説明

粉塵(ダスト)及び/又はVOC(揮発性有機化合物)の発生量の測定装置及び測定方法

【課題】本発明の目的はより簡単、より実際の使用環境に近い条件において、材料から発生する粉塵及び/又はVOC量を測定できる装置及び測定方法を提供することにある。
【解決手段】画像形成装置を稼動した際に粉塵(ダスト)及び/又はVOC(揮発性有機化合物)を発生させる要因となり得る部材の粉塵及び/又はVOC量を測定する装置であって、吸引ダクトと、雰囲気測定装置を含み、サンプルが加熱されることにより発生する雰囲気を吸引ダクトより吸引し、その後吸引した雰囲気を雰囲気測定装置により測定する手段を有することを特徴とする測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塵(ダスト)及び/又はVOC(揮発性有機化合物)の測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター、複写機などの画像形成装置を用いて印刷する場合、画像形成部、定着部等から粉塵(ダスト)やVOC(揮発性有機化合物)が発生する。画像形成装置の多
くは、室内などの密閉環境での使用が多く、発生した粉塵やVOCは密閉環境に溜まり、人体に影響を与える恐れがある。そのため、画像形成装置から発生したVOCそして粉塵の排出量を低減させることが進められている。
【0003】
粉塵(ダスト)やVOC(揮発性有機化合物)の発生は、加熱により画像を定着させる方
法を用いた画像形成装置において顕著である。これは、粉塵やVOCの発生源の一つとして
、定着加熱時の静電荷像現像用トナーや定着装置部材から発生しているためであると推定される。
【0004】
画像形成装置からの粉塵の排出量を測定する方法は、換気設備を有する密閉空間において、レーザープリンター、複写機などを作動させ、密閉空間に発生した粉塵をフィルターにより捕集し、その重さから発生するダスト量を測定する方法がある。また、VOCの排出量を測定する方法は粉塵と同様に密閉空間に発生したVOCを吸着剤により吸着し、吸着剤の重量からVOC量を測定する方法がある(放散試験の国際規格 非特許文献1)。しかし、これらの方法は、湿度などの影響を受けない換気設備を有する密閉空間を持つ大型専用設備が必要であり、測定場所が制限される。さらに、このフィルターに又は吸着剤による捕集の方法を用いて分析する場合、ある一定量以上の粉塵やVOCが必要となるため、密閉空間に高濃度の粉塵やVOCを発生させる必要があった。
また、この方法であると、画像装置やトナーなどを画像が形成できる段階まで作り込む必要があり、装置及びトナーなどの開発を行う際には非常に時間や手間が必要となり、多数のサンプルを評価することが困難である。
【0005】
VOCの排出量を測定する方法においては、吸着剤を用いる方法以外にも、ガスクロマトグラフィを用いる方法がある。しかし、これも専用装置で複雑な方法を取らねばならず、時間とコストが必要であり、多数のサンプルを評価することは困難である。
【0006】
材料を分析する方法として、材料を加熱し発生したガスの成分と量を測定する熱分析方法が知られている。しかしこの方法での測定値は、ガス中の水分、VOCなどの粉塵よりも
微細な成分も含めた測定値であるため、粉塵の量を特定することができない。
【非特許文献1】ISO/ICE_28360(ECMA-328(2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はより簡単、より実際の使用環境に近い条件において、材料から発生する粉塵及び/又はVOC量を測定できる装置及び測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は鋭意検討の結果、加熱装置と、吸引ダクトと、雰囲気測定装置と、吸引した雰囲気を測定装置に接続し、加熱装置によって加熱されるサンプルから発生する成分の発生量を測定する手段とを工夫することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に達した。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)画像形成装置を稼動した際に粉塵(ダスト)及び/又はVOC(揮発性有機化合物)を発生させる要因となり得る部材の粉塵及び/又はVOC量を測定する装置であって、吸引ダクトと、雰囲気測定装置を含み、サンプルが加熱されることにより発生する雰囲気を吸引ダクトより吸引し、その後吸引した雰囲気を雰囲気測定装置により測定する手段を有することを特徴とする測定装置。
