説明

粉末洗浄剤組成物

【課題】グリシン−N,N−二酢酸誘導体(GDA)を含有する粉末洗浄組成物において、長期保存後においても変色が生じず、保存安定性に優れる粉末洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるグリシン−N,N−二酢酸誘導体(A成分)と還元剤(B成分)とを共造粒した顆粒と、酸素系漂白剤(C成分)とを下記条件を満たすように含む粉末洗浄剤組成物。
A成分:1〜50質量%
B成分:0.01〜10質量%
C成分:1〜25質量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動食器洗浄機に好適に用いることができる粉末洗浄剤組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末洗浄剤組成物には界面活性剤が多量に配合されてきたが、近年、環境配慮の観点から、生分解性が良好な有機キレート剤を多く配合することによって界面活性剤の使用量を低減させる動きが見られる。前記生分解性が良好な有機キレート剤としては、例えば、グリシン−N,N−二酢酸誘導体(以下、「GDA」と略記する場合がある。)が挙げられる。このGDAは、生分解性が良好であると共に高いキレート性能を有する優れた洗浄基剤であることから、界面活性剤の使用量を低減させるための材料として注目されている。
【0003】
前記生分解性が良好な有機キレート剤を含有する洗浄剤組成物としては、例えば、GDAと、過炭酸塩又は過硼酸塩、漂白前駆体、及び非イオン界面活性剤等とを特定の割合で含有する漂白剤含有洗剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。
また、GDA等のアミノカルボン酸系の有機系キレート剤の塩を必須成分とし、更に再汚染防止剤を含有する洗浄剤組成物を用いた衣料の洗濯方法が開示されている(特許文献2参照)。
前記特許文献1,2には、前述のとおりGDA等を含有する洗浄剤組成物が記載されているが、GDAの変色については一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−35978号公報
【特許文献2】特開2009−132934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、前記GDAを含有する粉末洗浄剤組成物の開発にあたって研究を進めたところ、GDA含有粉末洗浄剤組成物中のGDAが長期保存中に変色するという新たな課題に直面した。
本発明は、グリシン−N,N−二酢酸誘導体(GDA)を含有する粉末洗浄組成物において、長期保存後においても変色が生じず、保存安定性に優れる粉末洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが、前記課題を解決するためにGDAの変色に関する検討を行ったところ、GDAの変色が酸素系漂白剤の存在により促進されていることを知見した。しかし、酸素系漂白剤は洗浄性能に優れた基剤であり、酸素系漂白剤を含有しない粉末洗浄剤組成物は洗浄性能が大きく低下してしまう。
そこで、本発明者らは、酸素系漂白剤の存在下においてGDAの変色を抑制する技術について更に検討を重ねた結果、GDAと還元剤とを顆粒として粉末洗浄剤組成物中に含有させることによりGDAの変色を抑制することが可能となることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記[1]、[2]を提供する。
[1]下記一般式(1)で表されるグリシン−N,N−二酢酸誘導体(A成分)と還元剤(B成分)とを含有する顆粒と、酸素系漂白剤(C成分)とを下記条件を満たすように含む粉末洗浄剤組成物。
A成分:1〜50質量%
B成分:0.01〜10質量%
C成分:1〜25質量%
【化1】

(式中、M1〜M3は、それぞれ独立に水素原子又はカチオン成分を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
[2]A成分とB成分とを共造粒した後に、得られた造粒物とC成分とを混合する前記粉末洗浄剤組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
グリシン−N,N−二酢酸誘導体(GDA)を含有する粉末洗浄組成物において、長期保存後においても変色が生じず、保存安定性に優れる粉末洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[粉末洗浄剤組成物]
本発明の粉末洗浄剤組成物は、グリシン−N,N−二酢酸誘導体(A成分)と還元剤(B成分)とを含有する顆粒と、酸素系漂白剤(C成分)とを特定の配合量で含有するものである。
なお、本明細書において「顆粒」とは、微細な粒子を凝集させたもの、及び微細な粒子を造粒したものを指し、「粉末」とは、常温(20℃)で固体の粒子、及び顆粒を指す。
【0010】
<顆粒>
