粉末の被覆方法
本発明は、下記工程を含むことを特徴とする、粉末状固体活性物質の被覆方法に関する:(a) 少なくとも1種のコーティング剤と、これに超臨界または亜臨界状態を保持することができる温度および圧力条件下で溶解している超臨界または亜臨界流体とを含む混合物を用意し(2; 3; 4)、(b) 少なくとも1種の粉末状固体活性物質の分離している移動粒子を用意し(7)、(c) 前記混合物を前記活性物質の分離移動粒子と、超臨界または亜臨界流体の圧力低下とその気体状態への復帰、コーティング剤の噴霧、および活性物質の分離移動粒子の周囲でのコーティング剤の固化を同時に確保する温度および圧力条件下で接触させ(8)、(d) 被覆された粒子を分離および回収する(9)。本発明はまた、下記を特徴とする、各微粒子が活性物質を含有するコアとコーティング剤を含有するシェルとから順に構成される活性物質の被覆微粒子にも関する:本発明の方法により得ることができるものであり、活性物質が室温であって、かつ固体で熱感受性であり、活性物質のコアの平均粒度が50μm未満である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界または亜臨界流体を用いた方法による、固体活性物質の粒子、特に粒度(サイズ)が100μm未満、有利には50μm未満の粒子の被覆(被覆)、およびそれによるマイクロカプセルの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的な被覆技術に関する現状は、化学的な方法、機械的な方法、すなわち、物理的現象のみを含む方法(J. Richard et al., Techniques de l'ingenieur, マイクロカプセル化、 J2 210 1-20, 2002)、ならびに物理化学的な方法からなる。
【0003】
化学的方法は、重縮合、重合などによる被覆材料のその場生成に基づく方法である。機械的な方法は、噴霧技術(噴霧乾燥、スプレイ塗布)、滴下または小滴形成技術(プリリング<溶融金属の筒口からの滴下>)ならびに押出技術(押出、球状化)を採用する。最後に、物理化学的な方法は、コーティング剤の溶解度および析出条件(pH、温度など)の変化の制御に基づく方法である。
【0004】
親油性活性成分だけに限られるコアセルベーション法は、物理化学的方法として知られる。容易に実施できる溶媒蒸発または抽出法も知られている。これらの方法の主な制限は、それらが親油性活性材料のカプセル化だけに適用され、特に有機溶媒を使用することである。第一に、得られた生成物は無視できない残留溶媒含有量を有し、第二に粒子の被覆を完結させるのに乾燥工程が必要である。
【0005】
最後に、物理化学的方法は、単純なコアセルベーションによるマイクロカプセル化および熱ゲル化によるマイクロカプセル化も包含する。最初の方法はやはり有機溶媒を使用し、二番目の方法としては、熱に敏感ではない活性成分に限られるという主な難点がある。
【0006】
界面重縮合、乳化重合、懸濁重合、分散重合などの化学的方法は、2種類のモノマー間の化学反応によって乳化小滴の表面でポリマー膜をその場で製造することができ、これは被覆法としても知られている。この化学反応は分散相(分散された相)と分散媒相との間の界面で起こる。この被覆方法は、活性物質の溶液にしか適用できない。従って、固体形態の被覆には適用できない。
【0007】
固体形態の被覆は、機械的方法と超臨界流体技術を用いた方法の2つのサブグループに分類することができる方法に従って行われる。
機械的方法は、噴霧(噴霧乾燥若しくはスプレイ塗布、流動化)、または小滴形成(プリリング)または押出の原理に基づく方法である。噴霧または小滴形成を用いる方法は、コーティング剤を溶媒に溶解させてなる液状組成物の使用を伴う。被覆される材料は液体または固体形態でよい。押出の原理は、一般に70℃〜150℃の範囲の押出温度で熱的に安定でなければならない被覆される固体または溶融材料に溶融コーティング剤を混合してなる溶融媒体を使用する。これらの方法により得られるマイクロカプセルの粒度は一般に100μm以上である。従って、これらの方法は、粒度が100μm未満の固体形態の被覆される材料や、特に熱感受性の被覆される材料の被覆に適していないことが判明している。
【0008】
圧縮ガスを用いる方法は、一般に超臨界CO2の使用を基本とする。これは、超臨界のCO2が次に述べる多くの利点を有するからである:臨界座標が比較的低い(31℃、7.47MPa)、圧力の変動が低い割にはその溶媒和力の変動が大きい、無毒で、比較的低コストである。粉末を被覆するための3種類の主な実施手法は、RESS(超臨界溶液の急速膨張、Rapid Expansion of Superficial Solution)法、PGSS(ガス飽和溶液由来粒子、Particles from Gas Saturated Solution)法、およびSAS(超臨界抗溶媒、Superficial Anti Solvent)法である。
【0009】
RESS法(Turk et al., Journal of Superficial Fluids, 15, 1999, 79-89)は超臨界流体による流動床の技術を用いて、粒子を被覆することができ、その粒度は現状では50μmまで下げることが可能である。Brunnerのドイツチームにより指揮されたこの方法 (Journal of Supercritical Fluids, 24, 2002, 137-151) は、超臨界条件下で流体により被覆したい粒子を流動化させ、次いで、この流動床において、噴霧ノズルを用いて飽和超臨界相の圧力を低下させて、粒子を被覆することからなる。超臨界流体によるコーティング剤の抽出が流動床とは別のチャンバー内で行われる。抽出チャンバーと流動床との間の圧力差が過飽和の急激な低下を生じ、それによりコーティング剤の結晶化が起こる。しかし、この見込みのある技法は、超臨界CO2に可溶なコーティング剤だけに限られたままである。従って、使用可能と考えられるコーティング剤の範囲は非常に狭められたままである。
【0010】
他方、液体および固体中の圧縮CO2の溶解度は一般に非常に高い。この原理が元になってPGSS法が生まれた。従って、ここでの超臨界または亜臨界流体は、RESS法におけるような溶媒ではなく、溶質である。そのため、PGSS法の主な利点は、圧縮ガスで処理できるコーティング剤の範囲が非常に広がることである。WO−02/05944およびUS−6056791において採用されているPGSS法は、コーティング剤中に圧縮CO2を溶解させることにより、その融点またはガラス転移温度を低下させることに基づいている。コーティング剤中の圧縮ガスの溶解はその軟化を生じ、その後、この軟化相における圧力低下(減圧)が、この材料の粉末状固体の形態での固化を生ずる。粒子の被覆のために、被覆される材料をこの溶融媒体と混合する。被覆される材料/コーティング剤の混合物を次いで圧力低下させると、被覆される材料上でのコーティング剤の固化を生ずる。この被覆方法の主な欠点は、コーティング剤中に圧縮ガスを溶解させる時間(一般に長い)の間ずっとコーティング剤と被覆される材料が同様の圧力および温度条件下に置かれるため、熱感受性の活性成分には適していないことである。さらに、被覆される材料/コーティング剤の比率の正確な制御が困難であるとわかることが非常に多い。
【0011】
また、PGSS原理に基づいたCPF法(濃縮粉末形態、Concentrated Powder Form)(WO−99/17868)も知られている。この方法は、固体/液体処方組成物を得るために、事前に加圧された液体活性成分を粉末状の助剤と一緒に共噴霧することからなる。加圧下のガスを活性成分の溶液中に飽和に達するまで溶解させる。この飽和溶液をノズルを通して急速に減圧すると、非常に微細な液滴を生ずる。膨張中に、安定化粉末を液体スプレイと並流で添加する。ノズル出口でのガスの膨張は、エーロゾルから生じた液滴と添加された粉末状固体との強力な混合を生ずる。噴霧液体は次いで固体の表面に吸着され、固体/液体粒子が生成する。このように、CPF法は液体形態を固体支持体上での吸着によって固体形態に転化させることができる。主な用途の1つは、原料の液体形態に対する固体/液体複合粒子の輸送および貯蔵面での改善に関する。この方法はまた、支持体固体の吸着性に応じて新規な固体/液体複合粒子を得ることができる。ここで望まれる目標は、液体形態の活性成分を粉末状生成物を経て安定化することである。
【0012】
活性成分の被覆に適用されるSAS法(US−5043280およびFR−2753639)は、コーティング剤を有機溶媒に事前に溶解させる必要がある。被覆される材料をこの溶液に分散させる。この分散液を次いで超臨界CO2と共噴射する。超臨界CO2は抗溶媒(アンチソルベント)として作用し、従って被覆される材料上でコーティング剤を固化させることができる。この方法の主要な制約は、有機溶媒の使用にあり、有機溶媒はその後に抗溶媒から分離しなければならないことと、さらに、プロセスの処理工程中ずっと、高いことが非常に多い(超臨界流体としてCO2を使用する場合には少なくとも31℃以上)圧力および温度条件下に活性成分が曝されたままなることである。
【0013】
Fosterら(Powder Technology, 126, 2002, 134-149)はASES(エーロゾル溶媒抽出方式、Aerosol Solvent Extraction System)による抗溶媒法の特異的な実施法を提案している。活性成分の被覆のための噴霧ノズルによって、抗溶媒効果により同時に形成された粒子上でコーティング剤を析出させることができる。これは、開発されたノズルが3つの同心環状部分を備えていて、超臨界条件下で複数の流体を1つのチャンバーに導入することができるためである。有機溶媒に溶解させた活性成分の溶液は中心部に送りこまれる。ノズルの中心部は、この有機溶液を溶解ポリマーと共に搬送することができ、ノズルの外側部は抗溶媒効果を生ずる超臨界流体を搬送することができる。このようにして、コーティング剤が活性成分上に優先的に析出して、それを被覆する。コーティング剤と被覆される材料は同時に結晶化する。この種の被覆される材料/コーティング剤の接触操作は、流体流れ上で行われ、ノズルはどの点においても固体形態の活性成分を搬送することはないことに留意すべきである。
【0014】
最後に、超臨界ルートによる被覆の特許リストは、FR−2809309を抜かしたなら完全とはならないだろう。この特許文献は、タンパク質活性成分とこの活性成分を被覆するコーティング剤を含む、噴射されるためのマトリックス型の微球(マイクロスフィアー)の生成に関する。被覆は放出時間を長くすることを目的とする。このコーティング剤は超臨界流体に可溶でなければならない。得られた被覆粒子は、有機溶媒を含んでいないことを特徴とする。この方法の原理は、活性成分とコーティング剤とを撹拌機を備えたオートクレーブに入れ、次いで、超臨界条件下で流体を撹拌下に導入して、流体がコーティング剤を溶解するようにする。活性成分はこのプロセス中ずっと固体のままである。コーティング剤が溶解してしまったら、この懸濁液の温度と圧力をゆっくり低下させ、超臨界相中におけるコーティング剤の過飽和の急激な低下を生じさせるように制御する。その後、コーティング剤が活性成分上に優先的に析出して、保護被覆層を形成する。しかし、この方法はなお超臨界流体の存在下で十分な溶解度を示すコーティング剤に制限されたままである。
【特許文献1】WO−02/05944
【特許文献2】US−6056791
【特許文献3】WO−99/17868
【非特許文献1】Powder Technology, 126, 2002, 134-149
【発明の開示】
【0015】
上述した各種の方法を考慮すると、より広範囲のコーティング剤、特に超臨界または亜臨界流体に不溶性のコーティング剤を用いて、熱感受性の活性成分のより微細な固体粒子を被覆する方法を利用可能にすることが必要であると思われる。
