説明

粉末化粧料

【課題】 凹凸補正効果が高く、しかも仕上がりの透明感にも優れる粉末化粧料を提供する。
【解決手段】 粉末成分と、油性成分と、を含有する粉末化粧料であって、粉末成分として、平均粒径が0.2〜0.4μmで、平均摩擦係数(MIU値)が0.4〜0.6であるルチル型酸化チタン凝集粒子を化粧料中1〜20質量%含有し、油性成分を化粧料中3〜20質量%含有し、粉末成分と油性成分との混合が、複数の翼を設けた第1回転翼及び第2回転翼を、略水平方向の同一軸線上にそれぞれ個別の回転軸を有するように対向した状態で混合室内に配置し、第1回転翼側の投入口から原料を供給するとともに、該第1回転翼及び第2回転翼を互いに反対方向に回転させることにより原料を混合し、第2回転翼側の排出口から混合された原料を排出する回転翼対向型混合装置により行われたものであることを特徴とする粉末化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末化粧料、特に凹凸補正効果と透明感に優れる粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、毛穴や小じわなど肌の凹凸を目立たなくして、肌を滑らかに見せる凹凸補正効果の高い化粧料に対する要求があり、ファンデーションなどの粉末化粧料においても凹凸補正効果の高いものが望まれている。
【0003】
凹凸を目立たなくするため、屈折率が高く、隠蔽力の高い顔料級二酸化チタンや酸化亜鉛が大量に配合されることがあるが、隠蔽力を二酸化チタンあるいは酸化亜鉛の高屈折率粉体に依存した場合、可視光領域での光の散乱を生じ、肌の外観はいわゆる「白浮き」を生じる。そこで、通常は前記二酸化チタンなどと併せて黒酸化鉄などを配合し、白浮きの抑制を図っている。
しかしながら、このようなファンデーションによれば、隠蔽力が高い為、肌上の瑕疵は隠蔽されるもの、肌特有の透明感を失い、不自然なマット感を生じさせ、しかも肌の凹凸をむしろ目立たせてしまうこともある。
【0004】
近年、光学的特性を利用し彩度を調整することにより、凹凸隠蔽のみならず透明性も実現したファンデーションが知られている(特許文献1)。
しかし、前記ファンデーションは彩度が高いため、製剤設計が制限されることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−285429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は凹凸補正効果が高く、しかも仕上がりの透明感にも優れる粉末化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明者等が鋭意検討を行った結果、特定の酸化チタンを配合することにより、凹凸補正効果と透明感に優れる粉末化粧料が得られることが判明した。また、粉末成分と油性成分との混合を特定の装置を用いて行うことにより、凹凸補正効果や透明感が向上することや、固形粉末化粧料とした場合には耐衝撃性の高い固形粉末化粧料が得られることも明らかとなった。また、特定のポリウレタン粒子を併用することにより、凹凸補正効果と透明感が持続する粉末化粧料が得られることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかる粉末化粧料は、粉末成分と、油性成分と、を含有する粉末化粧料であって、
粉末成分として、平均粒径が0.2〜0.4μmで、平均摩擦係数(MIU値)が0.4〜0.6であるルチル型酸化チタン凝集粒子を化粧料中1〜20質量%含有し、
油性成分を化粧料中3〜20質量%含有し、
粉末成分と油性成分との混合が、複数の翼を設けた第1回転翼及び第2回転翼を、略水平方向の同一軸線上にそれぞれ個別の回転軸を有するように対向した状態で混合室内に配置し、第1回転翼側の投入口から原料を供給するとともに、該第1回転翼及び第2回転翼を互いに反対方向に回転させることにより原料を混合し、第2回転翼側の排出口から混合された原料を排出する回転翼対向型混合装置により行われたものであることを特徴とする粉末化粧料を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記何れかに記載の化粧料において、さらにポリウレタン粒子を含み、前記ポリウレタン粒子は、ポリウレタン粒子本体表面に親水性シリカ微粉末群が被覆されてなり、該ポリウレタン粒子本体は、ポリイソシアネート成分とポリテトラメチレングリコールを含むポリオール成分との反応により得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを、3官能以上の多官能アミンで三次元的に高分子化してなるものであることを特徴とする粉末化粧料を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記何れかに記載の化粧料において、固形であることを特徴とする粉末化粧料を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載の粉末化粧料からなるファンデーションを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定のルチル型酸化チタン凝集粒子を配合することにより、凹凸補正効果と透明感に優れる粉末化粧料が得られる。また、粉末成分と油性成分との混合を特定の装置を用いて行うことにより、凹凸補正効果と透明感がさらに向上し、固形粉末化粧料とした場合には、耐衝撃性の高い固形粉末化粧料が得られる。さらに、特定のポリウレタン粒子を併用することにより、凹凸補正効果と透明感が持続する粉末化粧料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)本発明で用いるルチル型酸化チタン凝集粒子、(b)顔料級二酸化チタンの分光透過率を示す図である。
