説明

粉末供給装置

【課題】粉末成形プレス装置を構成するダイのダイキャビティに供給される原料粉末の密度の均一化を図れるようにする。
【解決手段】ダイ3の上面3a側に開口する原料粉末Pの収納空間15を有すると共に、収納空間15がダイキャビティ7に対向する供給位置Aとダイキャビティ7に対向しない退避位置Bとの間で移動可能とされた粉箱11と、粉箱11が供給位置Aに配された状態において、収納空間15とダイキャビティ7とを連通させる連通位置と、収納空間15とダイキャビティ7とを区画する遮断位置との間で移動可能とされた板状のシャッター部材13とを備え、シャッター部材13の遮断位置から連通位置に向かう移動方向を、収納空間15における原料粉末Pの収納量の多い領域側から収納量の少ない領域側に向かう方向に設定した粉末供給装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末成形プレス装置に原料粉末を供給する粉末供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粉末成形プレス装置は、ダイの上面に開口するダイキャビティに充填された原料粉末を圧縮して圧粉成形体を製造するように構成されているが、この粉末成形プレス装置には、ダイキャビティに対して原料粉末を供給する粉末供給装置が取り付けられている。
粉末供給装置は、例えば特許文献1にもあるように、原料粉末を収納可能な粉箱を備えており、粉箱は、ダイキャビティの上部開口に対して進退するように、ダイの上面上において水平移動可能とされている。また、粉箱には下方に開口する下部供給口が形成されており、この下部供給口がダイキャビティの上部開口に重なることで、粉箱内の原料粉末がダイキャビティに落下して供給される。
【0003】
ところで、粉末成形プレス装置においては、所望寸法の圧粉成形体が得られるように、また、圧粉成形体の密度が一定となるように、圧縮前の段階において、キャビティに充填された原料粉末の密度を均一とすることが求められている。
このような要求に対し、従来では、例えば特許文献1のように、粉箱の下部供給口を開閉するシャッター機構を粉箱に設けることで、キャビティにおける原料粉末の密度の均一化を図っている。具体的に説明すれば、この構成の粉末供給装置では、シャッター機構により下部供給口を閉じた状態で、原料粉末を収容した粉箱をダイキャビティの上部開口上まで移動させた後、シャッター機構により下部供給口を開くことで、原料粉末を粉箱からキャビティに均一に落下させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−37219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の粉末供給装置では、ダイに対する粉箱の移動や、粉箱に対する原料粉末の入れ方等によって、粉箱内における原料粉末の収納量の分布に偏りが生じてしまう、という問題がある。例えば、原料粉末を粉箱内に収納した状態で粉箱を移動させた際には、粉箱内の原料粉末に慣性力が作用して、原料粉末の多くが粉箱の移動方向の後方側に相対移動する。その結果として、粉箱内における原料粉末の収納量が、粉箱の移動方向の後方側から前方側に向かうにしたがって少なくなってしまう。
このように、粉箱内における原料粉末の収納量の分布が不均一である状態で、原料粉末を粉箱からダイキャビティに落下させると、ダイキャビティに供給された原料粉末の密度が不均一になってしまう、という問題がある。なお、特許文献1のように、無為無策にシャッター機構による下部供給口の開閉を実施するだけでは、粉箱内における原料粉末の収納量分布の偏りを解消することはできない。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、ダイキャビティに供給される原料粉末の密度の均一化を図ることが可能な粉末供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明の粉末供給装置は、粉末成形プレス装置の金型を構成するダイの上面に開口するダイキャビティに対して原料粉末を供給するものであって、前記ダイの上面側に開口する前記原料粉末の収納空間を有すると共に、前記収納空間が前記ダイキャビティに対向する供給位置と前記ダイキャビティに対向しない退避位置との間で移動可能とされた粉箱と、少なくとも前記粉箱が前記供給位置に配された状態において、前記収納空間と前記ダイキャビティとを連通させる連通位置と、前記収納空間と前記ダイキャビティとを区画する遮断位置との間で移動可能とされた板状のシャッター部材とを備え、前記シャッター部材の前記遮断位置から前記連通位置に向かう移動方向が、前記収納空間における前記原料粉末の収納量の多い領域側から収納量の少ない領域側に向かう方向に設定されていることを特徴とする。
【0008】
この粉末供給装置によれば、粉箱が供給位置に配され、かつ、シャッター部材が遮断位置に配された状態においては、粉箱の収納空間のうちダイの上面側に開口する下方開口部がシャッター部材によって閉塞されるため、粉箱内の原料粉末がシャッター部材上に堆積されることになる。この堆積状態において、収納空間における原料粉末の収納量の多い領域側から少ない領域側に向けてシャッター部材を移動させた際には、粉箱内の原料粉末が、シャッター部材と共に原料粉末の収納量の多い領域側から少ない領域側に移動するため、粉箱内における原料粉末の収納量分布の均一化を図ることができる。
【0009】
また、上述したシャッター部材の移動は、遮断位置から連通位置への移動に一致しているため、前述した原料粉末の収納量の分布の均一化と同時に、粉箱内の原料粉末を粉箱の収納空間からダイキャビティに供給することができる。言い換えれば、原料粉末をダイキャビティに供給する時間的な効率を低下させること無く、粉箱内における原料粉末の収納量分布の偏りを解消することが可能となる。
そして、粉箱内の原料粉末は、その収納量分布の均一化が図られた状態でダイキャビティに供給されるため、ダイキャビティにおける原料粉末の密度(充填密度)の均一化を図ることができる。
【0010】
そして、前記粉末供給装置においては、前記シャッター部材の前記遮断位置から前記連通位置に向かう移動方向を、前記粉箱の前記退避位置から前記供給位置に向かう方向に設定することが好ましい。
【0011】
