説明

粉体塗料用ポリエステル樹脂

【課題】 粉体塗料としたときに、焼き付け硬化後の塗膜の塗膜強度および表面平滑性等の塗膜の基本特性に優れた粉体塗料用樹脂を提供すること。
【解決手段】 ポリオール成分(r)とポリカルボン酸成分(s)が、特定の一般式で表される少なくとも1種のチタン含有触媒(a)の存在下に重縮合されてなることを特徴とする粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)、並びに上記粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)とエチレン性不飽和基を有する反応性希釈剤(B)を含有する粉体塗料用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体塗料用ポリエステル樹脂、粉体塗料用樹脂組成物、およびそれらを用いた粉体塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤に対するVOC規制等の環境保護の観点から、粉体塗料は注目を浴びている。ところが、粉体塗料は溶剤系塗料に比較して硬化塗膜の平滑性が劣るという問題があり、このため用途が限定されている。この問題を解決する方法として、平均粒径が8〜20μmの不定形粒子と平均粒径が7μm以下の球状粒子を併用し、球状粒子が不定形粒子の隙間を埋め、粉体塗料の溶融の過程で粒子間の空気を塗膜外に排出しやすくすることで、平滑性に優れた塗膜を形成する方法(例えば、特許文献1参照)等が提案されている。
【特許文献1】特開平10−17792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の方法では、球状粒子が微粒子のため静電塗装時に粒子間の反発が起こりやすく、球状粒子の塗着効率が低下し、結果として塗装後の塗膜に所定量の球状粒子を含有させることができないため、十分な塗膜強度を得るには至っていない。本発明の目的は、粉体塗料としたときに、焼き付け硬化後の塗膜強度および表面平滑性等の塗膜の基本特性に優れた粉体塗料用樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、これらの問題点を解決するべく鋭意検討した結果、特定の触媒の存在下で形成された重縮合ポリエステル樹脂を粉体塗料用樹脂として用いることで解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、ポリオール成分(r)とポリカルボン酸成分(s)が、下記一般式(I)または(II)で表される少なくとも1種のチタン含有触媒(a)の存在下に重縮合されてなることを特徴とする粉体塗料用ポリエステル樹脂(A);上記の粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)とエチレン性不飽和基を有する反応性希釈剤(B)を含有することを特徴とする粉体塗料用樹脂組成物;並びに、上記の粉体塗料用樹脂組成物と、硬化触媒、レベリング剤、着色剤、酸化防止剤、および可塑剤からなる群から選ばれる1種以上からなる粉体塗料;である。
Ti(−X)m(−OR)n (I)
O=Ti(−X)p(−OR)q (II)
[式中、RはH、1〜5個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数1〜18のアシル基である。Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基であり、ポリアルカノールアミンの場合、他のOH基が同一のTi原子に直接結合したOH基(OR基のRがHの場合)と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく、他のTi原子に直接結合したOH基(OR基のRがHの場合)と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2〜5である。mは1〜4の整数、nは0〜3の整数、mとnの和は4である。pは1〜2の整数、qは0〜1の整数、pとqの和は2である。mまたはpが2以上の場合、それぞれのXは同一であっても異なっていてもよい。nが2以上の場合、それぞれのRは同一であっても異なっていてもよい。]
【発明の効果】
【0005】
本発明の粉体塗料用樹脂、粉体塗料用樹脂組成物、およびそれらを用いた本発明の粉体塗料は、焼き付け後の硬化塗膜の塗膜強度、表面平滑性および光沢が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳述する。
本発明の粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)は、ポリオール成分(r)とポリカルボン酸成分(s)をチタン含有触媒(a)の存在下に重縮合して得られる。
本発明に用いるチタン含有触媒(a)は、前記一般式(I)または(II)で表される化合物であり、2種以上を併用してもよい。
【0007】
一般式(I)および(II)において、Rは、H(OH基となる)、1〜5個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数1〜18のアシル基である。
炭素数1〜18のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ラウリル基、n−ステアリル基、β−メトキシエチル基、およびβ−エトキシエチル基などが挙げられる。
炭素数1〜18のアシル基の具体例としては、炭素数1〜18の脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族モノカルボン酸または芳香族ポリカルボン酸から、1個のCOOH基中のOHを除いた残基である。脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。脂肪族ポリカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。芳香族モノカルボン酸の具体例としては、安息香酸、サリチル酸、ナフチル酸などが挙げられる。芳香族ポリカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
これらRのうち好ましくは、Hおよび炭素数1〜18のアシル基であり、さらに好ましくは、Hおよび脂肪族モノカルボン酸および芳香族ポリカルボン酸から1個のCOOH基中のOHを除いた残基であり、特に好ましくは、Hおよびアセチル基であり、最も好ましくはHである。
【0008】
Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のH原子を除いた残基であり、窒素原子の数、すなわち、1級、2級、および3級アミノ基の合計数は、通常1〜2個、好ましくは1個である。
上記モノアルカノールアミンとしては、エタノールアミン、およびプロパノールアミンなどが挙げられる。ポリアルカノールアミンとしては、ジアルカノールアミン(ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、およびN−ブチルジエタノールアミンなど)、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミン、およびトリプロパノールアミンなど)、およびテトラアルカノールアミン(N,N,N’,N’−テトラヒドロキシエチルエチレンジアミンなど)が挙げられる。
ポリアルカノールアミンの場合、Ti原子とTi−O−C結合を形成するのに用いられるHを除いた残基となるOH基以外にOH基が1個以上存在し、それが同一のTi原子に直接結合したOH基(OR基のRがHの場合)と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく、他のTi原子に直接結合したOH基(OR基のRがHの場合)と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2〜5である。重合度が6以上の場合、触媒活性が低下するためオリゴマー成分が増え、粉体塗料としたときのブロッキング性悪化の原因になる。
Xとして好ましいものは、モノアルカノールアミン(とくにエタノールアミン)の残基、ジアルカノールアミン(とくにジエタノールアミン)の残基、およびトリアルカノールアミン(とくにトリエタノールアミン)の残基であり、特に好ましいものはトリエタノールアミンの残基である。
【0009】
式(I)中、mは1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。nは0〜3の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。mとnの和は4である。
式(II)中、pは1〜2の整数、qは0〜1の整数であり、pとqの和は2である。 mまたはpが2以上の場合、複数存在するXは同一であっても異なっていてもよいが、すべて同一である方が好ましい。
nが2以上の場合、複数存在するRは同一であっても異なっていてもよいが、すべて同一である方が好ましい。
【0010】
本発明における、上記チタン含有触媒(a)の具体例を以下に挙げる。以下の例では、置換基Xの例示においては、例示した化合物から1個のOH基のH原子を除いた残基を意味し、置換基ORの例示においては、例示した化合物から1個のOH基もしくは1個のCOOH基のH原子を除いた残基を意味する。
一般式(I)で表されるものの具体例としては、チタン・トリエタノールアミン(4)〔チタンにトリエタノールアミンが4個配位した化合物を意味する。以下同様の記載法で表記する。〕、チタン・ジエタノールアミン(4)、チタン・モノエタノールアミン(4)、チタン・トリエタノールアミン(3)・ジエタノールアミン(1)、チタン・トリエタノールアミン(2)・ジエタノールアミン(2)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(3)、チタン・トリエタノールアミン(3)・OH(1)、チタン・ジエタノールアミン(3)・OH(1)、チタン・トリエタノールアミン(2)・ジエタノールアミン(1)・OH(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(2)・OH(1)、チタン・トリエタノールアミン(2)・OH(2)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(2)、チタン・モノエタノールアミン(2)・OH(2)、チタン・モノプロパノールアミン(2)・OH(2)、チタン・N−メチルジエタノールアミン(2)・OH(2)、チタン・N−ブチルジエタノールアミン(2)・OH(2)、チタン・トリエタノールアミン(2)・OH(1)・酢酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(2)・OH(1)・フマル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(2)・OH(1)・テレフタル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(2)・OH(1)・イソフタル酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(1)・酢酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(1)・プロピオン酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(1)・フマル酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(1)・テレフタル酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(1)・イソフタル酸(1)、チタン・モノエタノールアミン(2)・OH(1)・フマル酸(1)、チタン・N−メチルジエタノールアミン(2)・OH(1)・イソフタル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(1)・OH(2)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・フマル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・テレフタル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・イソフタル酸(1)、チタン・モノプロパノールアミン(1)・トリエタノールアミン(1)・OH(1)・フマル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・OH(3)、チタン・トリエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(2)、チタン・トリエタノールアミン(1)・OH(2)・酢酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・OH(1)・フマル酸(2)、チタン・トリエタノールアミン(1)・OH(1)・フタル酸(2)、チタン・トリエタノールアミン(1)・OH(1)・テレフタル酸(2)、チタン・トリエタノールアミン(1)・OH(1)・イソフタル酸(2)、チタン・トリエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(1)・フマル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(1)・テレフタル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(1)・イソフタル酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(2)、チタン・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・フマル酸(2)、チタン・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・テレフタル酸(2)、チタン・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・イソフタル酸(2)、チタン・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(1)・フマル酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(1)・テレフタル酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(1)・イソフタル酸(1)、チタン・モノプロパノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(2)、チタン・N−ブチルジエタノールアミン(1)・OH(1)・マレイン酸(1)・アジピン酸(1)、チタン・N,N,N’,N’−テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン(1)・OH(1)・トリメリット酸(2)、テトラヒドロキシチタンとN,N,N’,N’−テトラヒドロキシエチルエチレンジアミンとの反応生成物、およびこれらの分子内または分子間重縮合物が挙げられる。
分子内または分子間重縮合物の具体例としては、下記一般式(I−1)、(I−2)、または(I−3)で表される少なくとも1種の化合物などが挙げられる。
【0011】
【化4】

