説明

粉体被膜用の分岐ポリエステル

本発明は、少なくとも77mg KOH/gの酸価を有するカルボキシル酸官能性分岐ポリエステルに関し、前記カルボキシル酸官能性分岐ポリエステルが多塩基有機カルボン酸またはその無水物、好ましくはトリメリット酸無水物、およびテレフタル酸および/またイソフタル酸70から100モル%、および場合によりもう1種類のポリカルボン酸0から30モル%(ポリ酸成分と称す)と、エチレングリコール10から50モル%、少なくとも1種類の他の脂肪族または環状脂肪族ジオールおよび少なくとも1種類のポリオール1.5から15モル%(ポリオール成分と称す)から得られたヒドロキシル官能性分岐ポリエステルの反応生成物であり、それとともに本発明は標準粉体被膜ポリエステルと架橋剤を組合せて使用するとき低光沢、特に35%(60°にて)未満を呈する粉体被膜組成物の調製への当該ポリエステルの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルボン酸無水物でエンドキャップしたポリエステルとその熱硬化性粉体被膜塗布における使用に関する。本発明は顕著な流動性、優れた機械的性質、良好な耐溶剤性および耐候性を備えた低光沢被膜を供する粉体化塗料およびワニスの調製用への前記組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、粉体化熱硬化性組成物は多くの種々な品目を被膜するために広く使用されている。これらの被膜組成物の多くは溶融や硬化後は実際しばしば同程度または90%より大きな高光沢を有する被膜を供する。
【0003】
例えば自動車工業において、車輪リム、バンパーなどのようなある種の付属物を被膜する際、または建造物で使用される金属製パネルや梁を被膜する際には、良質で低光沢の被膜を供する粉体化塗料やワニスに関する要望が増加している。
結合剤としてカルボン酸基を含むポリエステルとアクリル樹脂の混合物を含んでいる粉体被膜組成物は、例えばWO 04/000958にてASTM D523規格の60°の配置で測定する光沢が0から10%を示し、低光沢被膜および“完全艶消し”特性を与えるものと記載されていた。日本特許JP2006−070082の英文抄録は、50未満の酸価の非晶性高分子および70より大きな酸価を有する結晶性ポリエステルを含む低光沢組成物を記載している。日本特許JP10−007944の英文抄録は、これらポリエステルのゲル化時間の差が最少で3分間である非ゲル化ポリエステルを含む低光沢組成物についても記載している。この特許出願の実施例7に記述されている粉体は、酸価15を有するポリエステルおよびエチレングリコールから得られる酸価85を有するポリエステルの混合物から得られると思われる。当該エチレングリコールはポリエステルに高い結晶化度を導く。結晶性ポリエステルは加工が難しく、粉体化加工が難しく高価になる欠点を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO04/000958
【特許文献2】JP2006−070082
【特許文献3】JP10−007944
【特許文献4】US4,727,111
【特許文献5】US4,788,255
【特許文献6】US4076,917
【特許文献7】EP322,834
【特許文献8】EP473,380
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願人は既知のポリエステルの欠点を示さず、既知のカルボン酸基を含有するポリエステルと架橋剤の組合せを結合剤組成物中で使用すると顕著な流動性、優れた機械的性質、耐溶剤性および耐候性を備えた低光沢被膜が得られるような特定のカルボン酸ポリエステルをここに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも77mg KOH/gの酸価を持つカルボン酸官能性分岐ポリエステルに関し、前記カルボン酸官能性分岐ポリエステルは多塩基有機カルボン酸および/またはその無水物と、ヒドロキシル官能性分岐ポリエステルとの反応生成物であり、前記ヒドロキシル官能性分岐ポリエステルは、(i)テレフタル酸および/またはイソフタル酸70から100モル%および場合によりもう1種類のポリカルボン酸0から30モル%(以上をポリ酸成分と称す)と、(ii)エチレングリコール10から50モル%、少なくとも1種類の他の脂肪族または環状脂肪族ジオール50から88.5モル%と少なくとも3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1種類のポリオール1.5から15モル%(以上をポリオール成分と称す)から得られる。
