説明

粉末化粧料

【課題】不自然な隠ぺい力が無い透明感のある仕上がりながらも、肌の色ムラや凹凸をカバーすることができ、さらに使用感に優れる粉末化粧料を提供する。
【解決手段】(a)平均一次粒径が100nm未満の酸化チタン及び/又は酸化亜鉛を合計で10〜30質量%、(b)球状弾性樹脂粉体を10〜50質量%、並びに(c)平均一次粒径が100nm以上の金属酸化物粉体を0〜5質量%含有する粉末化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
平均一次粒径が100nm以上の金属酸化物粉体は一般に顔料級と呼ばれ、可視光を効果的に散乱するように設計されている。これを配合することで、粉末化粧料は強い隠ぺい力を持つことができ、メイクアップ化粧料としてのカバー効果が得られる。これに対し、100nm未満の金属酸化物粉体は一般に微粒子と呼ばれ、可視光よりも短い波長である紫外線を散乱するのに有効な設計となっており、化粧料に紫外線防御効果を持たせるために使用される。この微粒子と呼ばれる金属酸化物は、可視光に対する散乱能は低いため、透明感の高い自然な明るさをもつ仕上がりを粉末化粧料に付与することは可能なものの、充分なカバー効果は期待できない。
【0003】
パウダーファンデーションの処方設計を行なうには、顔料級と微粒子の金属酸化物粉体をバランス良く配合することで、カバー効果と紫外線散乱能の両立を図る必要がある。ここで、消費者の求めるカバー効果を出すためには、顔料級の金属酸化物を一定量以上配合することが必須であるが、顔料級の金属酸化物によって得られるカバー効果は肌の質感とは全く異なるものであり、自然な仕上がりとはなり得ない。それに対し、微粒子の金属酸化物のみを用いると透明感の高い自然な明るさを得ることはできるが、充分なカバー効果は得られない。また、そのカバー効果の低さを補うために微粒子金属酸化物を多く配合すると、肌への付着性の高さからくる軋みなどの感触悪化に繋がる。
【0004】
一方、球状弾性樹脂粉体は光を粉体内部に引き込み易く、また適度な散乱効果も併せ持つことから、肌の色ムラや凹凸をぼかすフォギー効果を得るために使用される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−130120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、球状弾性樹脂粉末を配合した粉末化粧料は、化粧仕上りに明るさが無く、また多量に配合すると肌に対する付着性が低下してしまい、化粧時の満足感が得難いという問題があった。
【0007】
従って、本発明は、顔料級金属酸化物粉体による強い隠蔽力が無い透明感のある仕上がりながらも、肌の色ムラや凹凸をカバーすることのでき、さらに使用感に優れる粉末化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記事情に鑑み、如何にして自然な仕上がりと充分なカバー効果を両立するかを考え、鋭意研究を重ねた結果、微粒子酸化チタン及び/又は微粒子酸化亜鉛を10〜30質量%配合し、かつ球状弾性樹脂粉体を10質量%以上配合することで、顔料級金属酸化物粉体の配合量が低くとも充分なカバー効果が得られ、かつ自然な仕上りの化粧料を実現するに至った。さらに、このとき、微粒子金属酸化物の高配合による過度の付着性(軋み)と、球状樹脂粉体の高配合による付着性の低さが相殺され、優れた感触が得られることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、(a)平均一次粒径が100nm未満の酸化チタン及び/又は酸化亜鉛を合計で10〜30質量%、(b)球状弾性樹脂粉体を10〜50質量%、並びに(c)平均一次粒径が100nm以上の金属酸化物粉体を0〜5質量%含有する粉末化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、顔料級の金属酸化物粉体の配合量が低くとも充分なカバー効果が得られ、かつ自然な仕上りで使用感にも優れる粉末化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
本発明で用いられる(a)酸化チタン及び酸化亜鉛は、平均一次粒径が100nm未満であれば、特に限定されるものではなく、一般に微粒子酸化チタン及び微粒子酸化亜鉛と呼ばれるものを用いることができる。これらの微粒子の好ましい平均一次粒径は、透明感のある自然な仕上りを得る点から、10〜90nmが好ましく、さらに20〜70nmが好ましい。ここで平均一次粒径は走査型電子顕微鏡により測定できる。
具体的には、微粒子酸化チタンとしては、TTO−51、TTO−55(共に石原産業社製)、MT−500SA、MT−600SA(共にテイカ社製)などが挙げられる。また、微粒子酸化亜鉛としてはZnO−310、ZnO−350(共に住友大阪セメント社製)、FZO−51(石原産業社製)、MZ−300、MZ−500(共にテイカ社製)などが挙げられる。
また、これらの(a)酸化チタン及び酸化亜鉛は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
これらの(a)酸化チタン及び/又は酸化亜鉛は、本発明の粉末化粧料中に10〜30質量%含有し、さらに好ましくは10〜25質量%含有する。この範囲で含有することにより、透明感のある自然な仕上りが得られ、かつ顔料級金属酸化物の含有量が低くとも充分なカバー効果が得られる。
【0013】
本発明に用いられる(b)球状弾性樹脂粉体は、形状が球状であって、かつ柔かい弾性を有する樹脂からなる粉体、すなわち球状エラストマー粉体であり、球状シリカのような無機粉体や球状ナイロンパウダーのような硬い樹脂とは相違する。球状弾性樹脂粉体としては、球状エラストマーであればよいが、球状シリコーンエラストマーが好ましい。球状弾性樹脂粉体の電子顕微鏡観察による平均一次粒径は0.1〜20μmの範囲にあるのが好ましい。具体的には、トレフィルE−506S、E−508(共に東レ・ダウコーニング社製)、KSP−100、KSP−102、KSP−300(いずれも信越化学工業社製)などが挙げられる。
