説明

粉末洗濯用洗剤

【課題】水30Lに対して洗濯洗剤を1〜9gで、加えて省エネ(節電・節水)、物流の低減、原材料の縮減、水質汚染の減少などが図られ、人や衣料への負担を少なくし、洗剤の「洗う・すすぐ・仕上げる」の3つの基本が合理的に達成できる粉末洗濯用洗剤を提供。
【解決手段】第1成分として、洗剤主成分の陰・非イオンの水性界面活性剤を60w%以上、第2成分としてこの力を最も忠実にさせるためのポリシリケート(メタ硅曹など)を用い、更に第3成分として炭酸塩・硼酸塩・硫酸塩・酸化物(パーオキサイド)を5〜25w%(15w%以上)、更に抗菌剤をそのMICによるが、0.1〜10w%配合して完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家庭用洗濯機専用の衣料用洗浄剤に関し、特に超濃縮にして、洗浄に直接関係の無い成分を一切排して、有効成分だけを含む粉末の洗剤に関するものである。
粉末洗剤は昭和20年代から合成洗剤として(LAS主成分)生産され始めてから、今日まで基本的な組成は殆ど変りなく推移している。その間、スプレー式で中粒子にし、いわゆる見かけの比重を軽くして(1/3〜1/4)、水に溶けやすいようにボール状の中空球体をなし、自動洗濯機に適応していき、エコブームの別形態併せてリン系成分の実質的中止と中空にしない形にして高速ブレンダー式ミキサーを用いてコンパクト化して水溶性のものに変わりつつある。それに加えてドラム式の洗濯機は節水型となり、ますます洗剤は水溶性のものが望まれ、一時不評であったリキッドタイプが再現するようになってきた。
【背景技術】
【0002】
粉末洗剤の水溶性の不備や、必要以上の増量剤を加えてひたすらローコスト化をする状況の中で、液体洗剤の需要が近年約10%以上伸び続けて、最近では粉末との比率が7:3〜6:4(粉末:液体)までになってきた。しかし、液体タイプはどうしても水分を一定量含まないと安定性が損なわれ、また必要な成分を加えたとしても水溶液の安定性をキープすることの困難さが、かえってトラブルやコストアップの原因となる傾向もある。
従って粉末はブレンドするだけで、液体ほどの決定的なトラブルになりにくく、必要と思われる成分を適宜配合するトレーランスが大きい。しかも高速ブレンダーを用いれば、フリーフローの粉体やワンバッグタイプも加工しやすいといった、いくつかのメリットがある。更に現在問題視されている蛍光剤の代用として酸素系(O)の漂白剤の配合も具体的に自由にできる。
【0003】
粉末洗剤は結局のところ多くのバリエーションを有することから、一定の減少は避けられないが、依然として洗濯用の主剤であることは事実である。問題はこの中でどの効果を高める成分を選択して配合するか、界面活性剤はもとより、ビルダー・酵素・漂白剤・繊維処理剤・泡コントローラー・水の浄化剤・洗浄、洗浄・分散・抗菌・消臭・防縮・防シワ・仕上がりなどのトータルな洗浄効果を具備したものなどが考えられ、事実この数年、これらの技術が公開されている現状である。
【発明の開示】

