説明

粉体攪拌装置

【課題】安全性を確保しつつ粉体を均一に処理することが可能な粉体攪拌装置を提供する。
【解決手段】粉体攪拌装置20は、反応容器100および回転駆動装置200を含む。反応容器100は、円筒形状の外周壁110および一対の端面壁111を有する。外周壁110の一端および他端にそれぞれ端面壁111が設けられる。反応容器100は、外周壁110の軸心が水平方向に平行になるように断熱カバー400内に配置される。外周壁110は、その軸心に関して回転対称な内周面を有する。粉体処理時には、反応容器100内に粉体が収容され、反応容器100が回転駆動装置200により外周壁110の軸心を通る回転軸R1の周りで回転される。この状態で、反応容器100内に処理ガスが供給される。また、反応容器100内の処理ガスが排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体を攪拌する粉体攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フッ素ガス等の処理ガスを用いて粉体の処理が行われる。処理効率を上げるために、処理ガスと粉体とを効率よく接触させることが求められる。特許文献1に記載されたフッ素化重合体の製造方法においては、フッ化ガスを用いて粉状の含水素重合体のフッ素化処理が行われる。
【0003】
上記のフッ素化処理は反応器内で行われる。反応器は、横型の筒状体、回転軸および複数の攪拌翼を備える。回転軸は、筒状体が延びる方向に平行でかつ筒状体の内部を貫通するように設けられる。複数の攪拌翼は、筒状体の内部で一定の間隔を隔てて回転軸に取り付けられる。横型の筒状体にフッ素ガス供給口およびフッ素ガス排出口が設けられる。
【0004】
フッ素化処理時においては、筒状体の内部に含水素重合体の粉体が収容される。この状態で、回転軸が回転し、複数の攪拌翼が回転する。このとき、筒状体の内部にフッ素ガス供給口からフッ素ガスが供給されるとともに、筒状体の内部雰囲気がフッ素ガス排出口から排出される。これにより、筒状体の内部で含水素重合体の粉体が複数の攪拌翼により攪拌され、フッ素ガス供給口から供給されるフッ素ガスと反応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−309918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載された反応器においては、筒状体の内部に収容された粉体が筒状体の内部で回転する複数の攪拌翼により攪拌される。この場合、筒状体の内部粉体のうち複数の攪拌翼が通らない部分に存在する粉体は攪拌されない。そのため、粉体の全体を均一にフッ素化処理することができない。
【0007】
上記の反応器において、粉体の全体を攪拌するために、複数の攪拌翼の回転速度を高くすることが考えられる。しかしながら、フッ素ガスは高い反応性を有する。そのため、このような処理ガスを用いて粉体を処理する場合、複数の攪拌翼の回転速度を高くすると、摩擦によって静電気が生じ、粉塵爆発が発生しやすくなる。したがって、複数の攪拌翼の回転速度を、粉体の全体を攪拌することが可能な回転速度まで高くすることは難しい。
【0008】
本発明の目的は、安全性を確保しつつ粉体を均一に処理することが可能な粉体攪拌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る粉体攪拌装置は、反応性の処理気体で粉体を処理する粉体攪拌装置であって、略水平方向の軸に関して回転対称な内周面を有するとともに軸の周りで回転可能に設けられ、粉体を収容可能に構成された反応容器と、反応容器を軸の周りで回転させる回転駆動部と、回転駆動部により回転される反応容器内に処理気体を導入するための気体導入系と、回転駆動部により回転される反応容器内の処理気体を排出するための気体排出系とを備えるものである。
【0010】
この粉体攪拌装置においては、反応容器内に粉体が収容された状態で、気体導入部から反応容器内に処理気体が導入される。この状態で、回転駆動部が反応容器を略水平方向の軸の周りで回転させる。これにより、粉体が処理気体により処理される。処理気体を含む反応容器内の処理気体が気体排出系から排出される。
【0011】
