説明

粉末含有エアゾール製品

【課題】粉末を高濃度に含有しても粉末による詰まりが生じにくく、さらに突発的に漏洩量が多くなることがないなど、製品安定性に優れるとともに、噴射したとき安定した噴射パターンが得られ、さらに噴射されずに容器内に残留する粉末量が少ないなど、製品性能に優れた粉末含有エアゾール製品を提供する。
【解決手段】粉末および液化ガスを含有するエアゾール組成物と、耐圧容器にエアゾールバルブを固着したエアゾール容器とからなる粉末含有エアゾール製品であって、前記エアゾールバルブ3が、前記エアゾール容器1の底部に沈降している粉末層11よりも上部にあり、かつエアゾール組成物10の液相中12において前記エアゾール容器の軸線に対して交差する方向に開口している導入孔5aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末含有エアゾール製品に関する。さらに詳しくは、粉末を高濃度に含有しても粉末により詰まりが生じにくく、さらに突発的に漏洩量が多くなることがないなど、製品安定性に優れるとともに、噴射したとき安定した噴射パターンが得られ、さらに噴射されずに容器内に残留する粉末量が少ないなど、製品性能に優れた粉末含有エアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
制汗剤や傷薬などの粉末を含有するエアゾール製品において、容器を立てた状態で噴射する場合(以下、「正立仕様」という)、特許文献1の図3に示すようにエアゾールバルブの下部にディップチューブ(チューブ)を装着しており、ディップチューブの下端開口部(導入孔)はエアゾール容器の軸線下方に開口している。粉末含有エアゾール製品を使用しないとき、すなわち静置した状態では容器底部に粉末が沈降して粉末層を形成するが、エアゾール組成物によっては粉末が固くケーキングする場合がある。前記開口部が粉末層中にあるとディップチューブの開口部や通路内で粉末がケーキングして噴射できなくなる問題があるため、開口部は粉末層よりも上方に位置するように設計している。そのため、エアゾール組成物が少なくなって開口部が気相中に露出すると、液化ガスのみ噴射されて容器内に残留する粉末量が多くなる問題がある。
【0003】
また粉末を含有するエアゾール製品は、噴射する前に上下に振るなどしてエアゾール組成物を攪拌し、粉末が均一に分散した状態で噴射している。しかし、金属製のエアゾール容器は不透明であるため、使用者がエアゾール容器内の様子(粉末が均一に分散しているか否か)を確認することができず、このとき粉末の分散が不充分である場合は粉末が大きな塊のまま使用されてエアゾールバルブのステム孔や噴射部材の噴射孔で詰まる問題がある。また、噴射によりステム孔付近に付着した粉末がステムラバーの内径面との間で挟まれるとこの部分に隙間が生じ、突発的に漏洩量が多くなる問題がある。さらに、エアゾール組成物中に粉末を多く含有していると噴射の拡がり(噴射パターン)が安定しない問題がある。
【0004】
一方、特許文献2には、導出管(ディップチューブ)の長さ方向中間部に穴を設けたエアゾール式消火具が開示されている。該エアゾール式消火具は液体系消火薬剤とフロン系消火剤を含有しており、両者の比重の違いにより均一に混合し難い内容物であっても、前記穴を設けることによって均一に混合して噴射できることが記載されている。
【0005】
しかし、前記液体系消火薬剤は炭酸カリウムなどの水溶液が例示されており、実施例で使用されている炭酸カリウム35%水溶液の比重(20℃)は1.25である。
【0006】
一方、フロン系消火剤として例示されているフロンの比重は1.33〜1.49(フロン11が1.49、フロン12が1.33、フロン114が1.47)であり、両者の比重差は最大でも0.24である。
【0007】
さらに、特許文献2は粉末を含有するものではなく、前述の粉末を含有したときの前記問題点を見出すことはできない。
【0008】
【特許文献1】特開平11−300242号公報
【特許文献2】特開昭60−153879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、粉末を高濃度に含有しても粉末による詰まりが生じない、さらに突発的に漏洩量が多くなることがないなど、製品安定性に優れるとともに、噴射したとき安定した噴射の拡がり(噴射パターン)が得られ、さらに噴射されずに容器内に残留する粉末量が少ないなど、製品性能に優れた粉末含有エアゾール製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の粉末含有エアゾール製品は、粉末および液化ガスを含有するエアゾール組成物と、
