説明

粉体吸入デバイス

【課題】吸引の終えた空のカプセルを粉体吸入デバイスから容易に取り出すことができるとともに、カプセル取出し時に、カプセルに残留した破断片がカプセルから分離して脱落するのを回避することができる粉体吸入デバイスを提供する。
【解決手段】粉体吸入デバイス1は、本体部7と穿孔部11とを備え、本体部7の外気流通路6の一部として、穿孔具9、10を収納室3まで導く穿孔前通路19a、20aと、カプセルCを穿孔したのちに収納室3から突出する穿孔具9、10を挿通させる穿孔後通路19b、20bとからなる穿孔具挿通路19、20が形成されており、収納室3内に配置されるカプセルCの外面と該収納室3の内壁との間に、穿孔具9、10の外径OD、OD10以上の幅Wをもって、上記穿孔後通路19bの周縁後端q1またはこれよりもカプセル取出し方向DOUTの後方から収納室3の開口3aまで直線状かつ連続的に延びる隙間3bが画成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、患者の吸引によりカプセル内の粉剤を投与するのに適した粉体吸入デバイス(装置)に関するものであり、特に吸引を終えた空のカプセルを粉体吸入デバイスから容易に取り出せるようにするものに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の吸引によりカプセル内の粉剤を投与する粉体吸入デバイスは、喘息患者等において多用されるものであり、従来、このような粉体吸入デバイスとしては、粉剤を充填したカプセルを収納する収納室を有し、この収納室に配置したカプセルに収納室を貫通可能なピンによって孔を開けたのち、マウスピースを通してカプセル内の粉剤を吸引するものが知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3530004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の粉体吸入デバイスでは、ピンによる穿孔で生じるカプセルの除去部分(破断片)を、カプセルに開けられた孔の周りに一部が連結された状態で残留させた場合には、使用後に空になったカプセルを取り出す際に当該破断片が周囲に引っかかって取出しが困難になるという問題がある。また、カプセルに残留した破断片が取出し時に周囲に引っかかって脱落した場合には、下流側にて薬剤の流通路を閉塞させ吸引に支障をきたすおそれがある。
【0005】
それゆえ、この発明は、吸引を終えた空のカプセルを粉体吸入デバイスから容易に取り出すことができるとともに、カプセル取出し時に、カプセルに残留した破断片がカプセルから分離して脱落するのを回避することができる粉体吸入デバイスを提供することをその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明の粉体吸入デバイスは、粉剤を充填したカプセルの挿入および取出しを許容する開口を有し、この開口から挿入されたカプセルを収納する収納室および、外気取入口から粉剤の吸引口となる外気排出口まで上記収納室を経由して外気を流通させる外気流通路を有する本体部と、上記収納室内に配置されるカプセルを、カプセルの挿入、取出し方向に対して交差する方向に貫通、穿孔する穿孔具と、を備え、上記本体部の外気流通路の一部として、上記穿孔具を収納室まで導く穿孔前通路と、カプセルを穿孔したのちに収納室から突出する穿孔具を挿通させる穿孔後通路とからなる穿孔具挿通路を形成した粉体吸入デバイスであって、上記収納室内に配置されるカプセルの外面と該収納室の内壁との間に、上記穿孔具の外径以上の幅をもって、上記穿孔後通路の周縁後端またはこれよりもカプセル取出し方向の後方から上記収納室の開口まで直線状かつ連続的に延びる隙間を画成したことを特徴とするものである。ここで「周縁後端」とは、穿孔後通路の周縁において、カプセル取出し方向の後方の端を意味し、言い換えれば、穿孔後通路の周縁において、収納室の開口から最遠の端を意味する。