【図2】本発明において用いる回転翼対向型混合装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ルチル型酸化チタン凝集粒子
本発明においては、粉末成分として、平均粒径が0.2〜0.4μmで、平均摩擦係数(MIU値)が0.4〜0.6であるルチル型酸化チタン凝集粒子を含む。ここで酸化チタン凝集粒子は二酸化チタン凝集粒子である。
【0014】
本発明で用いられるルチル型酸化チタン凝集粒子は、辺の大きさが0.05〜0.2μm、厚さ方向が0.02〜0.1μmの寸法を有する棒状粒子が集合及び/又は結合した扇状のルチル型酸化チタン粒子が更に凝集して形成されたものであり、凝集粒子の平均粒径が0.2〜0.4μmで、その平均摩擦係数(MIU値)は0.4〜0.6である。
【0015】
凝集粒子ではない顔料級の酸化チタンは、同じ粒径(0.2〜0.4μm)であっても平均摩擦係数(MIU値)は高く、例えば0.75(0.3μm)となる。
【0016】
ここで、凝集粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡による観察粒径とすることが好ましい。
また、平均摩擦係数の測定は、例えば、カトーテック(株)製
摩擦感テスター KES−SEを使用し、測定粉末を人工皮革上に1mg/cmとなるように指で均一に塗り広げ、荷重25gの条件で求めることができる。
【0017】
本発明で用いるルチル型酸化チタン凝集粒子は、棒状の一次粒子からなる扇状ルチル型酸化チタン粒子の凝集体で構成されていること、およびルチル型酸化チタン凝集粒子を製造する際に、全く焼成工程を経ないことを特徴とする。
【0018】
このようなルチル型酸化チタン凝集粒子を配合することにより、肌の凹凸に対して高い補正効果を発揮し、しかも仕上がりの透明感に非常に優れる粉末化粧料が得られる。平均粒径が0.2〜0.4μmを外れると、肌の凹凸補正効果や透明感が不十分となる。また、同じ粒径(0.2〜0.4μm)であっても、凝集粒子ではない顔料級の酸化チタンでは本発明の効果は得られない。
なお、本発明で用いるルチル型酸化チタン凝集粒子は、扇状酸化チタン粒子の凝集体であること、平均摩擦係数(MIU値)が顔料級酸化チタンに比べて低いこと、製造工程において焼成工程を経ないことなどから、きしみ感やざらつき感がなくのびが良いという点でも優れている。
【0019】
本発明で用いられるルチル型酸化チタン凝集粒子は、球状である方が、補正効果や透明感、さらには肌への滑らかさの点でより好ましい。ここでいう球状とは、毬藻状や毬栗状のものも含まれる。
【0020】
図1は、(a)本発明で用いるルチル型酸化チタン凝集粒子、(b)顔料級二酸化チタンの分光透過率を示している。なお、平均粒径は何れも0.3μmであり、測定は次のようにして行ったものである。
(測定方法)
(a)、(b)にクリアラッカーLC21(玄々化学工業株式会社製)を6重量%分散液になるように添加し、ディスパーで分散した。調整したスラリーをOHPシートへおき、ドクターブレードにより0.101μmの膜厚とした。乾燥後、分光光度計U−3500(日立社製)にて分光透過率を測定した。
【0021】
図1からわかるように、本発明で用いられるルチル型酸化チタン凝集粒子は、可視光領域において長波長側での透過率が高く、青色光よりも赤色光の透過率が高い。一方、顔料級酸化チタンでは、このような分光特性はほとんど見られない。従って、本発明で用いるルチル型酸化チタン凝集粒子は、赤色光を選択的に透過する性質を有し、このような分光特性が、凹凸補正効果や透明感に寄与しているものと推察される。
本発明で用いるルチル型酸化チタン凝集粒子の好適な例としては、前記の方法で測定した時の620〜700nmの平均透過率が45%以上、400〜480nmの平均透過率が37%以下であるものが挙げられる。
【0022】
このようなルチル型酸化チタン凝集粒子は、例えば、特開2008−56535号公報、特開2010−24189号公報に記載の方法により得ることができる。具体的には次の通りである。
本発明で用いるルチル型酸化チタン凝集粒子の製造方法は、10℃以下の温度で硫酸チタニル溶液をアルカリ中和して得られたオルソチタン酸に10℃以下の温度で塩酸を添加してオルソチタン酸を完全に溶解した後、加熱して加水分解を行うことにより得られる。その時のTiO濃度は50〜140g/L、好ましくは70〜120g/L、塩酸濃度は70〜170g/L、好ましくは90〜160g/Lである。また、加水分解の温度は25〜60℃、好ましくは30〜55℃である。
【0023】
また、本発明のルチル型酸化チタン凝集粒子は、オルソチタン酸の他に四塩化チタン溶液やメタチタン酸をアルカリで処理したチタン酸のアルカリ塩を塩酸にて加水分解が起こらない温度において溶解した溶液を用いて加水分解を行っても得ることができる。
【0024】
前記ルチル型酸化チタン凝集粒子には、化粧料を製造する際の分散媒体中での分散安定性および耐久性向上のため、その凝集粒子表面にアルミニウム、珪素、亜鉛、チタニウム、ジルコニウム、鉄、セリウム及びスズ等の金属の含水酸化物又は酸化物を被覆することができるが、これに用いられる前記金属塩には何ら使用制限はない。更に、これらの酸化チタンは化粧料に配合する前に、あらかじめ撥水及び/又は撥油化処理を施すことが有用である。撥水及び/又は撥油化処理は、ルチル型酸化チタン凝集粒子表面を、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン化合物、シラン系、アルミニウム系、チタニウム系およびジルコニウム系等のカップリング剤、パーフルオロアルキルリン酸化合物等のフッ素化合物、炭化水素、レシチン、アミノ酸、ポリエチレン、ロウ、金属石けん等を処理することにより行う。