この場合、反応容器内では、内周面の最下部に位置する粉体が、内周面と当該粉体との間に発生する摩擦力により反応容器の回転とともに上昇する。上昇した粉体のうち表層部の粉体が内周面の最下部に滑るように移動するとともに、残りの下層部の粉体がさらに上昇する。その後、反応容器がさらに回転することにより、内周面と下層部の粉体との間に発生する摩擦力が当該粉体に作用する重力よりも小さくなる。これにより、上昇した下層部の粉体が内周面の最下部に滑るように移動する。その結果、表層部の粉体と下層部の粉体とが入れ替わる。
【0012】
このような動作が繰り返されることにより、回転中の反応容器内では、粉体の全体が均一に攪拌される。それにより、反応容器の回転速度を高くすることなく粉体の表面に効率的に反応性の処理気体を接触させることができる。その結果、安全性を確保しつつ粉体を効率的かつ均一に処理することができる。
【0013】
(2)反応容器の内周面から突出するように設けられる突出部をさらに備えるものであってもよい。
【0014】
この場合、反応容器の回転中に粉体と内周面との間に発生する摩擦力が小さい場合でも、突出部により粉体がある高さまで持ち上げられる。それにより、反応容器内で粉体の上昇および落下が繰り返し行われる。その結果、粉体の全体をより均一に攪拌することが可能となる。
【0015】
(3)突出部は、軸と平行に延びるとともに回転中心に向かうように配置される複数の板部材であってもよい。
【0016】
この場合、簡単な構成かつ低コストで粉体の全体をより均一に攪拌することが可能となる。
【0017】
(4)気体排出系は、反応容器の外部から反応容器の内部に挿入されるとともに、反応容器の内部で上方に開口する排出口を有する気体排出管を含んでもよい。
【0018】
この場合、気体排出管の排出口が上方に開口することにより、反応容器内の下部に存在する粉体が排出口に流入しにくくなる。その結果、気体排出管を通して粉体が排出されることが抑制される。
【0019】
(5)気体排出管の一部は、上方に延びるように設けられ、排出口は、上方に延びる部分の上端に設けられ、気体排出管の排出口の周囲および上方を覆うように設けられた粉体流入規制部材をさらに備えてもよい。
【0020】
この場合、気体排出管の一部と粉体流入規制部材との間に、屈曲した気体の流入経路が形成される。それにより、反応容器内で粉体が飛散した場合でも、粉体が気体排出管の排出口に流入しにくくなる。その結果、気体排出管を通して粉体が排出されることが防止される。
【0021】
(6)粉体攪拌装置は、軸上に設けられる固定部材をさらに備え、反応容器は、固定部材に対して相対的に回転可能に設けられ、気体導入系および気体排出系は、固定部材を貫通するように設けられてもよい。
【0022】
この場合、反応容器の回転中に固定部材は回転しない。したがって、気体導入系および気体排出系の構成が複雑化しない。その結果、簡単な構成かつ低コストの粉体攪拌装置が実現される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、安全性を確保しつつ粉体を均一に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る粉体処理装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1の粉体攪拌装置の構成を示す斜視図である。
【図3】図2の粉体攪拌装置のA−A線断面図である。
【図4】図2の回転軸に沿う粉体攪拌装置の縦断面を模式的に表す図である。
【図5】(a)は図2の配管支持機構およびその周辺部材の正面図であり、(b)は(a)のB−B線における配管支持機構およびその周辺部材の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態に係る粉体攪拌装置について図面を参照しながら説明する。
【0026】
(1)粉体処理装置の全体構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る粉体処理装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、粉体処理装置1は、処理ガス発生装置10、粉体攪拌装置20、セパレータ30、吸引装置40、吸着塔50およびスクラバ60を備える。
