説明

粉塵の種別判別装置および粉塵の種別判別方法

【課題】製鉄所の敷地内あるいは製鉄所の周辺で捕集された粉塵を、少なくとも、鉄の製造に由来する粉塵と、鉄の製造に由来しない粉塵である珪砂とに精度高く判別すること。
【解決手段】粉塵が捕集された粉塵捕集板11と、粉塵捕集板11上の粉塵に対して照明光を照射する下部照明部14と、下部照明部14によって透過照明された前記粉塵の透過明暗画像D2を取得する撮像部12と、透過明暗画像D2をもとに前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別する判別処理部25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塵の種別を判別する粉塵の種別判別装置および粉塵の種別判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、製鉄所からは多くの粉塵が発生し、周辺地域へ飛散する。ここで、鉄の製造に由来する粉塵の主なものとしては、石炭、コークス、鉄鉱石、焼結石、スラグ、石灰などがあり、この他のものとしては、製鉄所内敷地から舞い上がって飛散する砂がある。この周辺地域への粉塵の飛散を防止することは、製造業者の義務であり、粉塵の発生防止のために、製鉄所を含めた広い地域に渡って飛散状況を把握する必要がある。
【0003】
一方、自然界には珪砂を主体とした砂塵が常に飛散しており、このために何らかの方法で粉塵を捕集し計測する際に、粉塵を、鉄の製造に由来する粉塵と、元来自然界に舞っている珪砂と、に区別することが重要である。この区別ができなければ、製鉄所において取り組む粉塵防止対策の効果を確認することができないからである。
【0004】
ここで、粉塵を計測する従来技術としては、市販品を含めて多くの方法が知られており、代表的なものはパーティクルカウンターと呼ばれる粉塵計を用いるものがある。このパーティクルカウンターは、例えば捕集容器に入れた試料空気にレーザー光を照射し、粉塵粒子から生じる散乱光の強度を測定するものである。この散乱光の強さは、粉塵の濃度と相対的に比例することが知られており、パーティクルカウンターを用いて、散乱光の強さをフォトダイオードによって電気信号に変換することで空気中の粉塵濃度を測定することができる。
【0005】
一方、特許文献1には、石炭とコークスとを見分ける方法が記載されている。この方法は、捕集された粉塵にヨウ素をドープし、エタノールで洗浄した後、元素分析の手法を用いて、個々の粒子が石炭であるかコークスであるかを判別している。なお、その他の粒子は、顕微鏡による目視によって判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−248655号公報
【特許文献2】特開2006−126061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、鉄の製造に由来する粉塵は、その特性に基づいて3つのグループに分類することができる。その第1のグループは、石炭とコークスである。これらは、一般の粉塵にはほとんど含まれておらず、炭素を主成分とする黒い粒子であり、様々なものに付着して外観を損ねる場合がある。
【0008】
その第2のグループは、鉄鉱石と焼結鉱の微粉である。これらは、鉄および酸化鉄を主成分とするため赤みを帯び、自動車の屋根などに堆積すると錆びを誘発する場合がある。
【0009】
その第3のグループは、石灰とスラグである。これらは、白色あるいは黄色がかった白色であり、大量に飛散すると濃色の物品の外観を損ねる場合がある。
【0010】
そして、一般の砂塵である、上述した元来自然界に舞っている珪砂は、鉄の製造に由来しない粉塵として第4のグループに分類される。この珪砂は、主成分が二酸化珪素すなわち石英の多結晶であり、すりガラスの微小粒のように白色調の透明または半透明の粒子である。このため、珪砂は、通常の照明下では、第3のグループである石灰やスラグと区別することが難しい。また、珪砂は、不純物により黄色または赤茶色の色を有する場合も多く、この場合、珪砂は、第2のグループである鉄鉱石や焼結鉱と区別することが難しい。
【0011】
すなわち、通常の照明下では、珪砂は、第3のグループや第2のグループとして判別される場合があり、製鉄所の敷地内あるいは製鉄所の周辺で捕集された粉塵を、鉄の製造に由来する粉塵と、元来自然界に舞っている珪砂である鉄の製造に由来しない粉塵とに精度高く判別することができない場合があるという問題点があった。この結果、鉄の製造に由来する粉塵と、鉄の製造に由来しない粉塵との定量測定を精度高く行うことができなかった。
【0012】
なお、第1のグループである石炭やコークスのような黒色の粉塵は、日本の砂塵としては非常に稀であるため、顕微鏡などによる目視で容易に判別することができる。また、特許文献2には、石炭とコークスを複雑な工程によって見分けることができるものが記載されているが、鉄鉱石、焼結鉱、スラグ、石灰などの鉄の製造に由来する粉塵を、一般の珪砂と区別することができない。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、捕集された粉塵を、少なくとも、鉄の製造に由来する粉塵と、鉄の製造に由来しない粉塵である珪砂とに精度高く判別することができる粉塵の種別判別装置および粉塵の種別判別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる粉塵の種別判別装置は、粉塵を捕集することができる粉塵捕集板と、前記粉塵捕集板上に捕集された前記粉塵に対して照明光を照射する照明手段と、前記照明手段によって照明された前記粉塵の透過明暗画像を取得する撮像手段と、前記透過明暗画像をもとに前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別する判別手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる粉塵の種別判別装置は、上記の発明において、前記撮像手段は、前記粉塵のカラー画像を取得し、前記判別手段は、前記カラー画像をもとに、前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別し、さらに該鉄の製造に由来する粉塵のうち、黒色系の粉塵を石炭あるいはコークスの粉塵と判別し、赤色系の粉塵を鉄鉱石あるいは焼結石の粉塵と判別し、白色系の粉塵をスラグあるいは石灰の粉塵と判別することを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる粉塵の種別判別装置は、上記の発明において、前記照明手段は、前記粉塵捕集板上の粉塵の上部から前記照明光を照射し、前記判別手段は、前記粉塵の明暗をもとに前記照明光の透過度を取得することを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる粉塵の種別判別装置は、上記の発明において、前記粉塵捕集板は、光を透過可能であり、前記照明手段は、前記粉塵捕集板上の粉塵の上部および下部から前記照明光を照射することが可能であり、前記撮像手段は、前記照明手段が前記粉塵の上部から照明光が照射された場合に前記粉塵捕集板上の粉塵の上部から撮像したカラー画像を取得し、前記照明手段が前記粉塵の下部から照明光が照射された場合に前記粉塵捕集板上の粉塵の上部から撮像した透過明暗画像を取得することを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる粉塵の種別判別装置は、上記の発明において、前記照明手段は、前記粉塵捕集板上の粉塵の上部から照明光を照射する上部照明手段と、前記粉塵捕集板上の粉塵の下部から照明光を照射する下部照明手段と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる粉塵の種別判別方法は、粉塵が捕集された粉塵捕集板上の前記粉塵に対して照明光を照射して前記粉塵の透過明暗画像を取得する撮像ステップと、前記透過明暗画像をもとに前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別する判別ステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる粉塵の種別判別方法は、上記の発明において、前記撮像ステップは、前記粉塵に対して照明光を照射して前記粉塵のカラー画像を取得し、前記判別ステップは、前記カラー画像をもとに、前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別し、さらに該鉄の製造に由来する粉塵のうち、黒色系の粉塵を石炭あるいはコークスの粉塵と判別し、赤色系の粉塵を鉄鉱石あるいは焼結石の粉塵と判別し、白色系の粉塵をスラグあるいは石灰の粉塵と判別することを特徴とする。
【0021】
また、本発明にかかる粉塵の種別判別方法は、上記の発明において、前記粉塵捕集板は、光を透過可能であり、前記撮像ステップは、前記粉塵の上部から照明光を照射して前記粉塵捕集板上の粉塵の上部から撮像したカラー画像を取得するとともに、前記粉塵の下部から照明光を照射して前記粉塵捕集板上の粉塵の上部から撮像した透過明暗画像を取得することを特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかる粉塵の種別判別方法は、上記の発明において、前記判別ステップは、前記カラー画像あるいは前記透過明暗画像をもとに、前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別する第1判別ステップと、前記カラー画像をもとに、前記鉄の製造に由来する粉塵のうち、黒色系の粉塵を石炭あるいはコークスの粉塵と判別し、赤色系の粉塵を鉄鉱石あるいは焼結石の粉塵と判別し、白色系の粉塵をスラグあるいは石灰の粉塵と判別する第2判別ステップと、を含むことを特徴とする。
【0023】
また、本発明にかかる粉塵の種別判別方法は、上記の発明において、前記判別ステップは、前記カラー画像をもとに、前記鉄の製造に由来する粉塵のうち、黒色系の粉塵を石炭あるいはコークスの粉塵と判別し、赤色系の粉塵を鉄鉱石あるいは焼結石の粉塵と仮判別し、白色系の粉塵をスラグあるいは石灰の粉塵と仮判別する第1判別ステップと、前記カラー画像あるいは前記透過明暗画像をもとに、前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別する第2判別ステップと、前記第1判別ステップで仮判別された鉄鉱石あるいは焼結石の粉塵および仮判別されたスラグあるいは石灰の粉塵のうち、前記第2判別ステップで珪砂と判別された粉塵を除外した粉塵をそれぞれ鉄鉱石あるいは焼結石の粉塵およびスラグあるいは石灰の粉塵として判定する第3判別ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、照明手段が、粉塵捕集板上の粉塵に対して照明光を照射し、撮像手段が前記照明手段によって照明された前記粉塵の透過明暗画像を取得し、判別手段が前記透過明暗画像をもとに前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別するようにしているので、少なくとも、鉄の製造に由来する粉塵と、鉄の製造に由来しない粉塵である珪砂とに精度高く判別することができる。
【0025】