耐圧容器にエアゾールバルブを固着したエアゾール容器と
からなる粉末含有エアゾール製品であって、
前記エアゾールバルブが、前記エアゾール容器の底部に沈降している粉末層よりも上部にあり、かつエアゾール組成物の液相中において前記エアゾール容器の軸線に対して交差する方向に開口している導入孔を有する
ことを特徴としている。
【0011】
また、前記導入孔がエアゾール容器の軸線と垂直に交差する方向に開口していることが好ましい。
【0012】
また、エアゾールバルブが、エアゾール組成物の粉末相中に設けられ、エアゾール容器の軸線方向に開口する下端導入孔を有することが好ましい。
【0013】
また、エアゾールバルブが、エアゾール組成物の気相中に開口する気相導入孔を有することが好ましい。
【0014】
また、前記導入孔の断面積が0.05〜5mm2であり、下端導入孔の断面積が0.1〜10mm2であることが好ましい。
【0015】
前記導入孔/下端導入孔の断面積比が0.01〜2であることが好ましい。
【0016】
前記エアゾール組成物中に、粉末を0.5〜20重量%、液化ガスを40〜97重量%含有することが好ましい。
【0017】
前記エアゾール組成物の液相と粉末との比重差が0.5以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属製のエアゾール容器が用いられ、使用者がエアゾール容器内の様子を確認することができなくても、エアゾールバルブのステム孔や噴射部材の噴射孔で詰まるという問題を回避することができ、噴射によりステム孔付近に付着した粉末がステムラバーの内径面との間で挟まれて生じる突発的な漏洩がなく、エアゾール組成物中に粉末を多く含有していても安定した噴射の拡がり(噴射パターン)が得られ、噴射されずに容器内に残留する粉末量を少なくできる粉末含有エアゾール製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の粉末含有エアゾール製品は、粉末、液化ガスを含有するエアゾール組成物と、耐圧容器にエアゾールバルブを固着したエアゾール容器とからなり、前記エアゾールバルブがエアゾール容器の底部に沈降している粉末層よりも上部にあり、かつ、エアゾール組成物の液相中においてエアゾール容器の軸線に対して交差する方向に開口している導入孔を有することを特徴としている。
【0020】
図1aに示す粉末含有エアゾール製品は、耐圧容器1と該耐圧容器1の開口部2に固着されるエアゾールバルブ3とからなるエアゾール容器と、エアゾールバルブ3に装着した噴射部材4と、エアゾール容器内部に充填される粉末と液化ガスとを含有するエアゾール組成物10とからなる。
【0021】
前記耐圧容器1は、アルミニウムやブリキなどの金属板や円盤状のものをインパクト加工または絞りしごき加工などによって有底筒状に形成し、さらにネッキング加工、カーリング加工によって肩部1a、ビード部1bを形成している。なお、耐圧容器としては、ブリキや錫−ニッケル系鋼板などの金属板を円筒状にした胴部に、底部と、ビード部を形成した目金とを二重巻き締めにより固着した3ピース缶、あるいは2ピース缶を用いてもよく、さらに、耐圧ガラスや合成樹脂など、耐圧製を有する他の材質から製造されたものであってもよい。
【0022】
前記エアゾールバルブ3は、耐圧容器1のビード部1bにガスケット3fを介して固着されるマウンティングカップ3aと、マウンティングカップ3aの中央部に保持されるハウジング3bと、ハウジング3b内にスプリング3cと共に収容されスプリング3cにより常時上方に付勢されるステム3eと、ステムラバー3dと、ハウジングの下部に装着されエアゾール容器内とエアゾールバルブ内とを連通するチューブ5とからなる。ステムラバー3dの内径面にステム3eが挿入され、ステム3eは、スプリング3cの反発力により上向きに付勢されている状態(噴射していない状態)でステムラバーの内径面でステム孔3iを覆うか、あるいはステム孔3iより下方の外周面全体を覆いエアゾール容器1内部を密封する。なおハウジング3bには、底部にチューブ5とハウジング3b内部とを連通する連通孔3hと、側面にエアゾール容器の気相部に開口する気相導入孔3gとが設けられている。
【0023】