【0027】
処理ガス発生装置10は、フッ素ガス発生源11、窒素ガス発生源12、酸素ガス発生源13およびガスミキサ14を備える。フッ素ガス発生源11、窒素ガス発生源12および酸素ガス発生源13は、それぞれ配管を通してガスミキサ14に接続される。ガスミキサ14には、フッ素ガス発生源11、窒素ガス発生源12および酸素ガス発生源13からそれぞれ予め定められた流量でフッ素ガス、窒素ガスおよび酸素ガスが供給される。ガスミキサ14は、供給されたフッ素ガス、窒素ガスおよび酸素ガスを混合することにより、粉体の処理に用いる処理ガスを生成する。
【0028】
本実施の形態において、粉体は、ガスで処理可能な有機物または無機物である。例えば、粉体は、樹脂粉、セラミック粉または金属粉である。より具体的には、粉体は、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂もしくはアクリル樹脂等からなる樹脂粉または顔料等である。
【0029】
また、本実施の形態において、処理ガスによる処理は、粉体の表面に処理ガスを接触させて粉体の表面を改質する表面処理(以下、粉体処理と呼ぶ。)である。フッ素ガス、酸素ガスおよび窒素ガスからなる処理ガスを用いる場合には、粉体の表面の官能基に親水性の基を導入することにより親水性を付与することができる。また、フッ素ガスおよび窒素ガスからなる処理ガスを用いる場合には、粉体の表面にフッ素を付加することにより撥水性を付与することができる。
【0030】
粉体攪拌装置20が配管L1を介して処理ガス発生装置10のガスミキサ14に接続される。粉体攪拌装置20には、ガスミキサ14により生成された処理ガスが配管L1を通して供給される。粉体攪拌装置20においては、後述する反応容器100(図2)内で、ガスミキサ14から供給される処理ガスにより粉体が処理される。粉体攪拌装置20の構成の詳細および粉体処理中の粉体攪拌装置20の動作については後述する。
【0031】
セパレータ30が配管L2を介して粉体攪拌装置20に接続される。後述する吸引装置40が動作することにより、粉体処理中の粉体攪拌装置20の反応容器100(図2)内の雰囲気が排出ガスとして配管L2を通してセパレータ30に送られる。セパレータ30では、排出ガスとともに粉体攪拌装置20から送られる塵埃(粉体)が除去される。
【0032】
吸引装置40が配管L3を介してセパレータ30に接続される。また、吸着塔50が配管L4を介して吸引装置40に接続される。本例では、吸引装置40はドライポンプである。ドライポンプが動作することにより、上記のように、粉体攪拌装置20の反応容器100(図2)内の雰囲気が、排出ガスとして配管L2、セパレータ30および配管L3,L4を通して吸着塔50に送られる。
【0033】
吸着塔50には吸着剤として例えばソーダライムが充填されている。配管L4から送られる排出ガスには、腐食性が高いF(フッ素)およびHF(フッ化水素)が混入している。そのFおよびHFが、吸着塔50に吸着され、排出ガスから除去される。
【0034】
スクラバ60が配管L5を介して吸着塔50に接続される。吸着塔50によりFおよびHFが除去された排出ガスが配管L5を通してスクラバ60に送られる。スクラバ60は、排出ガスに含まれる固体または液体の微粒子を水滴または水膜で捕集する。微粒子が除去された排出ガスは、配管L6を通して粉体処理装置1の外部に送られる。
【0035】
(2)粉体攪拌装置の構成
図2は、図1の粉体攪拌装置20の構成を示す斜視図である。図2に示すように、粉体攪拌装置20は、主として反応容器100、回転駆動装置200、加熱冷却装置300、および断熱カバー400から構成される。
【0036】
断熱カバー400内に反応容器100、回転駆動装置200および加熱冷却装置300が設けられる。図2では、断熱カバー400が点線で示されるとともに、断熱カバー400内の各構成要素が実線で示される。
【0037】
図2に示すように、反応容器100は、円筒形状の外周壁110および一対の端面壁111を有する。外周壁110の一端および他端にそれぞれ円盤形状を有する端面壁111が設けられる。反応容器100は、外周壁110の軸心が水平方向に平行になるように断熱カバー400内に配置される。外周壁110は、その軸心に関して回転対称な内周面110i(図3)を有する。