【0016】
このために、本発明は、下記工程を含むことを特徴とする粉末状の固体活性物質の被覆方法に関する:
(a) 少なくとも1種のコーティング剤と、これに飽和まで溶解している超臨界または亜臨界流体とを含む混合物を、該流体を超臨界または亜臨界状態に保持することができる温度および圧力条件下で用意し、
(b) 少なくとも1種の粉末状固体活性物質の分離している移動粒子を用意し、
(c) 前記混合物を前記活性物質分離移動粒子と、下記を同時に確保する温度および圧力条件下で接触させ:
・超臨界または亜臨界流体の圧力低下(減圧)とその気体状態への復帰、
・コーティング剤の噴霧、および
・活性物質の分離移動粒子の周囲でのコーティング剤の固化、
(d) 被覆された粒子を分離および回収する。
【0017】
本発明に係る方法の利点の1つは、約25℃、従って常温に近い温度を使用するため、本発明に係る方法は特に熱感受性の活性物質の被覆に適していることである。その理由としては、一方では、活性物質とコーティング剤が別個に処理されるためであり、他方では、活性物質とコーティング剤とを接触させる時間が非常に短く、またコーティング剤の特性を工程(a)中に変化させる(例えば、融点を低下させる)ことができるためである。
【0018】
本発明が説明する方法はまた、活性物質/コーティング剤の重量比、従って関与する活性物質とコーティング剤の量の重量比を、10/1〜1/10、有利には5/1〜1/5の範囲内とすることができる良好なコントロールを可能にする。
【0019】
最後に、本発明に係る方法の原理は、超臨界または亜臨界流体によるコーティング剤の溶解ではなく、コーティング剤中への超臨界または亜臨界流体の溶解に基づくので、広範囲のコーティング剤、特に該流体に不溶性のコーティング剤に適用することができる。
【0020】
「被覆」または「コーティング」なる用語は、本発明の意味の範囲内では、固体活性物質の粒子上でコーティング剤の連続層を析出させることであると理解される。固体コア/連続固体シェル型の構造がこうして得られる。シェルは多孔質または非多孔質とすることができる。得られた粒子は従ってマイクロカプセルである。
【0021】
「活性物質」なる用語は、本発明の意味の範囲内では、任意の薬理学的有効成分(例えば、鎮痛剤、解熱剤、アスピリンおよび誘導体、抗生物質、抗炎症剤、抗潰瘍剤、抗高血圧剤、神経弛緩剤、抗うつ剤、オリゴヌクレオチド、ペプチドまたはタンパク質)、化粧用有効成分(例えば、UV防止剤または日焼け剤)、機能性食品有効成分(例えば、ビタミン類)、食品有効成分、農薬有効成分または獣医学有効成分であると理解される。有利には、それはシュードエフェドリン(プソイドエフェドリン)である。有利には、活性物質は熱感受性である。「熱感受性の活性物質」なる用語は、本発明の意味の範囲内では、温度の作用を受けてその物理化学的構造の変化を生ずる任意の活性物質であると理解される。有利には、これらの物質は約28℃より高温、有利には約25℃より高い温度に対して感受性である。有利には、これらはタンパク質またはペプチドであり、有利にはBSA(ウシ血清アルブミン)である。
【0022】
「コーティング剤」なる用語は、本発明の意味の範囲内では、活性物質の表面で析出して活性物質の固体粒子の周囲に連続固体層を形成することができる1種または2種以上の被覆材料であると理解される。有利には、コーティング剤は超臨界または亜臨界流体に不溶性である。有利に使用されるのは、リン脂質、特にホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルコリンもしくはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、カプリン酸およびカプリル酸のトリグリセライド、固体脂肪酸のエステル、特にパルミチン酸エチル、ミリスチン酸エチルもしくはミリスチン酸オクチルドデシルといったC8〜C18脂肪酸のエステル、有利にはC8〜C18脂肪酸のエステルならびにそれらの混合物といった、脂肪物質である。コーティング剤はまた、多糖類およびそれらの誘導体、例えば、デンブンもしくは変性デンプン(例、カルボキシメチルデンプン);セルロースもしくは変性セルロース、例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、もしくはメチルヒドロキシプロピルセルロース;あるいはアルギン酸エステル、カラゲーニン、ペクチン、ペクチン酸エステル、グアー、キサンタンおよびキトサンに由来する多糖類;アクリルもしくはメタクリル型のポリマー、例えば、アクリル酸もしくはメタクリル酸のホモポリマーもしくはコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリシアノアクリレート、および一般的にはアクリルもしくはメタクリル酸から誘導される当業者には周知の任意の合成ポリマー;ビニルエステルから誘導されるビニルポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリ(酢酸ビニル)、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー;α−ヒドロキシカルボン酸の生分解性ポリマーおよびコポリマー、特に乳酸およびグリコール酸のホモポリマーおよびコポリマー、より具体的にはPLAおよびPLGA;ポリ(ε−カプロラクトン)およびその誘導体、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、およびβ−ヒドロキシブチレート−ヒドロキシバレレートコポリマー、ポリ(リンゴ酸);ポリ(乳酸)、ポリ(エチレンオキサイド)型の両親媒性ブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキサイド)型の生体適合性ポリマー、またはポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)型のブロックコポリマー;ポリ(酸無水物)、ポリオルトエステル、ポリホスファゼンならびにそれらの混合物とすることもできる。
【0023】
コーティング剤は有利には、多糖類およびそれらの誘導体、アクリルもしくはメタクリル型の合成ポリマー、脂質、リン脂質、またはそれらの混合物よりなる群から選ばれる。
コーティング剤は、有利には、モノ、ジおよびトリグリセライドの混合物、有利にはガッテフォッセ社(Gattefosse)から販売のプレシロール(Precirol)TMのようなグリセリルジパルミテート/ステアレート、パラフィンワックス、ならびにグリセリルモノステアレートから選ばれる。
【0024】
コーティング剤は有利には活性物質の味および/または色をマスク(封鎖)することができる。
コーティング剤は有利には活性物質の制御された放出とその生物学的利用能の増大を可能にする。
【0025】
さらに一層有利には、コーティング剤は、損傷を生ずる外部の剤に対して活性物質を保護する。
この場合、活性物質は有利には熱および/または化学薬品および/または光に対して感受性である。
【0026】
「超臨界または亜臨界流体」なる用語は、本発明の意味の範囲内では、その臨界値より高い温度もしくは圧力、またはその臨界値より低いがそれに近い温度もしくは圧力、で使用される任意の流体であると理解される。これは有利にはCO2であるが、例えば、ブタン、窒素または亜酸化窒素といった、コーティング剤を飽和させることができる任意のガスでもよい。
【0027】
本発明の被覆方法は、活性物質のばらばらに分離した移動粒子にコーティング剤を噴霧する方法を採用するので、「機械的な」方法である。この方法は、粉末状固体形態にある活性物質をコーティング剤で被覆することに関し、コーティング剤は、超臨界または亜臨界流体により、この流体を超臨界または亜臨界状態に保持することができる温度および圧力条件下で液化されており、次いで圧力の低下により固化する。従って、本発明に係る方法により得られた最終粒子においては活性物質とコーティング剤はいずれも固体形態にある。
【0028】
本発明の方法は、従って、コーティング剤中への超臨界または亜臨界流体の溶解と、その後の、同時に活性物質の分離移動粒子と接触させながら、コーティング剤/超臨界または亜臨界流体の混合物を圧力低下させるという2つの主要な段階を含む。流体をコーティング剤と混合した後で超臨界または亜臨界状態にするように構想することも可能である。
【0029】
さらに、ケトン、アルコール、エステル、アルカン、アルケンおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれた有機溶媒を、活性物質の分離移動粒子ならびに/またはコーティング剤/超臨界または亜臨界流体の混合物に添加することができる。
【0030】
これは、超臨界CO2によりその場で製造されたナノパウダーを被覆することを構想することができるためである。この場合、被覆方法は、共溶媒の添加を必要とする。被覆される粒子を次いで該共溶媒中に溶解し、得られた溶液をコーティング剤および超臨界または亜臨界流体と接触させる。
【0031】
さらに、少量の溶媒の添加はコーティング剤中のCO2の溶解度を変化させることができ、従って、同じ被覆特性(活性物質/コーティング剤重量比)を保持しながら、得られた混合物の処理量を変化させることが可能となる。
【0032】
同様に、コーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物に可塑剤を添加することができる。可塑剤は、所望の本発明に係るコーティング剤の表面品質を改善するのを可能にする。
【0033】
上記第1段階は、例えば、コーティング剤の融点、ガラス転移温度および粘度を低下させることによりその物理化学的特性を変化させることができる。第2段階は、溶融もしくは軟化したコーティング剤および流体からなる混合物の圧力低下をミクロン程度に微粉化された形態の生成物であるエーロゾルを生ずるように行うことを含む。こうして発生した温度および圧力の低下によって、固体活性物質の分離移動粒子の周囲でコーティング剤を固化させることが可能となる。これらの活性物質の移動粒子は、場合により、コーティング剤/流体混合物を圧力低下させるチャンバー内に既に存在させておいてもよく、或いは接触操作を行う同じチャンバーに輸送してそれに噴射し、同時に圧力低下を生じさせてもよい。
【0034】
本方法の最後の工程として、被覆された粒子を気体/固体分離フィルター内で回収することができる。
本発明の方法の基本的な特徴は、被覆される活性物質の粒子の流動化であり、それにより該物質を凝集していない微細な移動する、ばらばらに分離した粒子の形態で存在させ、こうして活性物質の凝集体ではなく、100μm以下、有利には50μm以下、より有利には20μm以下の粒度の活性物質の分離移動粒子を被覆することが可能となる。活性物質の粒子への運動の付与は、例えば、気流式、機械的または流動床利用といった当業者に公知の各種の方法により行うことができる。
【0035】
本発明の1具体的態様において、活性物質の分離粒子は、気流または機械的輸送(例えば、CO2または圧縮空気)により搬送される。これは、この種の搬送が、被覆されることになる粒子を流動化させ、その凝集を防止することができるからである。気流輸送の場合、CO2を気体として使用することが好ましい。有利には、このCO2を再循環させて、ガスの連続再使用を可能にすることができる。再使用は、コーティング剤中に溶解させた超臨界または亜臨界流体もCO2である場合に可能である。
【0036】
本発明の1具体的態様において、混合物を活性物質の分離粒子と接触させる工程(c)は共噴射(コインジェクション)により得られたフィード流中で行われる。有利には、この共噴射は、被覆される活性物質の分離粒子とコーティング剤/流体混合物とを同心管(二重管)を通して同時に噴射することからなる。