【本発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この粉末洗剤の問題点とされている、水に溶けにくいことに注目し、その事と水溶性が早く、安定化すればそれだけダイレクトに洗浄作用に使われることができることと、不溶成分が洗浄作用そのものの反作用成分として働く余地が無くなることから、必要な成分をそれだけ多く含ませることが可能、つまり、ハイコンパクトでハイコンクの洗剤として組成されることに注目し、第一に使用量を軽減させること。即ち水分に対する量が少なければ、それだけ早く溶解して水を中心とする洗浄作用に寄与する割合が高まることと考え、使用量の減量を徹底的にする検討をした。
【0005】
洗剤の主成分といえる界面活性剤の最大含有量を可能な限り高める、それであって、ケーキングや変質の問題を発生しないように原料の状況をみる。
【0006】
そして3つのメインの成分を、バランスのとれた、安定性の優れた、正三角形(ゴールデントライアングル)の様な関係を築くために、副成分であった漂白剤成分を主成分として分担した、つまり漂白剤自体でも、充分な量を投入すれば洗浄力も上がる訳であり、特に全自動やドラム式の洗濯機に対して優れていることに注目した。
【0007】
従来は、増量剤やアンチケーキング剤を入れることによって、出来るだけコストダウンを図るので、性能をそのまま低下させ、かえってエコロジーのためではなく、水道・ごみ処理・水質汚染などの問題を発生させる懸念があった。
つまり本発明の最大のテーマは、14世紀にイギリスの神学者W・オッカムが提唱した、根本となる原理は必要不可欠のものだけでよく、シンプルは一番正しい、無駄な要素を削るという「オッカムの剃刀」に依り、永年の水30Lに二桁(10〜99g)の使用量をサブテン(10g未満)にすることを可能ならしめることで本発明が発生した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、従来の洗濯洗剤の不都合にして不十分な点を大幅に改良し、一切の洗浄力などに機能的に寄与しない成分(自由成分)を削減または省略して、洗剤の三要素である「洗う」・「すすぐ」・「仕上げる」をベースに、節水・物資・水汚染などへの影響が少ないものとして、特に抗菌力を重視して第1〜第3の3種類の成分体系を構築して、ナイスバランスであり、絶対使用量の極限に挑み、その限界である100ppm濃度(〜170ppm)を目指して、第1成分としてアニオン/ノニオン界面活性剤を主成分として、これを60%以上として設計し、第2成分はリン分を使用しない、ゼオライトも使用しない、汚染に繋がらない地中の成分であるポリシリケートを併用することと、これを補足しフォローする第3として酸化物(炭酸塩・硼酸塩・硫酸塩)と、水性抗菌剤を合わせて、当初の目的の成分とするに至ったものである。
【0009】
(1)第1成分として必要とする界面活性剤として相応しい代表的なものは、アニオン系のLAS,AOS,AS,SAS,脂肪酸塩、ノニオン系のアルキルグルコシド,脂肪酸アルカノールアミド(EO:5),ショ糖脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステルEO9モル,ポリオキシアルキレン(EP)アルキル(C12〜28)エーテル,脂肪酸アルカノールアミドなどが挙げられる。
特にノニオン系のEOが17〜25モル付加したエチレングリコール型のものは乳化力に優れ、経時安定性も良く、好都合である。これらは1種または2種以上併用して60〜90w%配合する。この範囲であることにより、使用量の縮小が可能となり、バランス的にも洗剤の状態が優れている。
【0010】
洗剤の今後の見通しの中で、界面活性剤を含まないものが登場する可能性があり、その時に上記界面活性剤は再汚染防止や汚れの水中への分散、ある種のファントホッフの洗剤に則した現象を発生する場合にも必要となる数値である。この濃度は5〜50ppm位まで低減化することにより、より効率の良い、しかもエコロジーな洗剤へシフトしていく指針となる。
【0011】
(2)第2成分として漂白剤(酸素系)の含有である。
当該酸素発生体は、その力により汚れ落ちの助剤として、また仕上がりの快感・除菌力の向上・洗濯機のケアにも優れている。また洗剤の界面活性剤の浸透力・漂白力を補助する。
この中には、過炭酸ソーダ,過硼酸ソーダ,過硫酸ソーダ,過硫酸カリが挙げられるが、中でも過炭酸ソーダと過硫酸ソーダが優れている。両者は水中で化学反応して中和の際の酸素発生と、溶解酸素の発生のダブル作用を形成する基となる。
当該量は5〜30w%、有効酸素として50〜500ppmを目安として配合される。5w%未満や30w%を超える場合は、副作用により安定性がかえって落ちる問題が生ずることが判明した。
【0012】