【0038】
反応容器100内には、外周壁110の内周面110iおよび一対の端面壁111の内表面により取り囲まれる処理空間Sが形成される。一対の端面壁111のうちの一方の端面壁111には、開口部111hが形成されるとともに、その開口部111hに開閉可能な扉112が設けられる。扉112を開くことにより、反応容器100内に未処理の粉体を収容すること、または反応容器100内から処理済の粉体を回収することができる。粉体処理時には、反応容器100内に粉体が収容された状態で扉112が閉じられる。
【0039】
一方の端面壁111の中央部に配管支持機構120aが設けられる。配管L1が配管支持機構120aを貫通するように設けられる。他方の端面壁111の中央部に配管支持機構120bが設けられる。配管L2が配管支持機構120bを貫通するように設けられる。
【0040】
配管支持機構120a,120bは、図示しない固定部材により断熱カバー400に固定される。反応容器100は、回転駆動装置200により外周壁110の軸心を通る回転軸R1の周りで回転可能に支持される。また、反応容器100は、各配管支持機構120a,120bに対して相対的に回転可能である。配管支持機構120a,120bの詳細は後述する。
【0041】
回転駆動装置200は、複数(本例では4つ)のローラ210a,210b,210c,210d、複数(本例では2本)の動力伝達軸211a,211b、および複数(本例では2個)のモータ220a,220bを含む。複数のローラ210a〜210dはそれぞれ円筒形状を有し、図示しない台座により周方向に回転可能に支持される。
【0042】
ローラ210a,210bが一方の端面壁111の近傍で外周壁110の周方向に一定の間隔をおいて並び、ローラ210c,210dが他方の端面壁111の近傍で外周壁110の周方向に一定の間隔をおいて並ぶ。また、ローラ210a,210cが外周壁110の長手方向に一定の間隔をおいて並び、ローラ210b,210dが外周壁110の長手方向に一定の間隔をおいて並ぶ。このようにして、複数のローラ210a〜210dが反応容器100の下部に配置される。複数のローラ210a〜210dの外周面の一部は、それぞれ反応容器100の外周壁110の外周面に当接する。
【0043】
一方の動力伝達軸211aが、ローラ210a,210cの軸心を通るように、ローラ210a,210cに共通に取り付けられる。動力伝達軸211aは、一方のモータ220aの回転軸に接続される。同様に、他方の動力伝達軸211bが、ローラ210b,210dの軸心を通るように、ローラ210b,210dに共通に取り付けられる。動力伝達軸211bは、他方のモータ220bの回転軸に接続される。
【0044】
モータ220a,220bが同時に動作することにより、動力伝達軸211a,211bがそれぞれ一方向に回転する。それにより、図2に太い実線で示すように、複数のローラ210a〜210dが同時に一方向に回転する。その結果、図2に太い一点鎖線で示すように、反応容器100が複数のローラ210a〜210dの回転方向と逆の方向に回転する。
【0045】
反応容器100の外周壁110の一部に対向するように、断熱カバー400内で複数(本例では2個)の加熱冷却装置300が設けられる。加熱冷却装置300は、例えばヒータ等の加熱装置および送風機等の冷却装置を含む。粉体処理時には、加熱装置が動作することにより反応容器100内の粉体および雰囲気が加熱される。または、冷却装置が動作することにより反応容器100内の粉体および雰囲気が冷却される。
【0046】
(3)反応容器の内部構造
図3は図2の粉体攪拌装置20のA−A線断面図であり、図4は図2の回転軸R1に沿う粉体攪拌装置20の縦断面を模式的に表す図である。図3では図2の加熱冷却装置300および断熱カバー400の図示を省略し、図4では図2の回転駆動装置200、加熱冷却装置300および断熱カバー400の図示を省略する。
【0047】
図3に示すように、反応容器100の外周壁110の内周面110iには、反応容器100の回転軸R1に対して等角度間隔でかつ外周壁110の内周面110iから回転軸R1に向かって突出するように複数の板部材113が取り付けられている。図4に示すように、各板部材113は、反応容器100内で一方の端面壁111の内表面から他方の端面壁111の内表面まで回転軸R1に平行に延びる帯形状を有する。
