説明

粉塵爆発対応型集塵機

【課題】装置サイズが小型でコストが低く、しかも安全にメンテナンス作業を行うことができる粉塵爆発対応型集塵機を提供する。
【解決手段】本発明の粉塵爆発対応型集塵機は、空気清浄室1の内部にプリーツ形状フィルタ3を設置し、その上部の粉塵室2を通じて含塵空気をプリーツ形状フィルタ3の内側に導入してフィルタ内面で塵の捕集を行わせる。粉塵室2には、開閉可能な爆発圧力放散蓋10を設ける。粉塵室2への入口ダクト5には粉塵室2内において粉塵爆発が発生した際の爆風を遮断する逆止ダンパを設ける。粉塵室2の容積が小さいので、爆発圧力放散蓋10の面積も小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塵爆発の危険性がある条件下で使用される粉塵爆発対応型集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉塵を含んだ空気を捕集する集塵機においては、粉塵爆発の危険性への配慮が不可欠である。そこで粉塵爆発の危険性を低減し、粉塵爆発時に周囲への危険を回避する集塵機として、従来から特許文献1に記載のような粉塵爆発対応型集塵機が提案されている。この集塵機は、集塵室の一側部に粉塵爆発時の圧力や火炎を放出するための爆発圧力放散口を開口するとともに、下側部よりこの放散口に向けて次第に断面積が大きくなるように逆台形状に形成した放散室を設けたものである。
【0003】
しかしこのような従来の粉塵爆発対応型集塵機は、放散面積を確保するために全体の装置サイズが大きくなってしまうという問題があった。またこれに伴い、装置形状も複雑となるため、イニシャルコストが高くなるという問題もあった。さらに、フィルタ交換作業を粉塵室からのメンテナンス作業とする必要があり、粉塵の周囲への飛散という問題や、作業中の爆発に対する危険性という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−20076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、装置サイズが小型でコストが低く、しかも安全にメンテナンス作業を行うことができる粉塵爆発対応型集塵機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の粉塵爆発対応型集塵機は、粉塵室に開閉可能な爆発圧力放散蓋を設けた集塵機であって、前記粉塵室に隣接する空気清浄室内に設けた円筒型のプリーツ形状フィルタの内筒側から粉塵の捕集を行わせる構造であることを特徴とするものである。
【0007】
なお請求項2のように、前記爆発圧力放散蓋の設置部に、粉塵爆発が発生した際の装置前面方向への爆風を遮断するカバーが設けられている構造であることが好ましい。また請求項3のように、前記粉塵室の入口側に水平軸により板状ダンパが吊り下げられ、前記水平軸の部分に開度確認部材が設けられている構造であることが好ましい。また請求項4のように、前記プリーツ形状フィルタは内筒側の粉塵捕集面に帯電防止用の導電性材料をコーティングしたものであることが好ましい。また請求項5のように、前記粉塵室または空気清浄室に消火剤投入口が設けられていることが好ましい。さらに請求項6のように、モータとファンケーシングとの間に空間を設けた集塵用ファンを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粉塵爆発対応型集塵機は、粉塵室に開閉可能な爆発圧力放散蓋を設けて粉塵爆発時の圧力を開放するものであることは従来と同様である。しかし本発明では円筒型のプリーツ形状フィルタを採用し、内面ろ過を行わせる。通常はフィルタの粉塵払い落し操作を円筒内面より行うため、フィルタの円筒外側からろ過を行うが、この場合には含塵空気が流入する粉塵室の容積が大きくなり、粉塵室に設置が義務付けられている爆発圧力放散蓋の面積が大きくなる。これに対して本発明では円筒型のプリーツ形状フィルタの内面からろ過を行うので、粉塵室の容積は小さくなり、爆発圧力放散蓋の面積も小さくすることができる。これにより装置全体の小型化と、低コスト化とを図ることができる。
【0009】
請求項2のように、爆発圧力放散蓋の設置部に粉塵爆発が発生した際の装置前面方向への爆風を遮断するカバーを設けておけば、万一粉塵爆発が生じた場合にも、作業者の安全を確保することができる。
【0010】
請求項3のように、粉塵室の入口側に水平軸により板状ダンパが吊り下げられ、前記水平軸の部分に開度確認部材が設けられている構造とすれば、集塵風量を容易に目視で確認することができる。
【0011】
請求項4のように、プリーツ形状フィルタの内筒側の粉塵捕集面に帯電防止用の導電性材料をコーティングしておけば、蓄積した粉塵への帯電による爆発の危険をなくすことができる。