本発明の粉末洗浄剤組成物において使用する顆粒は、少なくともA成分とB成分とで構成されていればよいが、消泡剤としてのポリプロピレングリコールや、バインダーとしてのポリエチレングリコールを含んでいてもよい。
【0011】
(A成分:グリシン−N,N−二酢酸誘導体)
本発明において使用するグリシン−N,N−二酢酸誘導体(GDA)は、下記一般式(1)で表されるものである。
【0012】
【化2】

(式中、M1〜M3は、それぞれ独立に水素原子又はカチオン成分を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【0013】
前記一般式(1)中のRが示すアルキル基、又はアルケニル基の炭素数は、1〜18が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6が更に好ましく、1〜3がより更に好ましい。炭素数が前記範囲内であれば、得られる粉末洗浄剤組成物の生分解性と洗浄力が良好となる。
好ましいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基等を挙げることができ、これらの中では、メチル基が好ましい。ここで、「各種」とは、n−、tert−、iso−を含む各種異性体を意味する。
また、好ましいアルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、2−メチル−2−プロペニル基等が挙げられる。
【0014】
前記一般式(1)中のMは、水素原子又はカチオン成分を示し、このカチオン成分としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属や、アンモニウム、アルカノールアミン、アルキルアミン等を挙げることができる。これらの中では、入手容易性の観点及び製造コスト低減の観点から、水素原子、アルカリ金属が好ましい。
【0015】
本発明において用いるA成分は、液体、固体のいずれでもよいが、粉末洗浄剤組成物の製造を効率的に行う観点、生分解性の観点、物性面(取り扱い性)の観点から固体であることが好ましい。
本発明において、粉末洗浄剤組成物中のA成分の含有量は、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、10〜35質量%が更に好ましく、15〜30質量%がより更に好ましい。A成分の含有量が1質量%未満、又は50質量%を超えると、十分なキレート効果が得られず洗浄能力が低下するおそれがある。
なお、本発明において、前記A成分は全量が顆粒中に含まれていることが好ましい。
【0016】
(B成分:還元剤)
本発明においては、前記A成分を構成するGDAの黄変を抑制することを目的として還元剤を使用する。すなわち、GDAの黄変は、酸素系漂白剤から生じるH22等の影響により生じるものであるため、GDAと共に還元剤を顆粒内に含有させることにより、GDAに対する酸化剤の影響を最小限に抑えることができる。
本発明において用いる還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩、及び亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩等を挙げることができ、これらの中では、亜硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウムが好ましい。これらの還元剤であれば、粉末洗浄剤組成物中に生じる酸化剤に起因するGDAの黄変を効果的に抑制することができる。これらの還元剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
B成分として用いる還元剤の平均粒径は、取り扱い性の観点から、10〜500μmが好ましく、30〜400μmがより好ましく、50〜300μmが更に好ましい。
平均粒径は、光学顕微鏡により任意の100個の顆粒を観察してその数平均を算出することにより求めることができる。顆粒に長径と短径とがある場合は、長径を平均粒径の算出に採用する。
【0018】
粉末洗浄剤組成物中のB成分の含有量は、0.01〜10質量%であり、0.1〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が更に好ましい。B成分の含有量が0.01質量%未満である場合には、GDAの着色を抑制することが難しくなり、含有量が10質量%を超えると、徒にコストが上昇するため好ましくない。
また、A成分の変色を効果的に抑制する観点から、粉末洗浄剤組成物中のA成分100質量部に対するB成分の量は、0.3〜50質量部が好ましく、0.5〜30質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。
【0019】
(ポリプロピレングリコール)
本発明においては、粉末洗浄剤組成物の消泡性を向上させる観点から、消泡剤としてポリプロピレングリコールを用いることが好ましい。このポリプロピレングリコールの数平均分子量は、600〜20,000が好ましく、2,000〜12,000が更に好ましい。
