説明

粉末清涼飲料

【課題】
甘味を低減しながら、十分なコクを保持し、素材本来の特長や風味が損なわれない粉末清涼飲料を提供する。
【解決手段】
粉末還元澱粉分解物及び/または粉末還元麦芽糖を含有することを特徴とする粉末清涼飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末素材とクリーミングパウダー及び/または糖類を主な構成原料とするいわゆる粉末清涼飲料に関し、詳しくは粉末素材と粉末還元澱粉分解物または/及び粉末還元麦芽糖を含有し、甘味を低減しながら、十分なコクを保持し、素材本来の特長や風味が損なわれない粉末清涼飲料に関する。ここで粉末素材とは、コーヒー抽出エキス粉末、茶葉抽出エキス粉末、茶葉粉末、カカオパウダー、果汁エキス粉末などであり、それぞれの嗜好性、風味を決定づける必須成分のことを指す。
【背景技術】
【0002】
粉末清涼飲料とは、粉末素材にクリーミングパウダー及び/または糖類等を加え、水、熱水、牛乳などに溶解または分散させることで飲用に供する加工食品である。従来市販されている粉末清涼飲料においては、上記原料が主に使用される他、乳製品、食塩、香料、着色料、乳化剤、調味料などが添加されている。甘味成分としてはショ糖を中心とした糖類が主に使用されるが、近年健康に対する意識の高まりからそのカロリーの高さが敬遠されている。しかしながら、これに応じて単純に糖類の配合を低減させると、糖類によって形成されていたコクが失われ、粉末清涼飲料としての高い嗜好性が満たされなくなる。こうした課題に対し、例えば、高甘味度甘味料と食物繊維を併用することで、低カロリー化を実現した上で、糖類使用時と変わらないコク味を提供する方法(特許文献1)、一定条件を満たす酵母エキスによってコクを増強する方法(特許文献2)、アラビアガムを含有させてコクを増強する方法(特許文献3)、2’−ヌクレオチド及び/または3’−ヌクレオチドを有効成分とすることを特徴とするコク増強方法(特許文献4)がそれぞれ検討されている。しかしながら、いずれの方法においても、コクを増強する効果としては十分であるが、コク増強に用いられる原料由来の呈味により、素材本来の風味や特長が損なわれるという問題がある。特に繊細な香味をもち、それにより高い嗜好性を維持する粉末清涼飲料においては、望ましくない方法といえる。さらに、昨今、消費者の要求としては低カロリーだけでなく、嗜好の多様化に伴い甘味そのものを抑制した粉末清涼飲料が望まれている。しかし、粉末清涼飲料においては甘味自体がコクの形成に寄与しており、糖類を低減させる場合は、アセスルファムカリウム、スクラロースに代表される高甘味度甘味料を併用して甘味を維持する場合が一般的である。甘味自体を低減させることは、より一層のコク増強効果が必要となるため、素材本来の風味や特徴が、コク増強に用いられる原料由来の呈味により損なわれるという問題は、さらに顕著なものとなる。上記いずれの方法においても、甘味自体の低減の可能性については一切触れられておらず、甘味を低減しながら、素材本来の風味や特長を損なわずにコクを増強させるという課題を、同時に解決する手段はいまだ見出されていないのが現状である。
【特許文献1】特開2004−41118号公報
【特許文献2】特開2009−44978号公報
【特許文献3】特開2007−289006号公報
【特許文献4】特開2000−300206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで粉末清涼飲料において、甘味を抑えるために糖類を低減させ、その結果生じるコクの不足を補うために、素材本来の特長や風味を損なわずに、コクを増強する方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、糖類の配合を抑えながら甘味を低減させ、かつ嗜好性が高い粉末清涼飲料について、鋭意研究を重ねた結果、粉末還元澱粉分解物及び/または粉末還元麦芽糖を特定範囲量で少量使用すると、素材本来の特長や風味を損なわず、コクが増強され、甘味を低減させた嗜好性の高い粉末清涼飲料が実現できること、さらに甘味については、糖類を含有せずに甘味を付与しないものから、糖類を含有し適度に甘味付与するものまで自由に調整できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の要旨は、粉末還元澱粉分解物及び/または粉末還元麦芽糖を含有することを特徴とする粉末清涼飲料に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の粉末清涼飲料は、甘味を低減しながら、十分なコクを保持し、素材本来の特長や風味が損なわれておらず、消費者の嗜好の多様化に応えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の粉末清涼飲料は、粉末還元澱粉分解物及び/または粉末還元麦芽糖を含有して成る。好ましくは粉末清涼飲料組成物100重量%中、粉末還元澱粉分解物及び/または粉末還元麦芽糖を1重量%〜15重量%含有して成る。より好ましくは、コーヒー抽出エキス粉末を含有して成る粉末清涼飲料に関する。さらに好ましくは、粉末還元澱粉分解物の糖組成において、7糖類以上が40%以上である粉末清涼飲料に関する。
【0007】
本発明で用いられる粉末還元澱粉分解物は、澱粉を加水分解した後、水素添加(還元)することで得られる糖アルコールの1種であり、濃厚感の付与、着色の抑制、つや出し、食感改良、保湿性の付与など多目的に利用される。粉末還元麦芽糖も糖アルコールの1種であり、そのカロリーの低さや抗う触性から、ショ糖の代替原料としての利用が進んでいる。粉末還元麦芽糖が飲料に使用される場合は、もっぱら低カロリー化を意図してショ糖との甘味代替を目的とするものであり、本発明のように、甘味代替を目的とせず、通常配合されるよりも極端に少ない量を配合し、素材本来の特長や風味を損なわないようにコクを付与する目的で使用されることはない。一般に、還元澱粉分解物、還元麦芽糖は工業的には液体製品が非常に多く使用されているが、本発明の粉末清涼飲料では粉体製品を用いる。粉末還元澱粉分解物の糖組成は7糖類以上が40%以上であれば十分なコクを有しており、7糖類以上が多くなるにつれてコクが強まる傾向がある。7糖類以上が40%未満の場合はコクが不足する恐れがある。また、粉末還元麦芽糖はこれにあてはまらず、十分なコクを有している。粉末還元澱粉分解物及び/または粉末還元麦芽糖として、具体的には、BDH−1(粉末還元澱粉分解物;松谷化学工業株式会社、商品名)、H−PDX(粉末還元澱粉分解物;松谷化学工業株式会社、商品名)、PO−10(粉末還元澱粉分解物;三菱商事フードテック株式会社、商品名)、粉末マビット(粉末還元麦芽糖;株式会社林原商事、商品名)、アマルティMR(粉末還元麦芽糖;三菱商事フードテック株式会社、商品名)などが例示できる。
【0008】
本発明の粉末清涼飲料において用いられる粉末素材とは、コーヒー抽出エキス粉末、茶葉抽出エキス粉末、茶葉粉末、カカオパウダー、果汁エキス粉末などをいう。
【0009】
本発明の粉末清涼飲料においては、甘味料としてショ糖だけでなく、ブドウ糖や麦芽糖などの他の糖類を含有させてもよいし、粉末還元麦芽糖以外の糖アルコールや高甘味度甘味料を含有することも可能である。また、甘味料を含有させなくても良い。クリーミングパウダーについては植物性、動物性のどちらでも構わない。その他、必要に応じて、乳製品、食塩、香料、着色料、乳化剤、調味料などを含有させても良い。
【0010】
本発明の粉末清涼飲料においては、これらの原料粉末を混合または造粒、あるいは造粒後、別の原料粉末と混合することにより得られる。混合には、通常の粉体混合で用いられる混合機が使用できる。造粒には、流動層方式、スパイラル方式など、通常用いられる造粒機が使用できる。混合、造粒いずれについても、一般的な機械であれば問題なく使用可能である。本発明の粉末清涼飲料は、水、熱水、牛乳などに溶解または分散後、そのまま飲用可能である。
【0011】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例において部は重量部である。
【実施例】
【0012】
<基材の調整>
表1に示した配合により、粉末素材とクリーミングパウダーを混合し、ショ糖などの甘味料と粉末還元澱粉分解物及び/または粉末還元麦芽糖を含まない基材を調製した。粉末素材にはエチオピア産非水洗式コーヒー豆を焙煎、粉砕、抽出、濃縮後、スプレードライ化したコーヒー抽出エキス粉末及び、ココアパウダーを使用した。クリーミングパウダーは、脱脂粉乳を含有する植物性クリーミングパウダー及び蛋白以外の乳成分を含有しない植物性クリーミングパウダーを使用した。
【表1】