ここで、あらゆる産業分野において周辺環境を汚染しないための対策は極めて重要な責務となっており、鉄鋼業においては飛散する粉塵の抑制が課題となっており、発生源の特定、発生量の把握、飛散の抑制対策が必要であり、そのために、飛散状況を定量的に把握することが求められていた。製鉄所からは、上述した第1〜第3のグループの粉塵が発生するが、それぞれの発生源は異なっているため、種別を区分けして測定することが重要である。従来の粉塵計などでは、全く粉塵の種別を判別することができず、また自然界の粉塵も区別することができなかった。本実施の形態では、鉄の製造に由来する粉塵(第1〜第3のグループ)と、鉄の製造に由来しない粉塵第(第4グループ)とに区分けし、さらに鉄の製造に由来する粉塵を第1〜第3のグループに区分けしているので、鉄の製造に由来する粉塵のみを定量的に測定することができるため、たとえば製鉄所周辺において捕集した粉塵を本発明によって測定することによって、操業状態と気象条件との関係、飛散防止対策の有効性などを的確に把握することが可能となる。これによって、製鉄所側では、本発明を用いることによって、さらなる粉塵飛散防止対策が可能となり、製鉄所周辺住民にとっては、本発明を用いることによって、環境監視をさらに的確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる粉塵の種別判別装置を模式的に示したブロック図である。
【図2】図2は、図1に示した粉塵の種別判別装置による粉塵の判別処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図3は、カラー画像をもとに粉塵の種別を判別する手順を示す図である。
【図4】図4は、透過明暗画像をもとに粉塵の種別を判別する手順を示す図である。
【図5】図5は、カラー画像および透過明暗画像の判別結果をもとに最終的な粉塵の種別の判別処理手順を示す図である。
【図6】図6は、粉塵の定量的な色識別処理の具体例を示す図である。
【図7】図7は、粉塵の定量的な色識別処理を他の具体例を示す図である。
【図8】図8は、判別処理部によるカラー画像をもとにした色識別処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、判別処理部による透過明暗画像をもとにした透過識別処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、図1に示した粉塵の種別判別装置による粉塵の他の判別処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、図10に示したフローチャートをもとに最終的な粉塵の種別の判別処理手順を示す図である。
【図12】図12は、透過明暗画像の取得のみによる粉塵の種別の判別処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、本発明の実施の形態2にかかる粉塵の種別判別装置を模式的に示したブロック図である。
【図14】図14は、図13に示した粉塵の種別判別装置によって透過度が求められる原理を説明する説明図である。
【図15】図15は、本発明の実施の形態3にかかる粉塵の種別判別装置を模式的に示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明にかかる粉塵の種別判別装置および粉塵の種別判別方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0028】
ここで、粉塵は、上述したように、第1〜第4のグループに分類され、第1〜第3のグループが鉄の製造に由来する粉塵とし、第4のグループが鉄の製造に由来しない粉塵、つまり珪砂とするものであったが、通常の照明下での色情報のみでは、第2のグループである鉄鉱石や焼結鉱、あるいは第3のグループである石灰やスラグと、第4のグループである珪砂との判別が難しかったため、粉塵を、鉄の製造に由来する粉塵と、珪砂とに精度高く判別することができなかった。そこで、本発明者らは、鉄の製造に由来する粉塵に対する光の透過度に比して、珪砂に対する光の透過度が大きいことに着目し、粉塵を、鉄の製造に由来する粉塵と掲載とに判別できることを見出した。
すなわち、粉塵を透過照明顕微鏡で観察すると、第4のグループの珪砂のみの透過度が大きくなることがわかり、これによって第1〜第3のグループである鉄の製造に由来する粉塵と第4のグループである珪砂とを判別できることがわかった。なお、第3のグループである石灰やスラグに対する光の透過度が低いのは、観察される粒子そのものが細かい粒子の集合構造となっており、この構成によって光が散乱しているものと推定される。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる粉塵の種別判別装置の構成を模式的に示したブロック図である。図1に示すように、粉塵の種別判別装置1は、製鉄所の敷地内あるいは製鉄所の周辺で捕集された粉塵の画像を取得する画像取得部10と、画像取得部10の駆動制御を行うとともに、取得された画像をもとに粉塵の種別を判別する処理制御を行う制御装置20とを有する。
【0030】
画像取得部10は、粉塵捕集板11上の粉塵を観察するための近同軸落射リング白色照明と透過白色照明とを行う顕微鏡であり、取得された画像は、制御装置20側に送られる。
【0031】
粉塵捕集板11は、光を透過可能であり、この粉塵捕集板11上に、製鉄所の敷地内あるいは製鉄所の周辺で一定期間暴露することによって捕集された粉塵Sが配置される。なお、この粉塵捕集板11は、図示しない試料台に載置される。粉塵捕集板11は、観察される粉塵Sの色と混同しない色の透過材料で形成され、例えば空色の半透明の薄いビニールテープ11aと、1mm程度の厚さをもつ透明のガラスプレート11bとを重ねている。ビニールテープ11a上には、粉塵Sが捕集された状態となり、ガラスプレート11bは、ビニールテープ11aを保持するようにしている。なお、粉塵Sの粒径は、μm以下から500μm程度のものまで様々であるが、この実施の形態では、1μmから100μm程度までの粉塵Sが用いられている。
【0032】
画像取得部10は、鏡筒12a、画像検出部12b、および撮像素子12cを有した撮像部12を有する。鏡筒12aの先端側には対物レンズが配置され、鏡筒12a内の光学系を介して粉塵Sの画像を、たとえば100〜300倍程度に拡大し、撮像素子12cで撮像する。鏡筒12aの軸周辺には、リング状に配置され、粉塵Sに白色照明光を照射する上部照明部13を有する。すなわち、撮像部12と上部照明部13とで、近同軸落射リング白色照明型実体顕微鏡を構成している。