【0020】
粉末洗浄剤組成物中のポリプロピレングリコールの含有量は、1〜6質量%が好ましく、1.5〜5質量%がより好ましく、2〜4質量%が更に好ましい。ポリプロピレングリコールは、A成分とB成分とで構成される顆粒中に配合してもよく、また、A成分とB成分とで構成される顆粒を作製した後、C成分と共に混合してもよい。
【0021】
(ポリエチレングリコール)
本発明においては、A成分とB成分とで構成される顆粒の物理的強度を向上させることを目的として、ポリエチレングリコールをバインダーとして用いてもよい。
バインダーとして用いるポリエチレングリコールの数平均分子量は、4,000〜20,000が好ましく、6,000〜13,000がより好ましく、7,000〜9,000が更に好ましい。ポリエチレングリコールの数平均分子量が前記範囲内であれば、取り扱い性が良好であるため造粒を行いやすくなる。
なお、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールの数平均分子量は、水酸基価から求めることができる。
【0022】
ポリエチレングリコールの使用量は、A成分とB成分との合計量に対して、10〜100質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、15〜40質量%が更に好ましい。ポリエチレングリコールの使用量が前記範囲内であれば、強度に優れる顆粒を製造することができ、顆粒が破壊されにくくなるためGDAの着色抑制効果を長期に亘って得ることができる。
【0023】
(顆粒の製造方法)
前記各成分を含む顆粒の製造方法に制限はないが、A成分、B成分、及びポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の任意成分を混合し、共造粒することによって得ることができる。顆粒の詳細な製造方法については後述する。
【0024】
(顆粒の形状及び大きさ)
本発明における顆粒は、球状、円柱状やペレット状のものであってもよい。顆粒が球状である場合の平均粒径は、0.2〜12mmが好ましく、0.3〜10mmがより好ましい。円柱状又はペレット状である場合、平均直径は0.3〜10mmが好ましく、平均長さは0.3〜10mmが好ましい。なお、平均粒径、平均直径、平均長さは、光学顕微鏡により任意の100個の顆粒を観察してその平均を算出することにより求めることができる。顆粒に長径と短径とがある場合は、長径を、それぞれ平均粒径、平均直径の算出に採用する。
顆粒中の前記A成分の含有量は、50〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましく、顆粒中のB成分の含有量は、GDAの着色を抑制する観点から、0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜5質量%がより好ましい。顆粒中におけるA成分100質量部に対するB成分の量は、A成分の変色を効果的に抑制する観点から、前記粉末洗浄剤組成物中の好ましい範囲と同じである。
顆粒中のポリエチレングリコールの含有量は、顆粒の強度を維持する観点から、3〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましい。
【0025】
<顆粒以外の成分>
(C成分:酸素系漂白剤)
本発明の粉末洗浄剤組成物においては、本来の目的である洗浄性を向上させるために酸素系漂白剤を用いる。本発明においては前述のとおり、GDAと還元剤とを顆粒内に含有させているため、GDAが酸素系漂白剤の影響をほとんど受けなくなり、結果として長期に亘ってGDAの着色を抑制することが可能となる。
本発明に用いる酸素系漂白剤としては、モノパーオキシフタル酸マグネシウム等の有機塩酸又はその塩、アルカリ金属の過ホウ酸塩(1水和物又は4水和物)、過炭酸塩、過硫酸塩、過ケイ酸塩の水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物等を挙げることができる。これらの中では、過硫酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過硼酸ナトリウム等の無機過酸化物がより好ましい。
【0026】
更に、前記酸素系漂白剤は、被覆材料によって被覆されていることが好ましい。被覆材料により被覆した場合には、保存時に過酸化水素等の酸化剤の発生が抑制されるため、GDAの着色をより一層抑制することが可能となる。前記被覆材料としては、珪酸、硼酸及びこれらの塩、ソーダ灰、パラフィン及びワックス等の水不溶性有機化合物を挙げることができる。
【0027】
本発明における粉末洗浄剤組成物中のC成分の含有量は、1〜25質量%であり、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%が更に好ましい。含有量が1質量%未満であると、粉末洗浄剤組成物の洗浄能力が低下し、含有量が25質量%を超えると、GDAの着色の原因となるH22等の量が多くなるため、粉末洗浄剤組成物の保存安定性が低下する。
