説明

粉末ゴム含有ゴム組成物

【課題】加工性や作業性を損ねることなく、高い破壊特性、耐摩耗性を維持し、使用済みタイヤ等のゴム製品のリサイクル化を向上し得る粉末ゴム含有のゴム組成物を提供すること。
【解決手段】酵素処理天然ゴム(A)を5〜100質量部含むゴム成分100質量部に対して、粉末ゴム(B)を0.1〜99質量部含有してなるゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末ゴム含有ゴム組成物に関するものであり、特に、加工性を損ねることなく、高い破壊特性、耐摩耗性を維持し、使用済みタイヤ等のゴム製品のリサイクル化を向上し得る粉末ゴムを含有するゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済みタイヤは一般のプラスチック製品と比較しても回収率は高く、特にセメント工場を中心とした燃料として再利用されている。特に、近年環境問題の高まりとともに、タイヤゴム片あるいはゴム粉末をそのまま使用するいわゆるマテリアルリサイクル率の向上が求められている。
しかしながら、ゴム粉末を得るために通常用いられる手法のうちで代表的なロール粉砕法によれば、粉砕時の熱履歴が大きいことに加え、微粒径化が基本的に困難で、この手法により得られた粉末ゴムをゴム成分(新ゴム)に単に添加してもゴム物性(特に破壊特性)の低下は避けられず、また、未加硫状態でのゴム組成物の粘度上昇を避けることができないことや、押し出し後の生地の収縮率が増加するといった問題がある。特に、粉末ゴムの添加量を増加した場合には、加工性は著しく悪化するので、その添加量はごく少量に制限されざるを得ない。
また、微粒径化することによって破壊特性は保持することが出来るが、逆に上記のように加工性はさらに悪化し、相反する性能を有する。
【0003】
一方、加工性の悪化を回避する手法としては、オイルパン法による粉末ゴムの加熱脱硫処理が知られているが、ロール粉砕後の粉末ゴムに対して、そのまま処理を施すのが通常手法であるために、ゴム物性の低下はやはり避けられない。従って、従来、市販の粉末ゴムや再生ゴムをゴム組成物に配合しても、加工性とゴム物性(破壊特性)を両立することが極めて困難であった。
【0004】
シート加工性と破断特性の両立のため、特定ゴム組成の加硫ゴムを二軸押出機又はロールにより粉砕して得た再生ゴムを配合することが記載されている(特許文献1又は2参照)。しかし、その性能は未だ不満足なものであった。しかも、これら方法では、十分な加工性を確保するためには、粉砕ゴムを加硫系マスターバッチ化することが必要とされている。
【0005】
しかし、加硫系マスターバッチとした場合、一般には、追加の調整加硫剤とともにこれを混練する必要があり、混練工程ならびに練り温度上限の制約が大きい。すなわち、一般には、再生ゴムをゴム成分(新ゴム)に混合分散させるためには、加硫剤とともに混練する場合よりも一般に高い温度で混練することが望ましいが、加硫系マスターバッチを用いて、それを実施することは、混練り中にスコーチやゴム焼けの問題を生じるので好ましくない。
本出願人は、微粒径化処理を施し、145メッシュのふるいを通過したものを25%以上含有するように調製された粉末ゴムを、更にオイルパン法処理して得られた再生ゴムを使用することで、加工性を損ねることなく、高い破壊特性を維持下ゴム組成物が得られることを開示した(特許文献3参照)。この方法により、上記目的はほぼ達成されるものの市場からは更なるマテリアルリサイクル率の向上が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−89601号公報
【特許文献2】特開2001−89603号公報
【特許文献3】特開2004−35663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下、加工性や作業性を損ねることなく、高い破壊特性、耐摩耗性を維持し、使用済みタイヤ等のゴム製品のリサイクル化を向上し得る粉末ゴム含有のゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の割合の酵素処理天然ゴムを含むゴム成分に対して、粉末ゴムを特定量配合することによって上記目的を達成し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1) 酵素処理天然ゴム(A)を5〜100質量部含むゴム成分100質量部に対して、粉末ゴム(B)を0.1〜99質量部含有してなることを特徴とするゴム組成物、
(2) 酵素処理天然ゴム(A)が、蛋白質分解酵素もしくは脂肪分解酵素により処理された上記(1)のゴム組成物、