【0014】
また、上記(b)球状弾性樹脂粉体は、その分散性を高めるため、例えばシリコーン処理、アシルアミノ酸処理、脂肪酸塩処理、フッ素処理、親水性高分子処理等の表面処理が行なわれていても構わない。また更にその前処理又は後処理として、タルクやマイカなどの板状粉体と前もって混合しても構わないし、水等の溶媒に分散されていても構わない。
【0015】
この(b)球状弾性樹脂粉体は、本発明の粉末化粧料中に10〜50質量%含有し、好ましくは10〜40質量%含有する。この範囲で含有することにより、優れた凹凸カバー効果、色ムラカバー効果が得られるとともに良好な使用感が達成される。
【0016】
本発明に用いられる(c)平均一次粒径が100nm以上の金属酸化物粉体としては、一般的に顔料級と呼ばれ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等が挙げられる。ここで平均一次粒径は走査型電子顕微鏡により測定できる。
【0017】
(c)金属酸化物粉体は本発明粉末化粧料中に、0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%含有するのが好ましい。(c)金属酸化物粉体をこのような低含有量の範囲とすることにより、過剰な隠蔽能を防ぎ、自然な仕上りを得ることができる。
【0018】
本発明の粉末化粧料は、透明感のある自然な仕上りと、凹凸カバー効果、色ムラカバー効果と使用感とのバランスを図る点から成分(a)1質量部に対する成分(b)の含有量は、0.3〜5質量部の範囲、特に0.5〜3質量部の範囲が好ましい。また、成分(a)1質量部に対する成分(c)の含有量は0〜0.5質量部、特に0〜0.3質量部の範囲が好ましい。
【0019】
本発明は、紫外線防御を主な目的とするものではない。加えて、紫外線吸収剤を配合すると、感触悪化(べたべた感)に繋がってしまうため、本発明の粉末化粧料は、実質的に紫外線吸収剤を含まなくとも良い。
【0020】
本発明の粉末化粧料には、上記成分以外に、通常化粧料に用いられる油剤、前記以外の粉体、フッ素化合物、前記以外の樹脂、界面活性剤、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤等の成分を使用することができる。
【0021】
上記の粉体の例としては、赤色104号、赤色102号、赤色226号、赤色201号、赤色202号、黄色4号、黒色401号等の色素、青色1号アルミニウムレーキ、黄色4号アルミニウムレーキ、黄色5号アルミニウムレーキ、黄色203号バリウムレーキ等のレーキ色素;ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、テフロン(登録商標)パウダー、シリコーンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、セルロースパウダー、ポリエチレン末等の高分子;タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、板状硫酸バリウム等の体質顔料;雲母チタン、ベンガラ被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、黒酸化鉄被覆雲母チタン等のパール顔料;硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属塩;シリカ、アルミナ等の無機粉体;ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素、ラウロイルリジン等が挙げられる。これらの粉体の形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、燐片状、紡錘状等)、大きさに特に制限はない。これら各種の粉体は、それぞれ単独で処理したものを混合しても、混合物としてまとめて処理しても構わない。また、混合物の色を肌色などに調色したものを処理することも可能である。
【0022】
上記の油剤としては、通常化粧料に用いられる揮発性及び不揮発性の油剤、溶剤、ならびに樹脂等が挙げられ、常温で液体、ペースト、固体のいずれであっても構わない。油剤の例としては、例えばセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール;イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸等の脂肪酸;グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチル等のエステル類;流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素;ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス等のロウ;ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油等の油脂;ポリエチレンワックス、エチレン・α−オレフィン・コオリゴマー、エチレンプロピレンポリマー等が挙げられる。
【0023】
また、別の形態の油剤の例としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴム等のシリコーン化合物;パーフルオロポリエーテル、フッ化ピッチ、フルオロカーボン、フルオロアルコール等のフッ素化合物が挙げられる。
【0024】