【0007】
カルボン酸官能性分岐ポリエステルの意味は本発明中では、通常では末端に遊離のカルボキシル基を有し、DIN 53402規格により測定するとき少なくとも77mg KOH/gの酸価を有し、2より多くの官能性を含むポリエステルを指す。
【0008】
当該カルボン酸官能性分岐ポリエステルは、好ましくは少なくとも80mg KOH/g、より好ましくは82、そして極めて好ましくは少なくとも85mg KOH/gの酸価を有する。当該酸価は好ましくは120mg KOH/gを超えない。
【0009】
本発明によるカルボキシル官能性分岐ポリエステルは、より好ましくは少なくとも2.5、極めて好ましくは少なくとも3の官能性を有する。官能性とは分子当たりの反応基の平均数を意味する。
【0010】
本発明によるカルボキシル官能性分岐ポリエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定するとき、好ましくは1100から5000、より好ましくは1600から3500の範囲の数平均分子量Mnを有する。
【0011】
本発明によるカルボキシル官能性分岐ポリエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定するとき,好ましくは4000から30000、より好ましくは5000から20000の範囲の重量平均分子量Mwを有する。
【0012】
本発明によるカルボキシル官能性分岐ポリエステルは、好ましくは多分散性を有し、それはMw/Mnで3から7、より好ましくは3.5より大きい。
【0013】
本発明によるカルボキシル官能性分岐ポリエステルは、ASTM D3418による示差走査熱量計にて毎分20℃の熱勾配で測定するとき、好ましくは40から80℃のガラス転移点(Tg)を有する。
【0014】
本発明によるカルボキシル官能性分岐ポリエステルは、ASTM D4287−88により測定するとき、ブルックフィールドのコーンとプレート粘度で5から15000 mPa.s、より好ましくは1000から5000 mPa.sを有する。
【0015】
本発明によるカルボン酸官能性分岐ポリエステルは、ヒドロキシル官能性分岐ポリエステルと多塩基酸および/またはその無水物との反応から得られる。
【0016】
本発明では、ヒドロキシル官能性分岐ポリエステルとは10から100mg/KOH,好ましくは15から70mgKOH/gの水酸基価を持つ遊離ヒドロキシル基を通常末端に有し、そして2より大きな官能性を有するポリエステルを指すことを意味する。当該ヒドロキシル官能性分岐ポリエステルは通常5から60mg KOH/gの残基酸価を有する。
【0017】
本発明で使用されるヒドロキシル官能性分岐ポリエステルはより好ましくは少なくとも2.2の官能性、極めて好ましくは少なくとも2.5の官能性を有する。
【0018】
ヒドロキシル官能性分岐ポリエステルはポリ酸成分とポリオール成分の反応から得られる。ポリ酸に関しては、テレフタル酸70から100モル%および/またはイソフタル酸と場合により他のポリカルボン酸を0から30モル%使用する。これらの他のポリカルボン酸は通常、フマル酸、マレイン酸、o−フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカン二酸、ウンドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸およびそれらに対応する無水物など脂肪族、環状脂肪族または芳香族ジカルボン酸またはそれらの無水物から選ばれる。高い耐久性を目的とするときは多量のイソフフタル酸を多量使用するのが好ましい。
【0019】
当該ポリオール成分に関しては、エチレングリコール10から50モル%、少なくとも1種の他の脂肪族または環状脂肪族ジオール50から88.5モル%および少なくとも3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1種のポリオール1.5から15モル%を用いる。他の脂肪族または環状脂肪族ジオールには、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオールと1,8−オクタンジオール、1,4−シクロシクロヘキサンポリオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンポリオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールと水素化ビスフェノールAから選ばれるのが好ましい。ネオペンチルグリコールが好ましい。他の脂肪族または環状脂肪族ジオールの量は当該ポリオール成分に関して、好ましくは50から88、より好ましくは50から87モル%である。