本発明で有用な抗菌剤として代表的なものは、PCMX,イソプロピルメチルフェノール,安息香酸塩,トリクロサン,トリクロロカルバニリド,α−ブロモシアナミド,イソシアニル酸塩,サリチル酸エステル,クロルヘキシジングルコネート,イソチアゾリン系,ソルビン酸塩,ヘキサクロロフェン,レゾルシン,OPP,塩酸クロルヘキシジン,ブロムアルキルイソキノリウム,チラム,ハロカルバン,塩化ベンザルコニウム,アミノグリシン両性界面活性剤,デヒドロ酢酸塩,トリブロモサリチルアニリドなどがある。
要は、安定性と水への親密性が高いことが必要で、出来る限り抗菌スペクトラムが広いことと、MICが小さいことが種々の要件下で必要となる訳である。
【0013】
本発明はこれらの抗菌剤と併用するために、抗菌剤的成分、つまり漂白剤として常用されている酸素(O)発生型の化合物として、過炭酸ソーダ(PC),過硼酸塩(PB),過硫酸塩の存在が必要となり、これは洗浄力評価にも有効で、酸化やバイオに起因する汚染を除去するために不可欠である。元来、これらの漂白剤は洗剤中心に常用されているものであるが、敢えて上記抗菌剤と併用し、その相乗効果を期待して配合する。その相性はトライ&エラーを充実させた上で結論付けられる。これが第2成分として粉末状態のバランスを図りながら、正規の洗剤となるものである。
従来は漠然と使用していたものを、明瞭な目的をもってバランスよく合理的に配合することにした。
その抗菌剤はUVカット効果や消臭効果、ソフナー効果も共有できるものであり、予想外の効果も無視できない。
例えば、PC/イソプロピルメチルフェノールの併用によって、洗濯槽の汚れが従来の粉末状品と比べて10%以下に低減することが判明した。それと同時に波長390nm以下のUVカット効果もあり、布地へのUV作用に対して劣化要素が殆ど解消した。有害UVのアブソーバーやフレグランスなどを必要としない。
【0014】
当該、そしてこれらの第1・第2成分をバランスよく作用させるためのものとしては、ポリシリケート(珪酸塩)である。従来から珪酸塩は洗剤に常用されているが、この同系タイプのメタタイプや、変性珪酸塩が、キレート力,再汚染防止,水中での汚れの可溶化(コロイド化),二次汚染の低下など、0.5〜50ppmオーダーに設定される中で配合され、概ね5〜25w%である。この他には洗濯洗剤の中に、蛍光剤・青味剤・UV吸収剤・抗菌剤・乾燥防止(ケーキング防止)との併用を妨げない。
更に、シトラスオイル・リモネン・ピネン・メンソールなどのテルペノイド抗菌剤を配合し、付着や汚れ分散などに利用されている。3種の原料は、ドライブレンド・ジェットミキシング・リボンミキサー・ロータリータンクなどで混合される。出来るだけ原料の粒状や、侵食しにくいものとなる。
【本発明の効果】
【0015】
本発明のハイコンク粉末洗濯用洗剤の実際の使用濃度について、主要3成分のナイスバランスで今まで理想とされたものを実現したものである。
▲1▼流通コストの大幅削減で、COの大幅削減も期待される(従来の1/3〜1/5)
▲2▼使用量が少ないことは、環境負荷を軽減し、水質汚染も改良される。洗濯時間も簡易コースを選択できるので、省エネルギー・節水、そして主婦などの作業者の洗濯時間を20〜30%程削減でき、時間の有効利用が可能。
▲3▼包材・原料の大幅削減ができ、生産性向上やリサイクルの実現などの経済コストが低減できる。
▲4▼全体として、人間の皮膚・衣料・洗濯機・排水溝などの負荷が軽減され、安全安心な洗濯が可能となる。
▲5▼併せて、水中での衣料繊維の物理的負荷が改善され、それによりソフナー・除菌剤や仕上の処理を軽減することができる。
つまり、本来の洗濯のみで、洗濯する衣料品の汚れ落としから仕上までのクオリティーを向上でき、更に余計な仕上剤などの経費の削減出来るなど、まさに21世紀型洗濯時代の先鋒を担う商品となりえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、首記の第1〜第3成分のナイスバランスを、単なるドライブレンド(リボンミキサー・ロータリータンクなど)で混合して商品化出来る。
【0017】
ベストな組み合わせの代表は、第1成分の界面活性剤が60〜73w%で70w%が好ましい(粉末状のアニオン系とEOが17〜25モルの高級アルコール(C17〜))。第2成分のシリケートポリマー塩が5〜35w%、好ましくは12w%(メタシリケート,両性シリケート)と、抗菌剤(例えばPCMX)が1〜1.5w%からなるもので、見かけ比重が0.6〜0.8、100ppm濃度のpHは8.1〜9.2(弱アルカリ性)であり、これらに必要に応じて蛍光剤・香料・酵素・漂白仕上剤・再汚染防止剤・消臭剤・UV吸収剤・防しわ剤・ソフト剤などを適宜併用してもよい。
【0018】
本発明は液体のコンクタイプと異なり、水中での安定剤が不要で、酸素(O)を含ませたり、カチオン物質も包摂することもできる。またアンチケーキング剤としてコロイダルシリカ,トルエンスルホネート,シクロデキストリン,ポリセルロース,ポリフェノール化合物,アクリル高分子吸水剤,トレハロース,セルロース誘導体(MC,HPCなど)を添加することもできるワイドバリエーションが可能なものである。以下、本発明の内容を具体的に実施例をあげて説明する。
【0019】
実施例1
【表1】