【0012】
請求項5のように、粉塵室に消火剤投入口が設けられている構造とすれば、万一粉塵爆発が発生しても、速やかに消火することができる。
【0013】
さらに請求項6のように、モータとファンケーシングとの間に空間を設けた集塵用ファンを用いれば、爆発性粉塵が万一ファンケーシングに吸引された場合にも、モータや電源部に進入して爆発する事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】図1の背面側の全体斜視図である。
【図3】入口ダクト部の斜視図である。
【図4】粉塵室の斜視図である。
【図5】空気清浄室の斜視図である。
【図6】風量調整ダンパの斜視図である。
【図7】排気防音ダクトを示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1と図2は実施形態の粉塵爆発対応型集塵機の全体構造を示す図であり、1はボックス状の空気清浄室、2はこの空気清浄室1の上部に設置された粉塵室である。粉塵室2と空気清浄室1とは、仕切板を介して隣接配置されている。空気清浄室1の内部には、2本の円筒型のプリーツ形状フィルタ3が垂直に設置されている。しかしプリーツ形状フィルタ3の本数は任意に増減することができる。
【0016】
プリーツ形状フィルタ3は円筒型であり、プリーツ形状とすることによりろ過面積を大きくしている。内部に蓄積される粉塵の帯電を防止するために、プリーツ形状フィルタ3の内筒側の粉塵捕集面には導電性材料をコーティングしておくことが好ましい。導電性材料としては導電性があれば特に種類を問わないが、安定性やコスト的な面を考慮するとステンレスもしくはアルミニウムであることがより好ましい。また、コーティング手段は、ディップコート、スプレー法、金属蒸着、スパッタリングなどにより行うことができる。コーティング膜の厚さは、導電性が得られ、フィルタの通気度に与える影響を極力少なくした厚さで、0.01〜1μmの範囲であることが好ましい。プリーツ形状フィルタ3と集塵機缶体とは導電性パッキンにて接合され、粉塵が剥離する際に発生する静電気を防止し、爆発原因を取り除いている。プリーツ形状フィルタ3の上端はベンチュリ形状として、含塵空気が流入するときの抵抗を小さくしている。
【0017】
プリーツ形状フィルタ3の上端は粉塵室2の底面の開口と連通されており、粉塵室2を通じて含塵空気をプリーツ形状フィルタ3の内側に導入し、フィルタ内面でろ過を行わせる。プリーツ形状フィルタ3を通過した清浄空気は、後述するブロワ11により吸引されて空気清浄室1に入る。このようにプリーツ形状フィルタ3の内側に含塵空気を導入する構造とすることにより、粉塵室2の容積を小さくすることができ、従って後述する爆発圧力放散蓋10の面積を小さくすることができる。
【0018】
図3に示すように、粉塵室2の入口ダクト5の部分には、粉塵室2内において粉塵爆発が発生した際の爆風を遮断する逆止ダンパ6が設けられている。この逆止ダンパ6は、粉塵室2の入口室7の内部に水平軸8により板状ダンパを吊り下げた構造であり、通常運転時には含塵空気の流動により内側に開いているが、粉塵室2内において粉塵爆発が発生した際には、爆風の圧力により入口ダクト5の端面に密着し、爆風が入口ダクト5内を逆流することを防止するものである。図3に示すようにこの水平軸8の部分には開度確認部材9を設けておくことができる。この開度確認部材9によって通常運転時の風量を容易に目視で確認でき、点検管理が行い易くなる。
【0019】
図4に示すように、粉塵室2には、開閉可能な爆発圧力放散蓋10により覆われた爆発圧力放散口が設けられている。この爆発圧力放散蓋10は入口ダクト5とプリーツ形状フィルタ3の上端とをつなぐ流路の上面に形成されるもので、通常運転時には閉じているが粉塵爆発が発生した際には上方に開いて爆発圧力を逃がす役割を持っている。なお爆発圧力放散蓋10の設置部の前面には、粉塵爆発が発生した際の装置前面方向への爆風を遮断するカバー4が設けられており、作業者側に爆風が噴出することを防止している。また爆発圧力放散口の定期的なメンテナンスを容易にするために、工具を必要としないボルト22を用いてカバー4を固定している。
【0020】
また図4に示すように、粉塵室2の側面には消火剤投入口12が設けられている。粉塵爆発が発生した際には消火剤投入口12を覆う蓋を取り外して消火剤を投入することにより、火災あるいは二次爆発を防止することができる。
【0021】