【0012】
【化5】

【0013】
【化6】

【0014】
[式中、Q1およびQ6はH、または炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。Q2〜Q5およびQ7〜Q9は炭素数1〜6のアルキレン基である。Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基である。]
【0015】
一般式(II)で表されるものの具体例としては、チタニル・トリエタノールアミン(2)〔チタニル基にトリエタノールアミンが2個配位した化合物を意味する。以下同様の記載法で表記する。〕、チタニル・ジエタノールアミン(2)、チタニル・モノエタノールアミン(2)、チタニル・エタノール(1)・トリエタノールアミン(1)、チタニル・トリエタノールアミン(1)・OH(1)、チタニル・トリエタノールアミン(1)・イソプロパノール(1)、チタニル・トリエタノールアミン(1)・酢酸(1)、チタニル・トリエタノールアミン(1)・ステアリン酸(1)、チタニル・トリエタノールアミン(1)・マレイン酸(1)、チタニル・トリエタノールアミン(1)・フマル酸(1)、チタニル・トリエタノールアミン(1)・メタクリル酸(1)、チタニル・トリエタノールアミン(1)・テレフタル酸(1)、チタニル・トリエタノールアミン(1)・イソフタル酸(1)、チタニル・トリエタノールアミン(1)・ナフチル酸(1)、チタニル・ジエタノールアミン(1)・OH(1)、チタニル・ジエタノールアミン(1)・酢酸(1)、チタニル・ジエタノールアミン(1)・プロピオン酸(1)、チタニル・ジエタノールアミン(1)・フマル酸(1)、チタニル・ジエタノールアミン(1)・テレフタル酸(1)、チタニル・ジエタノールアミン(1)・イソフタル酸(1)、チタニル・モノエタノールアミン(1)・OH(1)、チタニル・モノエタノールアミン(1)・酢酸(1)、およびこれらの分子内または分子間重縮合物が挙げられる。
分子内または分子間重縮合物の具体例としては、下記一般式(II−1)または(II−2)で表される少なくとも1種の化合物などが挙げられる。
【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
[式中、Q1およびQ6はH、または炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。Q2〜Q5は炭素数1〜6のアルキレン基である。]
【0019】
これらのうちで好ましいものは、一般式(I)で表される化合物であり、更に好ましくは、チタン・トリエタノールアミン(2)・OH(2)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(2)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(1)・OH(2)、チタン・トリエタノールアミン(2)・OH(1)・酢酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(1)・酢酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(2)、チタン・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(2)、チタン・トリエタノールアミン(2)・OH(1)・フマル酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(1)・フマル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・フマル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(2)・OH(1)・テレフタル酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(1)・テレフタル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・テレフタル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(2)・OH(1)・イソフタル酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(1)・イソフタル酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(3)・OH(1)、チタン・ジエタノールアミン(3)・OH(1)、チタン・トリエタノールアミン(2)・ジエタノールアミン(1)・OH(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(2)・OH(1)、およびこれらの分子内もしくは分子間縮合物である。
【0020】
特に好ましくは、チタン・トリエタノールアミン(2)・OH(2)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(2)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(1)・OH(2)、チタン・トリエタノールアミン(2)・OH(1)・酢酸(1)、チタン・ジエタノールアミン(2)・OH(1)・酢酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(1)、チタン・トリエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(2)、チタン・ジエタノールアミン(1)・OH(1)・酢酸(2)、およびこれらの分子内もしくは分子間縮合物である。
【0021】
これらのチタン含有触媒(a)は、例えば市販されているチタニウムジアルコキシビス(アルコールアミネート;Dupont製など)を、水存在下で70〜90℃にて反応させることで安定的に得ることができる。また、重縮合物は、更に100℃にて縮合水を減圧留去することで得ることができる。
【0022】
本発明の粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)は、1種以上のポリオール成分(r)と、1種以上のポリカルボン酸成分(s)を重縮合して得られる。
ポリオール成分(r)のうち、2価アルコール(ジオール)としては、炭素数2〜6の脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルカンジオール等)、炭素数7〜36の脂肪族ジオール(1,7−ヘプタンジオール、およびドデカンジオール等);炭素数4〜36のポリアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等);上記炭素数2〜6および7〜36の脂肪族ジオールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド(以下AOと略記する)〔エチレンオキシド(以下EOと略記する)、プロピレンオキシド(以下POと略記する)およびブチレンオキシド等〕付加物(付加モル数2〜30);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等);上記脂環式ジオールの炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールS等)の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)等が挙げられる。
【0023】
ポリオール成分(r)のうち、3〜8価またはそれ以上のアルコールとしては、炭素数3〜36の3〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコール(グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびソルビトール等);上記脂肪族多価アルコールの炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラックおよびクレゾールノボラック等:平均重合度3〜60)の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)等が挙げられる。
【0024】
これらの(r)の中で、好ましくは、炭素数2〜6の脂肪族ジオール、炭素数4〜36のポリアルキレンエーテルグリコール、炭素数6〜36の脂環式ジオール、炭素数6〜36の脂環式ジオールの炭素数2〜4のAO付加物、ビスフェノール類の炭素数2〜4のAO付加物、およびノボラック樹脂の炭素数2〜4のAO付加物であり、さらに好ましくは、炭素数2〜6の脂肪族ジオール、ビスフェノール類の炭素数2〜3のAO(EOおよびPO)付加物、およびノボラック樹脂の炭素数2〜3のAO(EOおよびPO)付加物であり、特に好ましくは、炭素数2〜6の脂肪族ジオール(特に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、およびネオペンチルグリコール)、および/またはビスフェノール類の炭素数2〜3のAO(EOおよびPO)付加物であり、最も好ましくは、塗膜の光沢の点から、炭素数2〜6の脂肪族ジオール(特に、1,2−プロピレングリコール)を60〜100モル%(とくに80〜100モル%)含有するものである。
