説明

粉末状の水溶性のカチオン性ポリマー組成物、その製造方法及びその使用

本発明は、分子量の点で異なる、少なくとも2種のカチオン性ポリマー成分を含有し、その際、第一のカチオン性ポリマーが第二のカチオン性ポリマーの存在下にそのモノマー成分から水溶液中で水性ゲル重合の方法に従って形成されている粉末状の水溶性のカチオン性ポリマー組成物、並びに固−液分離におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子量の点で異なる、少なくとも2種のカチオン性ポリマー成分を含んで成る粉末状の水溶性のカチオン性ポリマー、並びにその製造方法及び、該ポリマー生成物の、固−液分離における、例えば製紙における歩留向上剤としての、及びスラッジ脱水/下水処理における使用に関する。
【0002】
固−液分離の実際において、凝集助剤の添加によって、固体の乾燥重量及び濾液の透明度といったパラメータに関してできる限り良好な結果を達成するという課題、すなわち固体と液相とをできる限り完全に分離させるという課題がある。前記のパラメータの意義についての例としては、チャンバー・フィルタープレスでのスラッジ脱水を指摘する。乾燥スラッジは輸送され、かつしばしば熱的に利用せねばならないので、できる限り高い割合の固体(TS−含量)が望まれる。また分離された濾液は廃棄物処理に供給せねばならない。濾液が透明であればあるほど、従って濾液中の凝集されていない固体が少なければ少ないほど、この廃棄物処理はより良好かつ容易となる。濾液は浄化装置から直接的に環境へと放出させることができ、もう一度浄化装置を通す必要はない。時として、ある凝集助剤は、高い固体含量を有する凝集スラッジをもたらすが、不十分な上澄液の透明度をもたらす。そのとき、一方の凝集剤は、恐らくはその反対である。
【0003】
凝集助剤は、粉末状の造粒物の形で又は水中水エマルジョンもしくは油中水エマルジョンの形で製造され、そしてその使用前に、希釈された水溶液で凝集されるべき媒体に添加される。粉末状の造粒物が好ましいのは、該造粒物はそのほぼ無水状態に基づいて輸送コスト的に有利であって、油中水エマルジョンの場合のように、水不溶性の油成分もしくは溶剤成分を含有しないためである。
【0004】
実際には、2種の凝集助剤の組合せがしばしば、単独の凝集助剤を使用するより良好な総合結果をもたらすと示されている。このように、DE−OS1642795号及びEP346159号A1は、異なる高分子凝集剤を連続的に配量することを記載している。
【0005】
粉末状の造粒物の混合物は先行技術に、例えばWO99/50188号に記載されており、そこでは、2種の反対の電荷を有する凝集助剤の粉末を共通の1種の溶液中で一緒にしている。両方のポリマー粉末の異なる溶解挙動に基づいて、溶解過程で既に、不規則に構成された溶液生成物が生じうる。
【0006】
異なるポリマーの乾燥粉末混合物の凝集過程での使用は、凝離現象を通じて、配量の誤りをもたらすことがある。
【0007】
EP262945号A2から、2種の異なるポリマー成分を含んで成るカチオン性凝集助剤及びその製造方法は公知である。該凝集助剤は、ポリマー成分の混合によっては生じず、カチオン性モノマーを低分子のカチオン性ポリマー成分(凝結剤)の存在下に重合させて、高分子のカチオン性ポリマー成分(凝集剤)にすることによって形成される。前記の重合反応に際して、供されたポリマーでグラフト反応が起こりうる。そのアクリレートモノマーを基礎とする凝集剤との非相溶性に基づいて、以下の凝結剤ポリマーを使用することが好ましい:アリルモノマーからなるポリマー、特にポリ−DADMAC及びアミン−エピクロロヒドリンポリマー(第4頁、第40行以降)。凝結剤と高分子電解質成分との比率は10:1〜1:2、有利には5:1〜1:1.5で示される(第3頁、第48〜49行)、すなわち有利な実施態様では、ポリマー混合物中の凝結剤の割合は83〜40質量%である。凝結剤の高い割合は、重合溶液の製造において粘性の問題を引き起こす。開示された凝集剤の特性は、これらが速度と作用に関して工業的凝集過程で課されるような要求を満たさない。
【0008】
本発明の課題は、先行技術に対して改善された粉末状のカチオン性凝集助剤であって、低分子ポリマー成分と高分子ポリマー成分とから構成された凝集助剤を提供することであった。更に、両方のポリマー成分を実質的な制限無く互いに一緒にでき、そして反応生成物を実質的な制限無く更に処理でき、均一かつ良好に可溶性のポリマー粉末が生ずる製造方法を挙げることができる。
【0009】
前記課題は、分子量の点で異なる少なくとも2種のカチオン性ポリマーを含有し、その際、第一のカチオン性ポリマーが第二のカチオン性ポリマーの存在下で、水溶液中でそのモノマー成分からラジカル重合によって形成されている水溶性のカチオン性ポリマー組成物であって、
