説明

粉体特性測定装置

【課題】部品点数が少なくできると共に、粉体特性の測定を行うに際し複数の測定項目を1台の装置で能率良く行えるようにした粉体特性測定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】粉体特性測定装置10は、供給位置で粉体を供給する粉体供給部12と、粉体供給部12からの粉体で、安息角測定用の粉体堆積層を作る測定室と、スパチュラ角測定用の粉体堆積層を作る第2の測定室と、かさ密度測定用の粉体堆積層を作る第3の測定室と、第1または第2の測定室が粉体供給部12の供給位置に位置決めされ、第1または第2の測定室内に作られた粉体堆積層からその粉体堆積層の傾斜角度を測定する傾斜角度測定部と、を有する。第1、第2、第3の測定室は、それぞれ独立して形成されると共に天井部に粉体口17が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体特性の測定を行う粉体特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に粉体特性の測定項目としては、安息角測定、かさ密度測定、スパチュラ角測定の他に、崩壊角測定、差角測定、凝集度測定等がある。
【0003】
代表例として、例えば、安息角測定はテーブルの上に粉体を落下させて円錐状の粉体堆積層を作り、その粉体堆積層の傾斜角度を測定する手段となっている。また、同じ傾斜角度でもスパチュラ角測定の場合には、粉体堆積層の作り方が異なるもので、粉体容器の中へ帯板状のテーブルを入れておき、そのテーブルに対して粉体容器を下降させることで帯板状のテーブル上に作られる断面山形状の粉体堆積層の傾斜角度を測定する手段となっている。あるいは、かさ密度測定は円筒容器内へ粉体を投下した後、すり切りを行い円筒容器内の粉体堆積層の重さを測定する手段となっている。したがって、各測定項目に対応した粉体堆積層を作る計測手段とその粉体堆積層を測定する測定手段とを必要とする。装置としては、それぞれ独立した測定項目専用の装置で測定を行う場合と、計測室内において、各測定項目に対応して計測手段および測定手段を交換セットしなおし、1台の装置で対応を図る場合とがある。いずれも既に公知手段となっており製品化されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今までの粉体特性の測定において、前記にあっては各測定項目に対応した複数の装置を必要とするため、設置場所の問題や設備コストが高くなる等の不具合を招く。
【0005】
また、後者にあっては1つの測定項目が終わり、次の測定項目に入る際に、終了後の内部掃除を行い、次に使用する計測手段および測定手段を交換セットしなおさなければならず測定に入るまでに時間がかかる。また、使用しない機器等の計測手段や測定手段の保管・管理が必要であり作業能率の面、保管・管理面でも望ましくない。
【0006】
そこで、本発明にあっては、部品点数が少なくできると共に、粉体特性の測定を行うに際し複数の測定項目を1台の装置で能率良く行えるようにした粉体特性測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る粉体特性測定装置の発明は、供給位置で粉体を供給する粉体供給手段と、前記粉体供給手段からの粉体で、安息角測定用の粉体堆積層を作る計測手段を備えた第1の測定室と、スパチュラ角測定用の粉体堆積層を作る計測手段を備えた第2の測定室と、かさ密度測定用の粉体堆積層を作る計測手段およびその粉体堆積層の重さからかさ密度を測定するかさ密度測定手段を備えた第3の測定室と、前記第1、第2、第3の測定室の全体または前記粉体供給手段のいずれか一方を移動させて、いずれか1つの測定室の粉体口を前記粉体供給手段の供給位置に位置決めする位置決め手段と、前記第1または第2の測定室が前記粉体供給手段の供給位置に位置決めされ、前記第1または第2の測定室内に作られた粉体堆積層からその粉体堆積層の傾斜角度を測定する傾斜角度測定手段とを有し、前記第1、第2、第3の測定室は、それぞれ独立して形成されると共に天井部に前記粉体口が設けられていることを特徴とする。
【0008】
これにより、1台の粉体特性測定装置に複数の測定室を設けることで、部品点数を少なくでき、しかも粉体特性の測定を行うに際し複数の測定項目を1台の装置で効率良く測定することができる粉体特性測定装置とすることができる。
【0009】
請求項2に係る粉体特性測定装置の発明は、前記第1の測定室および前記第2の測定室は、粉体堆積層を作る前記計測手段の他に、粉体堆積層に振動を与える崩壊角測定用の振動手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
