説明

粉末栄養組成物

【課題】外科手術患者や低栄養状態の患者などに対して、効率的に熱量、窒素源、糖質、ミネラル、およびビタミンの補給ができ、かつ、摂取しやすい栄養組成物を提供するものである。
【解決手段】分解度5〜15、かつ、平均分子量500〜1000の卵白加水分解物を10〜30重量%、DE15〜20のデキストリンを60〜80重量%、脂質を4〜8重量%、有機酸モノグリセリドを0.2〜0.6重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.4〜0.8重量%含有することを特徴とする栄養組成物であって、実質的に食物繊維を含まないとすることで、腸管吸収が良く、下痢の発生が少なく、さらに、より経口摂取しやすい風味良好な粉末の栄養組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養補給を必要とする外科手術患者や低栄養状態の患者などに対して、効率的に熱量、蛋白、糖質、脂質、ミネラル、およびビタミンの補給ができる粉末の栄養組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
栄養不良の外科手術患者や低栄養状態の患者は、筋肉量の減少、術後創傷の回復遅延、免疫機能の低下などを招き、合併症発症率は通常の患者より高くなる。また、それゆえに入院期間の延長、医療費の増加、死亡率の上昇などの不利益が生じる。
【0003】
栄養補給を必要とする栄養不良の外科手術患者や低栄養状態の患者などの栄養管理には通常、蛋白質・糖質・脂質の三大栄養素がバランス良く配合された栄養剤が広く利用されている。一般的に、蛋白質を用いた栄養剤は、腸管吸収の点で劣ることから、残渣が多い。また、粘性が高く、さらっとせずに飲みにくい等の問題がある。
【0004】
これに対し、蛋白加水分解物を用いた栄養剤は、ほとんど全ての栄養成分が吸収され、腸管吸収の点で優れていることから、残渣が少ないことが特徴である。しかし、味覚的には苦味、生臭さ、硫黄臭などがあり、経口摂取時の抵抗が非常に大きい。したがって、経口摂取しやすいように各種フレーバーの添加による風味の調整が必要となる。
【0005】
上記の問題に対して、本願出願人は、卵白と同じようにアミノ酸スコアに優れた乳清を用いて、実質的に脂質を含まない乳清蛋白加水分解物を用いる栄養組成物を提案している(特許文献1)。しかしながら、脂質を含まないことから、長期間の投与において必須脂肪酸欠乏を生じるため、栄養学的な観点から必ずしも満足するものではない。また、従来の卵白加水分解物を用いた栄養剤では、患者の満足度の観点からも更に風味の良好な栄養剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−247848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の目的は、栄養不良の患者に対して栄養分や水分の補給及び電解質バランス維持が可能であり、腸管吸収が速やかであり下痢等が発生しにくいといった医学的・栄養学的機能を備えることに加え、さらに風味が良く経口摂取しやすい栄養剤(栄養組成物)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、上記の状況を鑑みて、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、窒素源として分解度5〜15、かつ、平均分子量500〜1000の卵白加水分解物を10〜30重量%、糖質源としてDE15〜20のデキストリンを60〜80重量%、脂質を4〜8重量%、有機酸モノグリセリドを0.2〜0.6重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.4〜0.8重量%含有することを特徴とする栄養組成物であって、実質的に食物繊維を含まないとすることで、腸管吸収が良く、下痢の発生が少なく、さらに、より経口摂取しやすい風味良好な栄養組成物が得られることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)に示したものである。
(1)分解度5〜15、かつ、平均分子量500〜1000の卵白加水分解物を10〜30重量%、DE15〜20のデキストリンを60〜80重量%、脂質を4〜8重量%、
有機酸モノグリセリドを0.2〜0.6重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.4〜0.8重量%含有することを特徴とする栄養組成物であって、実質的に食物繊維を含有しない粉末の栄養組成物。
(2)水を用いて1kcal/mLの濃度に調整される場合において、浸透圧が500mOsm/kg未満、粘度が5mPa・s未満で、かつ乳化状態が安定である(1)に記載の栄養組成物。
(3)さらに、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン、鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレン、ヨウ素、クロム、およびモリブデンからなる群のうち1種以上のミネラルを含有する(1)または(2)に記載の栄養組成物。
