の通常公知の処理剤により表面処理を施して用いても良い。
【0044】
本発明の粉体化粧料には、上記成分の他に、通常、化粧料に使用される成分、例えば、油剤、界面活性剤、油ゲル化剤、多価アルコール類や保湿剤などの水溶性成分、紫外線吸収剤、防腐剤、美容成分、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0045】
本発明に用いられる油剤としては、通常、化粧料に用いられるものであれば何れでもよく、例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャトロプスワックス、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素系類、カルナウバロウ、ミツロウ、ラノリンワックス、キャンデリラ等の天然ロウ類、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ホホバ油、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、モクロウ等の油脂類、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、N−ラウロイルーL−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のアミノ酸誘導体類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を用いることができる。本発明の粉体化粧料に、これらの油剤を配合する場合の配合量は、特に限定されないが、0.5〜45%が好ましい。
【0046】
本発明に用いられる界面活性剤は、湿潤剤、感触調整剤等の目的で用いられるものであり、グリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン等の非イオン性界面活性剤類、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩等の陰イオン性界面活性剤類、アルキルアミン塩、ポリアミンおよびアルカノイルアミン脂肪酸誘導体、アルキルアンモニウム塩、脂環式アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤類、レシチン、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を用いることができる。
【0047】
本発明に用いられる油ゲル化剤としては、通常、化粧料に用いられるものであれば何れでもよく、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、疎水性煙霧状シリカ、有機変性ベントナイト等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を用いることができる。
【0048】
本発明に用いられる水性成分は、水に可溶な成分であり、通常、化粧料に用いられるものであれば何れでもよく、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液を挙げることができ、これらを必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。
【0049】
本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、通常、化粧料に用いられるものであれば何れでもよく、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリアニリノ−パラ−(カルボ−2'−エチルヘキシル−1'−オキシ)−1,3,5−トリアジン等のベンゾフェノン系、サリチル酸−2−エチルヘキシル等のサリチル酸系、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル等のPABA系、パラメトキシ桂皮酸−2−エチルヘキシル等の桂皮酸系、4−tert−4'−メトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン系等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を用いることができる。
【0050】
本発明の粉体化粧料の製造方法については、特に限定はないが、例えば成分(a)を含む粉体基材と成分(b)を混合して、これに油剤処理をする方法等により製造される。また、好ましくは、成分(b)を水に溶解し、成分(a)を含む粉体基材と混合し、乾燥することにより、より均質で使用感に優れる粉体化粧料を得ることができる。また、乾燥方法については、保存安定性の観点から、室温乾燥することが好ましい。
【0051】
本発明の粉体化粧料は、ファンデーション、白粉、頬紅、口紅、アイシャドウ、アイブロウ、コンシーラー等のメーキャップ化粧料、日焼け止め化粧料等に適用できる。また、本発明の粉体化粧料の形態は、粉末状、ケーキ状、スティック状、球状等が挙げられるが、本発明の効果が顕著に発揮されるのは、ケーキ状、スティック状、球状等の固形状の粉体化粧料である。
【0052】
以下、本発明を実施例に基づき、より詳細に説明する。なお、本発明は、特に実施例に限定されるものではない。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、以下の実施例に示す「%」は全て「重量%」である。
【0053】
〔製造例1;ポリ−γ−L−グルタミン酸の製造〕
Natrialba aegyptica(受託番号:FERM BP−10749)のL乾燥アンプルに、0.4mlのPGA生産用液体培地(22.5% NaCl、2% MgSO・7HO、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino acid)を加えて懸濁液を得た。0.2mlの当該懸濁液を、PGA寒天培地(10% NaCl、2% MgSO・7HO、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino acid、2% Agar)に接種し、37℃で3日間培養して、シングルコロニーを得た。
【0054】
次に、5本の18ml容試験管に、それぞれ、3mlのPGA生産液体培地(22.5% NaCl、2% MgSO・7HO、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino acid、pH7.2)を入れ、さらに、上記シングルコロニーを白金耳で1白金耳掻き取り植菌した。植菌後の試験管を、37℃、300rpmで3日間培養して、さらに、得られた培養液0.5mlを、50ml PGA生産液体培地を入れた500ml容坂口フラスコ10本にそれぞれ植菌し、37℃で5日間培養した。培養後、得られた培養液を遠心し、菌体を取り除いて上清を回収した。
【0055】
次に、回収した上清に3倍量の水を加え希釈した後、1N硫酸でpHを3.0に調整した。pHを調整した後、室温で5時間攪拌した。その後、3倍量のエタノールを加えて遠心分離を行い、沈殿物を回収した。この沈殿物がL−PGAである。
【0056】
回収したL−PGAを0.1mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)に溶解して、これを、低分子物質等の不純物を除去するために透析した。次に、透析後の液体に含まれる核酸を除去するために、当該液体に、MgClが1mM、DNaseI(TAKARA社製)が10U/ml、RNaseI(ニッポンジーン製)が20μg/mlとなるように加えて、37℃で2時間インキュベートした。次いでタンパク質を除去するために、核酸を除去した後の液体にProteinase K(タカラバイオ製)を3U/mlとなるように添加して、37℃で5時間インキュベートしてProteinase K処理を行なった。
【0057】
Proteinase K処理の後、超純水で透析し、低分子物質を除去した。次に、L−PGAを陰イオン交換樹脂(Q sepharose Fast Flow、GE ヘルスケア バイオサイエンス社製)に吸着させ、0.5MのNaCl水溶液で洗浄した後、1MのNaCl水溶液で溶出した。得られた溶液を、さらに超純水で透析し、透析後の溶液を凍結乾燥することにより、L−PGAのナトリウム塩(以下、「L−PGA・Na塩」と表記する)を得た。なお、超純水は、MilliQ(Millipore社製の純水製造装置)で作製した。
【0058】
〔製造例2;ポリ−γ−L−グルタミン酸の分子量分析−1〕
製造例1で得たL−PGA・Na塩の平均分子量を、GPC分析にて測定した。その結果、Mw=7,522,000、Mn=3,704,000、Mw/Mn=2.031であることが確認された(プルラン換算)。
【0059】
なお、GPC分析は、以下の条件で行なった。
装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel α−M(東ソー社製)
流速:0.6ml/min
溶出液:0.15M NaCl水溶液
カラム温度:40℃
注入量:10μl
検出器:示差屈折計
【0060】
〔製造例3;ポリ−γ−L−グルタミン酸の分子量分析−2〕
製造例1において、1.0MのNaCl水溶液溶出した後、さらに、1N HClを用いて、pHを2.0に調製した以外は、製造例1と同様の操作を行なって得たL−PGA・Na塩の平均分子量をGPC分析により測定した。その結果、Mw=2,888,000、Mn=1,327,000、Mw/Mn=2.176であることが確認された(プルラン換算)。なお、本製造例におけるGPC分析は、製造例2と同様の操作で行なった。
【0061】
〔製造例4;ポリ−γ−L−グルタミン酸架橋体の作製〕
製造例1で得たL−PGA・Na塩の5%水溶液を作製した。
【0062】
次に、L−PGA・Na塩水溶液を、窒素を用いて3分間バブリングした後、蓋付き10mlサンプル瓶に、2ml分取して蓋を閉めた。
【0063】
次に、サンプル瓶に、線源をコバルト60とするγ線照射装置を用いてγ線を照射した。照射線量は、5kGyとなるように照射した。γ線照射後に得られた生成物を、サンプル瓶から取り出し、余分な水分を80メッシュの金網で水切りした後、凍結乾燥することで、L−PGA架橋体粉末を得た。なお、上記余分な水分には、未架橋のL−PGAが含まれており、当該水切りは、未架橋のL−PGAを除去することが主たる目的である。
【0064】
(実施例1)
本発明品1〜6及び比較品1〜5:ケーキ状ファンデーション
表1に示す組成のファンデーションを下記方法により調製し、「滑らかな伸び広がり」、「肌への付着力や保湿感」、「皮膚の凹凸の目立ちにくさ」、「充填成形性」の各項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定し、結果を併せて表1に示した。
【0065】
【表1】