これにより、第1、第2の測定室にあっては安息角、スパチュラ角の測定に加えて崩壊角の測定も行える。特に、第1の測定室にあっては、安息角の測定値と崩壊角の測定値から計算式に基づき粉体の差角値を求めることが可能となる。
【0011】
請求項3に係る粉体特性測定装置の発明は、前記第1、第2、第3の測定室は、それぞれ、可動ベース台に対して着脱自在に配置セット可能な独立した第1、第2、第3の測定ユニットケースに形成されていることを特徴とする。
【0012】
これにより、各測定の終了毎に、使用した測定ユニットケースを取り出して、その測定室内を掃除を効率よく行えるようになる。また、例えば、第1の測定室を2つ並べてセットすることで、安息角の測定を2回続けて行えるようになり、より正確な測定結果が得られるようになる。また、2種類の異なる粉体の安息角の測定を同時に行えるようになり、測定性能の向上が図れる。
【0013】
請求項4に係る粉体特性測定装置の発明は、前記粉体供給手段は、少なくとも、前記第1、第2、第3の測定室内へそれぞれ粉体を投入する専用の測定室粉体投入ホッパーを備えていることを特徴とする。
【0014】
これにより、各測定室内へ正確、迅速に粉体を送り出せるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、部品点数が少なくできると共に、粉体特性の測定を行うに際し複数の測定項目を1台の装置で能率良く行えるようにした粉体特性測定装置を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置の測定部、回転保持機構、および、傾斜角度測定部を説明する平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置で、安息角を測定する測定室の構成を示す模式的な側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置で、安息角を測定することを示す展開斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置で、フルイ振動発生機構を説明する側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置で、安息角を測定する測定室に設けられた振動発生機構を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置で、粉体の供給位置Pを示す側面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置で、粉体の供給位置Pから所定角度回動した振動位置P−1を示す側面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置で、振動位置P−1から更に所定角度回動した測定位置P−2を示す側面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置で、凝集度を測定する測定室の構成を示す模式的な側面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置で、スパチュラ角を測定する測定室の構成を示す模式的な側面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置で、スパチュラ角を測定する測定室に設けられた粉体堆積層形成機構を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、すでに説明したものと同一または類似の構成要素には同一または類似の符号を付し、その詳細な説明を適宜省略している。
【0018】
また、図面は模式的なものであり、寸法比などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法比などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0019】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための例示であって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。この発明の実施の形態は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る粉体特性測定装置の平面図である。図2は、本実施形態に係る粉体特性測定装置の測定部、回転保持機構、および、傾斜角度測定部を説明する平面図であり、基本的には図1で粉体供給部を除去して描いた平面図である。本実施形態に係る粉体特性測定装置10は、粉体供給手段となる、ホッパーを有する粉体供給部12と、粉体供給部12の下方に位置し第1の測定室16a〜第6の測定室16f(以下、適宜、単に測定室16a〜fともいう)を有する測定部14と、測定部14を鉛直方向軸回りに回転可能に保持すると共に位置決め手段を構成する回転保持機構20と、を有する。
