説明

粉末含有油中水型乳化化粧料

【課題】カバー力を上げながらも厚ぼったくならず自然な仕上がりで、感触も良く、分散安定性に優れた粉末含有油中水型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】(A)HLB値6以下であり、25℃で液状の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤、(B)揮発性油剤、及び(C)平均粒子径が0.1〜5μmの球状アナタース型二酸化チタンであって、窒素吸着法で測定した細孔分布における細孔直径のピークが5〜50nmにあり、しかも、細孔容積が0.05〜0.3cm3/gの範囲である二酸化チタン顔料、を含有することを特徴とする粉末含有油中水型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末含有油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
メイクアップ化粧料は、より美しく魅力的に見せるためのアイテムであり、特にファンデーションは肌を美しく見せるための重要なアイテムとなっている。
ファンデーションで美しい肌を作る重要なポイントは、その使用目的に合ったカバー力である。原料としては酸化チタンの配合が有効な手段の1つであり、酸化チタンの粒子径や配合量が重要になってくる。
【0003】
酸化チタンの粒子径に関しては、特許文献1に、0.5〜2.0μmの一次粒径の大きな酸化チタンが報告され、一方特許文献2に平均一次粒子径が0.01〜0.07μmの小球微粒子の球状集合体が報告されている。
【0004】
一方、カバー力を上げるために酸化チタンの配合量を増やすと、ファンデーションを塗布した膜が厚くなってしまい、顔色が不自然に見えたり、よれ等の化粧崩れが起こることが懸念される。さらにはファンデーションの塗布時の感触にも影響し、塗布感が重くなったり、肌への引っかかり感が出てきてしまい、あまり良くない。また、保存安定性にも影響し、酸化チタンの配合量を増やすと顔料の分散が悪くなったり、長期的な保存安定性を確保するのが難しくなってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2004/052786号パンフレット
【特許文献2】特開2000−191325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、カバー力を上げながらも厚ぼったくならず自然な仕上がりで、感触も良く、分散安定性に優れた粉末含有油中水型乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく種々検討した結果、細孔直径及び細孔容積が一定の範囲にある二酸化チタンを採用し、これに多価アルコール脂肪酸エステルと揮発性油剤を組み合わせて油中水型乳化系とすれば、カバー力が優れているにもかかわらず自然な仕上がりが得られ、感触及び分散安定性も良好な粉末含有油中水型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)HLB値6以下であり、25℃で液状の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤、(B)揮発性油剤、及び(C)平均粒子径が0.1〜5μmの球状アナタース型二酸化チタンであって、窒素吸着法で測定した細孔分布における細孔直径のピークが5〜50nmにあり、しかも、細孔容積が0.05〜0.3cm3/gの範囲である二酸化チタン顔料、を含有することを特徴とする粉末含有油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粉末含有油中水型乳化化粧料は、カバー力を上げながらも厚ぼったくならず自然な仕上がりで、感触も良く、分散安定性に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられる(A)HLB値6以下であり、25℃で液状の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステルなどの3価〜5価の多価アルコール脂肪酸エステルが挙げられる。
脂肪酸部分の炭素数は8〜20が好ましく、12〜20がより好ましい。当該多価アルコール脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル等が挙げられる。
【0011】
成分(A)の含有量は、粉末含有油中水型乳化化粧料の総量を基準として0.3〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%であり、さらに好ましくは1〜2.5質量%である。成分(A)の含有量がこの範囲にあると、保存安定性が良好であり、塗布時の感触がさっぱりして軽くなる。
尚、本発明におけるHLB値は下記の川上式(I)により算出されるものを意味する。
HLB=7+11.7log(Mw/Mo) ・・・(I)
ここで式(I)においてMwは親水性基部の分子量、Moは親油性基部の分子量をそれぞれ表す。
【0012】