【0025】
ポリカルボン酸成分(s)のうち脂肪族(脂環式を含む)ジカルボン酸としては、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸、およびセバシン酸等)、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、およびグルタコン酸等)、などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸等)などが挙げられる。
【0026】
ポリカルボン酸成分(s)のうち、3〜6価またはそれ以上の脂肪族(脂環式を含む)ポリカルボン酸としては、炭素数6〜36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)、不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(以下Mnと記載、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による):450〜10000](α−オレフィン/マレイン酸共重合体等)等が挙げられる。
ポリカルボン酸成分(s)のうち、3〜6価またはそれ以上の芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、およびピロメリット酸等)、不飽和カルボン酸のビニル重合体[Mn:450〜10000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、およびスチレン/フマル酸共重合体等)等が挙げられる。
ポリカルボン酸成分(s)として、これらのポリカルボン酸の、無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)を用いてもよい。
【0027】
これらのポリカルボン酸成分(s)のうち好ましいものは、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、および炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸であり、さらに好ましくは、アジピン酸、炭素数16〜50のアルケニルコハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、およびこれらの併用であり、とくに好ましくは、アジピン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、およびこれらの併用である。これらの酸の無水物や低級アルキルエステルも、同様に好ましい。
【0028】
また、ポリカルボン酸成分(s)としては、60〜100モル%が芳香族ポリカルボン酸、並びにその酸無水物および低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜4)エステルからなる群から群から選ばれる1種以上であり、必要により脂肪族ポリカルボン酸を含有するものが好ましい。芳香族ポリカルボン酸、並びにその酸無水物および低級アルキルエステルの1種以上の含有量の下限は、さらに好ましくは70モル%、とくに好ましくは80モル%であり、上限は、さらに好ましくは99モル%、とくに好ましくは98モル%である。芳香族ポリカルボン酸が60モル%以上含有されていることで、塗膜強度が上がり、低温定着性がさらに向上する。
【0029】
本発明において粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)は、通常のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、チタン含有触媒(a)の存在下、反応温度が好ましくは150〜280℃、さらに好ましくは160〜240℃、とくに好ましくは170〜230℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、とくに好ましくは2〜40時間である。反応末期の反応速度を向上させるために減圧する(例えば1〜50mmHg)ことも有効である。
(a)の添加量としては、重合活性などの観点から、得られる重縮合体に対して、好ましくは0.0001〜0.8重量%、さらに好ましくは0.0002〜0.6重量%、とくに好ましくは0.0015〜0.55重量%である。
また、(a)の触媒効果を損なわない範囲で他のエステル化触媒を併用することもできる。他のエステル化触媒の例としては、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、(a)以外のチタン含有触媒(例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタニルカリウム)、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、および酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの他の触媒の添加量としては、得られる重合体に対して、0〜0.6重量%が好ましい。添加された全触媒中の(a)の含有率は、50〜100重量%が好ましい。
【0030】
本発明における粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)のピークトップ分子量(以下Mpと記載)は、粉体塗料の保存安定性と塗料の硬化塗膜の良好な平滑性の観点から、好ましくは2000〜12000、さらに好ましくは2500〜10000、特に好ましくは3000〜9000である。
また、数平均分子量(Mn)は、同様の観点から、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは1200〜9500、特に好ましくは1500〜9000である。
【0031】
上記および以下においてポリエステル樹脂の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分を用いてGPCにより以下の条件で測定される。
装置 : 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム : TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量: 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(Mw 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
得られたクロマトグラム上最大のピーク高さを示す分子量をピークトップ分子量(Mp)と称する。また、粉体塗料用樹脂粒子の分子量の測定は、粉体塗料用樹脂中の任意の粒子1粒を取り出し、これをTHFに溶解したものを試料溶液とした。この測定を10粒子について測定し、算術平均した。
【0032】
本発明における粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)のガラス転移点(以下Tgと略記)は、粉体塗料の保存安定性と塗料の硬化塗膜の良好な平滑性の観点から、好ましくは25〜120℃、さらに好ましくは30〜100℃、特に好ましくは35〜80℃、最も好ましくは40〜70℃である。
なお、上記および以下において、Tgはセイコー電子工業(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
【0033】
本発明の粉体塗料用樹脂組成物は、粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)とエチレン性不飽和基を有する反応性希釈剤(B)を含有する。
本発明において、エチレン性不飽和基を有する反応性希釈剤(B)が有するエチレン性不飽和基の具体例としては、ビニル基[(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基など]、および(メタ)アリル基などがあげられる。
【0034】
上記反応性希釈剤(B)としては、ポリオールのモノもしくはポリ(メタ)アクリレート、ビニルエーテル化合物、(メタ)アリル化合物等があげられる。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタアクリレートを意味し、以下同様の記載法を用いる。
ポリオールのモノもしくはポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、1分子中に(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物[炭素数2〜12の脂肪族ポリオールのモノ(メタ)アクリレート〔エチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート等〕、炭素数7〜30の芳香族ポリオールのモノ(メタ)アクリレート〔2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等〕など];1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物[ビスフェノール類のAO付加物のジ(メタ)アクリレート〔ビスフェノールAの炭素数2〜4のAO付加物(AOの付加モル数1〜6、以下の(B)として用いるAO付加物についても同じ)のジ(メタ)アクリレート等〕、炭素数2〜20の2〜8価もしくはそれ以上のポリオールまたはその炭素数2〜4のAO付加物のジ(メタ)アクリレート〔エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールのAO付加物、またはポリアルキレンキサイド(ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)のジ(メタ)アクリレート等〕など];1分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物[炭素数3〜20の3〜8価もしくはそれ以上のポリオールまたはその炭素数2〜4のAO付加物のポリアクリレート〔トリメチロールプロパン、グリセリン、またはそれらのAO付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールまたはそのAO付加物のトリ−、またはテトラ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールまたはそのAO付加物のペンタ−、ヘキサ−、またはそれ以上の(メタ)アクリレート等〕など];およびこれらの2種以上の混合物があげられる。
【0035】
ビニルエーテル化合物の具体例としては、1分子中にビニルエーテル基を1個有する化合物[アルキル基の炭素数が1〜18のアルキルビニルエーテル〔ドデシルビニルエーテル等〕、アルキル基の炭素数が2〜18のヒドロキシアルキルビニルエーテル〔ヒドロキシブチルビニルエーテル等〕など];1分子中にビニルエーテル基を2個有する化合物[ビスフェノール類の炭素数2〜4のAO付加物のジビニルエーテル〔ビスフェノールAの炭素数2〜4のAO付加物のジビニルエーテル等〕、炭素数2〜20の2〜8価もしくはそれ以上のポリオールまたはその炭素数2〜4のAO付加物のジビニルエーテル〔ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、それらのAO付加物、またはポリアルキレンキサイドのジビニルエーテル等〕など];およびこれらの2種以上の混合物があげられる。
【0036】
(メタ)アリル化合物の具体例としては、1分子中に(メタ)アリル基を1個有する化合物[炭素数2〜12の脂肪族ポリオールのモノ(メタ)アリルエーテル〔エチレングリコールのモノ(メタ)アリルエーテル等〕など];1分子中に(メタ)アリル基を2個有する化合物[ビスフェノール類のAO付加物のジ(メタ)アリルエーテル〔ビスフェノールAの炭素数2〜4のAO付加物のジ(メタ)アリルエーテル等〕、炭素数2〜20の2〜8価もしくはそれ以上のポリオールまたはその炭素数2〜4のAO付加物のジ(メタ)アリルエーテル〔エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールのAO付加物、またはポリアルキレンキサイド(ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)のジ(メタ)アリルエーテル等〕、ポリカルボン酸(前記ポリカルボン酸成分(s)として例示したもの)のジアリルエステル〔ジアリルフタレート等〕など];1分子中に(メタ)アリル基を3個以上有する化合物[炭素数3〜20の3〜8価もしくはそれ以上のポリオールまたはその炭素数2〜4のAO付加物のポリ(メタ)アリルエーテル〔トリメチロールプロパン、グリセリン、またはそれらのAO付加物のトリ(メタ)アリルエーテル、ペンタエリスリトールまたはそのAO付加物のトリ−、またはテトラアリルエーテル、ポリペンタエリスリトールまたはそのAO付加物のペンタ−、ヘキサ−、またはそれ以上の(メタ)アリルエーテル等〕など];およびこれらの2種以上の混合物があげられる。
【0037】
これらのうち好ましいものは、ポリオールのモノもしくはポリ(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくは、ポリオールのポリ(メタ)アクリレートであり、特に好ましくは、ビスフェノールAのEOもしくはPO付加物のジアクリレート、ネオペンチルグリコールのPO付加物のジアクリレート、トリメチロールプロパンのEOもしくはPO付加物のジアクレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびポリプロピレングリコールジアクリレートである。
【0038】
本発明の粉体塗料用樹脂組成物において、塗膜の強度の観点から、粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)と反応性希釈剤(B)以外に硬化剤(C)を併用し、(A)が(C)の官能基と反応性の官能基を有するのが好ましい。
【0039】
粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)中に反応性官能基(カルボキシル基、水酸基等)を導入する方法としては、ポリカルボン酸成分(s)とポリオール成分(r)との反応における当量比(COOH/OH)を調整する方法等が挙げられる。
カルボキシル基を導入する場合の該当量比は、塗膜の耐候性および樹脂の顔料分散性の観点から、好ましくは1〜10、さらに好ましくは1.1〜3である。また、水酸基を導入する場合の該当量比は、塗膜の耐候性および樹脂の顔料分散性の観点から、好ましくは0.2〜1、さらに好ましくは0.7〜0.9である。
上記ポリエステル樹脂の製造方法としては、ポリカルボン酸とポリオールとの脱水重縮合反応、ポリカルボン酸のエステル形成性誘導体とポリオールとのエステル交換反応などの通常のポリエステル重合方法が挙げられる。
【0040】
硬化剤(C)としては、カルボキシル基を1分子中に2個以上有するもの(C1)、エポキシ基を1分子中に2個以上有するもの(C2)、アミノ基を1分子中に2個以上有するもの(C3)、水酸基を1分子中に2個以上有するもの(C4)、イソシアネート基を1分子中に2個以上有するもの(C5)、加水分解性シリル基を1分子中に2個以上有するもの(C6)、ブロック化アミノ基を1分子中に2個以上有するもの(C7)、ブロック化イソシアネート基を1分子中に2個以上有するもの(C8)およびこれらの混合物などが挙げられる。具体例としては次のものが挙げられる。
【0041】
(C1):前記ポリエステル樹脂においてポリカルボン酸成分(s)として例示したものなど
【0042】
(C2):エポキシ基を2個以上有するものとしては、芳香族、複素環、脂環式および脂肪族ポリエポキシドが挙げられる。
【0043】
芳香族ポリエポキドとしては、芳香族ポリ(2価〜4価またはそれ以上)カルボン酸のグリシジルエステル、多価(2価〜4価またはそれ以上)フェノールもしくはそのAO(炭素数2〜4)2〜40モル付加物のグリシジルエーテル、多価フェノールグリシジルエステル、グリシジル芳香族ポリアミン及びアミノフェノールのグリシジル化物等が用いられる。
芳香族ポリカルボン酸のグリシジルエステルとしては、炭素数14〜20、例えばフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸ジグリシジルエステルが挙げられる。
多価フェノールグリシジルエーテルとしては、例えば、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、フェノールまたはクレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル等が挙げられる。
多価フェノールグリシジルエステルとしては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル及びテレフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
グリシジル芳香族ポリアミンとしては、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン及びN,N,N’,N’−テトラグリシジルジフェニルメタンジアミン等が挙げられる。
さらに、エポキシドとして、p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、トリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートとグリシドールの付加反応によって得られるジグリシジルウレタン化合物、およびビスフェノールAのAO(EOまたはPO2〜20モル)付加物のジグリシジルエーテル体(例えば、ビスフェノールA・EO4モル付加物のジグリシジルエーテル体等)も使用できる。
【0044】
複素環ポリエポキドとしては、トリスグリシジルメラミンが挙げられる。
