説明

粉挽き器

【課題】 穀物等の被粉砕物を短時間に所定粒度分布に粉砕できる小型の粉挽き器を提供する。
【解決手段】 中心部に被粉砕物を投入する投入穴OUを有する円盤状の上臼31を円盤状の下臼32の上面に載置し、投入穴OUから被粉砕物を供給して、上下臼31、32の少なくとも一方の臼を回転させることにより被粉砕物を擂り潰し粉砕する粉挽き器1において、上臼31の下面と下臼32の上面はいずれも平坦な対接面となり、上下臼31、32に中心部から所定角度で外周縁へ向けて複数本の放射状溝321〜328を形成し、複数本の放射状溝321〜328のうち、所定本数は中心部から外周縁へ導出され、残りが外周縁へ達する手前で堰止めされ、かつ各放射状溝は、さらに複数本の分岐溝a〜fが外周縁に向けて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭などで米、麦、大豆、トウモロコシ等の穀物を簡単かつ手軽に粉砕することができる粉挽き器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米、麦、大豆等の穀物を擂り潰し粉砕する粉挽き器は、一般家庭において古くから使用されている。このような粉挽き器は、通常、上臼及び下臼を備え、下臼の上に上臼を載置して、上臼又は下臼の一方を回転させることにより、穀物を上臼の下面と下臼の上面とで擂り潰して粉砕する構造となっている。具体的には、上臼と下臼との対向面に、それぞれ溝が形成された臼を使用し、上臼の投入穴から穀物を投入し、これらの溝内に穀物を入り込ませ、一方の臼を回転させることにより、溝内の穀物を上臼溝の縁と下臼溝の縁とで挟み、せん断力で粉砕するようになっている。そしてまた、このような粉挽き器は、種々のタイプのものが開発され、特許文献でも多く紹介されている(例えば下記特許文献1、2参照)。
【0003】
図6は、下記特許文献1に記載された粉挽き器を示す断面図、図7はこの粉挽き器に使用されている臼の平面図及び断面図である。
【0004】
この粉挽き器201は、ケース202と、ケース202の上面に設けられた投入口203と、ケース202の内部に組み込まれる上ロータ204と、上ロータ204の下面に回転可能に配置される下ロータ205と、下ロータ205を回転させる駆動器構206と、受け皿207及び回収カップ208とを備え、上ロータ204が上臼で下ロータ205が下臼となっている。
【0005】
上下ロータのうち、上ロータ204は円盤状をなし、上ロータ204の下面(下ロータ205との対向面)の周縁には、テーパ部204aが形成されている。このテーパ部204aは、外周に向い上向きに傾斜され、その内側は平らな平面部204bとなっている。また、この平面部204bには、中心部から全体を8分割するように放射状に延びる主溝209が形成されている。主溝209の間には、反時計方向に位置する主溝209に平行に副溝210が複数本形成されている。
【0006】
下ロータ205は、円盤状をなし、下ロータ205の上面(上ロータ204との対向面)の周縁には、テーパ部205aが形成され、このテーパ部205aは、外周に向い上向きに傾斜されその内側は平らな平面部205bとなっている。
【0007】
この構成の粉挽き器によれば、上下ロータの平面部204b、205bで穀物を粗挽きし、平滑面のテーパ部204a、205aで微粉砕することができる。
【0008】
このような粉挽き器の他の例として、すり鉢状の粉砕面を備えた下臼と、粉砕面が下臼の粉砕面と合致する上臼とを備え、上下臼の対向面に溝を形成した粉挽き器も下記特許文献2に記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2000−24529号公報(図2、図4、段落〔0018〕〜〔0022〕)
【特許文献2】特開平8−108083号公報(図2、段落〔0011〕〜〔0014〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に記載された粉挽き器は、上下ロータの平面部で穀物を粗挽きし、テーパ部で微粉砕することができる。しかし、上下ロータはそれぞれ外周縁にテーパ部を形成しなければならないが、これらテーパ部の形成は簡単に行うことはできない。すなわち、この粉挽き器は、上記特許文献1に記載された実施例では上下ロータはアルミナを主成分としたセラミック材で形成するものとしているが、このような形状の臼を自然石の大理石で作ろうとすると、その加工が極めて困難である。また、この粉挽き器は、粗挽きされた穀物を全てテーパ部で微粉砕するようにしているので、粉砕に時間が掛かり全体として粉砕時間が長くなる。