【0021】
(粉体供給部)
粉体供給部12は、粉体を収容する複数のホッパー22と、各ホッパー22の開口の開閉を行って粉体をいずれかの測定室に投入する投入手段と、を有する。本実施形態では、図1に示すように、4つのホッパー22a、22b、22f、22cが設けられており、各ホッパーには所定量の粉体を粉体供給部12の粉体流出口11から送り出す送出し部(図示せず)が上記投入手段として設けられている。
【0022】
ホッパー22a、22b、22fは、それぞれ、測定室16a、16b、16fへ粉体を投入するのに用いる専用の測定室粉体投入ホッパーとされている。ここで、粉体特性を測定する上で測定室16a、16b、16fに投入すべき粉体量はそれぞれ異なっており、ホッパー22a、22b、22fの各送り出し部は、それぞれの測定室への投入すべき粉体量を送り出すように設定されている。なお、ホッパー22a、22b、22fの他に、粉体を投入するのに用いる専用の測定室粉体投入ホッパーを更に設けることも可能である。
【0023】
また、ホッパー22cは、測定室16c〜eへ投入するのに用いるホッパーとされている。測定室16c〜eでは、測定室16a、16b、16fに比べて投入すべき粉体量が少ない(例えば2g)ため、ホッパー22a、22b、22fに比べて寸法が小さい。
【0024】
(回転保持機構)
粉体特性測定装置10には、測定部14を載せたターンテーブル(台座)26と、前記ターンテーブル26を回転自在に支持するとともに中央部に円筒状の中心軸筒部が設けられた本体フロア27と、ターンテーブル26を回転させる駆動機構30と、駆動機構30を制御することによってターンテーブル26の回転角度を制御して粉体供給部12の粉体流出口11下方に各測定室を位置決めする位置決め制御部32と、が設けられており、ターンテーブル26と駆動機構30と位置決め制御部32と中心軸部28とによって回転保持機構20が形成されている。
【0025】
駆動機構30としては、位置決め精度の観点で、噛み合い駆動で動作するほうが好ましいが、摩擦駆動とすることも可能である。噛み合い駆動で動作させる場合、例えば、図2に示すように、ターンテーブル26の外周側にギア歯を形成し、駆動機構30にギア31を設ける。ギア31に代えて、ベルト外面側にギア歯が形成されたベルトを用い、このベルトを回転駆動させてもよい。
【0026】
(測定部)
本実施形態の測定部14は、第1〜第6の測定室16a〜fからなり、各測定室16a〜fは独立した6つの着脱自在なユニットケース18a〜fとなっている。各測定ユニットケース18a〜fには着脱時に使用する取っ手T(図2、図4参照)が設けられている。
【0027】
測定部14は外見では円筒状の外周部13(図2参照)を有しており、中心軸周りに6つの測定ユニットケース18a〜fが均等な寸法で形成された配置となっている。各測定ユニットケース18a〜fの天井部には、粉体供給部12の送り出し部からの粉体を室内に入れるための粉体口17が形成されている。また、各測定ユニットケース18a〜fには、測定ユニットケースの外周側を構成する開閉可能な扉19a〜fがそれぞれ形成されている。扉19a〜fはそれぞれ透明なアクリルカバーで構成されている。
【0028】
測定室16a、16b、16fには、それぞれ、粉体供給部12の粉体流出口11から落下してきた粉体を受けて粉体堆積層34a、34b、34fを形成するためのテーブル64a、収容機64b、テーブル64fが配置されている(図3、図7、図11参照)。測定室16aは安息角、崩壊角(崩潰角)および差角を求めるための室である。測定室16bはかさ密度および圧縮度を求めるための室である。測定室16fはスパチュラ角および崩壊角を求めるための室である。測定室16c〜eは空室となっているが、測定室上部で凝集度を測定するために設けられた室である。
【0029】
また、測定部14には、粉体堆積層34a、34fの傾斜角度を測定する傾斜角度測定手段となる傾斜角度測定部36が設けられている。
【0030】
(傾斜角度測定部)
傾斜角度測定部36は、粉体堆積層の稜線の傾斜度を計測する安息角およびスパチュラ角の他に、振動を与えて崩壊した粉体堆積層の崩壊角を計測する手段となっている。具体的には、測定室16aまたは測定室16fが粉体流出口11から粉体を受ける供給位置Pに位置するときに粉体堆積層34aまたは粉体堆積層34fに光(例えばLED光)を当ててシルエットを作るバックライトパネル38(図2参照)と、バックライトパネル38によって作られたシルエットを撮影してシルエット画像を得る撮像部40とを有する。バックライトパネル38と撮像部40の配置位置は、撮影位置に到達した粉体堆積層34aや粉体堆積層34fを挟んで互いに対向する位置とされている。本実施形態では、撮像部40にはCCDカメラが設けられている。