(3) 酵素処理天然ゴム(A)が、蛋白質分解酵素によって、固形分中の総窒素含有量が0.12〜0.3質量%の範囲であるように部分分解することによって脱蛋白処理された上記(1)又は(2)のゴム組成物、及び
(4) 粉末ゴム(B)が、60メッシュの篩いを100%通過したものである上記(1)〜(3)いずれかのゴム組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工性や作業性を損ねることなく、高い破壊特性、耐摩耗性を維持し、使用済みタイヤ等のゴム製品のリサイクル化を向上し得る粉末ゴム含有のゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
先ず、本発明のゴム組成物は、ゴム成分として酵素処理天然ゴム(A)を5〜100質量部含むことが必要である。
本発明のゴム成分として用いられる酵素処理天然ゴムは、天然ゴムラテックスを蛋白分解酵素や、蛋白分解酵素と脂肪分解酵素と併用し、これらの酵素によって脱蛋白処理をして得られたものであり、酵素処理天然ゴム中の総窒素含有量が0.12〜0.30質量%であるように調整して得られたものであることが好ましい。
原料となる天然ゴムラテックスは特に限定されず、フィールドラテックスや市販のラテックスなどを用いることができる。
ここで、脱蛋白酵素としては、プロテアーゼの他、ペプチターゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、アミラーゼ等を単独又は組み合わせて用いることができる。これらの酵素の酵素活性は0.1〜50APU/gの範囲が適当である。蛋白分解酵素の添加量は、天然ゴムラテックス中の固形成分100質量部に対して0.005〜0.5質量部、好ましくは0.01〜0.2質量部の範囲で用いるのが適当である。
本発明において、蛋白分解処理を行なう際には、蛋白分解酵素と共に界面活性剤を添加しても良い。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性界面活性剤等を添加することができる。
また、脱蛋白処理を行うにあたっては、蛋白分解酵素と共に脂肪分解酵素を混合して用いることによりその効果が向上する。脂肪分解酵素としては、通常、リパーゼが用いられる。
【0011】
本発明においては、上記の脱蛋白手法により、酵素処理天然ゴム(A)中の前記総窒素含有量が0.12〜0.30質量%になるように調整することが好ましい。
この窒素は、ポリペプチド結合の窒素に由来するものである。ポリペプチド結合の定量は赤外分光分析により蛋白質のポリペプチド結合による3280cm-1の吸光度を測定することにより行なうことができる。
本発明において、総窒素含有量が0.12質量%未満であれば、機械的特性(特に引張り特性)や低発熱性の改良効果は得られず、また、耐老化特性が悪化するおそれがある。総窒素含有量が0.12質量%以上の特定の範囲の場合に限り、ゴム組成物の引張り特性や低発熱性の改良効果が得られる。これは、ペプチド結合の分解により、ゴム粘度が適度に低下して、微粒化カーボンブラックなどのゴムへの分散性が向上し、充填材とゴムとの相互作用が増大するためと考えられる。
一方、0.30質量%を超えると加工性が劣る。このような観点から総窒素含有量は0.12〜0.30質量%、特に0.18〜0.25質量%が好ましい。また、ポリペプチド分解率としては20〜80%、特に30〜70%が好ましい。
【0012】
上記の如く脱蛋白処理された天然ゴムラテックスは、非ゴム成分を分離することなく、凝固することが好ましい。非ゴム成分を分離した場合には、耐老化特性が劣ることがある。
すなわち、本発明における酵素処理天然ゴム(A)の製造方法は、前記天然ゴムラテックスの脱蛋白処理工程において、固形成分中の総窒素含有量が0.12〜0.30質量%の範囲であるように部分脱蛋白処理を行なった後、得られた天然ゴムラテックスを、非ゴム成分を分離することなく凝固し、乾燥処理して行うことが好ましい。
前記処理ラテックスを凝固して得られたゴム成分は洗浄後、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の通常の乾燥機を用いて乾燥することにより、本発明における酵素処理天然ゴム(A)を得ることができる。
また、ゴム加工性の観点からは、入力の緩和時間を短くすることが挙げられるが、本発明による上記酵素処理天然ゴム(A)は、部分的に脱蛋白を行うことにより分岐点が選択的に切断され、応力緩和時間が低減され優れた加工性(収縮性、形状安定性)が得られる。
【0013】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として酵素処理天然ゴム(A)を5〜100質量部含むことを要するが、20〜80質量部含むことが好ましい。(A)成分の量を上記範囲にすることによって前記ゴム組成物として優れた加工性を得ることができる。
