説明

粉体組成物

【課題】ルースパウダーなどの粉体化粧料に好適な化粧料を提供する。
【解決手段】雲母、タルク、セリサイト、チタンマイカ、合成金雲母及びチタンセリサイトから選択される板状粉体の総質量が、構成する粉体の総重量の80%以上の粉体含有化粧料において、ポリメタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン又はメタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタアクリル酸ステアリルコポリマーとC10〜24のアシルアミノ酸とを含有させる。実質的に、二酸化チタン及び酸化亜鉛を含まない。本発明によれば、ソフトなカバー力を有するルースパウダーなどの粉体化粧料を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料に関し、更に詳細には、ルースパウダーなどの粉体化粧料に好適な化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なベースメークアップは、アンダーメーク、乳化剤形のファンデーション、ルースパウダー及びプレストパウダーを構成要素とし、仕上がるまでに時間を要する形態であった。この為、化粧動作の簡便化と、その様な動作で満足の行く仕上がりが出来る化粧料剤形の開発が為され、プレスした粉体組成物からなる、パウダーファンデーション、揮発油剤を配合し、化粧動作の内に油剤を揮散させ、パウダーの使用を省略したオールインワンファンデーションなどが開発され、次第に主流になるようになってきている。この様な剤形では均一塗布を具現化するために、二酸化チタンなどの隠蔽製粉体を多量に使用していた。この為、最終的な化粧膜を透明性のある板状粉体で構築する、柔らかい印象の仕上がりは望めなくなってきている。
【0003】
一方、板状粉体によるカバー力は、自然なカバー力が望める反面、二酸化チタンなどの隠蔽性粉体なしには充分なカバー力が得られない現状も存した。(例えば、特許文献1を参照)これは板状粉体そのもののカバー力が少ないことと、板状粉体の個々の粒子の面積が大きいため、均一な塗工がしにくいことがその原因であると考えられる。この為、実質的に隠蔽性粉体を実質的に含有しないファンデーションは存在しないし、ルースパウダー或いはソフトプレス剤形のファンデーションも存在しない。
【0004】
他方、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体とするポリマー乃至はコポリマーを粉体とともに化粧料に使用する技術も知られているし、アシル塩基性アミノ酸を粉体とともに化粧料に使用する技術も既に知られている。(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5を参照)しかしながら、板状粉体の総質量が構成する粉体の総重量の80%以上の粉体含有化粧料において、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体として誘導されるポリマー乃至はコポリマーと、C10〜24のアシルアミノ酸とを含有する化粧料は知られていないし、この様な構成を採用することにより、板状粉体の塗工膜の均一性が向上し、優れたカバー力を発揮し、ルースパウダー剤形のファンデーションが具現化することも全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−139629号公報
【特許文献2】特開2001−279129号公報
【特許文献3】特開2001−206909号公報
【特許文献4】特開2006−2147号公報
【特許文献5】特開2005−325057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、ルースパウダー剤形のファンデーションを具現化すべく、板状粉体の塗工均一性の向上手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、板状粉体の塗工均一性の向上手段を求めて鋭意研究努力を重ねた結果、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体として誘導されるポリマー乃至はコポリマーと、C10〜24のアシルアミノ酸とを介在させることにより、その様な塗工均一性が向上することを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>板状粉体の含有量が、構成する粉体の総量の80質量%以上の粉体含有化粧料において、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体として誘導されるポリマー乃至はコポリマーと、C10〜24のアシルアミノ酸とを含有することを特徴とする、化粧料。
<2>前記板状粉体として、雲母、タルク、セリサイト、チタンマイカ、合成金雲母及びチタンセリサイトから選択されるものを含有する、<1>に記載の化粧料。
<3>前記(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体として誘導されるポリマー乃至はコポリマーは、ポリメタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン又はメタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタアクリル酸ステアリルコポリマーであることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の化粧料。
<4>前記C10〜24のアシルアミノ酸は、N−ラウロイルリジンであることを特徴とする、<1>〜<3>の何れかに記載の化粧料。
<5>ルースパウダーであることを特徴とする、<1>〜<4>の何れかに記載の化粧料。
<6>ソフトなカバー力を有することを特徴とする、<1>〜<5>の何れかに記載の化粧料。
<7>実質的に、二酸化チタン及び酸化亜鉛を含まないことを特徴とする、<1>〜<6>の何れかに記載の化粧料。
<8>(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体として誘導されるポリマー乃至はコポリマーと、C10〜24のアシルアミノ酸とからなる、板状粉体の均一塗工促進剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ルースパウダー剤形のファンデーションを具現化すべく、板状粉体の塗工均一性の向上手段を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1>本発明の化粧料の必須成分である板状粉体
本発明の化粧料は、板状粉体を必須成分として含有することを特徴とする。かかる板状粉体としては、化粧品業界で板状粉体として認識されているものを意味し、具体的には、タルク、マイカ、セリサイト、金雲母、合成金雲母、チタンマイカ、チタンセリサイトなどが好適に例示できる。中でも好適なのは、カバー力のある金雲母又は合成金雲母と、滑沢性に優れるタルク又はセリサイトとを組み合わせた形態である。これらの板状粉体の好ましい含有量は、粉体全量に対して80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。又、本発明の化粧料における粉体の含有量は化粧料の全量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0010】
