説明

粉末案内用治具

【課題】 芯棒の形状、寸法(頂部及び外径)や有無に関係なく容器内への成形粉末の充填供給を行い得るとともに、芯棒がある場合には芯棒と容器との芯ズレを起こすことなく成形粉末の充填供給を行い得る粉末案内用治具を提供する。
【解決手段】 容器上部の開口部10aより成形粉末を供給しながら容器10を振動させ、容器内に粉末を充填させる際に用いる粉末案内用治具Aであって、容器開口部10aに下端部が内接する外筒部1と、この外筒部1の内側に同心に配設される内筒部2と、外筒部1と内筒部2との間のほぼ全空間を遮ることなく外筒部1と内筒部2を連結するアーム3と、内筒部2に設けられる締結手段5とを備え、更に容器10内に芯棒11が設置される場合を予定して、内筒部2の下端部が芯棒11の上端部に相当する大きさに形成され、締結手段5には芯棒11とほぼ同径又は大径の傾斜付きキャップ8、9が着脱可能に締結されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に粉末を充填する際に容器上部の開口部に設置して用いられる粉末案内用治具に関し、特に粉末プレス成形装置や乾式冷間等方圧加圧装置(乾式CIP装置)等において採用される容器に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平8−332597号公報(特許文献1)には、キャビティ構成用の貫通部が形成されたダイスと、その貫通部に嵌挿して同貫通部でリング状粉末成形体用粉末のキャビティを構成する下パンチと、その下パンチに上下動可能に貫入された下部コアと、前記キャビティに嵌挿する外形を有し且つ前記下部コアを収容するガイド孔を穿設した上下動可能な上パンチとからなるプレス成形型において、前記下部コアの頂部は錐形とし、その下部コアを収容する上パンチのガイド孔の突き当りも、下部コア頂部の錐形に合致する形状であることを特徴とするリング状粉末成形体用プレス成形型(請求項3)が提案されている。
【0003】
そして、上記提案のリング状粉末成形体用プレス成形型によれば、特許文献1の段落11に説明されているように、下部コアの頂部は錐形であり、この下部コアを収容する上パンチのガイド孔の突き当たりも、下部コア頂部の錐形に合致する形状であるから、下部コアの頂部に粉末が残ることがなく、従って、その粉末の後処理も必要がないといった利点を有するとされている。
【0004】
しかし、上記の利点を有するものの、次の如き問題が懸念される。即ち、下部コアの頂部を錐形にした場合、下部コアの径が大きくなるほど錐形も大きくなり、その分だけ錐形の高さが高くなるため全長も長くなる。また粉末性状によっては錐形の先端角を鋭角にしないとコア頂部に粉末が溜まることが考えられ、コア径が大きいほどその傾向が大きくなる。また更に、下部コアをハンドリング又は組立する際、上端部が錐形となっているのでアイボルト等のネジ穴を施すことができず、細径で軽量物であるならまだしも、大径で重量物となる場合には、扱いが問題となる。
【0005】
また、特開2000−119704号公報(特許文献2)には、筒状の周壁と底壁とを備え、上方が開口しており、且つ底壁中央に芯棒が立てられた容器を振動させながら、その容器内に粉末を充填する際に用いる粉末案内用治具であって、前記容器の筒状周壁の上端部によって下方から支えられるリング部と、前記芯棒の上端に被せられるものであって、その上面には頂点と、その頂点の周囲に位置し、前記頂点から離れるに従って下方に位置する傾斜面が形成されているキャップ部と、前記キャップ部と前記リング部との間のほぼ全空間を遮ることなく前記キャップ部と前記リング部とを連結するアーム部とを備えた、粉末案内用治具(請求項1)が提案されている。
【0006】
そして、上記提案の粉末案内用治具によれば、特許文献2の段落7〜9に説明されているように、容器を振動させながら粉末を充填しても芯棒を確実に位置決めすることができ、且つ粉末の充填効率を向上させることができるといった利点を有するとされている。
【0007】
しかし、上記提案の粉末案内用治具では、上記の利点を有するものの、次の如き問題が懸念される。即ち、治具のリング部が容器によって下方から支えられるためには、実施例でゴム型容器を例に説明されているように、容器の上部(給粉側)の内側に治具のリング部外周部が嵌り込むための段差を形成するなど、容器の上部形状を特定の形状に形成することが要求される。また、容器内に芯棒を要するリング形状の給粉に対応する粉末案内用治具として特定されているが、仮に芯棒の存在しない容器(ロッド形状)に適用した場合は、粉末案内用治具の中央に備えられたキャップ部が邪魔して給粉効率が期待できず、共用することは難しい。