【0007】
かかる粉体吸入デバイスにあっては、収納室の開口を通じて収納室内にカプセルを挿入、配置したのち、穿孔具により収納室内のカプセルに孔を開ける。そして、患者が吸引を終え、収納室の開口を通じてカプセルを取り出すにあたっては、カプセルの外面と収納室の内壁との間に隙間が存在し、この隙間が少なくとも穿孔後通路の周縁後端から収納室の開口まで伸延していることから、穿孔具によって除されたカプセルの除去部分(破断片)を、その一部がカプセルに連結されたまま孔の周囲に残留させた場合でも、この破断片が穿孔具挿通路(穿孔後通路)や収納室の内壁などに引っかかることなく、カプセルをスムーズに取り出すことができる。
【0008】
したがって、この発明の粉体吸入デバイスによれば、吸引を終えた空のカプセルを粉体吸入デバイスから取り出す際にカプセルに残留した破断片が周囲に引っかかるのを防止することができるので、カプセルを容易に取り出すことができるとともに、カプセル取出し時に破断片がカプセルから分離して脱落するのを回避することができる。
【0009】
なお、この発明の粉体吸入デバイスにあっては、上記収納室の内壁に、凹部を設けることにより上記隙間を画成することが好ましい。
【0010】
あるいは、この発明の粉体吸入デバイスにあっては、上記収納室の内壁から突出して上記カプセルの外面を支える支持リブを設けることにより上記隙間を画成することが好ましい。
【0011】
さらに、この発明の粉体吸入デバイスにあっては、上記穿孔後通路の周縁後端に一致させて、上記隙間の行き止まり端を形成する端壁を設けるとともに、上記穿孔具に先端部を鋭角とする傾斜面を設け、上記穿孔具の傾斜面を上記端壁に対向させることが好ましい。
【0012】
しかも、この発明の粉体吸入デバイスにあっては、上記収納室の周方向において互いに位置の異なる穿孔具挿通路を二以上有し、各穿孔具挿通路の穿孔後通路に対応して上記隙間を画成するとともに、上記端壁を各隙間に対応してそれぞれ設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、吸引を終えた空のカプセルを粉体吸入デバイスから容易に取り出すことができるとともに、カプセル取出し時にカプセルに残留した破断片がカプセルから分離して脱落するのを回避することができる粉体吸入デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明にしたがう第一の実施形態の粉体吸入デバイスの軸方向に沿った断面図である。
【図2】(a)は図1中のA−A線に沿った断面図であり、(b)は図2(a)中のB−B線に沿った断面図である。
【図3】図1に示した粉体吸入デバイスの分解図である。
【図4】(a)は第二パーツの底面図であり、(b)は第二パーツの背面図であり、(c)は第二パーツの右側面図であり、(d)は第二パーツの斜視図である。
【図5】第一実施形態の粉体吸入デバイスの側面図である。
【図6】第一の実施形態の粉体吸入デバイスの軸方向に沿った断面図であり、蓋体を開放した状態を示したものである。
【図7】この発明にしたがう第二の実施形態の粉体吸入デバイスを示しており、(a)は、図2(a)と同様の断面を示す要部断面図であり、(b)は、図7(a)中のC−C線に沿う断面図である。
【図8】(a)〜(c)はそれぞれ、この発明にしたがう第三〜第五の実施形態の粉体吸入デバイスを図2(a)と同様の断面で示した断面図である。
【図9】この発明にしたがう第六の実施形態の粉体吸入デバイスを示しており、(a)は図9(c)中のF−F線に沿う断面図であり、(b)は図9(a)中のD−D線に沿う断面図であり、(c)は図2(a)と同様の断面を示した要部断面図であるとともに、図9(a)中のE−E線に沿う断面図である。
【図10】この発明にしたがう第七の実施形態の粉体吸入デバイスを、図2(a)と同様の断面で示した要部断面図である。