ゴム成分としては、前記(A)成分と共役ジエン系重合体の混合物であることがより好ましい。(A)成分と共役ジエン系重合体の混合割合は、(A)成分が5〜100質量%で、(D)成分が95〜0質量%であることが好ましい。
共役ジエン系重合体は、共役ジエン単独重合体、共役ジエン同士の共重合体又は共役ジエン−芳香族ビニル共重合体であることが好ましく、特に、ポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。
ここで、共役ジエン単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられ、中でも1,3−ブタジエンが好ましい。また、共役ジエン単量体との共重合に用いられる芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,2,6−トリルスチレンなどが挙げられ、中でもスチレンが好ましい。
【0014】
本発明のゴム組成物は、(A)成分を含むゴム成分100質量部に対して、粉末ゴム(B)成分を0.1〜99質量部含有することが必要である。
本発明の組成物に用いられる粉末ゴム中のゴム成分は、原料となる廃ゴムに含まれているものであり、その種類は特に限定されるものではなく、天然ゴム及び合成ゴムの中から選ばれる少なくとも1種を含むものであればよい。合成ゴムとしては、ジエン系ゴムが好ましく、例えば、シス−1,4−ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、低シス−1,4−ポリブタジエン、高シス−1,4−ポリブタジエン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどを例示できる。
また、前記粉末ゴムの原料となる廃ゴムには、ゴム工業で通常使用されている硫黄,過酸化物などの架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、老化防止剤、プロセス油、亜鉛華、ステアリン酸、シランカップリング剤などが配合されていてもよい。
【0015】
粉末ゴム(B)の原料としては、加硫ゴムからなる廃タイヤ・チューブ等を従来の方法で粉砕して得られる粉末ゴムに限らず、タイヤ製造時に発生する未加硫スクラップ物、タイヤ加硫時に発生するスピュー片などを粉砕した粉末ゴム(B)も使用できる。
本発明において、廃ゴムの微粒径化処理法は、特に限定されることはなく、冷凍粉砕や石臼粉砕などを挙げることができるが、粉末ゴム(B)表面が平滑になりにくく、ゴムとの相互作用をもちやすいと考えられる石臼粉砕手法が望ましい。この石臼粉砕は、例えば、無気孔構造のセラミック製石臼(これは株式会社グローエンジニアリング製のグローミルに用いられている砥石などである)を用いることができる。このような無気孔構造の石臼は、接触運転を可能にする点で、粉末ゴム(B)の微粒径化には特に好ましいと考えられる。
【0016】
また、微粒径化処理した粉末ゴム(B)は、145メッシュのふるいを通過したものを25%以上含有することが好ましく、50%以上含有することがより好ましい。145メッシュのふるいを通過したものは破壊核となる可能性が非常に少なく、破壊強力の低下抑制に対して特に効果大である。さらに、微粒径化処理した粉末ゴム(B)は、60メッシュのふるいを通過したものを80%以上含有することが好ましく、100%含有することがより好ましい。60メッシュのふるいを通過しないものは、ゴム中での破壊核となりやすく、破壊特性維持に対して悪影響を及ぼす可能性が高いためである。
【0017】
本発明において、前記粉末ゴム(B)はさらに脱硫工程を行なうことが好ましく、通常、オイルパン法が用いられる。この方法では、再生剤を添加し、スチーム雰囲気下、高温高圧にて一定時間蒸すという一般的な手法を用いることができ、脱硫時間、脱硫温度、脱硫濃度など、製造条件を様々に変更することにより、目的とする粉末ゴム(B)を得ることができる。例えば、対象となる粉末ゴム(B)の微粒径化の程度によっては、通常の脱硫条件に比べて脱硫時間を短めに設定するなどの手法がとられる場合がある。これは、通常の脱硫条件では可塑化の行き過ぎによりオイル状成分が増加し、諸物性に影響を与える可能性があるからである。なお、前記再生剤としては、例えばトール油、石油系可塑剤、粘着付与剤、しゃく解剤などを用いることができる。
【0018】
本発明のゴム組成物において、粉末ゴム(B)の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して0.1〜99質量部であることが必要であり、好ましくは1〜30質量部の範囲であることが望ましい。微粒径化の程度によっては、所望の破壊特性維持効果が得られにくくなることがあり、粉末ゴム(B)の特に好ましい含有量は2〜20質量部の範囲である。