(4)さらに、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKからなる群のうち1種以上のビタミンを含有する(1)ないし(3)のいずれかに記載の栄養組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の栄養組成物であれば、栄養不良の患者に対して栄養分や水分の補給及び電解質バランス維持が可能である、腸管吸収が速やかであり下痢等が発生しにくいといった医学的・栄養学的機能を備えることに加え、さらに風味が良く経口摂取しやすい栄養剤(栄養組成物)を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の栄養組成物を詳細に説明する。
【0012】
本発明の栄養組成物で使用する卵白加水分解物は、卵白を部分加水分解して得られるもので、アミノ酸組成に優れており、アミノ酸を追加して成分調整を図る必要のない栄養学的にも優れた卵白加水分解物である。
【0013】
本発明の栄養組成物で使用する分解度が5〜15、かつ、平均分子量500〜1000の卵白加水分解物は、例えばプロテアーゼを用いて卵白を加水分解することにより得ることができる。プロテアーゼによる加水分解は、卵白希釈液をアルカリ条件下で加熱変性させる前処理工程と、プロテアーゼにより加水分解処理する工程とにより行われるが、前記特定の分解度、かつ、前記特定の平均分子量の卵白加水分解物が得られる範囲で、加熱変性以外の前処理を用いてもよい。
【0014】
ここで、前記卵白加水分解物の製造方法において、液卵白1部に対し0.4〜3部の水で希釈した卵白希釈液を、pH9〜12、55〜90℃の条件下で加熱処理して卵白を変性させる前処理工程と、プロテアーゼにより加水分解処理する工程を含むことにより、卵白加水分解物の硫黄臭を低減できる。
【0015】
本発明の栄養組成物で使用する卵白加水分解物を製造する際に使用される卵白としては、鶏卵等の家禽卵を割卵し卵黄を除いた卵白は言うまでもなく、生卵白を酵母、細菌、酵素により脱糖処理を施した卵白、あるいはこれらの卵白を逆浸透や限外濾過等で処理した濃縮卵白、噴霧乾燥や凍結乾燥により得られる乾燥卵白等が挙がられる。これらの中でも、脱糖処理を施した卵白を用いることで、褐変を防止することができる。
【0016】
ここで、液卵白とは、生卵白と同等の水分量(通常88%)である卵白をいい、生卵白と同等の水分量となるように水戻しを行った乾燥卵白、濃縮卵白も含まれる。
【0017】
処理工程における加熱時間は、卵白が適度に変性する条件であれば特に限定するものではないが、3〜60分の範囲で適宜調節すればよい。
【0018】
本発明の栄養組成物で使用する卵白加水分解物は、上記前処理した卵白希釈液をpH6〜8に調整した後、プロテアーゼにより加水分解処理することにより、卵白加水分解物の硫黄臭低減効果を高めることができる。なお、卵白加水分解物のpH調整は例えば、酸性水溶液(例えば塩酸、リン酸)を用いて行うことができる
加水分解に用いるプロテアーゼは、特に限定するものではないが、例えば、ペプシン、キモトリプシン、トリプシン、パンクレアチンなどの動物由来プロテアーゼ、パパイン、ブロメライン、フィシンなどの植物由来プロテアーゼ、微生物(乳酸菌、枯草菌、放線菌、カビ、酵母など)由来のエンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼならびにこれらの粗精製物および菌体破砕物等が挙げられ、これら1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0019】
前処理した卵白希釈液のpHを6〜8に調整した後、加水分解処理する場合、これらのプロテアーゼのうち、中性プロテアーゼを使用して卵白を加水分解すると、反応が効率よく進む。中性プロテアーゼとしては、バチルス属菌起源の中性プロテアーゼ、アスペルギルス属菌起源の中性プロテアーゼを用いればよい。バチルス属起源の中性プロテアーゼの市販品としては、例えば、プロテアーゼS「アマノ」(起源:Bacillus stearothermophilus、天野エンザイム株式会社)、プロテアーゼN「アマノ」(起源:Bacillus subtilis、天野エンザイム株式会社)などが挙げられ、アスペルギルス属菌起源の中性プロテアーゼの市販品としては、例えば、プロテアーゼA「アマノ」G(起源:Aspergillus oryzae、天野エンザイム株式会社)、スミチームFP(起源:Aspergillus oryzae、新日本化学工業株式会社)、デナチームAP(起源:Aspergillus oryzae、ナガセケムテックス株式会社)等が挙げられる。
【0020】
プロテアーゼにより蛋白質を加水分解する方法としては、具体的には、例えば、卵白を中性プロテアーゼで加水分解する場合を例に挙げると、前処理した卵白希釈液のpHを6〜8に調整し、この卵白に中性プロテアーゼを添加し、ゆっくりと攪拌しながら、35〜60℃、好ましくは40〜55℃にて5分〜24時間保持する。次に、この液を加熱することでプロテアーゼの失活処理を行い、本発明の栄養組成物で使用する卵白加水分解物明を得ることができる。また得られた卵白加水分解物を濾過処理し不溶物を除去することで可溶性卵白加水分解物が得られる。さらに必要に応じてスプレードライまたはフリーズドライ等の乾燥処理を施してもよい。
【0021】
なお、温度条件および加熱時間は、使用するプロテアーゼの種類および組合せに応じて適宜調整される。
【0022】
本発明の栄養組成物で使用する卵白加水分解物の分解度は、5〜15であることが好ましい。分解度が5未満であると、沈殿物が発生しやすくなるばかりでなく、粘度が高くなる。一方、卵白加水分解物の分解度が15より大きいと、浸透圧が高くなるばかりでなく、苦味を生じ、経口摂取しにくくなる。