<2>本発明の化粧料の必須成分である(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのポリマー、コポリマー
本発明の化粧料は、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体として誘導されるポリマー乃至はコポリマーを必須成分として含有することを特徴とする。かかるポリマーとしては、メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのホモポリマー、メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ステアリルとのコポリマーが好適に例示できる。かかるポリマー乃至はホモポリマーの好適な分子量は100000〜1500000が好ましく、300000〜1000000がより好ましい。また、前記のコポリマーにおいては、メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリンから誘導される部分とメタクリル酸ステアリルから誘導される部分のモル比は、50:50〜90:10が好ましい。これはこの様な構成の場合に優れた塗布均一性を具現化するためである。かかる成分は既に化粧料用に市販されているものがあり、これを購入して利用することも出来る。市販品としては、メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのホモポリマーである「リピジュア(商標登録)HM」、「バイタルポリマー(商標登録)」(何れも日油株式会社)、メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ステアリルとのコポリマーである、「リピジュアBM」(日油株式会社)などが好ましく例示できる。かかる成分の好ましい含有量は、化粧料全量に対して、0.001〜1質量%であり、より好ましくは、0.01〜0.1質量%である。これは少なすぎると均一化効果を発揮できない場合があり、多すぎるとカバー力を損なう場合が存するからである。かかる成分は、粉体類とともに、混合、粉砕、成形して化粧料とすることも出来るし、予め特定の粉体などに被覆させた後、他の粉体とともに混合、粉砕、成形の工程をとっても構わない。好ましい形態は、予め、板状粉体、好ましくはタルクにメカノケミカルに被覆し、配合する方法である。
【0011】
<3>本発明の化粧料の必須成分であるC10〜24のアシルアミノ酸
本発明の化粧料は、必須成分としてC10〜24のアシルアミノ酸を含有することを特徴とする。C10〜24アシルアミノ酸を構成する、C10〜24のアシル基としては、例えば、ラウロイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、2−エチルヘキサノイル基等が好適に例示でき、ラウロイル基が特に好適に例示できる。又、アミノ酸としては、塩基性アミノ酸が好ましく、中でもリジンが特に好ましい。かかる成分は、ただ一種を含有させることも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。かかる成分の好ましい含有量は、総量で化粧料全量に対して、0.05〜10質量%であり、より好ましくは、0.1〜5質量%である。これは少なすぎると均一化効果を発揮できない場合があり、多すぎるとカバー力を損なう場合が存するからである。かかる成分は、粉体類とともに、混合、粉砕、成形して化粧料とすることも出来るし、予め特定の粉体などに被覆させた後、他の粉体とともに混合、粉砕、成形の工程をとっても構わない。好ましい形態は、予め、板状粉体、好ましくは合成金雲母にメカノケミカルに被覆し、配合する方法である。
【0012】
(4)本発明の化粧料
本発明の化粧料は上記の必須の構成要件を備え、メークアップ化粧料であることを特徴とする。本発明のメークアップ化粧料としては、ルースパウダー剤形であることが好ましく、ファンデーションとして使用することが好ましい。通常ファンデーションにはある程度以上のカバー力が要求されるため、ルースパウダーではファンデーションの具現化が不可能であったが、本発明においては、均一塗布性に優れるため、よれることなく、板状粉体が重層化でき、以て優れたカバー力を具現化できる。
【0013】
本発明の化粧料においては、前記必須構成要素の他に、化粧料の備えても良い構成要素を備えることが出来る。この様な、構成要素としては、例えば、酸化鉄、群青、紺青、網状メチルシロキサン、シリカ、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等の板状粉体に分類されない粉体類、ハイドロジェンメチルポリシロキサン焼き付け処理、ジメチルポリシロキサン焼き付け処理、金属石鹸被覆処理などの粉体類の疎水化処理、フェノキシエタノール、パラベン、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどの防腐手段の添加、賦香処理等が好適に例示できる。
【0014】
本発明の化粧料は、上記必須成分、任意成分とを常法に従って処理することにより製造することが出来る。又、処理の順序を変えることにより、効果は多少異なるものの、同様に得られる。最も好ましい、処理方法は、別途タルクに(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのポリマー、コポリマーをメカノケミカルに被覆させておく、別途合成金雲母にアシルアミノ酸をメカノケミカルに被覆させておく、その後これら被覆粉体、その他の粉体を併せて混合し、オイル、防腐剤などの成分をコーティングし、粉砕する工程を経ることが例示できる。
【0015】
以下に、実施例を挙げて更に詳細に説明を加える。
【実施例1】
【0016】
以下に示す表1の処方に従って、本発明の化粧料である、ルースパウダーを作製した。即ち、イの成分をヘンシェルミキサーで混合し、0.9mm丸穴スクリーン装着パルベライザーで粉砕した。ロの成分をイと同様に処理した。この様に処理したイの成分、ロの成分にハの成分を加えヘンシェルキミサーで混合後、0.9mm丸穴スクリーン装着パルベライザーで粉砕した。これをヘンシェルミキサーに戻し、混合しながらニの成分を噴霧し、コーティングを行った。これを1mmヘリングボーンスクリーンを装着したパルベライザーで粉砕し、容器に小分けし、シフターを乗せ、パフを置き蓋をして本発明の化粧料を得た。同様に処理して、メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリルコポリマーをN−ラウロイルリジンに代えた比較例1、N−ラウロイルリジンをメタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリルコポリマーに代えた比較例2、メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリルコポリマーとラウロイルリジンをタルクに変えた比較例3を作成した。
【0017】
【表1】