【図11】この発明にしたがう第八の実施形態の粉体吸入デバイスを、図2(a)と同様の断面で示した要部断面図である。
【図12】この発明にしたがう第九の実施形態の粉体吸入デバイスを、図2(a)と同様の断面で示した要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示す実施の形態を参照して、この発明を詳細に説明する。なお、図中、符号1は、この発明に従う実施形態の粉体吸入デバイスであり、符号Cは、粉剤を充填したカプセルである。
【0016】
図1に示すように、粉体吸入デバイス1は、粉剤を充填したカプセルCの挿入および取出しを許容する開口3a(図6参照)を有し、この開口3aから挿入されたカプセルCを収納する収納室3および、外気取入口4から粉剤の吸引口となる外気排出口5まで上記収納室3を経由して外気を流通させる外気流通路6を有する本体部7と、収納室3内に配されたカプセルCに孔を開ける穿孔具としてのピン9、10を有する穿孔部11と、を備えてなる。なお、以後、説明の便宜上、図1に示す穿孔部11側を上側、本体部7側を下側とする。ピン9、10は、収納室3内に配されるカプセルCを、カプセルCの挿入方向DINおよび取出し方向DOUTに対して交差する方向、本実施形態では直交する方向に貫通し穿孔可能に設けられている。また、本実施形態では、二本のピン9、10は、収納室3の周方向(以下、単に「周方向」という)DCIR(図2(b)参照。)における位置が互いに等しくかつ、上記カプセル挿入、取出し方向DIN、DOUTにおいて相互に離間して配置されている。また、ここでは二本のピン9、10の外径OD、OD10は互いに等しい。
【0017】
本体部7は、具体的には、軸方向Xの一端(図1中左側)に患者が口に銜えるまたは口を当てるマウスピース13を有し、他端(図1中右側)に収納室3の開口3aを開閉する蓋体14を有する。患者の吸引により外気を取り入れる上記外気取入口4は蓋体14に配置され、上記外気排出口5はマウスピース13に配置されている。蓋体14には、さらに、マウスピース13による吸引時に外気流通路6内への外気の導通を許容し、患者が誤って呼気をマウスピース13から吹き込んだ場合には、外気取入口4を閉塞する逆止弁15が配置されている。逆止弁15は、必ずしも蓋体14に設ける必要はなく、外気流通路6内のいずれかの場所に設けることができる。
【0018】
外気流通路6は、カプセルC内から粉剤を取り出す取出し部S1と、該取出し部S1の排出側につながり、経路(内部空間の道のり)を長くしたり流れに変化を与えたりすることによって粉剤を分散させ微細化する分散部S2と、分散部S2の排出側につながり粉剤を拡散させる拡散部S3と、から主として構成されている。なお、これらの要素に加え、流れにスピンを与える要素や流れを整流化する要素を外気流通路6に加えてもよい(図示省略)。
【0019】
先ず、外気流通路6の取出し部S1は、上記収納室3に加えて、外気流通路6の一部として、収納室3に外気を流入させる流入側通路17と、収納室3から外気を流出させる流出側通路18と、ピン9、10を各々通過させるとともに、流入側通路17、収納室3および流出側通路18間を相互に連通する二つの穿孔具挿通路19、20とを有してなる。ここで、説明の便宜上、各穿孔具挿通路19、20において、ピン9、10を収納室3まで導く部分(図1中上側の部分)を穿孔前通路19a、20aと称するとともに、カプセルCを穿孔したのちに収納室3から突出するピン9、10を挿通させる部分(図1中下側の部分)を穿孔後通路19b、20bと称する。
【0020】
流入側通路17は、穿孔前通路19a、20aを横切って延びるとともに一端が本体部7内で終端し、他端が外気取入口4側につながる(開放する)。流出側通路18は、穿孔後通路19b、20bが周面上部に連結されるとともに、一端が外気排出口5側につながり(開放し)、他端が本体部内で終端する。なお、流出側通路18の下部には、側壁面18aと周壁面18bとによって形成される隅部部分に、粉剤を外気排出口5側にスムーズに誘導する湾曲面状や球曲状などの凹曲面(アール)18cを形成してもよい。凹曲面18cは、図示例では単一の円弧からなるが、二以上の円弧からなるものであってもよい。また、凹曲面18cに代えて、テーパー面(図示省略)としてもよい。
