説明

粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料、及びこの粉体塗料を被覆した被覆物

【課題】 本発明の目的は、ポリエチレンを主体とする粉体塗装法の粉体塗装用材料として、耐熱性の優れる樹脂粉体を提供すること。
【解決手段】 (1)シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体を30質量%以上含むエチレン系樹脂100質量部と、
(2)微粒子の表面を化学的に疎水基で覆って疎水化したケイ素酸化物の疎水性微粒子0.6〜3質量部とから得られる粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動浸漬法、静電塗装法、散布法などの粉体塗装法により基材金属の成形被覆などに用いる粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンを粉体形状に加工し、流動浸漬法、静電塗装法、散布法などの塗装方法を用いて、塗装用材料として広く使用され、各種の塗装物が製造されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、粉末成形用エチレン−α−オレフィン共重合体粉体が開示されている。これは、特定範囲の密度、メルトインデックス、メルトフロー比、粉体の嵩密度、安息角および粒度分布と形状を有し、懸濁重合で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体粉体に関するものである。
【0004】
また、特許文献2には、(A)特定の配位子を含む特定触媒の存在下、特定の密度、メルトフロレート、分子量分布および組成分布パラメータのエチレン−α−オレフィン共重合体20重量%以上、(B)(A)を除くポリオレフィン系樹脂80重量%以下、(C)ゴム30重量%以下よりなる組成物であって、(A)、(B)、(C)成分の少なくとも一種が、特定の成分と量でグラフトされた接着性樹脂粉体に関するものが開示されている。
【0005】
特許文献3には、特定範囲の中高密度ポリエチレンとエチレン−プロピレン共重合ゴムからなる混合物と線状低密度ポリエチレンに不飽和ジカルボン酸類をグラフトした変性ポリエチレンからなる接着性ポリエチレン組成物が開示されている。
【0006】
特許文献4には、線状低密度ポリエチレンに不飽和カルボン酸類をグラフトさせた変性ポリエチレン5〜50重量%と特定範囲の分子量分布、メルトフロー比を有するエチレン−α−オレフィン共重合体95〜50重量%とからなる接着性ポリエチレン組成物に関するものが開示されている。
【0007】
特許文献5には、線状低密度ポリエチレンに不飽和カルボン酸類をグラフトさせた変性ポリエチレン95〜51重量%と特定範囲の分子量分布、メルトフロー比を有するエチレン−α−オレフィン共重合体5〜49重量%とからなる接着性ポリエチレン組成物に関するものが開示されている。
【0008】
特許文献6には、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリエチレン樹脂97〜50重量%と、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸共重合体樹脂3〜50重量%とからなるポリエチレン樹脂組成物の粉体と、無機粉体と、を含むポリ粉体塗装用エチレン樹脂粉体塗料が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開昭56−41213号公報
【特許文献2】特開平9−176522号公報
【特許文献3】特開平8−12818号公報
【特許文献4】特開平8−41261号公報
【特許文献5】特開平8−283684号公報
【特許文献6】特開2002−138240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ポリエチレンを主体とする粉体塗装法の粉体塗装用材料として、耐熱性の優れる樹脂粉体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(1)シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体を30質量%以上含むエチレン系樹脂100質量部と、
(2)微粒子の表面を化学的に疎水基で覆って疎水化したケイ素酸化物の疎水性微粒子0.6〜3質量部とから得られる粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料である。
【0012】
好ましくは本発明は、(1)シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体を少なくとも30質量%以上と、エチレン・酢酸ビニル共重合体とを含むエチレン系樹脂100質量部と、
(2)微粒子の表面を化学的に疎水基で覆って疎水化したケイ素酸化物の疎水性微粒子0.6〜3質量部とから得られる粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料である。
【0013】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料の好ましい態様を以下に示す。
1)粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料は、流動浸漬法、静電塗装法、散布法などの粉体塗装法により、基材金属の表面に樹脂被膜の成形用に用いること。
2)エチレン系樹脂は、エチレン系樹脂の樹脂粉体であること。
3)エチレン系樹脂の樹脂粉体は、嵩密度が0.20〜0.45(g/cm)であること。
4)エチレン系樹脂の樹脂粉体は、安息角が25〜45度であること。
5)シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体は以下の特性であること。
(a1)密度が0.88〜0.96(g/cm)、