− 第一のポリマーと第二のポリマーのカチオン性構成単位の種類が一致しており、
− 第一のカチオン性ポリマーの重合が、第二のカチオン性ポリマーの水溶液中で断熱的ゲル重合の方法に従って行われることを特徴とする水溶性のカチオン性ポリマー組成物によって解決される。
【0010】
有利な一実施態様において、該ポリマー組成物は、第二のカチオン性ポリマーと第一のカチオン性ポリマーとの比率0.01:10〜1:3、有利には0.1:10〜<1:4、特に有利には0.2:10〜<1:10で形成される。
【0011】
本発明によれば、両方のカチオン性ポリマーは同じカチオン性成分を有しており、このことは、異なるカチオン性成分によってのみ良好な結果を得ることができるというEP262945A2の供述に対して意想外であると見なされる。
【0012】
第一のカチオン性ポリマーは、カチオン性モノマーと非イオン性モノマーとからなるコポリマーであるのに対して、第二のカチオン性ポリマーはコポリマーでもホモポリマーであってもよい。
【0013】
カチオン系モノマー成分としては、例えば
(メタ)アクリル酸のカチオン化されたエステル、例えば
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタクリレート)、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレートのカチオン化されたエステル、
(メタ)アクリル酸のカチオン化されたアミド、例えば
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミドのカチオン化されたアミド、
1〜6個のC原子を有するアルキル基を有するカチオン化されたN−アルキルモノアミド及びN−アルキルジアミド、例えば
N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミドのカチオン化されたN−アルキルモノアミド及びN−アルキルジアミド、
カチオン化されたN−ビニルイミダゾール並びに置換N−ビニルイミダゾール、例えば
N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−ビニル−4−メチルイミダゾール、N−ビニル−5−メチルイミダゾール、N−ビニル−2−エチルイミダゾールのカチオン化されたN−ビニルイミダゾール並びに置換N−ビニルイミダゾール、及び
カチオン化されたN−ビニルイミダゾリン、例えばビニルイミダゾリン、N−ビニル−2−メチルイミダゾリン及びN−ビニル−2−エチルイミダゾリンのカチオン化されたN−ビニルイミダゾリン
が適している。
【0014】
塩基性モノマーは、鉱酸又は有機酸で中和された形で又は第四級化された形で使用され、その際、第四級化は、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、塩化メチル、塩化エチル又は塩化ベンジルを用いて実施することが好ましい。有利な一実施態様において、塩化メチル又は塩化ベンジルで第四級化されたモノマーが使用される。
【0015】
有利なカチオン性モノマー成分は、(メタ)アクリル酸の、それぞれ1つの第四級化されたN原子を有するカチオン化されたエステル及びアミドであり、特に有利には、第四級化されたジメチルアミノプロピルアクリルアミド及び第四級化されたジメチルアミノエチルアクリレートが使用される。
【0016】
水溶性であることが好ましい非イオン性のモノマー成分としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、N,N−ジメチルアクリルアミド、ビニルピリジン、酢酸ビニル、重合可能な酸のヒドロキシル基を有するエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のヒドロキシエチルエステル及びヒドロキシプロピルエステル、更に重合可能な酸のアミノ基を有するエステル及びアミド、例えばジアルキルアミノエステル、例えばアクリル酸及びメタクリル酸のジメチルアミノエステル及びジエチルアミノエステル、例えばジメチルアミノエチルアクリレート並びに相応のアミド、例えばジメチルアミノプロピルアクリルアミドが適している。非イオン性モノマー成分としてはアクリルアミドを使用することが好ましい。得られたコポリマーの水溶性が考慮されない範囲でのみ限定して水溶性モノマーが使用される。
【0017】
第一のカチオン性ポリマーは高分子重合体である。その平均分子量Mwは1000000より高い、有利には3000000より高い。第一のカチオン性ポリマーの分子量は、第二のカチオン性ポリマーの分子量より高い。第一のカチオン性ポリマーの高い分子量は、本発明によるポリマー組成物の凝集過程における作用を改善する。