また、C成分による変色の影響を抑制する観点から、C成分100質量部に対するB成分の量は、0.5〜50質量部が好ましく、0.8〜30質量部がより好ましく、1〜20質量部が更に好ましい。
【0028】
〔アルカリ剤〕
本発明の粉末洗浄剤組成物においては、洗浄性を向上させるためにアルカリ剤を用いることが好ましい。
アルカリ剤としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩、アミン化合物等を用いることができる。
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等を挙げることができる。また、ソーダ灰として知られている炭酸ナトリウムの無水塩を用いてもよい。
アルカリ金属珪酸塩としては、結晶性層状珪酸ナトリウム(「プリフィード」:(株)トクヤマシルテック製)等を用いることができる。また、非晶質のものを用いてもよい。なおアルカリ金属珪酸塩は食器の酸化防止としても有効である。
アミン化合物としては、アルカノールアミンを挙げることができ。本発明では特に1級のアルカノールアミンが好ましく、具体的にはモノエタノールアミンを挙げることができる。
これらアルカリ剤の中では、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。
アルカリ剤は、粉末状、顆粒状のものを用いることができる。顆粒状のものは、造粒処理等によって粒子径や、かさ密度を適宜調整して用いることができる。
本発明における粉末洗浄剤組成物中のアルカリ剤の含有量は、洗浄力の観点から、20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%が好ましく、35〜65質量%がより好ましい。
【0029】
(任意成分)
本発明の粉末洗浄剤組成物においては、通常の洗浄剤に用いることができる任意成分を配合してもよい。例えば、A成分以外の金属イオン封鎖剤、界面活性剤、漂白活性化剤、酵素、吸油性粉体、増量剤又は希釈剤、カルシウム塩や蟻酸等の酵素安定化剤、香料、防菌・防黴剤、及び色素等を挙げることができる。
〔金属イオン封鎖剤〕
本発明の粉末洗浄剤組成物においては、A成分以外の金属イオン封鎖剤を配合してもよい。A成分以外の金属イオン封鎖剤としては、トリポリリン酸ナトリウム等のリン酸塩を用いることができる。粉末洗浄剤組成物をリンを含有しないものとする場合には、金属イオン封鎖剤として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、琥珀酸、L−グルタミン酸二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二琥珀酸、ニトリロ三酢酸、メチルグリシン三酢酸、1,3−プロパンジアミン三酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ヒドロキシエチルエチレンジアミンジカルボキシメチルグルタミン酸等のポリカルボン酸又はその塩を用いることができる。これらの中では、クエン酸、コハク酸及びエチレンジアミン四酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン及びヒドロキシエチルエチレンジアミンジカルボキシメチルグルタミン酸及びそれらのアルカリ金属塩が好ましい。
【0030】
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤を挙げることができ、これらの中では、非イオン界面界面活性剤が好ましい。
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンモノアルキル又はモノアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアルキル又はモノアルケニルエーテル、ポリオキシブチレンモノアルキル又はモノアルケニルエーテル、アルキレンオキシド付加モノアルキル基又はモノアルケニル基含有非イオン性界面活性剤混合物、蔗糖脂肪酸エステル、脂肪族アルカノールアミド、脂肪酸グリセリンモノエステル、酸化エチレン縮合型界面活性剤、アルキルグリセリルエーテル及びアルキルグリコシド等を挙げることができる。これらの中では、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、具体的にはポリオキシエチレンモノアルキル又はモノアルケニルエーテルであって、アルキル基又はアルケニル基の平均炭素数が4〜12であり、エチレンオキサイド付加モル数が平均で1〜20モルであるものが好ましい。これらの非イオン性界面活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明においては、洗浄力を更に向上させる洗浄補助成分として、一般的に自動食器洗浄機用洗浄剤として配合される漂白活性化剤、酵素等を配合してもよい。