【0031】
この傾斜角度測定部36は、予め組み込まれた解析プログラムに基づき、撮像部40で撮影したシルエット画像の稜線から粉体堆積層34aの傾斜角θa(図3参照)、および、粉体堆積層34fの傾斜角θf(図11参照)を求めるシルエット画像測定手段となっている。なお、傾斜角度測定部36を、分度器を用いた実計測タイプとすることも可能である。
【0032】
測定室16a、16fには、撮像部40で撮影できるように、光通過用の窓41(図4参照)が形成されている。
【0033】
(安息角、崩壊角、差角)
安息角、崩壊角および差角に関しては、上述したように、本実施形態では測定室16aで測定するようになっている。なお、差角は安息角と崩壊角の測定値からその測定値に基づく公式の計算式によって求められる。
【0034】
図3は、バット62fを昇降させる移動力伝達棒122fなどを省略して描いた、測定室16aの構成を示す模式的な側面図であり、図4は測定室16aで安息角を測定することを示す展開斜視図である。図5は、粉体特性測定装置10に設けられたフルイ振動発生機構50を説明する側面図である。図6は、測定室16aに設けられた振動発生機構を示す側面図である。
【0035】
図3〜図5に示すように、測定室16aには、粉体口17に上方から差し込まれるロート42aと、ロート42aの上側に載せられるフルイ44aと、フルイ44aを上から押さえるフルイ押さえ46aと、が着脱自在に配置されるようになっている。
【0036】
そして、粉体特性測定装置10は、供給位置Pにフルイ振動発生機構50を備えている。フルイ振動発生機構50は、ロート42aを下側から支えるリング状支持部52と、リング状支持部52の上方位置に開口53を有して、筒状の中心軸部28内に設けられた上下に振動する振動体(図示せず)に支持された基部54と、基部54から下方に延び出して蛇腹部56を有しリング状支持部52にネジ結合しているアーム部58と、基部54およびアーム部58の内部を挿通し、一端がリング状支持部52と他端がワイヤ駆動部(図示せず)とそれぞれ接続し合うワイヤ60とを有する。
【0037】
これにより、供給位置Pに各測定室16a〜fが位置決めされたときに、ワイヤ60を牽引することでリング状支持部52は、上昇する。このとき、図5に実線で示す如く粉体口17から上昇させた状態でロート42a等の支持が可能となり、フルイ振動発生機構50による篩い振動(粉体の投下)が支障なく行える。また、牽引を解除すれば二点鎖線となる待機位置に下降する。
【0038】
更に、測定室16aの床上には、矩形の平皿状のバット62aと、平面視でバット62a内側に位置し、ロート42aから落下してきた粉体を受けて粉体堆積層34aを形成する上記のテーブル64aと、が配置されている。テーブル64aは平面視円盤状とされており、支持棒66aで下方から支えられている。この支持棒66aは、板状部材で構成される安息角バー68aによって実質的に支えられている。なお、ロート42aの下端からテーブル64aまでの距離は、例えば66mmである。
【0039】
また、図3、図6に示すように、測定室16aには、テーブル64aから偏位した位置に振動手段が設けられている。具体的には、磁性体で構成される錘70aと、床上に立設する太径円筒状の錘受け部材72aと、錘受け部材72aの上端に連結された細径の錘案内パイプ74aと、が設けられている。錘案内パイプ74aの上端には、キャップ76aが取り付けられ、このキャップ76aの下に、錘70aの移動上端位置を規定するストッパ78aが取り付けられている。
【0040】
錘70aには、錘案内パイプ74aを挿通させて錘70aを上下方向に案内するための挿通孔(図示せず)が形成されている。そして、安息角バー68aの一端部が錘受け部材72aの上側に固定されており、錘70aが落下したことにより振動が安息角バー68a、テーブル64aを介して粉体堆積層34aに伝わるようになっている。
【0041】
そして、粉体特性測定装置10のターンテーブル26の下方に、供給位置Pにおいて錘案内パイプ74aと貫通孔88a、90aを介して上下に対向し合う磁石82aと、先端で磁石82aに連結しているワイヤ84aと、ワイヤ84aの巻き取り、巻き出しを行う駆動部86aとが設けられている。磁石82aは電磁石であってもよいし永久磁石であってもよい。通常では、磁石82aは錘70aよりも下方あるいは同等の高さ位置に位置している。
【0042】
この構成により、ターンテーブル26の貫通孔88aと磁石82aとは測定室16aが供給位置Pに位置決めされることで上下に対向し合う位置関係に設定されるから、駆動部86aでワイヤ84aを巻き出して、貫通孔88a、および測定ユニットケース18aの床材21aに形成された貫通孔90aに磁石82aを挿通させて上昇させることで、磁石82aの磁力によって錘70aが錘案内パイプ74aに案内されて上昇し、錘70aがストッパ78aに当接しても更に磁石82aが上昇して、錘70aに及ぼされる磁力が低減して錘70aが自重で落下することで、粉体堆積層が崩壊した崩壊角測定用の振動を与えるようになっている。錘70aの重量、落下距離などはJISで規定された値とされている。
