説明

粉末成形用パウダー

【課題】脱水、乾燥、添加剤混合等の後工程や保存時にブロッキングしない粉末成形用パウダーであって、パウダースラッシュ成形において低温で成形できる粉末成形用パウダーを提供する。
【解決手段】アクリル系重合体粒子(i)をアクリル系重合体ラテックス(ii)で被覆したパウダーであって、該アクリル系重合体ラテックス(ii)の平均粒子径が500〜800Åであり、該重合体ラテックスを構成する重合体が80〜95℃のガラス転移温度を有し、且つ重量平均分子量が40,000〜80,000であるアクリル系重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ブロッキング性と成形性に優れた粉末成形用パウダーに関する。
【背景技術】
【0002】
粉末成形用パウダーは、金型溶融成形等により成形体を製造するための材料として工業的に用いられている。金型溶融成形では、所望の成形用金型内に重合体粉体を充填した後、樹脂を溶融させ、冷却固化させる工程を経て所望の成形品を得ることができる。
【0003】
アクリル系ブロック共重合体の金型溶融成型品は柔軟性に富み、優れた触感を得ることができる。なお、この柔軟性を得るため、アクリル系ブロック共重合体のガラス転移温度は一般に100℃以下が必要であるとされている。但し、粉末成形用パウダーのガラス転移温度が低い場合、製造工程(たとえば、スラリーを脱水、乾燥する後処理工程や、乾燥された粉末成形用パウダーに添加剤を混合する工程)や、製品の輸送中や保管時などにおいてブロッキングが発生するという問題がある。ここで、ブロッキングの発生により粉体が凝集すると、成形用金型内に粉末成形用パウダーを充填する際に充填度合いが不均一となり、その後の樹脂の溶融にむらが生じ、不具合を引き起こすこととなる。
【0004】
ブロッキングの発生を防止する方法としては、特許文献1に、ポリウレタンの重合体に対し平均粒径が10μm以下の樹脂粉末を添加する方法が開示されている。ポリウレタンはアクリル系ブロック共重合体の粉体と比較して硬度が高いため、樹脂粉末を添加する方法でもブロッキングの防止が可能である。しかし、アクリル系ブロック共重合体の粉体のような硬度が小さいものについては、重合体が変形して樹脂粉末による被覆が不完全となる場合があり、ブロッキング防止効果が十分発現しない場合がある。
【0005】
従って、硬度が小さく、粘着性がある粉末成形用パウダーに対し、ブロッキングを抑制する方法が求められていた。
【0006】
また、そのパウダーを用いてパウダースラッシュ成形する場合、成形時間を短縮させるためにできるだけ、低温で成形できるパウダーが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−017033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、脱水、乾燥、添加剤混合等の後工程や保存時にブロッキングしない粉末成形用パウダーであって、パウダースラッシュ成形において低温で成形できる粉末成形用パウダーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記課題を解決するに至った。
すなわち本発明は、アクリル系重合体粒子(i)をアクリル系重合体ラテックス(ii)で被覆したパウダーであって、該アクリル系重合体ラテックス(ii)の平均粒子径が500〜800Åであり、該重合体ラテックスを構成する重合体が80〜95℃のガラス転移温度を有し、且つ重量平均分子量が40,000〜80,000であるアクリル系重合体であることを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0010】
好ましい実施態様としては、アクリル系重合体粒子(i)が、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)とからなり、アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系単量体を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系単量体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに酸無水物基および/またはカルボキシル基を有するアクリル系ブロック共重合体であって、アクリル系重合体(B)は、1分子中に少なくとも平均1.1個以上の反応性官能基(C)を有するアクリル系重合体であることを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0011】
好ましい実施態様としては、アクリル系重合体ラテックス(ii)が、連鎖移動剤としてチオグリコール酸系化合物、重合開始剤として過硫酸系化合物、乳化剤としてアニオン系界面活性剤、を使用した乳化重合法によって得られることを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0012】
好ましい実施態様としては、反応性官能基(C)が、エポキシ基、水酸基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、反応性官能基(C)が、エポキシ基であることを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0014】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、ガラス転移温度が50〜130℃であるメタアクリル系重合体ブロック(a)15〜50重量%と、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)85〜50重量%とからなることを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0015】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)に含まれる酸無水物基が、一般式(1):
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R1はそれぞれ独立に水素またはメチル基を表わす。nは0〜3の整数、mは0または1の整数を表わす。)で表されるものであることを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0018】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が、30,000〜200,000であることを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0019】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.8以下であることを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0020】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、原子移動ラジカル重合により製造されたブロック共重合体であることを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0021】
好ましい実施態様としては、アクリル系重合体(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が、500〜30,000であることを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0022】
好ましい実施態様としては、アクリル系重合体粒子(i)がアクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対してトリメリット酸エステル系可塑剤5〜18重量部、酸化亜鉛0.01〜0.1重量部を含むことを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0023】
好ましい実施態様としては、アクリル系重合体粒子(i)とアクリル系重合体ラテックス(ii)の合計100重量部に対して無機球状粒子を0.05〜1重量部含むことを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0024】
好ましい実施態様としては、無機球状粒子が、シリカであることを特徴とする粉末成形用パウダーに関する。
【0025】
また本発明は、上記記載の粉末成形用パウダーをパウダースラッシュ成形したものであることを特徴とするパウダースラッシュ成形体に関する。
【0026】
また本発明は、上記記載の粉末成形用パウダーをパウダースラッシュ成形したものであることを特徴とする自動車内装用表皮に関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の粉末成形用パウダーは、脱水、乾燥、添加剤混合等の後工程や保存時にブロッキングせず、パウダースラッシュ成形において低温で成形できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0029】
本発明は、アクリル系重合体粒子(i)をアクリル系重合体ラテックス(ii)で被覆したパウダーであって、該アクリル系重合体ラテックス(ii)の平均粒子径が500〜800Åであり、該重合体ラテックスを構成する重合体が80〜95℃のガラス転移温度を有し、且つ重量平均分子量が40,000〜80,000であるアクリル系重合体であることを特徴とする粉末成形用パウダーである。さらには、アクリル系重合体粒子(i)が、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)とからなり、アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系単量体を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系単量体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに酸無水物基および/またはカルボキシル基を有するアクリル系ブロック共重合体であって、アクリル系重合体(B)は、1分子中に少なくとも平均1.1個以上の反応性官能基(C)を有するアクリル系重合体であることを特徴とする粉末成形用パウダーであることが好ましい。
【0030】
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
重合体粒子を構成するアクリル系ブロック共重合体(A)は、ハードセグメントであるメタアクリル系重合体ブロック(a)と、ソフトセグメントであるアクリル系重合体ブロック(b)から成り、メタアクリル系重合体ブロック(a)により成形時の形状保持性が、アクリル系重合体ブロック(b)により、エラストマーとしての弾性及び成形時の溶融性が生じることとなる。このような目的のため、アクリル系ブロック共重合体(A)において、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合を15〜50重量%、アクリル系重合体ブロック(b)の割合を85〜50重量%とするのが好ましい。メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が15重量%より小さく、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が85重量%より大きいと、成形時に形状が保持されず、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が50重量%より大きく、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が50重量%より小さいと、エラストマーとしての弾性および成形時の溶融性が低下する場合がある。
【0031】