【0037】
有利には、フィード流は直線形またはラセン形である。
本発明に係る方法はまた、同じ最終処方組成物に使用される、いくつかの異なる活性物質を被覆する場合にも使用することができる。
【0038】
本発明に係る方法は、多様な幾何学形状(例えば、球状または或る種の結晶形態といった規則的形状;あるいは任意の他の不規則形状)を有する活性物質の粒子に適用される。
本発明はまた、下記を特徴とする、各微粒子が活性物質からなるコアとコーティング剤からなるシェルとから順に構成される活性物質の被覆された微粒子にも関する:
・本発明に係る上記方法により得ることができるものであり、
・活性物質が常温で固体であって、熱に感受性であり、
・活性物質のコアの平均粒度が50μm未満、有利には20μm未満である。
【0039】
コーティング剤は有利には常温で固体であり、超臨界または亜臨界流体に不溶性である。本発明に係る粒子は有利には有機溶媒を含有していない。
本発明はさらに、下記を特徴とする、各微粒子が活性物質からなるコアとコーティング剤からなるシェルとから順に構成される活性物質の被覆された微粒子にも関する:
・本発明に係る上記方法により得ることができるものであり、
・活性物質が常温で固体であって、熱に感受性であり、
・活性物質のコアの平均粒度が100μm未満であり、
・コーティング剤が常温で固体であって、超臨界または亜臨界流体に不溶性であり、
・被覆された粒子が有機溶媒を含んでいない。
【0040】
コーティング剤は有利には活性物質の味および/もしくは色をマスクすることができるか、ならびに/または活性物質の制御された放出とその生物学的利用能の増大を可能にするか、ならびに/または活性物質を損傷を生ずる外部の剤に対して防護することができる。活性物質は有利には化学薬品および/または光に対して感受性である。コーティング剤は有利には、互いに本質的に不適合性である2種以上の活性物質を処方することを可能にし、それによりそれらの活性物質を互いから防護することができる。
【0041】
本発明はさらに、経口、局所、注射もしくは直腸投与用処方組成物ならびに/または医薬、化粧品、機能性食品、食品、農薬もしくは獣医学用処方組成物における本発明に係る粒子の使用に関する。
【0042】
本発明の制限を意図しない実施態様を示す添付図面に関してなされる以下の説明から本発明はよりよく理解され、その目的、効果および特徴がより明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
図1に示した方法は、下記のようにして実施される:
液体ストック(1)から供給される流体(CO2)は冷却され(2)、次いでポンプを通り(3)、熱交換器(4)で加熱される。それにより流体は超臨界または亜臨界状態になる。流体を次いで超臨界または亜臨界条件下で、コーティング剤を入れたオートクレーブ(5)に導入する。オートクレーブの温度は大気圧でのコーティング剤の融点に応じて調整される。一般に、圧縮ガスによるコーティング剤の飽和は融点の降下を生じ、その降下は標準条件下での融点より約40℃まで低い温度範囲となりうる。この流体を飽和に達するまでコーティング剤中に溶解させる。この溶解時間中、圧力は一定に保持する。平衡に達したら、超臨界または亜臨界流体が飽和したコーティング剤の軟化混合物を減圧(圧力低下)する。この減圧中の圧力降下は、好ましくは2.03〜30.38MPaの範囲内である。同時に、ばらばらに分離した移動粉末状固体粒子の形態の被覆される活性物質を気流装置(7)により搬送して、減圧したコーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物(8)と一緒に、好ましくは同軸で共噴射する。この同軸噴射において、コーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物は、例えば、外側位置とすることができる(図3)。被覆された粒子を気体/固体分離フィルター(9)内で、好ましくは大気圧で回収する。CO2が気流輸送中のキャリアーガス(6)である場合には、それを閉ループ内で再使用することを考えることができる(図2)。
【0044】
図3および4は、活性物質の分離移動粒子(10)とコーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物(11)とを同軸噴射により接触させる原理を示す。コーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物の到着が(12)で図式的に示されている。この混合物を次いで減圧し(13)、こうしてエーロゾル(14)を生成し、これが(11)で示すように外側の管に入る(図4)。
【0045】
被覆される活性物質は、分離した移動粒子の形態で導入され、内側の管(10)に入る。接触操作はチャンバー(16)で行われ、そこでは、流体を気体状態に戻すと共に、コーティング剤を活性物質の分離した粒子の表面で固化させるのに十分な圧力が優勢となっている。被覆された粒子は最後に気体/固体分離フィルター(9)で捕集する。
【0046】
この接触操作の実施方法は唯一の方法ではなく、別の形態または拡張を考えることもできる。接触時間は、例えば、コーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物および被覆される活性物質の分離移動粒子の流路を変更することにより増大させることができる。例えば、流路を直線とする代わりにラセン状とすることができる。接触操作はまた、未被覆の活性物質の分離粒子を被覆された粒子から分離した後に、この未被覆粒子を再循環することにより改善することもできる(図1)。
【0047】
以下の実施例は例示を目的として挙げたものであり、制限を意図していない。
粒子の被覆の特性決定は、空気の気流中の粒子の飛行の時間から粒度分布を求めることができる、乾燥経路による粒度測定(使用装置:エーロサイザー(Aerosizer)TM PSD 3603, TSI)により行う。被覆された粒子はESEM環境走査型電子顕微鏡(フィリップス社、XL30 FEG)により観察する(図7〜10、12、16および17)。
【0048】
本発明に係る方法は以下の実施例に従って実施することができる。
【実施例1】
【0049】
超臨界CO2を、固体形態のプレシロールTM ATO5(ガッテフォッセ社製)(グリセリルジパルミテート/ステアレート、融点和56.3℃)3g中に50℃および11.14MPaで溶解させる。オートクレーブ内の圧力を一定に保持する。30分後、飽和したプレシロールTM相を軸方向共噴射システムに向かって減圧する。同時に、粒度が50〜63μmのガラスビーズ3gを図1の配置に従って、ベンチュリ管を経て共噴射する。その圧縮空気の圧力は0.51MPaに達する。ガラスビーズは同軸二重管の内側を移動し、噴霧された脂肪物質の方は外側管の方に導入される。この配置は、ガラス粒子の表面でのコーティング剤の有利な析出を可能にする。混合された生成物を常圧の気体/固体分離装置内で捕集する。CO2/圧縮空気ガス混合物はガス抜き口に搬送される。捕集された被覆粒子を、被覆後の平均粒径の増大をモニターするためにレーザー粒度計により分析する。結果の再現性を確かめるために、この実験を2回実施する(試験1および試験2)。被覆は、PSD 3603粒度分布分析装置(TSI)を用いた粒度測定(図5および6)と、ESEM画像(図7、8、9および10)(環境走査型電子顕微鏡)によりモニターする。本発明に係る方法により得られたガラスビーズ上のプレシロールTMの代表的な被覆を図8に示す。図8の被覆は均質で、2成分の単なる物理的混合物(図9)および未処理のガラスビーズの表面外観(図7)とは完全に異なる。図10は、本発明に従った被覆により得られた1群の粒子を示す。この群は被覆粒子のサンプルの均質性を示す。
【0050】
これは、被覆がガラスビーズ上での固体プレシロールTMの析出だけでなく、ビーズの表面での固化/析出の現象を含んでいることを示す。図5および6から、未被覆粒子に比べて被覆粒子の直径が大きくなる方に平均幾何学直径がシフトしているのを観察することができる。この平均粒子径の成長は、粒子表面での被覆層の析出に帰すことができる。
【0051】
また、図5および6に示した試験1および2の被覆粒子に関する2つの粒度曲線は似ていて、本方法の再現性が非常によいという結論を引き出すことができる。
【実施例2】
【0052】
本実施例では、被覆される材料とコーティング剤の出発重量を変化させる。固体形態のプレシロールTM ATO5脂肪物質4gを、ガラスビーズの粒度を30〜40μmの粒度に制限した以外は実施例1と同じ条件下で溶解させる。被覆のために使用したコーティング剤の量を減らす。また、ガラスビーズ6gを共噴射システム(図2に示したもの)に搬送するのにガス状CO2を用いる。粒子は大気圧で捕集装置内に捕集する。本実験は、結果の再現性を確認するために2回行う(試験1および試験2)。被覆は、PSD 3603粒度分布分析装置(TSI)を用いた粒度測定(図11)と、ESEM(環境走査型電子顕微鏡)画像(図12)によりモニターする。図11から、平均粒径のより大径方向へのシフトを観察することができる。未被覆粒子の直径に比べて被覆粒子の直径が増大するのは、粒子表面でのコーティング剤の析出の結果である。図12は、プレシロールTMで被覆されたガラスビーズの、得られた群を代表するESEM写真である。
【実施例3】
【0053】
超臨界CO2を固体形態のプレシロールTM ATO5(グリセリルジパルミテート/ステアレート、融点=56.3℃)3g中に50℃および11.14MPaで溶解させる。オートクレーブ内の圧力を一定に保持する。30分後、CO2で飽和したプレシロールTMATO5を軸方向共噴射システムに向かって減圧する。同時に、体積による平均粒径が14.9±1.4μmであるシュードエフェドリン粒子3gを、図2の配置に従って共噴射する。シュードエフェドリンの噴射に使われるオートクレーブの圧力を5.06MPaに設定する。シュードエフェドリン粒子は同軸噴射の中心管の内側部分内を移動し、噴霧された脂肪物質の方は外側管の方に導入される。混合された生成物を、常圧の気体/固体分離装置内で捕集する。結果の再現性を確かめるために、本実験を2回実施する(試験1と試験2)。捕集された被覆粒子を、被覆後の平均粒径の増大をモニターするためにPSD 3603粒度分布分析装置(TSI)を用いたレーザー粒度測定により分析する。シュードエフェドリン単独および被覆されたシュードエフェドリン(PE)の体積累積粒度分布を図13に示す。被覆および粒子の凝集に起因する現象である、より大きな粒度への粒度分布のシフトが明確に見られる。
【0054】
常温の蒸留水中で実施した溶解試験は、活性化合物の放出の顕著な遅延が観測されたことから(図14)、被覆が有効であることを示している。被覆粒子は未被覆のシュードエフェドリンに比べて放出の遅延を示す。
【実施例4】
【0055】
本例では粒度が20μm以下のガラスビーズ粒子の被覆を行う。薬理学的化合物の被覆に用いるパラフィンワックス4g中に超臨界CO2を圧力11.14MPaおよび温度53℃の条件下で溶解させる。ガラスビーズ6gを共噴射システム(図2に示したもの)に搬送するのにガス状CO2を8MPaの圧力で用いる。30分の溶解時間の後、未被覆の粒子をガス状CO2により搬送し、同時に溶解チャンバーの出口のバルブを開けてパラフィンワックスを結晶化させる。ガラスビーズは同軸二重管の内側を移動し、噴霧された脂肪物質の方は外側管内を搬送される。粒子を常圧の捕集装置内で捕集する。被覆を、PSD 3603粒度分布分析装置(TSI)を用いた粒度測定(図15)と、ESEM(環境走査型電子顕微鏡)画像(図16)によりモニターする。図15から、平均粒径のより大径方向へのシフトを観察することができる。未被覆粒子の直径に比べて被覆粒子の直径が増大するのは、粒子表面でのコーティング剤の析出の結果である。図16に、代表的なガラスビーズ粒子の被覆を見ることができる。コーティング剤の連続相がガラスビーズの表面に見られる。本例は、本方法が20μm以下の粒度を持つ粒子にも適用できることを示している。