【0043】
(かさ密度)
かさ密度に関しては、収容容器104b内に投下された粉体を容器上面ですり切り、すり切った粉体堆積層の重量を測定するゆるみ見掛け比重と、収容容器104b内に振動を与えながら圧縮充填された粉体を容器上面ですり切り、すり切った粉体堆積層の重量を測定するかため見掛け比重の他に、ゆるみ見掛け比重とかため見掛け比重の測定値に基づく公式の計算式によって算出する圧縮度の測定となっている。
【0044】
図7〜図9は、かさ密度測定時の動作図を示したものである。図7は、バット62fを昇降させる移動力伝達棒120fなどを省略して描いた、粉体の供給位置Pを示す。図8は供給位置Pから所定角度回動した振動位置P−1を示す。図9は振動位置P−1から更に所定角度回動した測定位置P−2を示す。振動位置P−1にはタッピング装置122bが配置されている。測定位置P−2にはロードセルRSを有し、昇降機構123により最下降した待機位置と貫通孔111bを介して収容容器104bの底面と接触し上昇させる計測作動位置とに上下動可能になっている。測定室16bには、粉体口17に上方から差し込まれるバイブロシュート42bと、バイブロシュート42bの上側に載せられるフルイ44bと、フルイ44bを上から押さえるフルイ押さえ46bと、が着脱自在に配置されるようになっている。フルイ44b、フルイ押さえ46bは、それぞれ、フルイ44a、フルイ押さえ46aと同様の構成である。
【0045】
なお、バイブロシュート42b、フルイ44b等は、測定室16bが供給位置Pに位置決めされたときに、リング状支持部材52により支持されフルイ振動発生機構50により振動が与えられることは図5のところで説明したのと同一のため詳細な説明を省略する。
【0046】
そして、測定室16bの床上には、矩形の平皿状のバット62bと、平面視でバット62b内側に位置し、バイブロシュート42bから落下してきた粉体を受けて粉体堆積層34bを形成する上記の収容機64bと、が配置されている。
【0047】
収容機64bは、上端が水平な開口102bとされた収容容器104bと、収容容器104bの上側に位置し下端が水平な開口とされた短筒状のすり切り部材106bと、を備えている。そして、ターンテーブル26と測定室16bの床材21bとバット62bとには、振動位置P−2においてそれぞれ後述の振動伝達棒120bを挿通させて収容容器104bの底面に当接させるための貫通孔110b、112b、114bが形成されている。
【0048】
また、粉体特性測定装置10には、上下方向に延びる振動伝達棒120bと、振動伝達棒120bを上下動させるタッピング装置122bと、を備えている。振動伝達棒120bおよびタッピング装置122bはターンテーブル26よりも下方に位置しており、タッピング装置122bはカム124bを回転させるようになっている。振動伝達棒120bは下端でカム124bに当接しており、カム124bが回転することによって上下動し、上下動による振動で収容容器104b内に圧縮された粉体が充填される。
【0049】
一方、矩形状のすり切り部材106bは、収容容器104bの上面をすり切るすり切り手段として機能する。かため見掛け比重測定のときには収容容器104bの上に重ね合わせて使用することで、振動を与えながらすり切り位置を越えて粉体の落下を受け入れる補助容器として機能し、支持アーム125のアームリング125aに鍔部106b−1が自重で当たることで上下動自在に支持されている。
【0050】
支持アーム125は、アームの基部125bが回転軸127に固定支持され、回転軸127を中心に所定角度水平方向に回動自在となっている。回転軸127は、モータMにより正転・逆転自在に制御される。
【0051】
従って、例えば、収容容器104bの上端縁とすり切り部材106bの下端縁が接触し合う状態において、収容容器104b内への粉体充填完了後に、すり切り部材106bが水平方向へ移動することですり切りが行われる。
【0052】
なお、モータMは、測定室16bが測定位置P−2に位置決めされたときに、モータM側の受端子と本体側の供給端子(いずれも図示せず)が接触し合い、モータ電力の供給が可能となる。
【0053】
この構成により、ターンテーブル26の回転角度位置を調整することで、ターンテーブル26に形成された貫通孔110bを振動伝達棒120bの真上に位置させ、タッピング装置122bを駆動させることで、貫通孔110b、112b、114bを振動伝達棒120bに往復動させて収容容器104bを上下動させるようになっている。
【0054】
