説明

粉体吸入デバイス

【課題】カプセルから取り出した粉剤のスムーズな吸引を長期間にわたって実現可能な粉体吸入デバイスを提供する。
【解決手段】粉体吸入デバイス1は、粉剤を充填したカプセルCを収納する収納室3および、外気取入口7から粉剤の吸引口となる外気排出口8まで収納室3を経由して外気を流通させる外気流通路10を有する本体部2と、収納室3に配置されるカプセルCを貫通して孔を開ける穿孔具33a、33bと、を備える。外気流通路10は、収納室3の下流側に設けられ、一端が外気排出口8につながり他端が本体部2内で側壁面12aにより終端する流出側通路12と、収納室3を貫いて穿孔具33a、33bを通過させるとともに流出側通路12を形成する周壁面12bに連結される穿孔具通過通路13a、13bと、を有し、流出側通路12の側壁面12aと周壁面12bとの間に、少なくとも部分的に延在する凹曲面12cを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、患者の吸引によりカプセル内の粉剤を投与するのに適した粉体吸入デバイスに関するものであり、カプセルから取り出した粉剤のスムーズな吸引を実現しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
患者の吸引によりカプセル内の粉剤を投与する粉体吸入デバイスは、喘息患者等において多用されるものであり、従来、このような粉体吸入デバイスとしては、粉剤を充填したカプセルを収納する収納室を有し、この収納室に配置したカプセルに孔を開けたのち、マウスピースを通してカプセル内の粉剤を吸引するものが知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3530004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の粉体吸入デバイスでは、収納室を上下に貫通して延び穴あけ具のピンを挿通させるピン挿通穴の底壁面が、ピン挿通穴の周壁面から出口側に延びる流出通路よりも下方に配置されており、しかもピン挿通穴の底壁面と周壁面とを接続する隅部が直角に形成されていることから、この隅部近傍における外気の流れの停滞により粉剤の堆積、固着が発生し、粉剤のスムーズな吸引を行い得なくなるといった問題があった。またこのような粉剤の固着は衛生的にも好ましいものではない。
【0005】
それゆえ、この発明は、カプセルから取り出した粉剤のスムーズな吸引を長期間にわたって実現可能な粉体吸入デバイスを提供することをその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明の粉体吸入デバイスは、粉剤を充填したカプセルを収納する収納室および、外気取入口から粉剤の吸引口となる外気排出口まで上記収納室を経由して外気を流通させる外気流通路を有する本体部と、上記収納室に配置されるカプセルを貫通して孔を開ける穿孔具と、を備える粉体吸入デバイスにおいて、上記外気流通路は、上記収納室の下流側に設けられ、一端が上記外気排出口側につながり他端が上記本体部内で側壁面により終端する流出側通路と、上記収納室を貫いて上記穿孔具を通過させるとともに上記流出側通路を形成する周壁面に連結される穿孔具通過通路と、を有し、上記流出側通路の上記側壁面と上記周壁面との間に、少なくとも部分的に延在する凹曲面を設けたことを特徴とするものである。ここで「部分的に延在する」とは、凹曲面が流出側通路の周方向、あるいは周方向と交差する方向において部分的に存在することを意味する。また、「周方向」とは、流出側通路の延在方向を中心軸として周回する方向を示す。
【0007】
かかる粉体吸入デバイスにあっては、本体部の収納室にカプセルを配し、穿孔具により該カプセルに孔を開けたのち、患者が吸引口から吸引すると、本体部の外気取入口から流入した外気がカプセル内の粉剤を同伴して穿孔具通過通路およびこれに続く流出側通路を経て本体部の外気排出口から排出され、患者は粉剤を摂取することができる。このとき、穿孔具通過通路を通って収納室から落下した粉剤は流出側通路に受容され、しかも流出側通路の側壁面と周壁面との間に凹曲面を設けたことから、粉剤が側壁面と周壁面との隅部に堆積、固着することなく、スムーズに誘導、排出される。
【0008】