【0018】
第一のカチオン性ポリマーの電荷密度は、原則的に自由に選択可能であるが、それぞれの用途に合わせねばならない。有利な一実施態様において、第一のカチオン性ポリマーは、20〜90質量%のカチオン性モノマー、有利には40〜80質量%のカチオン性モノマーから形成される。
【0019】
有利な一実施態様において、第二のカチオン性ポリマーは、70〜100質量%のカチオン性モノマー、有利には75〜100質量%のカチオン性モノマー、特に有利には100質量%のカチオン性モノマーから形成される。
【0020】
第二のカチオン性ポリマーは、第一のカチオン性ポリマーより低分子量であり、その平均分子量Mwは、1000000未満、有利には50000〜700000、特に有利には100000〜500000である。
【0021】
更に有利な一実施態様において、第一のカチオン性ポリマーは、第二のカチオン性ポリマーより低いカチオン性電荷密度を有する。
【0022】
本発明による水溶性のカチオン性ポリマー組成物の製造は、断熱的ゲル重合の方法に従って、第一のカチオン性ポリマーを、第二のカチオン性ポリマーの存在下にそのモノマー成分から水溶液中で、ラジカル重合によって形成させることで行われる。
【0023】
実施のために、まずカチオン性モノマーと場合により非イオン性モノマー及び第二のカチオン性ポリマーからなる水溶液を調製し、重合についての開始温度を−10〜25℃の範囲に調整し、そして不活性ガスによって酸素を除去する。重合開始剤の添加によって、モノマーの発熱的重合反応が開始し、そしてポリマーバッチの加熱が起こって、ポリマーゲルが形成する。最大温度に達した後に、形成する固体ポリマーゲルを直ちに又は保持時間後に初めて更に処理でき、ポリマーゲルは最大温度に達した直後に更に処理できることが好ましい。
【0024】
モノマーと第二のカチオン性ポリマーとからなる水性混合物は、慣用のように濃度10〜60質量%、有利には15〜50質量%、特に有利には25〜45質量%で調製される。
【0025】
有利な一実施態様において、第二のカチオン性ポリマーの重合で得られた溶液を直接的に本発明による生成物の製造のために使用する。
【0026】
重合反応についての開始温度は、−10℃〜25℃の範囲、有利には0℃〜15℃の範囲に調整される。より高い開始温度は重合体ゲルをもたらし、これはその柔軟性に基づいて、後続の粉砕工程及び乾燥工程においてもはや更に処理できない。
【0027】
第一のカチオン性ポリマーの重合は、断熱性重合として実施され、そしてレドックス系でも、光開始剤を用いても開始させることができる。更に、両方の開始法の組合せも可能である。
【0028】
レドックス−開始剤系は、少なくとも2成分を含んで成る:有機又は無機の酸化剤と有機又は無機の還元剤。この場合にしばしば、ペルオキシド単位を有する化合物、例えば無機ペルオキシド、例えばアルカリ金属過硫酸塩及びアンモニウム過硫酸塩、アルカリ金属過リン酸塩及びアンモニウム過リン酸塩、過酸化水素及びそれらの塩(過酸化ナトリウム、過酸化バリウム)又は有機ペルオキシド、例えばベンゾイルペルオキシド、ブチルヒドロペルオキシド又は過酸、例えば過酢酸が使用される。しかしながらその他に、別の酸化剤、例えば過マンガン酸カリウム、塩素酸ナトリウム及び塩素酸カリウム、二クロム酸カリウムなども使用できる。還元剤としては、硫黄含有化合物、例えば亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルフィン酸、有機チオール(エチルメルカプタン、2−ヒドロキシエタンチオール、2−メルカプトエチルアンモニウムクロライド、チオグリコール酸)などを使用することができる。その他に、アスコルビン酸及び原子価の低い金属塩[銅(I)、マンガン(II)、鉄(II)]も可能である。またリン化合物、例えば次亜リン酸ナトリウムも十分に使用可能である。光重合の場合に、該反応は、開始剤の分解をもたらすUV光を用いて開始される。開始剤としては、例えばベンゾイン及びベンゾイン誘導体、例えばベンゾインエーテル、ベンジル及びそれらの誘導体、例えばベンジルケタール、アクリルジアゾニウム塩、アゾ開始剤、例えば2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩又はアセトフェノン誘導体を使用することができる。酸化性成分と還元性成分の量は、モノマー溶液に対して、0.00005〜0.5質量%、有利には0.001〜0.1質量%であり、かつ光開始剤については0.001〜0.1質量%、有利には0.002〜0.05質量%である。