なお、振動伝達棒120bでバット62bを上下動させることで、収容容器104bをバット62bと一体的に上下動させる構成にしてもよい。
【0055】
本実施形態では、振動伝達棒120bが上下動することで、収容容器104bが上方側の移動位置ですり切り部材106bの下端部に当接することを繰り返して粉体堆積層34bに衝撃が繰り返し伝達されて粉体が凝集するようになっている。また、すり切り部材106bは回動機構等により水平移動が可能にされており、収容容器104bが上方側の移動位置に到達して停止しているときにすり切り部材106bが水平移動して収容容器104bの開口102bよりも上側の粉体をすり切ることが可能になっている。なお、すり切り部材106bの移動下端位置と移動上端位置との高さ差は例えば20mm程度である。
【0056】
(凝集度)
図10は、粉体特性測定装置10の測定室16cの構成を示す模式的な側面図である。測定室16cの上部には、バイブロシュート42bと同様のバイブロシュート42cが設けられている。また、フルイ44bに代えて下段フルイ44cが設けられ、フルイ押さえ46bに代えて、下段フルイ44cの上側に載置された中段フルイ126cと、中段フルイ126cの上側に載置された上段フルイ128cとが設けられている。測定室16d、16eについても同様である。
【0057】
安息角やかさ密度を測定する場合と同様、図5に示したように、ターンテーブル26の回転により、測定室16cが供給位置Pに位置決めされたときに、リング状支持部52によってバイブロシュート42cの周縁部が支持された後、フルイ振動発生機構50によって振動が与えられることは図5で説明したのと同一のため詳細な説明は省略する。なお、測定室16d、16eについても同様である。
【0058】
測定室16c、16d、16eは、メッシュの異なるフルイが予めセットされ、かさ密度測定時の圧縮度の測定値から、いずれか1つ選択して使用される。各測定室16c、16d、16eの上段フルイ、中段フルイ、下段フルイのフルイサイズは、測定室16cでは、上から順に350μm、250μ、149μmとなっており、測定室16dでは、上から順に250μm、149μm、74μmとなっており、測定室16eでは、上から順に149μm、74μm、44μmとなっている。
【0059】
そして、図1に示すように、粉体特性測定装置10には、測定室16c〜eでフルイに残った粉体の重量(凝集度)を測定するための電子天秤130と、測定室16c〜eと電子天秤130との間でフルイを移動させるロボットアーム132とが設けられている。
【0060】
(スパチュラ角、崩壊角)
スパチュラ角および崩壊角に関しては、上述したように、本実施形態では測定室16fで測定するようになっている。
【0061】
図11は、測定室16fの構成を示す模式的な側面図である。図11に示すように、測定室16fには、バイブロシュート42f、フルイ44f、および、フルイ押さえ46fが着脱自在に配置される構造になっている。バイブロシュート42f、フルイ44f、フルイ押さえ46fは、それぞれ、バイブロシュート42b、フルイ44b、フルイ押さえ46bと同様の構成である。
【0062】
バイブロシュート42f、フルイ44f、フルイ押さえ46fは、安息角、かさ密度を測定するときと同様に測定室16fが供給位置Pに位置決めされたときにリング状支持部材52により支持され、フルイ振動発生機構50により振動が与えられることは図5で説明したのと同一のため詳細な説明を省略する。
【0063】
図5に示したように、安息角やかさ密度を測定する場合と同様、ターンテーブル26の回転により、バイブロシュート42fの周縁部を下方から支える位置にリング状支持部52が到達したときには、フルイ44fの上方に基部54が位置しており、この状態で、ワイヤ60の引き、戻しが繰り返されることでリング状支持部52が上下動してフルイ44f内の粉体が振動してフルイに掛けられるようになっている。
【0064】
図12は、測定室16fに設けられた粉体堆積層形成機構を示す側面図である。測定室16fの床上には、矩形の平皿状のバット62fと、バット62fを下方から支えるバット支持部63fと、バット62fの内側に配置された収容容器104fと、平面視でバット62f内側に位置する上記のテーブル64fと、が配置されている。テーブル64fは平面視でへら状であり、クランク形状の板状部材で構成されるスパチュラ角バー68fで支えられている。
【0065】
そして、ターンテーブル26と測定室16fの床材21fとには、後述の移動力伝達棒120fを挿通させてバット支持部63fの下側に当接させるための貫通孔110f、112fがそれぞれ形成され、床材21fの床上には、バット62fを上下方向に案内する案内部140が突設されている。
【0066】