(a2)メルトフローレートが0.01〜200(g/10分)であること。
6)エチレン系樹脂は、さらに酸変性ポリエチレンを含むこと。
7)微粒子は、四塩化珪素の酸水素焔中での高温加水分解により生成されること。
8)エチレン樹脂粉体塗料は、嵩密度が0.20〜0.45(g/cm)であること。
9)エチレン樹脂粉体塗料は、安息角が25〜45度であること。
【0014】
さらに本発明は、粉体塗装法により、本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料を基材金属の表面に被覆したことを特徴とするエチレン樹脂粉体塗料の被覆物である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、流動浸漬法、静電塗装法、散布法などの粉体塗装法により基材金属の表面に成形被覆を形成することができる、粉体流動性及び耐熱性の優れる粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料は、(1)シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体を30質量%以上含むエチレン系樹脂100質量部と、
(2)微粒子の表面を化学的に疎水基で覆って疎水化したケイ素酸化物の疎水性微粒子0.6〜3質量部とから得られる粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料である。
本発明は、上記樹脂組成物を用いることにより、粉体塗装法により、基材金属の表面に、耐熱性の優れる塗膜を被覆することができる。
エチレン系樹脂は、エチレン系樹脂の樹脂粉体として用いるが好ましい。
【0017】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料は、
(1)シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体を30質量%以上含むエチレン系樹脂、好ましくはシングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体を30質量%以上と、エチレン・酢酸ビニル共重合体とを含むエチレン系樹脂、さらに好ましくはシングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体を30質量%以上と、エチレン・酢酸ビニル共重合体と、酸変性ポリエチレンとを含むエチレン系樹脂 100質量部に対し、
(2)疎水性微粒子が、0.6〜3質量部、好ましくは0.8〜2.8質量部、さらに好ましくは0.9〜2.6質量部、より好ましくは1質量部を超えて2.5質量部、特に好ましくは1.1〜2.4質量部から得ることができる。
【0018】
エチレン系樹脂は、エチレン系樹脂中、シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体30質量%以上、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上含む樹脂である。
エチレン系樹脂は、シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体の他に、
(1)アルミナ又はシリカ−アルミナに担持した酸化クロム等の触媒(フィリップス法)、アルミナに担持した酸化モリブデン等の触媒(スタンダード法)、遷移金属化合物と有機金属化合物よりなるチーグラー系触媒などにより製造されたエチレン単独重合体、及びエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体と、
(2)シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体、アルミナ又はシリカ−アルミナに担持した酸化クロム等の触媒(フィリップス法)、アルミナに担持した酸化モリブデン等の触媒(スタンダード法)、遷移金属化合物と有機金属化合物よりなるチーグラー系触媒などにより製造されたエチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体の酸変性物である酸変性ポリエチレンと、
(3)エチレンと、アクリル酸やメタクリル酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸及びこれらのエステル化合物などとを共重合して得られる重合体と、
(4)エチレンと酢酸ビニルとの共重合して得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体、などから選ばれる樹脂成分を、70質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下含むものである。
【0019】
エチレン系樹脂は、樹脂成分として酸変性ポリエチレンを含むことにより、基材金属との接着性を向上させることができ、エチレン系樹脂中の酸変性ポリエチレンの含有量は、必要の応じて加えることができるが、好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは8〜25質量%である。
エチレン系樹脂は、樹脂成分としてエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことにより、基材金属とのエッジカバリング性を向上させることができ、エチレン系樹脂中のエチレン・酢酸ビニル共重合体の含有量は、必要の応じて加えることができるが、好ましくは3〜50質量%、さらに好ましくは8〜40質量%、より好ましくは12〜35質量%、特に好ましくは15〜30質量%である。
【0020】
特にエチレン系樹脂は、樹脂成分として酸変性ポリエチレン及びエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことにより、基材金属との接着性及びエッジカバリング性を向上させることができ、酸変性ポリエチレン及びエチレン・酢酸ビニル共重合体の含有量は、必要の応じて加えることができるが、エチレン系樹脂(シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体、酸変性ポリエチレン及びエチレン・酢酸ビニル共重合体の総和は、100質量%である。)中、
好ましくはシングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体30〜96質量%、酸変性ポリエチレン1〜50質量%及びエチレン・酢酸ビニル共重合体3〜50質量%であり、
さらに好ましくはシングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体40〜89質量%、酸変性ポリエチレン3〜40質量%及びエチレン・酢酸ビニル共重合体8〜40質量%であり、
より好ましくはシングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体50〜83質量%、酸変性ポリエチレン5〜30質量%及びエチレン・酢酸ビニル共重合体12〜35質量%であり、
特に好ましくはシングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体60〜77質量%、酸変性ポリエチレン8〜25質量%及びエチレン・酢酸ビニル共重合体15〜30質量%である。
【0021】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料に用いるエチレン系樹脂は、下記の(a1)及び(a2)の特性を少なくとも1つを有することが好ましく、特に2つの特性を有することが好ましい。
(a1)密度(d)が、好ましくは0.89〜0.96(g/cm)、さらに好ましくは0.90〜0.955(g/cm)、より好ましくは0.91〜0.95(g/cm)、特に好ましくは0.92〜0.95(g/cm)の範囲。
(a2)190℃、2.16Kg荷重におけるメルトフローレート(MFR2.16)が、好ましくは0.01〜200(g/10分)、さらに好ましくは0.1〜100(g/10分)、より好ましくは1〜50(g/10分)、特に好ましくは2〜30(g/10分)の範囲。
上記の特性において、
(a1)密度(d)が、上記の範囲より小さいと、粉体塗装品に最低限必要な剛性が得られない場合があり、また使用に際して塗装表面に傷が発生しやすくなる場合がある、
(a2)190℃、2.16Kg荷重におけるメルトフローレート(MFR2.16)が、上記の範囲より小さいと、流動性が悪く粉体塗装が困難になる場合があり、また、上記の範囲より大きいと、機械的特性が低下して、得られる粉体塗装物の性能が低下する場合がある。
【0022】
エチレン重合体は、メタロセン触媒系などのいわゆるシングルサイト触媒の存在下にエチレン単独の重合によって得られる重合体、または、エチレンとα−オレフィンとの共重合によって得られる共重合体(エチレン・α−オレフィン共重合体)などを用いることができる。α−オレフィンは、エチレン・α−オレフィン共重合体中に単独であっても、2種以上含まれていてもよい。
α−オレフィンとしては、炭素数3〜10、好ましくは炭素数3〜8のα−オレフィンを用いることができる。
α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1などを挙げることができる。
エチレン・α−オレフィン共重合体において、エチレン・α−オレフィン共重合体中、α−オレフィンから誘導される繰り返し単位は、必要に応じた量を含むことができるが、通常、好ましくは15モル以下の範囲、さらに好ましくは0.1〜10モル%の範囲で、特に好ましくは0.1〜5モル%の範囲で含まれている。α−オレフィンは、エチレン−α−オレフィン共重合体中に単独であっても、二種以上含まれていてもよい。
【0023】
シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せなどが用いられ、メタロセン触媒系などの公知のシングルサイト触媒を用いることができる。
シングルサイト触媒は、活性点が均一である点において、活性点が不均一なマルチサイト触媒とは区別されるものである。
【0024】
エチレン重合体は、メタロセン触媒系などのシングルサイト触媒の存在下において、不活性ガス中での流動床式気相重合又は攪拌式気相重合、不活性溶媒中におけるスラリー重合、モノマーを溶媒とするバルク重合等の公知の各種の重合方法により、製造することができる。
シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せなど公知の重合触媒を用いることができる。
【0025】
シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体として、エチレン・α−オレフィン共重合体は、公知のものであり、数社から各種のものが市販されている。例えば、宇部興産株式会社の「ユメリット」や、「エリート」、「エスコレン」、「エボリュー」、「カーネル」などの商品名で各種のものが市販されており、本発明においてはこれら市販のものを利用することができる。これらのポリエチレン樹脂は、2種以上のものが併用されても良い。
【0026】
シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体は、下記の(b1)及び(b2)の特性を少なくとも1つを有することが好ましく、特に2つの特性を有することが好ましい。
(b1)密度(d)が、好ましくは0.88〜0.96(g/cm)、さらに好ましくは0.90〜0.955(g/cm)、より好ましくは0.906〜0.95(g/cm)、特に好ましくは0.908〜0.95(g/cm)の範囲。
(b2)190℃、2.16Kg荷重におけるメルトフローレート(MFR2.16)が、好ましくは0.01〜200(g/10分)、さらに好ましくは0.1〜100(g/10分)、より好ましくは0.5〜50(g/10分)、特に好ましくは1〜40(g/10分)の範囲。
特に重合体(A)がエラストマー単独の場合は、(b2)メルトフローレート(MFR2.16)が1〜10(g/10分)の範囲が好ましい。