この粉末供給装置では、粉箱の退避位置から供給位置への移動に基づいて発生する粉箱内の原料粉末の収納量分布の偏りを解消することが可能となる。
具体的に説明すれば、粉箱を退避位置から供給位置に移動させた際には、この移動に伴う慣性力が粉箱内の原料粉末に作用するため、粉箱が供給位置に到達した状態においては、収納空間における原料粉末の収納量が供給位置側から退避位置側に向かうにしたがって多くなる。ここで、シャッター部材が粉箱の退避位置側から供給位置側に向かうように遮断位置から連通位置に移動すると、粉箱内の原料粉末が、シャッター部材と共に粉箱の退避位置側から供給位置側に移動する。すなわち、粉箱内の原料粉末は、その収納量の多い粉箱の退避位置側から収納量の少ない粉箱の供給位置側に移動し、その結果として、粉箱内における原料粉末の収納量分布の均一化を図ることができる。
【0012】
また、前記粉末供給装置においては、前記シャッター部材が、前記ダイの上面側に開口する前記収納空間の下方開口部を開閉するように、前記粉箱に取り付けられ、当該粉箱と共に前記退避位置と前記供給位置との間で移動可能とされていることが好ましい。
【0013】
この粉末供給装置では、粉末成形プレス装置をなすダイに対して、粉箱及びシャッター部材を一括して着脱することができるため、粉末供給装置の取り扱いが容易となる。また、様々な形状のダイに対して同様に着脱できるため、汎用性の高い粉末供給装置を提供することが可能となる。
【0014】
さらに、前記粉末供給装置は、前記収納空間に対して挿抜可能に設けられると共に、前記収納空間に挿入された状態で前記収納空間に収納された原料粉末の振動を抑制する制振板を備えて、当該制振板は、原料粉末を収納した前記粉箱が前記退避位置を離れてから前記供給位置に到達するまでの間に前記収納空間に挿入されるとよい。
【0015】
なお、前記制振板を備える前記粉末供給装置において、前記制振板は、前記収納空間に挿入された状態で前記収納空間に収納された原料粉末の少なくとも一部を前記粉箱の移動方向に分割することが好ましい。
また、前記制振板を備える前記粉末供給装置において、前記制振板は、前記収納空間に挿入された状態で前記収納空間に収納された原料粉末の少なくとも一部を前記原料粉末の厚さ方向に分割してもよい。
【0016】
これらの粉末供給装置では、原料粉末の充填密度の均一化をさらに図ることができる。すなわち、原料粉末を収納した状態で粉箱を移動あるいは停止させる等して粉箱に速度変化を付与した場合には、粉箱内の原料粉末に慣性力が作用して、この原料粉末が粉箱の移動方向に振動したり、スロッシングのように原料粉末の厚さ方向に振動したりする。これに対し、粉箱を退避位置から供給位置に移動させる際に前述した制振板を収納空間に挿入すれば、原料粉末を収納した収納空間の少なくとも一部の長手寸法(粉箱の移動方向に沿う寸法)あるいは深さ寸法(原料粉末の厚さ方向に沿う寸法)が短くなるため、前述した原料粉末の振動を短時間で減衰させることが可能となる。
したがって、粉箱が供給位置に配された状態では、前述した原料粉末の振動が抑制されているため、シャッター部材を開いて粉箱内の原料粉末をダイキャビティに充填する際に、原料粉末の振動に起因する原料粉末の充填密度の不均一化を抑えることができる。
【0017】
また、粉箱における原料粉末の振動を短時間で減衰させることができるため、粉箱を供給位置に停止してからシャッター部材を開くまでの時間を短く設定して、原料粉末を短時間でダイキャビティに供給することも可能となる。
さらに、上記構成では、粉箱が退避位置から離れた後に制振板を収納空間に挿入するため、退避位置においてのみ粉箱の収納空間に原料粉末が供給される場合に、制振板が粉箱に対する原料粉末の供給を妨げることがない。言い換えれば、原料粉末を短時間で粉箱の収納空間に供給することができる。
【0018】
さらに、前記粉末供給装置において、前記制振板は、その内部が中空に形成されると共に、当該制振板の内外を連通する開口孔を有して構成され、前記制振板が前記収納空間に挿入された状態で、前記開口孔から前記収納空間に収納された原料粉末内にエアーが供給されてもよい。
なお、原料粉末内に対するエアーの供給流量は、このエアーの供給によって原料粉末の粒子間に微小な隙間が形成されるものの、原料粉末が粉箱内で流動しないようにすることが好ましい。具体的には、例えばエアーの供給によって原料粉末内に泡のような空気の固まりが生じないように、また、原料粉末が上方に舞い上がらないようにすることが好ましい。
【0019】
この粉末供給装置では、粉箱が供給位置に配された状態で収納空間とダイキャビティとを連通させることで、粉箱内の原料粉末がその自重によって粉箱内からダイキャビティ内に落下する際には、エアーの供給によって形成された原料粉末粒子間の微小な隙間を介して、ダイキャビティ内の空気を効率よくダイキャビティの外側に排出することができる。したがって、粉箱内の原料粉末を短時間でダイキャビティに供給することが可能となる。
【0020】
また、前記粉末供給装置において、前記制振板は、その内部が中空に形成されると共に、当該制振板の内外を連通する開口孔を有して構成され、前記粉箱が前記供給位置に配された状態で前記収納空間と前記ダイキャビティとを連通させた際に、前記ダイキャビティが前記制振板の開口孔及び内部を介して外方に連通されてもよい。
【0021】
この粉末供給装置では、粉箱が供給位置に配された状態で収納空間とダイキャビティとを連通させることで、粉箱内の原料粉末がその自重によって粉箱内からダイキャビティ内に落下する際に、ダイキャビティ内の空気を、制振板の開口孔から制振板の内部を通じてダイキャビティの外側に効率よく排出することができる。したがって、粉箱内の原料粉末を短時間でダイキャビティに供給することが可能となる。なお、ダイキャビティ内の空気は、真空ポンプ等を用いて強制的に排出してもよいが、原料粉末の落下に伴ってダイキャビティ内の空気が圧縮されることを利用して排出することができる。
【0022】
さらに、前記粉末供給装置においては、少なくとも前記粉箱が前記供給位置に配された状態において、前記粉箱の下面との間に前記シャッター部材を挟み込むように配される板状の介在板を備え、前記シャッター部材及び前記介在板には、それぞれ板厚方向に貫通する複数の連通孔が形成され、前記粉箱が前記供給位置に配された状態において、前記シャッター部材は、前記介在板に対し、前記シャッター部材及び前記介在板の連通孔が前記板厚方向に重なることで前記収納空間と前記ダイキャビティとを連通させる前記連通位置と、前記シャッター部材及び前記介在板が互いの連通孔の開口を覆うことで前記収納空間と前記ダイキャビティとを区画する前記遮断位置との間で移動可能とされていてもよい。