したがって、この発明の粉体吸入デバイスによれば、流出側通路において粉剤が堆積、固着することがなく、カプセルから取り出した粉剤のスムーズな吸引を長期間にわたって実現することができる。
【0009】
なお、この発明の粉体吸入デバイスにあっては、上記凹曲面を、上記流出側通路の、少なくとも上記穿孔具通過通路が連結される側とは反対側に配置することが好ましい。
【0010】
あるいは、この発明の粉体吸入デバイスにあっては、粉剤を充填したカプセルを収納する収納室および、外気取入口から粉剤の吸引口となる外気排出口まで上記収納室を経由して外気を流通させる外気流通路を有する本体部と、上記収納室に配置されるカプセルを貫通して孔を開ける穿孔具と、を備える粉体吸入デバイスにおいて、上記外気流通路は、上記収納室の下流側に設けられ、一端が上記外気排出口側につながり他端が上記本体部内で側壁面により終端する流出側通路と、上記収納室を貫いて上記穿孔具を通過させるとともに上記流出側通路を形成する周壁面に連結される穿孔具通過通路と、を有し、上記側壁面と上記周壁面との間に、少なくとも部分的に延在する傾斜面を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
また、この発明の粉体吸入デバイスにあっては、上記傾斜面を、上記流出側通路の、少なくとも上記穿孔具通過通路が連結される側とは反対側に配置することが好ましい。
【0012】
しかも、この発明の粉体吸入デバイスにあっては、上記穿孔具通過通路の、穿孔方向の末端が上記側壁面に連続してつながっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、カプセルから取り出した粉剤のスムーズな吸引を長期間にわたって実現可能な粉体吸入デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明にしたがう第一の実施形態の粉体吸入デバイスの軸方向に沿った断面図である。
【図2】図1に示した粉体吸入デバイスの分解図である。
【図3】(a)は第二パーツの底面図であり、(b)は第二パーツの背面図であり、(c)は第二パーツの右側面図であり、(d)は第二パーツの斜視図である。
【図4】第一実施形態の粉体吸入デバイスの側面図である。
【図5】第一の実施形態の粉体吸入デバイスの軸方向に沿った断面図であり、蓋体を開放した状態を示したものである。
【図6】この発明にしたがう第二の実施形態の粉体吸入デバイスの軸方向に沿った要部断面図である。
【図7】(a)はこの発明にしたがう第三の実施形態の粉体吸入デバイスの軸方向に沿った要部断面図であり、(b)はこの発明にしたがう第四の実施形態の粉体吸入デバイスの軸方向に沿った要部断面図である。
【図8】この発明にしたがう第五の実施形態の粉体吸入デバイスの軸方向に沿った断面図である。
【図9】第五の実施形態の粉体吸入デバイスの軸方向に沿った断面図であり、蓋体を開放した状態を示したものである。
【図10】図8に示した粉体吸入デバイスの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示す実施の形態を参照して、この発明を詳細に説明する。なお、図中、符号1は、この発明に従う実施形態の粉体吸入デバイスであり、符号Cは、粉剤を充填したカプセルである。
【0016】
図1に示すように、粉体吸入デバイス1は、カプセルCから取り出した粉剤を分散させつつ患者の口に排出する本体部2と、本体部2内の収納室3に収納されたカプセルCに孔を開けるための穿孔手段4と、を備えてなる。
【0017】
具体的には、本体部2は、軸方向Xの一端(図1中左側)に患者が口に銜えるまたは口を当てるマウスピース5を有し、他端(図1中右側)に収納室3内へのカプセルCの装填および取出しを可能とする開閉自在な蓋体6を有する。蓋体6には、患者の吸引により外気を取り入れる外気取入口7が設けられ、マウスピース5には吸引口となる外気排出口8が設けられている。そして、本体部2内には、外気取入口7から外気排出口8までを収納室3を経由して吸引した外気を流通させる外気流通路10が形成されている。
【0018】
