説明

粉末化基材及び粉末組成物の製造方法

【課題】油脂を粉末化することは食品、洗剤、入浴剤、化粧品、農薬、医薬等などの様々な分野への利用を可能とする。従来の粉末油脂組成物は、油状物質の劣化や油状物質含有量に劣るなどの問題点があった。
【解決手段】高分岐環状デキストリンを5〜60質量%含有する水懸濁液をドラムドライヤーまたは凍結乾燥機にて乾燥させて得られること特徴とする粉末化基材および該粉末化基材を油状物質を添加した粉末油脂組成物の製造法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油状物質の粉末化基材およびそれを原料とした粉末組成物の製造法に関する。油脂や脂溶性ビタミン、脂溶性の薬剤などの油状物質は食品、洗剤、入浴剤、化粧品、農薬、医薬等などの様々な分野で利用されている。
【0002】
本発明は、作業性や保存性、嗜好性の向上のため、油状物質を粉末、顆粒、錠剤などの固形分とする技術に関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、澱粉加水分解物の水溶液をドラムドライヤーにて乾燥して得られる粉末が、油状物質や液状物質の粉末化用基材として利用されている。
【0004】
例えば、引用文献1には、DE5〜15の澱粉分解物の水溶液に、可溶性澱粉やポリオールを添加しドラムドライヤーで乾燥し、32メッシュ〜145メッシュの区分が全体の50%以上を占めることを特徴とした粉末を粉末化基材として利用することが開示されている。
【0005】
また、本発明の高分岐環状デキストリンは引用文献2に製造法が記載され、引用文献3に粉末油脂の技術が記載されている。
【0006】
引用文献3は高分岐環状デキストリン、脂肪酸エステルおよび水を混合して粉末状油脂用液体組成物を得る工程、及び該組成物をスプレードライ等にて乾燥する工程にて粉末油脂を製造する技術である。
【特許文献1】特開平8−143603
【特許文献2】特開平8−134104
【特許文献3】特開2003−49189
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1の物質は、水への分散性は優れているものの、可溶性澱粉やポリオールを添加するために味質が好ましくなく、商品の味に影響を与えるという問題がある。また、油状物質の吸収量も十分とは言い難いものであった。
【0008】
引用文献3は、スプレードライ等の乾燥工程による脂肪酸エステルの酸化による劣化や作業工程が煩雑であるなどの問題点を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、高度分岐環状デキストリンを5〜60質量%含有する水懸濁液をドラムドライヤーまたは凍結乾燥機にて乾燥させて得られること特徴とする粉末化基材と該粉末化基材に油状物質を添加することにより解決することを見出した。
【発明の効果】
【0010】
該粉末化基材に油状物質を添加した粉末組成物は、味質に影響を与えない、油状物質含有量に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いられる高分岐環状デキストリンは、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有し、重合度が50以上であるものである。
【0012】
なお、上記内分岐環状構造部分とは、複数個のグルコースがα−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とで連結された環状構造部分を意味し、上記外分岐構造部分とは、この内分岐環状構造部分に結合した複数個のグルコースからなる非環状構造部分を意味する。
【0013】
すなわち、本発明で用いられる高度分岐環状デキストリンとは、少なくとも一つのα−1,6−グルコシド結合を有する環状グルカン(内分岐環状構造部分)に、枝状のグルカン(外分岐構造部分)が、α−1,4−又はα−1,6−グルコシド結合を介して連結したものであって、全体の重合度が50以上のものを意味する。このようなグルカンは、α−1,4−グルコシド結合及びα−1,6−グルコシド結合を有する糖質に、糖転移酵素を作用させることで得ることができる。
【0014】
本明細書における油状物質は、液状で水と混じり合わない、或いは水に溶解しにくい物質であり、サラダ油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、コメ油等のように常温で液体状、或いはパーム油、パーム核油、カカオ脂、牛脂肪、豚脂等のように加熱して溶融すると液状になる油脂類、農薬や医薬の主剤、キシレン等の有機溶剤、糖脂質、ステロール類、スフィンゴ脂質、脂溶性の補酵素やビタミン、油性色素や香料等が例示される。
【0015】
本発明の粉末化基材は、乾燥後にそのまま使用することができるが、粉砕した後に使用することが望ましい。
【0016】
粉砕の度合いに格段の制限はないが、32から145メッシュの区分が50質量%以上を占める粒度分布を示すことが好ましい。32メッシュ以上の区分が多いと、油状物質の吸収量は多くなるが、製品の嵩が大き過ぎる為に包装資材や流通面でのコストアップに繋がる。また、145メッシュ以下の区分が多いと、油状物質の吸収量が少なくなるという問題が生じる。
【0017】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが,本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
高分岐環状デキストリンの10%(w/w)水溶液を調製し、凍結乾燥機にて乾燥させた。乾燥後のサンプルをミキサーにて1分間粉砕し、最大吸油量の測定試験に供した。
【0019】
最大吸油量の測定試験はサンプル1gに植物油を少量ずつ攪拌しながら滴下し、ペースト状になった時点を最大吸油量とした。
【0020】
(比較例1)
各種デキストリンの10%(w/w)水溶液を調製し、凍結乾燥機にて乾燥させた。乾燥後のサンプルをミキサーにて1分間粉砕し、最大吸油量測定試験に供した。
【0021】
実施例1、比較例1で調製したサンプル及び市販の高吸油性デキストリン(製品名;パインフロー/松谷化学社製)について最大吸油量を測定した結果を表1に示した。
【表1】

【実施例2】
【0022】
高分岐環状デキストリンの40%(w/w)水溶液を調製し、ドラムドライヤー(105℃)にて乾燥させた。乾燥後のサンプルをミキサーにて粉砕し、篩を用いて粒度別にサンプルを分類した後、最大吸油量測定試験に供した。
【0023】
(比較例2)
各種デキストリンの40%(w/w)水溶液を調製し、ドラムドライヤー(105℃)にて乾燥させた。乾燥後のサンプルをミキサーにて粉砕し、篩を用いて粒度別にサンプルを分類した後、最大吸油量測定試験に供した。
【0024】
実施例2、比較例2で調製したサンプル及び市販の高吸油性デキストリン(製品名;パインフロー/松谷化学社製)について最大吸油量を測定した結果を表2に示した。最大吸油量は、実施例1と同様の方法にて測定した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分岐環状デキストリンを5〜60質量%含有する水懸濁液をドラムドライヤーまたは凍結乾燥機にて乾燥させて得られること特徴とする粉末化基材。
【請求項2】
32メッシュ〜145メッシュの区分が全体の50%以上であることを特徴とする請求項1記載の粉末化基材。
【請求項3】
該粉末化基材に油状物質を添加することを特徴とする請求項1〜2記載の粉末組成物の製造方法。

【公開番号】特開2007−238824(P2007−238824A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64971(P2006−64971)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000231453)日本食品化工株式会社 (68)
【Fターム(参考)】