(2)雰囲気測定装置が粉塵(ダスト)及び/又はVOC(揮発性有機化合物)の発生量を測定することを特徴とする前記(1)に記載の測定装置。
(3)更に、サンプルを加熱する加熱装置を含むことを特徴とする前記(1)に記載の測定装置。
(4)サンプルが、静電荷像現像用トナーであることを特徴とする前記(1)乃至(3)に記載の測定装置。
(5)サンプルが、静電荷像現像用トナーを構成する材料であることを特徴とする前記(1)乃至(3)に記載の測定装置。
(6)サンプルが、静電荷像現像用トナーを用いる画像形成装置を構成する成分であることを特徴とする前記(1)乃至(3)に記載の測定装置。
(7)サンプルが、静電荷像現像用トナーを用いる画像形成装置の定着ローラーを構成する成分であることを特徴とする前記(1)乃至(3)に記載の測定装置。
(8)加熱が、静電荷像現像用トナーを用いる画像形成装置における、トナーの熱定着装置で行われることを特徴とする前記(1)乃至(7)に記載の測定装置。
(9)加熱により発生する粉塵(ダスト)及び/又はVOC(揮発性有機化合物)の発生量を加熱開始から連続で測定することを特徴とする前記(8)に記載の測定方法。
(10)サンプルへの加熱を、加熱装置の昇温と同時に行うことを特徴とする前記(8)又は(9)に記載の測定方法。
(11)サンプルへの加熱を、一定温度に保持された加熱装置によって行うことを特徴とする前記(8)又は(9)に記載の測定方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粉塵(ダスト)及び/又はVOC(揮発性有機化合物)量を安価かつ簡単な構成で測定することができる測定装置及び測定方法を提供することができる。
また、画像形成装置の実際の使用環境に近い条件で、画像形成装置又は静電荷像現像用トナーを構成する材料から発生する粉塵及び/又はVOC量を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1を用いて説明する。図1は加熱装置と、吸引ダクトと、雰囲気測定装置を有する粉塵及び/又はVOC量の測定装置である。
図1において、1はドラフトである。ドラフトには、9の給気口、8の排気口が設けられており、ドラフト中に外気や不活性ガスなどを導入しながら測定することができる。サンプルを加熱した際に、発生したVOC濃度が、測定器の雰囲気測定装置の測定限界以上になる場合は、一定流量の外気又は不活性ガスを10の吸気口に流し、発生した濃度を測定範囲内にすることが好ましい。
【0013】
4の粉塵及び/又はVOCを測定するサンプルを3のカップに入れ、2の加熱機器上で
加熱を行う。加熱機器は特に限定されず、ホットプレートなど、試料を均一に加熱でき、温度を制御できるものであればよい。また、サンプルは加熱機器に直接接触させてもよく、カップに入れて加熱機器に接触させても良い。カップはアルミカップなど伝熱率の高い金属容器が好ましく、均一に試料を加熱するために容器と加熱機器との接触面が大きい方が好ましい。
サンプルは、カップなどの開放容器ではなく、密閉容器で加熱させてもよい。
【0014】
加熱する際のサンプルの形状によって、粉塵やVOCの発生開始時間及び発生量等が変化することを避けるため、なるべく細かい粒子状であることが好ましい。さらには、サンプルの融点近傍まで加熱し、一度溶解したほうが好ましい。
サンプルの溶解温度が高すぎると、粉塵やVOCが発生してしまう可能性があるため、融点近傍の温度で短時間に加熱することが好ましい。
【0015】
本発明のサンプルは、画像形成装置を稼動した際に粉塵やVOCを発生させる要因となり得る部材であればよく、トナーやトナーを構成する材料、定着ローラーなどの画像形成装置を構成する成分等が挙げられる。
画像形成装置の粉塵やVOCの発生源の一つとして、定着加熱時の静電荷像現像用トナーや定着装置部材が推定される。これら部材をサンプルとして用い、粉塵やVOCの発生量を本発明の測定装置及び/又は測定方法で測定する。
【0016】
4のサンプルから発生した粉塵及び/又はVOCは、10の吸気口から5の吸気ダクト
を通り、6の雰囲気測定装置へと導入される。
10の吸気口は捕集しやすい形状であればよく、傘型や加熱機器全てを覆うテント式などが挙げられる。10の吸気口で捕集された粉塵及び/又はVOCは、吸気ダクトを通る