【0023】
この粉末供給装置では、シャッター部材及び介在板にそれぞれ複数の連通孔が形成されていることで、シャッター部材を連通位置から遮断位置まで移動させる際に、シャッター部材の連通孔が収納空間の下方開口部と重ならない位置までシャッター部材を移動させる必要がなくなる。すなわち、連通位置と遮断位置との間で移動するシャッター部材の移動長さを短く設定することが可能となる。また、シャッター部材を小さく形成することが可能となり、粉末供給装置の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、粉箱内の原料粉末をダイキャビティに供給する際に、粉箱内における原料粉末の収納量の分布の均一化を図ることができることから、ダイキャビティにおける原料粉末の密度(充填密度)の均一化を図り、粉末成形プレス装置において密度が一定の圧粉成形体を製造することが可能となる。
また、粉箱内における原料粉末の収納量の分布の均一化、及び、ダイキャビティに対する原料粉末の供給が同時に実施されるため、原料粉末をダイキャビティに供給する時間的な効率を低下させること無く、粉箱内における原料粉末の収納量の分布の均一化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態に係る粉末供給装置を粉末成形プレス装置に取り付け、粉箱を退避位置に配した状態を示す概略断面図である。
【図2】図1の粉末供給装置において、粉箱を退避位置から供給位置に移動させた直後の状態を示す概略断面図である。
【図3】図1の粉末供給装置において、供給位置に配された粉箱に対して下側シャッター部材を遮断位置から連通位置に移動させた状態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る粉末供給装置を粉末成形プレス装置に取り付け、粉箱を退避位置に配した状態を示す概略断面図である。
【図5】図4の粉末供給装置を粉箱の供給位置側から退避位置側に向かう方向に見た状態を断面で示すと共に、第二実施形態の粉末供給装置を構成するエアー制御機構を示す図である。
【図6】図4の粉末供給装置において、粉箱を退避位置から供給位置に移動させる途中の状態を示す概略断面図である。
【図7】図6の粉末供給装置を粉箱の供給位置側から退避位置側に向かう方向に見た状態を断面で示すと共に、エアー制御機構を示す図である。
【図8】図4の粉末供給装置において、粉箱が供給位置に到達した直後の状態を示す概略断面図である。
【図9】図4の粉末供給装置において、供給位置に配された粉箱に対して下側シャッター部材を遮断位置から連通位置に移動させた直後の状態を示す概略断面図である。
【図10】図9の粉末供給装置を粉箱の供給位置側から退避位置側に向かう方向に見た状態を断面で示すと共に、エアー制御機構を示す図である。
【図11】第二実施形態の粉末供給装置の一変形例であり、ダイの上面に配された粉箱及び制振板を示す概略断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る粉末供給装置において、供給位置に配された粉箱の周辺を示す概略断面図であり、(a)は下側シャッター部材を遮断位置に配した状態を示し、(b)は下側シャッター部材を遮断位置に配した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第一実施形態〕
以下、図1〜3を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、この実施形態に係る粉末供給装置1は、粉末成形プレス装置2の金型に原料粉末を供給するものである。なお、金型は、ダイ3、下パンチ4及び上パンチ5を備えて構成されており、ダイ3は、厚板状に形成されると共に厚さ方向に貫通する貫通孔6を形成して構成されている。下パンチ4及び上パンチ5は、それぞれダイ3の下面3b側及び上面3a側から貫通孔6に挿入可能とされている。そして、下パンチ4を貫通孔6に挿入することで、貫通孔6及び下パンチ4によってダイ3の上面3aに開口して原料粉末Pを充填するためのダイキャビティ7が画成される。
【0027】
粉末供給装置1は、ダイ3の上面3a上に配されて、原料粉末Pを収納可能な収納空間15を有する粉箱11と、多量の原料粉末Pを貯留し、粉箱11の収納空間15に原料粉末Pを供給するためのホッパー部12と、ダイ3の上面3a側に開口する収納空間15の下方開口部15Bを開閉する板状の下側シャッター部材(シャッター部材)13とを備えて大略構成されている。
【0028】
粉箱11の収納空間15は、粉箱11の厚さ方向に貫通するように形成されており、ダイ3の上面3a側及びダイ3の上方側にそれぞれ開口している。すなわち、収納空間15は、ダイ3の上面3a側に開口する下方開口部15Bと、ダイ3の上方側に開口する上方開口部15Aとを有している。
この粉箱11は、不図示の駆動源により、収納空間15の下方開口部15Bがダイキャビティ7に対向する供給位置A(図2,3に示す位置)と、ダイキャビティ7に対向しない退避位置B(図1に示す位置)との間で、ダイ3の上面3aに沿う一方向(CD方向)に移動可能とされている。
【0029】
ホッパー部12は、ダイ3の上方に配されて多量の原料粉末Pを貯留可能なホッパー本体17と、ホッパー本体17の下端に接続されて、ホッパー本体17内の原料粉末Pを退避位置Bに配された粉箱11の収納空間15まで導く供給管部18とを備えている。
供給管部18の下端開口は、退避位置Bに配された粉箱11の上方開口部15Aに対向するように位置している。また、供給管部18は、ホッパー本体17の下端から下方に向かうにしたがって、退避位置B側から供給位置A側に向かう方向(C方向)に延びるように傾斜している。この構成により、ホッパー本体17内の原料粉末Pは、その自重によって落下するように供給管部18を通ることで、退避位置Bに配された粉箱11の収納空間15に到達することができる。
【0030】