組成物の硬度の観点からは、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が少ないと硬度が低くなり、また、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が少ないと、硬度が高くなる傾向がある。このため、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、エラストマー組成物の必要とされる硬度を考慮して、適宜設定する必要がある。また加工性の観点からは、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が少ないと、粘度が低く、また、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が少ないと、粘度が高くなる傾向がある。このため、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、必要とする加工特性も考慮して、適宜設定する必要がある。
【0032】
アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が30,000〜200,000となるように調整するのが好ましい。分子量が30,000より小さいと、エラストマーとして充分な機械特性を発現出来ない場合があり、逆に分子量が200,000より大きいと、加工特性が低下する場合がある。
【0033】
また、アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。Mw/Mnが1.8をこえるとアクリル系ブロック共重合体の均一性が悪化する場合がある。
【0034】
なお、線状ブロック共重合体は、いずれの構造(配列)のものであってもよいが、線状ブロック共重合体の物性または組成物の物性の点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)をa、アクリル系重合体ブロック(b)をbと表現したとき、(a−b)n型、b−(a−b)n型および(a−b)n−a型(nは1以上の整数、たとえば1〜3の整数)からなる群より選択される少なくとも1種のアクリル系ブロック共重合体からなることが好ましい。これらの中でも、加工時の取り扱い容易性や組成物の物性の点から、a−b型のジブロック共重合体、a−b−a型のトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましい。
【0035】
アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度の関係は、メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度をTga、アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度をTgbとすると、機械強度やゴム弾性発現等の点で下式の関係を満たすことが好ましい。
【0036】
Tga>Tgb
なお、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができる。
【0037】
アクリル系ブロック共重合体(A)は、ガラス転移温度が50〜130℃であるメタアクリル系重合体ブロック(a)15〜50重量%と、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)85〜50重量%とからなることが好ましい。
【0038】
<メタアクリル系重合体ブロック(a)>
メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックである。メタアクリル酸エステルの割合は50〜100重量%であり、これと共重合可能なビニル系単量体が0〜50重量%からなることが好ましい。メタアクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、メタアクリル酸エステルの特徴である耐候性などが損なわれる場合がある。
【0039】
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸イソボルニルなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;メタアクリル酸ベンジルなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トリルなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;メタアクリル酸2−メトキシエチル、メタアクリル酸3−メトキシブチルなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;メタアクリル酸トリフルオロメチル、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸2−トリフルオロエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステルなどがあげられる。これらは少なくとも1種用いられる。これらの中でも、加工性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。
【0040】
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0041】
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイルなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチルなどのアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸フッ化アルキルエステルなどをあげることができる。
【0042】
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0043】
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0044】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0045】
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0046】
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0047】
ビニル系単量体として挙げられたこれらの化合物は、それぞれ単独で又は二以上組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、後述するメタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度や、アクリル系ブロック体(b)との相溶性などを考慮して適宜選択される。
【0048】
メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、50〜130℃となるように調整するのが好ましい。これは、パウダースラッシュ成形材料は、無加圧下でも流動する必要があり、メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度Tgaが130℃以上となると、溶融粘度が高くなり成形性が悪くなる傾向にある一方で、ガラス転移温度Tgaが50℃以下であると、樹脂組成物が常温でも流動性を有し、粒子としての性状を保持することが出来なくなるためである。
【0049】
<アクリル系重合体ブロック(b)>
アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体成分を重合してなるブロックである。
【0050】
アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル酸エステル50〜100重量%と、これと共重合可能な異種のアクリル酸エステルおよび/又はビニル系単量体0〜50重量%とからなるのが好ましい。
【0051】
アクリル酸−n−ブチルを用いた場合、本発明に係る組成物から得られた成形体は、良好なゴム弾性および低温特性を示すようになる。アクリル酸エチルを用いた場合、良好な耐油性および引張強度等の機械特性を示すようになる。また、アクリル酸−2−メトキシエチルを用いた場合、良好な低温特性と耐油性を示し、また、樹脂の表面タック性が改善されることとなる。これらは要求特性に応じて、単独で又は二以上を組み合わせて使用する。なお、これらのアクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、柔軟性、耐油性が損なわれる場合がある。
【0052】
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルとは異種のアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体として例示したアクリル酸エステルと同様の単量体をあげることができる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができ、これらの具体例としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)に用いられる前記のものと同様のものをあげることができる。これらのビニル系単量体は、それぞれ単独で又は二以上組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転移温度および耐油性、メタアクリル系重合体ブロック(a)との相溶性などのバランスを勘案して、適宜好ましいものを選択する。たとえば、組成物の耐油性の向上を目的とした場合、アクリロニトリルを共重合するとよい。
【0054】
アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、組成物のゴム弾性の観点から、25℃以下であるのが好ましく、0℃以下であるのがより好ましく、−20℃以下であるのがさらに好ましい。アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度が、エラストマー組成物の使用される環境の温度より高いと、柔軟性や、ゴム弾性が発現されにくくなる。
【0055】
<酸無水物基およびカルボキシル基>
酸無水物基およびカルボキシル基は、本発明に係る粉末成形用パウダーから得られる成形体に耐薬品性やゴム弾性を付与しつつ、高温での機械物性を保持させるために、メタアクリル系重合体ブロック(a)および/またはアクリル系重合体ブロック(b)に、ブロック共重合体一分子当たり1つ以上導入する。酸無水物基およびカルボキシル基は、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)との反応性や、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)の凝集力やガラス転移温度、さらには必要とされるアクリル系ブロック共重合体(A)の物性、導入の容易性などに応じて、酸無水物基またはカルボキシル基どちらか一方を導入しても良いし、共に導入しても良い。
【0056】
本発明において、酸無水物基およびカルボキシル基は、アクリル系重合体(B)との反応点として作用すればよく、ブロック共重合体が高分子量化または架橋されるための反応点または架橋点として作用することが好ましい。酸無水物基およびカルボキシル基は、酸無水物基およびカルボキシル基を適当な保護基で保護した形、または、酸無水物基およびカルボキシル基の前駆体の形でブロック共重合体に導入し、そののちに公知の化学反応で酸無水物基およびカルボキシル基を生成させることにより導入することができる。
【0057】
前記酸無水物基およびカルボキシル基の含有数は、酸無水物基およびカルボキシル基の凝集力、反応性、アクリル系ブロック共重合体(A)の構造および組成、アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するブロックの数、ガラス転移温度によって変化させ、その数は必要に応じて適宜設定する必要があるが、好ましくはブロック共重合体1分子あたり平均して1.0個以上、より好ましくは2.0個以上とする。これは、1.0個より少なくなると、ブロック共重合体の2分子間反応による高分子量化や架橋による耐熱性向上が不十分になる傾向があるためである。
【0058】
なお、酸無水物基やカルボキシル基を導入することによりアクリル系重合体ブロック(b)の凝集力やガラス転移温度Tgbが向上すると、柔軟性、ゴム弾性、低温特性が悪化する傾向にある。このため、酸無水物基および/またはカルボキシル基をアクリル系重合体ブロック(b)に導入する場合、アクリル系ブロック共重合体(A)の柔軟性、ゴム弾性、低温特性が悪化しない範囲で導入することが好ましい。具体的には酸無水物基やカルボキシル基を導入後のアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度Tgbが25℃以下になるように導入するのが好ましく、0℃以下がより好ましく、−20℃以下になるようにするのがさらに好ましい。