【0013】
<粉末清涼飲料と清涼飲料の調製>
各実施例及び比較例とも表2〜表6に示した配合により各種原料粉末を混合し、粉末清涼飲料を調製した。その後、調製した粉末清涼飲料をガラスコップに計量し、熱湯140mlを注ぎ、攪拌溶解し、清涼飲料を調製した。溶解した後、素材本来の風味や特長及びコクについて評価した。表中では素材本来の風味や特徴を「素材感」と示している。基材に対して添加する糖類にはGHC(グラニュー糖;三井製糖株式会社、商品名)及びサンマルト(精製麦芽糖;株式会社林原商事、商品名)を使用した。また、粉末還元澱粉分解物としてBDH−1(松谷化学工業株式会社、商品名)、粉末還元麦芽糖として粉末マビット(株式会社林原商事、商品名)を利用した。比較例では、粉末還元澱粉分解物及び/または粉末還元麦芽糖の代替として、パインデックス#1(デキストリン;松谷化学工業株式会社、商品名)およびTK−16(マルトデキストリン;松谷化学工業株式会社、商品名)、エリスリトール(三菱商事フードテック株式会社)、キシリトールC(キシリトール;ダニスコジャパン株式会社、商品名);粉末ソルビトール「ウエノ」(ソルビトール;上野製薬株式会社、商品名)を使用した。表中の甘味度は基材については0とし、100gあたり、ショ糖:100、麦芽糖:35、粉末還元澱粉分解物(BDH−1):10、粉末還元麦芽糖:80、デキストリン(パインデックス#1):5、マルトデキストリン(TK−16):16、エリスリトール:75、キシリトール:100、ソルビトール:60としてそれぞれ算出した。
【0014】
<素材本来の風味や特長の評価>
各実施例及び比較例で得られた清涼飲料について、5人のパネリストによって素材本来の風味や特長について4点満点で官能評価し、平均点を得た。評価基準は、素材本来の風味や特長が良好であるかによって判断し、4点:素材本来の風味や特長が損なわれておらず、非常に良く感じられる、3点:素材本来の風味や特長が感じられる、2点:素材本来の風味や特長が感じられにくい、1点:素材本来の風味や特長が損なわれている、とした。表中では、3.0点以上を◎、2.5点以上3.0未満を○、2.0点以上2.5点未満を△、2.0点未満を×とした。
【0015】
<コクの評価>
各実施例及び比較例で得られた清涼飲料について、5人のパネリストによってコクについて4点満点で官能評価し、平均点を得た。評価基準は、コクが良好であるかによって判断し、4点:コクが十分感じられ、飲みごたえがある、3点:コクが感じられる、2点:コクがやや弱いが、後味が水っぽいというほどではない、1点:コクが感じられず、後味が水っぽい、とした。表中では、3.0点以上を◎、2.5点以上3.0未満を○、2.0点以上2.5点未満を△、2.0点未満を×とした。
【0016】
実施例1〜8
【表2】