【0020】
本発明で使用されるヒドロキシル官能性分岐ポリエステルは、少なくとも3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1種類のポリオールから得られる。好ましくは、少なくとも3、より好ましくは8以下のヒドロキシル官能性を有する、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセロールおよびそれらいずれかの混合物が使用される。トリオールが好ましい。グリセロール、トリメチロールプロパンおよびそれらの混合物が特に好ましい。使用される少なくとも3つのヒドロキシル基を有するポリオールの量はポリオール成分に関して、好ましくは少なくとも2モル%で、より好ましくは少なくとも3モル%で、極めて好ましくは少なくとも5モル%である。使用するポリオールの量はポリオール成分に関して好ましくは多くても10モル%である。特に好ましいのは、少なくとも3つの官能性を有する、特にトリオールを1.5から15モル%、好ましくは2から10モル%、そして極めて好ましくは3から10モル%のポリオールから得られる分岐ポリエステルである。
【0021】
本発明のカルボン酸官能性分岐ポリエステルおよび使用されるヒドロキシル官能性分岐ポリエステルは通常非晶性ポリエステルで、それは結晶性が無いかまたは僅かに示し、ASTM D3418の示差走査熱量計にて分当たり20℃の熱上昇で測定しても、融点を示さない。
【0022】
多塩基性有機カルボン酸というのは、少なくとも3つのカルボン酸基を含んでいる有機化合物を指し示すことを意味する。本発明にて使用する多塩基性有機酸および/または多塩基性酸の無水物は、好ましくはトリメリット酸、ピロメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物およびそれらのいずれかの混合物から選ばれる。トリメリット酸無水物が極めて好ましい。
【0023】
本発明によるカルボン酸官能性分岐ポリエステルは、好ましくは少なくとも1つの無水物基の開環反応、より好ましくはヒドロキシル官能性分岐ポリエステルの1モル当たり少なくとも2モルの多塩基性有機カルボン酸無水物から調製される。
【0024】
本発明によるポリエステルは当技術分野では良く知られた従来のエステル化手法を用いて調製してもよい。当該ポリエステルは好ましくは1つ以上の反応工程からなる手順により調製される。これらのポリエステルの調製については、攪伴機、不活性ガス(窒素)導入口、熱電対、水冷却装置に接続した蒸留管、水分離器および減圧接続管を備えた従来型の反応装置を使用する。当該ポリエステルを調製するのに使用したエステル化条件は従来のもので、即ちジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、n−ブチルスズトリオクトエート、硫酸またはスルホン酸のような標準的なエステル化触媒を反応物の0.05から1.50重量%の量で使用可能で、場合により例えばIrganox1010(CIBA社)のような着色安定剤、または亜リン酸トリブチルのようなホスホニット系およびホスフィット系安定化剤のようなフェノール系抗酸化剤を反応物の0から1重量%の量添加できる。ポリエステル化は通常130℃から約190か250℃に次第に上昇させる温度にて、最初は常圧で、次いで必要であれば各工程の終了時では通常減圧にて、望ましいヒドロキシル価および酸価のポリエステルになるまで操作条件を維持しながら実施する。エステル化の程度は反応の過程に生成する水の量、および得たポリエステルの例えばヒドロキシル価、酸価および粘度の性質を測定しながら観測する。
【0025】
本発明によるカルボン酸官能性分岐ポリエステルは、50mg KOH/gより小さな酸価を有する既知のカルボン酸官能性ポリエステルと組合せて使用すると、顕著な流動性、優れた機械的性質、良好な耐溶媒性および耐候性を備えた低光沢被膜を得ることを可能とすることが見出された。
【0026】
本発明はそれゆえ結合剤を含む熱硬化性粉体被膜組成物にも関し、この結合剤100重量部が(A)上記した本発明の少なくとも1種類のカルボン酸官能性分岐ポリエステルを30から70重量部、(B)50mg KOH/gより低い酸価を有する少なくとも1種類のカルボン酸官能性ポリエステルを70から30重量部、および(C)場合によりポリエステル(A)およびカルボン酸基(B)と反応可能な官能基を有する少なくとも1種類の架橋剤を3から20重量部で構成されている。
【0027】