【0011】
さらに、ユーザによっては、全て微粉砕されて粒径が小さいものばかりでなく、粒径が大きいものを含んでいても調理等の用途に適合するので、むしろ製粉時間を短縮して欲しいとの要求もあるが、この粉挽き器ではこのような要求を満たすことが困難である。また、この上下ロータは、所定長さの平坦面とテーパ部とが必要となるので、直径をさらに小さくして小型化するにも限界がある。
【0012】
また、上記特許文献2に記載された粉挽き器は、粉砕面がすり鉢状になっているので、穀物等を細かく粉砕することができるが、上臼と下臼との間での滞留時間が長くなり、短時間に粉砕することができない。また、このような臼を自然石で作製することは、極めて困難である。
【0013】
本発明者は、一般家庭において手軽に米粉パンを焼くことができる小型製パン器の開発に長年携わり、製品化して市販しているが、最近、ユーザからは、さらにユーザの好みの米を選定し、この米を家庭で製粉して製パン器を使用して米粉パンを焼き上げたいという要望が出ている。しかし、これまでの粉挽き器は、家庭で手軽に製粉できるものが少なく、あってもその製粉に多大な時間が掛かり、また、製粉された米粉を使っても美味しい米粉パンが焼きあがらない課題があることが判明した。そこで本発明者は、研究を進めたところ、米粒を全てほぼ均一に粉砕することなく、所定の粒度分布の粉砕物であっても美味しい米粉パンを焼き上げ得ることを見出して、これに適合する粉挽き器を開発し、本発明を完成されるに至ったものである。
【0014】
そこで、本発明の目的は、穀物等の被粉砕物を短時間に所定粒度分布に粉砕できる小型の粉挽き器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明は、中心部に被粉砕物を投入する投入穴を有する円盤状の上臼を円盤状の下臼の上面に載置し、前記投入穴から被粉砕物を供給して、上下臼の少なくとも一方の臼を回転させることにより被粉砕物を擂り潰し粉砕する粉挽き器において、前記上臼の下面と前記下臼の上面はいずれも平坦な対接面となり、前記上下臼に中心部から所定角度で外周縁へ向けて複数本の放射状溝を形成し、前記複数本の放射状溝のうち、所定本数は中心部から外周縁へ導出され、残りが外周縁へ達する手前で堰止めされ、かつ前記各放射状溝は、さらに複数本の分岐溝が外周縁に向けて形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の粉挽き器において、前記複数本の放射状溝は、一本おきに中心部から外周縁へ導出された溝と外周縁へ達する手前で堰止めされた溝とが順に形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、本願請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の粉挽き器において、前記複数本の放射状溝は、中心部を基準に等角度間隔で形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、本願請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の粉挽き器において、前記複数本の放射状溝は、途中で堰止め分断されていることを特徴とする。
【0019】
また、本願請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の粉挽き器において、前記複数本の分岐溝は、所定本数が前記中心部から外周縁へ導出された溝から外周縁へ導出され、残りが外周縁へ達する手前で堰止めされていることを特徴とする。
【0020】
また、本願請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の粉挽き器において、前記複数本の分岐溝は、それぞれ等間隔で平行に形成されていることを特徴とする。