この実施形態では、外気流通路10は、カプセルC内から粉剤を取り出す取出し部S1と、該取出し部S1の排出側につながり、経路(内部空間の道のり)を長くしたり流れに変化を与えたりすることによって粉剤を分散させ微細化する分散部S2と、分散部S2の排出側につながり粉剤を拡散させる拡散部S3と、から主として構成されている。なお、これらの要素に加え、流れにスピンを与える要素や流れを整流化する要素を外気流通路10に加えてもよい(図示省略)。
【0019】
外気流通路10の取出し部S1は、収納室3と、収納室3の上流側で軸方向Xに沿って延びる少なくとも一つ、ここでは一つの流入側通路11と、収納室3の下流側で軸方向Xに沿って延びる少なくとも一つ、ここでは一つの流出側通路12と、後述する穿孔具としてのピン33a、33bを各々通過させるとともに、流入側通路11、収納室3および流出側通路12間を相互に連通する少なくとも一つ、ここでは軸方向Xに離間して配置された二つの穿孔具通過通路13a、13bと、を有してなる。流入側通路11と流出側通路12とは径方向(軸方向Xに直交する方向)に収納室3を挟んで位置する。
【0020】
また、流出側通路12は、一端が外気排出口8側につながり(開放し)、他端が側壁面12aによって本体部2内で終端して行き止まり端となっている。穿孔具通過通路13a、13bの下端(ピン33a、33bの穿孔方向の末端)は、該流出側通路12の周面を形成する周壁面12bの上側に連結されている。収納室3の底部には、下向き、すなわちピン33a、33bの穿孔方向に窪んでカプセルCから取り出された粉剤を受ける凹部3aが形成されている。なお、凹部に代えてリブ(図示省略)を突設して収納室3の下側とカプセルCとの間に所定の隙間を設けるようにしても良い。また、流入側通路11は、一端が穿孔具通過通路13aを超過して本体部2内で終端し、他端が外気取入口7側につながる(開放する)ものであるが、一端を穿孔具通過通路13aとの連結位置にて終端させてもよい。
【0021】
また、流出側通路12の側壁面12aと周壁面12bとの間には少なくとも一部に、粉剤を外気排出口8側にスムーズに誘導する湾曲面状や球曲状などの凹曲面(アール)12cが形成されている。図示例では、凹曲面12cは側壁面12aと周壁面12bとを連続的につなぐものとして形成されている。さらにここでは、側壁面12aと周壁面12bとの隅部の下側部分、すなわち、周壁面12bの、穿孔具通過通路13a、13bが連結される側(上側)に対向する側と側壁面12aとによって形成される隅部部分に凹曲面12cが形成されている。また、凹曲面12cは、図示例では単一の円弧からなるが、二以上の円弧からなるものであってもよい。
【0022】
外気流通路10の分散部S2は、流出側通路12の排出側につながり軸方向Xおよび径方向に対して傾斜して延びる傾斜路14と、傾斜路14から導入された粉剤および外気を一旦受け入れ、流れの方向を変更したのちに二手に分岐する分岐室15と、各々分岐室15から軸方向Xおよび径方向に対して傾斜して延びる二つの枝路16a、16bと、各枝路16a、16bの排出側につながり軸方向Xに迂回しつつ径方向内側に向かう二つの迂回路17a、17bと、迂回路17a、17bの排出側につながり最終的に一つに合流させる合流路18とからなる。分岐室15の幅(直径)は、傾斜路14および枝路16a、16bの幅より大きい。外気と混合された粉剤は、分散部S2の各経路を通る間に、攪拌、破砕され、微細、分散化される。
【0023】
外気流通路10の拡散部S3は、合流路18の排出側につながり、外気排出口8に向けて末広がりとなる拡散路5aからなり、粉剤はこの拡散路5aを通る間に拡散され、マウスピース5の外気排出口8から排出される。
【0024】
本体部2の軸方向Xの他端に設けられた蓋体6には、マウスピース5による吸引時に外気流通路10内への外気の導通を許容し、患者が誤って呼気をマウスピース5から吹き込んだ場合には、外気取入口7を閉塞する逆止弁21が配置されている。逆止弁21は、必ずしも蓋体6に設ける必要はなく、外気流通路10内のいずれかの場所に設けることができる。
【0025】
このような本体部2は、図2に示すように、軸方向Xに組付けられてなるものであり、円筒状の筐体23と、筐体23の軸方向Xの一端に嵌合保持されるマウスピース5と、筐体23の内部に収容保持される第一〜第四パーツ24〜27と、蓋体6とからなる。筐体23には、穿孔手段4のピン33a、33bが挿通されるピン挿通孔23a、23bが二箇所形成されている。以下の説明で「先端側」とは、軸方向Xにおいてマウスピース5が位置する側(図2では左側)を意味し、「後端側」とは、軸方向Xにおいて蓋体6が位置する側(図2では右側)を意味する。