【0023】
本発明の栄養組成物で使用する卵白加水分解物の分解度は、ホルモル滴定法によって測定された値である。すなわち、まず、卵白加水分解物をセミミクロケルダール法にて分析し、卵白加水分解物中の全窒素含量を求める。さらに、卵白加水分解物をホルモル滴定にて分析し、卵白加水分解物中のアミノ態窒素含量(%)を求める。これらの値から、アミノ態窒素含量を全窒素含量で除することにより、分解度(%)を算出する。
【0024】
本発明の栄養組成物で使用する卵白加水分解物の平均分子量は、500〜1000、好ましくは550〜900、より好ましくは600〜850である。平均分子量が500未満であると、浸透圧が高くなるばかりでなく、苦味を生じ、経口摂取しにくくなる。一方、卵白加水分解物の平均分子量が1000より大きいと、沈殿物が発生しやすくなるばかりでなく、粘度が高くなる。
【0025】
本発明の栄養組成物で使用する卵白加水分解物の平均分子量は、以下のTNBS(2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸)法により測定された値ある。
すなわち、亜硫酸ナトリウム126mgを精密に量り、精製水に溶かしたあと、精密に量った2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物100mgを加えて、正確に200mLとし、TNBS試薬とする。0.4gの卵白加水分解物を精密に量り、精製水に溶かし、正確に100mLとし、この液2mLを正確に量り、精製水を加えて正確に100mLとした溶液を試料溶液とする。あらかじめ105℃で3時間乾燥させたL−ロイシン0.656gを精密に量り、精製水に溶かし、正確に500mLとし、この溶液1mL、2mL、3mL、並びに4mLを正確に量り、それぞれに精製水を加えて正確に100mLとした溶液を標準溶液とする。
【0026】
次に、試験管に精製水(対照)、前記試料溶液および標準溶液を0.5mLずつ量りとり、0.1mol/Lホウ酸緩衝液を2mLそれぞれ加える。さらに前記TNBS試薬をそれぞれに加えて攪拌混合し、37℃の恒温水槽中で2時間静置する.
その後、分光光度計で波長420mmにおける吸光度を測定し、得られた吸光度から、精製水を用いて同様に操作した対照の吸光度を差し引いた値を試料溶液の吸光度とする。同様に標準溶液の吸光度から対照の吸光度を差し引き、吸光度を縦軸に、L−ロイシンの換算した乾燥物に対する濃度(μmol L−ロイシン当量/mL)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線(検量線)と試料溶液の交点から試料溶液のアミノ態窒素濃度(μmol L−ロイシン当量/mL)を求める。
ここで求められたアミノ態窒素濃度を以下の式に代入し、試料中のアミノ態窒素含量(μmol L−ロイシン当量/100g)を算出する。
アミノ態窒素含量=試料溶液のアミノ態窒素濃度×{(100×100)/(試料採取量g×2)}×10−3×100
さらに、卵白加水分解物の原料として使用する卵白の総蛋白含量(%)を求め(通常約11%)、以下の式に代入し、卵白加水分解物の平均分子量を算出する。
平均分子量=総蛋白含量/アミノ態窒素含量×100
本発明の栄養組成物で使用する卵白加水分解物の分子量分布は、当該技術分野における慣用技術ならびに知識がそのまま、もしくは適宜変更を加えた形で適用され、代表的にはゲル濾過クロマトグラフィーが挙げられる。すなわち、高速液体クロマトグラフィー装置に紫外可視分光検出器を連結し、卵白加水分解物をゲル濾過カラムに供し、溶媒液を流すことによって溶離した卵白加水分解物を分析する方法である。この方法を用いた場合、卵白加水分解物の分子量分布は、紫外可視分光検出器の測定値から高速液体クロマトグラフィー装置のデータ処理装置にしたがって計算することにより求めることができる。
【0027】
本発明の栄養組成物で使用する卵白加水分解物の含有量は、10〜30重量%、好ましくは12〜28重量%、より好ましくは15〜25重量%の範囲内である。卵白加水分解物の含有量が10重量%より少ないと、窒素源として栄養学的に不十分である。卵白加水分解物の含有量が30重量%より多いと、窒素源として過剰摂取となる。
【0028】
本発明の栄養組成物には、本発明の主旨を逸脱しない範囲内でアミノ酸を配合させてもよい。アミノ酸としては、必須アミノ酸または非必須アミノ酸などの各種アミノ酸が挙げられる。具体的には、例えば、イソロイシン、ロイシン、バリン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン酸、セリン、チロシン、グルタミン酸、システイン、タウリン、カルニチン、オルニチンなどが挙げられる。これらのアミノ酸は、必ずしも遊離アミノ酸の形で含有されている必要はなく、無機酸塩(例えば、L−リジン塩酸塩等)、有機酸塩(例えば、L−リジン酢酸塩、L−リジンリンゴ酸塩等)、生体内で加水分解可能なエステル体(例えば、L−チロシンメチルエステル、L−メチオニンメチルエステル、L−メチオニンエチルエステル等)、N−置換体(例えば、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L−プロリン等)などの形で配合されていてもよい。
【0029】