【0021】
また、本願請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の粉挽き器において、前記所定本数の外周縁へ導出された分岐溝は、途中で堰止め分断されていることを特徴とする。
【0022】
また、本願請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の粉挽き器において、前記上下臼は、大理石で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1〜3の発明によれば、上臼の投入穴から投入された被粉砕物は、上下臼の少なくとも一方の回転により、上下臼に形成された放射状溝及び分岐溝を経て擂り潰されて臼の外周縁から排出される。すなわち、上下臼で擂り潰された被粉砕物のうち、外周縁に導出されている放射状溝に入ったものは、そのまま外周縁から比較的粒径が大きいままの粉砕物として臼外へ排出され、途中で堰止めされている溝に入ったものは、この堰止めで溝から溢れ出し、溝間の平坦面で擂り潰され粒径が小さくされて隣接する分岐溝へ運ばれ、この分岐溝を経てさらに擂り潰されて外周縁から排出される。したがって、複数本の放射状溝のうち、所定本数を堰止めすることにより、粒径の大きいものと小さいものとが混合された粉砕物、すなわち所定粒度分布の粉砕物を生成できる。また、複数本の放射溝のうち、所定本数が外周縁の手前で堰止めされているので、この溝に入った粉砕物の上下臼間での滞留時間が長く掛るが、他の放射状溝が直接外周縁へ導出されているので、この滞留時間が短くなっており、全体として粉砕時間が短縮される。さらに、このような放射状溝及び分岐溝の組合わせにより、粉砕時間を短縮できると共に上下臼を容易に小型化することもできる。
【0024】
請求項4の発明によれば、複数本の分岐溝のうち、中心部から外周縁へ導出された溝を経た被粉砕物を比較的粒径が大きいものに製粉することができ、堰止めされている溝に入った被粉砕物を溢れ出させ、さらに擂り潰して粒径の小さいものに製粉することができる。
【0025】
請求項5〜7の発明によれば、被粉砕物は、放射状溝の堰止めにより溝から溢れ出し、他の溝へ移送される途中で臼の平坦面で擂り潰され、分岐溝を経てさらに擂り潰されて外周縁から排出される。したがって、複数本の放射状溝のうち、所定本数を途中で堰止めすることにより、粒径の大きいもの、中位のもの、及び小さいものの広範囲の混合粉砕物、すなわち広範囲の粒度分布の粉砕物を生成できる。
【0026】
請求項8の発明によれば、上下臼を大理石にすることより、放射状溝及び分岐溝の加工が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための粉挽き器を例示するものであって、本発明をこの粉挽き器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る粉挽き器の主要部の構成を示す正面断面図である。
【0029】
この粉挽き器1は、穀物等を投入するホッパー部2と、投入された穀物等を粗挽きする臼7と、この粗挽きした粉砕物を擂り潰して微粉砕する臼3と、これらの臼を回転させる駆動部4と、擂り潰された粉砕粉を排出する排出部5と、これらの部材を支持する機台部6とで構成されている。
【0030】
ホッパー部2は、粉挽き器1の上部に漏斗状の導入筒21で形成されている。導入筒21の上部開口21aは、穀物等の投入口となっている。この投入口には、投入量の調節のために開閉可能な蓋部材22を取付けることができるようになっている。ホッパー部2の導入筒21の下部には、ホッパー受け筒72が設けられ、このホッパー受け筒72は、導入筒21に接続された導入路73が形成され、その内周面に固定粗挽き刃74が設けられている。ホッパー受け筒72の中央には、回転用モータ41に取り付けた回転軸42に連動する減速機構に連結された主軸30aと、主軸30aに連結されてその回転に連動する第2シャフト30bと、第2シャフト30bに連結されてその回転に連動する第3シャフト30cと、第3シャフト30cに取り付けられてその回転に連動する回転粗挽き刃75とが設けられている。なお、符号30は主軸30aの軸受である。