なお、収納空間15の上方開口部15Aが開口する粉箱11の上面には、供給管部18の下端開口を開閉する板状の上側シャッター部材21が固定されている。上側シャッター部材21は、粉箱11上を基点として供給位置A側から退避位置B側に向かう方向(D方向)に延びるように形成されている。
また、上側シャッター部材21には、その厚さ方向に貫通して収納空間15を上方開口部15A側から外方に露出させる貫通孔22が形成されており、粉箱11が退避位置Bに配された状態では、収納空間15の上方開口部15Aがこの貫通孔22を介して供給管部18の下端開口に通じるようになっている。
【0031】
さらに、供給管部18はその長手方向に伸縮可能に形成されており、供給管部18の下端部がバネ等の付勢手段(不図示)によって上側シャッター部材21の上面に向けて押さえつけられている。これにより、上側シャッター部材21の上面が粉箱11のCD方向への移動に関わらず供給管部18の下端開口に密着し、粉箱11が退避位置Bから離れて位置する状態(例えば図2,3に示す状態)では、供給管部18の下端開口が上側シャッター部材21によって閉塞される。すなわち、この構成では、粉箱11が退避位置Bとこの退避位置Bから離間した位置との間で移動することで、上側シャッター部材21によって供給管部18の下端開口を開閉することができる。
【0032】
下側シャッター部材13には、その板厚方向に貫通する連通孔23が形成されている。なお、連通孔23は、図示例のように一つだけ形成されてもよいが、例えば複数形成されてもよい。
この下側シャッター部材13は、粉箱11の下面とダイ3の上面3aとの間に挟み込まれるように配されている。さらに、下側シャッター部材13は、エアシリンダ25を利用した空気圧式のアクチュエータを駆動源として、粉箱11及びダイ3に対し、連通孔23が収納空間15の下方開口部15Bと重なる開放位置(例えば図3に示す位置)と、粉箱11の収納空間15の下方開口部15Bを閉塞する閉塞位置(例えば図1,2に示す位置)との間で移動可能とされている。なお、下側シャッター部材13の閉塞位置から開放位置に向かう移動方向は、粉箱11の退避位置Bから供給位置Aに向かう方向(C方向)に設定されている。
【0033】
ここで、前述したエアシリンダ25のシリンダ部26は、上側シャッター部材21に固定され、エアシリンダ25のピストン部27は下側シャッター部材13に固定されている。すなわち、下側シャッター部材13は、エアシリンダ25及び上側シャッター部材21を介して粉箱11に取り付けられており、これによって、粉箱11と共に供給位置Aと退避位置Bとの間で移動可能とされている。
【0034】
そして、粉箱11に対する下側シャッター部材13の移動は、図2,3に示すように、粉箱11の収納空間15とダイ3のダイキャビティ7とが対向する供給位置Aに粉箱11を配した状態において行われる。したがって、粉箱11を供給位置Aに配した状態においては、図3に示すように、下側シャッター部材13が前述した開放位置に配されることが、連通孔23を介して収納空間15とダイキャビティ7とを連通させる位置(連通位置)に配されることに相当する。また、図2に示すように、下側シャッター部材13が閉塞位置に配されることが、収納空間15とダイキャビティ7とを区画する位置(遮断位置)に配されることに相当する。
【0035】
次に、上記構成の粉末供給装置1により、原料粉末Pをダイキャビティ7に供給する粉末供給方法について図1〜3を参照して説明する。
原料粉末Pをダイキャビティ7に供給する場合には、はじめに、図1に示すように、粉箱11を退避位置Bに配し、収納空間15の上方開口部15Aと供給管部18の下端開口とを連通させることで、ホッパー部12内の原料粉末Pを粉箱11の収納空間15に供給する。この際、下側シャッター部材13は、収納空間15の下方開口部15Bを閉塞する閉塞位置に配されているため、粉箱11内の原料粉末Pは、下側シャッター部材13上に堆積されることになる。
【0036】
次いで、図2に示すように、粉箱11を退避位置Bから供給位置AまでC方向に移動させる。この際、下側シャッター部材13は、粉箱11と共に移動し、粉箱11に対して移動することはない。したがって、粉箱11が供給位置Aに到達した状態でも、収納空間15の下方開口部15Bは下側シャッター部材13によって閉塞されている。また、粉箱11が退避位置Bから離間することで、供給管部18の下端開口が上側シャッター部材21によって閉塞される。
【0037】
そして、粉箱11が退避位置Bから供給位置Aに移動する際には、この移動に伴う慣性力が粉箱11内の原料粉末Pに作用するため、粉箱11が供給位置Aに到達した状態においては、収納空間15のうち、供給位置A側の領域が原料粉末Pの収納量の少ない領域となり、退避位置B側の領域が原料粉末Pの収納量の多い領域となる。
【0038】
その後、図3に示すように、エアシリンダ25の駆動力により下側シャッター部材13を遮断位置(閉塞位置)から連通位置(開放位置)までC方向に移動させる。この移動の際には、下側シャッター部材13上に堆積された粉箱11内の原料粉末Pが、下側シャッター部材13と共にC方向に移動する、言い換えれば、収納量の多い領域側から収納量の少ない領域側に移動する。これにより、粉箱11の退避位置Bから供給位置Aへの移動に基づいて発生する粉箱11内の原料粉末Pの収納量分布の偏りを解消することができる。
また、下側シャッター部材13が遮断位置から連通位置に移動することで、原料粉末Pがその自重に基づいて収納空間15から落下し、ダイキャビティ7に供給される。すなわち、粉箱11内における原料粉末Pの収納量分布の偏りを解消すると同時に、原料粉末Pをダイキャビティ7に供給することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る粉末供給装置1によれば、下側シャッター部材13を遮断位置から連通位置に移動させることで、粉箱11内の原料粉末Pが、その収納量の多い領域側から収納量の少ない領域側に移動するため、粉箱11内における原料粉末Pの収納量分布の均一化を図り、ダイキャビティ7における原料粉末Pの密度(以下、原料粉末Pの充填密度と呼ぶ。)の均一化を図ることができる。そして、粉末成形プレス装置2において密度が一定の圧粉成形体を製造することが可能となる。