本発明に用いられる(B)揮発性油剤としては室温(25℃)で揮発性を有する油剤で化粧品に一般的に用いられているものであれば、何れのものも使用することができるが、例えば、重合度0〜5の直鎖状のジメチルポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の重合度3〜7の環状シリコーン;式[(CH33SiO]3SiCH3で表されるメチルトリメチコン、式[(CH33SiO]4Siで表されるテトラキストリメルシロキシシラン等の分岐状ジメチルポリシロキサン;水添ポリブテン、イソヘキサデカン、イソドデカン等の分岐状炭化水素等が挙げられる。
このうち、重合度3〜7の環状シリコーン、分岐状ジメチルポリシロキサン、分岐状炭化水素を用いるのが感触の点で好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソドデカン、メチルトリメチコンを用いると、更に塗布時の感触が軽くなり、また塗布後のべたつき感がない点で特に優れる。
【0013】
成分(B)の含有量は粉末含有油中水型乳化化粧料の総量を基準として、3〜40質量%が好ましく、より好ましくは5〜30質量%であり、さらに好ましくは8〜20質量%である。成分(B)の含有量がこの範囲にあると、油性感がなく、使用感が良好となる。
【0014】
本発明に用いられる(C)二酸化チタンは、平均粒子径が0.1〜5μmの球状アナタース型二酸化チタンであって、窒素吸着法で測定した細孔分布における細孔直径のピークが5〜50nmにあり、しかも、細孔容積が0.05〜0.3cm3/gの範囲のものである。この(C)二酸化チタンは、平均粒子径が大きく、かつ一定の細孔を有する点に特徴があり、かかる特徴により、優れたカバー力を有するとともに自然な仕上がりが得られる。
【0015】
(C)二酸化チタンの平均粒子径は0.1〜1μmが好ましく、さらに0.3〜0.5μmがより好ましい。また、(C)二酸化チタンの形状は球状であり、電子顕微鏡写真で観察して略球状であればよい。ここで、二酸化チタンの結晶形はX線回折で、形状は電子顕微鏡写真で確認できる。
また、(C)二酸化チタンの窒素吸着法で測定した細孔分布における細孔直径のピークは10〜30nmがより好ましく、細孔容積は0.05〜0.15cm3/gの範囲がより好ましい。(C)二酸化チタンの細孔直径ピークや細孔容積がこの範囲にあると、自然な仕上りと使用感が良好になる。この細孔直径のピーク、細孔容積は、窒素吸着法(BET法)で比表面積を測定するとともに、その吸着等温線からBIH解析によりメソ細孔の分布、直径のピーク、容積等を算出する。
【0016】
(C)二酸化チタンの表面は、アルミナ、シリカ、亜鉛華処理されたものやシリコーン等で疎水処理したものが好ましい。
【0017】
(C)二酸化チタンとしては、石原産業社製の大粒径二酸化チタンMPT−351等を用いることもできるが、硫酸チタニルを170℃以上の温度下、かつ、該温度の飽和蒸気圧以上の圧力下で加水分解して含水二酸化チタンを得、次いで、該含水二酸化チタンを600〜800℃の温度で焼成して製造することもできる。また別の方法として、加圧加水分解して得られた含水二酸化チタンを塩酸中に浸漬した後に400〜600℃の温度で焼成して製造することができる。
【0018】
(C)二酸化チタンの含有量は粉末含有油中水型乳化化粧料の総量を基準として、1〜20質量%が好ましく、より好ましくは2〜18質量%であり、さらに好ましくは3〜15質量%である。(C)二酸化チタンの含有量がこの範囲にあると、十分なカバー力が得られ、メイクアップ化粧料や日焼け止め化粧料として良好であり、感触も重くならない。
【0019】
本発明の粉末含有油中水型乳化化粧料には、上記の必須成分に加えて、必要に応じて不揮発性の油性成分、保湿剤、成分(A)以外の乳化剤、香料、紫外線吸収剤、防腐剤、植物エキス、成分(C)以外の顔料、水等を配合することができる。
【0020】
本発明の粉末含有油中水型乳化化粧料は、常法、例えば粉末成分を油性成分に分散させ、次いで水相成分を添加して攪拌することにより製造することができる。
【0021】
本発明の粉末含有油中水型乳化化粧料としては、化粧下地、乳化ファンデーション、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料、サンスクリーン等の日焼け止め化粧料等が含まれる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0023】
<評価方法>
(1)使用特性試験
女性パネラー20名の顔面に実施例、比較例の各試料を塗布してもらい、「自然な化粧仕上がりである」、「感触が滑らかである」と回答した人数に従って、使用特性を評価した。評価基準は下記の通りである。
【0024】
人数が15人以上;○
人数が7〜14人;△
人数が6人以下 ;×
【0025】
(2)保存安定性試験
所定の方法で調製した試料を0℃、25℃、45℃の恒温槽内に放置し、3週間後の保存安定性を下記の基準に従って評価した。
【0026】
油にじみなし ;○
わずかに油にじみあり;△
油にじみあり ;×
【0027】
<粉末含有油中水型乳化化粧料の調製方法>