特に重合体(A)がエチレン−酢酸ビニル共重合体単独の場合は、(b2)メルトフローレート(MFR2.16)が10〜40(g/10分)の範囲が好ましい。
上記の特性において、
(a1)密度(d)が、上記の範囲より小さいと、粉体塗装品に最低限必要な剛性が得られない場合があり、また使用に際して塗装表面に傷が発生しやすくなる場合がある、
(a2)190℃、2.16Kg荷重におけるメルトフローレート(MFR2.16)が、上記の範囲より小さいと、流動性が悪く粉体塗装が困難になる場合があり、また、上記の範囲より大きいと、機械的特性が低下して、得られる粉体塗装物の性能が低下する場合がある。
【0027】
酸変性ポリエチレンは、メタロセン触媒などのシングルサイト触媒、アルミナ又はシリカ−アルミナに担持した酸化クロム等の触媒(フィリップス法)、アルミナに担持した酸化モリブデン等の触媒(スタンダード法)、遷移金属化合物と有機金属化合物よりなるチーグラー系触媒などの存在下にエチレン単独及び/又はエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合によって得られる共重合体などの変性用ポリエチレンを、不飽和カルボン酸類、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、安息香酸ビニルなどの不飽和ジカルボン酸、これら不飽和ジカルボン酸の無水物、或いはこれら不飽和ジカルボン酸のエステルなどでグラフトなどにより変性させた酸変性ポリエチレンを含むことが好ましい。
特に変性用ポリエチレンとしては、アルミナ又はシリカ−アルミナに担持した酸化クロム等の触媒(フィリップス法)、アルミナに担持した酸化モリブデン等の触媒(スタンダード法)、遷移金属化合物と有機金属化合物よりなるチーグラー系触媒などの存在下にエチレン単独及び/又はエチレンとα−オレフィンとの共重合によって得られる共重合体などが好ましく用いることができる。
【0028】
酸変性ポリエチレンは、変性用ポリエチレン100質量部に対して、不飽和カルボン酸類、0.05〜2質量部、さらに0.1〜1.5質量部でグラフトなどの変性されたものが好ましい。
変性用ポリエチレンに不飽和カルボン酸類をグラフトさせる方法としては、例えば、変性用エチレン重合体及び不飽和カルボン酸類を反応開始剤の存在下に溶融混練することができる。反応開始剤としては、t−ブチル−ハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物系の反応開始剤が使用できる。また、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどのクメンの二量体およびその誘導体も使用できる。
【0029】
変性用ポリエチレンにおいて、α−オレフィンは、炭素数3〜10(炭素数3、炭素数4、炭素数5、炭素数6、炭素数7、炭素数8、炭素数9及び/又は炭素数10)のα−オレフィンを挙げることができ、これらα−オレフィンは複数組み合わせて用いることができる。
α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1などのα−オレフィンを挙げることができる。
【0030】
酸変性ポリエチレンは、下記の(b11)及び(b12)の特性を少なくとも1つを有することが好ましく、特に2つの特性を有することが好ましい。
(b11)密度(d)が、好ましくは0.880〜0.960(g/cm)、さらに好ましくは0.900〜0.960(g/cm)、より好ましくは0.900〜0.950(g/cm)、特に好ましくは0.906〜0.940(g/cm)の範囲。
(b12)190℃、2.16Kg荷重におけるメルトフローレート(MFR2.16)が、好ましくは0.01〜200(g/10分)、さらに好ましくは0.1〜50(g/10分)、より好ましくは0.5〜20(g/10分)、特に好ましくは1〜5(g/10分)の範囲。
【0031】
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)は、エチレンと酢酸ビニルとを高圧法、乳化法などの公知の製造法によって共重合により製造されたものを用いることができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)は、下記の(c1)、(c2)及び(c3)の特性を少なくとも1つを有することが好ましく、特に(c1)及び(c2)の特性を少なくとも有することが好ましい。
(c1)密度が、好ましくは0.92〜0.99(g/cm)、さらに好ましくは0.92〜0.95(g/cm)、特に好ましくは0.92〜0.94(g/cm)の範囲。
(c2)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR2.16)が、好ましくは0.3〜1000(g/10分)、さらに好ましくは0.5〜500(g/10分)、より好ましくは5〜100(g/10分)、特に好ましくは10〜50(g/10分)の範囲。
(c3)酢酸ビニル含有量が、好ましくは1〜60重量%、さらに好ましくは3〜25重量%、特に好ましくは5〜20重量%の範囲。
【0032】
上記特性のうち、
(c1)密度が、上記範囲より小さい場合は剛性が高くなりすぎ製品の脆性が悪化する場合があり、また上記範囲より大きい場合は剛性が低くなりすぎ受傷性が悪化する場合がある。
(c2)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR2.16)が、上記範囲より小さい場合は、流動性が悪化し、製品表面外観が悪化する場合があり、また上記範囲より大きい場合には、流動性が高くなりすぎエッジカバリング性が悪化する場合がある。
(c3)酢酸ビニル含有量が、上記範囲より小さい場合は剛性が高くなりすぎ製品の脆性が悪化する場合があり、また上記範囲より大きい場合は剛性が低くなりすぎ受傷性が悪化する場合がある。