【0018】
<評価>
実施例1のルースパウダー、比較例1、比較例2及び比較例3のルースパウダーを専門パネル3名で評価した。評価項目は、「カバー力」「均一性」「よれのなさ」の3項目で、「カバー力」はファンデーションとして充分かどうかの2項目、「均一性」は良い、可もなく不可もなく、難ありの3項目、「よれのなさ」は良い、可もなく不可もなく、難ありの3項目とした。結果を表2に示す。これより、本発明の化粧料は塗工面における化粧料の均一性に優れ、以て優れたカバー力を示していることが判る。
【0019】
【表2】

【実施例2】
【0020】
以下に示す表3の処方に従って、本発明の化粧料を作製した。即ち、イ成分をヘンシェルミキサーで混合し、 0.9mm丸穴スクリーン装着パルベライザーで粉砕した。これをヘンシェルミキサーに戻し、混合しながら、これにロの成分を噴霧し、コーティングを行った。これを1mmヘリングボーンスクリーンを装着したパルベライザーで粉砕し、容器に小分けし、シフターを乗せ、パフを置き蓋をして本発明の化粧料を得た。このものの専門パネラーによる評価は、「ファンデーションとして使用できる」であった。また、このものと実施例1の化粧料とを3人の専門パネラーで比較したところ、3人とも、「実施例1の方がファンデーションとして適している」と判別した。
【0021】
【表3】

【実施例3】
【0022】
実施例1と同様にして、以下に示す表4の処方に従って、本発明の化粧料を作製した。専門パネルによる評価は、「このものはファンデーションとして使用できる程度のカバー力を有している」であり、実施例1の化粧料との比較では、「実施例1の化粧料の方が優れる」であった。
【0023】
【表4】

【実施例4】
【0024】
実施例1と同様にして、以下に示す表5の処方に従って、本発明の化粧料を作製した。専門パネルによる評価は、「このものはファンデーションとして使用できる程度のカバー力を有している」であり、実施例1の化粧料との比較では、「実施例1の化粧料の方が優れる」であった。
【0025】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、化粧料に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状粉体の含有量が、構成する粉体の総量の80質量%以上の粉体含有化粧料において、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体として誘導されるポリマー乃至はコポリマーと、C10〜24のアシルアミノ酸とを含有することを特徴とする、化粧料。
【請求項2】
前記板状粉体として、雲母、タルク、セリサイト、チタンマイカ、合成金雲母及びチタンセリサイトから選択されるものを含有する、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体として誘導されるポリマー乃至はコポリマーは、ポリメタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン又はメタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタアクリル酸ステアリルコポリマーであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記C10〜24のアシルアミノ酸は、N−ラウロイルリジンであることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の化粧料。
【請求項5】
ルースパウダーであることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の化粧料。
【請求項6】
ソフトなカバー力を有することを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の化粧料。
【請求項7】
実質的に、二酸化チタン及び酸化亜鉛を含まないことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の化粧料。
【請求項8】
(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体として誘導されるポリマー乃至はコポリマーと、C10〜24のアシルアミノ酸とからなる、板状粉体の均一塗工促進剤。

【公開番号】特開2013−1674(P2013−1674A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133887(P2011−133887)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】