【0029】
重合は、水溶液中で重合容器中で断続的に又は継ぎ目のないベルト上で連続的に、例えばDE3544770号に記載されるように実施される。前記文献はこれをもって参照として導入し、開示の一部と見なす。前記方法は、大気圧で外部熱供給なく実施され、その際、重合熱によって、重合可能な物質の含量に依存する50〜150℃の最大最終温度が得られる。
【0030】
前記の本発明による重合方式によれば、EP262945号により等温重合によって合成された生成物について測定されたものより決定的に良好な生成物特性を有する重合体が得られる。
【0031】
重合の完了後に、ゲルとして存在する重合体の粉砕を工業的に慣用の装置において実施する。第二のカチオン性ポリマーと第一のカチオン性ポリマーとの比率は、ポリマーゲルの更なる処理のために重要である。その比率が0.01:10〜1:3の値を上回る場合に、非常に軟質のゲルが生成し、該ゲルは粉砕後直ちに再付着し、そして工業的な規模での乾燥はほぼ不可能となる。特に重要なことは、カチオン性モノマー割合が60質量%を超える重合体を更に処理できることである。この場合に、しばしば、第二のカチオン性ポリマーと第一のカチオン性ポリマーとの比率を0.2:10〜<1:10に調整することが有利であると実証された。
【0032】
粉砕されたゲルは、断続的に空気循環乾燥室中で70℃〜150℃、有利には80℃〜120℃、特に有利には90℃〜110℃において乾燥される。連続的には、乾燥は、同じ温度範囲で、例えばベルト乾燥器又は流動床乾燥器中で行われる。該生成物は、乾燥後に、12%以下の、特に有利には10%以下の湿分含量を有することが好ましい。
【0033】
乾燥後に、該生成物を磨砕して、所望の粒群にする。生成物の迅速な溶解を達成するために、少なくとも90質量%の生成物が2.0mm未満の大きさ、有利には90質量%の生成物が1.5mm未満の大きさでなければならない。0.1mm未満の微細成分は、10質量%未満、有利には5質量%未満であることが望ましい。
【0034】
本発明による重合体は、凝集助剤として固/液分離の過程において好適である。特に、該重合体は、廃水の浄化において、そして飲料水の処理において好適に使用することができる。更に、該重合体は、有利には製紙に際しての凝集工程での歩留向上剤として使用可能である。
【0035】
以下に本発明を実施例をもとに詳説する。これらの解説は単に例示を目的とするものであって、一般的な発明思想をなんら制限するものではない。
【0036】
実施例
ポリマーの粘度の測定
粘度は、10質量%NaCl溶液中の0.5質量%溶液でブルックフィールド粘度計を用いて測定した。この場合に、溶解時間は1時間であった。
【0037】
以下の略語を使用する:
ABAH:2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩
DIMAPA−Quat:塩化メチルで第四級化された3−ジメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミド
ADAME−Quat:塩化メチルで第四級化された2−ジメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレート
DADMAC:ジアリルジメチルアンモニウムクロライド
第二のカチオン性ポリマー
実施例で使用される第二のカチオン性ポリマーはDIMAPA−Quatからなり、異なるポリマー含量と異なる分子量(GPCによるMw)で製造された溶液ポリマーである。前記の生成物の詳細な特性を表中に挙げる:
【0038】
【表1】

【0039】
篩別試験法による脱水効果の測定
この試験法は、企業で用いられる脱水法である、すなわち連続的な加圧濾過はフィルタープレス又は遠心分離器での遠心脱水によって適応される。
【0040】
前記の方法により、通常、有機カチオン性ポリマーをそれらの公共又は工場のスラッジの調質及び脱水についての適性に関して試験される。
【0041】
スラッジは、調査されるべき凝集助剤溶液を用いて一定条件下(手元にある脱水装置に応じて)で調質される。調質後に、スラッジ試料を金属製篩(200μmのメッシュ幅)で濾過する(=脱水する)。脱水時間(t)を規定の濾液量について測定し、そして流出する濾液をその透明度において透明スケール(視覚的に)で評価する。
【0042】
透明度“0”=清澄なし
透明度“46”=清澄最良
本発明によるポリマー:
本発明によるポリマーは、ゲル重合の方法に従って製造される。
【0043】
ポリマー1
