説明

粉塵等の飛散防止装置

【課題】簡易な構造でありながら、投下口への投下風圧によって上昇する微粒子状の粉塵をほぼ確実に捕獲し、投下口周囲へのその飛散を防止する粉塵等の飛散防止装置を提供する。
【解決手段】上方へ開放口をもった投下口21と、投下口への投下物である石炭Cの進入域を残して投下口の上方全域を覆うように配置した被覆体4と、から成り、被覆体は、所定量以上の風量に対して通気抵抗を示す程度の通気性をもった可撓性シート材で構成する。このシート材には、石炭の粉塵をフィルタリング可能な適宜な濾過布を採用している。進入域への進入縁部は、所定形状を成すフレーム3で構成して進入域を確保すると共に、投下口を覆うように立設配置する。また、被覆体は、石炭の投入風圧より上方側に拡張し得るように投下口の外周とフレーム間に撓ませて架設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ポッパー等の投下口を覆う粉塵等の飛散防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、海の近くに設置されることが一般的な火力発電所では、燃料となる原料(例えば、石炭や可燃固形物等)を港まで船で運び、港から原料のストックヤード(一時保管施設)まではリフトやコンベヤで移動させる搬送方法の他に、船からダンプトラックへ積み替えた後、ストックヤードまで陸送する方法が一般的に採られている。そして、ダンプトラックに積載された燃焼原料は、図1に示すように地面に開口させた投下口付近まで後退移動させたダンプトラックの荷台傾斜によって、投下口へ滑り落とす手法が採られている。投下させた原料は、例えば、投下口の下部(地面下)に設置したシュータ等を介してベルトコンベア等の搬送設備や保管施設へ移動させている。
【0003】
ところで、この投下作業において、その原料が石炭等の脆弱な礫塊である場合は、荷台から一気に滑り落とした時に、大量の粉塵が飛散する問題があった。すなわち、原料が脆弱であるため投下時の衝撃によって生じた又は当初から付着していた粉塵が、投下時の風圧よって発生する上昇気流よって投下口から噴出して外部に飛散していた。この飛散した粉塵は比重の小さい微粒子であるために大気中の停滞時間が長く、それだけ広範囲に拡散していた。このことは、投下口付近の作業環境の悪化を招くばかりでなく、発電所周辺の自然環境や住民への影響も無視できないものであった。
【0004】
そこで、上記のような粉塵の飛散を防止することを目的とした、廃棄物投入ホッパー用の廃棄物飛散防止具が特許文献1に開示されている。かかる飛散防止具は、ホッパーの投下口を覆う通気性、伸縮性を有する網状の覆い体を、廃棄物を搬送・投下する方向をコ字状に開放した状態で設置する構成を特徴としている。この飛散防止具は、主にゴミ等の廃棄物が発する粉塵捕獲に主眼を置いたものである。
【0005】
またこれ以外にも、ホッパーの投下口全体を建屋で囲ったり、又は投下口の内部やその周囲に水を霧状に散布して粉塵の空中滞留を防止して、粉塵の拡散を抑制する方法も採られていた。
【特許文献1】特開2005−206273(第4−6頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ゴミ等の廃棄物等が発する粉塵は、飛散する粒子としては大きくてやや重い。このため、投下時に上昇する粉塵の多くは、ホッパーの漏斗状の形状とも相俟ってその周縁部から飛散する現象がある。特許文献1の飛散防止具は、投下物を廃棄物と設定しているため、投入口の上面側をコ字状に覆ってホッパーの中央部付近に開放部が位置する構成であっても粉塵の捕獲が良好であった。
【0007】
しかしながら、石炭等が発する粉塵はゴミ等の発する粉塵に比べるとより細かい微粒子であるため、投下時の風圧によってほぼ真上(ホッパーの中央部付近)にも多くの粉塵が上昇し、ホッパーの周縁部に配置した網目の大きい覆い体ではその捕獲が充分ではない。当該構成では、ダンプトラックの荷台傾斜によって石炭を投下する場合には、開放部からも多くの粉塵が噴出して周囲に飛散することが想定される。
【0008】
また、ホッパーの投下口を建屋で囲う方法は、建屋内に長時間に渡って粉塵が滞留することになり、内部の環境自体は改善されるものでなかった。さらにまた、ホッパーの投下口の内部やその周囲に水を散布する方法は、散布後の処理水を回収し、かつその回収水を処理するための付随設備を設ける必要があり、コストアップとなる問題があった。