【0021】
そして、収納室3の下部、すなわち収納室3の、穿孔後通路19b、20bが連結されている部分には、図1および図2に示すように、収納室3内に配置されるカプセルCの外面と該収納室3の内壁との間に、幅Wをもって、穿孔後通路19bの周縁後端q1、より正確には、ピン9の周面において、カプセル取出し方向DOUTの後端位置(以下、単に「ピンの後端位置」という。)k1よりもカプセル取出し方向DOUTの後方から収納室3の開口3aまで直線状かつ連続的に延びる隙間3bが画成されている。本実施形態では、隙間3bは、収納室3の内壁に凹部22を設けることによって画成されている。また、幅Wはピン9、10によって形成されるカプセルの開孔径(ピン9、10の外径OD、OD10)以上となっている。本実施形態では、ピン9、10の外径OD、OD10と穿孔後通路19b、20bの内径ID19b、ID20bとがほぼ同径(ピン9、10が穿孔孔通路19b、20b内を摺動可能な程度に同径の意味である。)となっているため、上記幅Wは上記内径ID19b、ID20b以上となっている。さらに、凹部22の深さhを、ピン9、10の外径OD、OD10以上とすることが好ましい。
【0022】
次いで、外気流通路6の分散部S2は、図1に示すように、流出側通路18の排出側につながり軸方向Xおよび径方向に対して傾斜して延びる傾斜路23と、傾斜路23から導入された粉剤および外気を一旦受け入れ、流れの方向を変更したのちに二手に分岐する分岐室24と、各々分岐室24から軸方向Xおよび径方向の双方に対して傾斜して延びる二つの枝路25a、25bと、各枝路25a、25bの排出側につながり軸方向Xに迂回しつつ径方向内側に向かう二つの迂回路26a、26bと、迂回路26a、26bの排出側につながり最終的に一つに合流させる合流路27とからなる。分岐室24の幅(直径)は、傾斜路23および枝路25a、25bの幅より大きい。外気と混合された粉剤は、分散部S2の各経路を通る間に、攪拌、破砕され、微細、分散化される。
【0023】
次いで、外気流通路6の拡散部S3は、同図に示すように、合流路27の排出側につながり、外気排出口5に向けて末広がりとなる拡散路28を有し、粉剤はこの拡散路28を通る間に拡散され、マウスピース13の外気排出口5から排出される。
【0024】
このような本体部7は、図3に示すように、軸方向Xに組付けられてなるものであり、円筒状の筐体30と、筐体30の軸方向Xの一端に嵌合保持されるマウスピース13と、筐体30の内部に収容保持される第一〜第四パーツ31〜34と、蓋体14とからなる。筐体30には、穿孔部11のピン9、10が挿通されるピン挿通孔30a、30bが軸方向Xに離間して二箇所形成されている。以下の説明で「先端側」とは、軸方向Xにおいてマウスピース13が位置する側(図3では左側)を意味し、「後端側」とは、軸方向Xにおいて蓋体14が位置する側(図3では右側)を意味する。
【0025】
マウスピース13の後端側に組み付けられるとともに筐体30の先端側の開口から挿入される第一パーツ31は、有底の二重円筒形状を有し、外筒31aと内筒31bとの間には環状溝31cが形成されている。また、底部より先端側に突出する内筒31bの端部31bは、マウスピース13の凹所13a内に嵌合するものであり、内筒31bの後端側の端部31bは、内周面が後端側に向けて僅かに末広がりに形成されている。内筒31bの内周面は、第二パーツ32と協働して上記合流路27を形成する。また、外筒31aの外周面には、組付け時に筐体30の一端(先端)に当接して軸方向Xに位置決めされる環状のフランジ31dが設けられている。
【0026】