【0033】
一方、粉塵捕集板11の下部側には透過照明光を照射する下部照明部14が設けられ、撮像部12と下部照明部14とで、透過照明側顕微鏡を構成している。なお、上部照明部13による照明と下部照明部14による照明とは、制御装置20の制御によって排他的に切り替えられる。また、撮像素子12cは、カラー画像を撮像可能な固体撮像素子であり、たとえば、CCDデバイスやCMOSデバイスによって実現される。また、上部照明部13および下部照明部14は、鏡筒12aの軸にほぼ平行な指向性が小さい均一照明光を粉塵Sに対して照射する。
【0034】
上部照明部13は、粉塵捕集台11の上方に設けられ、上部側からの照明手段として、粉塵捕集台11に載置された捕集粉塵Sを粉塵捕集台11の上部側から照明する。上部照明部13は、白色光を発するリング照明である。なお、上部照明部13は、リング照明に限らず、捕集粉塵Sに対して指向性の少ない均一な照明を行うことができればよい。また、上部照明部13は、粉塵捕集台11の上方に設けられるものを例示したが、これに限らず、粉塵捕集台11に載置された捕集粉塵Sを粉塵捕集台11の上部側から照明することができればよい。例えば、上部照明部13は、粉塵捕集台11の下方に設けられ、反射鏡等によって、粉塵捕集台11の上部側から照明するようにしてもよい。
【0035】
下部照明部14は、粉塵捕集台11の下方に設けられ、下部側からの照明手段として、粉塵捕集台11に載置された捕集粉塵Sを粉塵捕集台11の下部側から照明する。下部照明部14は、白色光を発する照明である。なお、下部照明部14は、捕集粉塵Sに対して指向性の少ない均一な照明を行うことができればよい。また、下部照明部14は、粉塵捕集台11の下方に設けられるものを例示したが、これに限らず、粉塵捕集台11に載置された捕集粉塵Sを粉塵捕集台11の下部側から照明することができればよい。例えば、下部照明部14は、粉塵捕集台11の上方に設けられ、反射鏡等によって、粉塵捕集台11の下部側から照明するようにしてもよい。
【0036】
制御装置20は、制御部21、出力部22、入力部23および記憶部24を有し、制御部21は、判別処理部25を有する。制御部21は、出力部22、入力部23、記憶部24を制御するとともに、画像取得部10を制御する。判別処理部25は、上部照明部13による照明をオンにし、下部照明部14による照明をオフにし、粉塵Sのカラー画像を取得させ、記憶部24内にカラー画像D1として記憶させ、上部照明部13による照明をオフにし、下部照明部14による照明をオンにし、粉塵Sの透過明暗画像を取得させ、記憶部24内に透過明暗画像D2として記憶させる。そして、判別処理部25は、記憶されたカラー画像D1による色情報と透過明暗画像D2による透過度とをもとに、粉塵Sを鉄に由来する粉塵(第1〜第3のグループ)と珪砂(第4のグループ)とに判別するとともに、鉄に由来する粉塵を第1〜第3のグループにさらに判別する。なお、判別処理部25は、判別結果を判別情報D3として記憶部24に記憶し、入力部23からの指示等によって出力部22等に判別情報D3を出力する。
【0037】
ここで、図2に示したフローチャートを参照して、判別処理部25による粉塵の種別判別処理手順について説明する。画像取得部10には、捕集された粉塵Sを有する粉塵捕集板11が配置されており、判別処理部25は、入力部23から判別指示の入力があったか否かを判断し(ステップS101)、判別指示の入力があった場合(ステップS101,Yes)に限り、上部照明部13をオンにし(ステップS102)、粉塵Sのカラー画像を撮像し、この撮像したカラー画像を記憶部24内にカラー画像D1として記憶する(ステップS103)。その後、上部照明部13をオフにする(ステップS104)。
【0038】
その後、下部照明部14をオンに(ステップS105)、粉塵Sを透過した透過明暗画像を撮像し、この撮像した透過明暗画像を記憶部24内に透過明暗画像D2として記憶する(ステップS106)。その後、下部照明部14をオフにする(ステップS107)。
【0039】
その後、判別処理部25は、取得されたカラー画像D1をもとに、色識別処理を行い、黒色系の粉塵を第1のグループ(石炭,コークス)として判別するとともに、赤色系の粉塵を第2のグループ(鉄鉱石,焼結鉱)として仮判別し、黄色がかった白色を含む白色系の粉塵を第3のグループ(石灰,スラグ)として仮判別する(ステップS108)。
【0040】
さらに、判別処理部25は、取得された透過明暗画像D2をもとに、透過識別処理を行い、所定値以上の透過度(輝度または明度)をもつ粉塵を第4のグループ(珪砂)として判別する(ステップS109)。ここで、カラー画像D1と透過明暗画像D2とは、同一視野内の画像であり、各粉塵Sは、それぞれ対応した位置で認識される。そして、判別処理部25は、仮判別された第2および第3のグループの粉塵から第4のグループとして判別された粉塵を除いたものを第2および第3のグループとして判別する(ステップS110)。
【0041】
これによって、各粉塵Sは、すべて第1〜第4のグループへの判別が確定され、それぞれ判別された第1〜第4のグループに属する粉塵の情報を判別情報D3として記憶部24に記憶する(ステップS111)。そして、制御部21は、この判別情報D3を用いた粉塵計測処理およびその結果出力処理を行って(ステップS112)、本処理を終了する。この粉塵計測処理とは、各第1〜第4のグループに属する粉塵の数を計測する処理などであり、結果出力処理とは、その処理結果を出力部22に表示出力する処理などである。
【0042】
ここで、図3〜図5を参照して、具体的な粉塵の種別判別処理について説明する。まず、図3(a)は、粉塵捕集板11上に捕集された粉塵Sの一例を示している。図3(a)では、実際に配置されている粉塵Sを示し、左から、第1のグループの粉塵1−1〜1−3、第2のグループの粉塵2−1〜2−3、第3のグループの粉塵3−1〜3−3、第4のグループの粉塵4−1〜4−3が、それぞれ列L1〜L4として列として3つずつ配置されている。