【0059】
以下に、酸無水物基およびカルボキシル基について説明する。
【0060】
組成物中に活性プロトンを有する化合物を含有する場合、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)中の酸無水物基は、以下に記載の所定の温度で加熱することにより、化合物(B)中の反応性官能基(C)と容易に反応する。酸無水物基の導入位置は、特に限定されるものではなく、酸無水物基は、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)において、その主鎖中に導入されていても良いし、側鎖に導入されていても良い。酸無水物基はカルボキシル基を無水物化したものであり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)への導入の容易性から、主鎖中へ導入されていることが好ましく、具体的には一般式(1)で表される。一般式(1):
【0061】
【化2】

【0062】
(式中、R1はそれぞれ独立に水素またはメチル基を表わす。nは0〜3の整数、mは0または1の整数を表わす。)で表される形で含有される。
【0063】
一般式(1)中のnは0〜3の整数であって、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。nが4以上の場合は、重合が煩雑になったり、酸無水物基の環化が困難になる傾向にある。
【0064】
酸無水物基の導入方法としては、酸無水物基の前駆体の形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、そののちに環化させることが好ましい。特に、一般式(2):
【0065】
【化3】

【0066】
(式中、R2は水素またはメチル基を表わす。R3は水素、メチル基またはフェニル基を表わし、3つのR3のうち少なくとも2つはメチル基および/またはフェニル基から選ばれ、3つのR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される単位を少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体を溶融混練して、環化導入することが好ましい。
【0067】
アクリル系重合体ブロック(b)への一般式(2)で表される単位の導入は、一般式(2)に由来するアクリル酸エステル、またはメタアクリル酸エステル単量体を共重合することによって行なうことができる。単量体としては、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸α,α−ジメチルベンジル、(メタ)アクリル酸α−メチルベンジルなどがあげられるが、これらに限定するものではない。これらのなかでも、入手性や重合容易性、酸無水物基生成容易性などの点から(メタ)アクリル酸−t−ブチルが好ましい。なお、本願においては、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタアクリル酸を意味する。
【0068】
酸無水物基の形成は、酸無水物基の前駆体を有するアクリル系ブロック共重合体を高温下で加熱することにより行うことが好ましく、180〜300℃で加熱することにより行うのがより好ましい。180℃より低いと酸無水物基の生成が不十分となる傾向があり、300℃より高くなると、酸無水物基の前駆体を有するアクリル系ブロック共重合体自体が分解することがある。
【0069】
アクリル系ブロック共重合体(A)中のカルボキシル基は、化合物(B)中の反応性官能基(C)と容易に反応する。カルボキシル基の導入位置は、特に限定されるものではなく、カルボキシル基は、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)において、その主鎖中に導入されていても良いし、側鎖に導入されていても良いが、導入の容易性から、主鎖中へ導入されていることが好ましい。
【0070】
カルボキシル基の導入は、カルボキシル基を有する単量体が重合条件下で触媒を被毒することがない場合は、直接、重合により導入することにより行うのが好ましく、カルボキシル基を有する単量体が重合時に触媒を失活させる場合には、官能基変換によりカルボキシル基を導入する方法により行うのが好ましい。
【0071】
官能基変換によりカルボキシル基を導入する方法としては、カルボキシル基を適当な保護基で保護した形、または、カルボキシル基の前駆体となる官能基の形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、そののちに公知の所定の化学反応で官能基を生成させる方法が挙げられる。
【0072】
カルボキシル基を有するアクリル系ブロック共重合体(A)の合成方法としては、たとえば、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルなどのように、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むアクリル系ブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応によってカルボキシル基を生成させる方法(特開平10−298248号公報、特開2001−234146号公報)や、一般式(2):
【0073】
【化4】

【0074】
(式中、R2は水素またはメチル基を表わす。R3は水素、メチル基またはフェニル基を表わし、3つのR3のうち少なくとも2つはメチル基および/またはフェニル基から選ばれ、3つのR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる単位を少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体を、溶融混練して導入する方法がある。
【0075】
また前記酸無水物基を加水分解することによりカルボキシル基を導入することもできる。
【0076】
<アクリル系重合体(B)>
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物を構成するアクリル系重合体(B)は、一分子中に1.1個以上の反応性官能基(C)を有することが必要である。アクリル系重合体(B)は、組成物の成形時に可塑剤として成形流動性を向上させると同時に、成形時にアクリル系ブロック共重合体(A)中の酸無水物基やカルボキシル基と反応性官能基(C)によって反応し、アクリル系ブロック共重合体(A)を高分子量化あるいは架橋させる役割を担う。なお、ここでいう反応性官能基(C)の個数とは、アクリル系重合体(B)1分子中に存在する反応性官能基(C)の平均の個数を表す。
【0077】
アクリル系重合体(B)中の反応性官能基(C)の数は、1.1個以上が必要であり、好ましくは1.5個以上、更に好ましくは2.0個以上である。その数は、反応性官能基(C)の反応性、反応性官能基(C)の含有される部位および様式、アクリル系ブロック共重合体(A)中の酸無水物基および/またはカルボキシル基の含有される数や部位および様式に応じて変化させる。反応性官能基(C)の含有数が1.1個より少なくなると、ブロック共重合体の高分子量化反応剤あるいは架橋剤としての効果が低くなり、アクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性を向上させる効果が不十分となる場合がある。
【0078】
アクリル系重合体(B)は、1種若しくは2種以上のアクリル系単量体を重合させるか、又は1種若しくは2種以上のアクリル系単量体とアクリル系単量体以外の単量体とを重合させることにより得られたものであることが好ましい。
【0079】
アクリル系単量体としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)の項において記載したアクリル酸エステルやメタアクリル酸エステルが挙げられる。このうち、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルのいずれか又はこれらの2種以上を組み合わせて用いるのが、入手性の点から好ましい。
【0080】
アクリル系単量体以外の単量体としては、アクリル系単量体と共重合可能な単量体である限りにおいては特に制限はなく、例えば酢酸ビニル、スチレン等を用いることができる。
【0081】
なお、アクリル系重合体(B)を構成する全単量体成分に対するアクリロイル基を有する単量体成分の割合は、70重量%以上であることが好ましい。その割合が70重量%未満の場合、耐候性が低下し、アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性も低下する傾向にある。また、その成形物に変色が生じやすくなる。
【0082】
アクリル系重合体(B)の分子量は、特に制限はないが、重量平均分子量で30,000以下の低分子量のものが好ましく、500〜30,000のものがさらに好ましく、500〜10,000のものが特に好ましい。重量平均分子量が500未満の場合、成形体にべたつきが生じる傾向があり、一方、重量平均分子量が30,000を超えた場合、成形物の可塑化が不十分になりやすい。
【0083】
アクリル系重合体(B)の粘度は、25℃においてコーン・プレート型の回転粘度計(E型粘度計)で測定した時、35,000mPa・s以下であるのが好ましく、10,000mPa・s以下であるのがより好ましく、5,000mPa・s以下であるのが特に好ましい。粘度が35,000mPa・sより高いと、組成物の可塑化効果が低下する傾向にある。好ましい粘度の下限は特にないが、アクリル系重合体の通常の粘度は10mPa・s以上である。
【0084】
アクリル系重合体(B)のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定法(DSC)で測定した場合に100℃以下であるのが好ましく、25℃以下であるのがより好ましく、0℃以下であるのが更に好ましく、−30℃以下であるのが特に好ましい。ガラス転移温度Tgが100℃を超えると、可塑剤として成形性を向上させる効果が不十分になる傾向があり、また、得られる成形体の柔軟性が低下する傾向にある。
【0085】
アクリル系重合体(B)は、従来公知の方法で重合させることにより得られる。重合方法は必要に応じて適宜選択すればよく、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、リビングアニオン重合法や連鎖移動剤を用いる重合およびリビングラジカル重合法等の制御重合法等の方法により行うことができるが、耐候性や耐熱性が良好で比較的低分子量かつ分子量分布の小さい重合体が得られる制御重合法が好ましく、以下に記載の高温連続重合法を用いるのがコスト面などの点でより好ましい。
【0086】
アクリル系重合体(B)は、180〜350℃の温度での重合反応により得るのが好ましい。この重合温度では、重合開始剤や連鎖移動剤を使用することなく、比較的低分子量のアクリル系重合体が得られる。このため、そのアクリル系重合体は優れた可塑剤となり、耐候性も良好である。具体的には、特表昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報、特開昭60−215007号公報及び国際公開第01/083619号パンフレットに記載された高温連続重合法、すなわち、所定の温度及び圧力に設定された反応器内に上記の単量体の混合物を一定の供給速度で連続して供給し、その供給量に見合う量の反応液を抜き出す方法が例示される。
【0087】
<反応性官能基(C)>
反応性官能基(C)としては、エポキシ基、水酸基、アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を用いるのが望ましい。これらの官能基のうち、アクリル系ブロック共重合体(A)に含まれる酸無水物基やカルボキシル基との反応性およびアクリル系重合体(B)への官能基の導入のしやすさから、エポキシ基がより好ましい。
【0088】
アクリル系重合体(B)への反応性官能基(C)の導入は、例えば、アクリル系重合体を構成する単量体と共重合可能な反応性官能基(C)を有するビニル系単量体等を共重合することにより行うことが出来る。
【0089】