【0066】
(製造方法)
A:成分12〜15を加熱し、混合する。
B:成分1〜11をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で均一分散する。
C:BにAを添加し、混合する。
D:Cを粉砕し、さらに成分16〜17を混合する。
E:D100部に対して、精製水10部を添加し混合後、金皿に充填する。
F:Eを圧縮成型後、室温で16時間乾燥して、ケーキ状ファンデーションを得た。
【0067】
(評価方法1)官能評価
化粧品評価専門パネル20名に、前記のケーキ状ファンデーションを使用してもらい、「滑らかな伸び広がり」、「肌への付着力や保湿感」、「皮膚の凹凸の目立ちにくさ」の其々の項目について、各自が以下の評価基準に従って7段階評価し、ファンデーション毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を用いて、以下の判定基準に従って判定した。
【0068】
[評価基準]
(評価結果):(評点)
非常に良好 : 6点
良好 : 5点
やや良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
非常に不良 : 0点
[判定基準]
(評点の平均点) :(判定)
5.0以上 : ◎
3.5以上〜5.0未満 : ○
1.5以上〜3.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0069】
(評価方法2)充填成形性
前記のケーキ状ファンデーションをコンパクト容器にセットし、ふたを閉めたものを床から70cmの高さから落下させ、中のファンデーションの破損がないものを「充填成形性」が良いものとし、ファンデーション毎に以下の判定基準に従って判定した。
【0070】
[判定基準]
(評価結果) :(判定)
変化無し : ◎
部分的に0.5mm未満の隙間あり : ○
部分的に0.5〜1.0mmの隙間あり : △
部分的に破損あり : ×
【0071】
表1の結果から明らかなように、本発明品1〜6のケーキ状ファンデーションは、「滑らかな伸び広がり」、「肌への付着力や保湿感」、「皮膚の凹凸の目立ちにくさ」、「充填成形性」の全ての項目に優れた粉体化粧料であった。これに対して、成分(a)を配合しない比較品1では、塗布時の滑らかな伸び広がりに劣り、肌の凹凸を目立たせない効果も良好ではなかった。また、成分(b)を配合しない比較品2では、肌への付着力や保湿感と充填成形性に劣っていた。そして、成分(a)に代えて球状シリコーン粉末や球状シリカを配合する比較品3、4は、充填成形性や化粧料塗布時の滑らかな伸び広がりに劣っていた。更に、成分(a)に代えてナイロン粉末を配合する比較品5は、毛穴の目立ちにくさに劣っていた。
【0072】
(実施例2)
ケーキ状頬紅
【0073】
(製造方法)
A:成分11〜14を加熱し、混合する。
B:成分1〜10をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で均一分散する。
C:BにAを添加し、混合する。
D:Cを粉砕する。
E:Dに成分15を添加し金皿に充填し、圧縮成型後、室温で10時間乾燥して、ケーキ状頬紅を得た。
【0074】
【表2】