また、本発明のゴム組成物においては、例えば、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウムなどの充填材を含むことができる。
【0019】
本発明のゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤,加硫促進剤,プロセス油,老化防止剤,スコーチ防止剤,亜鉛華,ステアリン酸などを含有させることができる。
上記により得られる本発明のゴム組成物は、再生ゴムである粉末ゴム(B)を含有するものであるにもかかわらず、破壊特性の低下及び耐摩耗性を抑制しつつ、未加硫ゴムのムーニー粘度の上昇及び収縮についても抑制することができる。
【0020】
本発明のゴム組成物は、乗用車用、小型トラック用、軽乗用車用、軽トラック用の各種空気入りタイヤのトレッドやその他のタイヤ構成部材として好適に用いられる。
【実施例】
【0021】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各種の測定法は下記の方法に基づいておこなった。
<酵素処理天然ゴムの物性測定>
(1)総窒素含有量の測定
ケルダール法によって総窒素含有量を測定し、全量に対する割合(質量%)として求めた。
(2)天然ゴムのムーニー粘度の測定
JIS K6300−1に準じ、100℃にてムーニー粘度[ML1+4/100℃]を測定した。
【0022】
<未加硫(組成物)の物性測定>
(3)ゴム組成物のムーニー粘度
JIS K6300−1に準じ、130℃にてムーニー粘度[ML1+4/130℃]を測定した。比較例1及び比較例3を100として指数で示した、値は小さいほど加工性に優れている。
(4)組成物の収縮率の測定
8インチ押出し機、85℃条件でゴム組成物を押出した際、口金から出た直後と、30秒後を比較した収縮率による評価でおこなった。比較例1及び比較例3を100として指数で示した、値は小さいほど収縮が小さく優れていることを示す。
【0023】
<加硫後の組成物の物性測定>
(5)破壊特性
JIS K6251により、切断時引張り応力(TSb)を測定し、比較例1及び3の値を100として指数で表示した。この数値が大きいほど破壊特性は良好である。
(6)耐摩耗性
ランボーン型摩耗試験機を用い、室温におけるスリップ率60%での摩耗量を測定し、比較例1及び比較例3を100として指数表示した。指数が大きい方が耐摩耗性が良好である。
【0024】
製造例1<酵素処理天然ゴムの製造>
(1)天然ゴムラテックスのペプチド結合分解工程
水136gにアニオン系界面活性剤[花王(株)製「デモール」、界面活性剤濃度は2.5質量%]24.7ml、プロテアーゼ(ノボザイムズ製「アルカラーゼ 2.5L、タイプDX」)の0.06gを加えて混合し、溶液を調製した。
次に、固形分20質量%の天然ゴムラテックス1000gをウォーターバス中にて40℃の恒温とし、攪拌しながら、該溶液を滴下し、5時間同温度で攪拌を続け、天然ゴムラテックスを得た。
(2)凝固・乾燥工程
酸凝固して得られたゴム分を、130℃に設定されたドラムドライヤーを5回通過させ、その後真空乾燥機にて40℃で8時間乾燥して酵素処理天然ゴムを製造した。該天然ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は65、総窒素含有量(%)は0.16であった。
【0025】
製造例2<天然ゴムの製造>
製造例1において、ペプチド結合分解工程を経ずに直接凝固・乾燥して天然ゴムを得た。該天然ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は73、総窒素含有量(%)は0.47であった。
【0026】
製造例3<粉末ゴムの製造方法>
(1)微粒径化処理(石臼粉砕処理)
本処理は、以下に示したような石臼粉砕機を用いて実施した。
石臼粉砕機(石臼直径30cm:グローミルGM5−30:株式会社グローエンジニアリング製)を用い、投入口より常温の水を投入し、上下石臼のうちで、下の石臼のみを高速(回転数1100〜1500回転/min)させながら、水が撹拌されているところへ、その上から少量(40g〜100g程度)ずつ粉末ゴム(24メッシュ品:村岡ゴム工業株式会社製)を添加した。この時、上下石臼間隙を4/100mm程度に設定した。石臼粉砕処理により排出口から水と共に出てきた粉末ゴムは、所定のバケツを用いて受け入れた後、濾布を用いて水と粉末ゴムを分離した。得られた粉末ゴムはドラフト中で十分乾燥させた後、さらに減圧乾燥させて、最終的に石臼粉砕処理した粉末ゴムを得た。これを60メッシュ(250μm)の篩を100%通過したものを処理品1とした。
【0027】