【0048】
図1の配管支持機構120bを貫通するように設けられる配管L2の一部が、反応容器100内に位置する。図3および図4に示すように、反応容器100内の配管L2の先端部には、反応容器100内の雰囲気を排出するための排出口L2aが形成されている。配管L2の先端部近傍は、排出口L2aが上方に向かうように屈曲している。配管L2の排出口L2aの周囲および上方を覆うように傘部材114が設けられている。傘部材114は、下部が開口しかつ上部が閉塞された円筒形状を有する。傘部材114は、固定部材114aを介して後述する図5の固定中空管130に固定される。
【0049】
この場合、配管L2の一部と傘部材114との間に、屈曲した雰囲気の流入経路Fが形成される。それにより、反応容器100内で粉体PAが飛散した場合でも、飛散した粉体PAが配管L2の排出口L2aに流入しにくくなる。その結果、配管L2を通して粉体PAが排出されることが防止され、粉体PAの処理効率が向上する。
【0050】
(4)配管支持機構の構造
図5(a)は図2の配管支持機構120aおよびその周辺部材の正面図であり、図5(b)は図5(a)のB−B線における配管支持機構120aおよびその周辺部材の縦断面図である。
【0051】
図5(a),(b)に示すように、配管支持機構120aは、主として円盤部材121および固定中空管130から構成される。円盤部材121の中央部には、3つの貫通孔122,123,124が一列に並ぶように形成されている。固定中空管130は円筒形状を有する。また、固定中空管130は、その固定中空管130の一端を閉塞する端面131を有する。図示しない固定中空管130の他端は開口している。固定中空管130の端面131には、円盤部材121の貫通孔122,123,124にそれぞれ対応する配管保持孔132、ねじ孔133および温度測定孔134が形成されている。また、固定中空管130の外周面の一部には、周方向に延びる環状の段差139が形成されている。端面131から段差139までの間の固定中空管130の外径は、段差139から固定中空管130の他端までの外径に比べて小さい。
【0052】
配管支持機構120aが取り付けられる端面壁111の中央部には、固定中空管130を取り付けるための管状突出部140が形成されている。管状突出部140は、端面壁111の内表面から反応容器100の内側に向かって突出するように形成されている。
【0053】
管状突出部140の内周面には、反応容器100の軸心に沿って並ぶように、複数の環状溝部141,142,143が形成されている。環状溝部141は反応容器100の外側に向かって開口するように形成されている。環状溝部141にダストシール152が嵌め込まれる。ダストシール152を覆うように、端面壁111の外表面に環状の板部材153が取り付けられる。環状溝部142にOリング151が取り付けられる。環状溝部143に複数の軸受け150が取り付けられる。固定中空管130が管状突出部140に差し込まれる。このとき、ダストシール152の内周部およびOリング151の内周部と固定中空管130の外周面とが互いに摺動可能に当接する。また、複数の軸受け150の内周面と固定中空管130の外周面とが当接する。これにより、反応容器100および固定中空管130が互いに相対的に回転可能となっている。
【0054】
固定中空管130が管状突出部140に差し込まれた状態で、固定中空管130の端面131に円盤部材121がねじ止めされる。具体的には、ねじNが円盤部材121の貫通孔123を通して固定中空管130のねじ孔133に取り付けられる。
【0055】
このとき、円盤部材121の一部が、端面壁111にねじ止めされた環状の板部材153に当接する。また、固定中空管130の段差139が軸受け150の一部に当接する。これにより、環状の板部材153、管状突出部140および複数の軸受け150が、円盤部材121および固定中空管130の段差139により水平方向で挟みこまれる。それにより、円盤部材121および固定中空管130からなる配管支持機構120aが端面壁111に対して相対的に回転可能に取り付けられる。
【0056】