【0009】
そこで、本願発明は上記課題に鑑みてその解決を図るべくなされたものであり、簡易な構造でありながら、投下口への投下風圧によって上昇する微粒子状の粉塵をほぼ確実に捕獲し、投下口周囲へのその飛散を防止する粉塵等の飛散防止装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願発明にかかる粉塵等の飛散防止装置は、以下のように構成している。
すなわち、上方へ開放口をもった投下口(21)と、投下口(21)への投下物、例えば石炭(C)の進入域を残して投下口(21)の上方全域を覆うように配置した被覆体(4)と、から成り、この被覆体(4)は、所定量以上の風量に対して通気抵抗を示す程度の通気性をもった可撓性シート材で成ることを特徴としている。この通気抵抗を示す程度の通気性のシート材には、目の荒い網目シート材の様な通気性を有するものでは無いが、表面に積極的な防風処理を施していない程度の織布や通気性樹脂シート材などが選択される。この通気抵抗と通気性の設定は粉塵の粒径や投下時に発生する風量を考慮して適宜選択されるものであり、例えば、石炭(C)の粉塵をフィルタリング可能な適宜な濾過布を採用することが好ましいものである。
【0011】
進入域への進入縁部は、所定形状を成す縁部材、例えば、鋼材、合成樹脂材、硬質ゴム材等から成るフレーム(3)で構成して進入域を確保することが望ましい。また、このフレーム(3)は、投下口(21)を覆うように立設配置することがより望ましい。
【0012】
被覆体(4)は、風圧より上方側に拡張し得るように投下口(21)の外周とフレーム間に撓ませて架設することがより望ましいものである。この構成により、被覆体(4)は風圧によって上方に拡張すると粉塵の捕獲面積が増大することとなる。
【0013】
上記構成のフレーム(3)は、例えば、投下口(21)に対して可倒可能にして進入域を適宜に閉塞する構成としたり、フレーム全体を投下口(21)に対して移動する構成としても良い。
【0014】
なお、特許請求の範囲の書類と上記の課題を解決するための手段の欄で記載した括弧付き符号は、発明の構成の理解を容易にするため参考として図面符号を付記したもので、この図面上の形態に限定するものでないことはもちろんである。
【発明の効果】
【0015】
本願発明の粉塵等の飛散防止装置は上記の構成であるため、以下の効果を発揮する。
すなわち、原料を投下口へ投下した場合に、原料の落下に相関して生じる下降風が、シュート部の内面や投下口の底部面に反射して発生する上昇気流に乗って吹き上げられる。この吹き上げられる気体は、粉塵と空気の混合気体であり、粉塵はその粒径が非常に細かいため空中停滞時間が長いものである。かかる混合気体は、空気の部分が通気性を有するシート材の外側に逃される一方、固形物である粉塵は空気粒子よりは遥かに大きい径であるためシート材を通過すること無くシート材の内面で捕獲される。かかる作用によって、上昇気流のエネルギーはシート材を拡張エネルギーに変換されて減衰させられ、これに従ってシート材を通過する風量も漸次減少して行く。上昇気流の減少に従ってシート材の拡張力が弱まって下方側へ収縮して粉塵の飛散が効果的に阻止されることになる。別言すると、被覆体は上昇気流が強い時に粉塵の捕獲を可能とする面積を実質的に増大させてより多くの粉塵を確保する一方、上昇気流の減少にしたがって徐々にかつ静かに収縮していくため、捕獲した粉塵を周囲へ飛散、特に、進入域からの噴出を効率的に防止することかできる。
【0016】
また、被覆体はフレームに撓ませて架設しているため、上昇気流によって拡張する粉塵捕獲のための面積がさらに増大することとなり、より多くの粉塵の捕獲が可能となる。さらに、被覆体の撓みは、原料投入直後における投入口近傍の水平方向の拡がる気流の勢い(風圧)も減殺するため、原料投入のための進入域側への粉塵の飛散も防止する効果を有する。
【0017】
フレームは、投下口に立設配置すると共に投下用の進入域を確保する簡易な構成であるため、現状の投下口へ迅速に配設可能であり、従来同様に大型搬送手段であるダンプトラック等の傾斜した荷台後部を通過させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本願発明に係る粉塵等の飛散防止装置1(以下、「本装置」と称する。)の具体的実施例について、図面に基づき詳細に説明する。