【0025】
本発明に用いられるルチル型酸化チタン凝集粒子は、市販品として、シルキータッチ酸化チタンST−710(チタン工業株式会社製、平均粒径0.3μm)が挙げられる。
【0026】
本発明の粉末化粧料において、ルチル型酸化チタン凝集粒子は、化粧料全量中1質量%以上、さらには3質量%以上であることが好ましい。配合量が少なすぎると、その効果が十分得られないことがある。一方、ルチル型酸化チタン凝集粒子を過剰に配合しても粉っぽさが現れてしまい、それに見合った効果の増大は期待できない。また、固形粉末化粧料とした場合には、耐衝撃性が低下する傾向がある。従って、ルチル型酸化チタン凝集粒子は、化粧料全量中20質量%以下、さらには15質量%以下であることが好ましい。
【0027】
親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子
ルチル型酸化チタン凝集粒子による凹凸補正効果及び透明感を持続させるために、親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子を配合することが好ましい。また、このようなポリウレタン粒子は、固形粉末化粧料とした場合の耐衝撃性を低下させることもない。
【0028】
本発明で用いる親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子は、ポリウレタン粒子本体表面に親水性シリカ微粉末群が被覆されてなり、該ポリウレタン粒子本体は、ポリイソシアネート成分とポリテトラメチレングリコールを含むポリオール成分との反応により得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを、3官能以上の多官能アミンで三次元的に高分子化してなるものである。
【0029】
親水性シリカ微粉末とは、SiO2を主体とするもので、その表面に疎水基が実質的に存在していない微粉末である。このような親水性シリカ微粉末は従来公知のものであり、たとえば日本アエロジル社から販売されているアエロジル200、200V、200CF、200FAD、300、300CF、380、50、90G、130、OX50、MOX80、MOX170、COK84等が知られている。
ポリウレタン粒子の平均一次粒子径としては約1〜50μm、親水性シリカ微粉末群の平均粒子径としては5〜40nmであるものが挙げられる。
【0030】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマー製造のために使用するポリイソシアネート成分としては、分子内に2以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、従来公知のどのようなものでも使用しうる。好適な例としては、脂環式ポリイソシアネート化合物又は脂肪族ポリイソシアネート化合物が挙げられ、具体例としては、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、水添MDI等が挙げられる。
【0031】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマー製造のために使用するポリオール成分としてはポリテトラメチレングリコールを用いられる。もちろん、ポリテトラメチレングリコールと共に、その他のポリオール成分が適宜混合されていてもよい。その他のポリオール成分としては、従来よりポリウレタン製造のために使用されるものであれば、どのようなものでもよい。ポリテトラメチレングリコールの数平均分子量は、適宜決定しうる事項ではあるが、本発明では、一般的に数平均分子量が650〜3000であるものが用いられる。
【0032】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマー製造のために使用する3官能以上の多官能アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン等が挙げられる。
【0033】
本発明で用いるポリウレタン粒子は、上記した原料を使用して、例えば、特開2010−132779号公報、特開2010−163389号公報に記載された方法により得ることができる。具体的には、
ポリイソシアネート成分とポリテトラメチレングリコールを含むポリオール成分とを反応させてイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得る工程と、
前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを、分散剤が溶解している水溶液に添加及び攪拌して、水中油滴型エマルジョンを得る工程と、
前記水中油滴型エマルジョンに、3官能以上の多官能アミンを添加して、油滴群を構成している前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを三次元的に高分子化してポリウレタン球体群を得た後に、水中から前記分散剤を除去して、ポリウレタン球体水性分散液を得る工程と、
前記ポリウレタン球体水性分散液と、親水性シリカ微粉末群を水中に分散させたシリカ水性分散液とを混合して混合水性分散液を得る工程と、