前記チューブ5は上部がハウジング3bに装着され、下部は耐圧容器1の内底面付近にまで延びている。チューブ5は両端が開口した円筒状であり、下端の下端連通孔5bはエアゾール容器の軸線方向に開口し、下部の側面には前記軸線と垂直に交差する方向に開口する導入孔5aが設けられている。なお導入孔5aは前記軸線と交差するように設けることもできる。また、図1bおよび図1cに示されるように、両端が開口した筒状のチューブ5を用い、チューブ5の下部にエアゾール容器の軸線AXと交差する方向に導入孔6a、6bを設けた流入部材6を装着したものを用いてもよい。この場合、導入孔6a、6bの大きさや開口する角度を調整しやすく、さらにチューブの下端に装着するだけでよいので製造が容易になる。導入孔5aは1個設けただけのものでもよく、また複数個設けたものでもよい。また導入孔5aは、未使用のエアゾール製品を静置した状態でエアゾール容器の底部に沈降している粉末層11よりも上部に、かつエアゾール組成物の液相12中に開口するように設けることが好ましく、具体的にはエアゾール容器の底部を0、ビード部1bに固着されたマウンティングカップ3aの先端を100としたときの底部から5〜25%、好ましくは7〜20%の位置で開口するように設けることが好ましい。5%よりも低い位置に設けた場合は大きな粉末をチューブ内に導入しやすくなり、突発的に漏洩量が多くなったり、安定した噴射パターンが得られにくくなる傾向がある。一方25%よりも高い位置に設けた場合は内容物が少なくなると均一な組成で噴射しにくく、粉末の残量が多くなりやすい傾向がある。また導入孔5aの断面積は0.05〜5mm2、さらには0.1〜4mm2であり、下端導入孔5bの断面積は0.1〜10mm2、さらには0.3〜8mm2であり、チューブ5内の通路5cの断面積は0.1〜10mm2、さらには0.8mm2であることが好ましい。特に導入孔と下端導入孔との断面積比(導入孔/下端導入孔)が0.01〜2、さらには0.015〜1である場合は、製品安定性が高く、かつ製品性能が高くなる。
【0024】
前記気相導入孔3gは、ハウジング3b内部とエアゾール容器の気相部13とを常に連通しており、ステム孔3iが開放されていないときはハウジング3b内部は液化ガスの気体で満たされている。ステム孔3iが開放されるとハウジング3b底部の連通孔3hからエアゾール組成物の液体と粉末が、ハウジング3b側面の気相導入孔3gから液化ガスの気体がそれぞれハウジング3b内部に導入され、両者が混合された状態で大気中に噴射される。前記気相導入孔3gの断面積は0.01〜0.8mm2、さらには0.03〜0.5mm2であることが好ましい。また前記連通孔3hの断面積は0.05〜4mm2、さらには0.1〜3.5mm2であることが好ましい。
【0025】
前記噴射部材4は、ステム3eに装着するステム装着部4aと、エアゾール組成物を外部に噴射する噴射孔4cと、ステム装着部4aと噴射孔4cとを連通する噴射通路4bとを有する。噴射孔4cはストレート形状、テーパー状に拡がるフォーワードテーパー(forward taper)、テーパー状に狭まるリバーステーパー(reverse taper)いずれでもよく、噴射孔4cを備えたチップ4dの裏面にメカニカルブレークアップ(mechanical break up)機構(図示されず)を設けてもい。また噴射孔4cの断面積は0.03〜0.6mm2、さらには0.04〜0.4mm2であることが好ましい。
【0026】
前記エアゾール組成物10は、粉末と液化ガスを必須成分として含有しているが、エアゾール製品の目的や用途に応じて有効成分や油性成分、補助溶剤などを配合しても良い。
【0027】
前記粉末は、有効成分、有効成分の補助剤、担体などとして作用する。前記粉末としては、たとえば、アルミニウムクロロハイドレート(比重1.3)、アラントインアルミニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウムカリウム、酸化亜鉛(比重3.8〜5.9)等の制汗剤;コーンスターチ、タルク(比重2.7〜2.8)、カオリン(比重2.2〜2.6)、ゼオライト、シリカ、ウンデシレン酸亜鉛、珪酸マグネシウム、マイカ(比重2.7〜3.4)、雲母チタン、酸化マグネシウム(比重2.8〜3.6)、酸化亜鉛(比重3.8〜5.9)、酸化チタン(比重3.9〜4.2)、炭酸マグネシウム(比重2.6〜2.9)、炭酸カルシウム、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などがあげられ、単独でまたは2種以上併用して用いることができる。さらに粉末として、シリカやゼオライトなどの多孔性粉末に、酸化チタンや銀などの機能性成分を担持させたものを用いても良い。