【0043】
図3(b)は、これらの粉塵Sに対してのカラー画像D1である。判別処理部25は、このカラー画像D1に対して、図3(c)に示した判別情報D31に示すように、黒色系の粉塵に識別符号B−1〜B−3を付し、第1のグループの粉塵として判別し、赤色系の粉塵に識別符号R−1〜R5を付し、第2のグループの粉塵として仮判別し、白色系の粉塵に識別符号W−1〜W−4を付し、第3のグループとして仮判別する(ステップS108参照)。なお、図3(d)に示した判別情報D32に示すように、識別符号B−1〜B−3が付された粉塵は黒色系であり、黒色系の粉塵は非常に稀であるため、石炭、コークスなどの第1のグループの粉塵1−1〜1−3として確定した判別が行われる。
【0044】
一方、図4(a)は、図3(a)と同じ実際の粉塵Sの配置状態を示しており、図4(b)は、この粉塵Sに対しての透過明暗画像D2である。判別処理部25は、この透過明暗画像D2に対して、図4(c)に示した判別情報D33に示すように、所定値よりも低い透過度をもつ粉塵に対しては識別符号F−1〜F−9を付し、所定値以上の透過度をもつ粉塵に対しては、そのまま珪砂であるとして、第4のグループの粉塵4−1〜4−3として確定した判別を行う(ステップS109参照)。なお、識別符号F−1〜F−9が付された粉塵は、第1〜第3のグループに属し、鉄の製造に由来する粉塵として判別されたものと言える。
【0045】
図5(a)は、図3(d)に示したカラー画像D1による判別結果に対応し、図5(b)は、図4(c)に示した透過明暗画像D2による判別結果に対応している。この段階で、第1のグループの粉塵1−1〜1−3および第4のグループの粉塵4−1〜4−3は確定した判別がされており、第2および第3のグループの粉塵に対しては確定した判別がなされていない。そして、判別処理部25は、図5(a)および図5(b)に示した判別結果を比較し、第2のグループあるいは第3のグループの粉塵として仮判別された識別符号R−1〜R−5,W−1〜W−4のうち、すでに判別が確定した第4のグループの粉塵4−1〜4−3に対応する粉塵を除外し、図5(c)に示すように、識別符号R−1〜R−3の粉塵を第2のグループの粉塵2−1〜2−3として判別し、識別符号W−1〜W−3の粉塵を第3のグループの粉塵3−1〜3−3として判別し、最終的な判別情報D3を記憶部24に出力する(ステップS110参照)。これによって、すべての粉塵Sは、第1〜第4のグループの種別に対応した判別が行われ、図3(a)および図4(a)に示した実際の粉塵Sに対応した判別処理がなされたことになる。
【0046】
ここで、上述したステップS108によるカラー画像D1をもとにした色識別処理およびステップS109による透過明暗画像をもとにした透過識別処理について説明する。
【0047】
(色識別処理)
まず、黒色系(第1のグループ)、赤色系(第2のグループ)、白色系(第3のグループ)の粉塵の識別は、カラー画像内の粉塵領域の色成分R,G,Bの割合から求めることができる。ここで、各色成分R,G,Bの値が「0」〜「255」の256階調で表されていると、たとえば、各色成分R,G,Bの値が全て「255」である場合、白色になり、各色成分R,G,Bの値が全て「0」である場合、黒色になる。各色成分R,G,Bの値が中間値(たとえば「200」)で、全て同じ値である場合、グレーになる。
【0048】
ここで、図6に示すように、色成分R,G,Bの値が全て同じ値で「40」以下の場合は、黒色系の粉塵(第1のグループ)として識別する。また、色成分R,G,Bの値が全て同じで「220」以上の場合は、白色系の粉塵(第2のグループ)として識別する。また、図7に示すように、赤色系の粉塵(第3のグループ)は、色成分G,Bの値が同じで、色成分Rの値との差dをもつが、色成分G,Bの値が同じで、色成分G,Bの値に対して色成分Rの値が20%以上高い場合は、赤色系の粉塵(第3のグループ)として識別する。
【0049】
すなわち、カラー画像に対して、図8のフローチャートに示した色識別処理手順が施される。まず、カラー画像D1の中から1つの粉塵である対象領域を選択する(ステップS150)。そして、各色成分R,G,Bの値は同じであるか否かを判断する(ステップS151)。各色成分R,G,Bの値が同じでない場合(ステップS151,No)には、さらに、色成分G,Bが同じであるか否かを判断する(ステップS152)。色成分G,Bの値が同じである場合(ステップS152,Yes)には、さらに、色成分Rの値が色成分G,Bの値に対して所定率、たとえば上述したように20%以上高いか否かを判断する(ステップS153)。色成分Rの値が色成分G,Bに対して所定率以上高い場合(ステップS153,Yes)には、この対象領域の粉塵を赤色系(第2のグループ)と仮判別する判定を行う(ステップS156)。
【0050】
一方、ステップS151で、色成分R,G,Bの値が同じである場合には、さらに各色成分R,G,Bの値が所定値以下、たとえば上述したように「40」以下であるか否かを判断する(ステップS154)。色成分R,G,Bの値が所定値以下である場合(ステップS154,Yes)には、この対象領域の粉塵を黒色系(第1のグループ)と判別する判定を行う(ステップS159)。
【0051】
また、ステップS154で、色成分R,G,Bの値が同じでない場合には、さらに、各色成分R,G,Bの値が所定値以上、たとえば上述したように「220」以上であるか否かを判断する(ステップS155)。各色成分R,G,Bの値が所定値以上である場合(ステップS155,Yes)には、この対象領域の粉塵を白色系(第3のグループ)と仮判別する判定を行う(ステップS158)。
【0052】