前記混合水性分散液を、噴霧乾燥機を用いて、高温雰囲気中に噴霧して水を蒸発させることにより、前記ポリウレタン球体群でポリウレタン粒子本体群を形成すると共に、各ポリウレタン粒子本体表面に前記親水性シリカ微粉末群を被覆せしめる工程と、
を経て、ポリウレタン粒子群を得ることができる。
ここで、本発明において、ポリウレタン粒子とは、ポリウレタン粒子本体表面に親水性シリカ微粉末群が被覆されてなる一個の粒子を意味している。ポリウレタン粒子群とは、多数のポリウレタン粒子、すなわちポリウレタン粒子の集合体のことを意味している。すなわち、「群」は、英語の名詞末尾に付加されて複数を表す「s」の意味で用いられている。
【0034】
このようにして、ポリウレタン球体が噴霧され乾燥されると、ポリウレタン球体が一個のままで、又は二個以上の数個が結合して、ポリウレタン粒子本体を形成する。たとえば、ポリウレタン球体が柔らかかったり、又はその表面が粘着質であると、二個以上の数個が結合してポリウレタン粒子本体となりやすい。逆に、ポリウレタン球体が硬いと、一個のままでポリウレタン粒子本体となりやすい。
【0035】
以上のように、混合水性分散液を噴霧乾燥すると、ポリウレタン球体はポリウレタン粒子本体となり、この粒子本体表面には親水性シリカ微粉末群が被覆せしめられる。親水性シリカ微粉末群は、粒子本体表面を単に被覆している場合もあるが、親水性シリカ微粉末の一部が粒子本体内に埋入した状態で被覆している場合もある。後者のような状態になるのは、ポリウレタン球体乃至ポリウレタン粒子本体が比較的柔らかい場合である。得られるポリウレタン粒子の平均粒径は、混合水性分散液を調製した際、生成しているポリウレタン球体の平均粒径、ポリウレタン粒子が柔らかいとか表面が粘着質であるという性状及び噴霧乾燥の条件等を調整することによって、適宜決定しうる事項である。本発明においては、ポリウレタン粒子群の平均粒径は一般的に1〜50μm程度である。なお、本発明において、ポリウレタン粒子群の平均粒径とは、平均一次粒径のことであり、以下のような方法で測定されるものである。すなわち、光学顕微鏡や電子顕微鏡等で、100個の粒子の各々の一次粒径を測定し、その数平均で求めるものである。このとき、ポリウレタン粒子が二個乃至数個凝集した状態となっているときは、その凝集を解き、バラバラになった各粒子の一次粒径を測定する。
【0036】
親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子は化粧料中0.5質量%以上、さらには1質量%以上が好ましい。配合量が少なすぎると、凹凸補正効果や透明感の持続性が十分に得られないことがある。一方、親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子を過剰に配合してもそれに見合った効果の向上は得られず、かえって粉っぽさを生じたり、固形粉末化粧料とした場合の耐衝撃性に影響を及ぼすことがある。従って、親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子は化粧料中15質量%以下、さらには10質量%以下が好ましい。
【0037】
その他の粉末成分
本発明においては、上記以外の粉末成分を用いることができる。このような粉末成分は、一般に粉末化粧料に用いられるものであれば特に限定されるものでない。例えば、タルク、カオリン、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、焼成タルク、焼成セリサイト、焼成白雲母、焼成金雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素、フォトクロミック性酸化チタン(酸化鉄を焼結した二酸化チタン、)、還元亜鉛華;有機粉末(例えば、シリコーンエラストマー粉末、シリコーン粉末、シリコーンレジン被覆シリコーンエラストマー粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ−酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、低次酸化チタン被覆雲母チタン、フォトクロミック性を有する雲母チタン、基板として雲母の代わりタルク、ガラス、合成フッ素金雲母、シリカ、オキシ塩化ビスマスなどを使用したもの、被覆物として酸化チタン以外に、低次性酸化チタン、着色酸化チタン、酸化鉄、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化コバルト、アルミなどを被覆したもの、機能性パール顔料として、パール顔料表面に樹脂粒子を被覆したもの(特開平11−92688)、パール顔料表面に水酸化アルミニウム粒子を被覆したもの(特開2002−146238)、パール顔料表面に酸化亜鉛粒子を被覆したもの(特開2003−261421)、パール顔料表面に硫酸バリウム粒子を被覆したもの(特開2003−61229)等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)等が挙げられる。なお、上記粉末成分は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
本発明において、粉末成分は表面未処理のものを用いてもよく、あるいはシリコーンやフッ素化合物、シランカップリング剤、テフロン(登録商標)、脂肪酸、脂肪酸セッケン、ラウロイルリジン等により表面処理を施したものを用いてもよい。
また、本発明においては、粉末成分としてフッ素化合物処理粉末や弾性粉末(例えば、シリコーンゴム粉末、シリコーン樹脂粉末、シリコーン樹脂被覆シリコーンゴム粉末、ポリウレタン粉末等)を含むこともできる。
【0039】