【0026】
マウスピース5の後端側に組み付けられるとともに筐体23の先端側の開口から挿入される第一パーツ24は、有底の二重円筒形状を有し、外筒24aと内筒24bとの間には環状溝24cが形成されている。また、底部より先端側に突出する内筒24bの端部24bは、マウスピース5の凹所5b内に嵌合するものであり、内筒24bの後端側の端部24bは、内周面が後端側に向けて僅かに末広がりに形成されている。内筒24bの内周面は、第二パーツ25と協働して上記合流路18を形成する。また、外筒24aの外周面には、組付け時に筐体23の一端(先端)に当接して軸方向Xに位置決めされる環状のフランジ24dが設けられている。
【0027】
第一パーツ24の後端側に組み付けられるとともに筐体23の後端側の開口から挿入される第二パーツ25は略円柱状をなし、先端側の面に、円錐状凹部25aとこの中心から突出する円錐形の隆起部25bと有し、後端側の面に第三パーツ26と協働して上記分岐室15を形成する半球部25cを有している。また、図3にも併せて示すように、第二パーツ25の外周面の一部には、軸方向Xに延びる溝25d、25eが形成されている。これらの円錐状凹部25a、隆起部25bおよび溝25d、25eは、第一パーツ24と協働して上記迂回路17a、17bを形成する。さらに、半球部25cからは、後端側に向けて傾斜して延びる溝25fが形成されている。この溝25fは、後述する第三パーツ26の溝26cと協働して上記傾斜溝14を形成する。また、第二パーツ25の外周面には、第一パーツ24における外筒24aの後端側の端部に当接して軸方向Xに位置決めされる段差部25gが形成されている。
【0028】
第二パーツ25の後端側に組み付けられるとともに筐体23の後端側の開口から挿入される第三パーツ26は略円柱状をなし、先端側の面に、第二パーツ25の後端側の端部が挿入される凹部26aを有する。凹部26aには第二パーツ25の半球部25cと協働して分岐室15を形成する半球部26bが形成されている。半球部26bからは後端側の面に向けて傾斜して延びるとともに第二パーツ25の上記溝25fと協働して上記傾斜溝14を形成する溝26cが形成されている。また、凹部26aを形成する周壁における先端側の端部が、筐体23の内周面に形成された段差部23cに当接して軸方向Xにおいて位置決めされる。
【0029】
第三パーツ26の後端側に組付けられるとともに筐体23の後端側の開口から挿入される第四パーツ27は、略円柱状をなし、内部に上記収納室3、流入側通路11、流出側通路12および穿孔具通過通路13a、13bが形成されている。
【0030】
第四パーツ27の後端側には、上記蓋体6が連結部としての枢軸Pを介して第四パーツ27に開閉可能に連結されている。連結部は枢軸Pに代えてヒンジを適用することもできる。また、蓋体6を嵌着や螺着によって装着するように構成することもできる。図4に示すように、蓋体6の両側には、係止片6aが一体的に設けられている。この係止片6aの先端には爪部6bが設けられており、この爪部6bを、筐体23の外周面に設けられた溝23dで係止することで蓋体6を閉じた状態に保持する。
【0031】
一方で、穿孔手段4は、図1に示すように、本体部2の筐体23に一体成形されるとともに上端部に開口を有する筒体30と、この筒体30の内側にてスプリング31のような弾性部材にてスライド可能に支持され、上端部の開口より抜け出し不能に露出する押しボタン32と、この押しボタン32の穴部に嵌合保持され、該押しボタン32の押圧にて穿孔具通過通路13a、13bを通して収納室3に先端を導入してカプセルCの穿孔を行う穿孔具としての中空のピン33a、33bとからなる。ピン33a、33bは中実体でもよい。さらに、筒体30の上端部には、ねじあるいはアンダーカットにより係合され、押しボタン32の抜け出しを防止するキャップ34が設けられている。
【0032】
上記の構成になる粉体吸入デバイス1において、カプセルCを収納室3に配置するには、蓋体6の係止片6aを両側から内側に向けて押し込み、その爪部6bによる筐体23との連係を解除して、図5に示すように、蓋体6を枢軸Pを基点にして回動させればよく、これにより、収納室3が開放されカプセルCを簡単に装填することができる。