50mg KOH/g未満の酸価を有するカルボン酸官能性ポリエステル(B)は以前に記述されていた。それらは通常テレフタル酸および/またはイソフタル酸とネオペンチルグリコールとの重縮合により1つ以上の工程手順で得られる。テレフタルまたはイソテレフタル酸の15%モルまでは他の環状(脂肪族)または芳香族ポリ酸に置換えることができるが;二塩基酸が好ましい。ネオペンチルグリコールの15%モルまでは他の(環状)脂肪族ポリオールで置換することができるが;ジオールが好ましい。40mg KOH/g未満の酸価のポリエステルが好ましい。30mg KOH/g未満の酸価の直線状ポリエステルが特に好ましい。
【0028】
本発明による組成物中に使用されるポリエステルのカルボン酸基に反応する官能基を有する架橋剤(C)は好ましくは以下から選ばれる:
−室温では固形で、少なくとも分子当たり2つのエポキシ基を有する、例えばトリグリシジルイソシアヌラート(TGIC)、ジグリシジルテレフタラート、トリグリシジルトリメリタートまたはそれらの混合物、およびARALDITE(登録商標)PT910またはPT912(HUNTSMAN社)のようなポリエポキシ化合物。
−好ましくは少なくとも1つ、好ましくは米国特許4,727,111、4,788,255、4076,917、EP 322,834とEP473,380にて述べられたもののような2つのビス(β−ヒドロキシアルキル)アミド基を有するβ−ヒドロキシアルキルアミド。
【0029】
β−ヒドロキシアルキルアミド基を含んでいる化合物が特に好ましい。極めて好ましいのはPRIMID(商標登録)XL−552のような3、好ましくは4つのβ−ヒドロキシアルキル基を有するβ−ヒドロキシアルキルアミド基を含む化合物である。
【0030】
当該ポリエステルに、硬化の間に熱硬化粉体組成物の架橋反応を加速するために架橋触媒を場合により添加することができる。そのような触媒の例にはアミン(例えば、2−フェニルイミダゾリン)、ホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン)アンモニウム塩(例えば、臭化テトラブチルアンモニウムまたは塩化テトラプロピルアンモニウム)、ホスホニウム塩(例えば、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(BETP)または塩化テトラプロピルホスホニウム)が含まれる。これらの触媒は当該結合剤の重量に関して0.1から5%の量を使用するのが好ましい。
【0031】
本発明の熱硬化組成物の結合剤系は、カルボン酸官能性分岐ポリエステル(A)とカルボン酸官能性ポリエステル(B)の中に存在するカルボキシル基の各当量について、架橋剤(C)からのエポキシ基および/またはヒドロキシル基が0.3と2.0の間、好ましくは0.6と1.7の間の当量あるように通常組成されている。
【0032】
当該熱硬化性ポリエステル混合物(A)と(B)は、粉体塗料成分のプレミックス用に使用できる機械的混合手順を用いてポリエステルを乾燥混合することにより得ることができる。当該ポリエステル(A)と(B)の両方は従来型のシリンダー状二重壁反応装置を用いてまたはBuss Ko−KneterかAPV−押出機のような押出しで溶解物中にて混合もできる。
【0033】
上記した成分に加えて、本発明の目的内の組成には、例えばRESIFLOW(登録商標)P−67およびPV5(WORLEE社)、ADDITOL(登録商標)、MODAFLOW(登録商標)(CYTEC社)、ACRONAL(登録商標)4F(BASF社)のような流動調整剤、Benzoin(BASF社)のような脱ガス剤、充填剤、TINUVIN(登録商標)900(CIBA社)のような紫外線吸収剤、TINUVIN(登録商標)(CIBA社)144(CIBA社)のようなヒンダードアミン光安定剤、TINUVIN(登録商標)312と1130(CIBA社)のような他の安定剤、IRGANOX(登録商標)1010(CIBA社)のような抗酸化剤、およびホスホニットまたはホスフィット型の安定剤、顔料と色素のような1種類以上の成分が含まれる。
【0034】
着色および透明なラッカーの両方が調製できる。種々の色素および顔料が本発明の組成に使用できる。有用な顔料および色素の例は:二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛など、水酸化金属類、金属粉体類、スルフィド類、スルファート類、カーボナート類、ケイ酸アンモニウムのようなシリカート類、カーボンブラック、タルク、陶土、バライト、紺青、レッドブルー(lead blue)、有機系赤色、有機系えび茶色など。当該熱硬化性粉体組成物は通常これらの成分を50重量部未満含有している。
【0035】