【特許文献1】特開平8−332597号公報
【特許文献2】特開2000−119704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に基づいてなしたものであって、その目的は、芯棒の形状、寸法(頂部及び外径)や有無に関係なく容器内への成形粉末の充填供給を行い得るとともに、芯棒がある場合には芯棒と容器との芯ズレを起こすことなく成形粉末の充填供給を行い得る、粉末案内用治具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明(請求項1)に係る粉末案内用治具は、容器上部の開口部より成形粉末を供給しながら容器を振動させ、容器内に粉末を充填させる際に用いる粉末案内用治具であって、粉末充填時、前記容器開口部に下端部が内接する外筒部と、この外筒部の内側に同心に配設される内筒部と、前記外筒部と内筒部との間の空間をほぼ遮ることなく前記外筒部と前記内筒部とを連結するアームと、前記内筒部に設けられる締結手段とを備え、更に前記容器内に芯棒が設置される場合を予定して、前記内筒部の下端部が前記芯棒の上端部に相当する大きさに形成され、前記締結手段には前記芯棒とほぼ同径又は大径の傾斜付きキャップが着脱可能に締結されてなるものである。
【0010】
上記構成の粉末案内用治具によれば、粉末充填時に、容器開口部に外筒部の下端部を内接させて設けるので、容器の開口部形状に段差を備える等の特定の形状に形成する必要がない。即ち、外筒部が容器開口部に内接するので開口部の形状はストレート、テーパ、あるいは段付きなど何れをも採用できる。また、外筒部の内側には同心に内筒部が配設され、且つその内筒部の下端部が芯棒の上端部に相当する大きさに形成されているので、容器内に芯棒を設ける場合、芯棒の上端部を内筒部の下端部に装入して設けることができる。この場合、内筒部には締結手段が設けられているので、その締結手段を介してキャップを取付けることで、芯棒を有する容器にも対応させることができる。このように芯棒がある場合にはキャップを被せるので、芯棒の先端面の形状は平坦でも、あるいはハンドリング用(アイボルト等)のネジ穴などが形成されてあってもよい。
【0011】
本発明(請求項2)に係る粉末案内用治具は、上記請求項1に記載の粉末案内用治具において、締結手段が、内筒部の内側中心に配設される係合部と、前記内筒部と係合部との間の空間をほぼ遮ることなく前記内筒部と前記係合部とを連結するアームとを備えてなるものである。このように締結手段を構成することで、キャップに設けた係合部によってキャップを着脱自在に締結させることができる。なお、この締結手段は、内筒部の上部壁部に上端から垂直溝、この垂直溝の終端から水平溝を形成する一方、キャップの垂直裾部に前記溝に係合する突起を設けて当該突起を前記溝に沿って移動させることで、水平溝の終端で締結させたり、逆に移動することで外すこともできる
【0012】
本発明(請求項3)に係る粉末案内用治具は、上記請求項1又は2に記載の粉末案内用治具において、外筒部の外周面に鍔を設け、この鍔の下面にシール部材が取付けられてなるものである。このように構成することで、粉末充填時に、容器を振動させることにより起こる粉末案内用治具と容器との間からの粉末のこぼれ、又は粉塵が外部へもれるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る粉末案内用治具によれば、芯棒の形状、寸法(頂部及び外径)や有無に関係なく容器内への成形粉末の充填供給が行えるとともに、芯棒がある場合には芯棒と容器との芯ズレを起こすことなく成形粉末の充填供給が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る粉末案内用治具の説明図であって、aは平面図、bは断面図である。図2は、図1における粉末案内用治具に用いるキャップ部の説明図であって、aは芯棒がある場合、bは芯棒がない場合である。図において、Aは粉末案内治具、1は外筒部、2は内筒部、3、4はアーム、5はネジ部(係合部)である。
【0015】