本発明の栄養組成物で使用するデキストリンは、従来の方法によって製造されるものが使用できる。すなわち、澱粉を酸分解して得られるデキストリンや、α−アミラーゼなどの酵素で処理することにより得られるデキストリンのいずれでもよい。デキストリンの原料となる澱粉は、いずれの由来でもよいが、タピオカ、とうもろこし、馬鈴薯、甘藷、ワキシーコーン、ワキシーライス、ワキシーミロなどの澱粉が利用でき、これらの中から1種類ないし2種類の組み合わせでもよい。
【0030】
本発明の栄養組成物で使用するデキストリンのDEは、15〜20の範囲内である。デキストリンのDEが15より小さいと、栄養組成物の粘度が上昇する。デキストリンのDEが20より大きいと、栄養組成物の浸透圧が高くなる。
【0031】
ここで、デキストリンのDEとは、Dextrose Equivalentの略称で、デキストリンの加水分解の程度を意味し、次の式で表される。
DE=直接還元糖(グルコース換算)/固形分×100
デキストリンのDEを求める方法は、当該技術分野における慣用技術ならびに知識がそのまま、もしくは適宜変更を加えた形で適用され、代表的にはソモジ法が挙げられる。
本発明の栄養組成物のデキストリンの含有量は、60〜80重量%、好ましくは65〜75重量%の範囲内である。デキストリンの含有量が60重量%より少ないと、糖質として栄養学的に不十分である。デキストリンの含有量が80重量%より多いと、栄養組成物の浸透圧および粘度が高くなる。
【0032】
本発明の栄養組成物には、デキストリン以外の糖質、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類を配合させてもよい。単糖類としては、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、糖アルコール、マンニトール、キシリトール、イノシトール、ソルビトールなどが挙げられる。二糖類としては、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハオースなどが挙げられる。オリゴ糖としては、3〜6単位程度の上記の単糖類の重合体が挙げられる。また、従来から食品に慣用される甘味料として使用される糖質も特に限定されるものではない。天然甘味料としては蜂蜜、果糖、麦芽糖、マルチトール、甘葛、甘茶、甘草、グリチルリチン、ステビアシド、人工甘味料としてはサッカリンナトリウム、アスパルテーム、ソルビトール、キシリトール、スクラロースなどがある。上記の中から、1種類ないし2種類の組み合わせでもよい。
【0033】
本発明の栄養組成物で使用する脂質は、従来使用されているものはいずれも可能であり、例えば、大豆油、コーン油、なたね油、サフラワー油、キャノーラ油、パーム油、ココヤシ油、ヒマワリ油、オリーブ油、シソ油、エゴマ油などの植物性油脂、牛脂、ラードなどの動物性油脂、魚油、MCT油などが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0034】
本発明の栄養組成物は、実質的に食物繊維を含まないが、各原料由来の夾雑物など、少量の食物繊維の配合を排除するものではなく、従来栄養剤として使用されているものはいずれも本発明の主旨を逸脱しない範囲で許容される。
【0035】
本発明の栄養組成物で使用する有機酸モノグリセリドは、従来使用されているものはいずれも可能であり、例えば、コハク酸モノステアリン酸グリセリン、クエン酸モノステアリン酸グリセリン、ジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリン、乳酸モノステアリン酸グリセリンなどが挙げられる。その中でも、コハク酸モノステアリン酸グリセリン、クエン酸モノステアリン酸グリセリン、ジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリンが好ましい。
【0036】
本発明の栄養組成物に使用することのできる具体的な有機酸モノグリセリドは、サンソフトNo.681NU、サンソフトNo.621B、サンソフトNo.641D(太陽化学株式会社)、ポエムB−10、ポエムK−30、ポエムW−60(理研ビタミン株式会社)が挙げられる。
【0037】
本発明の栄養組成物で使用する有機酸モノグリセリドの含有量は、0.2〜0.6重量%、好ましくは0.3〜0.5重量%の範囲である。有機酸モノグリセリドの含有量が、0.2重量%より少ないと、有機酸モノグリセリドの効果が十分発揮できず、液状で乳化状態を保持できなくなるため、好ましくない。また、0.6重量%を越えると、解乳化が引き起こされがちになるばかりでなく、乳化剤の風味が強くなり、経口摂取に適さないため、好ましくない。
【0038】
本発明の栄養組成物で使用するポリグリセリン脂肪酸エステルは、従来使用されているものはいずれも可能であり、例えば、モノラウリン酸デカグリセリン、モノミリスチン酸デカグリセリン、モノオレイン酸デカグリセリン、モノステアリン酸デカグリセリンなどが挙げられる。その中でも、モノオレイン酸デカグリセリン、モノミリスチン酸デカグリセリンが好ましい。
【0039】
本発明の栄養組成物に使用することのできる具体的なポリグリセリン脂肪酸エステルは、サンソフトQ−12S、サンソフトQ−14S、サンソフトQ−17S(太陽化学株式会社)、ポエムJ−0021、ポエムJ−0081HV、ポエムJ−0381V、ポエムJ−2081V(理研ビタミン株式会社)が挙げられる。
【0040】