【0032】
〔漂白活性化剤〕
漂白活性化剤は前記漂白剤と併用するものであって、漂白剤から放出される過酸化水素と反応して、より酸化還元電位高い有機過酸を生成する物質である。具体的には、テトラアセチルエチレンジアミン、アルカノイルオキシベンゼンカルボン酸又はその塩や、アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸塩等を挙げることができる。
【0033】
〔酵素〕
酵素としては、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、エステラーゼ、ペルオキシダーゼ等を用いることが好ましく、市販品として粒状化されたものを用いることができる。いずれの酵素も他成分との保存安定性等を考慮して適宜選択すればよい。これらの酵素は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記酵素の中では、他の洗浄剤では除去が難しい糊化したでんぷんへの作用が期待されるアミラーゼが好ましい。また、界面活性剤等では除去が困難な変性蛋白等に対して著しい効果を示すことからプロテアーゼも好ましい。
【0034】
〔吸油性粉体〕
吸油性粉体としては、非晶質シリカ、デキストリン、ボウショウ等を用いることができる。
非晶質シリカの具体例としては、特開昭62−191417号公報第2頁右下欄第19行〜第5頁左上欄第17行、特開昭62−191419号公報第2頁右下欄第20行〜第5頁左上欄第11行等に記載されている製造方法により製造された非晶質シリカ等が挙げられる。
非晶質シリカの市販品としては、トクシールNR、フローライト((株)トクヤマ製)、TIXOLEX25(韓仏化学社製)、サイロピュア(富士シリシア(株)製)等が挙げられる。
【0035】
デキストリンとしては、各種穀物由来のデンプンを酸又はアミラーゼで加水分解して得られたものが挙げられる。加水分解の度合いや構造により種々の分解物があるが、例えば、アミロデキストリン(可溶性デンプン)、エリトロデキストリン、アクロデキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン等が挙げられる。中でも、DE値(デンプンの分解率=グルコース相当質量/全固形分質量×100)が0.1〜10のものが好ましく、0.1〜5のものがより好ましい。また、冷水や温水でも急速に溶解するものが好ましく、耐アルカリ性の観点からDE値が0.1〜3のものが好ましい。
ボウショウとしては、四国化成工業(株)製の「A6ボウショウ」等の市販品を用いることができる。本発明に用いることができるボウショウとしては、溶解性の観点から、粒径20μm以下ものが全体の90%以上を占めるものが好ましい。
前記吸油性粉体の中では、非晶質シリカが好ましい。前記吸油性粉体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
〔増量剤、希釈剤〕
増量剤又は希釈剤としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩等が挙げられる。増量剤又は希釈剤を配合すれば、各成分を希釈し、適度な濃度に分散させることで、使用に適した量に設計することができ、また、各成分の安定性を保持させるためにも有効である。
【0037】
[粉末洗浄剤組成物の製造方法]
本発明の粉末洗浄剤組成物は、前記のとおり、A成分とB成分とを含有する顆粒を含むものであり、その製造方法に制限はないが、A成分とB成分とを一緒に共造粒した後に、得られた造粒物である顆粒とC成分とを混合する本発明の製造方法により効率的に製造することが好ましい。
【0038】
前記顆粒の製造方法としては、少なくとも前記A成分とB成分とをヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)、ハイスピードミキサー(深江パウテック(株)製)、ナウターミキサー(ホソカワミクロン(株)製)、リボン型混合機((株)特寿工作所製)、V型ブレンダ((株)ダルトン製)、ベンチニーダ((株)入江商会製)等の公知の混合機を用いて混合し、これを造粒機で共造粒する方法を挙げることができる。
前記顆粒を製造する際の各成分の混合温度に制限はないが、A成分の変色抑制及び省エネルギーの観点から100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
【0039】
造粒方法としては、押出造粒法、転動造粒法、解砕造粒法、流動層造粒法、噴霧造粒法、破砕造粒法等を挙げることができ、これらの中では押出造粒法、転動造粒法がより好ましい。
押出造粒機としては、ペレッターダブル、ツインドームグラン、ディスクペレッター((株)ダルトン製)、バスケット式整粒機((株)菊水製作所製)、グラニュライザ(ホソカワミクロン(株)製)、特開平10−192688号記載の横押出式スクリュー型押出造粒機((株)大川原製作所製)等の公知の押出造粒機が挙げられる。