反応性官能基(C)を有するアクリル系重合体(B)としては、具体的には東亞合成(株)のARUFON(登録商標)XG4000、ARUFON UG4000、ARUFON XG4010、ARUFON UG4010、ARUFON UG4012、ARUFON XD945、ARUFON XD950、ARUFON UG4030、ARUFON UG4070などが好適に使用できる。これらは、オールアクリル、アクリレート/スチレン等のアクリル系重合体であって、エポキシ基を1分子中に1.1個以上含む重合体である。
【0090】
<アクリル系ブロック共重合体の製法>
アクリル系ブロック共重合体を製造する方法としては、制御重合法を用いることが好ましい。制御重合法としては、リビングアニオン重合法(特開平11−335432)、有機希土類遷移金属錯体を重合開始剤として用いる重合法(特開平6−93060)、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法(特開平2−45511)、制御ラジカル重合法などが挙げられる。本発明においては、特に官能基を有するモノマーの重合容易性の点から、制御ラジカル重合が好ましい。
【0091】
制御ラジカル重合法としては、たとえば、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いる重合法、コバルトポルフィルン錯体を用いる重合法、ニトロキシドを用いる重合法(WO2004/014926)、有機テルル化合物などの高周期ヘテロ元素化合物を用いる重合法(特許第3839829号)、可逆的付加脱離連鎖移動重合法(RAFT)(特許第3639859号)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)(特許第3040172号)などが挙げられる。
【0092】
本発明においては、安価な原料と穏和な反応条件で制御されたアクリル系ブロック共重合体が得られる点で、原子移動ラジカル重合法が好ましい。原子移動ラジカル重合に用いる触媒の中心金属としては、重合制御およびコストの点から銅であることが好ましい。原子移動ラジカル重合法を用いてアクリル系ブロック共重合体(A)を製造する方法としては、たとえば、WO2004/013192に挙げられた方法などを用いることができる。
【0093】
<アクリル系重合体ラテックス(ii)>
本発明の乳化重合により得られるアクリル系重合体ラテックス(ii)は、アクリル系重合体粒子(i)と類似の樹脂組成を有するものが粒子としての品質に優れることから好ましく、たとえば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを単独重合または複数種混合し共重合して得られるラテックスなどがあげられる。例えば使用されるモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の炭素数が10以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等の炭素数が10以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート類;アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、モノエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリシジルメタクリレート等の多官能性モノマー;などが挙げられるが、入手性やコストの点からアクリル酸エステルとしてはブチルアクリレート、メタクリル酸エステルとしてはメチルメタアクリレートが好ましい。アクリル系重合体ラテックス(ii)を構成する重合体100重量部において、メチルメタアクリレートを85〜99重量部、ブチルアクリレートを1〜15重量部が好ましく、メチルメタアクリレートを91〜95重量部、ブチルアクリレートを5〜9重量部がさらに好ましい。
【0094】
アクリル系重合体ラテックス(ii)を構成する重合体の分子量は、重量平均分子量で40,000〜80,000の範囲に設定することが必要である。分子量が40,000未満の場合、分子量調整に用いる悪臭の強い連鎖移動剤の量が増えて成形体の臭いが強くなる問題がある。分子量が80,000よりも多くなると低温でパウダースラッシュ成形した時に溶融性が悪くなり、機械特性が悪化する問題がある。また、本発明ではアクリル系重合体ラテックス(ii)を構成する重合体のガラス転移温度は80〜95℃であることが必要である。ガラス転移温度が80℃よりも低い場合、50℃環境下でのパウダー貯蔵安定性(ブロッキング性)が悪くなることと造粒の際、熱処理で高温にするとラテックス同士が凝集する問題がある。ガラス転移温度が95℃よりも大きくなると低温でパウダースラッシュ成形した時に溶融性が悪くなり、機械特性が悪化する問題がある。さらに乳化重合でのラテックスの粒子径は500〜800Åに設定することが必要である。ラテックスの粒子径が500Åよりも小さい場合、粒子径調整に必要な乳化剤量を非常に多くする必要があり、それによりラテックスが不安定化する問題がある。粒子径が800Åよりも大きくなるとラテックス粒子個数が減り、アクリル系重合体粒子(i)への被服率が減り、パウダー貯蔵安定性(ブロッキング性)が悪くなる問題がある。さらにその被服率を上げる、すなわちブロッキング性を良くするためにラテックスの添加部数を増やすと低温でのパウダースラッシュ成形の溶融性や成形体のスクラッチ性が悪くなる問題がある。
【0095】
上記のアクリル系重合体ラテックス(ii)の一般的な製造方法は、例えば特開平8−134316号公報、特開平8−217817号公報に詳細に記載されている。
【0096】
乳化重合法により前記の重量平均分子量を得るためには、重合調整剤として連鎖移動剤が好ましく用いられる。連鎖移動剤種としては、従来から乳化重合に使用されているものが使用可能であり、例えば、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、2-メルカプトエタノール等の含硫黄系の連鎖移動剤;トリクロロブロモメタン、四塩化炭素、ブロモホルム等の含ハロゲン系の連鎖移動剤;N,N-ジメチル-ホルムアマイド、ピバロニトリル等の含窒素系の連鎖移動剤;その他タービノーレン、ミルセル、リモネン、α-ピネン、β-ピネン等を挙げることができる。このなかでも、臭気と連鎖移動効果の点からβ-メルカプトプロピオン酸系の連鎖移動剤とチオグリコール酸系の連鎖移動剤が好ましく、チオグリコール酸2エチルヘキシル等のチオグリコール酸系化合物が入手性の点からさらに好ましい。
【0097】
乳化重合の際に使用する好ましい連鎖移動剤の量としては、臭気の点から全モノマー100重量部に対して1重量部以下が好ましい。また乳化重合に用いる重合開始剤はレドックス系化合物、過硫酸系化合物、などが挙げられるが、臭気の点から還元剤を用いない過硫酸系化合物が好ましく、中でも入手性から過硫酸カリウムがさらに好ましい。
【0098】
乳化重合の際に使用する好ましい過硫酸カリウムの量としては、重合時のラテックス安定性の点から全モノマー100重量部に対して0.1〜1重量部が好ましい。
【0099】
乳化重合に際して使用しうる乳化剤としては、特に限定されずアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性乳化剤があげられるが、この中でも、貯蔵安定性、重合安定性、凝固安定性の点からアニオン性乳化剤が好ましい。また、乳化剤は単独で使用しても良く、あるいは複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0100】
上記アニオン性乳化剤類としては、例えば、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩やアルカンスルホン酸塩及びその誘導体等を例示することができ、これらの乳化剤は単独で使用してもよくあるいは2種以上組み合わせて使用することもできる。中でも耐熱性に優れるアルカンスルホン酸塩が好ましく、入手性の点からアルカンスルホン酸ナトリウムがさらに好ましい。
【0101】
乳化重合の際に使用される好ましい乳化剤の量としては、ラテックス粒子径、重合中及び重合後のラテックス安定性の点から全モノマー100重量部に対して0.3〜1.5重量部が好ましい。
【0102】
乳化重合の際の重合温度は特に制限されるものではないが、重合生産性と重合時のラテックス安定性の点から50〜90℃が好ましい。
【0103】
本発明のアクリル系重合体ラテックス(ii)は、連鎖移動剤としてチオグリコール酸系化合物、重合開始剤として過硫酸系化合物、乳化剤としてアニオン系界面活性剤、を使用した乳化重合法によって得られることが好ましい。
【0104】
<アクリル系重合体粒子(i)の添加剤>
本発明のアクリル系重合体粒子(i)には、必要に応じて次のような添加剤を配合してもよい。
【0105】
添加剤としては、アクリル系ブロック共重合体(A)と架橋剤のアクリル系重合体(B)以外に、触媒、安定剤、可塑剤、滑剤、顔料、離型剤、無機粒子などが挙げられる。これらの添加剤は、組成物が使用される用途などに応じて、適宜最適なものを選択すればよい。
【0106】
上記の触媒としては、金属酸化物、有機系金属などが挙げられ、具体的には、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。
【0107】
触媒の中では、触媒活性効果と低揮発性の点から特に酸化亜鉛が好ましい。
【0108】
上記の安定剤としては、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などがあげられ、工業製品としては、Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、サノールLS770(三共ライフテック株式会社)、アデカスタブLA−57(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブLA−68(旭電化工業株式会社製)、Chimassorb944(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、サノールLS765(三共ライフテック株式会社)、アデカスタブLA−62(旭電化工業株式会社製)、TINUVIN144(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブLA−63(旭電化工業株式会社製)、TINUVIN622(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブLA−32(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブLA−36(旭電化工業株式会社製)、TINUVIN571(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、TINUVIN234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブLA−31(旭電化工業株式会社製)、TINUVIN1130(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブAO−20(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブAO−50(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブ2112(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブPEP−36旭電化工業株式会社製)、スミライザーGM(住友化学工業株式会社)、スミライザーGS(住友化学工業株式会社)、スミライザーTP−D(住友化学工業株式会社)などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでもアクリル系ブロック体の熱や光による劣化防止効果やコストなので点で、サノールLS770、Irganox1010、スミライザーGS、TINUVIN234が好ましい。
【0109】