本発明の栄養組成物で使用するポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、0.4〜0.8重量%、好ましくは0.4〜0.6重量%の範囲である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、0.4重量%より少ないと、ポリグリセリン脂肪酸エステルの効果が十分発揮できず、液状で乳化状態を保持できなくなるため、好ましくない。また、0.8重量%を越えると、解乳化が引き起こされがちになるばかりでなく、乳化剤の風味が強くなり、経口摂取に適さないため、好ましくない。
【0041】
なお、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、有機酸モノグリセリドおよびポリグリセリン脂肪酸エステル以外の汎用される乳化剤、例えば、高級脂肪酸モノグリセリド、中鎖脂肪酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、酵素分解レシチン、ショ糖脂肪酸エステルなどを追加して使用することができる。
【0042】
本発明の栄養組成物の浸透圧は、水を用いて1kcal/mLの濃度に調整される場合において、500mOsm/kg未満である。栄養組成物の浸透圧が、500mOsm/kgより高いと、浸透圧による下痢の原因となる可能性が大きくなる。
【0043】
本発明の栄養組成物の粘度は、水を用いて1kcal/mLの濃度に調整される場合において、5mPa・s未満、好ましくは4mPa・sである。栄養組成物の粘度が、5mPa・s以上であると、経口摂取の際に、べとつき、不快感を伴う。5mPa・s未満であれば、さらっとして経口摂取しやすくなる。
【0044】
本明細書において、栄養組成物の「乳化状態が安定である」とは、水を用いて1kcal/mLの濃度に調整される場合において、12時間以内で脂質の分離を生じないことを指す。栄養組成物の乳化状態が、12時間以内で脂質の分離を生じると、調整後の経口摂取の際に、見た目に不快感を伴う。
【0045】
本発明の栄養組成物で使用する卵白加水分解物の硫化水素濃度が高いと、硫黄臭が強く感じられる場合があるため好ましくない。硫化水素濃度は2ppm以下が好ましく、より好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは0.5ppm以下である。
【0046】
本発明において、卵白加水分解物の硫化水素濃度は、検知管式ガス測定器を用いて測定した値である。検知管式ガス測定器についてはJIS K0804で規定されており、検知管式ガス採取器と検知管からなるガス測定器をいう。
【0047】
具体的には、例えば、卵白加水分解物3gを500mLの三角フラスコに入れ、97gの精製水を加えて溶解し、80℃の恒温槽中で10秒間振り混ぜる。ガラス管およびガス検知管(株式会社ガステック社製、「気体検知管 No.4LB 硫化水素」)を差し込んだゴム栓を三角フラスコに取り付け、ガラス管の下端の位置は卵白加水分解物の水溶液の液面に触れるようにする。ガス検知管にガス採取器(株式会社ガステック社製、「気体採取器 GV−100」)を取り付け、ガス採取器を用いて100mLの気体を吸引し、ガス検知管の測定値を読み取る。
【0048】
本発明の栄養組成物に用いるミネラルとして、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレン、ヨウ素、クロム、およびモリブデン等が挙げられ、これら複数をできる限り組み合わせて配合するのが好ましい。これらは、無機電解質成分として配合されていてもよいし、有機電解質成分として配合されていてもよい。無機電解質成分としては、例えば、塩化物、硫酸化物、炭酸化物、リン酸化物などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩類が挙げられる。また、有機電解質成分としては、有機酸、例えばクエン酸、乳酸、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸など)、アルギン酸、リンゴ酸またはグルコン酸と、無機塩基、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩類が挙げられる。また、微量元素については、高濃度の微量元素化合物を含有する培地内で培養して得られる微量元素蓄積性を有する微生物の菌体(亜鉛酵母、マンガン酵母等)を用いてもよい。
【0049】
ミネラルの含有量としては、本発明の栄養組成物を水を用いて1kcal/mLの濃度に調整される場合において、100mLあたり、下記の範囲が適当である。
ナトリウム 5〜6000mg、好ましくは10〜3500mg
カリウム 1〜3500mg、好ましくは25〜1800mg
マグネシウム 1〜740mg、好ましくは25〜300mg
カルシウム 10〜2300mg、好ましくは250〜600mg
リン 1〜3500mg、好ましくは25〜1500mg
鉄 0.1〜55mg、好ましくは1〜10mg
銅 0.01〜10mg、好ましくは0.1〜6mg
亜鉛 0.1〜30mg、好ましくは1〜15mg
また、本発明の栄養組成物に微量元素としてマンガン、セレン、クロム、ヨウ素、モリブデンを含有させる場合には、本発明の栄養組成物を水を用いて1kcal/mLの濃度に調整される場合において、100mLあたり、下記の範囲が適当である。
マンガン 0.01〜11mg、好ましくは0.1〜4mg
セレン 0.1〜450μg、好ましくは1〜35μg
クロム 0.1〜40μg、好ましくは1〜35μg
ヨウ素 0.1〜3000μg、好ましくは1〜150μg
モリブデン 0.1〜320μg、好ましくは1〜25μg