【0031】
第3シャフト30cは、挽き臼部3の上臼31の凹部から突出した第2シャフト30bと連結されて回転するようになっている。
【0032】
回転粗挽き刃75は、第3シャフト30cにナット締めで固定されており、ナットを外すことによって粗挽き用の臼部7が分解され、取り外しできるようになっている。さらに、挽き臼部3は、主軸30aと、第2シャフト30bとが分離できるようにしてある。したがって、粗挽き用の臼部7を取り外した後、上臼部の固定を解き、上臼31と下臼32を分解して取り外すことができる。粗挽き用の臼部7と挽き臼部3とをブロック化することにより、粗挽き用の臼部7を容易に取り外しでき、それぞれ分解して清掃や整備などの手入れを容易に行なうことができる。
【0033】
粗挽き刃74、75によって粗挽きされた被粉砕物は、導入筒21によって挽き臼部3に導かれて、上臼31の中央部の穴に落とされ、上臼31と下臼32によって挽かれ、所定の粒径分布の粉に粉砕される。
【0034】
挽き臼部3は、下面と上面とが互いに摺接する上臼31と下臼32とを備え、これらは同軸上に配置され、一方の上臼31が固定され、下臼32が軸受30内の主軸30aに連結されたジョイント30dに取付けられて回転可能になっている。すなわち、この下臼32は、駆動部4の減速手段43を介して回転用モータ41により回転自在に軸支されている。挽き臼部3は、この種の粉挽き器においては、通常下臼の上面は上方に突出する円錐面として構成され、上臼の下面はそれに合うように中心部に向かって窪んだ逆円錐形に形成されるが、この実施例では、上臼31と下臼32との擂り合わせ面はいずれも平坦面として構成されている。平坦面にすることにより、石臼の加工が容易になる。
【0035】
上臼31と下臼32との擂り合わせ面の間隔は、間隔調整機構33によって変更可能であり、穀物等の種類に応じて適度に接触圧を調整し、挽き具合を良好にし、あるいは製粉した粉の粒度分布を制御するために調整できる。固定側の上臼31は、機体62とホッパー2に固定された上部支持台34に設けた爪35が上面の穴36に差し込まれて動かないように固定され、強固に保持されている。回転側の下臼32は、間隔調整機構33のレバー37によって固定側の上臼31に対して接近させたり離反させたりできるようにした上下可動な鍋状の下部支持台38の中に収容され、下部支持台38の底部に取付けられた弾性支持手段39上に載置されて保持されている。
【0036】
弾性支持手段39は、下臼32の下面を支えるように下部支持台38の複数の箇所に備えられていて、弾性的に上方向の圧力をかけるものである。本実施例において、弾性支持手段39は、圧縮コイルばね39aと圧縮コイルばね39a上に載置した金属板39eに回転可能に支持された金属やセラミックなどからなるボール39bとを筒体39cで包み、ボール39bの一部を筒体39cから露出させたものである。弾性支持手段39は、下臼32を歪なく支持するには3点以上で支持することが必要であるため、少なくとも3箇所で下臼32を支持している。下臼32は、弾性支持手段39の回転するボール39bを介して圧縮コイルばね39aの圧接力が加えられるようにして支持されているので、その回転を妨げられることはない。
【0037】
さらに、弾性支持手段39は、上下方向の圧力を可変にするために上下方向の可動手段39dを有してもよい。可動手段39dは、例えば筒体39cの外面に設けた螺子山に螺合する螺子溝を備えた固定子であってもよいし、複数の弾性支持手段39を支持する上下動可能なリング状の一枚の板であってもよい。弾性支持手段39が、上下方向の圧力を可変にするための可動手段39dを介し、弾性支持手段39の接触圧を変えることができると、穀物の種類に適合した、より適度な接触圧を設定して、良好な挽き具合を得ることができる。
【0038】
下臼32は、その下面に上臼31の方向に付勢する複数の弾性支持手段39を有するので、回転しながら上臼31に適度の圧力で強制的に圧接される。この圧接力は複数の弾性支持手段39で分散されていて、下臼32の下面に均一かつ緊密な圧接力を与えることができる。また、上臼31は、これらの弾性支持手段39により均一な圧接力が加えられた下臼32と擂り合わせるように支持されているので、所望の粒径に製粉された粉が得られる。