一方、ステップS152で、色成分G,Bの値が同じでない場合(ステップS152,No)、ステップS153で、色成分Rの値が色成分G,Bの値に対して所定率以上高くない場合(ステップS153,No)、ステップS155で、各色成分R,G,Bの値が所定値以上でない場合(ステップS155,No)には、この対象領域の粉塵が、第1〜第3のグループに属さないものとし、未判別として判定する(ステップS157)。
【0053】
その後、ステップS156〜S159の判定後、さらに次の対象領域があるか否かを判断し(ステップS160)、次の対象領域がある場合(ステップS160,Yes)には、ステップS150に移行し、上述した処理を繰り返し、次の対象領域がない場合(ステップS160,No)には、ステップS108にリターンする。
【0054】
なお、ステップS151,S152における同一か否かの判断では、色成分R,G,Bの値が、所定の許容範囲内であればよい。また、ステップS153における所定率、ステップS154,S155における各所定値は、過去の判定結果などから経験的に求められた値であり、さらに粉塵の種別判別装置1固有の値として設定される。また、ステップS156,S158では、仮判別としているが、これは、つぎの透過識別処理の結果をも参照して最終判別を行うためである。
【0055】
(透過識別処理)
つぎに、ステップS109による透過明暗画像D2を用いた透過識別処理について説明する。この場合、透過明暗画像D2内の粉塵に対応する対象領域に対して、この対象領域内の輝度値をもとに、珪砂(第4のグループ)か否かを判別する。上述したように、珪砂は、透過度(輝度)が大きいため、たとえば輝度値が「63」以上の場合に、対象領域の粉塵を珪砂(第4のグループ)として判別する。
【0056】
具体的に、透過明暗画像D2に対して、図9のフローチャートに示した透過識別処理手順が施される。まず、透過明暗画像D2の中から1つの粉塵である対象領域を選択する(ステップS170)。そして、輝度値所定値以上であるか否かを判断する(ステップS171)。輝度値が所定値、たとえば上述したように「63」以上であるか否かを判断する(ステップS171)。輝度値が所定値以上である場合(ステップS171,Yes)には、この対象領域は、珪砂(第4のグループ)であると判別し(ステップS172)、輝度値が所定値以上でない場合(ステップS171,No)には、この対象領域を未判別と判定し(ステップS173)、ステップS174に移行する。ステップS174では、さらに次の対象領域があるか否かを判断し(ステップS174)、次の対象領域がある場合(ステップS174,Yes)には、ステップS170に移行し、上述した処理を繰り返し、次の対象領域がない場合(ステップS174,No)には、ステップS109にリターンする。
【0057】
なお、ステップS171における所定値は、過去の判定結果などから経験的に求められた値であり、さらに粉塵の種別判別装置1固有の値として設定される。また、上述した輝度値は、透明明暗画像D2がモノクロ画像であるとして説明したが、透明明暗画像D2が色成分R,G,Bをもつカラー画像をもとにして得る場合、種々の色空間に変換後、その色空間の輝度や明度を用いればよい、たとえばYUV表示系のY(輝度)値とする。この輝度値Yは、Y=0.3*R+0.6*G+0.1*B で求められる。もちろん、各色成分の平均値や最大値を用いてもよい。
【0058】
このような色識別処理や透過判別処理によって、粉塵の種別判別を定量的に行うことができる。
【0059】
(実施の形態1の変形例)
上述した実施の形態1では、最初にカラー画像D1をもとに第1のグループの判別を行い、次に透過明暗画像D2をもとに第4のグループの判別を行い、最後にカラー画像D1および透過明暗画像D2に対する判別結果をもとに第2および第3のグループを最終判別を行うようにしていたが、この変形例では、最初に透過明暗画像D2をもとに、第1〜第3のグループである鉄の製造に由来する粉塵と、第4のグループである珪砂とを判別し、その後、残りの粉塵に対し、カラー画像D2をもとに第2および第3のグループの粉塵の判別を行うようにしている。
【0060】
図10は、この発明の実施の形態1の変形例の判別処理部25による粉塵の種別判別処理手順を示すフローチャートである。図10において、ステップS201〜S207は、図2に示したフローチャートのステップS101〜S107に対応する。そして、この変形例では、カラー画像D1および透過明暗画像D2が取得された段階で、判別処理部25が、まず透過明暗画像D2をもとに、ステップS109と同様に、所定値以上の透過度をもつ粉塵を第4のグループの粉塵4−1〜4−3として判別する(ステップS208、図11(b)参照)。
【0061】
その後、判別処理部25は、透過明暗画像D2をもとに、判別された第4のグループの粉塵を除いた粉塵に対して、ステップS108と同様な色識別判別処理を行って、黒色系を第1のグループの粉塵1−1〜1−3、赤色系を第2のグループの粉塵2−1〜2−3、白色系を第3のグループの粉塵3−1〜3−3としてそれぞれ判別する(ステップS209、図11(c)参照)。ここでは、すでに第4のグループが判別されているため、ステップS156,S158の仮判別は、確定した判別となる。
【0062】
この結果、各粉塵Sは、すべて第1〜第4のグループへの判別が確定され、それぞれ判別された第1〜第4のグループに属する粉塵の情報を判別情報D3として記憶部24に記憶する(ステップS210)。そして、制御部21は、この判別情報D3を用いた粉塵計測処理およびその結果出力処理を行って(ステップS211)、本処理を終了する。
【0063】
なお、上述した実施の形態1およびその変形例では、すべての粉塵Sを第1〜第4のグループに判別するものであったが、粉塵Sを、第1〜第3のグループに対応する鉄の製造に由来する粉塵と、珪砂との2つに判別する処理のみを行うようにしてもよい。この場合、カラー画像D1は用いず、透過明暗画像D2のみを取得し、この透過明暗画像D2をもとに透過度から2つに判別するようにする。すなわち、図10に示したステップS202〜S207の処理を、図12に示したステップS302〜S304に簡略化した処理を行う。もちろん、この場合、上部照明部13は、不要である。このような判別処理であっても、鉄の製造に由来する粉塵と珪砂との数量を測定することができ、鉄の製造に由来する粉塵の飛散に対する処置の効果を確認することができる。また、この場合、透明明暗画像D2は、カラーである必要はなく、撮像素子12cは、モノクロ画像を取得できるものであればよい。