図1は本装置の外観を示す一部切り欠き斜視図であり、図2、図3は本装置の作用を示す断面図である。
【0019】
本実施例での粉塵を発する投下物は、火力発電所等で燃焼させる石炭Cである。この石炭Cは、ダンプトラック等の大量搬送手段によって火力発電所まで陸送され、ホッパー等の受け入れ手段を介して地下等に敷設した搬送設備や保管施設に投下されている。
【0020】
図符号2は、上方開口の矩形状の投下口21を有し、下部側を漏斗状に縮形させたシュート部22を成すホッパーである。このホッパー2は、ダンプトラック6の傾斜した荷台61の後部から大量に投下される石炭Cを、地下(下部側)に敷設したベルトコンベア5に案内している。ホッパー2の投下口21の全面には粗破砕、異物除去用として格子状のスクリーン21aを配設している。なお、上記構成のホッパー2は従来と同様の構成であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0021】
本装置1は、主に、上記ホッパー2の投下口21と、投入口21の上部側全域を覆うように配設するフレーム3と、このフレーム3に架設する被覆体4とから構成している。
【0022】
フレーム3は、ホッパー2の投下口21の周縁部に配置する枠状の台座31と、この台座31を足場として立設すると共に投下口21の上部を覆う支持枠32と、から構成している。台座31は投下口21と支持枠32との言わば"接合手段(アダプタ)"として機能すると共に投下口21の周縁部を封止している。
【0023】
支持枠32は、縁部材として硬質材、例えば、板材、パイプ材、アングル材、硬質ゴム、ウレタン等を組み合わせて保形した枠体である。また、支持枠32は、図示するように、平面視では投下口21の形状に沿った矩形状を成し、短手方向の側面視は一方側を高くして上辺を傾斜させた台形状を成し、長手方向の側面視は大きさの異なる矩形状を成すように保形している。別言すれば、この支持枠32は、サッカーゴールのゴールマウス側を投下口側へ伏せた形状を呈している。
【0024】
支持枠32の対向面の一方が大きな側面部は、傾斜するダンプトラック6の荷台後部を通過可能に保形し、石炭投下のための進入域となる進入口33としている。また、進入口33の上部と両側には、ダンプトラック6の荷台61に干渉しない範囲であって、進入口33の開口を狭める略コ字状を成す狭窄板33aを配置している。この狭窄板33aは、風圧変化によって発生する気流程度では変形しない硬質板材、例えば、金属板、合成樹脂板である。
【0025】
なお、本実施例では支持枠32を枠体状に構成しているが、上記進入口33のみを開放して上面視においてコ字状に形成した筒体状をもって構成しても良い。
【0026】
被覆体4は、石炭の粉塵が通過し得ない多数の通気孔によって通気性を有し、石炭投下の風圧変化により発生する上昇気流によって拡張し得る可撓性シート材から構成している。本実施例の可撓性シート材としては、濾過布(製造元:敷島カンバス(株)、品種:T−606、材質:ポリエステル、通気度:700cc/min/cm)を採用している。
【0027】
上記の被覆体4は、フレーム3の支持枠32の下面側と進入口33を除く全ての面を外側から覆うようにフレーム3に架設されている。この被覆体4の架設においては、特に、上面側のみを投入口21のスクリーン21aに接する程度に下方側に大きく撓ませた撓み部41を形成している。
【0028】
被覆体4の支持枠32への取り付けは、伸縮性を有するロープやゴム等の紐体を介して行っているが(図示省略)、この取付方法に限定するものではなく、所謂クランパやフック等の固定手段によって取り付けても良い。
[作用]
【0029】
上記構成の本装置1は、以下のように作用しホッパー周囲への粉塵の飛散を防止している。
まず、ダンプトラック6が大量の石炭Cを荷台61に積載して搬送してくる。そして、ダンプトラック6の荷台後部側を、フレーム3の進入口33からホッパー2の投下口21の上部側へ進入させる。この状態でダンプトラック6の荷台61を傾斜させ、大量の石炭Cを投下口21からホッパー2の内部に投下する。投下された石炭Cは、ホッパー2の形状により下方のベルトコンベア5に案内されることとなる(矢印a)。
【0030】
