説明

粉末の形態での白色固体光開始剤およびその製造

【課題】2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)からなる白色固体光開始剤およびその製造法の提供。
【解決手段】a)ジフェニルエーテルを、ハロゲン化アルファ−ブロモイソブチリルなどのアシル化剤と、ルイス酸により触媒してフリーデルクラフツ反応させる段階;b)段階a)において得られた2−ハロゲノ−1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを、水和した塩基と反応させて、溶媒に溶解した2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを得る段階;c)このようにして得られた生成物を結晶化させる段階からなる合成法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)からなる粉末の形態での白色固体光開始剤およびその製造方法に関する。
本発明の方法により得られた化合物1は、光重合可能な系における光開始剤として特に反応性であり、これは、このような系に、光重合のために有用な量で容易に、かつ完全に可溶である。
【背景技術】
【0002】
既知の光重合可能な系は、分子中に、電磁気的励起、一般的にUV照射により、系を重合させることができる基を生成する官能基を有する光開始剤を含む。
EP 3002 Aには、多くのアルファ−ヒドロキシケトンが、光開始剤としてのこれらの使用と共に記載されている;特に、例5においては、ろうの形態で得られ、0.05mmHgにおいて220℃の沸点を有する2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物21)の光開始剤としての使用が、記載されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは、ここで、白色固体として粉末の形態で得られた2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンは、取り扱うのが容易であり、これを光開始剤として含む光重合可能な系において光重合のために有用な量で完全に可溶であることを見出した。
【0004】
従って、本発明の基本的な目的は、粉末の形態であり、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)からなり、96℃〜99℃の融点を有し、生成物が以前に文献中に記載されていない、白色固体光開始剤である。
【0005】
本発明の生成物は、透明な、または着色した種類のいずれかで配合物において光開始剤として用いた際に、特に興味深い。その理由は、これが、通常用いられており、商業的に入手できる類似する生成物よりも顕著に高い、極めて良好な光架橋速度を得ることを可能にし;さらに、これが、光重合した透明な系に対する良好な色安定性を提供するからである。
【0006】
このような特性により、本発明の生成物は、実施するのが可能である高いラインスピードのために、工業的に用いるには特に革新的であり、かつ望ましくなる。
【0007】
本発明の他の目的は、粉末の形態での白色固体としての2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)の製造方法であって、以下の段階:
a)ジフェニルエーテルを、臭化アルファ−ブロモイソブチリルおよび塩化アルファ−クロロイソブチリルから選択されたアシル化剤と、ルイス酸により触媒してフリーデルクラフツ反応させる段階;
b)段階a)において得られた2−ブロモ−1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(または2−クロロ−1−{4−[4−(2−クロロ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン)を、水和した塩基と、10℃〜50℃、好ましくは15℃〜40℃の温度において反応させて、溶媒に溶解した2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを得る段階;
c)このようにして得られた生成物を結晶化させる段階
を含む、前記方法である。
【0008】
段階a)のフリーデルクラフツ反応を、2.0〜2.2のモル比におけるアシル化剤およびジフェニルエーテルを、ジクロロメタンまたは他の溶媒、例えばクロロベンゼンに溶解した溶液を調製し、次にルイス酸、好ましくはAlClを、溶液に分割して加え、温度を−20℃〜20℃、好ましくは−5℃〜5℃に維持して、行う。
【0009】
段階a)のフリーデルクラフツ反応は、通常、反応混合物を希釈した酸性水溶液中に注入する、最終的な反応停止局面、相の分離および有機相(ここで反応生成物が溶解している)の水またはブラインでの洗浄を含み;このような有機相を、これ自体で段階b)において、または溶媒を蒸発させた後に、用いることができる。
【0010】