【0033】
そして、収納室3内に配置したカプセルC内の粉剤を吸引するには、先ず、押しボタン32を押し込む。そうすると、押しボタン32につながるピン33a、33bがスプリング31の反発力に抗して収納室3へと導入されその先端部分でカプセルCに孔が開けられる。
【0034】
カプセルCに孔を開けたのち、マウスピース5を口で銜え込んで吸気すると、図1中の矢印のように逆止弁21を通って外気が収納室3内へと流入し、カプセルC内の粉剤と混合され、流出側通路12を通って外気流通路10の分散部S2へと導入される。このとき、流出側通路12の上流側の側壁面12aの下側隅部は、収納室3から落下した粉剤が堆積して固着し易い箇所であるが、この粉体吸入デバイス1は、その部位に、凹曲面(アール)12cを設けてあり、流出側通路12に粉剤と同伴して流入した外気がスムーズに排出側に向けて誘導され、粉剤が堆積、固着することがない。
【0035】
分散部S2では、図1中の矢印に示すような流れにより粉剤が拡散、破砕されてマウスピース5の外気排出口8(吸引口)からは微細、分散化された粉剤として排出される。
【0036】
したがって、この粉体吸入デバイス1によれば、流出側通路12内において粉剤が堆積、固着することがなく、カプセルCから取り出した粉剤のスムーズな吸引を長期間にわたって実現することができる。
【0037】
また、この実施形態によれば、凹曲面12cを、流出側通路12の側壁面12aと周壁面12bとの間の隅部下側に配置したことから、収納室3から落下してきた粉剤の、周壁面12b下側と側壁面12aとによって形成される隅部への堆積、固着を確実に防止することができる。
【0038】
また、この実施形態によれば、外気流通路10において分散部S2を設けたことから、粉剤が排出経路と接触する時間および距離を長くすることができ、粉剤を効率的に微細化させることができる。また、迂回路17a、17bを形成する溝25d、25eを第二パーツ25の外周面に設けたことで、本体部2の大きさを変更することなく、排出経路を効率的に延長することができる。さらに、この実施形態では、分散部S2において分岐室15を設けたことにより、この分岐室15での流れの変更に伴う粉剤同士の接触および粉剤と壁面との接触により、より一層粉剤を微細化することができる。しかも、分岐室15の幅(直径)を、傾斜路14及び枝路16a、16bの幅よりも大きくしたので、分岐室15内での外気の攪拌が効率的に行われる。また、分散部S2に迂回路17a、17bを設けるにあたり、経路を軸方向Xに折り返しつつ径方向内側に延在させたことから、排出経路が延長されたことに起因する本体部2の大型化はない。
【0039】
以下、この発明の他の実施形態について図6〜10を参照して説明する。なお、以下の実施形態において上記実施形態と同様の部材には同一の符号を付しその説明を省略する。
【0040】
図6に示す実施形態は、流出側通路12の周壁面12bと側壁面12aとの間に凹曲面12cに代えて傾斜面12c’を設けた例である。この実施形態によれば、先の実施形態と同様、流出側通路12に粉剤と同伴して流入した外気がスムーズに排出側に向けて誘導され、粉剤が堆積、固着することがない。
【0041】
図7(a)、(b)に示す実施形態では、一方の穿孔具通過通路13bの下端が側壁面12aに連続してつながっている。すなわち、穿孔具通過通路13bの下端の後端側の軸方向Xにおける位置x1が側壁面12aと一致している。これによれば、穿孔具通過通路13bを通って収納室3から落下した粉剤がよりスムーズに排出側に流れるとともに、流出側通路12の側壁面12a近傍における外気の流れがより活発となって、流出側通路12内での粉剤の堆積、固着がより一層防止される。
【0042】
図8〜10に示す実施形態は、カプセルCを縦向き(カプセルCの長手方向が穿孔手段4のピンの穿孔方向に一致にする向き)装填するタイプの粉体吸入デバイス1である。
【0043】