また、エクストルードオーミックス(ホソカワミクロン(株)製)のような混練押出装置も使用することができる。押出スクリーン径は、好ましくは0.3〜2.0mm、より好ましくは0.5〜2.0mm、更に好ましくは0.5〜1.0mmである。このような形状のものを用いることにより、円筒状又はヌードル状造粒物を押し出すことができる。
【0040】
転動造粒法の中では、造粒収率等の観点から、特に撹拌転動造粒法が好ましい。
撹拌転動造粒機としては、撹拌羽根を備えた主撹拌軸を内部の中心に有し、更に混合を補助して粗大粒子の発生を抑制するための補助撹拌軸を備えるものを挙げることができる。この補助撹拌軸は、一般的には主撹拌軸と直角方向に壁面より突出させた構造を有する。
具体的な装置としては、主撹拌軸が垂直に設置されているものとしてヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)、ハイスピードミキサー(深江パウテック(株)製)、バーチカルグラニュレーター((株)パウレック製)等が挙げられる。主撹拌軸が水平に設置されているものとしては、レディゲミキサー(松坂技研(株)製)、プローシェアミキサー(太平洋機工(株)製)等が挙げられる。
【0041】
得られた造粒物は、圧縮成型物の合一化や塊状化を抑制するために冷却を行い、その後必要に応じて整粒を行うことが好ましい。整粒する際に使用される機器に制限はなく、周知の粉砕機(又は破砕機)を用いることができる。
このような装置としては、例えば、ハイスピードミキサー(深江パウテック(株)製)、マルメライザー((株)ダルトン製)、スパイラーフロー(フロイント産業(株)製)、フィッツミル((株)ダルトン製)、パワーミル((株)パウレック製)、コーミル(Quadro社製)等を挙げることができる。
【0042】
本発明の粉末洗浄剤組成物は、前記A成分とB成分とを含有する顆粒と、C成分、好ましくはアルカリ剤及びその他任意成分とを、前述の混合装置により適宜混合することにより得ることができる。
このようにして製造された本発明の粉末洗浄剤組成物は、食器用、衣料用、住居用等の洗浄剤として好適に使用することができ、自動食器洗浄機用として特に有用である。
【実施例】
【0043】
以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
実施例及び比較例で用いた原料及び装置は次のとおりである。
<原料>
A成分:「Trilon M Powder」BASF社製(有効分87%)
(メチルグリシン二酢酸 三ナトリウム塩)
B成分:亜硫酸ナトリウム(三井化学(株)製:平均粒径190μm)
:亜硝酸ナトリウム(宇部興産(株)製:平均粒径220μm)
C成分:過炭酸ナトリウム(日本パーオキサイド(株)製KCPZ−S)
ポリプロピレングリコール:「プレミノールS4011」旭硝子ウレタン(株)製
数平均分子量:約10000
ポリエチレングリコール :「K−PEG6000LA」花王(株)製
数平均分子量:約8500
ソーダ灰 :セントラル硝子(株)製
【0044】
<装置>
ナウターミキサー :ホソカワミクロン(株)製
押出造粒機 :ペレッターダブルEXD−100型((株)ダルトン製)
整粒機 :パワーミル((株)パウレック製)
【0045】
実施例1
A成分を20部、B成分として亜硫酸ナトリウムを0.3部、ポリプロピレングリコール3部をナウターミキサーに仕込み、ジャケット温度90℃にして20分混合した。
ここに、予め溶融させたポリエチレングリコールを5部投入し、更に20分混合してから混合物を抜き出した。
次に、得られた混合物を押出造粒機により孔径0.7mmのスクリーンを通して押出し、造粒物を得た。更に造粒物を冷却した後、整粒機で粉砕してA成分とB成分とが共造粒された円柱状の顆粒を得た。平均直径は0.7mm、平均長さは1.2mmであった。
この顆粒と前記C成分10部、及びその他任意成分であるソーダ灰59.2部、酵素2部、香料0.5部をナウターミキサーに仕込み、10分間混合することにより粉末洗浄剤組成物を得た。
【0046】
実施例2
A成分を30部、B成分を1.5部、ソーダ灰を48部としたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、粉末洗浄剤組成物を得た。
【0047】
実施例3
B成分を亜硝酸ナトリウムとした以外は実施例1と同様の操作を行い、粉末洗浄剤組成物を得た。
【0048】
比較例1
A成分20部をナウターミキサーに仕込み、ジャケット温度90℃にして20分混合した。ここに、予め溶融させたポリエチレングリコールを5部投入し、更に20分混合してから混合物を抜き出した。
次に、得られた混合物を押出造粒機により孔径0.7mmのスクリーンを通して押出し、造粒物を得た。更にこの造粒物を冷却した後、整粒機で粉砕して前記と同じ円柱状の顆粒を得た。