また、粉箱11内における原料粉末Pの収納量分布の均一化、及び、ダイキャビティ7に対する原料粉末Pの供給が同時に実施されるため、原料粉末Pをダイキャビティ7に供給する時間的な効率を低下させること無く、粉箱11内における原料粉末Pの収納量の分布の均一化を図ることが可能となる。
【0040】
さらに、この粉末供給装置1では、下側シャッター部材13が粉箱11に取り付けられていることで、粉末成形プレス装置2のダイ3に対して、粉箱11及び下側シャッター部材13を一括して着脱することができ、粉末供給装置1の取り扱いが容易となる。また、様々な形状のダイ3に対して同様に着脱できるため、汎用性の高い粉末供給装置1を提供することが可能となる。
【0041】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について図4〜10を参照して説明する。なお、ここでは、第一実施形態との相違点のみについて説明し、第一実施形態の粉末供給装置1と同一の構成要素については同一符号を付す等して、その説明を省略する。
図4,5に示すように、この実施形態に係る粉末供給装置31は、第一実施形態の粉末供給装置1の構成に加えて、制振板32及びエアー制御機構34を新たに設けたものである。
【0042】
制振板32は、図4〜7に示すように、平板状に形成されて、粉箱11と共に供給位置Aと退避位置Bとの間でCD方向に移動可能とされると共に、粉箱11の収納空間15に対して挿抜可能とされている。より詳細に説明すれば、制振板32は、粉箱11の両側部からダイ3の両側部まで延びる一対のアーム部35、各アーム部35に対してダイ3の上面3aから粉箱11の上方まで突出するように設けられた一対の昇降用エアシリンダ36、及び、一対の昇降用エアシリンダ36の上端にかけ渡された棒状の支持部37を介して、粉箱11に取り付けられている。なお、本実施形態において、支持部37は粉箱11の上方に位置し、制振板32は支持部37に対して吊下げられるようにして支持部37と一体に形成されている。
以上のように構成されていることで、制振板32は、粉箱11と共にCD方向に移動可能となっている。また、制振板32は、昇降用エアシリンダ36を利用した空気圧式のアクチュエータを駆動源として、粉箱11に対してその上下方向に移動可能となっている。これにより、制振板32は、上側シャッター部材21の貫通孔22を通じて上方開口部15A側から収納空間15の内外に挿抜可能となっている。
【0043】
そして、この制振板32は、その板厚方向が粉箱11の移動方向(CD方向)に沿うように配され、図6,7に示すように収納空間15に挿入された状態では、粉箱11内の原料粉末Pを粉箱11の移動方向に分割する役割を果たす。
なお、図6,7においては、制振板32を収納空間15に挿入した状態で、原料粉末Pの一部のみがCD方向に分割されているが、例えば粉箱11内の原料粉末PがCD方向に完全に分割されてもよい。言い換えれば、図示例では、収納空間15の幅方向の一部(中央部分)のみが制振板32によってCD方向に分割され、収納空間15の幅方向の残部(両端部分)は分割されていないが、例えば収納空間15が制振板32によって完全にCD方向に分割されても構わない。
【0044】
この制振板32は、原料粉末Pを収納した粉箱11が退避位置Bを離れてから供給位置Aに到達するまでの間に収納空間15に挿入されるように設定されている。
具体的に説明すれば、図4,5に示すように、粉箱11が退避位置Bに配された状態では、粉箱11の上方開口部15Aがホッパー部12によって閉塞されているため、制振板32がホッパー部12に干渉しないように、粉箱11の上方に離れて位置している。そして、図6,7に示すように、制振板32は、原料粉末Pを収納した粉箱11が退避位置Bから離れた後、退避位置Bと供給位置Aとの間に位置している間に収納空間15に挿入される。なお、図8〜10に示すように、粉箱11が供給位置Aに到達して停止した状態では、制振板32が収納空間15に挿入されたままとなっている。
【0045】
エアー制御機構34は、前述した制振板32及び支持部37に加え、エアー供給源38(例えばコンプレッサやボンベ等)、減圧弁39(例えばリリーフ付減圧弁等)、方向制御弁40、消音器41等によって構成されるものである。
具体的に説明すれば、制振板32及び支持部37は、その内部が中空に形成され、これらの内部空間同士が互いに連通している。また、粉箱11の収納空間15に対して挿抜される制振板32の下端部分には、その内外を連通する開口孔33が形成されている。そして、制振板32の内部は、方向制御弁40の設定位置に応じて、エアー供給源38あるいは消音器41のいずれか一方に接続されるようになっている。例えば、方向制御弁40が図5,10に示す位置に設定されている状態では、制振板32の内部が、支持部37内部、方向制御弁40及び消音器41を介して外方に連通される。一方、方向制御弁40が図7に示す位置に設定されている状態では、制振板32の内部が、支持部37内部、方向制御弁40、減圧弁39を介してエアー供給源38に接続される。
なお、方向制御弁40と減圧弁39との間の配管には、圧力計42が設けられており、制振板32内部とエアー供給源38とが接続された状態で、エアー供給源38から制振板32内部に供給されるエアーの圧力を計測できるようになっている。
【0046】
そして、本実施形態の粉末供給装置31では、この方向制御弁40の位置が、粉箱11及び制振板32の移動、あるいは、下側シャッター部材13の移動に連動して制御されるようになっている。
すなわち、図6,7に示すように原料粉末Pを収納した粉箱11の収納空間15に制振板32が挿入された後から、図9,10に示すように下側シャッター部材13が遮断位置から連通位置に移動するまでの間は、制振板32の内部とエアー供給源38との接続状態が維持されるように、方向制御弁40の位置が制御される。一方、図4,5に示すように制振板32が収納空間15の外側に配置されている状態、あるいは、図9,10に示すように下側シャッター部材13が連通位置に配された状態では、制振板32の内部が消音器41を通じて外方に連通されるように、方向制御弁40の位置が制御される。
【0047】
次に、上記構成の粉末供給装置31により、原料粉末Pをダイキャビティ7に供給する粉末供給方法について図4〜10を参照して説明する。