【0039】
また、下臼32が上臼31に強制的に圧接されるので、上臼31の重量以上の加重を掛けることができるから、上下の臼の重量が軽減でき、軽量化を図ることができるので粉挽き器1を小型軽量化することができる。
【0040】
機台部6は、粉挽き器1の基礎部分をなし電源スイッチや制御部分を内蔵(図示せず)するが、その一部分で駆動部4の回転用モータ41を支持する。回転用モータ41は回転軸42が上方に向けて取付けられ、上方に突出し減速手段43に連接係合する。また機台部6にはタイマー(図示省略)などが設けられる。
【0041】
駆動部4の回転用モータ41は、減速手段43を介して下臼32を回転させる。減速手段43は、図2に示すように、3段の歯車43a〜43cからなる減速機構を備えており、この減速機構は支柱44で支えられたシャーシ45a、45bの間に装着されている。シャーシ45aの下面に取付けた回転用モータ41の回転軸42には駆動歯車46を取付けている。シャーシ45a、45bの間において、中間軸47には中間歯車43bを取り付け、主軸30aの下端部には従動歯車43aを取り付ける。回転用モータ41の駆動歯車46は、初動歯車43cを駆動し、中間歯車43b、従動歯車43aの各歯車を介して減速された速度で主軸30aを回転させ、下臼32を回転させる。
【0042】
排出部5は、挽き臼部3によって粉砕された穀物粉などの被粉砕物が排出される。挽き臼部3の間隙に臨ませて粉排出口を形成してあり、鍋状の下部支持台38にはその排出口の近くに取り出し口51を設け、取り出し口51に粉バスケット52を着脱自在に配置している。
【0043】
以上の各部分は、機台部6の駆動部4の上に減速機構が、減速機構の上に挽き臼部3が、挽き臼部3の上に、粗挽き用の臼部7及びホッパー部2がそれぞれ組み立てられて粉挽き器1となる。そして、粉砕したい米などの穀物がホッパー部に投入されると、穀物はホッパー導入筒21の下部の中央部にある導入口21bから挽き臼部3に落下し、挽き臼部3によって粉砕されて挽かれ、下臼32に取付けられたブラシ(図示省略)で集められ、排出口5から排出される。粉砕物された粉は、排出口5の近くに設けた取り出し口51から、着脱自在に配置した粉バスケット52に溜められる。
【0044】
次に、上下臼対向面の溝形状について説明する。
【0045】
図3は、粗挽き臼部の上下臼を示し、図3(a)は上臼の底面図(下臼の対向面)、図3(b)は、下臼の平面図である。
【0046】
上臼31と下臼32とは、ほぼ同じ形状を有し、上臼31の中心部には穀物等が投入される投入穴OUが形成されているのに対し、下臼32の中心部には主軸30aが嵌合する孔320Xが設けられている点で構成が異なっている。そこで、上臼31には、下臼32と同じ符号を付して説明を援用し上臼の説明を省略し、主に下臼について説明する。
【0047】
上下臼31、32は、所定の直径及び厚みを有し円盤状をなし大理石からなり、互いの対向面が平坦面に形成されている。
【0048】
下臼の平坦面320は、図3(b)に示すように、中心部から全体を8分割するように放射状に延びる8本の放射状溝(以下、放射状溝という)321〜328が形成されている。これらの放射状溝321〜328のうち、任意の1本、例えば放射状溝321を基準(1番目)にして、偶数番目の放射状溝322、324、326、328は、中心部から外周縁へ導出されており、奇数番目の放射状溝321、323、325、327は、外周縁へ達する手前で溝が堰止めされている。また、各放射状溝321〜328には、途中から複数本の分岐溝が等間隔に外周縁へ向けて平行にそれぞれ6本の分岐溝a〜fが形成されている。さらに、これら複数本の分岐溝a〜fのうち、中心部側から数えて、奇数番目の溝a、c、eは、外周縁へ達する手前で溝が堰止めされ、偶数番目の溝b、d、fは、中心部から外周縁へ導出されている。
【0049】
なお、上臼にも下臼と同様に複数本の放射状溝及び分岐溝が形成されている(図3(a)参照)。
【0050】