また、粉体特性測定装置10には、供給位置Pにおいて上下方向に延びる移動力伝達棒120fと、移動力伝達棒120fを上下動させる上下動装置122fと、を備えている。移動力伝達棒120fおよび上下動装置122fはターンテーブル26よりも下方に位置しており、上下動装置122fはカム124fを回転させるようになっている。移動力伝達棒120fは下端でこのカム124fに当接しており、カム124fが回転することによって上下動してバット62fを上下動させるようになっている。本実施形態では、移動力伝達棒120fを下降させることで、バット62fを下降させてバット62f内に堆積された粉体層に埋もれているスパチュラ角バー68fを粉体層から上方へ出すことで、スパチュラ角θf(図11参照)を計測可能な粉体堆積層34fがスパチュラ角バー68f上に形成されるようになっている。
【0067】
また、測定室16fには、安息角を測定する測定室16aと同様の振動手段が同一位置に配置されている。具体的には、磁性体で構成される錘70fと、床上に立設する太径円筒状の錘受け部材72fと、錘受け部材72fの上端に連結された細径の錘案内パイプ74fと、が設けられている。錘案内パイプ74fの上端には、キャップ76fが取り付けられ、このキャップ76fの真下にストッパ78fが取り付けられている。錘70fの重量、落下距離などはJISで規定された値とされている。錘70f、錘受け部材72f、錘案内パイプ74f、キャップ76f、ストッパ78fは、それぞれ、錘70a、錘受け部材72a、錘案内パイプ74a、キャップ76a、ストッパ78aに比べ、スパチュラ角測定用に重量、大きさが異なっているが、それ以外は基本的に同様の構成である。
【0068】
一方、錘案内パイプ74fの錘70fは、磁石によって上下動自在に制御されるようになるが、本実施形態では、安息角を測定する測定室16aのところで説明した磁石82a、ワイヤ84a、駆動部86aを利用する手段となっている。
【0069】
具体的には、測定室16f内に錘案内パイプ74fを配置するにあたり、安息角を測定する測定室16a内の錘案内パイプ74aと同一位置に配置することで、磁石82a、ワイヤ84a、駆動部86aの共有化を図っている。
【0070】
これにより、測定室16fが供給位置Pに位置決めされることで、貫通孔90f、88fを介して錘案内パイプ74fと磁石82aとが上下に対向し合う位置関係に設定されている。
【0071】
(作用、効果)
以下、本実施形態の作用、効果について述べる。本実施形態では、まず、粉体特性の測定項目に応じて測定室16a〜fのどの室で測定するかを選定し、ターンテーブル26を回転させてその測定室を供給位置Pに位置決めする。
【0072】
(1)安息角、崩壊角、差角を測定する場合には、測定室16aを選定して安息角を測定する。次に、錘70aによる落下時の振動によって粉体堆積層34aを崩壊させ、崩壊した粉体堆積層の崩壊角を測定する。その安息角と崩壊角の測定位置から計算式に基づき差角を算出する。
【0073】
(2)かさ密度を測定するには、測定室16bを供給位置Pに位置決めした後、収容容器104b内に投下された粉体をすり切り部材106bですり切り、粉体堆積層34bの重量を測定する。この時の自然落下時の粉体堆積層の重量がゆるみ見掛け比重となる。また、振動を与え圧縮充填された粉体堆積層の重量がかため見掛け比重となる。そのゆるみ見掛け比重とかため見掛け比重の測定値から計算式に基づき圧縮度を算出する。
【0074】
(3)凝集度の測定は、かさ密度測定時の計算式により算出された圧縮度の値から、メッシュの異なるフルイがセットされた各測定室16c、16d、16eの1つを選択し、選択した、例えば、測定室16cを供給位置Pに位置決めし、測定を行うことで凝集度の測定を行える。
【0075】
これにより、一台の粉体特性測定装置により効率よく迅速に正確な各測定を行えるようになる。
【0076】
(4)スパチュラ角および崩壊角の測定は、測定室16fを供給位置Pに位置決めした後、帯板状のテーブル64fがかくれるまで粉体を投下し、続いてバット62fを下降させて、テーブル64fに載った粉体堆積層34fの傾斜角を測定することでスパチュラ角θfの測定を行える。
【0077】
一方、そのテーブル64fに載った粉体堆積層に振動を与え、崩壊した粉体堆積層の傾斜角を測定することで崩壊角の測定を行える。
【0078】
以上説明したように、本実施形態では、1台の粉体特性測定装置10に複数の独立した測定室16a〜fを設ける点に加えて、フルイ振動発生機構や粉体供給手段等の共有化を図れるようにすることで、部品点数を少なくでき、しかも粉体特性の測定を行うに際し複数の測定項目を1台の装置で効率良く測定することができる粉体特性測定装置10とすることができる。
【0079】