【0017】
比較例1〜2
【表3】

【0018】
比較例3〜比較例10
【表4】

【0019】
実施例9〜実施例11
【表5】

【0020】
比較例11〜比較例13
【表6】

【0021】
表2〜表6で示すように、粉末還元澱粉分解物及び/または粉末還元麦芽糖を含有することで、甘味を低減しながら、コクが十分に感じられ、素材本来の特長や風味を損なわない粉末清涼飲料が得られた。本発明の構成を満たさない粉末清涼飲料では、素材感かコクのどちらか、あるいはその両方が損なわれる結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、甘味を抑えるために糖類を低減させ、その結果生じるコクの不足を補うために、素材本来の特長や風味を損なわずに、コクを増強する方法を提供することが出来る点において、産業上の利用可能性を有する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末還元澱粉分解物及び/または粉末還元麦芽糖を含有することを特徴とする粉末清涼飲料。
【請求項2】
組成物100重量%中、粉末還元澱粉分解物及び/または粉末還元麦芽糖を1重量%〜15重量%含有することを特徴とする粉末清涼飲料。
【請求項3】
コーヒー抽出エキス粉末を含有する請求項1または2記載の粉末清涼飲料。
【請求項4】
粉末還元澱粉分解物の糖組成が、7糖類以上が40%以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載の粉末清涼飲料。

【公開番号】特開2012−217361(P2012−217361A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84150(P2011−84150)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(399110421)片岡物産株式会社 (3)
【Fターム(参考)】