脂環族ポリエポキシドとしては、例えば、ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエール、ダイマー酸ジグリシジルエステル及び芳香族ポリエポキシドの核水添化物(例えば、ビスフェノールFジグリシジルエーテルの水添加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテの水添加物等が挙げられる。
【0045】
脂肪族ポリエポキシとしては、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル、多価脂肪酸のポリグリシジルエステル、およびグリシジル脂肪族アミン等が用いられる。
脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルおよびポリグリセロールンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
多価脂肪酸のポリグリシジルエステルとしては、例えば、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルアジペート等が挙げられる。
グリシジル脂肪族アミンとしては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0046】
(C3):脂肪族アミン(炭素数1〜22の飽和または不飽和1級もしくは2級アミン)、脂環式アミン(炭素数5〜22の飽和または不飽和1級もしくは2級アミン)、芳香(脂肪)族アミン(炭素数6〜30の1級もしくは2級アミン)、およびこれらの混合物が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、ジアミン(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミンなど)、3価〜5価またはそれ以上のポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなど)が挙げられる。
脂環式アミンとしては、ジアミン(1,4−ヘキシレンジアミンなど)、3価〜5価またはそれ以上のポリアミンが挙げられる。
芳香(脂肪)族アミンとしては、ジアミン(1,3−および/または1,4−フェニレンジアミン、2,4−および/または2,6−トリレンジアミン、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジアミンなど)、3価〜5価またはそれ以上のポリアミンが挙げられる。
【0047】
(C4):多価アルコール[炭素数2〜30の多価アルコール、該多価アルコールのAO(炭素数2〜20、例えばEO、PO、1,2−、1,3−、2,3−もしくは1,4−ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン)付加物、1価フェノール化合物および2〜6価の多価フェノール化合物のAO付加物、燐系ポリオールおよびこれらの混合物)]、水酸基を両末端に持つポリエステルポリオール[縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールなど。縮合系ポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸(例えば、アジピン酸)とジオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール)との脱水縮合反応で得られるもの。]、アクリルポリオール[水酸基を有するビニルモノマー(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート)と他のビニルモノマー(例えば、メチル(メタ)アクリレート、スチレン、ブチル(メタ)アクリレート)を共重合したものが挙げられる。アクリルポリオールの製造方法としては、例えば、水酸基を有するアゾ系ラジカル重合開始剤と水酸基を有する連鎖移動剤共存下にラジカル重合を行う方法、水酸基含有モノマーを(共)重合させる方法などが挙げられる。]、ポリエーテルポリオール[開始剤〔例えば、水、低分子ポリオール(ジオール、トリオールなど)〕にAO(例えば、EO、PO、THF)を付加重合させて得られるものが挙げられる。]など
【0048】
(C5):2官能以上のポリイソシアネート[(i)炭素数(NCO基中の炭素を除く)2〜12の脂肪族ポリイソシアネート[エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等の2官能イソシアネート等];(ii)炭素数(NCO基中の炭素を除く)4〜15の脂環式ポリイソシアネート[イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート等の2官能イソシアネート等];(iii)炭素数(NCO基中の炭素を除く)7〜12の芳香脂肪族ポリイソシアネート[キシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネート等];(iv)芳香族ポリイソシアネート[1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート等の2官能イソシアネート、粗製TDI、粗製MDIなどの2官能またはそれ以上のイソシアネート];(v)上記イソシアネートの変性物〔変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDI)、ウレタン変性TDI、ビューレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI、イソシアヌレート変性IPDIなど〕および(i)〜(v)の2種以上の混合物が挙げられる。]、並びに上記(C3)および/または(C4)と過剰当量の前記2官能以上のポリイソシアネートとの反応物
【0049】
(C6):炭素数1〜8のアルコキシ基を有するジ−、トリ−およびテトラアルコキシシラン並びにそれらの縮合物
【0050】
(C7):(C3)のブロック化物
[ブロック化剤としてはケトン(炭素数3〜8、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、酸無水物(炭素数4〜10、例えば無水フタル酸)などが挙げられる。]
【0051】
(C8):(C5)のブロック化物
[ブロック化剤としては、前記のもの、および2級アミン(炭素数4〜20、例えばジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン)、塩基性窒素含有化合物(炭素数4〜20、例えば、N,N−ジエチルヒドロキシアミン、2−ヒドロキシピリジン、ピリジンN−オキシド、2−メルカプトピリジン)、活性メチレン基含有化合物(炭素数5〜15、例えばマロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン)等が挙げられる。
なお、ブロック化物にはイソシアネート基が上記ブロック化剤でブロックされたものの他に、ジイソシアネートが多量化したオリゴマー(ウレトジオン型ブロック化イソシアネート基含有化合物)、例えばHDI、TDI、またはIPDIのオリゴマー(重合度2〜15)およびこれらのオリゴマーの末端イソシアネート基と前記のブロック化剤などを反応させた構造を有する化合物なども含まれる。]
【0052】
上記硬化剤(C)のうち反応性の観点から好ましいのは(C1)、(C2)、(C5)、(C6)および(C8)であり、さらに好ましいのはドデカン二酸、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメトキシシランおよびε−カプロラクタムブロック化イソホロンジイソシアネートもしくはその2〜3量体である。
【0053】
粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)の反応性官能基/硬化剤(C)の反応性官能基の組み合わせのうち、得られる塗膜強度の観点から好ましいのは、カルボキシル基/エポキシ基、および水酸基/ブロック化イソシアネート基の組み合わせである。
【0054】
硬化剤(C)を用いる場合、ポリエステル樹脂の反応性官能基と硬化剤(C)の反応性官能基の当量比は、塗膜の経時安定性の観点から、好ましくは(1/0.7)〜(1/1.4)、さらに好ましくは(1/0.8)〜(1/1.2)、特に好ましくは(1/0.9)〜(1/1.1)である。
【0055】
粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)と硬化剤(C)の反応においては硬化触媒を用いてもよく、該硬化触媒としては、(A)と(C)の各反応性官能基の組み合わせが、例えば、水酸基/(ブロック化)イソシアネート基の場合は、ウレタン化反応に通常用いられる触媒〔金属触媒[スズ系(ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエートなど)、鉛系(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛など)など]、アミン系触媒[トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミンなど]など〕、カルボキシル基/エポキシ基の場合は、酸(三フッ化ホウ素など)、塩基(アミン、アルカリ土類金属水酸化物など)、塩(第4級オニウム塩など)、有機金属触媒(塩化第一スズ、テトラブチルジルコネートなど)など、水酸基/アミノ基の場合は、有機酸(パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸など)、無機酸(リン酸など)、などが挙げられる。