このような放射状溝321〜328及び分岐溝a〜fを設けた上下臼の対向面を接触させて、下臼32を回転させると、投入された穀物は、擂り潰されて上下臼の外周縁へ所定の粒度分布に粉砕されて排出される。
【0051】
すなわち、8本の放射状溝321〜328のうち、外周縁へ導出された溝322、324、326、328に擂り潰されて入った粉砕物は、これらの放射状溝を通って、外周縁へ導出される。これらの放射状溝から導出された粉砕物は、上下臼間での滞留時間が比較的短く、しかもその粒径が比較的大きいものとなっている。一方、残りの放射状溝321、323、325、327は、外周縁へ達する手前で堰止めされているので、これらの溝に入った粉砕物は、この堰止めにより、この溝から溢れ出し、臼の回転にしたがって隣接する溝方向へ移送され、上下臼の平坦面で穀物がさらに擂り潰されて微粉砕される。
【0052】
このとき、分岐溝a、c、eに入った粉砕物は、これらの分岐溝を通って、さらに粒径が小さくされて臼の外周縁へ導出され、また残りの分岐溝b、d、fは、堰止めされているので、これらの溝に入った粉砕物は、この堰止めにより、この溝から溢れ出し、臼の回転にしたがって隣接する溝方向へ移送され、上下臼の平坦面で穀物がさらに擂り潰されて微粉砕されて臼外へ導出される。この微粉砕された粉砕物は、上下臼間の滞留時間が比較的長くかかって臼外へ導出される。
【0053】
このような放射状溝及び分岐溝を上下臼に設けて穀物等を粉砕すると、広範囲の粒度分布を有する粉砕物が生成できる。以下に一例を説明する。
【0054】
上下臼31、32は、臼直径D1を180mm、中心部の直径D2を30mm、放射状溝及び分岐溝を何れも同じV字状とし、このV字状溝の深さを1.5mm、上部の開口幅長を3.0mm、及び各溝間隔L1を9.0mm、さらに、堰止めされた溝端と外周縁との距離L2を5.0mmに形成し、これらの上下臼を重ねて、両臼に圧力4kg/cmを掛けて、一晩水に浸した米粒50gを挽いて以下の結果を得た。なお、メッシュは、1インチの間に何本の網目が通るかをあらわす単位である。
【表1】

【表2】

【0055】
まず、表1に示すように、粗挽き用の臼部7において、大方24メッシュ〜83メッシュの範囲にあって、特に32メッシュ〜83メッシュの粉が約35%を占める粒度分布(表1参照)に粉砕しておく。続いて、挽き臼部3により挽いたところ、表2に示すように、83メッシュ以下の粉が約30%を占めることとなった。また、200メッシュ〜235メッシュの粉が25.6%となり、32メッシュ以下の粉は0.0%となっていることからも、米粉の粒径はさらに細かいものとなっていた。この粒度分布の米粉を使用して米粉パンを焼いたところ、風味のあるふっくらした製パンができた。
【0056】
この実施形態では、放射状溝及び分岐溝をそれぞれ8本、6本としたが、これらの本数に限定されない。また、堰止めした溝は、奇数番目と偶数番目とを逆にしてもよく、また、任意の本数の溝を堰止めしてもよい。さらに、堰止めは、止めることなく溝幅を狭めてもよい。さらにまた、放射状溝及び分岐溝は、直線状でなく湾曲或いは蛇行させてもよい。
【実施例2】
【0057】
図4は、本発明の他の実施形態にかかる粗挽き臼部の上下臼を示し、図4(a)は上臼の底面図(下臼の対向面)、図4(b)は、下臼の平面図である。
【0058】
この上下臼は、実施例1の上下臼に形成された溝を中心部から角度θ(例えば、10度)傾けて形成した構成のみが異なり、他の構成はほぼ同じであるので、共通部分は同じ符号を付してその説明は省略して、異なる部分のみ以下に説明する。
【0059】
また、上臼31Aと下臼32Aとは、ほぼ同じ形状を有し、上臼31Aの中心部には穀物等が投入される投入穴OUが形成されているのに対し、下臼32Aの中心部には主軸30aが嵌合する孔320Xが設けられている点で構成が異なっている。そこで、上臼31Aには、下臼32Aと同じ符号を付して説明を援用し上臼の説明を省略し、主に下臼について説明する。
【0060】
下臼の平坦面320は、図4(b)に示すように、中心部から角度θだけ傾けて全体を8分割するように放射状に延びる8本の放射状溝(以下、放射状溝という)321〜328が形成されている。また、各放射状溝321〜328には、途中から複数本の分岐溝が等間隔に外周縁へ向けて平行にそれぞれ6本の分岐溝a〜fが形成されている。この各放射状溝321〜328及び各分岐溝a〜fは、実施例1と同様に、外周縁へ導出されているものと外周縁へ達する前で溝が堰止めされているものとが交互に形成されている。