この顆粒と前記C成分10部、ポリプロピレングリコール3部及びその他任意成分であるソーダ灰59.5部、酵素2部、香料0.5部をナウターミキサーに仕込み10分間混合して粉末洗浄剤組成物を得た。
【0049】
比較例2
A成分20部をナウターミキサーに仕込み、ジャケット温度90℃にして20分混合した。ここに、予め溶融させたポリエチレングリコールを5部投入し、更に20分混合してから混合物を抜き出した。
次に、得られた混合物を押出造粒機により孔径0.7mmのスクリーンを通して押出し、造粒物を得た。更に造粒物を冷却した後、整粒機で粉砕して前記と同じ円柱状の顆粒を得た。
この顆粒とB成分(亜硫酸ナトリウム)0.05部及びC成分10部、ポリプロピレングリコール3部及びその他任意成分であるソーダ灰59.45部、酵素2部、香料0.5部をナウターミキサーに仕込み10分間混合して粉末洗浄剤組成物を得た。
【0050】
比較例3
比較例2において、B成分(亜硫酸ナトリウム)を0.3部とし、ソーダ灰を59.2部としたこと以外は比較例2と同様の操作を行い、粉末洗浄剤組成物を得た。
【0051】
比較例4
比較例2において、A成分を30部、B成分(亜硫酸ナトリウム)を1.5部とし、ソーダ灰を48部としたこと以外は比較例2と同様の操作を行い、粉末洗浄剤組成物を得た。
【0052】
比較例5
B成分を亜硝酸ナトリウムとしたこと以外は比較例3と同様の操作を行い、粉末洗浄剤組成物を得た。
【0053】
前述の方法により得られた実施例及び比較例の粉末洗浄剤組成物の色調を以下の方法により測定した。
(1)製造直後の色調
粉末洗浄剤組成物を密閉容器に充填し、コニカミノルタ(株)製の分光測色計を用いて色調を測定した。評価にあたっては、Lab表色系で表現されるb値を変色の目安とした。なお、b値の増加は黄色に変色したことを意味する。結果を表1に示す。
【0054】
(2)保存後の色調
粉末洗浄剤組成物を密閉容器に充填し、30℃環境で保存し、2週間経過した後の色調と、1ヶ月間保存した後の色調とをそれぞれ前記(1)の方法と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から、A成分とB成分とを共造粒した実施例1〜3は、1ヶ月保存したあとであっても、変色がほとんど生じていないことがわかる。一方、B成分を用いていない比較例1は、着色が著しく進行していた。更に、A成分とB成分とを共造粒せずに、単に組成物として混合した比較例2〜5は、B成分によるA成分の着色抑制効果が得られず、保存期間に比例して着色が進行した。以上の結果より、本発明の粉末洗浄剤組成物は、保存時に変色が生じず保存安定性に極めて優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるグリシン−N,N−二酢酸誘導体(A成分)と還元剤(B成分)とを含有する顆粒と、酸素系漂白剤(C成分)とを下記条件を満たすように含む粉末洗浄剤組成物。
A成分:1〜50質量%
B成分:0.01〜10質量%
C成分:1〜25質量%
【化1】

(式中、M1〜M3は、それぞれ独立に水素原子又はカチオン成分を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【請求項2】
B成分が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、及び亜硝酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種以上である請求項1に記載の粉末洗浄剤組成物。
【請求項3】
C成分が、過硫酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、及び過硼酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載の粉末洗浄剤組成物。
【請求項4】
A成分100質量部に対するB成分の量が0.3〜50質量部である請求項1〜3のいずれかに記載の粉末洗浄剤組成物。
【請求項5】
C成分100質量部に対するB成分の量が0.5〜50質量部である請求項1〜4のいずれかに記載の粉末洗浄剤組成物。
【請求項6】
顆粒は、少なくともA成分とB成分とを共造粒したものである請求項1〜5のいずれかに記載の粉末洗浄剤組成物。
【請求項7】
粉末洗浄剤組成物が自動食器洗浄機用粉末洗浄剤組成物である請求項1〜6のいずれかに記載の粉末洗浄剤組成物。
【請求項8】
A成分とB成分とを共造粒した後に、得られた造粒物とC成分とを混合する請求項1〜7のいずれか記載の粉末洗浄剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−10819(P2013−10819A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142874(P2011−142874)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】