本発明の粉末化粧料において、粉末成分は粉末化粧料とするのに十分な量を用いる。通常、粉末成分は化粧料中65質量%以上であり、好ましくは80質量%以上である。一方、粉末成分の配合量は、好ましくは97質量%以下、より好ましくは93質量%以下である。粉末成分の配合量が多すぎると、肌への付着性やしっとり感等の実用特性、あるいは固形粉末化粧料とした時の耐衝撃性などの点で充分に満足できるものを得るのが難しくなることがある。
【0040】
油性成分
本発明で用いられる油性成分としては、一般に粉末化粧料に用いられるものであれば特に限定されるものでない。例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油等の天然植物油;トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の液体油脂;カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の動植物性液状油脂、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類;流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素油;ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等の合成エステル油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンデカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン油などの他、フッ素樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。なお、上記油性成分は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0041】
また、25℃における粘度が100〜50000mPa・sである高粘性油分、例えば、水添ポリイソブテン、トリイソステアリン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジメチルポリシロキサンやジフェニルジメチコンなどのシリコーン油、ひまし油、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル・フィトステリル)やジイソステアリン酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルなどのダイマー酸およびダイマージオールの誘導体等も用いることができる。
粉末化粧料においては、油性成分としては主として非揮発性のものが用いられる。
【0042】
本発明において、油性成分の配合量は化粧料中3質量%以上、さらには7質量%以上であることが好ましい。油性成分の配合量が少なすぎると、肌への付着性やしっとり感等の実用特性、あるいは固形粉末化粧料とした時の耐衝撃性などの点で充分に満足できるものを得るのが難しくなることがある。一方、油性成分の配合量は化粧料中20質量%以下である。油性成分の配合量が多すぎるとルチル型酸化チタン凝集粒子による凹凸補正効果や透明感が不十分となることがある。これは、非揮発性油性成分の配合量が多すぎると、配合粉末間の凝集が著しくなりその光学的特性が十分に発揮されないためと推察される。
【0043】
製造方法
本発明においては、ルチル型酸化チタン凝集粒子を配合することにより、優れた凹凸補正効果と透明感が得られるが、固形粉末化粧料とした場合に耐衝撃性が著しく低下することがある。このような耐衝撃性の低下を抑制するために、粉末成分と油性成分との混合を特定の回転翼対向型混合装置、すなわち、複数の翼を設けた第1回転翼及び第2回転翼を、略水平方向の同一軸線上にそれぞれ個別の回転軸を有するように対向した状態で混合室内に配置し、第1回転翼側の投入口から原料を供給するとともに、該第1回転翼及び第2回転翼を互いに反対方向に回転させることにより原料を混合し、第2回転翼側の排出口から混合された原料を排出する回転翼対向型混合装置を用いて行うことが好適である。ファンデーション等の固形粉末化粧料を製造する場合には、上記のようにして得られた粉末成分と油性成分との混合物を、例えば、金属あるいは樹脂の中皿容器に充填し、乾式成型による固形化を行なえばよい。なお、固形化の方法としては、例えば、従来公知の乾式プレス成型等を用いることができる。
また、上記のような特定の回転翼対向型混合装置を用いることにより、粉末化粧料の凹凸補正効果や透明感も向上する。
このような方法は、例えば特開2009−167181号記載に記載されている。
【0044】
また、本発明に用いられる回転翼対向型混合装置は、例えば、特開2002−79183号公報、特開2003−1127号公報、特開2003−10712号公報、特開2003−71307号公報等に記載されている粉砕装置を、本発明の混合装置として用いることができる。なお、市販の装置としては、例えば、サイクロンミル(フローテック株式会社製)が挙げられる。
【0045】
本発明において用いる回転翼対向型混合装置の一例の概略図を図2に示す。なお、本発明に用いられる回転翼対向型混合装置は、これに限定されるものではない。
回転翼対向型混合装置10は、混合室11の内部に、モータ12,13によりそれぞれ回転駆動される第1回転翼14及び第2回転翼15が略水平方向の同一軸線上にそれぞれ個別の回転軸を有するように対向した状態で設けられ、混合室11の第1回転翼14側に原料の投入口16を連通し、混合室11の第2回転翼15側に排出口17を連通して設けられている。また、回転翼対向型混合装置10投入口16の上部には原料供給装置20が設けられ、さらに排出口17の先には捕集装置30(及び回収容器32)と吸引装置40が接続されている。