【0033】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料において、必要に応じて、本発明に用いるエチレン系樹脂を除く、他のプロピレン系樹脂、ブテン系樹脂などのポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂や、少なくともジエンを含むモノマー成分より得られるジエン系エラストマーなどの本発明のエラストマーを除くエラストマーなどを添加することができる。
【0034】
エチレン系樹脂は、下記の(d1)、(d2)、(d3)、(d4)及び(d5)の特性を少なくとも1つを有する樹脂粉体として用いることが好ましい。
エチレン系樹脂の樹脂粉体の特性としては、(d1)と、(d2)〜(d5)から選ばれる少なくとも1つの特性との組み合わせが好ましく、
さらに(d1)及び(d2)と、(d3)〜(d5)から選ばれる少なくとも1つの特性との組み合わせなどが好ましい。
(d1)嵩密度が、0.2〜0.5(g/cc)、さらに0.25〜0.45(g/cc)、特に0.30〜0.40(g/cc)。
(d2)安息角が、25〜45度、さらに28〜40度、特に30〜38度。
(d3)粒径は、好ましくは35メッシュ通過品であり、さらに好ましくは40メッシュ通過品であり、特に好ましくは50メッシュ通過品である。
(d4)平均粒径は、80〜470μm、さらに好ましくは100〜350μm、特に好ましくは150〜300μm。
(d5)粉体の形状を顕微鏡で観察して、顕著なヒゲ・紐状のないこと。
【0035】
エチレン系樹脂の樹脂粉体としての特性について、
(d1)嵩密度が、上記の範囲を外れると、得られるエチレン樹脂粉体塗料の流動性が悪く、粉体塗装が困難になる場合がある。
(d2)安息角が、上記の範囲を外れると、得られるエチレン樹脂粉体塗料の流動性が悪く、粉体塗装が困難になる場合がある。
(d3)粒径が、上記の範囲を外れると、得られるエチレン樹脂粉体塗料の流動性が悪く、粉体塗装が困難になる場合がある。
(d4)平均粒径は、上記の範囲を外れると、得られるエチレン樹脂粉体塗料の流動性が悪くなり、塗装品の外観を悪化させたり、表面平滑性が低下する場合がある。
(d5)粉体の形状を顕微鏡で観察して、粉体が顕著なヒゲ・紐状のものを含む場合、粉体の流動性が悪く、表面の平滑な塗膜が得られにくい。
【0036】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料は、粉体の良好な流動層を形成するものであればよく、例えば流動空気線速度が、好ましくは2〜45cm/秒、さらに好ましくは5〜40cm/秒、より好ましくは10〜35cm/秒、特に好ましくは12〜30cm/秒のポリエチレン粉体である。
【0037】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料は、粉体の良好な流動層を形成するものであればよく、例えば流動空気線速度が、好ましくは2〜45cm/秒、さらに好ましくは5〜40cm/秒、より好ましくは10〜35cm/秒、特に好ましくは12〜30cm/秒のポリエチレン粉体である。
【0038】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料は、下記の(e1)、(e2)、(e3)、(e4)及び(e5)の特性を少なくとも1つを有することが好ましい。
エチレン樹脂粉体塗料の特性としては、(e1)と、(e2)〜(e5)から選ばれる少なくとも1つの特性との組み合わせが好ましく、
さらに(e1)及び(e2)と、(e3)〜(e5)から選ばれる少なくとも1つの特性との組み合わせなどが好ましい。
(e1)嵩密度が、0.2〜0.5(g/cc)、さらに0.25〜0.45(g/cc)、特に0.30〜0.40(g/cc)。
(e2)安息角が、25〜45度、さらに28〜40度、特に30〜38度。
(e3)粒径は、好ましくは35メッシュ通過品であり、さらに好ましくは40メッシュ通過品であり、特に好ましくは50メッシュ通過品である。
(e4)平均粒径は、80〜470μm、さらに好ましくは100〜350μm、特に好ましくは150〜300μm。
(e5)粉体の形状を顕微鏡で観察して、顕著なヒゲ・紐状のないこと。
【0039】
粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料としての特性について、
(e1)嵩密度が、上記の範囲を外れると、得られるエチレン樹脂粉体塗料の流動性が悪く、粉体塗装が困難になる場合がある。
(e2)安息角が、上記の範囲を外れると、得られるエチレン樹脂粉体塗料の流動性が悪く、粉体塗装が困難になる場合がある。
(e3)粒径が、上記の範囲を外れると、得られるエチレン樹脂粉体塗料の流動性が悪く、粉体塗装が困難になる場合がある。
(e4)平均粒径は、上記の範囲を外れると、得られるエチレン樹脂粉体塗料の流動性が悪くなり、塗装品の外観を悪化させたり、表面平滑性が低下する場合がある。
(e5)粉体の形状を顕微鏡で観察して、粉体が顕著なヒゲ・紐状のものを含む場合、粉体の流動性が悪く、表面の平滑な塗膜が得られにくい。
【0040】
微粒子は、疎水性微粒子を含み、必要に応じて疎水性微粒子を除く微粒子(A)を含むことができる。
微粒子は、1次粒子の平均径が約7〜40で、BET法による比表面積が約50〜400m/g(市販カタログ値参考)のものを用いることができる。
【0041】
疎水性微粒子とは、ケイ素酸化物の微粒子の表面を化学的に疎水基で覆って疎水化したものである。疎水性微粒子は、四塩化珪素の酸水素焔中での高温加水分解により生成される、表面にシラノール基を有する無水シリカの表面を疎水化剤を用いて、化学的にメチル基などの疎水基で覆って疎水化したものである。
疎水化剤としては、微粒子の表面のシラノール基を疎水化できるものであればどのようなものでも用いることができ、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジメチルジクロロシラン、メタクリロキシシラン、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどを用いることができる。