図5、図6に示すように、空気清浄室1の下方はブロワ11を備えたブロワ室13となっている。ブロワ室13のファン側には吸引室14が形成されており、この吸引室14の天井面は空気清浄室1と連通している。また吸引室14の側壁にブロワ11の吸気口15が開口している。このため空気清浄室1内の清浄空気は吸引室14を通ってブロワ11に吸引され、ブロワ室13の反対側の排気ダクト16から排気される。なおブロワ11は吸引した爆発性粉塵がモータや電源部に進入して爆発することを防ぐため、モータと送風機ケーシングとの間に空間を設けた構造としておくことが好ましい。
【0022】
図6に示されるように、この吸引室14の内部には風量調整ダンパ17が設けられている。これは水平軸18を中心として角度調節可能なダンパと、その角度固定手段19とからなるものである。これにより集塵風量の調節が可能である。
【0023】
なお図7に示すように、ブロワ室13の外側にはブロワ11から排気される空気の吐出音を低減させるための吸音ボックス20が取り付けられており、その内部にはスポンジ等の多孔質の吸音材を張り付けておく。また図7に示すように吸音ボックス20の入口にはV字状の遮蔽板21を配置し、防音効果を高めている。
【0024】
このように構成された本発明の粉塵爆発対応型集塵機は、主として粉塵濃度の低いクリーンルーム等で使用されるものであり、含塵空気を入口ダクト5から粉塵室2に吸引し、プリーツ形状フィルタ3の内側で粉塵をろ過し、浄化された清浄空気を空気清浄室1、吸引室14、ブロワ11、排気ダクト16の経路で排出する。このように本発明の粉塵爆発対応型集塵機は通常の集塵機とは異なり、プリーツ形状フィルタ3の内側から外側に含塵空気を流して集塵を行うため、粉塵室2の容積を小型化することができる。このため独立行政法人産業安全研究所の爆発圧力放散設備技術指針に規定される爆発圧力放散蓋10の面積も小さくすることができ、装置全体の小型化が可能となった。
【0025】
また、本発明の粉塵爆発対応型集塵機においては集塵された粉塵はプリーツ形状フィルタ3の内側に蓄積されるため、プリーツ形状フィルタ3の交換作業を空気清浄室1側から行うことができ、しかも粉塵が飛散するおそれがない。特に集塵機をクリーンルーム等で使用する場合に、周囲に粉塵を飛散させることがないので、この利点は大きく、またメンテナンス作業者の粉塵曝露を避けることができる。
【0026】
さらに本発明の粉塵爆発対応型集塵機は、爆発圧力放散蓋10を備えることはもちろんであるが、逆止ダンパ6をはじめとするその他の安全対策が施されており、小型でコストが低く、メンテナンス作業が行い易く、しかも安全性に優れた粉塵爆発対応型集塵機として、利用価値の高いものである。
【符号の説明】
【0027】
1 空気清浄室
2 粉塵室
3 プリーツ形状フィルタ
4 カバー
5 入口ダクト
6 逆止ダンパ
8 水平軸
9 開度確認部材
10 爆発圧力放散蓋
11 ブロワ
12 消火剤投入口
13 ブロワ室
14 吸引室
15 吸気口
16 排気ダクト
17 風量調整ダンパ
18 水平軸
19 角度固定手段
20 吸音ボックス
21 遮蔽板
22 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵室に開閉可能な爆発圧力放散蓋を設けた集塵機であって、前記粉塵室に隣接する空気清浄室内に設けた円筒型のプリーツ形状フィルタの内筒側から粉塵の捕集を行わせる構造であることを特徴とする粉塵爆発対応型集塵機。
【請求項2】
前記爆発圧力放散蓋の設置部に、粉塵爆発が発生した際の装置前面方向への爆風を遮断するカバーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の粉塵爆発対応型集塵機。
【請求項3】
前記粉塵室の入口側に水平軸により板状ダンパが吊り下げられ、前記水平軸の部分に開度確認部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の粉塵爆発対応型集塵機。
【請求項4】
前記プリーツ形状フィルタは、内筒側の粉塵捕集面に帯電防止用の導電材料をコーティングしたものであることを特徴とする請求項1に記載の粉塵爆発対応型集塵機。
【請求項5】
前記粉塵室または空気清浄室に、消火剤投入口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の粉塵爆発対応型集塵機。
【請求項6】
モータとファンケーシングとの間に空間を設けた集塵用ファンを備えることを特徴とする請求項1に記載の粉塵爆発対応型集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−86066(P2013−86066A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231374(P2011−231374)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】