【0028】
前記粉末は、平均粒子径が10〜80μm、さらには15〜50μmであることが好ましい。前記粉末の平均粒子径が10μm未満の場合は、長期間静置したときなどの場合に粉末がエアゾール容器1底部で固くケーキングし易くなり、再分散性が悪く均一な組成物を噴射し難くなる。さらに皮膚などの噴射対称面で飛散しやすくなり、付着性が悪く、粉末の効果が充分発揮できない。一方80μmを越えるとエアゾールバルブ3や噴射部材4の通路4bや噴射孔4cで詰まりやすく、またステム3eとステムラバー3dとの間に挟まりやすく漏洩量が多くなる。さらに噴射の途中で粉末が沈降しやすくなり、均一な組成物を噴射し難くなる。
【0029】
前記粉末の配合量は、エアゾール組成物中0.5〜20重量%、さらには1.0〜15重量%であることが好ましい。粉末の配合量が0.5重量%未満の場合は、粉末の効果が得られにくく、所望の効果を得るためには多量に噴射する必要がある。一方20重量%を越えるとエアゾールバルブ3や噴射部材4の通路4bや噴射孔4cで堆積したり詰まりやすくなり、またステム3eとステムラバー3dとの間に挟まりやすくなり漏洩量が多くなる。特に、エアゾールバルブ3として図2に示されるような定量噴射型バルブを用いる場合は、粉末貯留室として機能する貯留部R(すなわち定量室)内の粉末量が多くなるため粉末が貯留部R(定量室)内でケーキングしやすく、またエアゾールバルブ3の作動性が悪くなり定量性が悪くなりやすい。
【0030】
前記有効成分としては、たとえば、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジルなどの消臭剤;パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、パラクロルメタクレゾールなど殺菌剤;l−メントール、カンフルなどの清涼剤;アラントインヒドロキシアルミニウム、クエン酸、乳酸、タンニン酸などの収斂剤;アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤;塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、リドカイン、塩酸リドカインなどの局所麻酔剤;硝酸ミゴナゾール、硝酸オキシコナゾール、硝酸スルコナゾール、硝酸エコナゾール、塩酸ブテナフィン、塩酸テルビナフィン、クロトリマゾールなどの抗真菌剤、クロタミトン、カンフルなどの鎮痒剤;ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェミラミンなどの抗ヒスタミン剤、サリチル酸メチル、ケトプロフェン、インドメタシン、フェルビナク、ピロキシカム、などの消炎鎮痛剤;N、N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)、カプリル酸ジエチルアミドなどの害虫忌避剤;パラアミノ安息香酸エステル、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤;グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニントリプトファン、シスチン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸;レチノール、パルミチン酸レチノール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、パントテン酸、ビオチンなどのビタミン類;エラストラジオール、エチニルエストラジオールなどのホルモン類;α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤;尿素、ヒアルロン酸、ケラチン、レシチン、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールなどの保湿剤;ドクダミエキス、オウバクエキス、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、キナエキス、サクラソウエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液;合成香料、天然香料などの香料などがあげられる。
【0031】