本発明の栄養組成物に用いるビタミンとしては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどが挙げられ、これら複数をできる限り組み合わせて配合するのが好ましい。ビタミンとして、ビタミン誘導体を使用してもよい。
【0050】
ビタミンの含有量としては、本発明の栄養組成物を水を用いて1kcal/mLの濃度に調整される場合において、100mLあたり、下記の範囲が適当である。
ビタミンB1 0.1〜40mg、好ましくは0.3〜25mg
ビタミンB2 0.1〜20mg、好ましくは0.33〜12mg
ビタミンB6 0.1〜60mg、好ましくは0.3〜10mg
ビタミンB12 0.1〜100μg、好ましくは0.60〜60μg
ナイアシン 1〜300mg、好ましくは3.3〜60mg
パントテン酸 0.1〜55mg、好ましくは1.65〜30mg
葉酸 10〜1000μg、好ましくは60〜200μg
ビオチン 1〜1000μg、好ましくは14〜500μg
ビタミンC 10〜2000mg、好ましくは24〜1000mg
ビタミンA 0〜3000μg、好ましくは135〜600μg
ビタミンD 0.1〜50μg、好ましくは1.5〜5.0μg
ビタミンE 1〜800mg、好ましくは2.4〜150mg
ビタミンK 0.5〜1000μg、好ましくは2〜700μg
本発明の栄養組成物で使用される卵白加水分解物の含有量とデキストリンの含有量の比率は、特に限定されるものではないが、非蛋白熱量/窒素比から設定することができ、好ましくは80〜200である。非蛋白熱量/窒素比が80より低いと、侵襲時において最も効率よく窒素源を利用できない。非蛋白熱量/窒素比が200より高いと、正常時において最も効率よく窒素源を利用できない。
【0051】
ここで、非蛋白熱量/窒素比は、次の式で表される。
非蛋白熱量/窒素比=蛋白源以外の成分の総熱量(kcal)/蛋白源の窒素含量(g)
【0052】
以上、本発明の栄養組成物について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、必要に応じて、他の成分類や添加剤などを添加してもよい。例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリセリン、プロピレングリコール、アラビアゴム、色素、香料、保存剤など、通常の食品原料として使用されている添加剤などを適宜添加してもよい。
【0053】
本発明の栄養組成物は粉末である。本発明において粉末とは顆粒を含む概念であり、造粒、粉砕等の製造方法を問わず、水または微温水に溶解可能に形成された粒子をいうものとする。
【0054】
本発明の栄養組成物の造粒方法としては、当該技術分野における慣用技術ならびに知識がそのまま、もしくは適宜変更を加えた形で適用された常法により製造できる。例えば、流動層造粒法、流動層多機能型造粒法、噴霧乾燥造粒法、転動造粒法、撹拌造粒法などがあり、卵白加水分解物にバインダー液を噴霧して、粉体にバインダー液成分を被覆できる方法が挙げられる。なかでも流動層造粒法により製造するのが好ましい。
【0055】
流動層造粒法による製造方法として、以下の方法を例示することができる。例えば、上記の分解度5〜15、かつ、平均分子量500〜1000の卵白加水分解物を造粒機にいれ、下方から熱風を送り込むことで、粉体を流動させる。この流動層にデキストリン、脂質、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステルを溶解したバインダー液をノズル噴霧し、粉体表面に均一に付着させ、凝集粒をつくり、これを乾燥させることにより栄養組成物を製造する方法を挙げることができる。
【0056】
バインダー液は、脂質、乳化剤とこれらを溶解あるいは懸濁させる溶媒により構成される。使用される溶媒としては、水単独が好ましいが、エチルアルコールなどの水溶性の溶剤を添加してもよい。
【0057】
卵白加水分解栄養組成物にミネラルまたはビタミンを混合する方法としては、卵白加水分解物と一緒に造粒機に入れ、混合したり、界面活性剤と一緒にバインダー液に溶解して、噴霧したり、また、バインダー液を噴霧後または乾燥後、混合する方法が挙げられる。
【0058】
本発明の栄養組成物を収容する容器としては特に限定されない。
例えば、プラスチックボトル、ペットボトルやカート缶、金属缶、紙パック、アルミフィルム包装、または合成樹脂製フィルム包装容器などが挙げられる。
【0059】
合成樹脂製フィルム包装容器の材質としては、食品用容器などに通常使用されている軟質合成樹脂、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン類に、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステルなど、およびこれらの少なくとも1つを含むフィルムシートなどからの構成包装材、またこれらの素材に酸化ケイ素、酸化アルミ、アルミニウムなどのガスバリアー性物質を蒸着処理した包装材およびこれらの素材を組み合わせた多層フィルムなどが挙げられる。
【0060】
容器への充填、収容は常法に従って行うことができ、例えば、各液を不活性ガス雰囲気下で充填し、施栓し、加熱殺菌する方法が挙げられる。
このようにして得られた本発明の栄養組成物は、効率的に熱量、窒素源、糖質、脂質、ミネラル、およびビタミンを補給でき、より摂取しやすい栄養組成物として、栄養補給を必要とする外科手術患者や低栄養状態の患者などが抵抗なく経口で摂取できる。