以上、図示例に基づきこの発明を説明したが、この発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものである。例えば、流出側通路12の周壁面12bと側壁面12aとの間に設けた凹曲面12cまたは傾斜面12c’は、周壁面12bと側壁面12aとの隅部の下側部分に設けると説明したが、隅部の全周に亘って設けてもよく、これによれば、流出側通路12内での外気の流れをよりスムーズにすることができる。また、上記図示例では、流入側通路11および流出側通路12はそれぞれ一つずつ設けると説明したが、複数(例えば、二つずつ)設けてもよい。さらに、流入側通路11および流出側通路12は軸方向Xに沿って延びると説明したが、軸方向Xに傾斜して延びるものであってもよく、互いに平行に延在させる必要もない。また、外気流通路10における分散部S2を設けず、流出側通路12を直接マウスピース5の拡散路5aにつなげて、あるいは分散部S2における経路を図示例よりも短くして、本体部2の軸方向Xに沿った長さの短縮化を図ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
かくして、この発明により、カプセルから取り出した粉剤のスムーズな吸引を長期間にわたって実現可能な粉体吸入デバイスを提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0045】
1 粉体吸入デバイス
2 本体部
3 収納室
4 穿孔手段
5 マウスピース
6 蓋体
7 外気取入口
8 外気排出口
10 外気流通路
11 流入側通路
12 流出側通路
12a 側壁面
12b 周壁面
12c 凹曲面(アール)
12c’ 傾斜面
13a、13b 穿孔具通過通路
14 傾斜路
15 分岐室
16a、16b 枝路
17a、17b 迂回路
18 合流路
21 逆止弁
33a、33b ピン(穿孔具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉剤を充填したカプセルを収納する収納室および、外気取入口から粉剤の吸引口となる外気排出口まで前記収納室を経由して外気を流通させる外気流通路を有する本体部と、前記収納室に配置されるカプセルを貫通して孔を開ける穿孔具と、を備える粉体吸入デバイスにおいて、
前記外気流通路は、前記収納室の下流側に設けられ、一端が前記外気排出口側につながり他端が前記本体部内で側壁面により終端する流出側通路と、前記収納室を貫いて前記穿孔具を通過させるとともに前記流出側通路を形成する周壁面に連結される穿孔具通過通路と、を有し、
前記流出側通路の前記側壁面と前記周壁面との間に、少なくとも部分的に延在する凹曲面を設けたことを特徴とする粉体吸入デバイス。
【請求項2】
前記凹曲面を、前記流出側通路の、少なくとも前記穿孔具通過通路が連結される側とは反対側に配置した、請求項1に記載の粉体吸入デバイス。
【請求項3】
粉剤を充填したカプセルを収納する収納室および、外気取入口から粉剤の吸引口となる外気排出口まで前記収納室を経由して外気を流通させる外気流通路を有する本体部と、前記収納室に配置されるカプセルを貫通して孔を開ける穿孔具と、を備える粉体吸入デバイスにおいて、
前記外気流通路は、前記収納室の下流側に設けられ、一端が前記外気排出口側につながり他端が前記本体部内で側壁面により終端する流出側通路と、前記収納室を貫いて前記穿孔具を通過させるとともに前記流出側通路を形成する周壁面に連結される穿孔具通過通路と、を有し、
前記流出側通路の前記側壁面と前記周壁面との間に、少なくとも部分的に延在する傾斜面を設けたことを特徴とする粉体吸入デバイス。
【請求項4】
前記傾斜面を、前記流出側通路の、少なくとも前記穿孔具通過通路が連結される側とは反対側に配置した、請求項3に記載の粉体吸入デバイス。
【請求項5】
前記穿孔具通過通路の、穿孔方向の末端が前記側壁面に連続してつながっている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉体吸入デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−212269(P2011−212269A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83885(P2010−83885)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)