【0046】
回転翼対向型混合装置10において、同一軸線上に対向して配置された第1回転翼14及び第2回転翼15は、モータ12,13の回転軸と一体に回転する。そして、回転翼対向型混合装置10においては、モータ12,13により第1回転翼14及び第2回転翼15を互いに反対方向に高速で回転させた状態で、原料供給装置20によって対象となる混合物原料を原料投入口16から投入する。回転翼対向型混合装置10に投入された混合物原料は、第1回転翼14、第2回転翼15又は混合室11の内壁面に激しく衝突し、さらには当該原料成分同士が衝突しあうことで、均一に混合・分散される。そして、この結果、粉末成分の凝集を生じることなく、粉末粒子の表面上に均一に油性成分が被覆された混合物が得られる。
【0047】
また、対向する第1回転翼14及び第2回転翼15は、互いに反対方向に回転させて用いることで、同一方向に回転させて用いた場合よりも大きなせん断応力を発生させることができるため、粉末成分の凝集が生じにくく、均一な混合物が得られやすい。なお、第1回転翼14及び第2回転翼15の回転速度は、例えば、1000〜10000rpm、好ましくは3000〜8000rpmの間で、適宜調整することができる。
【0048】
なお、第1回転翼14及び第2回転翼15においては、それぞれ、モータ12,13の回転軸に取り付けられたボスの周囲に複数の翼が放射状に設けられている。1の回転翼に対して、通常、翼は2〜16枚程度である。なお、第1回転翼14及び第2回転翼15において、回転翼の形状、翼の枚数等は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
混合室11内で混合された対象混合物は、排出口17から排出される。なお、排出口17の先には捕集装置30及び吸引装置40が接続されている。吸引装置40の作動により、排出口17から連続的に対象混合物が排出され、排出された対象混合物は捕集装置30において捕集され、回収容器32内部に集められる。なお、吸引装置40の作動条件は、対照混合物の種類や量、回転翼の回転速度等によって、適宜調整することができる。また、吸引装置40及び捕集装置30を作動させた状態で、原料供給装置20によって混合物原料を連続的に投入することによって、混合物を連続的に生産することが可能である。
【0050】
粉末成分及び油性成分は、それぞれ個別あるいは同時に回転翼対向型混合装置に投入しても構わないが、通常の場合、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等の簡易な攪拌装置によって予備混合を行なっておくことが好ましい。予備混合を行なわずに回転翼対向型混合装置に投入すると、軽い粉末成分のみが油性成分と十分に混合されることなく先に排出されてしまう等、混合工程の制御が困難になることがある。
【0051】
本発明の粉末化粧料においては、本発明の効果を損なわない範囲において、通常、化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することが出来る。
【0052】
本発明の粉末化粧料は、ファンデーション、ボディーパウダー、パフュームパウダー、ベビーパウダー、プレストパウダー、デオドラントパウダー、おしろいなど、粉末状もしくは固形状の粉末化粧料に適用され、特に凹凸補正用ファンデーションに好適に利用できる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%で示す。
まず最初に、本実施例において用いた評価方法について説明する。
【0054】
<実用特性評価>
試料を顔に塗布した際の、凹凸の目立ちのなさ、透明感、やわらかさ、なめらかさ、粉っぽさについて、20名の女性パネラーにより評価を行った。また、凹凸の目立ちのなさ、透明感については、塗布直後を基準として塗布後4時間後の持続性も評価した。
17名以上が良いと回答 ◎
12名〜16名が良いと回答 ○
9名〜11名が良いと回答 △
5名〜8名が良いと回答 ×
4名以下が良いと回答 ××
【0055】
<耐衝撃性評価>
樹脂中皿にプレス成型した試料を、化粧品用のコンパクト容器にセットし、この容器を、厚さ20mmの鉄板上に高さ30cmからサンプルを水平状態にて落下し、破損するまでの落下回数を耐衝撃性の評価とした。
【0056】
試験例1 ルチル型酸化チタン凝集粒子の効果
【表1】

【0057】
(製造方法)
粉末成分に油性成分を添加してヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)にて一定時間混合した後、ハンマー式粉砕機であるパルペライザー(ホソカワミクロン製)で2回混合し、樹脂中皿に乾式プレス成型し、固形粉末化粧料(パウダリーファンデーション)を得た。
【0058】
表1からわかるように、ルチル型酸化チタン凝集粒子を配合することにより、凹凸補正効果が高く、しかも自然な透明感のある仕上がりが得られた。このような効果を得るためには、ルチル型酸化チタン凝集粒子を化粧料中1質量%以上、さらには3質量%以上配合することが好適である。なお、ルチル型酸化チタン凝集粒子を過剰に配合すると透明感が低下する傾向があるので、ルチル型酸化チタン凝集粒子は化粧料中20質量%以下、さらには15質量%以下とすることが好適である。
【0059】