(2)オイルパン法処理
上記で得られた微粒径化処理した粉末ゴム(処理品1)を、300ccオートクレーブに投入し、再生剤を加えて、スチーム雰囲気下、温度約200℃、圧力約17kgf/cm2 にて、3時間脱硫反応を行った。反応後、ロールを用いてシート状とし、粉末ゴムからなる再生ゴムを得た。
【0028】
実施例1、比較例1〜2及び参考例1
製造例1〜2で得られた天然ゴム、酵素処理天然ゴムを用い第1表に示す配合処方により常法により混練りを行ないゴム組成物を調製した。
このゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4,130℃)及び収縮率を測定すると共に、145℃、33分間の条件で加硫し、切断時引張り応力(TSb),耐摩耗性を測定した。その結果を第1表に示す。
【0029】
【表1】

[注]
*1.天然ゴム:製造例2で調製した天然ゴムを用いた。
*2.酵素処理天然ゴム:製造例1で調製した天然ゴムを用いた。
*3.SBR:SBR#1500〔JSR社製〕
*4.粉末ゴム:製造例1で調製した粉末ゴムを用いた。
*5.カーボンブラック:シースト7HM〔東海カーボン社製〕
*6.軟化剤:アロマオイル
*7.老化防止剤6C:ノクラック6C〔大内新興化学工業社製〕
*8.加硫促進剤DM:ノクセラーDM−P〔大内新興化学工業社製〕
*9.加硫促進剤NS:ノクセラーNS−P〔大内新興化学工業社製〕
*10.加硫促進剤D:ノクセラーD〔大内新興化学工業社製〕
【0030】
実施例2、比較例3〜4及び参考例2
製造例1〜2で得られた天然ゴム、酵素処理天然ゴムを用い第1表に示す配合処方により常法により混練りを行ないゴム組成物を調製した。
このゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4,130℃)及び収縮率を測定すると共に、145℃、33分間の条件で加硫し、切断時引張り応力(TSb),耐摩耗性を測定した。その結果を第1表に示す。
【0031】
第1表から分かるように、ゴム成分として天然ゴムとSBRの混合系を用いた場合、粉末ゴム10質量部を配合した比較例2は、コントロールの比較例1に対して、粘度及び収縮率が大きくなり、耐摩耗性及び破壊特性が低下するが、粉末ゴムを10質量部含み、天然ゴム50質量部のうち25質量部を酵素処理天然ゴムに置き換えた実施例1は、上記諸特性が比較例1とほぼ遜色の無い結果が得られ比較例2対比全ての特性が改善されていることが分かる。
粉末ゴムを使用せず、天然ゴム50質量部のうち25質量部を酵素処理天然ゴムに置き換えた参考例1は、粘度、収縮率及び耐摩耗性において比較例1対比さらに優れた結果が得られている。
又、ゴム成分として天然ゴム単独系である実施例2を含むシリーズにおいても上記天然ゴムとSBRの混合系と同様な結果が得られていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のゴム組成物は、加工性や作業性を損ねることなく、高い破壊特性、耐摩耗性を維持し、使用済みタイヤ等のゴム製品のリサイクル化を向上し得る粉末ゴム含有のゴム組成物を得ることができる。を提供することができる。
又、本発明のゴム組成物は、乗用車用、小型トラック用、軽乗用車用、軽トラック用の各種空気入りタイヤのトレッドやその他のタイヤ構成部材として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素処理天然ゴム(A)を5〜100質量部含むゴム成分100質量部に対して、粉末ゴム(B)を0.1〜99質量部含有してなることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
酵素処理天然ゴム(A)が、蛋白質分解酵素もしくは脂肪分解酵素により処理された請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
酵素処理天然ゴム(A)が、蛋白質分解酵素によって、固形分中の総窒素含有量が0.12〜0.3質量%の範囲であるように部分分解することによって脱蛋白処理された請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
粉末ゴム(B)が、60メッシュの篩いを100%通過したものである請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。

【公開番号】特開2008−184506(P2008−184506A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17850(P2007−17850)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】