溶媒の例としては、精製水、環状シリコーン、エタノール、軽質流動イソパラフィン、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N−メチルピロリドン、フルオロアルコール、揮発性直鎖状シリコーン、次世代フロン等が挙げられる。
【0025】
界面活性剤としては、例えばアニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤、ベタイン型界面活性剤を用いることができる。
【0026】
粘剤、樹脂の例としては、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸カルシウム、カルボキシビニルポリマー、エチレン/アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン系ポリマー、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体、窒素置換アクリルアミド系ポリマー、ポリアクリルアミド、カチオン化ガーガム等のカチオン系ポリマー、ジメチルアクリルアンモニウム系ポリマー、アクリル酸メタクリル酸アクリル共重合体、POE/POP共重合体、ポリビニルアルコール、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、ガーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン、セルロース、ポリエチレンイミン、高重合ポリエチレングリコール、カチオン化シリコーン重合体、合成ラテックス等が挙げられる。
【0027】
本発明の粉末化粧料は、粉体を主骨格とし、この粉体中に油剤が分散している化粧料であり、粉体を60質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有する化粧料である。本発明の粉末化粧料としては、ファンデーション、コンシーラー、化粧下地、ハイライト、白粉などが挙げられ、毛穴や小ジワなどの肌の凹凸や色ムラを補正する目的に用いることができる。その形態は、粉末状、固形状の何れでもよいが、固形状とした場合に本発明の効果が特に発揮される。固形粉末化粧料は、固形状に成型された粉末化粧料であり、粉体分散、混合等通常の製法に従って半製品を製造した後、成形を行い得ることができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例、及び比較例に基づいて本発明を詳明する。まず、実施例及び比較例の化粧料の処方と製造方法を以下に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
(製造方法)
成分Aをミキサーにて混合した。次いで、均一に混合・溶解した成分Bを成分Aに加えてさらに混合した。得られた粉末をアトマイザーにて粉砕し、メッシュを通した後、金型を用いて金皿に打型して製品を得た。
【0031】
上記の各実施例及び比較例で得られた化粧料の評価は下記のように行った。
【0032】
[化粧料の有用性評価試験]
専門パネラーを評価品目ごとに10名ずつ用意し(但し、品目によりパネラーが重複する場合もある)、表2に示す評価基準に従って評価を行い、全パネラーの合計点数を以って評価結果とした。従って、点数が高いほど評価項目に対する有用性が高いことを示す(満点:50点)。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例1〜2、比較例1〜6の化粧料の評価結果を表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表3の結果より、本発明の各実施例は比較例と比べてより高い効果を示していることが判った。実施例1、2は各評価項目に関して高い評価を得ている。これに対して、比較例1、2は、顔料級の酸化チタン、酸化鉄が5質量%超配合されており、隠蔽感が高く、自然な仕上りにはならないという評価を得た。また、比較例3では、微粒子の金属酸化物だけでは充分な凹凸カバー効果や色ムラカバー効果が得られず、球状弾性樹脂粉体が必須であることを示している。
【0037】
下記実施例3〜9についても、化粧料の有用性評価試験において優れた結果を示すものである。
【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の、平均一次粒径が100nm未満の酸化チタン及び/又は酸化亜鉛を合計で10〜30質量%含み、かつ球状弾性樹脂粉体を10〜50質量%含んでなり、さらに平均一次粒径が100nm以上の金属酸化物粉体が0〜5質量%であることを特徴とする粉末化粧料は、顔料級金属酸化物粉体による強い隠ぺい力が無い透明感のある仕上がりながらも、優れた使用感を有し肌の色ムラや凹凸をカバーすることのできる粉末化粧料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)平均一次粒径が100nm未満の酸化チタン及び/又は酸化亜鉛を合計で10〜30質量%、(b)球状弾性樹脂粉体を10〜50質量%、並びに(c)平均一次粒径が100nm以上の金属酸化物粉体を0〜5質量%含有する粉末化粧料。
【請求項2】
成分(b)が球状シリコーンエラストマー粉体である請求項1記載の粉末化粧料。
【請求項3】
固形粉末化粧料である請求項1又は2記載の粉末化粧料。
【請求項4】
凹凸補正用である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末化粧料。

【公開番号】特開2012−140340(P2012−140340A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292449(P2010−292449)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】