硬化触媒を使用する場合、その使用量は、硬化塗膜の平滑性の観点から好ましくは、塗料の全重量に基づいて1重量%以下、さらに好ましくは0.005〜0.8重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0056】
粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)と反応性希釈剤(B)と硬化剤(C)の重量比〔(A)、(B)、(C)の合計に対する重量%〕は、好ましくは(A)/(B)/(C)=[50〜98]/[2〜50]/[0〜30]であり、さらに好ましくは(A)/(B)/(C)=[60〜95]/[4〜35]/[1〜25]であり、特に好ましくは(A)/(B)/(C)=[65〜90]/[5〜30]/[2〜20]である。この範囲内であれば、本発明の効果(塗膜の強度および表面平滑性)が、よりよく得られる。
【0057】
本発明の粉体塗料用樹脂組成物は、そのままでも塗料として用いることができるが、必要により、本発明の効果を阻害しない範囲で添加剤を加えて用いる。
本発明の粉体塗料は、本発明の粉体塗料用樹脂組成物に、レベリング剤、着色剤、酸化防止剤、および可塑剤から選ばれる1種以上の添加剤など、塗料の分野において通常用いられる添加剤を加えることにより得られる。
【0058】
レベリング剤としては、オレフィン系重合体(重量平均分子量〔以下Mwと記載〕500〜5,000、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン)、オレフィン系共重合体[Mw500〜20,000、例えばエチレン−アクリル(アクリロニトリルなど)共重合体、エチレン−メタクリル共重合体]、(メタ)アクリル共重合体〔Mw1,000〜20,000、例えば商品名:モダフロー[ソルーシア(株)製]〕、ポリビニルピロリドン(Mw1,000〜20,000)、シリコーン系レベリング剤[Mw1,000〜20,000、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルシロキサン、有機(カルボキシル、エーテル、エポキシ等)変性ポリジメチルシロキサン、フッ素化シリコーン]、低分子化合物(ベンゾインなど)およびこれらの混合物などが挙げられる。
レベリング剤の使用量は、粉体塗料の全重量に基づいて、好ましくは5%以下、さらに好ましくは0.3〜3%である。
【0059】
着色剤としては、無機顔料、有機顔料、染料などが挙げられる。
無機顔料としては、白色顔料(酸化チタン、リトポン、鉛白、亜鉛華など);コバルト化合物(オーレオリン、コバルトグリーン、セルリアンブルー、コバルトブルー、コバルトバイオレットなど);鉄化合物(酸化鉄、紺青など);クロム化合物(酸化クロム、クロム酸鉛、クロム酸バリウムなど);硫化物(硫化カドミウム、カドミウムイエロー、ウルトラマリンなど)およびこれらの混合物などが挙げられる。
有機顔料としてはアゾレーキ系、モノアゾ系、ジスアゾ系、キレートアゾ系等のアゾ顔料;ベンジイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、チオインジゴ系、ペリレン系、キノフタロン系、アンスラキノン系等の多環式顔料;およびこれらの混合物が挙げられる。
染料としてはアゾ系、アントラキノン系、インジゴイド系、硫化系、トリフェニルメタン系、ピラゾロン系、スチルベン系、ジフェニルメタン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系、アニリン系およびこれらの混合物などが挙げられる。
着色剤の使用量は種類によって異なるが、粉体塗料の全重量に基づいて、好ましくは30%以下、さらに好ましくは5〜25%である。
【0060】
酸化防止剤としては、フェノール系〔2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタン[商品名:イルガノックス1010、チバガイギー(株)製]など〕、硫黄系[ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート(DLTDP)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート(DSTDP)など]、リン系[トリフェニルホスファイト(TPP)、トリイソデシルホスファイト(TDP)など]、アミン系[オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミンなど]およびこれらの混合物などが挙げられる。
酸化防止剤の使用量は塗料の全重量に基づいて、好ましくは5%以下、さらに好ましくは0.1〜2%である。
【0061】
可塑剤としては、芳香族カルボン酸エステル系[フタル酸エステル(ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなど)など]、脂肪族モノカルボン酸エステル系[メチルアセチルリシノレート、トリエチレングリコールジベンゾエートなど]、脂肪族ジカルボン酸エステル系[ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、アジピン酸−プロピレングリコール系ポリエステルなど]、脂肪族トリカルボン酸エステル系[クエン酸エステル類(クエン酸トリエチルなど)など]、リン酸トリエステル系[トリフェニルホスフェートなど]、およびこれらの混合物などが挙げられる。
可塑剤の使用量は粉体塗料の全重量に基づいて、好ましくは20%以下、さらに好ましくは5〜15%である。
【0062】
粉体塗料に配合される上記添加剤の合計重量は、粉体塗料中に、好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは0.1〜60重量、特に好ましくは0.3〜50重量%である。
【0063】
本発明における粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)とエチレン性不飽和基を有する反応性希釈剤(B)を混合する方法は特に限定されることはなく、例えばポリエステル樹脂(A)の粉体に、エチレン性不飽和基を有する反応性希釈剤(B)を添加し、必要により上記の添加剤を加え、さらに必要により硬化剤(C)、硬化触媒等を添加して混合物とし、該混合物をヘンシェルミキサーなどでドライブレンドする方法、あるいは加熱溶融状態で混練する方法、水または溶剤(トルエン、キシレンなど)存在下で上記成分を混合後、脱水または脱溶剤する方法などが挙げられる。
ドライブレンドする方法としては特に限定されないが、容器回転式、容器固定式[機械撹拌式(ヘンシェルミキサーなど)、気流撹拌式および重力式など]が挙げられる。これらのうち小容量から大容量まで対応でき、かつ良好な混合効率の観点から好ましいのは機械撹拌式である。
【0064】
また、上記の添加剤を添加する方法としては、樹脂を合成する際に混合する方法、樹脂を合成した後溶融下に添加する溶融混練法、樹脂を一旦溶剤に溶解し、均一化後に添加剤を混合した後溶剤を留去する方法、粉体樹脂を作成した後、添加して含浸させる方法などが挙げられる。これらのうち樹脂組成に悪影響を与えず、簡便に添加できるとの観点から好ましいのは、粉体樹脂を作成した後に添加し含浸させる方法である。
【0065】
溶融混練法では加熱ロール、エクストルーダ、2軸押し出し機等の溶融混練機を用いて、粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)の軟化温度以上で、硬化剤(C)および硬化触媒を添加する場合は、触媒作用発現温度より少なくとも10℃低い温度範囲(好ましくは60〜160℃、さらに好ましくは70〜130℃、とくに好ましくは90〜120℃)で行われる。
【実施例】
【0066】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
[チタン含有触媒(a1)の合成]
冷却管、撹拌機及び液中バブリング可能な窒素導入管の付いた反応槽中に、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)1617部とイオン交換水126部を入れ、窒素にて液中バブリング下、90℃まで徐々に昇温し、90℃で4時間反応(加水分解)させることで、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)を得た。さらに、100℃にて、2時間減圧下で反応(脱水縮合)させることで、分子内重縮合物(a1)を得た。
本発明に用いる他のチタン含有触媒(a)についても、同様の合成法にて得ることができる。
【0068】
実施例に用いたチタン含有触媒(a1)〜(a9)の組成を下記に示す。
【0069】
【化9】