表2は、ルチル型酸化チタン凝集粒子を他の酸化チタンに代えて検討を行った結果である。表2のように、顔料級酸化チタンや微粒子酸化チタンでは凹凸補正効果や透明感を得ることはできなかった。また、ルチル型酸化チタン凝集粒子であっても平均粒子径が0.5μmでは十分な効果は得られなかった。
【0060】
【表2】

【0061】
試験例2 油性成分
【表3】

【0062】
表3は、油性成分の配合量を変えた場合の結果である。製造は、試験例1と同様の方法で行った。
表3のように、油性成分が多くなると、ルチル型酸化チタン凝集粒子による凹凸補正効果や透明感が不十分となった。このようなことから、油性成分は化粧料中20質量%以下とすることが好適であると考えられた。
【0063】
過剰の油性成分が本発明の効果を損なう理由は明らかではないが、化粧塗膜中に残存する油性成分が多いと、配合粉末間の凝集が著しくなり、ルチル型酸化チタン凝集粒子の持つ特性が十分に発揮されなくなってしまうことが考えられる。
【0064】
試験例3 耐衝撃性
【表4】

【0065】
表4は、表1の粉末化粧料について耐衝撃性を調べた結果である。表4のように、ルチル型酸化チタン凝集粒子の配合量の増加に伴って、凹凸補正効果、透明感は向上するものの、耐衝撃性が著しく悪化することが判明した。そこで、耐衝撃性の向上について、検討を行った。
【0066】
【表5】

【0067】
表5は、粉末成分と油性成分とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)にて一定時間混合した後、回転翼対向型混合装置(サイクロンミル:フローテック社製;第1回転翼と第2回転翼を互いに反対方向に回転させて使用)を用いて2回混合し、樹脂中皿に乾式プレス成型して得られた固形粉末化粧料(パウダリーファンデーション)の評価結果である。表5のように、回転翼対向型混合装置を用いて粉末成分と油性成分との混合を行うことにより、ルチル型酸化チタン凝集粒子を配合しても耐衝撃性の高い固形粉末化粧料が得られた。また、回転翼対向型混合装置を用いて得られた粉末化粧料では、従来の乾式製法で得られた粉末化粧料に比べて、凹凸補正効果や透明感も向上した。
【0068】
試験例4 持続性
さらに、ルチル型酸化チタン凝集粒子による凹凸補正効果、透明感の持続性について検討を行った。
【表6】

【0069】
表6のように、親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子を併用すると、ルチル型酸化チタン凝集粒子による凹凸補正効果及び透明感が持続することが明らかとなった。さらに、肌へ塗布した時のやわらかさやなめらかさにも優れ、粉っぽさがなく、非常に優れた使用感となった。また、親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子は耐衝撃性を低下させることがなかった。これらの効果は他のポリウレタン粉末では得られなかった。
一方、多孔質シリカでは持続性や使用感の向上効果は低かった。また、多孔質PMMA粉末では持続性向上効果は認められたものの、使用感の点では親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子に劣るものであった。さらに、多孔質シリカや多孔質PMMAを配合すると耐衝撃性が低下した。
さらに、親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子の配合量についても検討を行った。
【0070】
【表7】

【0071】
表7のように、凹凸補正効果や透明感の持続性向上効果、ならびに使用感向上効果を得るためには、親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子を化粧料中0.5質量%以上、さらには1質量%以上配合することが好適である。一方、親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子が多すぎると、粉っぽさを生じたり、固形粉末化粧料とした時の耐衝撃性が不十分となることがある。従って、親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子は化粧料中15質量%以下、さらには10質量%以下とすることが好適である。
【0072】
以下、本発明にかかる粉末固形化粧料の処方例を示す。
<処方例1:ファンデーション>
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(成分) (質量%)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セリサイト 10
合成マイカ 残量
デシルトリシロキサンカルボン酸亜鉛被覆タルク 5
親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子 5
球状シリコーン粉末 3
(トレフィルE−506S:東レ・ダウコーニング株式会社製)
球状シリコーン粉末 5
(トスパール2000B:東芝シリコーン株式会社製)
球状シリコーン粉末 5
(シリコーンパウダーKSP300:信越化学工業株式会社製)
球状多孔質シリカ 2
(サンスフェアL−51:旭硝子株式会社製)
シリコーン処理酸化チタン 8
ルチル型酸化チタン球状凝集粒子(平均粒径約0.3μm) 10
赤色干渉系パール顔料 1
亜鉛華 2
シリコーン処理ベンガラ 0.8
シリコーン処理黄酸化鉄 2
シリコーン処理黒酸化鉄 0.1
球状ナイロン末 4
1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン(5%)
/アクリルシリコーンコポリマー2%処理タルク 10