配管L1が、円盤部材121の貫通孔122および固定中空管130の配管保持孔132を通るように配管支持機構120aに取り付けられる。また、温度測定管THaが、円盤部材121の貫通孔124および固定中空管130の温度測定孔134を通るように配管支持機構120aに取り付けられる。温度測定管THaには、例えば熱電対等の温度センサが挿入される。この場合、温度センサにより検出される処理空間S内の温度に基づいて図2の加熱冷却装置300を制御することができる。
【0057】
上記のように、固定中空管130と管状突出部140との間には、ダストシール152およびOリング151が取り付けられる。これにより、端面壁111に配管支持機構120aが取り付けられた状態で、反応容器100の外部空間と反応容器100の処理空間Sとがダストシール152およびOリング151により確実に遮断される。図2の配管支持機構120bは、上記の配管支持機構120aと同じ構造を有する。
【0058】
なお、図5(a)に点線で示すように、配管支持機構120aに配管L2を取り付けるための貫通孔125が形成されてもよい。この場合、貫通孔125に図1の配管L2を取り付けることにより、他方の端面壁111に配管支持機構120bを取り付ける必要がなくなる。
【0059】
(5)粉体処理時の動作
図1の粉体処理装置1において、粉体PAの処理を行う場合、まず図2の反応容器100内に予め定められた量の粉体PAが収容される。
【0060】
次に、図1の処理ガス発生装置10により発生された処理ガスが配管L1を通して反応容器100内に導かれる。同時に、反応容器100内の雰囲気が配管L2を通してセパレータ30に排出される。
【0061】
この状態で、図2の回転駆動装置200が動作することにより、反応容器100が回転軸R1を中心として予め定められた回転速度で回転する。反応容器100が回転することにより、反応容器100内では収容された粉体PAの全体が攪拌される。それにより、粉体PAの全体が処理される。
【0062】
その後、予め定められた時間が経過することにより、回転駆動装置200による反応容器100の回転動作が停止されるとともに、反応容器100内への処理ガスの供給が停止される。また、反応容器100内の処理ガスを含む雰囲気が窒素ガス等の雰囲気で置換され、処理後の粉体PAが反応容器100内から取り出される。
【0063】
(6)効果
(6−1)本実施の形態に係る粉体攪拌装置20においては、粉体処理中に、反応容器100の内周面110iの最下部に位置する粉体PAが、内周面110iと当該粉体PAとの間に発生する摩擦力により反応容器100の回転とともに上昇する。
【0064】
反応容器100の外周壁110の内周面110iには、複数の板部材113が取り付けられている。したがって、反応容器100の回転中に粉体PAと内周面110iとの間に発生する摩擦力が小さい場合でも、複数の板部材113により粉体PAをある高さまで持ち上げることができる。
【0065】
上昇した粉体PAのうち表層部の粉体が内周面110iの最下部に滑るように移動するとともに、残りの下層部の粉体PAがさらに上昇する。その後、反応容器100がさらに回転することにより、内周面110iと下層部の粉体PAとの間に発生する摩擦力および板部材113の表面と下層部の粉体PAとの間に発生する摩擦力が当該粉体PAに作用する重力よりも小さくなる。これにより、上昇した下層部の粉体PAが内周面110iの最下部に滑るようにまたは落下するように移動する。これにより、上昇した下層部の粉体PAが内周面110iの最下部に滑るようまたは落下するように移動する。その結果、表層部の粉体PAと下層部の粉体PAとが入れ替わる。
【0066】
このような動作が繰り返されることにより、回転中の反応容器100内では、粉体PAの全体が均一に攪拌される。それにより、反応容器100の回転速度を高くすることなく粉体PAの表面に効率的に反応性の処理ガスを接触させることができる。その結果、安全性を確保しつつ粉体PAを効率的かつ均一に処理することができる。
【0067】
(6―2)一対の端面壁111の中央部にそれぞれ設けられる配管支持機構120a,120bは断熱カバー400に固定される。反応容器100は、配管支持機構120a,120bに対して相対的に回転可能に設けられる。配管L1,L2は、それぞれ配管支持機構120a,120bを貫通するように設けられる。この場合、反応容器100の回転中に配管支持機構120a,120bは回転しない。したがって、配管L1,L2の構成が複雑化しない。その結果、簡単な構成かつ低コストの粉体攪拌装置20が実現される。