段階b)の反応混合物は、用いる溶媒により普通に単相性または二相性であってもよい;反応混合物が二相性であるすべての場合において、相間移動触媒、例えば塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(BTEAC)を加えるのが好ましい。
本発明の実現の好ましい形態において、段階a)の溶媒を、段階b)を進行させる前に蒸発させ、段階a)の反応の生成物を、水と混和性の脂肪族アルコール、特にイソプロパノールに溶解する。
【0011】
一般的に段階b)において用いる水和した塩基を、20〜50%w/wでの水性溶液中のNaOH、KOHまたはBa(OH)から選択する;好ましくは、水和した塩基は、NaOHである。
本発明の方法の基本的な観点において、化合物1を、反応混合物からの結晶化により直接得る。
【0012】
結晶化を、溶媒から行い、ここで、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを、段階b)の後に溶解し、これは、溶媒を部分的に蒸留し、冷却することにより、または溶媒を部分的に蒸発させ、親油性溶媒、例えば石油エーテルまたはヘキサンで希釈することによる。
【0013】
また、化合物1を、沈殿、濾過および乾燥により、段階b)の終了時に溶媒の蒸発の後に得られる残留物に、以下のもの:共にこれ自体で、または石油エーテルとの混合物での酢酸エチルおよびトルエン;随意に水との混合物でのイソプロパノール、n−プロパノール、エチルアルコールまたはこれらの混合物;n−ブチルアルコール;イソブチルアルコール;t−ブチルアルコールから選択された1種または2種以上の溶媒を加えることにより、得ることができる。
【0014】
本発明の実現の好ましい形態において、段階b)の反応を、水と混和性のアルコール、例えばイソプロパノール中で行う際には、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを、96〜99℃の融点を有する粉末の形態での白色固体(化合物1)として、以下の局面により得る:1重量部のイソプロパノールあたり0.5〜2.0重量部の水を、段階b)の反応の終了時に加え;0℃〜10℃の温度において冷却し;このようにして得られた沈殿物を濾過することにより採集し;20℃〜60℃の温度において乾燥する。
【0015】
本発明の化合物1は、粉末の形態であり、96℃〜99℃の融点を有する白色固体光開始剤であり、これは、通常光重合のために用いられる量で、光重合可能な系に容易に可溶であり、これは、主に、パラ−パラ異性体、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンからなり;300MHzのH−NMRにより、他の異性体の存在は示されない。
【0016】
本明細書中で、「光重合可能な系」または「光重合可能な配合物」の表現で、本発明者らは、反応性モノマーおよび/またはオリゴマー、少なくとも光開始剤、充填剤、分散剤および一般的に用いられる他の添加剤の混合物を意味する。
用語「光重合」は、広い意味を有し、例えばポリマー材料、例えばプレポリマーのさらなる重合または架橋、単純なモノマーの単独重合および共重合並びにこれらのタイプの反応の組み合わせを含む。
【0017】
光重合可能な系に有用なモノマーには、例えば、以下のものが含まれる:アクリロニトリル、アクリルアミドおよびその誘導体、ビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、単官能性および多官能性アリルエーテル、例えばトリメチロールプロパンジアリルエーテル、スチレンおよびアルファ−メチルスチレン、アクリル酸およびメタクリル酸の脂肪族アルコール、グリコール、ポリヒドロキシレート化合物、例えばペンタエリスリトールおよびトリメチロールプロパンまたはアミノアルコールとのエステル、ビニルアルコールの脂肪族またはアクリル酸とのエステル、フマル酸およびマレイン酸の誘導体。
【0018】
光重合可能な系に有用なオリゴマーは、例えば、以下のものである:ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシド樹脂、アクリル、マレインまたはフマル官能性を有するポリエーテル。
【0019】
本発明の化合物1は、光開始剤として作用し、単独で、または他の光開始剤、例えばベンゾフェノンおよびその誘導体(例えばメチルベンゾフェノン、トリメチルベンゾフェノン)、アセトフェノンおよびその誘導体、例えばアルファ−ヒドロキシアセトフェノン、アルファ−アミノアセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン(例えばオリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]−プロパノン]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノン、アルファ−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−ブタン−1−オン、
【0020】