油相成分を80℃に加熱して、これに粉末を分散させ、あらかじめ80℃加熱しておいた水相成分を添加し、乳化後室温まで攪拌冷却して、目的の粉末含有油中水型乳化化粧料を得る。
【0028】
<実施例1〜6、比較例1〜4 乳化ファンデーション>
表1記載の組成の乳化ファンデーションを上記調製方法により製造し、上記各試験を実施した。その結果を併せて表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1に示すように実施例1〜6の乳化ファンデーションは、自然な化粧仕上がり、使用特性、保存安定性のすべての点において比較例1〜4の乳化ファンデーションより明らかに優れている。
【0031】
実施例7(乳化ファンデーション)
油相 (質量%)
モノイソステアリン酸ソルビタン 1.0
ポリエーテル変性シリコーン混合物*4 3.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0
ジカプリル酸プロピレングリコール 3.0
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5.0
水添ポリデセン 4.0
トリベヘン酸グリセリル 1.0
大豆由来レシチン 0.2
ユビキノン 0.02
水相
ジプロピレングリコール 3.0
グリセリン 3.0
クロルフェネシン 0.2
フェノキシエタノール 0.3
ローヤルゼリーエキス 0.2
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 to 100
粉末
大粒径二酸化チタンMPT−351 12.0
酸化鉄 2.0
タルク 3.0
板状硫酸バリウム 2.0
ポリアクリル酸アルキル 1.0
*4;BY22−008M(ポリエーテル変性シリコーンを10%、環状5量体シリコーンを90%含有、東レ・ダウコーニング社製)
【0032】
製造方法
油相成分を80℃に加熱して、これに粉末を分散させ、あらかじめ80℃加熱しておいた水相成分を添加し、乳化後室温まで攪拌冷却して、目的の粉末含有油中水型乳化化粧料を得る。
【0033】
実施例8(乳化ファンデーション)
油相 (質量%)
モノイソステアリン酸ジグリセリル 1.0
ポリエーテル変性シリコーン混合物*5 0.3
メチルトリメチコン 15.0
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5.0
イソノナン酸イソノニル 3.0
架橋型シリコーン末 2.0
トリベヘン酸グリセリル 1.0
水相
ジプロピレングリコール 5.0
マルチトール 3.0
フェノキシエタノール 0.5
ローヤルゼリーエキス 0.3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.02
精製水 to 100
粉末
大粒径二酸化チタンMPT−351 4.0
平均粒子径0.25μm二酸化チタン*6 8.0
酸化鉄 2.5
タルク 3.5
黄酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム被覆マイカ 0.1
ラウロイルリシン 1.0
ポリメチルシルセスキオキサン 0.5
*5;BY11−030(東レ・ダウコーニング社製)
*6;CR−50(石原産業社製)
【0034】
製造方法
油相成分を80℃に加熱して、これに粉末を分散させ、あらかじめ80℃加熱しておいた水相成分を添加し、乳化後室温まで攪拌冷却して、目的の粉末含有油中水型乳化化粧料を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)HLB値6以下であり、25℃で液状の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤、(B)揮発性油剤、及び(C)平均粒子径が0.1〜5μmの球状アナタース型二酸化チタンであって、窒素吸着法で測定した細孔分布における細孔直径のピークが5〜50nmにあり、しかも、細孔容積が0.05〜0.3cm3/gの範囲である二酸化チタン顔料、を含有することを特徴とする粉末含有油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
(B)揮発性油剤がデカメチルシクロペンタシロキサン、イソドデカン及びメチルトリメチコンからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1記載の粉末含有油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
化粧料の総量を基準として、成分(A)の含有量が0.3〜5質量%、成分(B)の含有量が3〜40質量%、成分(C)の含有量が1〜20質量%である請求項1又は2記載の粉末含有油中水型乳化化粧料。

【公開番号】特開2013−28567(P2013−28567A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166510(P2011−166510)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】