特に疎水性微粒子は、1次粒子の平均径が約7〜16で、BET法による比表面積が約100〜300m/g(市販カタログ値参考)のものを用いることが好ましい。
【0042】
微粒子(A)とは、ケイ素、アルミニウム及びチタンから選ばれた成分の酸化物の微粒子であり、微粒子の表面を化学的に疎水基で覆って疎水化したものを除いたものである。 微粒子(A)は、四塩化珪素、塩化アルミニウム及び/又は塩化チタンの酸水素焔中での高温加水分解により生成される無水シリカ、酸化アルミニウム及び/又は酸化チタンの微粒子(但し、微粒子の表面を化学的にメチル基などの疎水基で覆って疎水化したものを除く)である。
特に微粒子(A)は、1次粒子の平均径が約7〜16で、BET法による比表面積が約100〜300m/g(市販カタログ値参考)のものを用いることが好ましい。
【0043】
疎水性微粒子としては、公知のものであり、市販されている。例えば、日本アエロジル社から、疎水性ヒュームドシリカとして商品名:AEROSIL Rシリーズ(例えばグレードが、R104、R972、R812、R812S、R711、R7200、R805、R106、R974、R972V、R202、R8200など)で市販されおり、これらを単独で又は2種以上で用いることができる。
【0044】
微粒子(A)としては、公知のものであり、市販されている。例えば、日本アエロジル社から、親水性ヒュームドシリカとして商品名:AEROSIL(例えばグレードが、50、130、200、200V、200CF、200FAD、300、300CF、380など)が、酸化チタンとして商品名:AEROXIDE TiOが、酸化アルミニウムとしてAEROXIDE AluCが市販されおり、これらを単独で又は2種以上で用いることができる。
【0045】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料及びエチレン系樹脂は、高級脂肪酸、高級脂肪族アミド、金属せっけん、グリセリンエステル等の滑剤、天然シリカ、合成シリカ、タルク、珪藻土等の滑剤やアンチブロッキング剤、フェノール系、りん系、BHT等の酸化防止剤、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、HALS等の紫外線吸収剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、りん系、ハロゲン系等の難燃剤、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、カーボンブラック等の無機・有機充填剤、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、酸化鉄、群青等の顔料、帯電防止剤、界面活性剤などを添加することができる。
【0046】
エチレン系樹脂は、各成分をバンバリーミキサー、ロールミキサー、ニーダー、高速回転ミキサー、押出機等の各種混練機、好ましくは、二軸押出機を用いて混合、混練してペレット状として得ることが出来る。
エチレン系樹脂は、エチレン系樹脂を、粉砕機、例えば、高速回転式粉砕機を用いて粉砕する方法、後処理により粉体形状を改良する方法などにより、樹脂粉体を製造することができる。
特に、常温下で高速回転式粉砕機を用いて粉砕し、振動篩により分級する方法により製造されたエチレン系樹脂の樹脂粉体は、粉体の流動性が良く、この粉体を用いる粉体塗装物は表面平滑性の優れたものが得られる。
【0047】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料は、
(1)シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体を30質量%以上含むエチレン系樹脂から、粉砕機、例えば、高速回転式粉砕機を用いて粉砕する方法、後処理により粉体形状を改良する方法などにより、樹脂粉体を製造し、
(2)樹脂粉体100質量部と、ケイ素、アルミニウム及びチタンから選ばれた成分の酸化物の微粒子(但し、微粒子の表面を化学的に疎水基で覆って疎水化したものを除く)1.2〜3質量部とを混合機などを用いて混合し、樹脂粉体の表面に微粒子を付着又はまぶすことにより製造することができる。
【0048】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料の別の製造法の一例として、エチレン系樹脂及び微粒子を、粉砕機、例えば、高速回転式粉砕機を用いて粉砕する方法、後処理により粉体形状を改良する方法などにより製造することができる。
特に、常温下で高速回転式粉砕機を用いて粉砕し、振動篩により分級する方法により製造された粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料は、粉体の流動性が良く、この粉体の粉体塗装物は表面平滑性の優れたものが得られる。
【0049】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料は、粉体塗装法により、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、錫、ステンレスなどの金属素材の、パイプ、線材、鋼板など形状の基材金属の表面に、樹脂粉体を成形被覆することができる。
粉体塗装法としては、流動浸漬法、静電塗装法、散布法、回転成形法、プローバック法、融着被覆法などの塗装方法を挙げることができる。
【0050】
基材金属は、粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料で塗装する前に、公知の前処理、例えば溶剤脱脂、酸洗、ショットブラスト等の前処理が行われ、さらにプライマー処理としてエポキシ系樹脂のプライマーを介することにより、より大きな接着力が有する粉体塗装物が得られる。
【0051】