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルスルファニル−フェニル)−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オン、1−[2,3−ジヒドロ−1−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェニル]−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−イル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン、1−[2,3−ジヒドロ−3−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェニル]−1,1,3−トリメチル−1H−インデン−5−イル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン、4,3’−ビス(アルファ、アルファ−ヒドロキシ−イソブチリル)−ジフェニルメタン、4,4’−ビス(アルファ、アルファ−ヒドロキシ−イソブチリル)−ジフェニルメタン、ケトスルホン(例えば1−[4−(4−ベンゾイル−フェニルスルファニル)−フェニル]−2−メチル−2−(トルエン−4−スルホニル)−プロパン−1−オン)、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール(例えばベンジルジメチルケタール)、
【0021】
フェニルグリオキシレートおよびその誘導体(例えばフェニルグリオキシル酸メチルエステル、2−(2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシエチル)オキシフェニル酢酸)のエチルエステル、モノアシルホスフィンオキシド、例えば(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ジフェニル−ホスフィンオキシドまたはフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィン酸のエチルエステル、ビスアシルホスフィンオキシド(例えばビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペント−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(2,4−ジペントキシフェニル)ホスフィンオキシド)、トリスアシルホスフィンオキシド、ハロゲノメチルトリアジン、フェロセン誘導体またはチタノセン、ホウ酸塩またはO−アシルオキシム系基を含む光開始剤、スルホニウム、ホスホニウムまたは芳香族ヨードニウム塩と組み合わせて用いることができる。
【0022】
本発明の化合物1の、酸素の阻害効果を低下させることにより架橋の速度を増大させる第三アミン(例えばトリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸のエステル)との使用は、特に有利である。
本発明の化合物1に加えて、多くの成分、例えば熱安定剤、染料または顔料、増感剤、光酸化安定剤、例えば立体的に妨げられたアミン、酸化防止剤、酸素阻害剤、熱ラジカル発生剤、例えば有機および無機過酸化物、ペルエステル、ヒドロペルオキシド、ベンゾピナコール、アゾ誘導体、例えばアザイソブチロニトリル、金属化合物、例えばコバルト(II)塩、マンガン、消泡剤、充填剤、ガラスおよび炭素繊維、チキソトロープ剤を、光重合可能な系中に導入することができる。
【0023】
導入することができる他の成分は、不活性物質として存在する光重合可能でないポリマー、例えばニトロセルロース、ポリアクリル系エステル、ポリオレフィンなどまたは他の系(例えばペルオキシド、大気酸素、酸触媒もしくは熱活性化)と架橋可能なポリマー、例えばポリイソシアネート、尿素、メラミンもしくはエポキシド樹脂である。
本発明の化合物1を、一般的に、光重合可能な系の合計の重量を基準として、0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%の量で、光重合可能な系中で用い、これは、系と高度に適合性であり、同時にこれに増大した光化学的反応性を付与する。
【0024】
本発明の他の目的は、光重合可能な系の製造方法であって、粉末の形態であり、96℃〜99℃の融点を有し、0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%の量での2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)からなる白色固体光開始剤の、1種または2種以上の反応性のエチレン系不飽和モノマーおよび/またはオリゴマー中での、20〜60℃の温度における可溶化による、前記方法である。
【0025】
本発明により製造される光重合可能な系の光重合に有用な光源の例は、UV〜可視領域における発光帯を有する水銀蒸気またはスーパーアクチニック(superactinic)もしくはエキシマーランプである。
可能な有用な光源の中で、日光および180nmからIR領域までの波長を有する電磁放射線を発する他の人工的な光源もまた、含まれる。