第一パーツ31の後端側に組み付けられるとともに筐体30の後端側の開口から挿入される第二パーツ32は略円柱状をなし、先端側の面に、円錐状凹部32aとこの中心から突出する円錐形の隆起部32bと有し、後端側の面に第三パーツ33と協働して上記分岐室24を形成する半球部32cを有している。また、図4にも併せて示すように、第二パーツ32の外周面の一部には、軸方向Xに延びる溝32d、32eが形成されている。これらの円錐状凹部32a、隆起部32bおよび溝32d、32eは、第一パーツ31と協働して上記迂回路26a、26bを形成する。さらに、半球部32cからは、後端側に向けて傾斜して延びる溝32fが形成されている。この溝32fは、後述する第三パーツ33の溝33cと協働して上記傾斜路23を形成する。また、第二パーツ32の外周面には、第一パーツ31における外筒31aの後端側の端部に当接して軸方向Xに位置決めされる段差部32gが形成されている。
【0027】
第二パーツ32の後端側に組み付けられるとともに筐体30の後端側の開口から挿入される第三パーツ33は略円柱状をなし、先端側の面に、第二パーツ32の後端側の端部が挿入される凹部33aを有する。凹部33aには第二パーツ32の半球部32cと協働して分岐室24を形成する半球部33bが形成されている。半球部33bからは後端側の面に向けて傾斜して延びるとともに第二パーツ32の上記溝32fと協働して上記傾斜路23を形成する溝33cが形成されている。また、凹部33aを形成する周壁における先端側の端部が、筐体30の内周面に形成された段差部30cに当接して軸方向Xにおいて位置決めされている。
【0028】
第三パーツ33の後端側に組付けられるとともに筐体30の後端側の開口から挿入される第四パーツ34は、略円柱状をなし、内部に上記収納室3、流入側通路17、流出側通路18および穿孔具挿通路19、20が形成されている。
【0029】
第四パーツ34の後端側には、上記蓋体14が連結部としての枢軸Pを介して第四パーツ34に回動自在に連結されている。連結部は枢軸Pに代えてヒンジを適用することもできる。また、蓋体14を嵌着や螺着によって装着するように構成することもできる。図5に示すように、蓋体14の両側には、係止片14aが一体的に設けられている。この係止片14aの先端には爪部14bが設けられており、この爪部14bを、筐体30の外周面に設けられた係止部(溝やスリットなど)30dで係止することで蓋体14を閉じた状態に保持する。
【0030】
一方で、穿孔部11は、図1および3に示すように、本体部7の筐体30に一体成形されるとともに上端部に開口を有する筒体36と、この筒体36の内側にてスプリング37のような弾性部材にてスライド可能に支持され、上端部の開口より抜け出し不能に露出する押しボタン38と、この押しボタン38の穴部に嵌合保持され、該押しボタン38の押圧にて穿孔具挿通路19、20を通して収納室3に先端を導入してカプセルCの穿孔を行う上記ピン9、10とからなる。ピン9、10は中空でも中実体でもよい。さらに、筒体36の上端部には、ねじあるいはアンダーカットにより係合され、押しボタン38の抜け出しを防止するキャップ39が設けられている。
【0031】
上記の構成になる粉体吸入デバイス1において、カプセルCを収納室3に配置するには、蓋体14の係止片14aを両側から内側に向けて押し込み、その爪部14bによる筐体30との連係を解除して、図6に示すように、蓋体14を枢軸Pを基点にして回動させればよく、これにより、収納室3の開口3aが開放されカプセルCを簡単に装填することができる。
【0032】
そして、収納室3内に配置したカプセルC内の粉剤を吸引するには、先ず、押しボタン38を押し込む。そうすると、押しボタン38につながるピン9、10がスプリング37の反発力に抗して収納室3へと導入されその先端部分でカプセルCに孔が開けられる。このとき、ピン9、10によって除されたカプセルCの破断片が、一部がカプセルに連結されたまま孔の周囲に残留する。すなわち、ピン9、10の挿入量、ピンの(先端)形状などを適切に設定することで、開孔後も上記破断片が脱落しないように構成されている。