【実施例5】
【0056】
粒度が20μm以下のガラスビーズ粒子をやはり被覆する。本例では、医薬産業でコーティング剤として使用されているグリセリルモノステアレート4g中に超臨界CO2を圧力11.14MPaおよび温度57.3℃の条件下で溶解させる。ガラスビーズ6gを共噴射システム(図2に示したもの)に搬送するのにガス状CO2を8MPaの圧力で用いる。実施操作は実施例4と同様である。被覆を、PSD 3603粒度分布分析装置(TSI)を用いた粒度測定(図15)と、ESEM(環境走査型電子顕微鏡)画像(図17)によりモニターする。図15から、モノステアレートで被覆された粒子の平均粒径のより大径方向へのシフトを観察することができる。図17に、ガラスビーズの表面における析出被覆の層が見られる。
【実施例6】
【0057】
大気圧での融点が60.3℃のグリセリルモノステアレートでシュードエフェドリンを被覆するために本発明に係る方法を図2に従って実施する。被覆のために使用するこの脂肪物質4g中に超臨界CO2を温度57℃および圧力110バールで溶解させる。30分間の平衡時間の後、液化した脂肪物質および溶解したCO2からなる重い相を減圧する。同時に、シュードエフェドリン4gをCO2により80バールの圧力で噴射する。粒子を分析のために固体/気体分離装置内に捕集する。常温で蒸留水中に放出された被覆シュードエフェドリンのUV分光光度法による定量分析結果を図18に示す。未処理のシュードエフェドリンは10分間で完全に溶液状態に溶解する。被覆粒子として存在するシュードエフェドリンは、水性媒質中に溶解するのに60分かかる。即ち、50分近く溶解が遅れる。
【実施例7】
【0058】
実施例7は、大気圧での融点が58.5℃のパラフィンワックス4gによるシュードエフェドリン4gの被覆を例示する。この脂肪物質中への超臨界CO2の溶解条件は110バールおよび55℃である。溶解時間は30分間である。この溶解段階の後、被覆される材料とコーティング剤の2つの流れを本発明に係る図2の方法に従って共噴射する。粒子の被覆により生ずる溶解の遅延効果を確認するため、UV分光光度法により被覆粒子を定量分析する(図18)。図18において、活性成分の常温での蒸留水中の溶解が、未処理シュードエフェドリンに比べて、被覆によって約50分間遅れることが示されている。
【実施例8】
【0059】
本例では、粒度分布測定で測定された平均粒径が85.6μmの熱感受性タンパク質、BSA(ウシ血清アルブミン)を本発明に係る図2に示した方法に従って被覆する。3gのBSAをCO2による噴射のためのシステム内に配置し、3gのプレシロールTMをオートクレーブ内に配置する。超臨界媒質化条件は110バールおよび50℃であり、その溶解時間は30分間である。BSA粒子の噴射のための圧力は80バールである。共噴射を実施した後、被覆粒子をUV分光光度法により定量分析する(図19)。未処理のBSAは常温で5分後には蒸留水中に完全に溶解するのに対し、プレシロールTMで被覆されたこのタンパク質(BSA1試験)の場合は、常温で蒸留水中に完全に溶解させるのに30分近くかかる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】活性物質の未被覆分離粒子の再循環を伴う本発明に係る方法の第1の態様を示す。
【図2】オートクレーブ内でコーティング剤中に溶解される超臨界または亜臨界流体と、被覆される活性物質の分離粒子の存在下におけるキャリアーガスという2つの機能を果たすCO2の再循環を伴う、本発明に係る方法の第2の態様を示す。
【図3】活性物質の分離移動粒子とコーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物の同心管内での共噴射方法を示す。
【図4】活性物質の分離移動粒子とコーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物の同心管内での共噴射方法を示す。
【図5】未被覆ガラス粒子または本発明に係る方法により被覆されたガラス粒子について得られた示差体積率を示す。
【図6】図6、11および15は、本発明に従って異なるコーティング剤で被覆されたか、または未被覆の異なる粒度のガラス粒子についての累積体積分布を示す。
【図7】未被覆のミクロンサイズ微粒子ガラスビーズ(50〜63μm)のESEM(環境走査型電子顕微鏡)により得られた画像を示す。
【図8】プレシロールTM ATO5で被覆された上記微粒子ガラスビーズのESEMで得られた画像を示す。
【図9】上記微粒子ガラスビーズ(50〜63μm)とプレシロールTM ATO5との物理的混合物のESEMで得られた画像を示す。
【図10】プレシロールTM ATO5で被覆された微粒子ガラスビーズのESEMで得られた画像を示す。
【図11】図6について述べた通りである。
【図12】プレシロールTM ATO5で被覆された微粒子ガラスビーズ(30〜40μm)のESEMで得られた画像を示す。
【図13】本発明に係る被覆されたシュードエフェドリンの粒子、または未被覆のシュードエフェドリンの粒子についての累積体積分布を示す。
【図14】未被覆のシュードエフェドリンの粒子または本発明に係る被覆されたシュードエフェドリンの粒子の蒸留類水中での放出試験を示す。
【図15】図6について述べた通りである。
【図16】パラフィンワックスで被覆された20μm以下の粒度のガラスビーズのESEMにより得られた画像を示す。
【図17】グリセリルモノステアレートで被覆された20μm以下の粒度のガラスビーズのESEMにより得られた画像を示す。
【図18】未被覆のシュードエフェドリンの粒子または本発明に係る被覆されたシュードエフェドリンの粒子の溶液中への放出試験を示す。
【図19】未被覆のBSAタンパク質の粒子または本発明に係る被覆されたBSAタンパク質の粒子の溶液中への放出試験を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界または亜臨界流体を用いた方法による、固体活性物質の粒子、特に粒度(サイズ)が100μm未満、有利には50μm未満の粒子の被覆(被覆)、およびそれによるマイクロカプセルの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的な被覆技術に関する現状は、化学的な方法、機械的な方法、すなわち、物理的現象のみを含む方法(J. Richard et al., Techniques de l'ingenieur, マイクロカプセル化、 J2 210 1-20, 2002)、ならびに物理化学的な方法からなる。
【0003】
化学的方法は、重縮合、重合などによる被覆材料のその場生成に基づく方法である。機械的な方法は、噴霧技術(噴霧乾燥、スプレイ塗布)、滴下または小滴形成技術(プリリング<溶融金属の筒口からの滴下>)ならびに押出技術(押出、球状化)を採用する。最後に、物理化学的な方法は、コーティング剤の溶解度および析出条件(pH、温度など)の変化の制御に基づく方法である。
【0004】
親油性活性成分だけに限られるコアセルベーション法は、物理化学的方法として知られる。容易に実施できる溶媒蒸発または抽出法も知られている。これらの方法の主な制限は、それらが親油性活性材料のカプセル化だけに適用され、特に有機溶媒を使用することである。第一に、得られた生成物は無視できない残留溶媒含有量を有し、第二に粒子の被覆を完結させるのに乾燥工程が必要である。
【0005】
最後に、物理化学的方法は、単純なコアセルベーションによるマイクロカプセル化および熱ゲル化によるマイクロカプセル化も包含する。最初の方法はやはり有機溶媒を使用し、二番目の方法としては、熱に敏感ではない活性成分に限られるという主な難点がある。
【0006】
界面重縮合、乳化重合、懸濁重合、分散重合などの化学的方法は、2種類のモノマー間の化学反応によって乳化小滴の表面でポリマー膜をその場で製造することができ、これは被覆法としても知られている。この化学反応は分散相(分散された相)と分散媒相との間の界面で起こる。この被覆方法は、活性物質の溶液にしか適用できない。従って、固体形態の被覆には適用できない。
【0007】
固体形態の被覆は、機械的方法と超臨界流体技術を用いた方法の2つのサブグループに分類することができる方法に従って行われる。
機械的方法は、噴霧(噴霧乾燥若しくはスプレイ塗布、流動化)、または小滴形成(プリリング)または押出の原理に基づく方法である。噴霧または小滴形成を用いる方法は、コーティング剤を溶媒に溶解させてなる液状組成物の使用を伴う。被覆される材料は液体または固体形態でよい。押出の原理は、一般に70℃〜150℃の範囲の押出温度で熱的に安定でなければならない被覆される固体または溶融材料に溶融コーティング剤を混合してなる溶融媒体を使用する。これらの方法により得られるマイクロカプセルの粒度は一般に100μm以上である。従って、これらの方法は、粒度が100μm未満の固体形態の被覆される材料や、特に熱感受性の被覆される材料の被覆に適していないことが判明している。
【0008】
圧縮ガスを用いる方法は、一般に超臨界CO2の使用を基本とする。これは、超臨界のCO2が次に述べる多くの利点を有するからである:臨界座標が比較的低い(31℃、7.47MPa)、圧力の変動が低い割にはその溶媒和力の変動が大きい、無毒で、比較的低コストである。粉末を被覆するための3種類の主な実施手法は、RESS(超臨界溶液の急速膨張、Rapid Expansion of Superficial Solution)法、PGSS(ガス飽和溶液由来粒子、Particles from Gas Saturated Solution)法、およびSAS(超臨界抗溶媒、Superficial Anti Solvent)法である。
【0009】
RESS法(Turk et al., Journal of Superficial Fluids, 15, 1999, 79-89)は超臨界流体による流動床の技術を用いて、粒子を被覆することができ、その粒度は現状では50μmまで下げることが可能である。Brunnerのドイツチームにより指揮されたこの方法 (Journal of Supercritical Fluids, 24, 2002, 137-151) は、超臨界条件下で流体により被覆したい粒子を流動化させ、次いで、この流動床において、噴霧ノズルを用いて飽和超臨界相の圧力を低下させて、粒子を被覆することからなる。超臨界流体によるコーティング剤の抽出が流動床とは別のチャンバー内で行われる。抽出チャンバーと流動床との間の圧力差が過飽和の急激な低下を生じ、それによりコーティング剤の結晶化が起こる。しかし、この見込みのある技法は、超臨界CO2に可溶なコーティング剤だけに限られたままである。従って、使用可能と考えられるコーティング剤の範囲は非常に狭められたままである。
【0010】
他方、液体および固体中の圧縮CO2の溶解度は一般に非常に高い。この原理が元になってPGSS法が生まれた。従って、ここでの超臨界または亜臨界流体は、RESS法におけるような溶媒ではなく、溶質である。そのため、PGSS法の主な利点は、圧縮ガスで処理できるコーティング剤の範囲が非常に広がることである。WO−02/05944およびUS−6056791において採用されているPGSS法は、コーティング剤中に圧縮CO2を溶解させることにより、その融点またはガラス転移温度を低下させることに基づいている。コーティング剤中の圧縮ガスの溶解はその軟化を生じ、その後、この軟化相における圧力低下(減圧)が、この材料の粉末状固体の形態での固化を生ずる。粒子の被覆のために、被覆される材料をこの溶融媒体と混合する。被覆される材料/コーティング剤の混合物を次いで圧力低下させると、被覆される材料上でのコーティング剤の固化を生ずる。この被覆方法の主な欠点は、コーティング剤中に圧縮ガスを溶解させる時間(一般に長い)の間ずっとコーティング剤と被覆される材料が同様の圧力および温度条件下に置かれるため、熱感受性の活性成分には適していないことである。さらに、被覆される材料/コーティング剤の比率の正確な制御が困難であるとわかることが非常に多い。