【0026】
本発明の化合物1は、透明な系および、驚異的なことに着色した系の両方において、効率的な光開始剤として作用し、これは、例えば、光架橋可能なインクの製造のために、木材被覆加工、紙、プラスチック、金属のための光重合可能な配合物、刷り重ね被覆加工系、印刷インク、ワニス、粉末被覆加工、エレクトロニクス、例えば印刷回路の製造、マイクロエレクトロニクスおよび一般的にこれが電磁放射線によるラジカルの生成に有用である用途のすべてにおいて、有用である。
【0027】
従って、本発明の他の目的は、木材表面、紙、ボール紙、プラスチックまたは金属を被覆加工する方法であって、粉末の形態であり、96℃〜99℃の融点を有し、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)からなる白色固体光開始剤の、1種または2種以上の反応性のエチレン系不飽和モノマーおよび/またはオリゴマーへの溶解並びにUV〜可視範囲における発光帯を有する光源でのその後の光重合により調製された光架橋可能な系の適用による、前記方法である。
【0028】
例1
化合物1の調製
I.2−ブロモ−1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの合成
5g(29.37mmol)のジフェニルエーテルおよび15.23g(64.61mmol)の臭化アルファ−ブロモイソブチリル(純度97.5重量%)を50mlのジクロロメタンに溶解した溶液に、約30分で、8.61g(64.61mmol)の三塩化アルミニウムを加え、温度を0℃〜5℃に維持した。1.5時間後、反応混合物を、200mlの水および氷、ならびに4mlの37%HClの混合物中に注入した。有機相を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。溶媒の蒸発の後に得られた試料を、分析した。
NMR(300MHz、CDCl、δppm):8.25(d,4H);7.1(d,4H);2.07(s,12H)。
【0029】
II.2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの合成
2−ブロモ−1−[4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル−2−メチル−プロパン−1−オン13.75g(29.37mmol)の溶液に、8.46g(105.73mmol)のNaOHを50%において、137mgのBTEACを50%において、および50mlのジクロロメタンを加え、溶液を、2時間還流させた。50mlの水および50mlのジクロロメタンで希釈した後に、相を分離した。有機相を、水およびNaClの溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾別した。
【0030】
化合物1の結晶化
溶媒を、IIにおいて得られた溶液から、25〜30mlの残留容積に部分的に蒸発させた。冷却することにより、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを、白色固体として分離し、濾過し、50℃において真空乾燥した;96℃〜98℃の融点を有する4.9gの粉末が、得られる(化合物1)。
【0031】
300MHzにおけるH−NMR分析により、他の異性体の存在は示されない。
生成物の一部を、トルエンから結晶化し、97℃〜99℃の融点を有する生成物が得られた。
NMR(300MHz、CDCl、δppm):8.10(d,4H);7.07(d,4H);3.9,(s,2H);1.63(s,12H)。
【0032】
例2
化合物1の調製
I.2−ブロモ−1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの合成
反応を、45.26gのジフェニルエーテルから出発して、例1(I.)に記載したようにして行った。
【0033】
II.2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの合成
Iにおいて得られた溶液から、溶媒を、真空下で蒸発させ、従って131.25gの油状物が得られ、これは自発的に固化した。そのようにして得られた粗製の物質を、攪拌しながら250mlのイソプロピルアルコールと混合し、次に室温で44.8gの50%NaOH(0.56mol)を加えた。攪拌しながら室温で1時間後、沈殿物を濾別し、溶液を、1MのHClでpH2〜3に酸性化した。
【0034】
III.化合物1の結晶化
350mlの水を、このようにして得られた溶液に加え、混合物を、0〜10℃に冷却し、白色沈殿が得られ、これを、容易に濾過し、オーブン中で50℃で乾燥した;82.17gの生成物が得られた(化合物1)。
融点=97〜98℃
300MHzにおけるH−NMR分析により、他の異性体の存在は示されない。
NMR(300MHz、CDCl、δppm):8.10(d,4H);7.07(d,4H);3.9(s,2H);1.63(s,12H)。
【0035】
例3
適用試験