【0033】
カプセルCに孔を開けたのち、マウスピース13を口で銜え込んで吸気すると、図1中の矢印のように逆止弁15を通って外気が収納室3内へと流入し、カプセルC内の粉剤と混合され、流出側通路18を通って外気流通路6の分散部S2へと導入される。分散部S2では、図1中の矢印に示すような流れにより粉剤が拡散、破砕されてマウスピース13の外気排出口5(吸引口)からは微細、分散化された粉剤として排出される。
【0034】
そして、患者が吸引を終え、収納室3の開口3aを通じて空のカプセルCを取り出すにあたっては、カプセルCの外面と収納室3の内壁との間に凹部22によって画成された隙間3bが穿孔後通路19bの周縁後端q1(ピン9の後端位置k1)から収納室3の開口3aまで連続してかつ直線状に伸延していることから、カプセルCの孔の周囲に残留した破断片が穿孔後通路19b、20bや収納室3の内壁などに引っかかることなく、カプセルCをスムーズに取り出すことができる。
【0035】
したがって、この発明の粉体吸入デバイス1によれば、吸引を終えた空のカプセルCを粉体吸入デバイス1から取り出す際に、カプセルCに残留した破断片が周囲に引っかかるのを防止することができるので、カプセルCを容易に取り出すことができるとともに、カプセルCの取出し時に破断片がカプセルCから分離して脱落するのを回避することができる。また、この実施形態によれば、凹部22の深さhをピン9、10の外径OD、OD10以上としたことから、カプセルCの取出し時における、カプセルCの孔の周辺に残留した破断片と収納室3の内壁や穿孔後通路19b、20bとの相互干渉をより確実に回避することができる。
【0036】
また、この実施形態によれば、外気流通路6において分散部S2を設けたことから、粉剤が排出経路(外気流通路)と接触する時間および距離を長くすることができ、粉剤を効率的に微細化させることができる。また、迂回路26a、26bを形成する溝32d、32eを第二パーツ32の外周面に設けたことで、本体部7の大きさを変更することなく、排出経路を効率的に延長することができる。さらに、この実施形態では、分散部S2において分岐室24を設けたことにより、この分岐室24での流れの変更に伴う粉剤同士の接触および粉剤と壁面との接触により、より一層粉剤を微細化することができる。しかも、分岐室24の幅(直径)を、傾斜路23及び枝路25a、25bの幅よりも大きくしたので、分岐室24内での外気の攪拌が効率的に行われる。また、分散部S2に迂回路26a、26bを設けるにあたり、経路を軸方向Xに折り返しつつ径方向内側に延在させたことから、排出経路が延長されたことに起因する本体部7の大型化はない。
【0037】
以下、この発明の他の実施形態について図7〜9を参照して説明する。なお、以下の実施形態において上記実施形態と同様の部材には同一の符号を付しその説明を省略する。
【0038】
図7(a)、(b)に示す実施形態では、収納室3の下部に凹部22によって形成された隙間3bは、カプセル取出し方向DOUTに沿って配置された穿孔後通路19b、20bのうち後方側(図7では左側であって、収納室3の開口3aからみて遠方側)の穿孔後通路19bの周縁後端q1の位置から開口3aに向けて伸延するものであり、すなわち、穿孔後通路19bの周縁後端q1に一致して位置する凹部22の端壁22aが、隙間3bの行き止まり端を形成している。また、ピン9、10に先端部を鋭角とする傾斜面9a、10aが設けられ、該傾斜面9a、10aは端壁22aに対向するよう配置されている。
【0039】
かかる実施形態の粉体吸入デバイス1によれば、ピン9、10によるカプセルCの穿孔によって形成される破断片の根元(カプセルCと破断片との連結部)が凹部22の端壁22a側に位置するため、すなわちピン9、10の周面によって破断片を端壁22aに押し付け、癖付けすることができるため、カプセルCの確実な穿孔が可能となり、吸引時にも破断片が元の位置に戻り難くなり、よりスムーズな吸引を行い得るようになる。