重合容器中に、まず390.0gの50質量%のアクリルアミド水溶液を装入し、そして93.8gの水及び210mgのVersenex 80と混合した。325.0gの60質量%のDIMAPA−Quat及び140.0gの25質量%のK2溶液を添加した後に、4.0gの50質量%の硫酸を用いてpH5.0に調整し、0℃に冷却し、そして窒素を吹き付けた。0.45gのABAH(2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)を添加した後に、重合をUV光で開始させた。25分以内に、重合は0℃から80℃に進む。該ポリマーを肉挽き機で粉砕し、そして100℃で90分間乾燥させた。生成物を90〜1400μmの粒群にまで粉砕した。
【0044】
ポリマー2
合成はポリマー1と同様に実施したが、90.0gの25質量%のK3溶液を添加した。
【0045】
ポリマー3
合成はポリマー1と同様に実施したが、140.0gの25質量%のK4溶液と93.8gの水を添加した。
【0046】
ポリマー4
合成はポリマー1と同様に実施したが、187.2gの25質量%のK2溶液と93.8gの水を添加した。
【0047】
ポリマー5
合成はポリマー1と同様に実施したが、117.0gの25質量%のK3溶液を添加した。
【0048】
ポリマー6
合成はポリマー1と同様に実施したが、187.2gの25質量%のK4溶液と93.8gの水を添加した。
【0049】
開始温度についての例
開始温度が高ければ高いほど、ゲルが軟質になるのは、分子量がより低くなるからである。これは、より低いモノマー濃度で防ぐことができた。しかしながらどちらも、もはや加工できないゲルをもたらす。従って、一般的に、ゲル粉砕と乾燥を含んだ本発明による方法によれば25℃を上回る開始温度は不可能である。
【0050】
ポリマー7
合成はポリマー2に記載されるのと同様に実施したが、10℃で開始させた。
【0051】
ポリマー8
合成はポリマー2に記載されるのと同様に実施したが、15℃で開始させた。
【0052】
ポリマー9
合成はポリマー2に記載されるのと同様に実施したが、20℃で開始させた。
【0053】
比較ポリマー:
比較ポリマー1
重合容器中に、まず407.0gの50%のアクリルアミド水溶液を装入し、そして312.7gの水及び0.15gのVersenex 80と混合した。277.50gの60%のDIMAPA−Quatを添加した後に、2gの50%の硫酸と0.30gのギ酸を用いてpH5.0に調整し、0℃に冷却し、そして窒素を吹き付けた。0.40gのABAH(2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)を添加した後に、重合をUV光で開始させた。25分以内に、重合は0℃から80℃に進む。該ポリマーを肉挽き機で粉砕し、そして100℃で90分間乾燥させた。生成物を90〜1400μmの粒群にまで粉砕した。
【0054】
比較ポリマー2
重合容器中に、まず240.0gの50質量%のアクリルアミド水溶液を装入し、そして285.3gの水及び210mgのVersenex 80と混合した。466.7gの60質量%のDIMAPA−Quatを添加した後に、8.0gの50質量%の硫酸と0.30gのギ酸を用いてpH5.0に調整し、0℃に冷却し、そして窒素を吹き付けた。0.40gのABAH(2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)を添加した後に、重合をUV光で開始させた。25分以内に、重合は0℃から80℃に進む。該ポリマーを肉挽き機で粉砕し、そして100℃で90分間乾燥させた。生成物を90〜1400μmの粒群にまで粉砕した。
【0055】
比較ポリマー3
重合容器中に、まず342.0gの50質量%のアクリルアミド水溶液を装入し、そして394.7gの水及び210mgのVersenex 80と混合した。261.3gの80質量%のADAME−Quatを添加した後に、2.0gの50質量%の硫酸を用いてpH5.0に調整し、0℃に冷却し、そして窒素を吹き付けた。0.40gのABAH(2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)を添加した後に、重合をUV光で開始させた。25分以内に、重合は0℃から80℃に進む。該ポリマーを肉挽き機で粉砕し、そして100℃で90分間乾燥させた。生成物を90〜1400μmの粒群にまで粉砕した。
【0056】
比較ポリマー4
重合容器中に、まず270.0gの50質量%のアクリルアミド水溶液を装入し、そして335.5gの水及び210mgのVersenex 80と混合した。393.8gの80質量%のADAME−Quatを添加した後に、2.0gの50%の硫酸を用いてpH5.0に調整し、0℃に冷却し、そして窒素を吹き付けた。0.40gのABAH(2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)を添加した後に、重合をUV光で開始させた。25分以内に、重合は0℃から80℃に進む。該ポリマーを肉挽き機で粉砕し、そして100℃で90分間乾燥させた。生成物を90〜1400μmの粒群にまで粉砕した。