【0061】
このような放射状溝321〜328及び分岐溝a〜fを設けた上下臼の対向面を接触させて、下臼32Aを回転させると、投入された穀物は、擂り潰されて上下臼の外周縁へ所定の粒度分布に粉砕されて排出される。
【0062】
ここで、放射状溝321〜328及び分岐溝a〜fは中心部からみて所定角度θだけ傾けて形成されており、この傾きにより穀物がさらに擂り潰されて微粉砕されて臼外へ導出される。すなわち、角度θだけ溝部分がずれているため、下臼32の回転開始時には擂り潰し面が多く、もって細かな粒径の粉を生成することができる。
【実施例3】
【0063】
図5は本発明の他の実施形態にかかる粗挽き臼部の上下臼を示し、図5(a)は上臼の底面図(下臼の対向面)、図5(b)は、下臼の平面図である。
【0064】
この上下臼は、実施例1の上下臼とは、外周縁へ導出された溝が、一旦外周縁へ達する前に溝が堰止めされ、その延長線上に再び溝が形成され外周縁へ導出されている構成のみが異なり、他の構成はほぼ同じであるので、異なる部分のみ以下に説明する。
【0065】
また、上臼31Bと下臼32Bとは、ほぼ同じ形状を有し、上臼31Bの中心部には穀物等が投入される投入穴OUが形成されているのに対し、下臼32Bの中心部には主軸30aが嵌合する孔320Xが設けられている点で構成が異なっている。そこで、上臼31Bには、下臼32Bと同じ符号を付して説明を援用し上臼の説明を省略し、主に下臼について説明する。
【0066】
下臼の平坦面320は、図5(b)に示すように、中心部から全体を8分割するように放射状に延びる8本の放射状溝(以下、放射状溝という)321'〜328'が形成されている。これらの放射状溝321'〜328'のうち、任意の1本、例えば放射状溝321'を基準(1番目)にして、偶数番目の放射状溝322'、324'、326'、328'は、外周縁へ達する手前で溝が堰止めされており、奇数番目の放射状溝321'、323'、325'、327'は、外周縁へ達する前で溝が堰止めされ、その延長線上に再び溝が形成され外周縁へ導出されている。また、各放射状溝321'〜328'には、途中から複数本の分岐溝が等間隔に外周縁へ向けて平行にそれぞれ6本の分岐溝a'〜f'が形成されている。さらに、これら複数本の分岐溝a'〜f'のうち、中心部側から数えて、奇数番目の溝a'、c'、e'は、外周縁へ達する手前で溝が堰止めされ、偶数番目の溝b'、d'、f'は、外周縁へ達する前で溝が堰止めされ、その延長線上に再び溝が形成され外周縁へ導出されている。
【0067】
このような放射状溝321'〜328'及び分岐溝a'〜f'を設けた上下臼の対向面を接触させて、下臼32Bを回転させると、投入された穀物は、擂り潰されて上下臼の外周縁へ所定の粒度分布に粉砕されて排出される。
【0068】
ここで、8本の放射状溝321'〜328'のうち、外周縁へ達する手前で溝が堰止めされた溝322'、324'、326'、328'に擂り潰されて入った粉砕物は、この堰止めにより、この溝から溢れ出し、臼の回転にしたがって隣接する溝方向へ移送され、上下臼の平坦面で穀物がさらに擂り潰されて微粉砕される。(これらの放射状溝から導出された粉砕物は、上下臼間での滞留時間が比較的短く、しかもその粒径が比較的大きいものとなっている。)一方、残りの放射状溝321'、323'、325'、327'は、外周縁へ達する前で溝が堰止めされ、その延長線上に再び溝が形成され外周縁へ導出されているので、これらの溝に入った粉砕物は、この堰止めにより、一旦この溝から溢れ出し、臼の回転にしたがってその延長線上に形成された溝又は隣接する溝方向へ移送され、上下臼の平坦面で穀物がまたさらに擂り潰されて微粉砕される。
【0069】