1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン5%
/アクリルシリコーンコポリマー2%処理硫酸バリウム 10
ジメチルポリシロキサン(5mPa・s) 3
ジメチルポリシロキサン(5000mPa・s) 2
スクワラン 3
ワセリン 1
ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・べヘニル) 2
ソルビタンセスキイソステアレート 0.2
クロルフェネシン 適量
酸化防止剤 適量
香料 適量
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0073】
(製法)
処方中の粉末成分に油性成分を添加してヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)にて一定時間混合した後、回転翼対向型混合装置(サイクロンミル:フローテック社製;第1回転翼と第2回転翼を互いに反対方向に回転させて使用)を用いて2回混合し、樹脂中皿に乾式プレス成型した。
【0074】
<処方例2:白粉(プレストパウダー)>
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(成分) (質量%)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
デシルトリシロキサンカルボン酸亜鉛被覆タルク 10
合成マイカ 残量
シリル化シリカ 5
亜鉛華 5
赤色干渉系パール顔料 3
ルチル型酸化チタン球状凝集粒子(平均粒径約0.3μm) 10
微粒子酸化チタン 3
親水性シリカ微粉末被覆ポリウレタン粒子 8
球状シリコーン粉末 3
(トレフィルE−506S:東レ・ダウコーニング株式会社製)
球状シリコーン粉末 5
(トスパール2000B:東芝シリコーン株式会社製)
球状シリコーン粉末 5
(シリコーンパウダーKSP300:信越化学工業株式会社製)
球状多孔質シリカ 2
(サンスフェアL−51:旭硝子株式会社製)
1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン
5%処理タルク 30
水添ポリイソブテン(20000mPa・s) 0.5
リンゴ酸ジイソステアリル(2000mPa・s) 1
スクワラン 1
エステル油 1
パラベン 適量
酸化防止剤 適量
香料 適量
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0075】
(製法)
処方中の粉末成分に油性成分を添加してヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)にて一定時間混合した後、図2の回転翼対向型混合装置(サイクロンミル:フローテック社製;第1回転翼と第2回転翼を互いに反対方向に回転させて使用)を用いて2回混合し、樹脂中皿に乾式プレス成型した。
【0076】
上記処方例1〜2により得られた粉末固形化粧料は、いずれも透明感が高く、凹凸補正効果に優れ、使用感触(粉っぽさ、経時での色くすみ、微細粒子感、しっとりさ、なめらかさ等)が良好であり、且つ耐衝撃性の点でも非常に優れたものであった。
【符号の説明】
【0077】
10 回転翼対向型混合装置
11 混合室
12 モータ
13 モータ
14 第1回転翼
15 第2回転翼
16 投入口
17 排出口
20 原料供給装置
30 捕集装置
32 回収容器
40 吸引装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末成分と、油性成分と、を含有する粉末化粧料であって、
粉末成分として、平均粒径が0.2〜0.4μmで、平均摩擦係数(MIU値)が0.4〜0.6であるルチル型酸化チタン凝集粒子を化粧料中1〜20質量%含有し、
油性成分を化粧料中3〜20質量%含有し、
粉末成分と油性成分との混合が、複数の翼を設けた第1回転翼及び第2回転翼を、略水平方向の同一軸線上にそれぞれ個別の回転軸を有するように対向した状態で混合室内に配置し、第1回転翼側の投入口から原料を供給するとともに、該第1回転翼及び第2回転翼を互いに反対方向に回転させることにより原料を混合し、第2回転翼側の排出口から混合された原料を排出する回転翼対向型混合装置により行われたものであることを特徴とする粉末化粧料。
【請求項2】
請求項1記載の化粧料において、さらにポリウレタン粒子を含み、前記ポリウレタン粒子は、ポリウレタン粒子本体表面に親水性シリカ微粉末群が被覆されてなり、該ポリウレタン粒子本体は、ポリイソシアネート成分とポリテトラメチレングリコールを含むポリオール成分との反応により得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを、3官能以上の多官能アミンで三次元的に高分子化してなるものであることを特徴とする粉末化粧料。
【請求項3】
請求項1又は2記載の化粧料において、固形であることを特徴とする粉末化粧料。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の粉末化粧料からなるファンデーション。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−131783(P2012−131783A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259806(P2011−259806)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】