粉末案内治具Aは、本体部として形成される外筒部1とその下部内側にアーム3によって接続される内筒部2とを備える。この内筒部2の内側上部には更にアーム4がクロス形状に接続されており、その中心部には上方にオネジが形成されたネジ部5を備えている。
【0016】
外筒部1は、下方部となる充填粉末排出側が錐状となっており、後記する容器(ゴム型)10の上部開口(給粉側)10aにその外周部が内接するように固定される。なお、本例では、外筒部1の上方部は角型を図示したが、粉末を供給するフィーダ等の供給側の形態によって丸型でも角型でも構わない。また、本例では、外筒部1の錐状の下部外周面には、排出面と平行に鍔6が取付けられており、その下部には柔軟性を要するスポンジゴム等のシール部材7が貼り付けられている。この鍔6とシール部材7は、粉末充填作業時、容器(ゴム型)に粉末案内用治具Aをセットした際、その容器(ゴム型)10の上面との間の隙間を埋める位置に取付けられている。なお、この鍔6とシール部材7は、取付けられていなくても、外筒部1を容器(ゴム型)10の上部開口(給粉側)10aに内接して粉末案内用治具Aを取付けることができるが、前記鍔6とシール部材7を設けることで、外筒部1と容器(ゴム型)10の上部開口(給粉側)10aとの間に生じる隙間を無くすことができ、粉末や粉塵が容器の外部に出るのを防止でき好ましい。
【0017】
内筒部2は、比較的短尺の筒状で、その内径は充填時使用される芯棒11の径に相当する大きさに決定され、充填作業時、内筒部2が芯棒11に被さるように形成されている。内筒部2を芯棒11より若干大き目にしておくのが給粉上有利であるが、ほぼ同径として芯棒11の上に当接するようにしておいてもよい。
【0018】
外筒部1と内筒部2は、棒状又は板状の数本(本例では4本)のアーム3によって接続され、その間の全ての空間をほぼ遮ることがない。また、内筒部2とネジ部5の間に取付けられたアーム4も同様の部材で構成されこちらもその間の全ての空間をほぼ遮ることがない。
【0019】
図2に示すキャップ8は、容器10の内部に芯棒11がある場合のもので、頂点から離れるに従って下方に傾斜する傾斜面8aを有する円錐形のものであって、その下面の中心部には粉末案内用治具Aのネジ部5(係合部)のオネジに取り付けるべくメネジが形成されている。また、キャップ9は、容器10の内部に芯棒11が無い場合のもので、頂点から離れるに従って下方に傾斜する傾斜面9aを有する頭部が円錐形の棒材であって、その下面の中心部には粉末案内用治具Aのネジ部5のオネジに取り付けるべくメネジが形成されている。なお、傾斜面8a、9aは、図示しない給粉機からの粉末供給時に、粉末が付着もしくは堆積しないよう傾斜が大きい方が望ましい。また、係合部は、本実施形態ではネジを使用した例を説明したが、ネジに限定されるものではなく、クイックカップリングなどを用いてもよい。
【0020】
次に、上記粉末案内用治具Aとキャップ8、9を用いた粉末充填方法について図3、4を基に説明する。
【0021】
図3は、芯棒を有する容器(ゴム型)のキャビティに粉末案内用治具を用いて粉末充填する際の粉末充填状態図であって、aは全体断面図、bは充填後の容器上部の拡大断面図である。この図3に示す形態は、キャップ8をネジ部5に取付けた粉末案内用治具Aを用いる場合のものである。
【0022】
図3に示すように、容器としてのゴム型10内には金属製の芯棒11が下蓋12によって立てられ、ゴム型10と芯棒11との間にキャビティ13を形成する。そして、そのゴム型10の上部開口(給粉側)10aには、キャップ8をネジ部5に取付けた粉末案内用治具Aが被されている。
【0023】
この状態で、図示しない給粉機の供給口からフィーダ14を介して粉末が粉末案内用治具Aに供給される。このとき、キャビティ13内に充填された粉末の充填密度を上げるためエアバイブレータ15等からゴム型10に振動が伝えられるが、その際発生する粉塵やゴム型上部からの粉末の飛散等は鍔6とシール部材7によって隙間を無くしているので回避される。また、この給粉において、粉末案内用治具Aの外筒部1と内筒部2の位置関係から、ゴム型10と芯棒11との同芯が位置決めされ、後述する振動等でゴム型10と芯棒11の位置関係が大きくズレを生じることなく給粉作業が行える。
【0024】
粉末充填完了されたゴム型10は、図3bに示すように、粉末案内用治具Aが外され、上蓋(上パンチ)16が取付けられ、その後、乾式CIP装置にて加圧成形される。
【0025】