上記の可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレートのようなイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタル酸のようなテトラヒドロフタル酸誘導体;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコール等のアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸誘導体;セバシン酸ジブチル等のセバシン酸誘導体;ドデカン−2−酸誘導体;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸誘導体;フマル酸ジブチル等のフマル酸誘導体;トリメリット酸トリス−2−エチルヘキシル等のトリメリット酸誘導体;ピロメリット酸誘導体;クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸誘導体;イタコン酸誘導体;オレイン酸誘導体;リシノール酸誘導体;ステアリン酸誘導体;その他脂肪酸誘導体;スルホン酸誘導体;リン酸誘導体;グルタル酸誘導体;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの二塩基酸とグリコールおよび一価アルコールなどとのポリマーであるポリエステル系可塑剤、グルコール誘導体、グリセリン誘導体、塩素化パラフィン等のパラフィン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート誘導体等が挙げられる。本発明において可塑剤はこれらに限定されることがなく、種々の可塑剤を用いることができ、ゴム用可塑剤として広く市販されているものも用いることができる。これらの化合物は、アクリル系ブロック共重合体(A)の粘度を低くすることが期待できる。市販されている可塑剤としては、C−810PS(旭電化工業(株)製)、N-810(花王(株)製)などが挙げられる。
【0110】
可塑剤の中では、アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性と低揮発性の理由から、トリメリット酸エステル系可塑剤が特に好ましい。本発明のアクリル系重合体粒子(i)は、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)とからなり、アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対してトリメリット酸エステル系可塑剤5〜18重量部、酸化亜鉛0.01〜0.1重量部を含むことが好ましい。
【0111】
上記の滑剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックス、ステアリン酸などの有機脂肪酸、ステアリン酸アミドなどの有機酸アミド、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムなど有機酸金属塩、牛脂極度硬化油などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。中でも耐摩耗性の点から牛脂極度硬化油が好ましい。
【0112】
上記の顔料としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、カーボンブラック、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0113】
上記の離型剤としては、シリコーンオイルなどが挙げられ、市販されているシリコーンオイルとしてはX−22−4015(以上、側鎖タイプ、信越シリコーン製)、X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003(以上、末端タイプ、信越シリコーン製)、XF42−B0970(以上、末端タイプ、GE東芝シリコーン(株)製)があげられる。
【0114】
上記の無機粒子としては、カーボンブラックなどの炭素同素体や、シリカ、アルミナ、酸化セリウム、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、タルク、カオリンなどの一般に無機充填剤に使用される物質などが挙げられる。この中でもコスト、入手性の点からシリカ、アルミナが好ましく、特にシリカが好ましい。
【0115】
本発明の粉末成形用パウダーには、アクリル系重合体粒子(i)とアクリル系重合体ラテックス(ii)の合計100重量部に対して無機球状粒子を0.05〜1重量部含むことが好ましい。
【0116】
<アクリル系重合体粒子(i)>
アクリル系重合体粒子(i)を含有するスラリーは、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)、可塑剤、架橋剤、触媒、安定剤、顔料、水及び分散剤を含む水分散液を攪拌することにより得られる。攪拌に用いられる装置としては特に限定されないが、例えばジャケットと攪拌機を備えた反応槽を用いることができる。攪拌機に備え付ける攪拌翼の形状にも特に制約はなく、スクリュー翼、プロペラ翼、アンカー翼、パドル翼、傾斜パドル翼、タービン翼、大型格子翼等の任意の翼を使用することができる。これらは、同一の攪拌槽を用いて、液−液分散操作と溶媒除去操作を行うこともできるし、複数の攪拌槽を用いて、すなわち、まず、第一の撹拌槽を用いて液−液分散操作を実施して分散液を形成させた後に、引き続き第二の撹拌槽を用いて溶媒除去を行うこともできる。
【0117】
攪拌時間については特に制限はなく、重合体の分散性に応じて、充分に重合体が分散されるよう適宜決定される。攪拌時間は一般的には1分〜5時間であり、好ましくは5分〜3時間であり、より好ましくは10分〜2時間である。
【0118】
撹拌時には、内容液を加熱するのが好ましい。加熱時の液温は特に限定されないが、使用する溶媒の共沸点以上であることが好ましい。ただし溶媒の共沸点以下でも容器内を減圧下にすれば容易に溶媒を除去することができる。具体的には、加熱時の液温は、70℃以上160℃未満が好ましく、80℃以上150℃未満がさらに好ましい。70℃より低いと、粒子の残存溶媒量が増加し、乾燥時の安全性、溶媒回収率等が低下する点で好ましくない。また160℃以上であると重合体の粒子が軟化するため、凝集等が発生して微粒子として分散されない可能性がある。
【0119】
アクリル系ブロック共重合体(A)、アクリル系重合体(B)、可塑剤、架橋剤、触媒、安定剤、顔料は溶媒に溶解あるいは分散させてもよい。使用される溶媒については特に限定されず、用いる重合体が溶解するよう適宜選択される。上記溶媒の沸点については、室温での取扱い性を考慮して常圧(1気圧)で25℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましい。また最終的に溶媒を蒸発させることから、溶媒の沸点は常圧(1気圧)で130℃以下であるのが好ましく、120℃以下であるのがより好ましく、100℃以下であるのが特に好ましい。
【0120】
上記溶媒の具体例としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン及びシクロペンタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、ジクロロメタン及びクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられるが、生産性とコストからトルエンが好ましい。
【0121】
スラリーを得る際に用いる水の量は、所望する重合体粒子径等を考慮して適宜決定することができる。重合体溶液の体積を100体積%とした場合に、用いる水の量は25〜500体積%であるのが好ましく、40〜400体積%であるのが好ましく、50〜300体積%であるのが特に好ましい。
【0122】
重合体粒子を含有するスラリーを得た後、加熱等により、スラリーから溶媒を除去する。溶媒を除去する方法としては、スチームを吹き込んで加熱を行い、スチームストリッピングにより上記水分散液から溶媒を除去するのが、ジャケット等による間接加熱に比べて蒸発後の粒子中の残溶媒量が少なくすることができるため好ましい。スチームストリッピングを行う時間は、溶媒がほぼ完全に留去されるのに充分な時間とするのが好ましい。また、スチームストリッピング時の攪拌は、分散状態及び生成する重合体粒子の粒形成度や形状に影響することから、スチームストリッピングはスラリーを充分に攪拌した状態で行うのが好ましい。
【0123】
スチームストリッピングに用いる容器は、蒸気を導入する配管が液相中に挿入されるように接続されていればよく、懸濁及び溶媒除去操作と同様に攪拌容器に蒸気を導入する方法が好適に使用される。また、スチームストリッピングの操作は、重合体溶液を含有するスラリーを攪拌する際に行う加熱と共に、同一の槽で蒸気を通気することにより実施することもできるし、別途ストリッピング槽を設けて加熱に引き続き実施することもできる。また、連続方式として、溶媒を除去する槽に対し通気攪拌槽を連結させる方式や、内部に複数の棚段が設けられた槽の上部からスラリーを導入し、槽の底部から水蒸気を導入する棚段方式で蒸気と樹脂スラリーを接触させることにより、ストリッピングを行うこともできる。このうち、溶媒の除去効率が高いことから、重合体粒子を含有するスラリーを得るのと同一の槽でスチームストリッピングを行うのが好ましい。
【0124】
スチームストリッピングを行なう際のスラリーの温度は、上記加熱時の液温と同様に、溶媒と水との共沸温度以上とするのが好ましい。具体的な温度は用いる溶媒によって異なるが、温度が低いと蒸発速度が遅く時間がかかり、また温度が高いと重合体が熱劣化したり、重合体表面の粘着力が上がり凝集したりするので、70℃以上160℃未満であるのが好ましく、80℃以上、150℃未満がさらに好ましい。100℃以上でスチームストリッピングを行なう場合、蒸発出口ラインを絞って槽内を加圧することによって実施することができる。
【0125】
重合体粒子を含むスラリーから溶媒を除去した後、これを濾過、遠心分離又は沈降分離法等を行ない、重合体粒子を分離することができる。さらには、溝型撹拌乾燥機などの伝導伝熱式乾燥機あるいは流動乾燥機などの熱風受熱式乾燥機などを用いて乾燥することにより、重合体粒子とすることができる。
【0126】
<分散剤>
スラリーを得る際に使用される分散剤については特に限定されないが、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性セルロース樹脂、ポリビニルアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸塩の有機物、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機固体、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸モノ(ジ又はトリ)ステアリンエステル、ペンタエリストール脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチレン)脂肪アミン、エチレンビスステアリン酸アミド、脂肪酸とジエタノールとの縮合生成物、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらは使用する重合体に応じて適宜選択されるが、なかでも分散性が良好なことから、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム及び非イオン性界面活性剤からなる群から選択される1種以上を用いるのが好ましい。分散剤は1種のみ使用することもでき、また2種以上を併用することもできる。2種以上を併用する場合には、その組合せは特に限定されないが、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム及び非イオン性界面活性剤から選択される2種以上の混合物を用いるのが好ましい。
【0127】
分散剤の使用量については、重合体に対する分散性能や溶媒の性質を考慮して適宜選択される。例えば、重合体(A)100重量部に対して分散剤を0.01〜5重量部加えるのが好ましく、0.05〜3重量部加えるのがさらに好ましく、0.1〜2重量部加えるのが特に好ましい。0.01重量部より少ない場合には重合体は充分に分散されず粒子が凝集する場合があり、5重量部より多く添加した場合は、重合体ラテックスの付着性が低下することある。また、重合体の透明性や成形性等の物性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0128】
<アクリル系重合体粒子(i)にアクリル系重合体ラテックス(ii)を付着させる工程>
本発明の重合体粒子は、アクリル系重合体粒子(i)を含むスラリーと、乳化重合により製造したアクリル系重合体ラテックス(ii)とを混合し、その混合物に電解質水溶液を接触させることにより、アクリル系重合体粒子(i)の表面にアクリル系重合体ラテックス(ii)を付着させることにより得ることができる。これにより、重合体粒子のブロッキングが防止され、流動性に優れる粒子を得ることが可能になる。