原料粉末Pをダイキャビティ7に供給する際には、はじめに、第一実施形態の場合と同様に、図4,5に示すように、粉箱11を退避位置Bに配してホッパー部12内の原料粉末Pを粉箱11の収納空間15に供給する。この状態においては、制振板32が収納空間15の外側に配置されると共に、制振板32の内部が消音器41を通じて外方に連通されている。
【0048】
次いで、図6,7に示すように、原料粉末Pを収納した粉箱11を退避位置Bから供給位置Aに向けてC方向に移動させる。さらに、この粉箱11の移動に連動するように、退避位置Bから離れて退避位置Bと供給位置Aとの間に位置する粉箱11の収納空間15に対して制振板32を挿入する。なお、この挿入後の状態では、制振板32の下端部分が、下側シャッター部材13の上面に接触していてもよいが、下側シャッター部材13との間に隙間ができるように配されてもよい。
【0049】
そして、制振板32を収納空間15に挿入した直後には、方向制御弁40の位置を切り換えて制振板32の内部をエアー供給源38に接続し、エアー供給源38の高圧のエアーを制振板32の開口孔33から収納空間15に収納された原料粉末P内に供給する。なお、原料粉末P内に対するエアーの供給流量は、このエアーの供給によって原料粉末Pの粒子間に微小な隙間が形成されるものの、原料粉末Pが粉箱11内で流動しないようにすることが好ましい。具体的には、例えばエアーの供給によって原料粉末P内に泡のような空気の固まりが生じないように、また、原料粉末Pが上方に舞い上がらないようにエアーの供給流量を調整することが好ましい。
【0050】
その後、図8に示すように、粉箱11を供給位置Aにおいて停止させ、さらに、図9,10に示すように、下側シャッター部材13を遮断位置から連通位置までC方向に移動させて、収納空間15とダイキャビティ7とを連通させる。これにより、原料粉末Pがその自重に基づいて収納空間15から落下し、ダイキャビティ7に供給される。
なお、収納空間15とダイキャビティ7とを連通させた際には、方向制御弁40の位置を切り換えて、制振板32内部を外方に連通させる。なお、この方向制御弁40の切り換えは、例えば下側シャッター部材13を遮断位置から連通位置に移動させると同時に行ってもよいし、下側シャッター部材13が連通位置に停止すると同時に行ってもよい。これにより、ダイキャビティ7が制振板32の開口孔33及び内部を介して外方に連通されることになる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る粉末供給装置31によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
すなわち、本実施形態の粉末供給装置31においても、少なくとも制振板32が収納空間15に挿入されるまでの間は、粉箱11の退避位置Bから供給位置Aへの移動に伴う慣性力が粉箱11内の原料粉末Pに作用し、収納空間15における原料粉末Pの収納量が供給位置A側から退避位置B側に向かうにしたがって多くなる傾向となる。このことに対し、本実施形態の粉末供給装置31では、第一実施形態と同様に、原料粉末Pをダイキャビティ7に供給する際に下側シャッター部材13を遮断位置から連通位置までC方向に移動させるため、粉箱11の退避位置Bから供給位置Aへの移動に基づいて発生する粉箱11内の原料粉末Pの収納量分布の偏りを解消することができる。
【0052】
また、粉箱11の退避位置Bから供給位置Aへの移動に伴う慣性力が粉箱11内の原料粉末Pに作用すると、この原料粉末Pが粉箱11の移動方向(CD方向)に振動することがある。このことに対し、本実施形態の粉末供給装置31では、制振板32を収納空間15に挿入して収納空間15内の原料粉末Pの少なくとも一部を粉箱11の移動方向に分割することで、収納空間15の少なくとも一部の長手寸法(粉箱11の移動方向に沿う寸法)が短くなるため、制振板32を挿入しない場合と比較して、前述した原料粉末Pの振動を短時間で減衰させることが可能となる。
【0053】
したがって、粉箱11が供給位置Aに配された状態では、前述した原料粉末Pの振動が抑制されているため、下側シャッター部材13を開いて粉箱11内の原料粉末Pをダイキャビティ7に充填する際に、原料粉末Pの振動に起因する原料粉末Pの充填密度の不均一化を抑えることができる。すなわち、本実施形態の粉末供給装置31では、第一実施形態の構成と比較して、ダイキャビティ7における原料粉末Pの充填密度の均一化をさらに図ることができる。
また、粉箱11における原料粉末Pの振動を短時間で減衰させることができるため、粉箱11を供給位置Aに停止させてから下側シャッター部材13を開くまでの時間を短く設定して、原料粉末Pを短時間でダイキャビティ7に供給することも可能となる。
【0054】
さらに、本実施形態の粉末供給装置31によれば、粉箱11が退避位置Bから離れた後に制振板32を収納空間15に挿入するため、制振板32が、退避位置Bにおける粉箱11の収納空間15への原料粉末Pの供給を妨げることがない。すなわち、ホッパー部12の原料粉末Pを短時間で収納空間15に供給することが可能となる。
また、本実施形態の粉末供給装置31によれば、下側シャッター部材13を開いて収納空間15とダイキャビティ7とを連通させるまでの間に、粉箱11に収納された原料粉末P内にエアーを供給しているため、粉箱11内の原料粉末Pがその自重によって粉箱11内からダイキャビティ7内に落下する際には、エアーの供給によって形成された原料粉末Pの粒子間の微小な隙間を介して、ダイキャビティ7内の空気を効率よくダイキャビティ7の外側に排出することができる。
【0055】
さらに、下側シャッター部材13を開いて収納空間15とダイキャビティ7とを連通させた際には、ダイキャビティ7を制振板32の開口孔33及び内部を介して外方に連通させるため、原料粉末Pがその自重によって粉箱11内からダイキャビティ7内に落下する際には、ダイキャビティ7内の空気を、制振板32の開口孔33から制振板32の内部を通じてダイキャビティ7の外側に効率よく排出することができる。なお、このダイキャビティ7内の空気の排出は、原料粉末Pの落下に伴ってダイキャビティ7内の空気が圧縮されることを利用している。
以上のことから、粉箱11内の原料粉末Pをさらに短時間でダイキャビティ7に供給することが可能となる。
【0056】