図4は、芯棒の無い容器(ゴム型)のキャビティに粉末案内用治具を用いて粉末充填する際の粉末充填状態図である。この図4に示す形態は、キャップ9をネジ部5に取付けた粉末案内用治具Aを用いる場合のものである。
【0026】
図4に示すように、容器としてのゴム型10は下蓋12に取付けられ、内部にキャビティ13を形成する。そして、そのゴム型10の上部開口(給粉側)10aには、キャップ9をネジ部5に取付けた粉末案内用治具Aが被されている。
【0027】
この状態で、図示しない給粉機の供給口からフィーダ14を介して粉末が粉末案内用治具Aに供給される。またキャビティ13内に充填された粉末の充填密度を上げるためエアバイブレータ15等からゴム型10に振動が伝えられるが、その際発生する粉塵やゴム型10上部からの粉末の飛散等は鍔6とシール部材7によって隙間を無くしているので回避される。
【0028】
粉末充填完了されたゴム型10は、粉末案内用治具Aが外され、内側下面が平坦な上蓋(上パンチ)が取付けられ、その後、乾式CIP装置にて加圧成形される。
【0029】
なお、上記の実施形態では、キャップ8を内筒部2に着脱自在に締結する締結手段としてネジ部5を例に説明したが、例えば、図5に示すように、キャップ8のスカート部17の内周面に等間隔に2個〜6個程度の突起18を設ける一方、内筒部2の上部に前記突起18に係合する縦溝19、横溝(水平溝)20を形成するようにしてもよい。この場合には、内筒部2の空間にはネジ部5やアーム4が無く、またキャップ9も不要で全空間が広くなる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
粉末プレス成形装置や乾式冷間等方圧加圧装置(乾式CIP装置)等を用いたセラミックスの成形や粉末冶金の分野にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る粉末案内用治具の説明図であって、aは平面図、bは断面図である。
【図2】図1における粉末案内用治具に用いるキャップ部の説明図であって、aは芯棒がある場合、bは芯棒がない場合である。
【図3】芯棒を有する容器(ゴム型)のキャビティに粉末案内用治具を用いて粉末充填する際の粉末充填状態図であって、aは全体断面図、bは充填後の容器上部の拡大断面図である。
【図4】芯棒の無い容器(ゴム型)のキャビティに粉末案内用治具を用いて粉末充填する際の粉末充填状態図である。
【図5】本発明に係る粉末案内用治具の締結手段の別の実施形態の拡大段面図である。
【符号の説明】
【0032】
1:外筒部 2:内筒部 3、4:アーム
5:ネジ部 6:鍔 7:シール部材
8、9:キャップ 8a、9a:傾斜面 10:ゴム型(容器)
10a:上部開口 11:芯棒 12:下蓋
13:キャビティ 14:フィーダ 15:エアバイブレータ
16:上蓋 17:スカート部 18:突起
19:縦溝 20:横溝 A:粉末案内用治具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器上部の開口部より成形粉末を供給しながら容器を振動させ、容器内に粉末を充填させる際に用いる粉末案内用治具であって、前記容器開口部に下端部が内接する外筒部と、この外筒部の内側に同心に配設される内筒部と、前記外筒部と内筒部との間の空間をほぼ遮ることなく前記外筒部と前記内筒部とを連結するアームと、前記内筒部に設けられる締結手段とを備え、更に前記容器内に芯棒が設置される場合を予定して、前記内筒部の下端部が前記芯棒の上端部に相当する大きさに形成され、前記締結手段には前記芯棒とほぼ同径又は大径の傾斜付きキャップが着脱可能に締結されてなることを特徴とする粉末案内用治具。
【請求項2】
前記締結手段が、内筒部の内側中心に配設される係合部と、前記内筒部と前記係合部との間の空間をほぼ遮ることなく前記内筒部と前記係合部とを連結するアームとを備えてなる請求項1に記載の粉末案内用治具。
【請求項3】
前記外筒部の外周面に鍔を設け、この鍔の下面にシール部材が取付けられてなる請求項1又は2に記載の粉末案内用治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−9093(P2006−9093A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188117(P2004−188117)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】