【0064】
この実施の形態1では、珪砂の透過度が高いことを利用して、少なくとも粉塵捕集板11の下側から透過照明光を照射して透過明暗画像D2を取得し、捕集した粉塵を珪砂(第4のグループ)と、鉄の製造に由来する粉塵(第1〜第3のグループ)とに確実に判別するようにしているので、鉄の製造に由来する粉塵の数量などの計測を精度高く行うことができる。さらに、粉塵捕集板11の上側からリング照明光を照射してカラー画像D1を取得し、捕集した粉塵であって鉄の製造に由来する粉塵をその色調によって第1〜第3のグループに判別するようにしているので、一層、鉄の製造に由来する粉塵の詳細情報を精度高く得ることができる。
【0065】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、透過明暗画像D2を粉塵捕集板11の下部から透過照明光を照射することによって得ていたが、この実施の形態2では、粉塵捕集板11の上部からのリング照明光の照射によって得られたカラー画像D1をもとに実質的な透過明暗画像D2を得るものである。
【0066】
図13は、本発明の実施の形態2である粉塵の種別判別装置の構成を模式的に示したブロック図である。この粉塵の種別判別装置101が、実施の形態1に示した粉塵の種別判別装置1と異なるのは、下部照明部14を削除し、粉塵捕集板11に替えて上部照明部13からの照明光を反射することができる粉塵捕集板31としている点である。また、判別処理部25は、カラー画像D1をもとに透過明暗画像D2に相当する透過明暗画像DD2を生成して記憶部24に記憶する。その他の構成および処理は、実施の形態1と同じである。なお、粉塵捕集板31は、リング照明光を反射可能なビニールテープ31aとガラスプレート31bとからなるが、これに限らず、リング照明光を反射することができればよく、たとえば、ビニールテープ31aを透明部材とし、ガラスプレート31bを不透明部材としてもよい。
【0067】
ここで、カラー画像D1から透過明暗画像DD2が生成できる概念について説明する。図14に示すように、粉塵捕集板31にリング照明光を照射すると、ビニールテープ31aはリング照明光を反射するが、この際、粉塵捕集板31上のすべての粉塵には、リング照明光が通過することになる。そして、たとえば第1のグループの粉塵1−1には、リング照明光がほとんど透過せず、第2および第3のグループの粉塵2−1,3−1に対するリング照明光の透過は小さく、第4のグループの粉塵4−1は、ほとんどリング照明光を透過する。この結果、カラー画像D1の明暗、すなわち粉塵の反射光量、具体的には粉塵の輝度を測定することによって、透過明暗画像D2に対応した透過明暗画像DD2を生成することができる。なお、カラー画像D1内から粉塵の明暗を測定する際、粉塵表面からの反射があるため、粉塵捕集板31の表面から反射した反射光量LEと比較して粉塵の明暗を測定することが好ましい。さらに、粉塵捕集板31は、すべての粉塵の色調とは異なる色調、たとえば、空色とすることが好ましい。この場合、空色の成分のみの反射光量を比較することによって精度の高い粉塵の透過度を求めることができるからである。
【0068】
たとえば、図14では、粉塵1−1,2−1,3−1,4−1および粉塵捕集板31表面のそれぞれに対する空色の反射光量が、0,1,1,9,10である場合、粉塵1−1,2−1,3−1,4−1の反射光量を粉塵捕集板31表面の反射光量で除算することによって、粉塵1−1,2−1,3−1,4−1の相対反射光量が、それぞれ0,0.1,0.1,0.9と求まる。そして、相対反射光量、すなわち透過度が0.5以上の粉塵を第4のグループの珪砂として判別し、透過度が0.5未満の粉塵を、鉄の製造に由来する粉塵(第1〜第3のグループ)として判別する。
【0069】
この実施の形態2では、上部照明部13からの照明光のみによってカラー画像D1を撮像し、このカラー画像D1をもとに透過明暗画像DD2を生成するようにしているので、簡易な構成で、実施の形態1と同様な精度の高い粉塵の種別判別を行うことができる。
【0070】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1では、実質的に2つの光源を用いることを前提として述べたが、本実施の形態3では、1つの光源で、上部照明部13に対応するリング照明の照射と、下部照明部14に対応する透過照明の照射とを行うようにしている。
【0071】
図15は、本発明の実施の形態3にかかる粉塵の種別判別装置の構成を模式的に示したブロック図である。図15に示すように、画像取得部10は、上部照明部13に対応する上部照明部43と下部照明部14に対応する下部照明部44とを有するが、これら上部照明部43と下部照明部44とに対する照明光は、1つの光源40から供給され、上部照明部43および下部照明部44自体が照明光を発するものではない。したがって、上部照明部43および下部照明部44は、光学系のみによって形成されている。
【0072】
光源40から出力された照明光は、光路LNを介して光路切替部41に出力される。光路切替部41は、光路LN1,LN2をそれぞれ介して上部照明部43および下部照明部44に接続され、制御部21による制御のもとに光路切替が行われる。光路切替部41の光路切替は、制御部21によって排他的に行われる。
【0073】
この実施の形態3では、1つの光源のみで、カラー画像D1および透過明暗画像D2を取得することができるため、簡易な構成で、粉塵の種別判別を精度高く行うことができる。
【符号の説明】
【0074】
1,101,201 粉塵の種別判別装置
10 画像取得部