なお、第二実施形態において、収納空間15に挿入された制振板32は、粉箱11内の原料粉末Pの少なくとも一部を粉箱11の移動方向に分割するように配されることに限らず、少なくとも収納空間15に収納された原料粉末Pの振動を抑制するように配されていればよい。したがって、例えば図11に示すように、収納空間15に挿入された制振板43が、収納空間15に収納された原料粉末Pの少なくとも一部を、この原料粉末Pの厚さ方向(粉箱11の上下方向)に分割するように配されてもよい。なお、この構成では、例えば制振板43を粉箱11に対してその幅方向に移動させるように設けることで、収納空間15に対して挿抜することが可能である。
【0057】
上記構成によれば、粉箱11の退避位置Bから供給位置Aへの移動に伴う慣性力によって、粉箱11内の原料粉末Pがスロッシングのように原料粉末Pの厚さ方向に振動しても、制振板43の挿入によって収納空間15の深さ寸法(粉箱11の上下方向に沿う寸法)が短くなるため、この原料粉末Pの振動を短時間で減衰させることが可能となる。したがって、第二実施形態の場合と同様に、下側シャッター部材13を開いて粉箱11内の原料粉末Pをダイキャビティ7に充填する際に、原料粉末Pの振動に起因する原料粉末Pの充填密度の不均一化を抑えることができる。
【0058】
さらに、エアー制御機構34は、粉箱11内の原料粉末P内にエアーを供給する役割、及び、ダイキャビティ7内の空気を外方に排出する役割を果たしているが、例えばこれらの一方のみの役割を果たしても構わない。
また、制振板32,43は、少なくとも粉箱11内の原料粉末Pの振動を抑制する役割さえ果たしていればよく、制振板32,43及び支持部37は、例えば中空に形成されていなくてもよい。
【0059】
さらに、制振板32,43は、一つだけ備えることに限らず、例えば複数備えていてもよい。なお、複数の制振板32,43は、少なくとも互いに間隔をあけて配されていればよく、例えば、粉箱11の移動方向や上下方向に三つ以上分割するように配置されてもよいし、粉箱11の移動方向や上下方向に千鳥状に配置されてもよい。
また、制振板32,43は平板状に形成されることに限らず、振動を抑制する任意の形状に形成されていてよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0061】
例えば、粉箱11を供給位置Aに配した状態で下側シャッター部材13を遮断位置から連通位置に移動させる方向は、粉箱11の退避位置Bから供給位置Aに向かう方向(C方向)に設定されるとしたが、少なくとも供給位置Aに配された粉箱11の収納空間15における原料粉末Pの収納量の多い領域側から収納量の少ない領域側に向かう方向に設定されていればよい。
したがって、退避位置Bから供給位置Aに移動された粉箱11の収納空間15における原料粉末Pの収納量の分布が、例えば上記実施形態とは逆に、退避位置B側から供給位置A側に向かうにしたがって増えている場合には、遮断位置から連通位置に向かう下側シャッター部材13の移動方向を、粉箱11の供給位置Aから退避位置Bに向かう方向(D方向)に設定すればよい。
【0062】
また、下側シャッター部材13は、粉箱11に取り付けられて粉箱11と共に退避位置Bと供給位置Aとの間を移動するとしたが、少なくとも粉箱11が供給位置Aに配された状態において、収納空間15とダイキャビティ7とを連通させる連通位置と、収納空間15とダイキャビティ7とを区画する遮断位置との間で移動可能に設けられていればよい。したがって、下側シャッター部材13は、例えばダイ3の上面3aに開口するダイキャビティ7の開口部分を開閉するように、ダイ3に取り付けられていてもよい。
【0063】
さらに、下側シャッター部材13には連通孔23が形成されるとしたが、下側シャッター部材13は少なくとも収納空間15とダイキャビティ7とを連通させる連通位置と、収納空間15とダイキャビティ7とを区画する遮断位置との間で移動可能であればよいため、例えば、連通孔23を形成せずに、下側シャッター部材13自体をダイキャビティ7と収納空間15との間から退けた位置と、ダイキャビティ7と収納空間15との間に配した位置との間で移動させてもよい。
【0064】
また、下側シャッター部材13を連通位置と遮断位置との間で移動させる駆動源は、上記実施形態のようにエアシリンダ25を利用した空気圧式のアクチュエータに限らず、空気圧式、油圧式、機械式等のアクチュエータのいずれか一つ、あるいは、これらを適宜組み合わせたものであってもよい。
さらに、上記実施形態では、原料粉末Pをホッパー部12から粉箱11に供給する方式として、粉箱11が移動することにより原料粉末Pを粉箱11に対して断続的に供給するシャッターフィーダ(シャトルフィーダ)方式を採用しているが、例えば、粉箱11の移動に関わらず、粉箱11とホッパー部12の供給管部18との接続状態を保持し、原料粉末Pを粉箱11に対して継続的に供給する方式であってもよい。
【0065】
また、粉箱11の収納空間15とダイ3のダイキャビティ7との連通/遮断の切り換えは、一枚の下側シャッター部材13のみで行われることに限らず、例えば図12に示すように、板厚方向に貫通する複数の連通孔52,54が形成された板状の下側シャッター部材(シャッター部材)51及び介在板53を板厚方向に重ねた構成によって実施されてもよい。
【0066】
この構成では、粉箱11が供給位置Aに配された状態において、下側シャッター部材51が粉箱11の下面と介在板53との間に挟み込まれるように、下側シャッター部材51の下側に介在板53が配されている。また、この状態において、下側シャッター部材51は、図12(b)に示すように、下側シャッター部材51及び介在板53の連通孔52,54が板厚方向に重なることで収納空間15とダイキャビティ7とを連通する連通位置と、図12(a)に示すように、下側シャッター部材51及び介在板53が互いの連通孔52,54の開口を覆うことで収納空間15とダイキャビティ7とを区画する遮断位置との間で、移動可能とされている。
【0067】
なお、これら下側シャッター部材51及び介在板53は、両方共に粉箱11あるいはダイ3のいずれかに取り付けられてもよいが、少なくとも粉箱11が供給位置Aに配された状態において、収納空間15とダイキャビティ7との連通/遮断が切り換えられればよいため、例えば下側シャッター部材51を粉箱11の下面に取り付け、介在板53をダイキャビティ7の開口部分に取り付けてもよい。
【0068】