【0040】
次いで、図8(a)〜(c)に示す他の実施形態では、穿孔後通路19bの周縁後端q1に一致させて、隙間3bの行き止まり端を形成する端壁22aを設けた点において図7の例と同じであるが、穿孔具挿通路19、20の周方向DCIRにおける位置を互いに異ならせ、各穿孔具挿通路19、20の穿孔後通路19b、20bに対応して各々隙間3b、3bを画成するとともに、端壁22a、22aを各隙間に対応してそれぞれ設けた点において図7と異なる。図8(a)に示すように、各穿孔後通路19b、20bに対応した隙間3b、3bは互いに周方向に離間させてもよく、図8(b)に示すように、穿孔後通路19bと穿孔後通路20bとを周方向DCIRで並列になるように配置して、これらの穿孔後通路19b、20bに対して共通の隙間3bを画成してもよく、図8(c)に示すように、穿孔後通路19bと穿孔後通路20bとを周方向にオーバーラップして配置して、これらの穿孔後通路19b、20bに対して共通の隙間3bを画成してもよい。また、穿孔具挿通路19、20は軸方向Xにおける位置と周方向DCIRにおける位置の両方ではなく、周方向DCIRにおける位置のみを異ならせて配置してもよい。これらの実施形態によれば、各穿孔後通路19b、20bの周縁後端q1、q2に端壁22a、22aをそれぞれ設けることができるので、両ピン9、10によって形成された破断片の双方の癖付けが可能となり、さらにスムーズな吸引を行い得るようになる。
【0041】
次いで、図9(a)〜(c)に示す他の実施形態では、収納室3内に隙間3bを形成するにあたり、収納室3の内壁から突出してカプセルCの外面を支える支持リブ41〜43を設けたものである。この例では、支持リブ41〜43は、内壁の周上に三箇所設けられている。内壁の下部に設けられた支持リブ41は、穿孔後通路19b、20bの両側にて立ち上がり、カプセルCの挿入、取出し方向DIN、DOUTに沿って平行に延びる一対の平行壁41aと、これらの平行壁41aの端部間をつなぐ端壁41bとからなり、この端壁41bは穿孔後通路19bの周縁後端q1に一致して配置されて、隙間3bの行き止まり端を形成する。内壁の上部に設けられた残りの二つの支持リブ42、43は、カプセルの挿入、取出し方向DIN、DOUTに沿って直線状に延びるものである。かかる実施形態によれば、カプセルCの外面を収納室の内壁全周にわたって支持する場合と比べて、これらの両者間の摩擦抵抗が低減されるので、カプセルCの挿入、取出し作業をより容易に行うことができる。
【0042】
以上、図示例に基づきこの発明を説明したが、この発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものである。例えば、図10に示すように、隙間3bの幅Wは、ピン9、10の外径OD、OD10や穿孔後通路19b、20bの内径ID19b、ID20bよりも大としてもよい。また、図11に示すように、隙間3bを、収納室3の行き止まり端まで延在させてもよい。さらにこの発明では、隙間3bは、ピン9、10の外径OD、OD10以上の幅Wを有していればよいから、図12に示すように、穿孔後通路19b、20bの内径ID19b、ID20bを隙間3bの幅Wよりも大きくしてもよく、さらにこの場合、図示は省略するが、ピン9の後端位置k1を穿孔後通路19bの周縁後端q1に一致させて、隙間3bの開始端をピン9の後端位置k1に相当する位置としてもよい。また、穿孔具としてのピン9、10は二本に限らず、一本としたり三本以上としたりしてもよく、これに対応して、穿孔具挿通路の数も適宜変更することができ、また、ピンを二本以上設ける場合には、その外径は互いに等しくしても異なっていてもよい。また、隙間3bを画成するにあたっては、凹部22と支持リブ41とを併用してもよく、すなわち、凹部22の、対向する側壁周辺から支持リブ41を突設してもよく、これによれば、本体部7の小型化を図りつつも充分な隙間3bを確保でき、しかも、支持リブによる摩擦低減効果も得ることができる。また、流入側通路17および流出側通路18の数もそれぞれ二本以上としてもよい。また、上記実施形態では、本体部の軸方向Xに沿ってカプセルCの出し入れを行う横型の粉体吸入デバイスの例を示したが、この発明では、本体部の径方向に沿ってカプセルCの出し入れを行う縦型の粉体吸入デバイスとしてもよい(図示省略)。