本発明の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料は、粉体塗装法により、薬品や飲料水等の液体、気体、固体の輸送や保存用のタンク類、椅子、すべり台、カートなどの遊具、ローリーコンテナ、道具箱などのコンテナ、ボックス類、フラワースタンド、鑑賞用池、生ゴミ処理器などの家庭雑貨などの塗装物を製造できる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
1)樹脂成分の特性値の評価方法を示す。
[密度]:JIS・K7112に準拠して、190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレイト(MFR2.16)測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したサンプルを密度勾配管を用いて測定する。
[メルトフローレイト(MFR2.16)]:JIS・K7210に準拠して、メルトインデクサーを用いて、190℃における2.16kg荷重での10分間にストランド状に押し出される樹脂の重量を測定することにより求める。
【0054】
2)樹脂粉体の特性値の評価方法を示す。
[嵩密度(g/cc)]:JIS K6721に準拠して測定する。
[流動空気線速度(cm/秒)]:空気透過性の優れたロ布で底部を覆った筒状の100mmφの流動層を用い、この流動層に300gのポリエチレン粉体を入れる。流動層底部より空気を流入させ、ポリエチレン粉体が流動層内部で、安定に流動するのに必要な最低の空気量(y)を測定する。流動空気線速度(x)は、得られる最低の空気量(y)を流動層底部の断面積(z)で除した値とする。樹脂粉体の流動層内部での流動評価は、目視で行う。
【数1】

【0055】
[平均粒径(μm)]:粉体50gをロータップ式篩振とう機にて、回転数300rpm、打数162回/分で10分間処理する。使用する篩は、35、40、45、50、60、70、80、100、120、140、170、200および230メッシュの13種類を用いる。各篩の上に残る粉体の重量を測定し、粒径の小さな篩(230メッシュ)から大きな篩(35メッシュ)まで順次、小さな篩側よりその篩の上に残った粉体重量を積分し、各々の篩での積分値を求める。この積分値を粉体の全重量で除した値に100を掛け、累積重量(%)を求める。各篩の目開き(μm)を横軸にとり、累積重量(%)を縦軸にとって、目開きと累積重量(%)の曲線を作図する。この曲線より、累積重量が50%での目開き値を求め、この値を平均粒径とする。
【0056】
[粉体の形状]:粉体中に顕著なヒゲまたは、紐状の有無を、光学顕微鏡を用いて目視で観察し、以下の評価を行う。
良好:顕著なヒゲまたは、紐状なし、不良:顕著なヒゲまたは、紐状あり。
[エッジカバリング性]:厚さ2mm、幅50mm、長さ60mmの鋼板に流動浸漬法により皮膜を形成する。流動浸漬法は250〜300℃に加熱の鋼板を室温下流動空気線速度25m/秒で粉体が流動している流動内に5秒間浸漬させて行う。こうして得られる塗装鋼板の長さ方向の端部の塗膜を幅2mm、長さ20mmのサイズに切り取り、鋼板から剥離させ試験片とする。この試験片の長さ方向の断面を光学顕微鏡で観察し、鋼板の面部に塗工している塗膜の厚みをt、鋼板の端角部に塗工された塗膜の厚みをtとする(図1参照)。このt、tの値を用い、下記数式(2)よりエッジカバリング性(E)を算出する。
図1は、粉体塗料を用いて、鋼板に塗膜を形成している塗膜の試験片1の断面の模式図である。図1において、符号1は試験片1の断面を、符号2は試験片1の鋼板の厚さ方向の面との接触部を、符号3は試験片1の鋼板の幅方向の面との接触部を示している。
【数2】

[流動安息角(度)]:筒井理化学機械製の三輪式流動表面角測定器を用いて行う。測定は、
(1)500mlの円筒形測定ビンに試料粉末を200cm程度入れ、ビンに蓋をする。
(2)(1)で作成の粉末を入れている測定ビンを三輪式流動表面角測定器の台車の上に乗せ、回転速度3rpmで回転させながら、三輪式流動表面角測定器付属の角度計により、測定ビン中の試料粉末の流動安息角を測定する。
【0057】
[耐熱性]:厚さ2mm、幅50mm、長さ60mmの鋼板に流動浸漬法により皮膜を形成した。流動浸漬法は250〜300℃に加熱した鋼板を室温下流動空気線速度25m/秒で粉体が流動している流動内に5秒間浸漬させて行った。こうして得られた塗装鋼板を240℃のオーブン中に30分間静置したのち、室温で2時間静置する。この操作を一サイクルとし、合計5サイクルの冷熱処理を行った塗装鋼板表面を目視により観察し、その塗装表面の垂れ、膨れ等の変化を以下の4段階にて評価する。
○:変化なし、△:若干変化有り、×:変化有り、××:著しい変化有り。
【0058】
[ペレットA]
シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレンとヘキセン−1との共重合体(密度:0.913g/cm、MFR(2.16):30g/10分、Mw/Mn:4.0、スウェル比:1.19)88質量%と不飽和カルボン酸類変性ポリエチレン(密度:0.92g/cm、MFR(2.16):2g/10分、酸変性量:1質量%、無水マレイン酸変性)12質量%からなるエチレン系樹脂100質量部に対し、エチレンー酢酸ビニル共重合体(密度:0.92g/cm、MFR(2.16):35g/10分、酢酸ビニル含量:5質量%)25質量部を、二軸押出機にて200℃の温度で混練し、190℃でのメルトフローレートMFR(2.16)が15g/10分、密度が0.921g/cmのペレット状の組成物を得た。
【0059】
[実施例1及び2、比較例1〜4]
[ペレットA粉体製造及びその評価]
ペレットAを用いて、高速回転式粉砕機を用いて粉砕し、50メッシュ非通過重量が5%で、170メッシュ通過重量が5%のペレットA粉体を得た。このペレットA粉体を用いて、各種の評価を行い、結果を表2に示す。
【0060】
ペレットA粉体100質量部と、表1に示す配合量のアエロジルとを、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、エチレン樹脂粉体塗料を製造した。得られたエチレン樹脂粉体塗料の耐熱性及びエッジカバリング性を評価し、結果を表1に示す。