【0070】
【化10】

【0071】
【化11】

【0072】
【化12】

【0073】
【化13】

【0074】
【化14】

【0075】
【化15】

【0076】
【化16】

【0077】
【化17】

【0078】
<樹脂製造例1>
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、1,2−プロピレングリコール(以下、プロピレングリコールと記載)1520部、ネオペンチルグリコール156部、テレフタル酸1411部、アジピン酸73部及びチタン含有触媒(a1)6部を仕込み、230℃、0.4〜0.5MPaの加圧下に水を留去しながら3時間反応させた。次いで常圧で180℃まで冷却した後、230℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、水及びプロピレングリコールを留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下に水及びプロピレングリコールを留去しながら6時間反応させ取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A1)とする。ポリエステル樹脂(A1)のTgは63℃、Mnは3800、Mpは7500、酸価は2、水酸基価は26であった。
【0079】
<樹脂製造例2>
重縮合触媒をチタン含有触媒(a2)に代える以外は樹脂製造例1の(A1)と同様に反応させ、室温まで冷却後粉砕してポリエステル樹脂(A2)を得た。ポリエステル樹脂(A2)のTgは63℃、Mnは3700、Mpは7700、酸価は1、水酸基価は26であった。
【0080】
<樹脂製造例3>
重縮合触媒をチタン含有触媒(a3)に代える以外は樹脂製造例1の(A1)と同様に反応させ、室温まで冷却後粉砕してポリエステル樹脂(A3)を得た。ポリエステル樹脂(A3)のTgは64℃、Mnは4100、Mpは7600、酸価は3、水酸基価は27であった。
【0081】
<樹脂製造例4>
重縮合触媒をチタン含有触媒(a4)に代える以外は樹脂製造例1の(A1)と同様に反応させ、室温まで冷却後粉砕してポリエステル樹脂(A4)を得た。ポリエステル樹脂(A4)のTgは63℃、Mnは3800、Mpは7700、酸価は3、水酸基価は25であった。
【0082】
<樹脂製造例5>
重縮合触媒をチタン含有触媒(a5)に代える以外は樹脂製造例1の(A1)と同様に反応させ、室温まで冷却後粉砕してポリエステル樹脂(A5)を得た。ポリエステル樹脂(A5)のTgは64℃、Mnは4000、Mpは7500、酸価は2、水酸基価は28であった。
【0083】
<樹脂製造例6>
重縮合触媒をチタン含有触媒(a6)に代える以外は樹脂製造例1の(A1)と同様に反応させ、室温まで冷却後粉砕してポリエステル樹脂(A6)を得た。ポリエステル樹脂(A6)のTgは63℃、Mnは3700、Mpは7400、酸価は3、水酸基価は25であった。
【0084】
<樹脂製造例7>
重縮合触媒をチタン含有触媒(a7)に代える以外は樹脂製造例1の(A1)と同様に反応させ、室温まで冷却後粉砕してポリエステル樹脂(A7)を得た。ポリエステル樹脂(A7)のTgは63℃、Mnは3800、Mpは7500、酸価は2、水酸基価は28であった。
【0085】
<樹脂製造例8>
重縮合触媒をチタン含有触媒(a8)に代える以外は樹脂製造例1の(A1)と同様に反応させ、室温まで冷却後粉砕してポリエステル樹脂(A8)を得た。ポリエステル樹脂(A8)のTgは63℃、Mnは3900、Mpは7700、酸価は3、水酸基価は27であった。
【0086】
<樹脂製造例9>
重縮合触媒をチタン含有触媒(a9)に代える以外は樹脂製造例1の(A1)と同様に反応させ、室温まで冷却後粉砕してポリエステル樹脂(A9)を得た。ポリエステル樹脂(A9)のTgは63℃、Mnは4100、Mpは7500、酸価は2、水酸基価は27であった。
【0087】
<樹脂製造例10>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのPO2モル付加物1032部、ビスフェノールAのPO3モル付加物402部、テレフタル酸581部、イソフタル酸65部、無水マレイン酸10部及びチタン含有触媒(a1)6部を仕込み、220℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が3になった時点で取り出し、室温まで冷却後粉砕してポリエステル樹脂(A10)を得た。ポリエステル樹脂(A10)のTgは55℃、Mnは3100、Mpは6300、酸価は3、水酸基価は30であった。
【0088】
<樹脂製造例11>
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、プロピレングリコール760部、ビスフェノールAのPO2モル付加物688部、ビスフェノールAのPO3モル付加物241部、テレフタル酸664部及びチタン含有触媒(a1)6部を仕込み、230℃、0.4〜0.5MPaの加圧下に水を留去しながら3時間反応させた。次いで常圧で180℃まで冷却した後、230℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、水及びプロピレングリコールを留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下に水及びプロピレングリコールを留去しながら8時間反応させ取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A11)とする。ポリエステル樹脂(A11)のTgは63℃、Mnは3400、Mpは7200、酸価は2、水酸基価は25であった。
【0089】
<比較樹脂製造例1>
重縮合触媒をチタニウムテトラブトキシドに代える以外は樹脂製造例1の(A1)と同様に反応させた。触媒失活のために反応が途中で停止してしまい、生成水及びプロピレングリコールが留出しなくなる問題が生じたため、反応途中でチタンテトラブトキシド3部を3回追加し、ポリエステル樹脂(A’1)を得た。ポリエステル樹脂(A’1)のTgは58℃、Mnは3200、Mpは6400、酸価は6、水酸基価は30であった。
【0090】
<比較樹脂製造例2>
重縮合触媒をチタニウムテトラブトキシドに代える以外は樹脂製造例10の(A10)と同様に反応させた。触媒失活のために反応が途中で停止してしまい、生成水が留出しなくなる問題が生じたため、反応途中でチタンテトラブトキシド3部を4回追加し、ポリエステル樹脂(A’2)を得た。ポリエステル樹脂(A’2)のTgは50℃、Mnは2700、Mpは5600、酸価は6、水酸基価は35であった。
【0091】
<実施例1>
ポリエステル樹脂(A1)70部に対し、反応性希釈剤(B)としてDA−600〔ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[三洋化成工業(株)製]〕を18部、硬化剤(C)としてIPDI−B1530〔ε−カプロラクタム・ブロックド・イソシアネート[ヒュルス(株)製)]〕を10部、ベンゾイン1部、モダフロー1部加え、ヘンシェルミキサーにて粉体混合後、二軸押出機を用いて、100℃の温度条件下溶融混練し、冷却後、粒径20〜150μmに粉砕しクリア粉体塗料(D1)を得た。
粉体塗料(D1)を市販のコロナ帯電方式スプレーガンを用いて塗布時の膜厚が40〜60μmになるようにリン酸亜鉛処理鋼板標準板[日本テストパネル(株)製]に静電塗装し、160℃で40分間焼き付けを行って試験板(1)を得た。
【0092】
<実施例2〜11>
ポリエステル樹脂(A1)をポリエステル樹脂(A2)〜(A11)に代える以外は実施例1と同様にして、クリア粉体塗料(D2)〜(D11)を得た。
粉体塗料(D2)〜(D11)を実施例1と同じ方法で焼き付けを行って試験板(2)〜(11)を得た。
【0093】