【0068】
(7)他の実施の形態
(7−1)上記実施の形態では、処理用ガスとして、フッ素ガス、酸素ガスおよび窒素ガスのうちいずれかを含む混合ガスが用いられるが、これに限らず他の処理ガスが用いられてよい。例えば、処理ガスとして、フッ素ガスおよび窒素ガスからなる混合ガスが用いられてもよい。この場合、粉体PAの表面処理を行うことにより、粉体PAの疎水性を高めることができる。また、粉塵爆発の発生が防止されるのであれば、処理ガスが窒素ガスを含まなくてもよい。さらに、オゾンガス等のフッ素ガスを含まない処理ガスが用いられてもよい。このように、処理ガスは、処理の種類に応じて選択することができる。
【0069】
(7−2)上記実施の形態では、反応容器100の外周壁110の一端および他端にそれぞれ円盤形状を有する端面壁111が設けられるが、反応容器100の両端の形状はこれに限定されない。例えば、外周壁110の一端および他端にそれぞれ底面部が開放した円錐形状を有する端面壁が設けられてもよい。この場合、粉体処理中に、反応容器100内で端面壁の内表面上を滑るように粉体PAの一部が移動する。これにより、反応容器100内の端面壁の近傍で、粉体PAをより均一に攪拌することができる。
【0070】
(7−3)上記実施の形態では、粉体処理中に反応容器100内で粉体PAをある高さまで持ち上げるために、外周壁110の内周面110iに回転軸R1に対して等角度間隔でかつ外周壁110の内周面110iから回転軸R1に向かって突出するように複数の板部材113が取り付けられる。
【0071】
これに限らず、粉体PAをある高さまで持ち上げることができるのであれば、複数の板部材113は回転軸R1に対して等角度間隔に設けられなくてもよい。
【0072】
また、内周面110iに複数の板部材113が取り付けられる代わりに、三角形状の断面を有する複数の部材が、内周面110i上に取り付けられてもよい。または、断面円形状、断面三角形状または断面四角形状の複数の棒状部材が内周面110iから回転軸R1に向かって延びるように内周面110i上に分散して配置されてもよい。
【0073】
さらに、上記実施の形態では、複数の板部材113が回転軸R1に平行に内周面110i上に取り付けられるが、これに限らず、複数の板部材113は、互いに隣り合う各2つの板部材113間で互いに異なる方向に延びるように内周面110i上に取り付けられてもよい。
【0074】
(7−4)上記実施の形態では、配管L2の先端部に排出口L2aが形成され、排出口L2aが上方に向かうように配管L2の先端部近傍が屈曲しているが、これに限らず、配管L2の先端部を除く配管L2の上面部分で、上方に向かうように開口部を形成することにより、その開口部を排出口L2aとして用いてもよい。
【0075】
また、配管L2は複数の排出口L2aを有してもよい。例えば、配管L2の先端部を除く配管L2の上面部分で、上方に向かうように複数の開口部を形成する。これにより、形成された複数の開口部をそれぞれ複数の排出口L2aとして用いることができる。
【0076】
上記実施の形態では、傘部材114が円筒形状を有するが、傘部材114の形状はこれに限られない。例えば、傘部材114は、底面部が開放した円錐形状を有してもよい。この場合、傘部材114の上部に付着する粉体PAが傘部材114の上面を滑るように移動する。これにより、反応容器100内で飛散する粉体PAを円滑に反応容器100内の下部に導くことができる。
【0077】
(7−5)上記実施の形態では、回転駆動装置200の複数のローラ210a〜210dが回転することにより反応容器100が回転するが、反応容器100を回転させるための構成はこの例に限られない。反応容器100を複数のローラ210a〜210dにより回転させる代わりに、回転ベルトを用いて反応容器100を回転させてもよい。
【0078】
(8)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0079】
上記実施の形態においては、処理ガスが処理気体の例であり、粉体攪拌装置20が粉体攪拌装置の例であり、反応容器100の軸心および回転軸R1が軸の例であり、内周面110iが内周面の例であり、反応容器100が反応容器の例であり、回転駆動装置200が回転駆動部の例である。