本発明の組成物の成分はミキサーまたは混合機(例えばドラムミキサー)の中にて乾燥混合で混合してもよい。当該プレミックス物はそののち通常50から120℃の温度範囲でBUSS−Ko−Kneterのような単軸押出し機またはPRISMかAPVのような二軸押出し機にて均一化する。当該押出し物は冷却して、範囲10から150μmの粒子サイズの粉体に磨り潰される。当該粉体化組成物は静電CORONA銃または摩擦帯電TRIBOスプレイ銃のような粉末銃を用いて基材に蒸着してもよい。他方では、流動床手法のような粉末蒸着の良く知られた方法も使用することができる。蒸着ののち、当該粉体は通常160と250℃の間、好ましくは約200℃の温度に加熱すると、当該粒子は流動し、互いに溶融して基材表面に滑らかで、均一で、連続的で、細孔がない被膜を形成する。
【0036】
本発明の熱硬化粉体組成物は金属と同じように非金属性基材の被膜をするのに使用してもよい。本発明の熱硬化性粉体組成物は顕著な流動性を備え、低光沢被膜、優れた機械的性質、良好な耐溶剤および耐候性を得ることを可能とする。
【0037】
低光沢および“完全艶消し”特性さえも呈する低光沢被膜が得られる。ASTM D523規格により60°の配置で測定した光沢は40%未満、特に35%未満そして0から10%さえも得ることができる。
【0038】
使用した被膜材料が本発明の熱硬化性粉体被膜組成物である完全または部分的被覆された基材が本発明の目的でもある。以下の実施例は本発明のより良い理解のために提出したが、それにより制限は受けるものではない。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
ネオペンチルグリコール890部、エチレングリコール176部およびグリセロール60部を、攪伴機、水冷却濃縮装置に接続した蒸留管、窒素用入口および熱制御装置に取り付けた温度計を装備した従来型4つ口丸底フラスコに入れる。フラスコ内容物を窒素下で攪伴しながら約140℃の温度まで加熱し、その時点でテレフタル酸1406部、イソフタル酸192部およびモノブチルスズ酸化物2.2部を添加する。当該フラスコ内容物を更に235℃まで加熱する。反応を大気圧下にて235℃で、以下の特長を有するヒドロキシル官能性化プレポリマーが得られるまで継続し:AN=12mg KOH/g、OHN=57mg KOH/g、Brfid200℃(コーン/プレート)=400mPa.s、そののち当該フラスコ内容物を190℃まで冷却する。
【0040】
190℃にしてある第一工程のヒドロキシル官能性ポリマーに、アジピン酸140部およびトリイソオクチルホスフィット4.5部を添加する。その後すぐに、当該混合物を除々に225℃まで加熱し、以下の特性を有する樹脂が得られるまで僅かな減圧とする:AN=21mg KOH/g、OHN=34mg KOH/g、Brfld200℃(コーン/プレート)=1900mPa.s、そののち当該フラスコ内容物は190℃まで冷却する。
【0041】
190℃にあるこの第二工程のポリマーに、トリメリット酸無水物372部を加え、当該混合物を徐々に加熱し、以下の特性の樹脂が得られるまで継続する:AN=90mg KOH/g、Brfld200℃(コーン/プレート)=2500mPa.s。カルボニル官能性ポリエステルをそののち冷却する。Brfld200℃(コーン/プレート)粘度3500mPasのポリエステルが得られた。
【0042】
(実施例2から4および比較例5Rから9R):
表1に記述したような成分と量(重量部)を使用したのを除いては実施例1の手順に従った。
【0043】
得られたポリエステルの性質は表1に述べる。
【0044】
【表1】


結合剤として、実施例1、2または比較例5Rから9Rをそれぞれ372部、50mg KOH/g未満の酸価のカルボキシル基を有するポリエステルで、CRYLCOAT(商標登録)E04211の名で市販されているもの372部、硬化剤(β−ヒドロキシアルキルアミド PRIMID(商標登録)XL−552)60部およびそれに加えて流動調整剤MODAFLOW(商標登録)P6000を10部、ベンゾイン3部、Blanc Fixe ABR148部および茶色顔料RAL8014を35部、を含む粉体被膜組成物を調製した。
【0045】
当該組成物の成分をMTIミルにて2000rpmで混合した。当該プレミックス物をそののちBuss PCS30押出し機を用いて50から200℃の温度範囲にて均一化した。当該押出し物は冷却して粉体化し、篩にかけ約90μmの粒径の粉体を得た。当該粉体化組成物を、GEMAスプレイ銃を用いて静電気蒸着で冷い圧延鋼板上に蒸着させた。50と80μmの間の厚さにて、パネルを空気換気オーブンに移し、200℃の温度で10分間硬化させた。