【0129】
重合体粒子を含むスラリーと、乳化重合により製造したアクリル系重合体ラテックス(ii)の混合は、撹拌下に、重合体粒子を含むスラリーへ乳化重合ラテックスを、あるいは乳化重合ラテックスへ重合体粒子を含むスラリーを添加することにより実施するのが好ましい。重合体粒子を含むスラリーと乳化重合ラテックスの混合する際は、重合体粒子の固形分濃度は10〜50重量%、乳化重合ラテックスの固形分濃度は10〜55重量%とするのが好ましい。
【0130】
アクリル系重合体ラテックス(ii)を付着させる際は、上記の重合体粒子を含むスラリーとアクリル系重合体ラテックス(ii)との混合物に電解質水溶液を接触させる。電解質水溶液との接触は、撹拌下に、重合体粒子を含むスラリーと乳化重合ラテックスの混合物へ電解質水溶液を添加することにより実施するのが好ましい。
【0131】
この操作により、乳化重合体粒子が重合体粒子表面に凝析(析出)し、重合体粒子表面を被覆する。本発明における重合体粒子を含むスラリーと重合体ラテックスとの混合物への電解質水溶液の添加は、乳化重合体のガラス転移温度以下の温度で実施するのが好ましい。電解質水溶液添加時に重合体粒子を含むスラリーと重合体ラテックスとの混合物の温度がラテックス重合体のガラス転移温度を超えると、生成する重合体粒子の形状が歪むだけでなく、重合体粒子間の凝集が併発し、その結果として脱水後の含水率が高くなるため好ましくない。
【0132】
本発明にかかる方法においては、スラリー中の重合体粒子と乳化重合体の固形分比は、重合体粒子100重量部に対して、乳化重合体を2〜8重量部とするのが好ましく3〜4.5重量部とするのがより好ましい。
【0133】
本発明の重合体粒子を製造するにあたって、重合体粒子を含むスラリーと重合体ラテックスとの混合物に電解質水溶液を添加した後、50〜100℃で熱処理するとよい。これにより、重合体粒子の含水率が低下することとなる。その後、常法に従って脱水および乾燥を行うことにより、重合体粒子が得られる。
【0134】
<電解質水溶液>
電解質水溶液としては、高分子ラテックスを凝析・凝固し得る性質を有する有機酸(塩)または無機酸(塩)の水溶液であれば良いが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、塩化バリウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、鉄ミョウバン等の無機塩類の水溶液、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸類の水溶液、酢酸、ギ酸等の有機酸類およびそれらの水溶液、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウム等の有機酸塩類の水溶液を単独にまたは2種以上を混合して用いることができる。特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウム、塩化第一鉄、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、鉄ミョウバン、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸の水溶液が好適に用いることができる。本発明において用いる電解質水溶液の濃度は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1%以上である。電解質水溶液の濃度が0.001重量%以下の場合は、乳化重合重合体粒子を凝析させるために多量の電解質水溶液を添加する必要があり、その後の熱処理操作時のユーティリティー使用量が多大となるためこの点で好ましくない。
【0135】
<シリコーンオイル、顔料、無機粒子のブレンド方法>
アクリル系重合体ラテックス(ii)を付着したアクリル系重合体粒子(i)にシリコーンオイルと粉末顔料、球状無機粒子をブレンドさせることで成形時の離型性、補色、パウダーのブロッキング抑制防止による粉切れ性を改良することができる。シリコーンオイルをブレンドする方法はヘンシェルミキサーを用いることができる。一方、粉末顔料、球状無機粒子をブレンドする方法としては、パウダーに与えるせん断分散を抑制できるタンブラーミキサーを用いることが好ましい。せん断分散でブレンドを行うヘンシェルミキサーを用いるとせん断分散の力で、粉末顔料、球状無機粒子が破砕され、ブロッキング性が悪化する可能性がある。
【0136】
<成形体の用途および使用方法>
本発明のパウダーの成形方法としては、パウダースラッシュ成形が好適に例示されるが、それ以外にも射出成形、射出ブロー成形、ブロー成形、押出ブロー成形、押出成形、カレンダー成形、真空成形、プレス成形などに適用可能である。また成形にあたっては、他のパウダーを併用することもできる。
【0137】
得られた成形体は、たとえば、表皮材料や、触感材料、外観材料として好適に用いることができ、その他に、耐磨耗性材料、耐油性材料、制振材料、粘着材料のような目的を有する材料として用いることができる。形状としては、シート、平板、フィルム、小型成形品、大型成形品その他任意の形状として、またパネル類、ハンドル類、グリップ類、スイッチ類のような部品として、さらにそれ以外にもシーリング部材として用いることができる。用途としては、特に制限されないが、自動車用、家庭用電気製品用、または事務用電気製品用が例示される。たとえば、自動車用表皮材料、自動車用触感材料、自動車用外観材料、自動車用パネル類、自動車用ハンドル類、自動車用グリップ類、自動車用スイッチ類として、また、家庭用または事務用電気製品用パネル類、家庭用または事務用電気製品用スイッチ類などを例示することができる。この中でも、自動車内装用表皮に好適に使用される。
【実施例】
【0138】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0139】
<分子量測定法>
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)を用いた。
【0140】
<重合反応の転化率測定法>
本実施例に示す重合反応の転化率は以下に示す分析装置、条件で測定した。
使用機器:(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−14B
分離カラム:J&W SCIENTIFIC INC製、キャピラリーカラムDB−17、0.35mmφ×30m
分離条件:初期温度50℃、3.5分間保持
昇温速度40℃/min
最終温度140℃、1.5分間保持
インジェクション温度250℃
ディテクター温度250℃
試料調整:サンプルを酢酸エチルにより約10倍に希釈し、アセトニトリルを内部標準物質とした。
【0141】
<溶融性試験>
パウダースラッシュ成形:
得られたパウダーを、以下の条件にて成形溶融性試験評価した。
使用機器:皮シボ付金属板(板厚4.5mm、シボ深さ80%)
加熱条件:220℃
加熱時間:最初の反転にて金型とパウダーを接触させ、6秒後に金型反転して未溶融のパウダーを分離、1分後に金型を取り外し冷却開始
冷却時間:1分以内(水槽の水に接触させて冷却)
溶融性評価指標:成形体の厚みが均一である:○、一部に厚みムラがある:△、全体に厚みムラがある、またはピンホールがある:×。
【0142】
<耐ブロッキング性試験>
直径5cmの円柱状セルに、得られたパウダー30gを投入し、直径5cmの円柱状の錘1350gを乗せ、50℃で24時間静置した。24時間後、セルから円柱状に固化したパウダーを取り出し、量りの上に乗せた。固化したパウダーに対して、5.31cm2の円柱状の棒を垂直に突き刺し、パウダーの塊が崩壊する際に要する力を測定した。この力が小さいほど耐ブロッキング性は良好である。
【0143】
<耐スクラッチ性試験>
溶融性試験で得られた成形体シートから10cm×10cmのサンプルを切り出し、台紙に貼り付けて、測定サンプルとした。以下の条件にて耐スクラッチ性試験を行った。
使用機器:テーバースクラッチテスタ((株)東洋精機製作所製)
回転数:0.5rpm
カッター:タングステンカーバイド、4.8mm角×19mm長、刃先半径12.7mm
カッターの向き:カッターの刃側が下になるように、カッターの長い面が上になるように取り付け
荷重2Nで試験を行い、目視で観察し、以下の基準で評価した。
正面から見て傷が良く分からないもの;○
正面から見て若干傷が認められるもの;△
白化やえぐれなど明らかに傷が認められるもの;×。
【0144】
<引張破断伸び>
本実施例に示す引張破断伸びは、JIS K6251に従い、25℃における引張破断伸びを測定した。
【0145】
アクリル系ブロック共重合体(A)の合成
(製造例1−1)
アクリル系ブロック共重合体を得るために以下の操作を行った。耐圧反応器内を窒素置換したのち、臭化銅0.89重量部、アクリル酸−n−ブチル100重量部及びアクリル酸−t−ブチル4.46重量部を仕込み、攪拌を開始した。その後、開始剤として2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル1.24重量部をアセトニトリル(窒素バブリングしたもの)9.18重量部に溶解させた溶液を仕込み、溶液温度を75℃に昇温しつつ30分間攪拌した。溶液温度が75℃に到達した時点で、配位子としてペンタメチルジエチレントリアミン0.11重量部を加えてアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
【0146】
重合開始から一定時間ごとに、サンプリング溶液のガスクロマトグラフィー分析によりアクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチルの転化率を決定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計2回(合計0.21重量部)添加した。
【0147】
アクリル酸−n−ブチルの転化率が99.0%、アクリル酸−t−ブチルの転化率が99.1%の時点で、メタアクリル酸メチル61.07重量部、アクリル酸エチル13.77重量部、塩化銅0.61重量部、ペンタメチルジエチレントリアミン0.11重量部及びトルエン(窒素バブリングしたもの)138.81重量部を加えて、メタクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
【0148】
メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチルを投入した時点でサンプリングを行い、これを基準としてメタアクリル酸メチル、アクリル酸エチルの転化率を決定した。メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチルを投入後、内温を85℃に設定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはメタクリル系重合体ブロック重合時に合計6回(合計0.64重量部)添加した。メタアクリル酸メチルの転化率が95.0%の時点でトルエン365.3重量部を加え、反応器を冷却して反応を終了させた。得られたアクリル系ブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは80500、分子量分布Mw/Mnは1.48であった。
【0149】
上記のアクリル系ブロック共重合体を含有する反応溶液にトルエンを加えて、重合体濃度を25重量%とした。この溶液100重量部にp−トルエンスルホン酸を0.36重量部加え、反応機内を窒素置換し、80℃で2時間撹拌した。
【0150】
反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、濾過助剤として昭和化学工業製ラヂオライト#3000を0.50重量部添加した。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて固体分を分離した。
【0151】
濾過後のブロック共重合体含有溶液は反応機内を窒素置換し、耐圧反応機中で、150℃で2時間攪拌した。30℃に冷却した反応液に固体塩基としてキョーワード500SH1.75重量部を加えた後、反応機内を窒素置換して、1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた上に示した加圧濾過機を用いて固体分を分離し、アクリル系ブロック共重合体を含有する重合体溶液を得た。