【実施例】
【0061】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
表1および2に示す原料および配合で栄養組成物を調製1の方法により調製した。
【0062】
【表1】

※1:製品名:TK−16、松谷化学工業株式会社
【0063】
【表2】

【0064】

(調製法)
卵白加水分解物、グリセロリン酸カルシウム、およびヨーグルトフレーバーを流動層造粒機にいれ、入口温度70℃、排風温度60℃、造粒時間5分間の条件下で、粉体を流動させる。この流動層にバインダー液として、デキストリンを水に溶解したデキストリン溶液と水に溶解したビタミン溶液の混合液、大豆サラダ油、コーンサラダ油、モノオレイン酸デカグリセリン、コハク酸モノステアリン酸グリセリン、スクラロースおよび水から調製した乳化液、ビタミンミックスおよびアスコルビン酸を水に溶解したビタミン溶液の混合液、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、グルコン酸亜鉛、およびグルコン酸銅を水に溶解した塩類溶液、クエン酸鉄ナトリウムを水に溶解したクエン酸鉄ナトリウム溶液をノズル噴霧し、粉体表面に均一に界面活性剤液を付着させ、凝集粒をつくり、これを5時間乾燥処理して、粉末の栄養組成物を得た。このとき、非蛋白熱量/窒素比は、142である。
【0065】
(実施例2)
実施例1において、分解度11.5、平均分子量740、硫化水素濃度0.2ppmの卵白加水分解物に変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0066】
(実施例3)
実施例1において、分解度11.1、平均分子量808、硫化水素濃度0.2ppmの卵白加水分解物に変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0067】
(実施例4)
実施例1において、デキストリンをサンデック#150(DE15、三和澱粉工業株式会社)に変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0068】
(実施例5)
実施例1において、デキストリンをサンデック#185N(DE19、三和澱粉工業株式会社)に変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0069】
(比較例1)
実施例1において、分解度25、平均分子量300、硫化水素濃度2.2ppmの卵白加水分解物に変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0070】
(比較例2)
実施例1において、分解度20、平均分子量330、硫化水素濃度2.2ppmの卵白加水分解物に変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0071】
(比較例3)
実施例1において、分解度7.6、平均分子量1150、硫化水素濃度2.4ppmの卵白加水分解物に変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0072】
(比較例4)
実施例1において、デキストリンをサンデック#100(DE10、三和澱粉工業株式会社)に変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0073】
(比較例5)
実施例1において、デキストリンをサンデック#250(DE25、三和澱粉工業株式会社)に変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0074】
(比較例6)
実施例1において、有機酸モノグリセリド(コハク酸モノステアリン酸グリセリン)の配合量を0.097kg/100kgに変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0075】
(比較例7)
実施例1において、有機酸モノグリセリド(コハク酸モノステアリン酸グリセリン)の配合量を0.774kg/100kgに変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0076】
(比較例8)
実施例1において、ポリグリセリン脂肪酸エステル(モノオレイン酸デカグリセリン)配合量を0.195kg/100kgに変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0077】
(比較例9)
実施例1において、ポリグリセリン脂肪酸エステル(モノオレイン酸デカグリセリン)配合量を1.053kg/100kgに変更した以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して栄養組成物を得た。
【0078】
(評価方法)
実施例1〜5と比較例1〜9を1kcal/mLに調整し、粘度はB型粘度計(RB−80L、東機産業株式会社)で測定した(温度30℃)。浸透圧は、浸透圧計(3D−3、アドバンス社)で測定した。乳化状態は、12時間静置後、液面のクリーミング、油滴等の浮遊物の有無を観察した。評価は次に示す4段階で行った。
◎:液が一様であり、液面のクリーミング、油滴等の浮遊物が無い。
○:液が一様であり、液面のクリーミング、油滴等の浮遊物が無いが、壁面に極少量のクリーミングの付着が観察される。
△:液が一様であり、液面のクリーミング、油滴等の浮遊物が無いが、縁に沿って少量のクリーミングが観察される。