【0011】
また、PGSS原理に基づいたCPF法(濃縮粉末形態、Concentrated Powder Form)(WO−99/17868)も知られている。この方法は、固体/液体処方組成物を得るために、事前に加圧された液体活性成分を粉末状の助剤と一緒に共噴霧することからなる。加圧下のガスを活性成分の溶液中に飽和に達するまで溶解させる。この飽和溶液をノズルを通して急速に減圧すると、非常に微細な液滴を生ずる。膨張中に、安定化粉末を液体スプレイと並流で添加する。ノズル出口でのガスの膨張は、エーロゾルから生じた液滴と添加された粉末状固体との強力な混合を生ずる。噴霧液体は次いで固体の表面に吸着され、固体/液体粒子が生成する。このように、CPF法は液体形態を固体支持体上での吸着によって固体形態に転化させることができる。主な用途の1つは、原料の液体形態に対する固体/液体複合粒子の輸送および貯蔵面での改善に関する。この方法はまた、支持体固体の吸着性に応じて新規な固体/液体複合粒子を得ることができる。ここで望まれる目標は、液体形態の活性成分を粉末状生成物を経て安定化することである。
【0012】
活性成分の被覆に適用されるSAS法(US−5043280およびFR−2753639)は、コーティング剤を有機溶媒に事前に溶解させる必要がある。被覆される材料をこの溶液に分散させる。この分散液を次いで超臨界CO2と共噴射する。超臨界CO2は抗溶媒(アンチソルベント)として作用し、従って被覆される材料上でコーティング剤を固化させることができる。この方法の主要な制約は、有機溶媒の使用にあり、有機溶媒はその後に抗溶媒から分離しなければならないことと、さらに、プロセスの処理工程中ずっと、高いことが非常に多い(超臨界流体としてCO2を使用する場合には少なくとも31℃以上)圧力および温度条件下に活性成分が曝されたままなることである。
【0013】
Fosterら(Powder Technology, 126, 2002, 134-149)はASES(エーロゾル溶媒抽出方式、Aerosol Solvent Extraction System)による抗溶媒法の特異的な実施法を提案している。活性成分の被覆のための噴霧ノズルによって、抗溶媒効果により同時に形成された粒子上でコーティング剤を析出させることができる。これは、開発されたノズルが3つの同心環状部分を備えていて、超臨界条件下で複数の流体を1つのチャンバーに導入することができるためである。有機溶媒に溶解させた活性成分の溶液は中心部に送りこまれる。ノズルの中心部は、この有機溶液を溶解ポリマーと共に搬送することができ、ノズルの外側部は抗溶媒効果を生ずる超臨界流体を搬送することができる。このようにして、コーティング剤が活性成分上に優先的に析出して、それを被覆する。コーティング剤と被覆される材料は同時に結晶化する。この種の被覆される材料/コーティング剤の接触操作は、流体流れ上で行われ、ノズルはどの点においても固体形態の活性成分を搬送することはないことに留意すべきである。
【0014】
最後に、超臨界ルートによる被覆の特許リストは、FR−2809309を抜かしたなら完全とはならないだろう。この特許文献は、タンパク質活性成分とこの活性成分を被覆するコーティング剤を含む、噴射されるためのマトリックス型の微球(マイクロスフィアー)の生成に関する。被覆は放出時間を長くすることを目的とする。このコーティング剤は超臨界流体に可溶でなければならない。得られた被覆粒子は、有機溶媒を含んでいないことを特徴とする。この方法の原理は、活性成分とコーティング剤とを撹拌機を備えたオートクレーブに入れ、次いで、超臨界条件下で流体を撹拌下に導入して、流体がコーティング剤を溶解するようにする。活性成分はこのプロセス中ずっと固体のままである。コーティング剤が溶解してしまったら、この懸濁液の温度と圧力をゆっくり低下させ、超臨界相中におけるコーティング剤の過飽和の急激な低下を生じさせるように制御する。その後、コーティング剤が活性成分上に優先的に析出して、保護被覆層を形成する。しかし、この方法はなお超臨界流体の存在下で十分な溶解度を示すコーティング剤に制限されたままである。
【特許文献1】WO−02/05944
【特許文献2】US−6056791
【特許文献3】WO−99/17868
【非特許文献1】Powder Technology, 126, 2002, 134-149
【発明の開示】
【0015】
上述した各種の方法を考慮すると、より広範囲のコーティング剤、特に超臨界または亜臨界流体に不溶性のコーティング剤を用いて、熱感受性の活性成分のより微細な固体粒子を被覆する方法を利用可能にすることが必要であると思われる。
【0016】
このために、本発明は、下記工程を含むことを特徴とする粉末状の固体活性物質の被覆方法に関する:
(a) 少なくとも1種のコーティング剤と、これに飽和まで溶解している超臨界または亜臨界流体とを含む混合物を、該流体を超臨界または亜臨界状態に保持することができる温度および圧力条件下で用意し、
(b) 少なくとも1種の粉末状固体活性物質の分離している移動粒子を用意し、
(c) 前記混合物を前記活性物質分離移動粒子と、下記を同時に確保する温度および圧力条件下で接触させ:
・超臨界または亜臨界流体の圧力低下(減圧)とその気体状態への復帰、
・コーティング剤の噴霧、および
・活性物質の分離移動粒子の周囲でのコーティング剤の固化、
(d) 被覆された粒子を分離および回収する。
【0017】
本発明に係る方法の利点の1つは、約25℃、従って常温に近い温度を使用するため、本発明に係る方法は特に熱感受性の活性物質の被覆に適していることである。その理由としては、一方では、活性物質とコーティング剤が別個に処理されるためであり、他方では、活性物質とコーティング剤とを接触させる時間が非常に短く、またコーティング剤の特性を工程(a)中に変化させる(例えば、融点を低下させる)ことができるためである。
【0018】
本発明が説明する方法はまた、活性物質/コーティング剤の重量比、従って関与する活性物質とコーティング剤の量の重量比を、10/1〜1/10、有利には5/1〜1/5の範囲内とすることができる良好なコントロールを可能にする。
【0019】
最後に、本発明に係る方法の原理は、超臨界または亜臨界流体によるコーティング剤の溶解ではなく、コーティング剤中への超臨界または亜臨界流体の溶解に基づくので、広範囲のコーティング剤、特に該流体に不溶性のコーティング剤に適用することができる。
【0020】
「被覆」または「コーティング」なる用語は、本発明の意味の範囲内では、固体活性物質の粒子上でコーティング剤の連続層を析出させることであると理解される。固体コア/連続固体シェル型の構造がこうして得られる。シェルは多孔質または非多孔質とすることができる。得られた粒子は従ってマイクロカプセルである。
【0021】
「活性物質」なる用語は、本発明の意味の範囲内では、任意の薬理学的有効成分(例えば、鎮痛剤、解熱剤、アスピリンおよび誘導体、抗生物質、抗炎症剤、抗潰瘍剤、抗高血圧剤、神経弛緩剤、抗うつ剤、オリゴヌクレオチド、ペプチドまたはタンパク質)、化粧用有効成分(例えば、UV防止剤または日焼け剤)、機能性食品有効成分(例えば、ビタミン類)、食品有効成分、農薬有効成分または獣医学有効成分であると理解される。有利には、それはシュードエフェドリン(プソイドエフェドリン)である。有利には、活性物質は熱感受性である。「熱感受性の活性物質」なる用語は、本発明の意味の範囲内では、温度の作用を受けてその物理化学的構造の変化を生ずる任意の活性物質であると理解される。有利には、これらの物質は約28℃より高温、有利には約25℃より高い温度に対して感受性である。有利には、これらはタンパク質またはペプチドであり、有利にはBSA(ウシ血清アルブミン)である。
【0022】
「コーティング剤」なる用語は、本発明の意味の範囲内では、活性物質の表面で析出して活性物質の固体粒子の周囲に連続固体層を形成することができる1種または2種以上の被覆材料であると理解される。有利には、コーティング剤は超臨界または亜臨界流体に不溶性である。有利に使用されるのは、リン脂質、特にホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルコリンもしくはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、カプリン酸およびカプリル酸のトリグリセライド、固体脂肪酸のエステル、特にパルミチン酸エチル、ミリスチン酸エチルもしくはミリスチン酸オクチルドデシルといったC8〜C18脂肪酸のエステル、有利にはC8〜C18脂肪酸のエステルならびにそれらの混合物といった、脂肪物質である。コーティング剤はまた、多糖類およびそれらの誘導体、例えば、デンブンもしくは変性デンプン(例、カルボキシメチルデンプン);セルロースもしくは変性セルロース、例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、もしくはメチルヒドロキシプロピルセルロース;あるいはアルギン酸エステル、カラゲーニン、ペクチン、ペクチン酸エステル、グアー、キサンタンおよびキトサンに由来する多糖類;アクリルもしくはメタクリル型のポリマー、例えば、アクリル酸もしくはメタクリル酸のホモポリマーもしくはコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリシアノアクリレート、および一般的にはアクリルもしくはメタクリル酸から誘導される当業者には周知の任意の合成ポリマー;ビニルエステルから誘導されるビニルポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリ(酢酸ビニル)、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー;α−ヒドロキシカルボン酸の生分解性ポリマーおよびコポリマー、特に乳酸およびグリコール酸のホモポリマーおよびコポリマー、より具体的にはPLAおよびPLGA;ポリ(ε−カプロラクトン)およびその誘導体、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、およびβ−ヒドロキシブチレート−ヒドロキシバレレートコポリマー、ポリ(リンゴ酸);ポリ(乳酸)、ポリ(エチレンオキサイド)型の両親媒性ブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキサイド)型の生体適合性ポリマー、またはポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)型のブロックコポリマー;ポリ(酸無水物)、ポリオルトエステル、ポリホスファゼンならびにそれらの混合物とすることもできる。
【0023】
コーティング剤は有利には、多糖類およびそれらの誘導体、アクリルもしくはメタクリル型の合成ポリマー、脂質、リン脂質、またはそれらの混合物よりなる群から選ばれる。
コーティング剤は、有利には、モノ、ジおよびトリグリセライドの混合物、有利にはガッテフォッセ社(Gattefosse)から販売のプレシロール(Precirol)TMのようなグリセリルジパルミテート/ステアレート、パラフィンワックス、ならびにグリセリルモノステアレートから選ばれる。
【0024】