ことで補足された全量が雰囲気測定装置へと導入することができる。
【0017】
6の雰囲気測定装置は、連続測定できる粉塵測定装置、或いはVOC測定装置であるこ
とが好ましい。吸気ダクトから吸引した粉塵及び/又はVOCを含む気体が雰囲気測定装
置に送られ、雰囲気測定装置を通過しながら、雰囲気内に含まれる粉塵とVOCをリアタイ
ムで測定する。雰囲気測定装置は、測定方式に依らず、市販の粉塵測定装置を用いることができる。
雰囲気測定装置において測定された粉塵及び/又はVOCを含む気体は、7からドラフ
トの外へ排気される。
【0018】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を図2を用いて説明する。図2は画像形成装置と、吸引ダクトと、雰囲気測定装置を有する粉塵及び/又はVOC量の測定装置である。
図2において、1はドラフトである。第1実施形態と同様、ドラフトには、9の給気口、8の排気口が設けられており、ドラフト中に外気や不活性ガスなどを導入しながら測定することができる。
【0019】
11はプリンターなどの画像形成装置である。プリンターにトナーを入れ、画像濃度、プリンターの定着温度を設定し、同じ画像で一定の枚数で印刷し、印刷によって発生した粉塵及び/又はVOCを、12の吸気口で捕集し、5の吸気ダクトを通り、6の雰囲気測
定装置へと導入する。
11の画像形成装置の定着装置部分は、温度制御できるように改造されたものが好ましい。
【0020】
11の吸気口は画像形成装置を覆うものが好ましい。11の吸気口で捕集された粉塵及び/又はVOCは、吸気口から吸気ダクトを通ることで補足された全量を雰囲気測定装置
へと導入させることができる。
6の雰囲気測定装置も第1実施形態と同様の装置であることが好ましい。
【0021】
[測定方法]
サンプルの加熱方法及び測定方法は、測定目的によって適宜に組み合わせることができる。
サンプルへの加熱は、加熱装置の昇温と同時に行ってもよく、一定温度に保持された加熱装置によって行ってもよい。
測定は、温度、時間を任意に設定した測定でもよく、サンプルの加熱開始から連続でモニタリングしてもよい。加熱装置の温度や測定された結果は、パソコンなどのデータ処理装置に送られ、データ分析することもできる。
【0022】
加熱装置の昇温と同時にサンプルを加熱させる場合は、粉塵及び/又はVOCの発生量
、発生し始める温度、発生量の変動、最大発生量と発生温度、発生収束温度、などを測定することができる。
一定温度に保持された加熱装置によってサンプルを加熱させる場合は、ある特定の温度環境化における粉塵及び/又はVOC量を測定することができる。この測定方法により、
特定の温度・時間において、発生する粉塵及び/又はVOC量を測定することが可能とな
る。また、複数サンプルの、同一温度・時間条件での発生量を比較することができ、多数のサンプルから、製品の設計に合ったものを抽出することが可能となる。
【0023】
一定温度に保持された加熱装置によってサンプルを加熱させ、一定時間の粉塵やVOCの発生量を測定する場合、サンプルの温度が均一になるまで時間をおき、測定を開始することが好ましい。また、サンプルの温度が均一になるまでの時間は短い方が好ましく、サンプルの形状、量等を適宜選択すればよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施形態1で示した装置を使って、ワックス1、ワックス1を10%含有する乳化重合凝集法により得られたトナー1の粉塵測定を行なった。
【0026】
ワックス1 パラフィンワックス(日本精蝋製)
トナー1 ワックス1を10%含有する乳化重合凝集法より得られたトナー
ワックス2 カルナウバワックス(セラリカ野田製)
トナー2 ワックス2を10%含有する乳化重合凝集法より得られたトナー
【0027】
1gのワックス1をアルミカップに入れ、加熱装置であるホットプレート上に設置した。ホットプレートは100℃から200℃まで100℃/hの速度で昇温し、連続して粉塵量を測定した。サンプルから発生する粉塵は柴田科学製LD-3K2デジタル粉塵計で測定を行った。
【0028】
ホットプレート表面温度が180℃以上において、ワックス1から粉塵が発生した。
【0029】
ワックス1を10%含有する乳化重合凝集法より得られた0.5gのトナー1をワックス1と同様に測定を行った。ホットプレート表面温度が180℃以上において、トナー1から粉塵が発生した。
【0030】