【0046】
CRYLCOAT(登録商標)E04238の名前で市販されている50mg KOH/gより低い酸価のカルボン酸官能性ポリエステルの組合せで使用した点を除くが、実施例3の分岐ポリエステルを用いて粉体組成物を調製し、上記したのと同じ方法で塗布した。
【0047】
CRYLCOAT(登録商標)E04251の名前で市販されている50mg KOH/gより低い酸価の超耐用カルボン酸官能性ポリエステルの組合せで使用した点を除くが、実施例4の分岐ポリエステルも同じように用いて粉体組成物を調製し、上記したのと同じ方法で塗布した。
【0048】
全ての事例で、基材表面に滑らかで、均一で、細孔のない被膜が得られた。
【0049】
仕上がった被膜についての塗料特性を下の表2に示す。最終的目的は、ASTM D523規格による60°でのそれらの光沢(%)に関して評価することである。
【0050】
これらの結果で、予期していない性質が本発明の分岐ポリエステルで得られた。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも77mg KOH/gの酸価を持つカルボン酸官能性分岐ポリエステルであって、
当該カルボン酸官能性分岐ポリエステルは多塩基有機カルボン酸および/またはその無水物と、ヒドロキシル官能性分岐ポリエステルとの反応生成物であり、
当該ヒドロキシル官能性分岐ポリエステルは、(i)テレフタル酸および/またはイソフタル酸70から100モル%、および場合によりもう1種類のポリカルボン酸0から30モル%(以上をポリ酸成分と称す)と、(ii)エチレングリコール10から50モル%、少なくとも1種類の他の脂肪族または環状脂肪族ジオール50から88.5モル%および少なくとも3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1種類のポリオール1.5から15モル%(以上をポリオール成分と称す)から得られる、
カルボン酸官能性分岐ポリエステル。
【請求項2】
当該多塩基有機カルボン酸の無水物がトリメリット酸無水物である、請求項1記載のポリエステル。
【請求項3】
前記他の脂肪族または環状脂肪族ジオールがネオペンチルグリコールである、請求項1または2のいずれか一項に記載のポリエステル。
【請求項4】
当該ポリオールがトリオールである、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリエステル。
【請求項5】
当該トリオールがグリセロール、トリメチロールプロパンまたはそれらの混合物である、請求項4に記載のポリエステル。
【請求項6】
3から7の多分散性Mw/Mnを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリエステル。
【請求項7】
当該ヒドロキシル官能性分岐ポリエステルが少なくとも2.2の官能性を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリエステル。
【請求項8】
結合剤を含む熱硬化性粉体被膜組成物であって、
当該結合剤の100重量部が(A)請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1種類のカルボン酸官能性分岐ポリエステルを30から70重量部、(B)50mg KOH/gより低い酸価を有する少なくとも1種類のカルボン酸官能性ポリエステルを70から30重量部、および場合により(C)ポリエステル(A)およびカルボン酸基(B)と反応可能な官能基を有する少なくとも1種類の架橋剤を3から20重量部で構成されている、
結合剤を含む熱硬化性粉体被膜組成物。
【請求項9】
当該架橋剤(C)がβ‐ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
使用した被膜材料が請求項8または9のいずれか一項に記載の粉体被膜組成物である、全体にまたは部分的に被膜された基材。

【公表番号】特表2010−523780(P2010−523780A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502478(P2010−502478)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053436
【国際公開番号】WO2008/125417
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(509282295)サイテック イタリー、エス.アール.エル. (2)
【Fターム(参考)】