×:液が一様でなく、クリーミングを液面に形成し、油滴が浮いており、壁面のクリーミングが顕著である。
【0079】
風味試験は、15名の被験者に食してもらい、風味を官能評価した。評価は次に示す5点で行い、平均点を算出した。
5点:美味しい。
4点:やや美味しい。
3点:どちらともいえない。
2点:やや美味しくない。
1点:美味しくない。
測定した結果は、表4に示す。
【0080】
実施例1は、分解度11.5、平均分子量703、硫化水素濃度0.2ppmの卵白加水分解物、DE18のデキストリンを配合していることから、粘度が5mPa・s未満、浸透圧が500mOsm/kg未満、乳化状態および風味も良好で、経口摂取しやすかった。
【0081】
実施例2は、分解度11.5、平均分子量740、硫化水素濃度0.2ppmの卵白加水分解物、DE18のデキストリンを含有していることから、粘度が5mPa・s未満、浸透圧が500mOsm/kg未満、乳化状態および風味も良好で、経口摂取しやすかった。
【0082】
実施例3は、分解度11.1、平均分子量808、硫化水素濃度0.2ppmの卵白加水分解物、DE18のデキストリンを含有していることから、粘度が5mPa・s未満、浸透圧が500mOsm/kg未満、乳化状態および風味も良好で、経口摂取しやすかった。
【0083】
実施例4は、分解度11.5、平均分子量703、硫化水素濃度0.2ppmの卵白加水分解物、DE15のデキストリンを含有していることから、粘度が5mPa・s未満、浸透圧が500mOsm/kg未満、乳化状態および風味も良好で、経口摂取しやすかった。
【0084】
実施例5は、分解度11.5、平均分子量703、硫化水素濃度0.2ppmの卵白加水分解物、DE19のデキストリンを含有していることから、粘度が5mPa・s未満、浸透圧が500mOsm/kg未満、乳化状態および風味も良好で、経口摂取しやすかった。
【0085】
比較例1は、分解度25、平均分子量300、硫化水素濃度2.2ppmの卵白加水分解物を含有していることから、浸透圧が500mOsm/kg以上、風味は悪く、経口摂取しにくかった。
【0086】
比較例2は、分解度20、平均分子量330、硫化水素濃度2.2ppmの卵白加水分解物を含有していることから、浸透圧が500mOsm/kgL以上、風味は悪く、経口摂取しにくかった。
【0087】
比較例3は、分解度7.6、平均分子量1150、硫化水素濃度2.4ppmの卵白加水分解物を含有していることから、粘度が5mPa・s以上、風味は悪く、経口摂取しにくかった。
【0088】
比較例4は、DE10のデキストリンを含有していることから、粘度が5mPa・s以上となった。
【0089】
比較例5は、DE25のデキストリンを含有していることから、浸透圧が500mOsm/kg以上となった。
【0090】
比較例6は、有機酸モノグリセリドを0.1%含有していることから、乳化状態が不良であった。
【0091】
比較例7は、有機酸モノグリセリドを0.8%含有していることから、乳化状態が不良であり、風味は悪く、経口摂取しにくかった。
【0092】
比較例8は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.2%含有していることから、乳化状態が不良であった。
【0093】
比較例9は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを1.0%含有していることから、乳化状態が不良であり、風味は悪く、経口摂取しにくかった。
【0094】
【表3】

【0095】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解度5〜15、かつ、平均分子量500〜1000の卵白加水分解物を10〜30重量%、
DE15〜20のデキストリンを60〜80重量%、
脂質を4〜8重量%、
有機酸モノグリセリドを0.2〜0.6重量%、
ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.4〜0.8重量%含有することを特徴とする栄養組成物であって、
実質的に食物繊維を含有しない
粉末の栄養組成物。
【請求項2】
水を用いて1kcal/mLの濃度に調整される場合において、浸透圧が500mOsm/kg未満、粘度が5mPa・s未満で、かつ乳化状態が安定である請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項3】
さらに、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン、鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレン、ヨウ素、クロム、およびモリブデンからなる群のうち1種以上のミネラルを含有する請求項1または2に記載の栄養組成物。
【請求項4】
さらに、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKからなる群のうち1種以上のビタミンを含有する請求項1ないし3のいずれかに記載の栄養組成物。

【公開番号】特開2012−183060(P2012−183060A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189804(P2011−189804)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】