【0080】
また、配管L1が気体導入系の例であり、配管L2が気体排出系の例であり、複数の板部材113が突出部および複数の板部材113の例であり、排出口L2aが排出口の例である。
【0081】
さらに、配管L2が気体排出管の例であり、傘部材114が粉体流入規制部材の例であり、配管支持機構120a,120bが固定部材の例である。
【0082】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、粉体を処理するために利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 粉体処理装置
10 処理ガス発生装置
11 フッ素ガス発生源
12 窒素ガス発生源
13 酸素ガス発生源
14 ガスミキサ
20 粉体攪拌装置
30 セパレータ
40 吸引装置
50 吸着塔
60 スクラバ
100 反応容器
110 外周壁
110i 内周面
111 端面壁
111h 開口部
112 扉
113 板部材
114 傘部材
114a 固定部材
120a,120b 配管支持機構
121 円盤部材
122,123,124,125 貫通孔
130 固定中空管
131 端面
132 配管保持孔
133 ねじ孔
134 温度測定孔
139 段差
140 管状突出部
141,142,143 環状溝部
150 軸受け
151 Oリング
152 ダストシール
153 板部材
200 回転駆動装置
210a,210b,210c,210d ローラ
211a,211b 動力伝達軸
220a,220b モータ
300 加熱冷却装置
400 断熱カバー
L1,L2,L3,L4,L5,L6 配管
L2a 排出口
PA 粉体
R1 回転軸
S 処理空間
THa 温度測定管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性の処理気体で粉体を処理する粉体攪拌装置であって、
略水平方向の軸に関して回転対称な内周面を有するとともに前記軸の周りで回転可能に設けられ、粉体を収容可能に構成された反応容器と、
前記反応容器を前記軸の周りで回転させる回転駆動部と、
前記回転駆動部により回転される前記反応容器内に処理気体を導入するための気体導入系と、
前記回転駆動部により回転される前記反応容器内の処理気体を排出するための気体排出系とを備える、粉体攪拌装置。
【請求項2】
前記反応容器の内周面から突出するように設けられる突出部をさらに備える、請求項1記載の粉体攪拌装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記軸と平行に延びるとともに回転中心に向かうように配置される複数の板部材である、請求項2記載の粉体攪拌装置。
【請求項4】
前記気体排出系は、
前記反応容器の外部から前記反応容器の内部に挿入されるとともに、前記反応容器の内部で上方に開口する排出口を有する気体排出管を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉体攪拌装置。
【請求項5】
前記気体排出管の一部は、上方に延びるように設けられ、
前記排出口は、上方に延びる部分の上端に設けられ、
前記気体排出管の前記排出口の周囲および上方を覆うように設けられた粉体流入規制部材をさらに備える、請求項4記載の粉体攪拌装置。
【請求項6】
前記軸上に設けられる固定部材をさらに備え、
前記反応容器は、前記固定部材に対して相対的に回転可能に設けられ、
前記気体導入系および前記気体排出系は、前記固定部材を貫通するように設けられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粉体攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91012(P2013−91012A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233253(P2011−233253)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】