但しアエロジルR972(商品名)は、微粒子の表面を化学的に疎水基で覆って疎水化したケイ素酸化物の疎水性微粒子であり、アエロジル200(商品名)は、微粒子の表面を化学的に疎水基で覆って疎水化していないものである。
【0061】
【表1】

【0062】
[ペレットB]
シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレンとヘキセン−1との共重合体(密度:0.913g/cm、MFR(2.16):30g/10分、Mw/Mn:4.0、スウェル比:1.19)90質量部と不飽和カルボン酸類変性ポリエチレン(密度:0.92g/cm、MFR(2.16):2g/10分、酸変性量:1質量%、無水マレイン酸変性)10質量部からなるエチレン系樹脂を、二軸押出機にて200℃の温度で混練し、190℃でのメルトフローレートMFR(2.16)が20g/10分、密度が0.915g/cmのペレット状の組成物を得た。
【0063】
[ペレットC]
シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレンとヘキセン−1との共重合体(密度:0.913g/cm、MFR(2.16):30g/10分、Mw/Mn:4.0、スウェル比:1.19)65質量部と高圧法により製造されたエチレンの単独重合体(密度:0.919g/cm、MFR(2.16):10g/10分、ビカット軟化点:87℃)25質量部と不飽和カルボン酸類変性ポリエチレン(密度:0.92g/cm、MFR(2.16):2g/10分、酸変性量:1質量%、無水マレイン酸変性)10質量部からなるエチレン系樹脂を、二軸押出機にて200℃の温度で混練し、190℃でのメルトフローレートMFR(2.16)が20g/10分、密度が0.915g/cmのペレット状の組成物を得た。
【0064】
[比較例5、6]
[ペレットB及びCの粉体製造及びその評価]
ペレットB及びペレットCを用いて、高速回転式粉砕機を用いて粉砕し、50メッシュ非通過重量が5%で、170メッシュ通過重量が5%の粉体を得た。この粉体を用いて、各種の評価を行い、結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
エチレンー酢酸ビニル共重合体を含むペレットA粉体は、エチレンー酢酸ビニル共重合体を含まないペレットC粉体及びエチレンー酢酸ビニル共重合体の代わりに高圧法低密度ポリエチレンを含むペレットB粉体に比べ、エッジカバリング性が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】試験片1の長さ方向の断面の模式図である。
【符号の説明】
【0068】
1:試験片の断面、2:試験片1の鋼板の厚さ方向の面との接触部、3:試験片1の鋼板の幅方向の面との接触部。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体を30質量%以上含むエチレン系樹脂100質量部と、
(2)微粒子の表面を化学的に疎水基で覆って疎水化したケイ素酸化物の疎水性微粒子0.6〜3質量部とから得られる粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料。
【請求項2】
(1)シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン重合体を30質量%以上と、エチレン・酢酸ビニル共重合体とを含むエチレン系樹脂100質量部と、
(2)微粒子の表面を化学的に疎水基で覆って疎水化したケイ素酸化物の疎水性微粒子0.6〜3質量部とから得られる粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料。
【請求項3】
エチレン系樹脂が、さらに酸変性ポリエチレンを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料。
【請求項4】
エチレン系樹脂は、エチレン系樹脂の樹脂粉体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料。
【請求項5】
エチレン系樹脂の樹脂粉体は、嵩密度が0.20〜0.50(g/cm)及び安息角が25〜45度であることを特徴とする請求項4に記載の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料。
【請求項6】
エチレン樹脂粉体塗料は、嵩密度が0.20〜0.50(g/cm)及び安息角が25〜45度であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料。
【請求項7】
粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料は、粉体塗装法により基材金属の表面の被覆に用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料。
【請求項8】
粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料は、請求項1〜7に記載の粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料であり、
粉体塗装法により、粉体塗装用のエチレン樹脂粉体塗料を基材金属の表面に被覆したことを特徴とするエチレン樹脂粉体塗料の被覆物。




【図1】
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【公開番号】特開2006−96902(P2006−96902A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285929(P2004−285929)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】