【0152】
(製造例1−2)
アクリル系ブロック共重合体を得るために以下の操作を行った。耐圧反応器内を窒素置換したのち、臭化銅0.88重量部、アクリル酸−n−ブチル100重量部及びアクリル酸−t−ブチル4.44重量部を仕込み、攪拌を開始した。その後、開始剤として2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル1.23重量部をアセトニトリル(窒素バブリングしたもの)9.17重量部に溶解させた溶液を仕込み、溶液温度を75℃に昇温しつつ30分間攪拌した。溶液温度が75℃に到達した時点で、配位子としてペンタメチルジエチレントリアミン0.11重量部を加えてアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
【0153】
重合開始から一定時間ごとに、サンプリング溶液のガスクロマトグラフィー分析によりアクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチルの転化率を決定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計2回(合計0.21重量部)添加した。
【0154】
アクリル酸−n−ブチルの転化率が99.0%、アクリル酸−t−ブチルの転化率が99.1%の時点で、メタアクリル酸メチル49.38重量部、アクリル酸エチル10.84重量部、塩化銅0.61重量部、ペンタメチルジエチレントリアミン0.11重量部及びトルエン(窒素バブリングしたもの)111.7重量部を加えて、メタクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
【0155】
メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチルを投入した時点でサンプリングを行い、これを基準としてメタアクリル酸メチル、アクリル酸エチルの転化率を決定した。メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチルを投入後、内温を85℃に設定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはメタクリル系重合体ブロック重合時に合計6回(合計0.64重量部)添加した。メタアクリル酸メチルの転化率が95.0%の時点でトルエン353.96重量部を加え、反応器を冷却して反応を終了させた。得られたアクリル系ブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは74070、分子量分布Mw/Mnは1.49であった。
【0156】
上記のアクリル系ブロック共重合体を含有する反応溶液にトルエンを加えて、重合体濃度を25重量%とした。この溶液100重量部にp−トルエンスルホン酸を0.38重量部加え、反応機内を窒素置換し、80℃で2時間撹拌した。
【0157】
反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、濾過助剤として昭和化学工業製ラヂオライト#3000を0.50重量部添加した。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて固体分を分離した。
【0158】
濾過後のブロック共重合体含有溶液は反応機内を窒素置換し、耐圧反応機中で、150℃で2時間攪拌した。30℃に冷却した反応液に固体塩基としてキョーワード500SH1.75重量部を加えた後、反応機内を窒素置換して、1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた上に示した加圧濾過機を用いて固体分を分離し、アクリル系ブロック共重合体を含有する重合体溶液を得た。
【0159】
アクリル系重合体粒子(i)を含有するスラリーの作製
(製造例2−1)
50L耐圧攪拌装置に純水200重量部及びポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、商品名KH−17)を0.7重量部(3%水溶液として23.3重量部)仕込み、製造例1−1で得られた重合体溶液400重量部(固形分濃度25%)、エポキシ基を持つアクリル系重合体であるARUFON(登録商標)UG4012(東亞合成(株)製)10重量部、トリメリット酸エステル系可塑剤であるC−810PS(旭電化工業(株)製)14部、架橋促進剤である酸化亜鉛0.088重量部、エステル系滑材である牛脂極度硬化油(融点60℃:日本油脂(株)製)0.01重量部、安定剤であるイルガノックス1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1重量部とチヌビン234(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1重量部を添加した。撹拌翼には2段4枚傾斜パドルを用いて600rpmで攪拌して撹拌槽の底部より蒸気を導入した。撹拌槽上部に接続したコンデンサで溶剤ガス及び蒸気を凝縮し、系外で逐次溶剤及び水を回収した。発泡に注意しながら蒸気流量を加減し、100℃到達後5分後に蒸気を停止し、撹拌槽のジャケットを用いて冷却を行ない、(メタ)アクリル系樹脂を含有するスラリー(i−1)を得た。得られた重量体粒子の平均粒径は約175μmであった。
【0160】
(製造例2−2)
50L耐圧攪拌装置に純水200重量部及びポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、商品名KH−17)を0.7重量部(3%水溶液として23.3重量部)仕込み、製造例1−1で得られた重合体溶液300重量部(固形分濃度25%)と製造例1−2で得られた重合体溶液100重量部(固形分濃度25%)、エポキシ基を持つアクリル系重合体であるARUFON(登録商標)UG4012(東亞合成(株)製)10重量部、トリメリット酸エステル系可塑剤であるC−810PS(旭電化工業(株)製)14部、架橋促進剤である酸化亜鉛0.088重量部、エステル系滑材である牛脂極度硬化油(融点60℃:日本油脂(株)製)0.01重量部、安定剤であるイルガノックス1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1重量部とチヌビン234(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1重量部を添加した。撹拌翼には2段4枚傾斜パドルを用いて600rpmで攪拌して撹拌槽の底部より蒸気を導入した。撹拌槽上部に接続したコンデンサで溶剤ガス及び蒸気を凝縮し、系外で逐次溶剤及び水を回収した。発泡に注意しながら蒸気流量を加減し、100℃到達後5分後に蒸気を停止し、撹拌槽のジャケットを用いて冷却を行ない、(メタ)アクリル系樹脂を含有するスラリー(i−2)を得た。得られた重量体粒子の平均粒径は約170μmであった。
【0161】
(製造例2−3)
50L耐圧攪拌装置に純水200重量部及びポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、商品名KH−17)を0.7重量部(3%水溶液として23.3重量部)仕込み、製造例1−1で得られた重合体溶液300重量部(固形分濃度25%)と製造例1−2で得られた重合体溶液100重量部(固形分濃度25%)、エポキシ基を持つアクリル系重合体であるARUFON(登録商標)UG4012(東亞合成(株)製)9重量部、トリメリット酸エステル系可塑剤であるC−810PS(旭電化工業(株)製)14部、架橋促進剤である酸化亜鉛0.088重量部、エステル系滑材である牛脂極度硬化油(融点60℃:日本油脂(株)製)0.01重量部、安定剤であるイルガノックス1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1重量部とチヌビン234(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1重量部を添加した。撹拌翼には2段4枚傾斜パドルを用いて600rpmで攪拌して撹拌槽の底部より蒸気を導入した。撹拌槽上部に接続したコンデンサで溶剤ガス及び蒸気を凝縮し、系外で逐次溶剤及び水を回収した。発泡に注意しながら蒸気流量を加減し、100℃到達後5分後に蒸気を停止し、撹拌槽のジャケットを用いて冷却を行ない、(メタ)アクリル系樹脂を含有するスラリー(i−3)を得た。得られた重量体粒子の平均粒径は約170μmであった。
【0162】
アクリル系重合体ラテックス(ii)の合成
(製造例3−1)
水200重量部、乳化剤としてアルカンスルホン酸ナトリウム 0.34重量部、重合開始剤として過硫酸カリウム 0.2重量部を、撹拌装置付反応器に仕込み、窒素置換後、70℃まで昇温した。これにメチルメタアクリレート 95重量部、ブチルアクリレート 5重量部、連鎖移動剤としてチオグリコール酸2エチルヘキシル 0.65重量部の混合液を6時間かけて追加し、追加開始から2時間後に乳化剤であるアルカンスルホン酸ナトリウム 0.40重量部を、4時間後に0.43重量部を加えた。追加終了後、重合開始剤である過硫酸カリウム 0.05重量部添加して、1時間重合を行ない、重合転化率99%、ガラス転移温度92℃、ラテックス平均粒子径594Å、重量平均分子量65,000、固形分濃度33%の重合体ラテックス(ii−1)を得た。
【0163】
(製造例3−2)
水200重量部、乳化剤としてアルカンスルホン酸ナトリウム 0.28重量部、重合開始剤として過硫酸カリウム 0.2重量部を、撹拌装置付反応器に仕込み、窒素置換後、70℃まで昇温した。これにメチルメタアクリレート 95重量部、ブチルアクリレート 5重量部、連鎖移動剤としてチオグリコール酸2エチルヘキシル 0.65重量部の混合液を6時間かけて追加し、追加開始から2時間後に乳化剤であるアルカンスルホン酸ナトリウム0.33重量部を、4時間後に0.35重量部を加えた。追加終了後、重合開始剤である過硫酸カリウム0.05重量部を添加して、1時間重合を行ない、重合転化率99%、ガラス転移温度92℃、ラテックス平均粒子径662Å、重量平均分子量65,000、固形分濃度33%の重合体ラテックス(ii−2)を得た。
【0164】
(製造例3−3)
水200重量部、乳化剤としてアルカンスルホン酸ナトリウム 0.16重量部、重合開始剤として過硫酸カリウム 0.2重量部を、撹拌装置付反応器に仕込み、窒素置換後、70℃まで昇温した。これにメチルメタアクリレート 95重量部、ブチルアクリレート5重量部、連鎖移動剤としてチオグリコール酸2エチルヘキシル 0.65重量部の混合液を6時間かけて追加し、追加開始から2時間後に乳化剤であるアルカンスルホン酸ナトリウム 0.19重量部を、4時間後に0.20重量部を加えた。追加終了後、重合開始剤である過硫酸カリウムを0.05重量部添加して、1時間重合を行ない、重合転化率99%、ガラス転移温度92℃、ラテックス平均粒子径955Å、重量平均分子量66,000、固形分濃度33%の重合体ラテックス(ii−3)を得た。
【0165】
(製造例3−4)
水200 重量部、乳化剤としてアルカンスルホン酸ナトリウム 0.22重量部、重合開始剤として過硫酸カリウム 0.2重量部を、撹拌装置付反応器に仕込み、窒素置換後、70℃まで昇温した。これにメチルメタアクリレート 92.5重量部、ブチルアクリレート 7.5重量部、連鎖移動剤としてチオグリコール酸2エチルヘキシル 0.65重量部の混合液を6時間かけて追加し、追加開始から2時間後に乳化剤であるアルカンスルホン酸ナトリウム 0.26重量部を、4時間後に0.28重量部を加えた。追加終了後、重合開始剤である過硫酸カリウムを0.05重量部添加して、1時間重合を行ない、重合転化率99%、ガラス転移温度86℃、ラテックス平均粒子径686Å、重量平均分子量65,000、固形分濃度33%の重合体ラテックス(ii−4)を得た。
【0166】
(製造例3−5)
水200重量部、乳化剤としてアルカンスルホン酸ナトリウム 0.16重量部、重合開始剤として過硫酸カリウム 0.2重量部を、撹拌装置付反応器に仕込み、窒素置換後、70℃まで昇温した。これにメチルメタアクリレート 90重量部、ブチルアクリレート10重量部、連鎖移動剤としてチオグリコール酸2エチルヘキシル 0.65重量部の混合液を6時間かけて追加し、追加開始から2時間後に乳化剤であるアルカンスルホン酸ナトリウム 0.19重量部を、4時間後に0.20重量部を加えた。追加終了後、重合開始剤である過硫酸カリウムを0.05重量部添加して、1時間重合を行ない、重合転化率99%、ガラス転移温度78℃、ラテックス平均粒子径952Å、重量平均分子量68,000、固形分濃度33%の重合体ラテックス(ii−5)を得た。