以下の通り検討した。
(1)0.04mm厚のLDPE袋にそれぞれの試作品を充填して、40℃,60%RHで20日間及び40日間放置して、その外観を検証した。
【表2】

(2)水溶性
0℃,10℃,30℃の水温下で、1%水溶液を作製し観察した(水は水道水を使用)。
【表3】

(3−1)洗浄力評価:その1
・使用濃度:水1Lに0.1g溶かしたもの(100ppm)
・温度:20±2℃
・洗浄時間:120rpmで3分を2回
・洗浄装置:Tergotometer
・乾燥:自然乾燥後、アイロン仕上
・汚れ:人工汚垢…ア:市販口紅(赤),イ:カーボンブラック(0.5%)+コレステロール(44.5%)+スクワラン(44.5%)
・使用布地:綿布(メリヤス:30mm×70mm),各3枚
使用布地それぞれに人工汚垢(ア,イ)で汚染し、24時間放置した後に上記方法で洗浄して比較する。
※Jap.Res.Asgn.Text And Uses(vol.22,No7(1981))参照
洗浄力は反射率で示した。反射率は分光光度計を用いて、使用前後の各試料の反射率から算出した。(n=3とし、小数点第2位で四捨五入して平均値を算出)
【表4】

コメント:本発明の洗浄力は、従来品と比較して特定したことの明白な有意義が判明した
(3−1)洗浄力評価:その1
JIS K−3371(3362)による洗浄力テストとして、本発明の試料1,3,4、従来品の試料▲1▼,▲3▼,▲5▼をそれぞれ比較して、本発明の配合成分の有意性を確かめた。
【表5】

コメント:分析の結果、本発明はJIS品と同等かそれ以上の結果を得られ、従来品はJIS標準品より劣っている。
(4)抗菌テスト
供試菌を試料(水1Lに対してサンプル1g(0.1%にしたもの)の水溶液)に0.1mL接触させ、20℃,24時間経過後の生菌数をカウントする。結果を下表に示す。
供試菌:大腸菌O−157(ATCC−53888)
MRSA(HD−167)
緑膿菌(NBRC−3082)
白癬菌(NBRC−6242)
黒カビ(NBRC−6342)
【表7】

コメント:以上の通り、本発明品は大幅に抗菌力を発揮していることが証明された。
【0020】
実施例2
次の通りの処方の洗剤組成物の試料を作製し、以下の通りに洗剤の要件を満たすか否かの確認をした。
【表6】

(1)経時安定性(保存性)
PET/PEパウチ(12μm)に各サンプル300gを封入して、40℃,80%RHで60日放置してその外観を観察した。サンプルは1種について3点の総合評価とした。
【表7】

(2)水溶性
0℃と35℃において、CaCl・2HOの133mgを蒸留水で1Lに調整したものに、各サンプルを1%混合させる(JIS K−3172)。
【表8】

(3)洗浄力評価
EMPA試料布を用いて次の条件で洗浄する。
・濃度:100ppm
・使用法:JIS K−3172
・撹拌:120rpm
・水温:20℃
・洗浄時間:10分
・すすぎ:3分,2回
・洗濯機:Tergotometer
・乾燥:自然乾燥(48時間),その後アイロンで整形
・表面の反射率を測定し、洗浄率とする(n=3の平均,小数点第一位まで)
【表8】

(4)抗菌テスト
試料の100ppmの蒸留水水溶液に、次の菌種を用いて生菌の減量を調査した(除去率)。
・青カビ:Penicillium
・枯草菌:Bacillus Subtilis
・白癬菌:Trichophyton Mentagrophytes
除去率[%]=[(最初の菌数−処理後の菌数)/最初の菌数]×100
n=3の平均値,小数点以下切り上げ
【表9】

コメント:以上4点の結果の通り、本発明品の組成物は従来品または特定しない試料に対して格段の効果を実証できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水溶性界面活性剤(陰及び非イオン)が60〜90w%
(2)珪酸塩ビルダーが5〜35w%
(3)過酸化系塩類が3〜40w%
(4)親水性抗菌剤が0.1〜10w%
これら(1)〜(4)からなる粉末洗濯用洗剤
【請求項2】
(1)水溶性界面活性剤が60〜73w%
(2)珪酸塩ビルダーが5〜35w%
(3)過酸化物(炭酸塩,硼酸塩,硫酸塩,酸性硫酸塩)が3〜35w%
(4)(3)に共有して親水性抗菌剤が0.1〜10w%
これら(1)〜(4)を混合して、水30リットルに3〜5g使用の場合、そのpHが8.1〜10.8であって、水不溶分が無い粉体組成からなる洗濯用洗剤

【公開番号】特開2011−246682(P2011−246682A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131444(P2010−131444)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(509036300)株式会社東企 (13)
【Fターム(参考)】