コーティング剤は有利には活性物質の味および/または色をマスク(封鎖)することができる。
コーティング剤は有利には活性物質の制御された放出とその生物学的利用能の増大を可能にする。
【0025】
さらに一層有利には、コーティング剤は、損傷を生ずる外部の剤に対して活性物質を保護する。
この場合、活性物質は有利には熱および/または化学薬品および/または光に対して感受性である。
【0026】
「超臨界または亜臨界流体」なる用語は、本発明の意味の範囲内では、その臨界値より高い温度もしくは圧力、またはその臨界値より低いがそれに近い温度もしくは圧力、で使用される任意の流体であると理解される。これは有利にはCO2であるが、例えば、ブタン、窒素または亜酸化窒素といった、コーティング剤を飽和させることができる任意のガスでもよい。
【0027】
本発明の被覆方法は、活性物質のばらばらに分離した移動粒子にコーティング剤を噴霧する方法を採用するので、「機械的な」方法である。この方法は、粉末状固体形態にある活性物質をコーティング剤で被覆することに関し、コーティング剤は、超臨界または亜臨界流体により、この流体を超臨界または亜臨界状態に保持することができる温度および圧力条件下で液化されており、次いで圧力の低下により固化する。従って、本発明に係る方法により得られた最終粒子においては活性物質とコーティング剤はいずれも固体形態にある。
【0028】
本発明の方法は、従って、コーティング剤中への超臨界または亜臨界流体の溶解と、その後の、同時に活性物質の分離移動粒子と接触させながら、コーティング剤/超臨界または亜臨界流体の混合物を圧力低下させるという2つの主要な段階を含む。流体をコーティング剤と混合した後で超臨界または亜臨界状態にするように構想することも可能である。
【0029】
さらに、ケトン、アルコール、エステル、アルカン、アルケンおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれた有機溶媒を、活性物質の分離移動粒子ならびに/またはコーティング剤/超臨界または亜臨界流体の混合物に添加することができる。
【0030】
これは、超臨界CO2によりその場で製造されたナノパウダーを被覆することを構想することができるためである。この場合、被覆方法は、共溶媒の添加を必要とする。被覆される粒子を次いで該共溶媒中に溶解し、得られた溶液をコーティング剤および超臨界または亜臨界流体と接触させる。
【0031】
さらに、少量の溶媒の添加はコーティング剤中のCO2の溶解度を変化させることができ、従って、同じ被覆特性(活性物質/コーティング剤重量比)を保持しながら、得られた混合物の処理量を変化させることが可能となる。
【0032】
同様に、コーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物に可塑剤を添加することができる。可塑剤は、所望の本発明に係るコーティング剤の表面品質を改善するのを可能にする。
【0033】
上記第1段階は、例えば、コーティング剤の融点、ガラス転移温度および粘度を低下させることによりその物理化学的特性を変化させることができる。第2段階は、溶融もしくは軟化したコーティング剤および流体からなる混合物の圧力低下をミクロン程度に微粉化された形態の生成物であるエーロゾルを生ずるように行うことを含む。こうして発生した温度および圧力の低下によって、固体活性物質の分離移動粒子の周囲でコーティング剤を固化させることが可能となる。これらの活性物質の移動粒子は、場合により、コーティング剤/流体混合物を圧力低下させるチャンバー内に既に存在させておいてもよく、或いは接触操作を行う同じチャンバーに輸送してそれに噴射し、同時に圧力低下を生じさせてもよい。
【0034】
本方法の最後の工程として、被覆された粒子を気体/固体分離フィルター内で回収することができる。
本発明の方法の基本的な特徴は、被覆される活性物質の粒子の流動化であり、それにより該物質を凝集していない微細な移動する、ばらばらに分離した粒子の形態で存在させ、こうして活性物質の凝集体ではなく、100μm以下、有利には50μm以下、より有利には20μm以下の粒度の活性物質の分離移動粒子を被覆することが可能となる。活性物質の粒子への運動の付与は、例えば、気流式、機械的または流動床利用といった当業者に公知の各種の方法により行うことができる。
【0035】
本発明の1具体的態様において、活性物質の分離粒子は、気流または機械的輸送(例えば、CO2または圧縮空気)により搬送される。これは、この種の搬送が、被覆されることになる粒子を流動化させ、その凝集を防止することができるからである。気流輸送の場合、CO2を気体として使用することが好ましい。有利には、このCO2を再循環させて、ガスの連続再使用を可能にすることができる。再使用は、コーティング剤中に溶解させた超臨界または亜臨界流体もCO2である場合に可能である。
【0036】
本発明の1具体的態様において、混合物を活性物質の分離粒子と接触させる工程(c)は共噴射(コインジェクション)により得られたフィード流中で行われる。有利には、この共噴射は、被覆される活性物質の分離粒子とコーティング剤/流体混合物とを同心管(二重管)を通して同時に噴射することからなる。
【0037】
有利には、フィード流は直線形またはラセン形である。
本発明に係る方法はまた、同じ最終処方組成物に使用される、いくつかの異なる活性物質を被覆する場合にも使用することができる。
【0038】
本発明に係る方法は、多様な幾何学形状(例えば、球状または或る種の結晶形態といった規則的形状;あるいは任意の他の不規則形状)を有する活性物質の粒子に適用される。
本発明はまた、下記を特徴とする、各微粒子が活性物質からなるコアとコーティング剤からなるシェルとから順に構成される活性物質の被覆された微粒子にも関する:
・本発明に係る上記方法により得ることができるものであり、
・活性物質が常温で固体であって、熱に感受性であり、
・活性物質のコアの平均粒度が50μm未満、有利には20μm未満である。
【0039】
コーティング剤は有利には常温で固体であり、超臨界または亜臨界流体に不溶性である。本発明に係る粒子は有利には有機溶媒を含有していない。
本発明はさらに、下記を特徴とする、各微粒子が活性物質からなるコアとコーティング剤からなるシェルとから順に構成される活性物質の被覆された微粒子にも関する:
・本発明に係る上記方法により得ることができるものであり、
・活性物質が常温で固体であって、熱に感受性であり、
・活性物質のコアの平均粒度が100μm未満であり、
・コーティング剤が常温で固体であって、超臨界または亜臨界流体に不溶性であり、
・被覆された粒子が有機溶媒を含んでいない。
【0040】
コーティング剤は有利には活性物質の味および/もしくは色をマスクすることができるか、ならびに/または活性物質の制御された放出とその生物学的利用能の増大を可能にするか、ならびに/または活性物質を損傷を生ずる外部の剤に対して防護することができる。活性物質は有利には化学薬品および/または光に対して感受性である。コーティング剤は有利には、互いに本質的に不適合性である2種以上の活性物質を処方することを可能にし、それによりそれらの活性物質を互いから防護することができる。
【0041】
本発明はさらに、経口、局所、注射もしくは直腸投与用処方組成物ならびに/または医薬、化粧品、機能性食品、食品、農薬もしくは獣医学用処方組成物における本発明に係る粒子の使用に関する。
【0042】
本発明の制限を意図しない実施態様を示す添付図面に関してなされる以下の説明から本発明はよりよく理解され、その目的、効果および特徴がより明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
図1に示した方法は、下記のようにして実施される:
液体ストック(1)から供給される流体(CO2)は冷却され(2)、次いでポンプを通り(3)、熱交換器(4)で加熱される。それにより流体は超臨界または亜臨界状態になる。流体を次いで超臨界または亜臨界条件下で、コーティング剤を入れたオートクレーブ(5)に導入する。オートクレーブの温度は大気圧でのコーティング剤の融点に応じて調整される。一般に、圧縮ガスによるコーティング剤の飽和は融点の降下を生じ、その降下は標準条件下での融点より約40℃まで低い温度範囲となりうる。この流体を飽和に達するまでコーティング剤中に溶解させる。この溶解時間中、圧力は一定に保持する。平衡に達したら、超臨界または亜臨界流体が飽和したコーティング剤の軟化混合物を減圧(圧力低下)する。この減圧中の圧力降下は、好ましくは2.03〜30.38MPaの範囲内である。同時に、ばらばらに分離した移動粉末状固体粒子の形態の被覆される活性物質を気流装置(7)により搬送して、減圧したコーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物(8)と一緒に、好ましくは同軸で共噴射する。この同軸噴射において、コーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物は、例えば、外側位置とすることができる(図3)。被覆された粒子を気体/固体分離フィルター(9)内で、好ましくは大気圧で回収する。CO2が気流輸送中のキャリアーガス(6)である場合には、それを閉ループ内で再使用することを考えることができる(図2)。
【0044】
図3および4は、活性物質の分離移動粒子(10)とコーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物(11)とを同軸噴射により接触させる原理を示す。コーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物の到着が(12)で図式的に示されている。この混合物を次いで減圧し(13)、こうしてエーロゾル(14)を生成し、これが(11)で示すように外側の管に入る(図4)。
【0045】
被覆される活性物質は、分離した移動粒子の形態で導入され、内側の管(10)に入る。接触操作はチャンバー(16)で行われ、そこでは、流体を気体状態に戻すと共に、コーティング剤を活性物質の分離した粒子の表面で固化させるのに十分な圧力が優勢となっている。被覆された粒子は最後に気体/固体分離フィルター(9)で捕集する。
【0046】
この接触操作の実施方法は唯一の方法ではなく、別の形態または拡張を考えることもできる。接触時間は、例えば、コーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物および被覆される活性物質の分離移動粒子の流路を変更することにより増大させることができる。例えば、流路を直線とする代わりにラセン状とすることができる。接触操作はまた、未被覆の活性物質の分離粒子を被覆された粒子から分離した後に、この未被覆粒子を再循環することにより改善することもできる(図1)。
【0047】
以下の実施例は例示を目的として挙げたものであり、制限を意図していない。
粒子の被覆の特性決定は、空気の気流中の粒子の飛行の時間から粒度分布を求めることができる、乾燥経路による粒度測定(使用装置:エーロサイザー(Aerosizer)TM PSD 3603, TSI)により行う。被覆された粒子はESEM環境走査型電子顕微鏡(フィリップス社、XL30 FEG)により観察する(図7〜10、12、16および17)。
【0048】
本発明に係る方法は以下の実施例に従って実施することができる。
【実施例1】
【0049】