【産業上の利用可能性】
【0043】
かくして、この発明により、吸引を終えた空のカプセルを粉体吸入デバイスから取り出す際に、カプセルに残留した破断片が周囲に引っかかるのを防止し得て、カプセルを容易に取り出すことができるとともに、カプセル取出し時に、カプセルに残留した破断片がカプセルから分離して脱落するのを回避することができる粉体吸入デバイスを提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0044】
1 粉体吸入デバイス
3 収納室
3a 収納室の開口
3b 隙間
4 外気取入口
5 外気排出口
6 外気流通路
7 本体部
9、10 ピン(穿孔具)
11 穿孔部
13 マウスピース
14 蓋体
17 流入側通路
18 流出側通路
19、20 穿孔具挿通路
19a、20a 挿通前通路
19b、20b 挿通後通路
22 凹部
22a 端壁
41 支持リブ
41a 端壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉剤を充填したカプセルの挿入および取出しを許容する開口を有し、この開口から挿入されたカプセルを収納する収納室および、外気取入口から粉剤の吸引口となる外気排出口まで前記収納室を経由して外気を流通させる外気流通路を有する本体部と、前記収納室内に配置されるカプセルを、カプセルの挿入、取出し方向に対して交差する方向に貫通、穿孔する穿孔具と、を備え、前記本体部の外気流通路の一部として、前記穿孔具を収納室まで導く穿孔前通路と、カプセルを穿孔したのちに収納室から突出する穿孔具を挿通させる穿孔後通路とからなる穿孔具挿通路を形成した粉体吸入デバイスであって、
前記収納室内に配置されるカプセルの外面と該収納室の内壁との間に、前記穿孔具の外径以上の幅をもって、該穿孔後通路の周縁後端またはこれよりもカプセル取出し方向の後方から前記収納室の開口まで直線状かつ連続的に延びる隙間を画成したことを特徴とする粉体吸入デバイス。
【請求項2】
前記収納室の内壁に、凹部を設けることにより前記隙間を画成した、請求項1に記載の粉体吸入デバイス。
【請求項3】
前記収納室の内壁から突出して前記カプセルの外面を支える支持リブを設けることにより前記隙間を画成した、請求項1に記載の粉体吸入デバイス。
【請求項4】
前記穿孔後通路の周縁後端に一致させて、前記隙間の行き止まり端を形成する端壁を設けるとともに、前記穿孔具に先端部を鋭角とする傾斜面を設け、
前記穿孔具の傾斜面を前記端壁に対向させた、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉体吸入デバイス。
【請求項5】
前記収納室の周方向において互いに位置の異なる穿孔具挿通路を二以上有し、
各穿孔具挿通路の穿孔後通路に対応して前記隙間を画成するとともに、前記端壁を各隙間に対応してそれぞれ設けた、請求項4に記載の粉体吸入デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−229674(P2011−229674A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102581(P2010−102581)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)