このような構成であっても、上記実施形態の場合と同様に、粉箱11内の原料粉末Pが下側シャッター部材51上に堆積されるため、下側シャッター部材51を遮断位置から連通位置に移動させることで、下側シャッター部材51の移動に基づく慣性力が粉箱11内の原料粉末Pに作用し、この原料粉末Pをその収納量の多い領域側から少ない領域側に移動させることができる。したがって、粉箱11内における原料粉末Pの収納量分布の均一化を図ることができる。
【0069】
また、この構成では、下側シャッター部材51及び介在板53にそれぞれ複数の連通孔52,54が形成されていることで、下側シャッター部材51を連通位置から遮断位置まで移動させる際に、上記実施形態のように、下側シャッター部材51の連通孔52が収納空間15の下方開口部15Bと重ならない位置まで下側シャッター部材51を移動させる必要がなくなる。すなわち、連通位置と遮断位置との間で移動する下側シャッター部材51の移動長さを短く設定することが可能となる。また、下側シャッター部材51を小さく形成することが可能となり、粉末供給装置の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0070】
1,31 粉末供給装置
2 粉末成形プレス装置
3 ダイ
7 ダイキャビティ
11 粉箱
13 下側シャッター部材(シャッター部材)
15 収納空間
15B 下方開口部
32,43 制振板
33 開口孔
34 エアー制御機構
37 支持部
38 エアー供給源
40 方向制御弁
41 消音器
51 下側シャッター部材(シャッター部材)
52 連通孔
53 介在板
54 連通孔
A 供給位置
B 退避位置
P 原料粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末成形プレス装置の金型を構成するダイの上面に開口するダイキャビティに対して原料粉末を供給する粉末供給装置であって、
前記ダイの上面側に開口する前記原料粉末の収納空間を有すると共に、前記収納空間が前記ダイキャビティに対向する供給位置と前記ダイキャビティに対向しない退避位置との間で移動可能とされた粉箱と、
少なくとも前記粉箱が前記供給位置に配された状態において、前記収納空間と前記ダイキャビティとを連通させる連通位置と、前記収納空間と前記ダイキャビティとを区画する遮断位置との間で移動可能とされた板状のシャッター部材とを備え、
前記シャッター部材の前記遮断位置から前記連通位置に向かう移動方向が、前記収納空間における前記原料粉末の収納量の多い領域側から収納量の少ない領域側に向かう方向に設定されていることを特徴とする粉末供給装置。
【請求項2】
前記シャッター部材の前記遮断位置から前記連通位置に向かう移動方向が、前記粉箱の前記退避位置から前記供給位置に向かう方向に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の粉末供給装置。
【請求項3】
前記シャッター部材が、前記ダイの上面側に開口する前記収納空間の下方開口部を開閉するように、前記粉箱に取り付けられ、当該粉箱と共に前記退避位置と前記供給位置との間で移動可能とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉末供給装置。
【請求項4】
前記収納空間に対して挿抜可能に設けられると共に、前記収納空間に挿入された状態で前記収納空間に収納された原料粉末の振動を抑制する制振板を備え、
当該制振板は、原料粉末を収納した前記粉箱が前記退避位置を離れてから前記供給位置に到達するまでの間に前記収納空間に挿入されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の粉末供給装置。
【請求項5】
前記制振板は、前記収納空間に挿入された状態で前記収納空間に収納された原料粉末の少なくとも一部を前記粉箱の移動方向に分割することを特徴とする請求項4に記載の粉末供給装置。
【請求項6】
前記制振板は、前記収納空間に挿入された状態で前記収納空間に収納された原料粉末の少なくとも一部を前記原料粉末の厚さ方向に分割することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の粉末供給装置。
【請求項7】
前記制振板は、その内部が中空に形成されると共に、当該制振板の内外を連通する開口孔を有して構成され、
前記制振板が前記収納空間に挿入された状態で、前記開口孔から前記収納空間に収納された原料粉末内にエアーが供給されることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の粉末供給装置。
【請求項8】
前記制振板は、その内部が中空に形成されると共に、当該制振板の内外を連通する開口孔を有して構成され、
前記粉箱が前記供給位置に配された状態で前記収納空間と前記ダイキャビティとを連通させた際に、前記ダイキャビティが前記制振板の開口孔及び内部を介して外方に連通することを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の粉末供給装置。
【請求項9】
少なくとも前記粉箱が前記供給位置に配された状態において、前記粉箱の下面との間に前記シャッター部材を挟み込むように配される板状の介在板を備え、
前記シャッター部材及び前記介在板には、それぞれ板厚方向に貫通する複数の連通孔が形成され、
前記粉箱が前記供給位置に配された状態において、前記シャッター部材は、前記介在板に対し、前記シャッター部材及び前記介在板の連通孔が前記板厚方向に重なることで前記収納空間と前記ダイキャビティとを連通させる前記連通位置と、前記シャッター部材及び前記介在板が互いの連通孔の開口を覆うことで前記収納空間と前記ダイキャビティとを区画する前記遮断位置との間で移動可能とされていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の粉末供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−245545(P2012−245545A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119237(P2011−119237)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)