【0057】
比較ポリマー5(EP262945号B1による)
133.3gの75質量%のMADAME−Quat溶液、250gのK1及び283.7gの水からなる混合物を窒素ですすぎ、そして70℃に加熱した。3.0mLの2%のメタノール性AIBN溶液を添加した後に、70℃(等温)で3時間撹拌した。生成物粘度は19000mPasであった。
【0058】
比較ポリマー6(EP262945号B1による)
合成は比較例5に記載されるのと同様に実施したが、250.0gのK1、106.7gのMADAME−Quat、40.0gのアクリルアミド及び270.3gの水を使用した。
【0059】
比較ポリマー7(EP262945号B1による)
合成は比較例5に記載されるのと同様に実施したが、250.0gのK1、80.0gのMADAME−Quat、80.0gのアクリルアミド及び257.3gの水を使用した。
【0060】
比較ポリマー8 − 開始温度
合成は比較例6に記載されるのと同様に実施したが、3℃において、1000ppmのNa、7ppmのFeSO及び2000ppmのNaで開始させた。そのバッチの温度を24分間で33℃まで上げた。ここで引き続き60分間撹拌した。
【0061】
比較ポリマー9 − 開始温度
合成は比較例7に記載されるのと同様に実施したが、3℃において、500ppmのNa、7ppmのFeSO及び1000ppmのNaで開始させた。そのバッチの温度を40分間で31℃まで上げた。ここで引き続き60分間撹拌した。
【0062】
応用技術的な例:
応用技術的な試験をイルヴェリヒ(Ilverich)で浄化装置の浄化スラッジで全て実施したが、そのスラッジは異なる日付で採取されたので、同じポリマー/スラッジの同じ組合せについて値は時として変動する。1つの例の中では、常に同じスラッジ装填物を使用した。同じ浄化装置の浄化スラッジの特性は、当業者に公知のように、やがて変動しうる。
【0063】
使用例1
本発明によるポリマー1〜3と比較ポリマー1とを、まず第二のカチオン性ポリマーと、次いで第二のカチオン性ポリマーを含まない比較ポリマーの形の第一のカチオン性ポリマーとを別々に配量することで比較する。撹拌時間は10秒であり、濾液量は200mLであった。
【0064】
WS:ポリマー量(“作用物質”)、TS:浄化スラッジ中の乾燥物質
【0065】
【表2】

【0066】
sで示されるデータ=200mL濾液のための時間、太字:溶液の透明度
使用例2
本発明によるポリマー4〜6と比較ポリマー2とを、まず第二のカチオン性ポリマーと、次いで第二のカチオン性ポリマーを含まない比較ポリマーの形の第一のカチオン性ポリマーとを別々に配量することで比較する。撹拌時間は10秒であり、濾液量は200mLであった。
【0067】
WS:ポリマー量(“作用物質”)、TS:浄化スラッジ中の乾燥物質
【0068】
【表3】

【0069】
sで示されるデータ=200mL濾液のための時間、太字:溶液の透明度
濾過速度と濾液の透明度といった両方のパラメータを考慮して、応用技術的な例から、本発明によるポリマーのより良好な作用がもたらされる。
【0070】
EP262945号B1による比較例V5〜V9についての生成物を応用技術的に調査したが、これは本発明によるポリマーより明らかに劣っている。本発明によるポリマーが良好な脱水成果をもたらす量で配量した場合でも、比較例はほぼ満足のいく脱水性能を示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量の点で異なる少なくとも2種のカチオン性ポリマーを含有し、その際、第一のカチオン性ポリマーが第二のカチオン性ポリマーの存在下で、水溶液中でそのモノマー成分からラジカル重合によって形成されている粉末状の水溶性のカチオン性ポリマー組成物であって、
− 第一のポリマーと第二のポリマーのカチオン性構成単位の種類が一致しており、かつ
− 第一のカチオン性ポリマーの重合が、第二のカチオン性ポリマーの水溶液中で断熱的ゲル重合の方法に従って行われることを特徴とする組成物。
【請求項2】
第二のカチオン性ポリマーと第一のカチオン性ポリマーとの比率が0.01:10〜1:3であることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
第一のカチオン性ポリマーが1000000より大きい平均分子量Mwを有することを特徴とする、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