また、本実施形態では、着脱自在な測定ユニットケース18a〜fがそれぞれ測定室16a〜fを形成している。従って、各測定の終了毎に、使用した測定室の測定ユニットケースを取り出して、その測定室内を掃除することと、他の測定ユニットケースで測定することとを併行して行うことができる。従って、測定ユニットケースを設けずに粉体特性測定装置に測定室を直接に形成している場合に比べ、測定にかかる時間が大きく低減し、測定効率が大幅に向上する。
【0080】
また、測定室16aでは、粉体堆積層34aを形成することに加え、粉体堆積層34aに振動を与えて崩壊角を測定できるようになっている。従って、簡易な構成で崩壊角まで精度良く測定することができる。
【0081】
また、本実施形態では、粉体供給部12のホッパー22a、22b、22fは、測定室16a、16b、16fへそれぞれ粉体を投入する専用の測定室粉体投入ホッパーとされている。従って、短時間で高い測定精度で測定することが可能である。
【0082】
なお、以上の説明では、ターンテーブル26を回転させることで測定室16a〜fを回転移動させて粉体の投入対象の測定室を変更する例で説明したが、測定室16a〜fの位置を変更せずに、粉体供給部12の粉体流出口の位置を変更することで粉体の投入対象の測定室を変更する構成にしてもよい。
【0083】
また、本実施形態ではターンテーブル26を回転させることで測定室16a〜fを回転移動させる例で説明したが、長手方向に測定室16a〜fを一列に並べて配置し、測定室16a〜fを直線状に移動させて所望の測定室に粉体供給部12から粉体が投入される構成にしてもよい。また、この場合、測定室16a〜fを移動させずに粉体供給部12を直線状に移動させて所望の測定室に粉体供給部12から粉体が投入される構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 粉体特性測定装置
12 粉体供給部(粉体供給手段)
16a 測定室(第1の測定室)
16b 測定室(第3の測定室)
16f 測定室(第2の測定室)
17 粉体口
18a〜f 測定ユニットケース
22a、b、f ホッパー(測定室粉体投入ホッパー)
26 ターンテーブル(可動ベース台)
32 位置決め制御部(位置決め手段)
34a、b、f 粉体堆積層
36 傾斜角度測定部(傾斜角度測定手段)
38 バックライトパネル(測定手段)
40 撮像部(測定手段)
64a、f テーブル(計測手段)
64b 収容機(計測手段)
70a、f 錘(振動手段)
72a、f 錘受け部材(振動手段)
74a、f 錘案内パイプ(振動手段)
78a、f ストッパ(振動手段)
82a、f 磁石(振動手段)
84a、f ワイヤ(振動手段)
130 電子天秤(測定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給位置で粉体を供給する粉体供給手段と、
前記粉体供給手段からの粉体で、安息角測定用の粉体堆積層を作る計測手段を備えた第1の測定室と、
スパチュラ角測定用の粉体堆積層を作る計測手段を備えた第2の測定室と、
かさ密度測定用の粉体堆積層を作る計測手段およびその粉体堆積層の重さからかさ密度を測定するかさ密度測定手段を備えた第3の測定室と、
前記第1、第2、第3の測定室の全体または前記粉体供給手段のいずれか一方を移動させて、いずれか1つの測定室の粉体口を前記粉体供給手段の供給位置に位置決めする位置決め手段と、
前記第1または第2の測定室が前記粉体供給手段の供給位置に位置決めされ、前記第1または第2の測定室内に作られた粉体堆積層からその粉体堆積層の傾斜角度を測定する傾斜角度測定手段とを有し、
前記第1、第2、第3の測定室は、それぞれ独立して形成されると共に天井部に前記粉体口が設けられていることを特徴とする粉体特性測定装置。
【請求項2】
前記第1の測定室および前記第2の測定室は、粉体堆積層を作る前記計測手段の他に、粉体堆積層に振動を与える崩壊角測定用の振動手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の粉体特性測定装置。
【請求項3】
前記第1、第2、第3の測定室は、それぞれ、可動ベース台に対して着脱自在に配置セット可能な独立した第1、第2、第3の測定ユニットケースに形成されていることを特徴とする請求項1記載の粉体特性測定装置。
【請求項4】
前記粉体供給手段は、少なくとも、前記第1、第2、第3の測定室内へそれぞれ粉体を投入する専用の測定室粉体投入ホッパーを備えていることを特徴とする請求項1記載の粉体特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−88320(P2013−88320A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229918(P2011−229918)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(591058127)メディカテック株式会社 (17)