【0167】
(実施例1)
製造例(2−1)で作成したアクリル系重合体粒子を含有するスラリー(i−1)を撹拌基付反応器に仕込み、70℃に加熱し重合体ラテックス(ii−1)を(メタ)アクリル系樹脂(A)粒子100重量部に対して固形分基準で3.7重量部添加し、添加終了から5分後70℃に加熱し、電解質水溶液として15%硫酸ナトリウム溶液を(メタ)アクリル系樹脂(A)粒子100重量部に対して固形分基準で5.6重量部を5分間かけて連続的に添加した。
【0168】
添加終了から5分後、90℃まで加熱し、5分間温度を保持し、その後冷却してラテックスが樹脂粒子の表面に付着した重合体スラリーを得た。そのスラリーをバッチ式遠心濾過機で脱水し、バッチ式流動乾燥機で樹脂温度最大50℃の条件で乾燥し、水分が0.4%の粉末成形用パウダーを得た。
【0169】
得られたパウダーはブロッキング性の評価、そして220℃に加熱した金型で溶融成形してシート溶融状態の目視観察とそのシートを3号ダンベルで打ち抜いて引張破断伸びを測定した結果を表1に示す。
【0170】
(実施例2)
実施例1と同様の操作で、乳化重合により製造した重合体ラテックス(ii−2)を用い、電解質水溶液として15%硫酸ナトリウム溶液を固形分基準で5.6重量部となるように5分間かけて連続的に添加した。添加終了から5分後、90℃まで加熱し、5分間温度を保持し、その後冷却してラテックスが重合体粒子の表面に付着した重合体スラリーを得、実施例1と同様にして粉末成形用パウダーを得た。実施例1と同様の評価を表1に示す。
【0171】
(比較例1)
実施例1と同様の操作で、乳化重合により製造した重合体ラテックス(ii−3)を用い、粉末成形用パウダーを得た。実施例1と同様の評価を表1に示す。
【0172】
(比較例2)
実施例1と同様の操作で、乳化重合により製造した重合体ラテックス(ii−5)を用い、粉末成形用パウダーを得た。実施例1と同様の評価を表1に示す。
【0173】
(比較例3)
製造例(2−1)で作成したアクリル系重合体粒子を含有するスラリー(i−1)を撹拌基付反応器に仕込み、70℃に加熱し重合体ラテックス(ii−5)を(メタ)アクリル系樹脂(A)粒子100重量部に対して固形分基準で4.7重量部添加し、添加終了から5分後70℃に加熱し、電解質水溶液として15%硫酸ナトリウム溶液を(メタ)アクリル系樹脂(A)粒子100重量部に対して固形分基準で5.6重量部を5分間かけて連続的に添加した。
【0174】
添加終了から5分後、90℃まで加熱し、5分間温度を保持し、その後冷却してラテックスが樹脂粒子の表面に付着した重合体スラリーを得た。そのスラリーをバッチ式遠心濾過機で脱水し、バッチ式流動乾燥機で樹脂温度最大50℃の条件で乾燥し、水分が0.4%の粉末成形用パウダーを得た。
【0175】
得られたパウダーはブロッキング性の評価、そして220℃に加熱した金型で溶融成形してシート溶融状態の目視観察とそのシートを3号ダンベルで打ち抜いて引張破断伸びを測定した結果を表1に示す。
【0176】
(実施例3)
製造例(2−2)で作成したアクリル系重合体粒子を含有するスラリー(i−2)を撹拌基付反応器に仕込み、70℃に加熱し重合体ラテックス(ii−4)を(メタ)アクリル系樹脂(A)粒子100重量部に対して固形分基準で4.2重量部添加し、添加終了から5分後70℃に加熱し、電解質水溶液として15%硫酸ナトリウム溶液を(メタ)アクリル系樹脂(A)粒子100重量部に対して固形分基準で5.6重量部を5分間かけて連続的に添加した。
【0177】
添加終了から5分後、90℃まで加熱し、5分間温度を保持し、その後冷却してラテックスが樹脂粒子の表面に付着した重合体スラリーを得た。そのスラリーをバッチ式遠心濾過機で脱水し、バッチ式流動乾燥機で樹脂温度最大50℃の条件で乾燥し、水分が0.4%の粉末成形用パウダーを得た。
【0178】
その後、そのパウダー100重量部に対して液状のシリコーンオイルX−22−4015(信越シリコーン(株)製)0.05部をヘンシェルミキサーで1分間ブレンドを行い、さらにタンブラーミキサーで黒色顔料0.5部と無機球状粒子シリカ(サイロスフェアC−1504(富士シリシア化学(株)製))0.15部をそれぞれ1分間ずつブレンドした。得られたパウダーは実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0179】
(実施例4)
実施例3と同様の操作で、乳化重合により製造した重合体ラテックス(ii−4)を用い、粉末成形用パウダーを得た。その後、そのパウダー100重量部に対して液状のシリコーンオイルX−22−4015(信越シリコーン(株)製)0.05部をヘンシェルミキサーで1分間ブレンドを行い、さらにタンブラーミキサーで黒色顔料0.3部と無機球状粒子シリカ(サイロスフェアC−1504(富士シリシア化学(株)製))0.25部をそれぞれ1分間ずつブレンドした。得られたパウダーは実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0180】
(実施例5)
製造例(2−3)で作成したアクリル系重合体粒子を含有するスラリー(i−3)を撹拌基付反応器に仕込み、70℃に加熱し重合体ラテックス(ii−2)を(メタ)アクリル系樹脂(A)粒子100重量部に対して固形分基準で4.2重量部添加し、添加終了から5分後70℃に加熱し、電解質水溶液として15%硫酸ナトリウム溶液を(メタ)アクリル系樹脂(A)粒子100重量部に対して固形分基準で5.6重量部を5分間かけて連続的に添加した。
【0181】
添加終了から5分後、90℃まで加熱し、5分間温度を保持し、その後冷却してラテックスが樹脂粒子の表面に付着した重合体スラリーを得た。そのスラリーをバッチ式遠心濾過機で脱水し、バッチ式流動乾燥機で樹脂温度最大50℃の条件で乾燥し、水分が0.4%の粉末成形用パウダーを得た。
【0182】
その後、そのパウダー100重量部に対して液状のシリコーンオイルX−22−4015(信越シリコーン(株)製)0.05部をヘンシェルミキサーで1分間ブレンドを行い、さらにタンブラーミキサーで黒色顔料0.3部と無機球状粒子シリカ(サイロスフェアC−1504(富士シリシア化学(株)製))0.25部をそれぞれ1分間ずつブレンドした。得られたパウダーは実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0183】
(比較例4)
実施例5と同様の操作で、乳化重合により製造した重合体ラテックス(ii−5)を用い、粉末成形用パウダーを得た。その後、そのパウダー100重量部に対して液状のシリコーンオイルX−22−4015(信越シリコーン(株)製)0.05部をヘンシェルミキサーで1分間ブレンドを行い、さらにタンブラーミキサーで黒色顔料0.3部と無機球状粒子シリカ(サイロスフェアC−1504(富士シリシア化学(株)製))0.25部をそれぞれ1分間ずつブレンドを行った。得られたパウダーは実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0184】
【表1】

【0185】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系重合体粒子(i)をアクリル系重合体ラテックス(ii)で被覆したパウダーであって、該アクリル系重合体ラテックス(ii)の平均粒子径が500〜800Åであり、該重合体ラテックスを構成する重合体が80〜95℃のガラス転移温度を有し、且つ重量平均分子量が40,000〜80,000であるアクリル系重合体であることを特徴とする粉末成形用パウダー。
【請求項2】
アクリル系重合体粒子(i)が、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)とからなり、アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系単量体を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系単量体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに酸無水物基および/またはカルボキシル基を有するアクリル系ブロック共重合体であって、アクリル系重合体(B)は、1分子中に少なくとも平均1.1個以上の反応性官能基(C)を有するアクリル系重合体であることを特徴とする請求項1記載の粉末成形用パウダー。
【請求項3】
アクリル系重合体ラテックス(ii)が、連鎖移動剤としてチオグリコール酸系化合物、重合開始剤として過硫酸系化合物、乳化剤としてアニオン系界面活性剤、を使用した乳化重合法によって得られることを特徴とする請求項1または2に記載の粉末成形用パウダー。
【請求項4】
反応性官能基(C)が、エポキシ基、水酸基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2または3に記載の粉末成形用パウダー。
【請求項5】
反応性官能基(C)が、エポキシ基であることを特徴とする請求項4に記載の粉末成形用パウダー。
【請求項6】
アクリル系ブロック共重合体(A)が、ガラス転移温度が50〜130℃であるメタアクリル系重合体ブロック(a)15〜50重量%と、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)85〜50重量%とからなることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の粉末成形用パウダー。
【請求項7】
アクリル系ブロック共重合体(A)に含まれる酸無水物基が、一般式(1):
【化1】

(式中、R1はそれぞれ独立に水素またはメチル基を表わす。nは0〜3の整数、mは0または1の整数を表わす。)で表されるものであることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の粉末成形用パウダー。
【請求項8】
アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が、30,000〜200,000であることを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の粉末成形用パウダー。
【請求項9】
アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.8以下であることを特徴とする請求項2から8のいずれかに記載の粉末成形用パウダー。
【請求項10】
アクリル系ブロック共重合体(A)が、原子移動ラジカル重合により製造されたブロック共重合体であることを特徴とする請求項2から9のいずれかに記載の粉末成形用パウダー。
【請求項11】
アクリル系重合体(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が、500〜30,000であることを特徴とする請求項2から10のいずれかに記載の粉末成形用パウダー。
【請求項12】
アクリル系重合体粒子(i)がアクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対してトリメリット酸エステル系可塑剤5〜18重量部、酸化亜鉛0.01〜0.1重量部を含むことを特徴とする請求項2から11のいずれかに記載の粉末成形用パウダー。
【請求項13】
アクリル系重合体粒子(i)とアクリル系重合体ラテックス(ii)の合計100重量部に対して無機球状粒子を0.05〜1重量部含むことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の粉末成形用パウダー。
【請求項14】
無機球状粒子が、シリカであることを特徴とする請求項13に記載の粉末成形用パウダー。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の粉末成形用パウダーをパウダースラッシュ成形したものであることを特徴とするパウダースラッシュ成形体。
【請求項16】
請求項1から14のいずれかに記載の粉末成形用パウダーをパウダースラッシュ成形したものであることを特徴とする自動車内装用表皮。

【公開番号】特開2010−265339(P2010−265339A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115700(P2009−115700)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】