このとき、分岐溝a'、c'、e'に入った粉砕物は、堰止めにより、この溝から溢れ出し、臼の回転にしたがって隣接する溝方向へ移送され、上下臼の平坦面で穀物がさらに擂り潰されて微粉砕されて臼外へ導出される。また残りの分岐溝b'、d'、f'は、堰止めにより、一旦この溝から溢れ出し、臼の回転にしたがってその延長線上に形成された溝又は隣接する溝方向へ移送され、上下臼の平坦面で穀物がまたさらに擂り潰されて微粉砕される。この微粉砕された粉砕物は、上下臼間の滞留時間が比較的長くかかって臼外へ導出されるが、より細かな粒径の粉を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る粉挽き器の主要部の構成を示す正面断面図、
【図2】図2は、実施例1に係る粉挽き器の減速機構を示す概略図、
【図3】図3は、上下臼を示し、図3(a)は、上臼の底面図(下臼の対向面)、図3(b)は下臼の平面図、
【図4】図4は、本発明の実施例2に係る上下臼の構成を示す正面断面図を示し、図4(a)は、上臼の底面図(下臼の対向面)、図4(b)は下臼の平面図、
【図5】図5は、本発明の実施例3に係る上下臼の構成を示す正面断面図を示し、図5(a)は、上臼の底面図(下臼の対向面)、図5(b)は下臼の平面図、
【図6】図6は、従来技術に係る粉挽き器を示す断面図、
【図7】図7は、図6に記載の粉挽き器に使用されている臼を示す図であり、図7(a)は上ロータの平面図、図7(b)は上ロータの正面断面図、図7(c)は下ロータの正面断面図である。
【符号の説明】
【0071】
OU 投入穴
1 粉挽き器
31 上臼
32 下臼
320X 孔
321〜328 放射状溝
a〜f 分岐溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に被粉砕物を投入する投入穴を有する円盤状の上臼を円盤状の下臼の上面に載置し、前記投入穴から被粉砕物を供給して、上下臼の少なくとも一方の臼を回転させることにより被粉砕物を擂り潰し粉砕する粉挽き器において、
前記上臼の下面と前記下臼の上面はいずれも平坦な対接面となり、前記上下臼に中心部から所定角度で外周縁へ向けて複数本の放射状溝を形成し、前記複数本の放射状溝のうち、所定本数は中心部から外周縁へ導出され、残りが外周縁へ達する手前で堰止めされ、かつ前記各放射状溝は、さらに複数本の分岐溝が外周縁に向けて形成されていることを特徴とする粉挽き器。
【請求項2】
前記複数本の放射状溝は、一本おきに中心部から外周縁へ導出された溝と外周縁へ達する手前で堰止めされた溝とが順に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の粉挽き器。
【請求項3】
前記複数本の放射状溝は、中心部を基準に等角度間隔で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉挽き器。
【請求項4】
前記複数本の放射状溝は、途中で堰止め分断されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉挽き器。
【請求項5】
前記複数本の分岐溝は、所定本数が前記中心部から外周縁へ導出された溝から外周縁へ導出され、残りが外周縁へ達する手前で堰止めされていることを特徴とする請求項1に記載の粉挽き器。
【請求項6】
前記複数本の分岐溝は、それぞれ等間隔で平行に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の粉挽き器。
【請求項7】
前記所定本数の外周縁へ導出された分岐溝は、途中で堰止め分断されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の粉挽き器。
【請求項8】
前記上下臼は、大理石で形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粉挽き器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−105559(P2007−105559A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295903(P2005−295903)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【出願人】(000133685)株式会社ティ・ケー・エックス (8)
【Fターム(参考)】