以下の適用試験において評価された光重合可能な系の調製のために用いた物質は、以下の通りである:
エベクリル(Ebecryl)(登録商標)220(UCB(ベルギー)からの六官能性芳香族ウレタンアクリレート);
OTA480(登録商標)(UCB、ベルギーからのグリセロールから誘導された三官能性オリゴマーアクリレート);
HDDA(UCB、ベルギーからの1,6−ヘキサンジオールジアクリレート);
TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート);
エベクリル(登録商標)600(UCB、ベルギーからのエポキシアクリレート);
エベクリル(登録商標)810(UCB、ベルギーからのポリエステルアクリレート);
TPGDA(トリプロピレングリコールジアクリレート);
エベクリル(登録商標)350(UCB、ベルギーからの添加剤);
イルガライト(Irgalite)(登録商標)CIBA Specialty ChemicalsからのBlue BSNF;
ベロール(Verol)368(Lamberti SpA、イタリアからの分散剤)
【0036】
光開始剤として、以下の化合物を用いた:
例1に記載したようにして得られた化合物1
イルガキュア(Irgacure)(登録商標)184、Ciba Specialty Chemicalsにより市販されているアルファ−ヒドロキシケトン
イルガキュア(登録商標)907、CIBA Specialty Chemicalsにより市販されている芳香族アミノケトン。
【0037】
4種の配合物(I、II、IIIおよびIV)を、それぞれ混合して調製した(重量%):
【0038】
【表1】

【0039】
光重合可能な系(Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb)を、光開始剤を対応する配合物(I、II、IIIおよびIV)に室温で溶解して調製した;このような系の組成(%w/w)を、表1に報告する。
【0040】
【表2】

【0041】
光重合可能な系の評価を、反応性パラメーター並びに黄色および白色指数を決定することにより、行った。
【0042】
反応性
光重合可能な系を、50ミクロンの厚さで、ワニスを塗布したボール紙上に(系IVaおよびIVbの評価についてのみ3ミクロン)、バーコーターを用いて塗布し、光源から12cmの距離で照射する。120W/cmの出力を有する中圧水銀ランプを備えたフュージョン(Fusion)(登録商標)光重合装置(photopolymerizator)を用いた。
【0043】
m/分で測定した光重合速度は、系の完全な表面の硬化が得られる最大の可能な速度である(粘着性を有しない)。完全な表面の硬化は、硬化した層が、「親指ねじれ試験」からの損傷を有することを示さない際に意図される。
【0044】
光重合した系の損傷が、研磨紙でラビングした後に見られない最大の速度(m/分における)をまた、測定した(表面研磨);速度線が大きくなるに従って、系の能率は大きくなる。
【0045】
白色および黄色指数
光重合可能な系を、50ミクロンの厚さで、ワニスを塗布したボール紙上に、電気的ストレッチフィルム上に載置されたバーコーターを用いて塗布し、従って光源から12cmの距離で、10m/分の速度で通過させる。120W/cmの出力を有する中圧水銀ランプを備えたフュージョン(登録商標)光重合装置を用いた。
【0046】
白色および黄色指数を、ASTM標準D1925−70に従って測定した。低い値の黄色および高い値の白色は、配合物の色の良好な安定性の指数である。
結果を、表2に報告する。
【0047】
【表3】

研磨紙でラビングした後の光重合した系の視覚可能な損傷を有しないのに必要な通過の数(10m/分における)
【0048】
報告されたデータから示されるように、本発明の化合物1が光重合可能な系中に存在する結果、得られた製品の極めて良好な硬化速度並びに良好な色安定性(黄色および白色の指数)がもたらされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末の形態での白色固体としての2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)の製造方法であって、以下の段階:
a)ジフェニルエーテルを、臭化アルファ−ブロモイソブチリルおよび塩化アルファ−クロロイソブチリルから選択されたアシル化剤と、ルイス酸により触媒してフリーデルクラフツ反応させる段階;
b)段階a)において得られた2−ブロモ−1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(または2−クロロ−1−{4−[4−(2−クロロ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン)を、水和した塩基と、10℃〜50℃の温度において反応させて、溶媒に溶解した2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを得る段階;
c)このようにして得られた生成物を結晶化させる段階
を含む、前記方法。