超臨界CO2を、固体形態のプレシロールTM ATO5(ガッテフォッセ社製)(グリセリルジパルミテート/ステアレート、融点和56.3℃)3g中に50℃および11.14MPaで溶解させる。オートクレーブ内の圧力を一定に保持する。30分後、飽和したプレシロールTM相を軸方向共噴射システムに向かって減圧する。同時に、粒度が50〜63μmのガラスビーズ3gを図1の配置に従って、ベンチュリ管を経て共噴射する。その圧縮空気の圧力は0.51MPaに達する。ガラスビーズは同軸二重管の内側を移動し、噴霧された脂肪物質の方は外側管の方に導入される。この配置は、ガラス粒子の表面でのコーティング剤の有利な析出を可能にする。混合された生成物を常圧の気体/固体分離装置内で捕集する。CO2/圧縮空気ガス混合物はガス抜き口に搬送される。捕集された被覆粒子を、被覆後の平均粒径の増大をモニターするためにレーザー粒度計により分析する。結果の再現性を確かめるために、この実験を2回実施する(試験1および試験2)。被覆は、PSD 3603粒度分布分析装置(TSI)を用いた粒度測定(図5および6)と、ESEM画像(図7、8、9および10)(環境走査型電子顕微鏡)によりモニターする。本発明に係る方法により得られたガラスビーズ上のプレシロールTMの代表的な被覆を図8に示す。図8の被覆は均質で、2成分の単なる物理的混合物(図9)および未処理のガラスビーズの表面外観(図7)とは完全に異なる。図10は、本発明に従った被覆により得られた1群の粒子を示す。この群は被覆粒子のサンプルの均質性を示す。
【0050】
これは、被覆がガラスビーズ上での固体プレシロールTMの析出だけでなく、ビーズの表面での固化/析出の現象を含んでいることを示す。図5および6から、未被覆粒子に比べて被覆粒子の直径が大きくなる方に平均幾何学直径がシフトしているのを観察することができる。この平均粒子径の成長は、粒子表面での被覆層の析出に帰すことができる。
【0051】
また、図5および6に示した試験1および2の被覆粒子に関する2つの粒度曲線は似ていて、本方法の再現性が非常によいという結論を引き出すことができる。
【実施例2】
【0052】
本実施例では、被覆される材料とコーティング剤の出発重量を変化させる。固体形態のプレシロールTM ATO5脂肪物質4gを、ガラスビーズの粒度を30〜40μmの粒度に制限した以外は実施例1と同じ条件下で溶解させる。被覆のために使用したコーティング剤の量を減らす。また、ガラスビーズ6gを共噴射システム(図2に示したもの)に搬送するのにガス状CO2を用いる。粒子は大気圧で捕集装置内に捕集する。本実験は、結果の再現性を確認するために2回行う(試験1および試験2)。被覆は、PSD 3603粒度分布分析装置(TSI)を用いた粒度測定(図11)と、ESEM(環境走査型電子顕微鏡)画像(図12)によりモニターする。図11から、平均粒径のより大径方向へのシフトを観察することができる。未被覆粒子の直径に比べて被覆粒子の直径が増大するのは、粒子表面でのコーティング剤の析出の結果である。図12は、プレシロールTMで被覆されたガラスビーズの、得られた群を代表するESEM写真である。
【実施例3】
【0053】
超臨界CO2を固体形態のプレシロールTM ATO5(グリセリルジパルミテート/ステアレート、融点=56.3℃)3g中に50℃および11.14MPaで溶解させる。オートクレーブ内の圧力を一定に保持する。30分後、CO2で飽和したプレシロールTMATO5を軸方向共噴射システムに向かって減圧する。同時に、体積による平均粒径が14.9±1.4μmであるシュードエフェドリン粒子3gを、図2の配置に従って共噴射する。シュードエフェドリンの噴射に使われるオートクレーブの圧力を5.06MPaに設定する。シュードエフェドリン粒子は同軸噴射の中心管の内側部分内を移動し、噴霧された脂肪物質の方は外側管の方に導入される。混合された生成物を、常圧の気体/固体分離装置内で捕集する。結果の再現性を確かめるために、本実験を2回実施する(試験1と試験2)。捕集された被覆粒子を、被覆後の平均粒径の増大をモニターするためにPSD 3603粒度分布分析装置(TSI)を用いたレーザー粒度測定により分析する。シュードエフェドリン単独および被覆されたシュードエフェドリン(PE)の体積累積粒度分布を図13に示す。被覆および粒子の凝集に起因する現象である、より大きな粒度への粒度分布のシフトが明確に見られる。
【0054】
常温の蒸留水中で実施した溶解試験は、活性化合物の放出の顕著な遅延が観測されたことから(図14)、被覆が有効であることを示している。被覆粒子は未被覆のシュードエフェドリンに比べて放出の遅延を示す。
【実施例4】
【0055】
本例では粒度が20μm以下のガラスビーズ粒子の被覆を行う。薬理学的化合物の被覆に用いるパラフィンワックス4g中に超臨界CO2を圧力11.14MPaおよび温度53℃の条件下で溶解させる。ガラスビーズ6gを共噴射システム(図2に示したもの)に搬送するのにガス状CO2を8MPaの圧力で用いる。30分の溶解時間の後、未被覆の粒子をガス状CO2により搬送し、同時に溶解チャンバーの出口のバルブを開けてパラフィンワックスを結晶化させる。ガラスビーズは同軸二重管の内側を移動し、噴霧された脂肪物質の方は外側管内を搬送される。粒子を常圧の捕集装置内で捕集する。被覆を、PSD 3603粒度分布分析装置(TSI)を用いた粒度測定(図15)と、ESEM(環境走査型電子顕微鏡)画像(図16)によりモニターする。図15から、平均粒径のより大径方向へのシフトを観察することができる。未被覆粒子の直径に比べて被覆粒子の直径が増大するのは、粒子表面でのコーティング剤の析出の結果である。図16に、代表的なガラスビーズ粒子の被覆を見ることができる。コーティング剤の連続相がガラスビーズの表面に見られる。本例は、本方法が20μm以下の粒度を持つ粒子にも適用できることを示している。
【実施例5】
【0056】
粒度が20μm以下のガラスビーズ粒子をやはり被覆する。本例では、医薬産業でコーティング剤として使用されているグリセリルモノステアレート4g中に超臨界CO2を圧力11.14MPaおよび温度57.3℃の条件下で溶解させる。ガラスビーズ6gを共噴射システム(図2に示したもの)に搬送するのにガス状CO2を8MPaの圧力で用いる。実施操作は実施例4と同様である。被覆を、PSD 3603粒度分布分析装置(TSI)を用いた粒度測定(図15)と、ESEM(環境走査型電子顕微鏡)画像(図17)によりモニターする。図15から、モノステアレートで被覆された粒子の平均粒径のより大径方向へのシフトを観察することができる。図17に、ガラスビーズの表面における析出被覆の層が見られる。
【実施例6】
【0057】
大気圧での融点が60.3℃のグリセリルモノステアレートでシュードエフェドリンを被覆するために本発明に係る方法を図2に従って実施する。被覆のために使用するこの脂肪物質4g中に超臨界CO2を温度57℃および圧力110バールで溶解させる。30分間の平衡時間の後、液化した脂肪物質および溶解したCO2からなる重い相を減圧する。同時に、シュードエフェドリン4gをCO2により80バールの圧力で噴射する。粒子を分析のために固体/気体分離装置内に捕集する。常温で蒸留水中に放出された被覆シュードエフェドリンのUV分光光度法による定量分析結果を図18に示す。未処理のシュードエフェドリンは10分間で完全に溶液状態に溶解する。被覆粒子として存在するシュードエフェドリンは、水性媒質中に溶解するのに60分かかる。即ち、50分近く溶解が遅れる。
【実施例7】
【0058】
実施例7は、大気圧での融点が58.5℃のパラフィンワックス4gによるシュードエフェドリン4gの被覆を例示する。この脂肪物質中への超臨界CO2の溶解条件は110バールおよび55℃である。溶解時間は30分間である。この溶解段階の後、被覆される材料とコーティング剤の2つの流れを本発明に係る図2の方法に従って共噴射する。粒子の被覆により生ずる溶解の遅延効果を確認するため、UV分光光度法により被覆粒子を定量分析する(図18)。図18において、活性成分の常温での蒸留水中の溶解が、未処理シュードエフェドリンに比べて、被覆によって約50分間遅れることが示されている。
【実施例8】
【0059】
本例では、粒度分布測定で測定された平均粒径が85.6μmの熱感受性タンパク質、BSA(ウシ血清アルブミン)を本発明に係る図2に示した方法に従って被覆する。3gのBSAをCO2による噴射のためのシステム内に配置し、3gのプレシロールTMをオートクレーブ内に配置する。超臨界媒質化条件は110バールおよび50℃であり、その溶解時間は30分間である。BSA粒子の噴射のための圧力は80バールである。共噴射を実施した後、被覆粒子をUV分光光度法により定量分析する(図19)。未処理のBSAは常温で5分後には蒸留水中に完全に溶解するのに対し、プレシロールTMで被覆されたこのタンパク質(BSA1試験)の場合は、常温で蒸留水中に完全に溶解させるのに30分近くかかる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】活性物質の未被覆分離粒子の再循環を伴う本発明に係る方法の第1の態様を示す。
【図2】オートクレーブ内でコーティング剤中に溶解される超臨界または亜臨界流体と、被覆される活性物質の分離粒子の存在下におけるキャリアーガスという2つの機能を果たすCO2の再循環を伴う、本発明に係る方法の第2の態様を示す。
【図3】活性物質の分離移動粒子とコーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物の同心管内での共噴射方法を示す。
【図4】活性物質の分離移動粒子とコーティング剤/超臨界または亜臨界流体混合物の同心管内での共噴射方法を示す。
【図5】未被覆ガラス粒子または本発明に係る方法により被覆されたガラス粒子について得られた示差体積率を示す。
【図6】図6、11および15は、本発明に従って異なるコーティング剤で被覆されたか、または未被覆の異なる粒度のガラス粒子についての累積体積分布を示す。
【図7】未被覆のミクロンサイズ微粒子ガラスビーズ(50〜63μm)のESEM(環境走査型電子顕微鏡)により得られた画像を示す。
【図8】プレシロールTM ATO5で被覆された上記微粒子ガラスビーズのESEMで得られた画像を示す。
【図9】上記微粒子ガラスビーズ(50〜63μm)とプレシロールTM ATO5との物理的混合物のESEMで得られた画像を示す。
【図10】プレシロールTM ATO5で被覆された微粒子ガラスビーズのESEMで得られた画像を示す。
【図11】図6について述べた通りである。
【図12】プレシロールTM ATO5で被覆された微粒子ガラスビーズ(30〜40μm)のESEMで得られた画像を示す。
【図13】本発明に係る被覆されたシュードエフェドリンの粒子、または未被覆のシュードエフェドリンの粒子についての累積体積分布を示す。
【図14】未被覆のシュードエフェドリンの粒子または本発明に係る被覆されたシュードエフェドリンの粒子の蒸留類水中での放出試験を示す。
【図15】図6について述べた通りである。
【図16】パラフィンワックスで被覆された20μm以下の粒度のガラスビーズのESEMにより得られた画像を示す。
【図17】グリセリルモノステアレートで被覆された20μm以下の粒度のガラスビーズのESEMにより得られた画像を示す。
【図18】未被覆のシュードエフェドリンの粒子または本発明に係る被覆されたシュードエフェドリンの粒子の溶液中への放出試験を示す。
【図19】未被覆のBSAタンパク質の粒子または本発明に係る被覆されたBSAタンパク質の粒子の溶液中への放出試験を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含むことを特徴とする、粉末状の固体活性物質の被覆方法:
(a) 少なくとも1種のコーティング剤と、これに飽和まで溶解している超臨界または亜臨界流体とを含む混合物を、該流体を超臨界または亜臨界状態に保持することができる温度および圧力条件下で用意し、
(b) 少なくとも1種の粉末状固体活性物質の分離している移動粒子を用意し、
(c) 前記混合物を前記活性物質の分離移動粒子と、下記を同時に確保する温度および圧力条件下で接触させ:
・超臨界または亜臨界流体の圧力低下とその気体状態への復帰、