前記有効成分を配合する場合の配合量は、エアゾール組成物中0.05〜30重量%、さらには0.1〜20重量%であることが好ましい。前記有効成分の配合量が0.05重量%未満の場合は噴射物中の有効成分濃度が低くなり、所望の効果を得るためには多く噴射する必要がある。一方30重量%を越えると噴射物中の有効成分濃度が高くなり、使用上限を超えて噴射しやすくなる
前記油性成分は、粉末がエアゾール組成物中で分散しやすくする分散剤として、また粉末を皮膚などの噴射対処面に付着しやすくする付着剤として用いられる。
【0032】
前記油性成分としては、たとえば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリ(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、デカなど)グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などの界面活性剤;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール;スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、イソパラフィンなどの炭化水素;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸;メチルポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル;ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジエトキシエチル、コハク酸ジエトキシエチルなどのエステル油;ミツロウ、ラノリン、カンデリラロウ、パラフィンワックスなどのロウ(ワックス類);ツバキ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂;などがあげられる。
【0033】
前記油性成分を配合する場合の配合量は、エアゾール組成物中0.01〜20重量%、さらには0.05〜15重量%であることが好ましい。前記油性成分の配合量が0.01重量%未満の場合は、油分を配合する分散効果や付着効果などが得られにくい。一方20重量%を越えるとべたつき感が強くなる、乾燥性が悪くなるなど、使用感が低下しやすい。
【0034】
前記補助溶剤は、粉末を分散させる溶剤の一部として、噴射個所の乾燥性を調整するなどの目的で用いられる。前記溶剤としては、たとえば、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、精製水、イオン交換水などの水、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールなどがあげられる。
【0035】
前記補助溶剤を配合する場合の配合量は、エアゾール組成物中1〜50重量%、さらには5〜40重量%であることが好ましい。前記補助溶剤の配合量が1重量%未満の場合は、補助溶剤を配合する効果が得られにくい。一方50重量%を越えると乾燥性が悪くなるなど、使用感が低下しやすい。
【0036】
前記液化ガスは、エアゾール組成物の噴射剤として作用する。前記液化ガスとしては、20℃での比重が0.5〜0.7であるものが好ましく、たとえば、プロパン(比重0.50)、ノルマルブタン(比重0.58)、イソブタン(比重0.56)、ノルマルペンタン(比重0.63)、イソペンタン(比重0.62)、ジメチルエーテル(比重0.66)およびこれらの混合物などがあげられる。
【0037】
前記液化ガスの配合量は、エアゾール組成物中40〜97重量%、さらには50〜95重量%であることが好ましい。前記液化ガスの配合量が40重量%未満の場合は、粉末の残量が多くなりやすい傾向がある。一方97重量%を越えると飛散しやすく使用者が吸引しやすくなるとともに、冷却効果が強くなりすぎ、使用感が悪くなる。
【0038】
本発明のエアゾール製品は、たとえば、粉末と、有効成分や油性成分、補助溶剤などの液体を耐圧容器1に充填し、次いで液化ガスをアンダーカップ充填してエアゾールバルブ3を耐圧容器1の開口部2に固着し、さらにエアゾールバルブ3に噴射部材4を装着することにより製造することができる。なお、液体が2成分以上である場合は予め混合したものを用いることができ、さらに粉末を分散させたものを用いてもよい。また、油性成分と水のように相溶しない複数の成分を用いる場合は別々に充填することもできる。
【0039】