第二のカチオン性ポリマーが1000000未満の平均分子量Mwを有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
第一のカチオン性ポリマーと第二のカチオン性ポリマーとが、それぞれ第四級化されたN原子を有する、(メタ)アクリル酸のカチオン化されたエステル及びアミドの群から選択されるカチオン性モノマー、有利には第四級化されたジメチルアミノプロピルアクリルアミド及び第四級化されたジメチルアミノエチルアクリレートを使用して形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
第一のカチオン性ポリマーもしくは第二のカチオン性ポリマーが、更なる水溶性モノマー、有利にはアクリルアミドとの共重合によって製造されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
第一のカチオン性ポリマーが第二のカチオン性ポリマーより低いカチオン性電荷密度を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
第一のカチオン性ポリマーが20〜90質量%のカチオン性モノマーから複合されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
第二のカチオン性ポリマーが70〜100質量%のカチオン性モノマーから複合されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
分子量の点で異なる少なくとも2種の複合されたカチオン性ポリマーを含有し、その際、第一のカチオン性ポリマーが第二のカチオン性ポリマーの存在下で、そのモノマー成分から、水溶液中で断熱的なゲル重合によってラジカル重合されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のカチオン性ポリマー組成物の製造方法において、
− カチオン性モノマーと非イオン性モノマーと第二のカチオン性ポリマーとからなる水溶液を10〜60質量%の濃度で調製し、重合のための開始温度を−10〜25℃に調整し、そして不活性ガスによって酸素を除去し、
− 重合開始剤の添加によって、モノマーの発熱的重合反応を開始させ、そしてその重合バッチをその最大温度にまで加熱することで、ポリマーゲルを形成させ、
− 最大温度に達した後で、ポリマーゲルを機械的に粉砕し、かつ乾燥させることを特徴とする方法。
【請求項11】
重合の開始温度を0〜15℃の範囲に調整することを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
モノマーと第二のカチオン性ポリマーとからなる水溶液の濃度が15〜50質量%であることを特徴とする、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
重合開始剤が、レドックス系及び/又はUV線によって活性化可能な系を含んで成ることを特徴とする、請求項10から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
重合を重合ベルト上で実施することを特徴とする、請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
水性重合体ゲルをその粉砕後に80℃〜120℃の温度で12%以下の湿分含量にまで乾燥させることを特徴とする、請求項10から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
固/液分離のための凝集助剤としての、請求項1から9までのいずれか1項記載のポリマーの使用。
【請求項17】
廃水の浄化及び飲料水の処理のための、請求項16記載の使用。
【請求項18】
製紙における、請求項16記載の使用。

【公表番号】特表2007−533772(P2007−533772A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522900(P2006−522900)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005810
【国際公開番号】WO2005/023885
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(505301103)アシュランド・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティー・エルエルシー (40)
【Fターム(参考)】