【請求項2】
段階a)のフリーデルクラフツ反応を、以下のようにして行う、請求項1に記載の粉末の形態での白色固体としての2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)の製造方法:
i.2.0〜2.2のモル比におけるアシル化剤およびジフェニルエーテルを、ジクロロメタンに溶解した溶液を調製し、次にAlClを、溶液に分割して加え、温度を−20℃〜20℃に維持し;
ii.反応混合物を希釈した酸性水溶液中に注入することにより、反応停止し、相を分離し、有機相を水またはブラインで洗浄し;
iii.溶媒を蒸発させ、反応生成物を、水に可溶である脂肪族アルコールに溶解する。
【請求項3】
iii.のアルコールが、イソプロパノールである、請求項2に記載の粉末の形態での白色固体としての2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)の製造方法。
【請求項4】
段階b)の反応を、水和した塩基を段階a)から得られた有機相に加えることにより、15℃〜40℃の温度において行う、請求項3に記載の粉末の形態での白色固体としての2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)の製造方法。
【請求項5】
水和した塩基が、20〜50%における水性溶液中のNaOHである、請求項4に記載の粉末の形態での白色固体としての2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)の製造方法。
【請求項6】
段階c)の結晶化を、1重量部のイソプロパノールあたり0.5〜2.0重量部の水を加え、0℃〜10℃の温度において冷却し、このようにして得られた沈殿物を濾過することにより採集し、これを20℃〜60℃の温度において乾燥することにより行う、請求項5に記載の粉末の形態での白色固体としての2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)の製造方法。
【請求項7】
i.アシル化剤およびジフェニルエーテルの、2.0〜2.2のモル関係における、ジクロロメタンに溶解した溶液を調製し、AlClを溶液に分割して加え、温度を−20℃〜20℃に維持し、反応混合物を希釈した酸性水溶液中で反応停止し、相を分離し、有機相を水またはブラインで洗浄する、段階a)のフリーデルクラフツ反応を行い;
ii.このようにして得られた有機相を、これ自体で段階b)において用い;
iii.相間移動触媒を、段階b)の反応の二相性混合物に加え;
iv.溶媒を部分的に蒸留し、ここで2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを、段階b)の後に溶解し、冷却することにより、または溶媒を部分的に蒸発させ、親油性溶媒、例えば石油エーテルまたはヘキサンで希釈することにより、結晶化を行う、
請求項1に記載の粉末の形態での白色固体としての2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)の製造方法。
【請求項8】
96℃〜99℃の融点を有し、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)からなる、粉末の形態での白色固体光開始剤。
【請求項9】
光重合可能な系の製造方法であって、粉末の形態であり、96〜99℃の融点を有し、0.01〜20重量%の量での2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)からなる白色固体光開始剤の、1種または2種以上の反応性のエチレン系不飽和モノマーおよび/またはオリゴマー中での、20〜60℃の温度における可溶化による、前記方法。
【請求項10】
光開始剤の量が、0.5〜5重量%である、請求項9に記載の光重合可能な系の製造方法。
【請求項11】
木材表面、紙、ボール紙、プラスチックまたは金属を被覆加工する方法であって、粉末の形態であり、96℃〜99℃の融点を有し、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物1)からなる白色固体光開始剤の1種または2種以上の反応性の、エチレン系不飽和モノマーおよび/またはオリゴマーへの溶解並びにUV〜可視領域における発光帯を有する光源でのその後の光重合により調製された光架橋可能な系の適用による、前記方法。

【公開番号】特開2012−51927(P2012−51927A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232028(P2011−232028)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【分割の表示】特願2006−537276(P2006−537276)の分割
【原出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(501185604)ランベルティ ソシエタ ペル アチオニ (17)
【Fターム(参考)】