なお、本発明でいうエアゾール組成物の液相とは、有効成分や油性成分、補助溶剤、液化ガスなどエアゾール容器内で液体である成分の混合物であり、その比重は各配合成分の比重と配合量により算出した値である。本発明のエアゾール製品では、エアゾール組成物の液相の比重と粉末の比重との差が0.5以上、さらには0.6以上と大きく、長時間静置したときに粉末が容器底部で固く凝集しやすい場合であっても、突発的に漏洩量が多くなる、ステム孔や噴射孔などで詰まりが生じやすくなる、噴射されずに残留する粉末量が多くなるなどの問題が生じることなく、安定した噴射パターンが得られる。
【0040】
このようにして得られるエアゾール製品は、まず噴射前にエアゾール製品を上下に数回振るなどして粉末をエアゾール組成物の液相中に分散させる。ついで噴射部材4を指で押し下げるなどして噴射操作することによりステム孔3iが開放されてエアゾール容器内部と大気とが連通し、エアゾール組成物はチューブ5の導入孔5aおよび下端導入孔5bからチューブ5内の通路5c、ハウジング3bの連通孔3h、ステム孔3iを通り、噴射部材4の噴射孔4cから噴射される。本発明のエアゾール製品は、導入孔5aがエアゾール容器の軸線AXと垂直に交差する方向に開口しており、さらに粉末層11の上部に、かつエアゾール組成物の液相中に開口するように位置していることから、噴射前の振とうが不充分で粉末が均一に分散していない状態、すなわち粉末の一部がケーキングなどにより固まり、大きい粒子の状態で存在しても、軸線と交差する方向からエアゾール組成物がチューブ内に導入されるため大きくなった粉末をチューブ5内に導入することがなく、エアゾールバルブ3や噴射部材4の噴射通路4bでの詰まりを防止することができると共に、粉末がステム孔3i付近の表面とステムラバー3d内径面との間に挟まれて突発的に漏洩量が多くなることを防止できる。さらに安定した噴射状態(噴射の拡がり)が得られる。また、下端導入孔を粉末層中にまで延長しても、前記導入孔の作用により詰まりや突発的な漏洩を防止できるため、粉末を最後まで噴射することができ、容器内に残存する粉末量を少なくすることができる。
【0041】
図2に示すエアゾール製品は、耐圧容器1の開口部2が円筒状に開口しており、該開口部2にエアゾールバルブ3が固着されている。該エアゾールバルブ3は、有底筒状であり、フランジ部Fが耐圧容器1の開口部2の先端に保持され、筒部外周にリング状のガスケット3fを装着したマウンティングカップ3aと、マウンティングカップ3aの内部に保持される円筒状のハウジング上部3b1と、ハウジング上部3b1の下端に装着されハウジング上部3b1との間に弁シール(シール材)3sを挟持するハウジング下部3b2と、ハウジング下部3b2に装着されるチューブ5と、マウンティングキャップ3aの外周面全体を覆う有底筒状のカバーキャップ7とからなり、カバーキャップ7の下端外周を内側にカシメ付けることにより耐圧容器1に固着される。ハウジング上部3b1には、粉末がハウジング上部3b1から落下しないように粉末を貯留する粉末貯留室として機能する貯留部Rと、貯留部Rに溜まった粉末を攪拌するための攪拌部材A(たとえば、貯留部R内を自由に移動しうるコイルバネ)が設けられている。
【0042】
このようにして得られるエアゾール製品は、図1のエアゾール製品と同様に噴射部材4を指で押し下げることによりステム孔3iが開放されるが、ステム3eの下端が弁シール(シール材)3sの口部3s1に挿入されてハウジング3b内部とエアゾール容器1内部とを遮断するため、ハウジング3b内部にあるエアゾール組成物10’のみがステム孔3iを通り、噴射部材4の噴射孔4cから噴射される。噴射部材4の押し下げを止めるとステム3eがスプリング3cにより元の位置に戻されて弁シール(シール材)3sの口部3s1が開放されるため、エアゾール組成物10はチューブ5の導入孔5aおよび下端導入孔5bからチューブ5内の通路5c、ハウジング下部3b2の連通孔3b2c、弁シール(シール材)3sの口部3s1、ハウジング上部3b1とステム下部外周との間を通りハウジング上部3b1内に流入する。このとき、図1のエアゾール製品と同様に、エアゾール容器の軸線と交差する方向に開口した導入孔5aの作用により、粒径の大きい粉末がハウジング内に導入されないため、詰まりや突発的な漏洩が発生しにくく、さらに安定した噴射パターンが得られる。さらに下端導入孔5bを粉末層中に設けて粉末の残量を少なくできる。
【実施例】
【0043】
実施例1