1gのワックス2、ワックス2を10%含有する乳化重合凝集法より得られた0.5gのトナー2をワックス1と同様に測定を行った。ホットプレート表面温度が180℃以上において、ワックス2及びトナー2から粉塵は発生しなかった。
【0031】
ISO/ICE_28360(ECMA-328(2007) に記載のフィルター吸着方式の電子機器からの化学物質放散速度の測定方法で、トナー1、トナー2の粉塵測定を行った。トナー1からは、8mg/h、トナー2からはドイツの環境ラベル、ブルーエンジェル規格(4mg/h以下)を満たす0.5mg/hの粉塵が測定された。
【0032】
本発明の測定機及び測定方法を用いた測定結果と、ISO/ICE_28360(ECMA-328(2007) に記載の測定方法による結果が一致した。本発明の方法を用いることにより、従来の方法より簡易に粉塵評価を行うことができる。
【0033】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態1を示す図である。
【図2】本発明の実施形態2を示す図である。
【図3】実施例のワックス1、ワックス2の粉塵発生量の測定結果を表す図である。
【図4】実施例のトナー1、トナー2の粉塵発生量の測定結果を表す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 簡易ドラフト
2 ホットプレート
3 アルミカップ
4 試料サンプル
5 吸気ダクト
6 雰囲気測定装置
7 測定装置からの排気口
8 ドラフトからの排気口
9 ドラフトへの給気口
10 吸気口
11 レーザープリンター評価機
12 吸気ダクト用カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置を稼動した際に粉塵(ダスト)及び/又はVOC(揮発性有機化合物)を発生させる要因となり得る部材の粉塵及び/又はVOC量を測定する装置であって、吸引ダクトと
、雰囲気測定装置を含み、サンプルが加熱されることにより発生する雰囲気を吸引ダクトより吸引し、その後吸引した雰囲気を雰囲気測定装置により測定する手段を有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
雰囲気測定装置が粉塵(ダスト)及び/又はVOC(揮発性有機化合物)の発生量を測定することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
更に、サンプルを加熱する加熱装置を含むことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
サンプルが、静電荷像現像用トナーであることを特徴とする請求項1乃至3に記載の測定装置。
【請求項5】
サンプルが、静電荷像現像用トナーを構成する材料であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の測定装置。
【請求項6】
サンプルが、静電荷像現像用トナーを用いる画像形成装置を構成する成分であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の測定装置。
【請求項7】
サンプルが、静電荷像現像用トナーを用いる画像形成装置の定着ローラーを構成する成分であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の測定装置。
【請求項8】
加熱が、静電荷像現像用トナーを用いる画像形成装置における、トナーの熱定着装置で行われることを特徴とする請求項1乃至7に記載の測定装置。
【請求項9】
加熱により発生する粉塵(ダスト)及び/又はVOC(揮発性有機化合物)の発生量を加熱開始から連続で測定することを特徴とする請求項8に記載の測定方法。
【請求項10】
サンプルへの加熱を、加熱装置の昇温と同時に行うことを特徴とする請求項8又は9に記載の測定方法。
【請求項11】
サンプルへの加熱を、一定温度に保持された加熱装置によって行うことを特徴とする請求項8又は9に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−2338(P2010−2338A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162210(P2008−162210)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】