11,31 粉塵捕集板
11a,31a ビニールテープ
11b,31b ガラスプレート
12 撮像部
12a 鏡筒
12b 画像検出部
12c 撮像素子
13,43 上部照明部
14,44 下部照明部
20 制御装置
21 制御部
22 出力部
23 入力部
24 記憶部
25 判別処理部
D1 カラー画像
D2 透過明暗画像
D3 判別情報
S 粉塵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵を捕集することができる粉塵捕集板と、
前記粉塵捕集板上に捕集された前記粉塵に対して照明光を照射する照明手段と、
前記照明手段によって照明された前記粉塵の透過明暗画像を取得する撮像手段と、
前記透過明暗画像をもとに前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別する判別手段と、
を備えたことを特徴とする粉塵の種別判別装置。
【請求項2】
前記撮像手段は、前記粉塵のカラー画像を取得し、
前記判別手段は、前記カラー画像をもとに、前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別し、さらに該鉄の製造に由来する粉塵のうち、黒色系の粉塵を石炭あるいはコークスの粉塵と判別し、赤色系の粉塵を鉄鉱石あるいは焼結石の粉塵と判別し、白色系の粉塵をスラグあるいは石灰の粉塵と判別することを特徴とする請求項1に記載の粉塵の種別判別装置。
【請求項3】
前記照明手段は、前記粉塵捕集板上の粉塵の上部から前記照明光を照射し、
前記判別手段は、前記粉塵の明暗をもとに前記照明光の透過度を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の粉塵の種別判別装置。
【請求項4】
前記粉塵捕集板は、光を透過可能であり、
前記照明手段は、前記粉塵捕集板上の粉塵の上部および下部から前記照明光を照射することが可能であり、
前記撮像手段は、前記照明手段が前記粉塵の上部から照明光が照射された場合に前記粉塵捕集板上の粉塵の上部から撮像したカラー画像を取得し、前記照明手段が前記粉塵の下部から照明光が照射された場合に前記粉塵捕集板上の粉塵の上部から撮像した透過明暗画像を取得することを特徴とする請求項2に記載の粉塵の種別判別装置。
【請求項5】
前記照明手段は、前記粉塵捕集板上の粉塵の上部から照明光を照射する上部照明手段と、前記粉塵捕集板上の粉塵の下部から照明光を照射する下部照明手段と、を有することを特徴とする請求項4に記載の粉塵の種別判別装置。
【請求項6】
粉塵が捕集された粉塵捕集板上の前記粉塵に対して照明光を照射して前記粉塵の透過明暗画像を取得する撮像ステップと、
前記透過明暗画像をもとに前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別する判別ステップと、
を含むことを特徴とする粉塵の種別判別方法。
【請求項7】
前記撮像ステップは、前記粉塵に対して照明光を照射して前記粉塵のカラー画像を取得し、
前記判別ステップは、前記カラー画像をもとに、前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別し、さらに該鉄の製造に由来する粉塵のうち、黒色系の粉塵を石炭あるいはコークスの粉塵と判別し、赤色系の粉塵を鉄鉱石あるいは焼結石の粉塵と判別し、白色系の粉塵をスラグあるいは石灰の粉塵と判別することを特徴とする請求項6に記載の粉塵の種別判別方法。
【請求項8】
前記粉塵捕集板は、光を透過可能であり、
前記撮像ステップは、前記粉塵の上部から照明光を照射して前記粉塵捕集板上の粉塵の上部から撮像したカラー画像を取得するとともに、前記粉塵の下部から照明光を照射して前記粉塵捕集板上の粉塵の上部から撮像した透過明暗画像を取得することを特徴とする請求項6または7に記載の粉塵の種別判別方法。
【請求項9】
前記判別ステップは、
前記カラー画像あるいは前記透過明暗画像をもとに、前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別する第1判別ステップと、
前記カラー画像をもとに、前記鉄の製造に由来する粉塵のうち、黒色系の粉塵を石炭あるいはコークスの粉塵と判別し、赤色系の粉塵を鉄鉱石あるいは焼結石の粉塵と判別し、白色系の粉塵をスラグあるいは石灰の粉塵と判別する第2判別ステップと、
を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の粉塵の種別判別方法。
【請求項10】
前記判別ステップは、
前記カラー画像をもとに、前記鉄の製造に由来する粉塵のうち、黒色系の粉塵を石炭あるいはコークスの粉塵と判別し、赤色系の粉塵を鉄鉱石あるいは焼結石の粉塵と仮判別し、白色系の粉塵をスラグあるいは石灰の粉塵と仮判別する第1判別ステップと、
前記カラー画像あるいは前記透過明暗画像をもとに、前記粉塵に対する前記照明光の透過度を取得し、該透過度が所定値よりも低い粉塵を鉄の製造に由来する粉塵と判別し、該透過度が所定値以上の粉塵を珪砂と判別する第2判別ステップと、
前記第1判別ステップで仮判別された鉄鉱石あるいは焼結石の粉塵および仮判別されたスラグあるいは石灰の粉塵のうち、前記第2判別ステップで珪砂と判別された粉塵を除外した粉塵をそれぞれ鉄鉱石あるいは焼結石の粉塵およびスラグあるいは石灰の粉塵として判定する第3判別ステップと、
を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の粉塵の種別判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−203128(P2011−203128A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70938(P2010−70938)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】