【0075】
実施例2のケーキ状頬紅は、「滑らかな伸び広がり」、「肌への付着力や保湿感」、「皮膚の凹凸の目立ちにくさ」、「充填成形性」の全ての項目に優れた粉体化粧料であった。
【0076】
(実施例3)
粉末状アイシャドウ
(製造方法)
A:成分12〜14を混合する。
B:成分1〜10をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で均一分散する。
C:BにAを添加し、さらに成分11を混合して、静置後、室温で24時間乾燥する。
D:Cを粉砕し、粉末状アイシャドウを得た。
【0077】
【表3】

【0078】
実施例3の粉末状アイシャドウは、「滑らかな伸び広がり」、「肌への付着力や保湿感」、「皮膚の凹凸の目立ちにくさ」の項目に優れた粉体化粧料であった。
【0079】
(実施例4)
ケーキ状ファンデーション
【0080】
(製造方法)
A:成分13〜19を加熱し、混合する。
B:成分1〜12をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で均一分散する。
C:BにAを添加し、混合する。
D:Cを粉砕する。
E:D100部に対し、軽質流動イソパラフィン37部、エタノール1部をそれぞれ処方外成分として添加し、混合する。
F:Eを金皿に充填し、70℃で24時間乾燥して処方外成分を除去し、ケーキ状ファンデーションを得た。
【0081】
【表4】

【0082】
実施例4のケーキ状ファンデーションは、「滑らかな伸び広がり」、「肌への付着力や保湿感」、「皮膚の凹凸の目立ちにくさ」、「充填成形性」の全ての項目に優れた粉体化粧料であった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、ポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩、複数の略球状粒子が凝集合一し、表面に複数の凹凸を有する形状の異形複合粉体を含有することにより、化粧料塗布時の滑らかな伸び広がりに優れ、肌への付着力や保湿感、皮膚の凹凸を目立たなくする効果に優れ、固形状の場合には、さらに充填成形性に優れた粉体化粧料を提供することができる。さらに、従来のポリ−γ−L−グルタミン酸よりも、原料コストが安価であり、大量生産可能となり、長期にわたる使用に十分に耐え得ることからも、産業界に大きく寄与することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)及び(b)を配合することを特徴とする粉体化粧料。
(a)複数の略球状粒子が凝集合一し、表面に複数の凹凸を有する形状の異形複合粉体
(b)ポリ−γ−L−グルタミン酸および/またはその塩
【請求項2】
ポリ−γ−L−グルタミン酸が、ポリ−γ−L−グルタミン酸分子同士の架橋構造を有することを特徴とするポリ−γ−L−グルタミン酸架橋体であることを特徴とする請求項1に記載の粉体化粧料。
【請求項3】
ポリ−γ−L−グルタミン酸の平均分子量が100万以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の粉体化粧料。
【請求項4】
ポリ−γ−L−グルタミン酸の平均分子量が200万以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉体化粧料。
【請求項5】
ポリ−γ−L−グルタミン酸の平均分子量が350万以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粉体化粧料。
【請求項6】
ポリ−γ−L−グルタミン酸の吸水倍率が10倍以上5000倍以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粉体化粧料。
【請求項7】
成分(a)の異形複合粉体が、ポリアクリル酸アルキル及び/又はポリメタクリル酸アルキルとポリイソプレンを主成分とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粉体化粧料。
【請求項8】
成分(a)の配合量が1〜40質量%、成分(b)の配合量が0.0001〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粉体化粧料。
【請求項9】
前記粉体化粧料が固形状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の粉体化粧料。
【請求項10】
成分(b)を水に溶解し、成分(a)を含む粉体基材と混合し、乾燥することにより得られることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の粉体化粧料。


【公開番号】特開2012−1490(P2012−1490A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138141(P2010−138141)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】