・コーティング剤の噴霧、および
・活性物質の分離移動粒子の周囲でのコーティング剤の固化、
(d) 被覆された粒子を分離および回収する。
【請求項2】
工程(b)が、ケトン、アルコール、エステル、アルカン、アルケンおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれた有機溶媒を活性物質の分離移動粒子に添加することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の被覆方法。
【請求項3】
工程(a)が、ケトン、アルコール、エステル、アルカン、アルケンおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれた有機溶媒を前記混合物に添加することをさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の被覆方法。
【請求項4】
コーティング剤が、多糖類およびその誘導体、アクリル系またはメタクリル系合成ポリマー、脂質、リン脂質およびこれらの混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項5】
工程(a)が、前記混合物に可塑剤を添加することをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項6】
超臨界または亜臨界流体がCO2,ブタン、窒素および亜酸化窒素よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項7】
工程(b)の活性物質の分離粒子の平均粒度が100μm未満、有利には50μm未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項8】
活性物質が熱感受性である、請求項1〜7のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項9】
活性物質/コーティング剤の重量比が10/1〜1/10、好ましくは5/1〜1/5であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項10】
前記混合物を前記活性物質分離粒子と接触させる工程(c)を、共噴射により得られたフィード流中で行うことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項11】
フィード流が直線形またはラセン形であることを特徴とする、請求項10に記載の被覆方法。
【請求項12】
工程(b)が、CO2または圧縮空気を用いた気体式もしくは機械式輸送により活性物質の分離粒子を搬送することからなることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項13】
活性物質が、医薬、化粧品、機能性食品、食品、農薬および獣医薬として活性な物質ならびにそれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項1〜12のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項14】
下記を特徴とする、各微粒子が活性物質を含むコアとコーティング剤を含むシェルとから順に構成される被覆された活性物質の微粒子:
・請求項1〜13のいずれかに記載の方法により得ることができるものであり、
・活性物質が常温で固体であって、熱に感受性であり、
・活性物質のコアの平均粒度が50μm未満である。
【請求項15】
下記を特徴とする、各粒子が活性物質を含むコアとコーティング剤を含むシェルとから順に構成される、被覆された活性物質の粒子:
・請求項1〜13のいずれかに記載の方法により得ることができるものであり、
・活性物質が常温で固体であって、熱に感受性であり、
・活性物質のコアの平均粒度が100μm未満であり、
・コーティング剤が常温で固体で、超臨界または亜臨界流体に不溶性であり、
・被覆された粒子が有機溶媒を含んでいない。
【請求項16】
コーティング剤が活性物質の味および/または色の封鎖を可能にするものであることを特徴とする、請求項14または15に記載の粒子。
【請求項17】
コーティング剤が活性物質の制御放出およびその生物学的利用能の増大を可能にするものであることを特徴とする、請求項14または15に記載の粒子。
【請求項18】
コーティング剤が、損傷を引き起こす外部材料に対する活性物質の保護を可能にするものであることを特徴とする、請求項14または15に記載の粒子。
【請求項19】
活性物質が化学薬品または光に感受性である、請求項17に記載の粒子。
【請求項20】
経口、局所、注射または直腸処方組成物における請求項14〜19のいずれかに記載の粒子の使用。
【請求項21】
医薬、化粧品、機能性食品、食品、農薬または獣医薬用処方組成物における請求項14〜19のいずれかに記載の粒子の使用。
【請求項1】
下記工程を含むことを特徴とする、粉末状の固体活性物質の被覆方法:
(a) 少なくとも1種のコーティング剤と、これに飽和まで溶解している超臨界または亜臨界流体とを含む混合物を、該流体を超臨界または亜臨界状態に保持することができる温度および圧力条件下で用意し、
(b) 少なくとも1種の粉末状固体活性物質の分離している移動粒子を用意し、
(c) 前記混合物を前記活性物質の分離移動粒子と、下記を同時に確保する温度および圧力条件下で接触させ:
・超臨界または亜臨界流体の圧力低下とその気体状態への復帰、
・コーティング剤の噴霧、および
・活性物質の分離移動粒子の周囲でのコーティング剤の固化、
(d) 被覆された粒子を分離および回収する。
【請求項2】
工程(b)が、ケトン、アルコール、エステル、アルカン、アルケンおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれた有機溶媒を活性物質の分離移動粒子に添加することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の被覆方法。
【請求項3】
工程(a)が、ケトン、アルコール、エステル、アルカン、アルケンおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれた有機溶媒を前記混合物に添加することをさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の被覆方法。
【請求項4】
コーティング剤が、多糖類およびその誘導体、アクリル系またはメタクリル系合成ポリマー、脂質、リン脂質およびこれらの混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項5】
工程(a)が、前記混合物に可塑剤を添加することをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項6】
超臨界または亜臨界流体がCO2,ブタン、窒素および亜酸化窒素よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項7】
工程(b)の活性物質の分離粒子の平均粒度が100μm未満、有利には50μm未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項8】
活性物質が熱感受性である、請求項1〜7のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項9】
活性物質/コーティング剤の重量比が10/1〜1/10、好ましくは5/1〜1/5であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項10】
前記混合物を前記活性物質分離粒子と接触させる工程(c)を、共噴射により得られたフィード流中で行うことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項11】
フィード流が直線形またはラセン形であることを特徴とする、請求項10に記載の被覆方法。
【請求項12】
工程(b)が、CO2または圧縮空気を用いた気体式もしくは機械式輸送により活性物質の分離粒子を搬送することからなることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項13】
活性物質が、医薬、化粧品、機能性食品、食品、農薬および獣医薬として活性な物質ならびにそれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項1〜12のいずれかに記載の被覆方法。
【請求項14】
下記を特徴とする、各微粒子が活性物質を含むコアとコーティング剤を含むシェルとから順に構成される被覆された活性物質の微粒子:
・請求項1〜13のいずれかに記載の方法により得ることができるものであり、
・活性物質が常温で固体であって、熱に感受性であり、
・活性物質のコアの平均粒度が50μm未満である。
【請求項15】
下記を特徴とする、各粒子が活性物質を含むコアとコーティング剤を含むシェルとから順に構成される、被覆された活性物質の粒子:
・請求項1〜13のいずれかに記載の方法により得ることができるものであり、
・活性物質が常温で固体であって、熱に感受性であり、
・活性物質のコアの平均粒度が100μm未満であり、
・コーティング剤が常温で固体で、超臨界または亜臨界流体に不溶性であり、
・被覆された粒子が有機溶媒を含んでいない。
【請求項16】
コーティング剤が活性物質の味および/または色の封鎖を可能にするものであることを特徴とする、請求項14または15に記載の粒子。
【請求項17】
コーティング剤が活性物質の制御放出およびその生物学的利用能の増大を可能にするものであることを特徴とする、請求項14または15に記載の粒子。
【請求項18】
コーティング剤が、損傷を引き起こす外部材料に対する活性物質の保護を可能にするものであることを特徴とする、請求項14または15に記載の粒子。
【請求項19】
活性物質が化学薬品または光に感受性である、請求項17に記載の粒子。
【請求項20】
経口、局所、注射または直腸処方組成物における請求項14〜19のいずれかに記載の粒子の使用。
【請求項21】
医薬、化粧品、機能性食品、食品、農薬または獣医薬用処方組成物における請求項14〜19のいずれかに記載の粒子の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2008−512233(P2008−512233A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530742(P2007−530742)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002236
【国際公開番号】WO2006/030112
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(591065907)
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE MEDICAMENT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002236
【国際公開番号】WO2006/030112
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(591065907)
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE MEDICAMENT
【Fターム(参考)】
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