この投下作用により、石炭Cは投下口21のスクリーン21aで粉砕されたり、ホッパー2のシュート部22やベルトコンベア5の上面に衝突等して微粒子状の粉塵を発生させる。同時に、投下作用による風圧変化が上昇気流を発生させ、この上昇気流はホッパー内部で粉塵を舞い上げる(矢印b)。また、上昇気流は粉塵を舞い上げるだけでなく、被覆体4の撓み部41を上方に大きく膨らませ(拡張させ)、被覆体4の通気孔から勢いを減じつつ分散されることとなる(矢印c)。
なお、被覆体4の撓み部41は、石炭Cの投入直後においてスクリーン近傍の水平方向に拡がる気流の勢いも減殺している。
【0031】
上記の膨らんだ状態での被覆体4は、通気性を有するため空気のみを上方に逃しつつ粉塵を捕獲している。また、被覆体4は上方に大きく膨らむことにより、粉塵捕獲のための面積を増大させている。
【0032】
被覆体4は上昇気流が減少してくると、収縮しつつ下方に撓んだ元の状態となる。この収縮時の風圧変化は低いため、被覆体4は徐々にかつ静かに収縮することとなり、捕獲した粉塵を周囲に飛散させることは殆どない。また、進入口33も狭窄板33aを配置することにより、開口の大きさがダンプトラック6の荷台61に干渉しないぎりぎりまで狭まっているため、特にその上部側からの粉塵の飛散が防止されている。
[他の実施形態の可能性]
【0033】
上記実施例における本装置1は、フレーム3の進入口33は常時開放としているが、進入口側のフレーム3のみを可倒可能に構成し、進入口33を閉塞する構成とすることも可能である。また、進入口33に例えば、蓋、扉、暖簾式のカーテン等の閉塞機構を追加しても良い。このような進入口33を閉塞する構成を採用すれば、粉塵飛散は投下作業時にのみに限定されることとなる。
【0034】
また、本装置1はホッパー2の投下口21に固定される構成であるが、フレーム3の台座31に移動手段、例えば、スライドレールや大型キャスター等を配設しても良い。この構成を採用すれば、本装置1を複数のホッパー2に対して移動させて使用することが可能となり、設備の有効利用が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本装置の外観を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】本装置の作用を示す断面図である。
【図3】本装置の作用を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 本装置
2 ホッパー
21 投下口
21a スクリーン
22 シュート部
3 フレーム
31 台座
32 支持枠
33 進入口
33a 狭窄板
4 被覆体
41 撓み部
5 ベルトコンベア
6 ダンプトラック
61 荷台
C 石炭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方へ開放口をもった投下口(21)と、
該投下口(21)への投下物(C)の進入域を残して投下口(21)の上方全域を覆うように配置した被覆体(4)と、から成り、
該被覆体(4)は、所定量以上の風量に対して通気抵抗を示す程度の通気性をもった可撓性シート材で成ることを特徴とする粉塵等の飛散防止装置。
【請求項2】
進入域への進入縁部を縁部材で形成したことを特徴とする請求項1記載の粉塵等の飛散防止装置。
【請求項3】
縁部材をフレーム(3)で形成したことを特徴とする請求項2記載の粉塵等の飛散防止装置。
【請求項4】
被覆体(4)を、風圧より上方側に拡張し得るように投下口(21)の外周とフレーム間に撓ませて架設したことを特徴とする請求項2記載の粉塵等の飛散防止装置。
【請求項5】
フレーム(3)を立設配置したことを特徴とする請求項3、又は4記載の粉塵等の飛散防止装置。
【請求項6】
フレーム(3)を可倒可能にしたことを特徴とする請求項3、4、又は5記載の粉塵等の飛散防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−238321(P2007−238321A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67005(P2006−67005)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(595072686)常磐共同火力株式会社 (5)
【出願人】(590001072)株式会社 常磐エンジニアリング (1)
【Fターム(参考)】