<実施例12>
ポリエステル樹脂(A1)88部に対し、反応性希釈剤(B)としてDA−600〔ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[三洋化成工業(株)製]〕を10部、ベンゾイン1部、モダフロー1部加え、ヘンシェルミキサーにて粉体混合後、二軸押出機を用いて、100℃の温度条件下溶融混練し、冷却後、粒径20〜150μmに粉砕しクリア粉体塗料(D12)を得た。
粉体塗料(D12)を実施例1と同じ方法で焼き付けを行って試験板(12)を得た。
【0094】
<実施例13>
ポリエステル樹脂(A1)80部に対し、反応性希釈剤(B)としてネオマーPA−305〔ポリプロピレングリコールジアクリレート[三洋化成工業(株)製]〕を13部、硬化剤(C)としてIPDI−B1530〔ε−カプロラクタム・ブロックド・イソシアネート[ヒュルス(株)製)]〕を5部、ベンゾイン1部、モダフロー1部加え、ヘンシェルミキサーにて粉体混合後、二軸押出機を用いて、100℃の温度条件下溶融混練し、冷却後、粒径20〜150μmに粉砕しクリア粉体塗料(D13)を得た。
粉体塗料(D13)を実施例1と同じ方法で焼き付けを行って試験板(13)を得た。
【0095】
<実施例14>
ポリエステル樹脂(A1)60部に対し、反応性希釈剤(B)としてDA−600〔ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[三洋化成工業(株)製]〕を25部、硬化剤(C)として1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを8部とIPDI−B1530〔ε−カプロラクタム・ブロックド・イソシアネート[ヒュルス(株)製)]〕を5部、ベンゾイン1部、モダフロー1部加え、ヘンシェルミキサーにて粉体混合後、二軸押出機を用いて、100℃の温度条件下溶融混練し、冷却後、粒径20〜150μmに粉砕しクリア粉体塗料(D14)を得た。
粉体塗料(D14)を実施例1と同じ方法で焼き付けを行って試験板(14)を得た。
【0096】
<比較例1〜2>
ポリエステル樹脂(A1)をポリエステル樹脂(A’1)〜(A’2)に代える以外は実施例1と同様にして、比較クリア粉体塗料(D’1)〜(D’2)を得た。
粉体塗料(D’1)〜(D’2)を実施例1と同じ方法で焼き付けを行って、比較試験板(1)〜(2)を得た。
【0097】
評価方法
1)鉛筆硬度
JIS−K−5600−5−4に準拠した。この評価ではF以上が実用可能範囲である。
【0098】
2)平滑性
試験板を十分に明るい部屋にて斜め30〜60度の角度より観測し、塗面状態を目視判定した。
○:表面が十分に平滑であり、オレンジピールなどが確認できない
△:平滑ではあるが、オレンジピールが確認できる
×:クレーター、およびオレンジピールが確認できる
【0099】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の粉体塗料用ポリエステル樹脂および粉体塗料用樹脂組成物は、粉体塗料としたときに、焼き付け後の硬化塗膜の塗膜強度および表面平滑性が良好なことから、耐久性と仕上がり性に優れる塗膜を得ることができ、粉体塗料用として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(r)とポリカルボン酸成分(s)が、下記一般式(I)または(II)で表される少なくとも1種のチタン含有触媒(a)の存在下に重縮合されてなることを特徴とする粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)。
Ti(−X)m(−OR)n (I)
O=Ti(−X)p(−OR)q (II)
[式中、RはH、1〜5個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数1〜18のアシル基である。Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基であり、ポリアルカノールアミンの場合、他のOH基が同一のTi原子に直接結合したOH基(OR基のRがHの場合)と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく、他のTi原子に直接結合したOH基(OR基のRがHの場合)と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2〜5である。mは1〜4の整数、nは0〜3の整数、mとnの和は4である。pは1〜2の整数、qは0〜1の整数、pとqの和は2である。mまたはpが2以上の場合、それぞれのXは同一であっても異なっていてもよい。nが2以上の場合、それぞれのRは同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
式中のXが、モノ、ジもしくはトリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基である請求項1記載の粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)。
【請求項3】
式中のmまたはpが2以上であり、Xがすべて同一の基である請求項1または2記載の粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)。
【請求項4】
式中のnが2以上であり、Rがすべて同一の基である請求項1〜3のいずれか記載の粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)。
【請求項5】
チタン含有触媒(a)が、下記一般式(I−1)〜(I−3)から選ばれる少なくとも1種の触媒である請求項1〜4のいずれか記載の粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)。
【化1】

【化2】

【化3】

[式中、Q1およびQ6はH、または炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。Q2〜Q5およびQ7〜Q9は炭素数1〜6のアルキレン基である。Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基である。]
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)とエチレン性不飽和基を有する反応性希釈剤(B)を含有することを特徴とする粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項7】
反応性希釈剤(B)が、ポリオールのモノもしくはポリ(メタ)アクリレートである請求項6記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項8】
さらに硬化剤(C)を含有する請求項6または7記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項9】
粉体塗料用ポリエステル樹脂(A)と反応性希釈剤(B)と硬化剤(C)との重量比が、(A)/(B)/(C)=[50〜98]/[2〜50]/[0〜30]である請求項6〜8のいずれか記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか記載の粉体塗料用樹脂組成物と、硬化触媒、レベリング剤、着色剤、酸化防止剤、および可塑剤からなる群から選ばれる1種以上からなる粉体塗料。

【公開番号】特開2008−174636(P2008−174636A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9281(P2007−9281)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】