アルミニウム製耐圧容器(満注量100ml)と、表1に示すエアゾールバルブ1とからなるエアゾール容器に、粉末としてタルクを1.4g(3.5重量%)、油性成分としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(商品名:SH344、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、比重0.95)を1.4g(3.5重量%)、液化ガスとして液化石油ガス(ノルマルブタンとイソブタンの混合物、20℃での比重が0.57)を37.2g(93重量%)を充填し、粉末含有エアゾール製品を製造した。なお、エアゾール組成物の液相の比重は0.58、粉末(タルク)の比重は2.7であり、両者の比重差は2.12である。
【0044】
<エアゾールバルブ1>
【0045】
【表1】

【0046】
なお導入孔は、エアゾール製品を静置して粉末が沈降している粉末層よりも上部に開口するように底部からエアゾール容器の15%の位置に設けており、下端導入孔は粉末層中に開口するように底部からエアゾール容器の3%の位置に設けている。
【0047】
実施例2
導入孔がφ2.0(断面積3.14m2)である以外はエアゾールバルブ1と同じエアゾールバルブ2を用いて、実施例1と同様にして粉末含有エアゾール製品を製造した。
【0048】
比較例1
導入孔を設けず、下端導入孔が粉末層よりも上部に開口するように底部からエアゾール容器の15%の位置で開口するチューブである以外はエアゾールバルブ1と同じエアゾールバルブ3を用いて、実施例1と同様にして粉末含有エアゾール製品を製造した。
【0049】
実施例3
タルクを2.8g(7重量%)、油性成分としてオクタメチルシクロテトラシロキサンを2.8g(7重量%)、液化ガスとして液化石油ガス(ノルマルブタンとイソブタンの混合物、20℃での比重が0.57)を34.4g(86重量%)とした以外は実施例1と同様にして粉末含有エアゾール製品を製造した。なお、エアゾール組成物の液相の比重は0.59、粉末(タルク)との比重差は2.11である。
【0050】
実施例4
エアゾールバルブ2を用いた以外は実施例3と同様にして粉末含有エアゾール製品を製造した。
【0051】
比較例2
エアゾールバルブ3を用いた以外は実施例3と同様にして粉末含有エアゾール製品を製造した。
【0052】
比較例3
導入孔を設けず、下端導入孔が粉末層中に開口するように底部からエアゾール容器の3%の位置で開口するチューブである以外はエアゾールバルブ1と同じエアゾールバルブ4を用いて、実施例3と同様にして粉末含有エアゾール製品を製造した。
【0053】
実施例5
タルクを2.8g(7重量%)、補助溶剤としてエタノールを13.2g(33重量%)、液化ガスとして液化石油ガス(ノルマルブタンとイソブタンの混合物、20℃での比重が0.57)を24g(60重量%)とした以外は実施例1と同様にして粉末含有エアゾール製品を製造した。なお、エアゾール組成物の液相の比重は0.63であり、粉末(タルク)との比重差は2.07である。
【0054】
実施例6
エアゾールバルブ2を用いた以外は実施例5と同様にして粉末含有エアゾール製品を製造した。
【0055】
比較例4
エアゾールバルブ3を用いた以外は実施例5と同様にして粉末含有エアゾール製品を製造した。
【0056】
比較例5
エアゾールバルブ4を用いた以外は実施例5と同様にして粉末含有エアゾール製品を製造した。
【0057】
試験方法
1.噴射残量
得られたエアゾール製品を25℃に調整した恒温水槽中に1時間保持した後、噴射できなくなるまで1秒間ずつ繰り返し噴射し、エアゾール容器内部に残っている残量を測定した。なお、試験に用いた製品は各5本であり、平均値を算出した。
【0058】
2.漏洩試験
得られたエアゾール製品を、5℃に調整した恒温室内で1日間保存し1秒間噴射→重量測定(m1)→45℃に調整した恒温室内で5日間保存→重量測定(m2)、を1サイクルとして、漏洩量(m1−m2)を測定した。試験に用いた製品は各10本であり、突発的に漏洩量が多くなった(平均値の1.5倍以上)試験品の有無を確認した。
<評価基準>
○:突発的に漏洩量が多くなった試験品は認められなかった。
△:突発的に漏洩量が多くなった試験品は1〜2本。
×:突発的に漏洩量が多くなった試験品が3〜5本。
××:突発的に漏洩量が多くなった試験品が6本以上。
【0059】
3.噴射試験
漏洩試験において噴射したときの噴射状態を評価した。
【0060】
試験に用いた製品は各10本である。
<評価基準>
○:全て異常なく噴射できた。
△:噴射量の減少が認められる試験品があった。
×:最初噴射しないが、10回噴射操作するまでに噴射する試験品があった。
××:10回噴射操作しても噴射しない試験品があった。
【0061】
4.噴射パターン
漏洩試験と同じ条件で保存した試験品を用い、エアゾール製品を固定して、黒色の紙を噴射孔までの距離が15cmで維持されるように一定速度で移動させながら噴射し、紙に付着した粉末の幅を評価した。
<評価基準>
○:幅の両端はほぼ直線状で平行である(図3参照)。
△:幅の両端は一部曲線状になっている部分もあるが他の部分は平行である(図4参照)。
×:幅の両端は曲線状であり、平行な部分が少ない(図5参照)。
【0062】
試験結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1a】本発明の一実施の形態にかかわるエアゾール製品を示す説明図である。
【図1b】本発明のエアゾール製品に適用される流入部材の一例を示す説明図である。
【図1c】本発明のエアゾール製品に適用される流入部材の他の例を示す説明図である。
【図2】本発明の他の実施の形態にかかわるエアゾール製品を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例にかかわるエアゾール製品の噴射パターンを示す図である。
【図4】比較例にかかわるエアゾール製品の噴射パターンを示す図である。
【図5】他の比較例にかかわるエアゾール製品の噴射パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 耐圧容器
1a 肩部
1b ビード部
2 開口部
3 エアゾールバルブ
3a マウンティングカップ
3b ハウジング
3c スプリング
3d ステムラバー
3e ステム
3f ガスケット
3g 気相導入孔
3h 連通孔
3i ステム孔
3s 弁シール
4 噴射部材
4a ステム装着部
4b 噴射通路
4c 噴射孔
4d チップ
5 チューブ
5a 導入孔
5b 下端導入孔
5c 通路
6 流入部材
6a 導入孔
6b 導入孔
7 カバーキャップ
10 エアゾール組成物
11 粉末層
12 液相
13 気相
A 攪拌部材
AX 軸線
F フランジ部
P 噴射パターン
R 貯留部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末および液化ガスを含有するエアゾール組成物と、
耐圧容器にエアゾールバルブを固着したエアゾール容器と
からなる粉末含有エアゾール製品であって、
前記エアゾールバルブが、前記エアゾール容器の底部に沈降している粉末層よりも上部にあり、かつエアゾール組成物の液相中において前記エアゾール容器の軸線に対して交差する方向に開口している導入孔を有する
ことを特徴とするエアゾール製品。
【請求項2】
前記導入孔がエアゾール容器の軸線と垂直に交差する方向に開口している請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項3】
エアゾールバルブが、エアゾール組成物の粉末相中に設けられ、エアゾール容器の軸線方向に開口する下端導入孔を有する請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項4】
エアゾールバルブが、エアゾール組成物の気相中に開口する気相導入孔を有する請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項5】
前記導入孔の断面積が0.05〜5mm2であり、下端導入孔の断面積が0.1〜10mm2である請求項1または2記載のエアゾール製品。
【請求項6】
導入孔/下端導入孔の断面積比が0.01〜2である請求項5記載のエアゾール製品。
【請求項7】
前記エアゾール組成物中に粉末を0.5〜20重量%、液化ガスを40〜97重量%含有する請求項1、2または3記載のエアゾール製品。
【請求項8】
前記エアゾール組成物の液相と粉末との比重差が0.5以上である請求項1、2または3記載のエアゾール製品。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−312478(P2006−312478A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136307(P2005−136307)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】