説明

粉末状シャンプー組成物

【課題】洗浄力と泡立ち性が良好で、免疫調整作用、抗菌、抗ウイルス活性、保湿性などの効果バランスの良い粉末状シャンプー組成物を提供する。
【解決手段】炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含む主成分たるアルカリ性無機塩と、ラクトフェリンと、アミノ酸と、キサンタンガム又はプルランを含む増粘剤と、を含有し、界面活性剤を含有しない粉末状のシャンプー組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤を含有しない粉末状シャンプー組成物に関し、洗浄力、免疫調整作用、抗菌、抗ウイルス活性、保湿性などの効果バランスの良い粉末状シャンプー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗髪などに用いられる液体シャンプー組成物として、5〜40重量%の界面活性剤を含有するものが知られている(特許文献1)。しかし、界面活性剤を含有するシャンプーはアレルギー体質のユーザにとってアトピー症の発症要因になることが報告されている。このため、界面活性剤を含有しない、炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムを主剤とする衣料用洗浄組成物が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−127339号公報
【特許文献2】特開平9−87678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、界面活性剤を含有しない炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムを主剤とする衣料用洗浄組成物を頭髪や洗顔用シャンプーに適用しようとすると、泡立ちしないためシャンプーが洗髪中又は洗顔中に頭髪又は顔面から流れてしまい、上手く洗髪又は洗顔できないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、洗浄力と泡立ち性が良好で、免疫調整作用、抗菌、抗ウイルス活性、保湿性、洗髪又は洗顔作業性などの効果バランスの良い粉末状シャンプー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを少なくとも含む主成分たるアルカリ性無機塩と、ラクトフェリンと、アミノ酸と、増粘剤と、を含有し、界面活性剤を含有しない粉末状シャンプー組成物によって、上記課題を解決する。本発明に係る粉末状シャンプー組成物は、頭髪のみならず洗顔用としての用途を含むものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラクトフェリンを含有し界面活性剤を含有しないので、免疫調整作用、抗菌、抗ウイルス活性に優れるとともに、アミノ酸を含有するので保湿性に優れる。また、使用に際して水に溶解すると、ラクトフェリン及びアミノ酸が炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムと反応して炭酸ガスを発生させ、この炭酸ガスが増粘剤の作用により泡化するとともに消泡を抑制する。これによりシャンプー液の泡立ち性が良好となりシャンプー液が頭髪や顔面から流れることなく留まるので、上手く洗髪又は洗顔することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施の形態に係る粉末状シャンプー組成物は、界面活性剤を含有しないシャンプー組成物であって(以下、非界面活性剤シャンプー組成物ともいう。)、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含む主成分たるアルカリ性無機塩を洗浄作用成分として含有する。また、ラクトフェリンと、アミノ酸と、キサンタンガム又はプルランを含む増粘剤とを含有する。
【0009】
洗浄作用成分たるアルカリ性無機塩は、pH緩衝作用とアルカリ作用とを有するアルカリ性無機塩である。pH緩衝作用を有するものとしては、重炭酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩などを挙げることができ、シュウ酸アルカリ金属塩、フタル酸アルカリ金属塩などの有機酸塩も補助的に使用できる。またアルカリ作用を有するものとしては炭酸アルカリ金属塩、ケイ酸アルカリ金属塩などを挙げることができる。これらpH緩衝作用とアルカリ作用とを有するアルカリ無機塩として、少なくとも重炭酸アルカリ金属塩と炭酸アルカリ金属塩とを含むことが好ましく、なかでも炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムとを少なくとも含むことがより好ましい。
【0010】
なお、上記アルカリ性無機塩に加えて、亜硫酸ナトリウムやグリチルリチン酸ジカリウムをさらに含有してもよい。亜硫酸ナトリウムは温水などの溶解液中に含まれる塩素を除去する効能があり、グリチルリチン酸ジカリウムは抗炎症作用があるため、特に頭皮や顔面に接触するシャンプーに適用して好ましい。
【0011】
ラクトフェリンは、母乳や牛乳に含まれるたんぱく質の一種であり、免疫細胞を活性化させ免疫力を高める効能がある。本例の粉末状シャンプーでは、界面活性剤を含まず、且つ免疫性能に優れたラクトフェリンを添加することで、アレルギー体質のユーザにとってアトピー症などのアレルギー症状を発症しない安全なシャンプーを提供することができる。
【0012】
アミノ酸は、頭髪の保湿性を高めるために添加され、アスパラギン酸,アラニン,イソロイシン,グリシン,グルタミン酸,シスチン,セリン,チロシン,トリプトファン,トレオニン,バリン,ヒスチジン,フェニルアラニン,プロリン,メチオニン,リシン及びロイシンなどの1種もしくは複数種のアミノ酸を用いることができる。
【0013】
本例の粉末状シャンプー組成物は、洗髪の使用に際し温水に溶かして液体にするが、本例の粉末状シャンプー組成物を水に溶かすと、上記ラクトフェリンとアミノ酸は、洗浄主成分である重炭酸金属塩及び炭酸金属塩と反応し炭酸ガスを生成する。そして、この炭酸ガスと後述する増粘剤とが協働して、界面活性剤を含有しなくても泡立ち性に優れたシャンプーを提供することができる。詳細については後述する。
【0014】
増粘剤は、本例の粉末状シャンプー組成物を温水に溶かして液状シャンプーとしたときの泡立ち性を高める機能を司り、キサンタンガムやプルランなどの多糖類を用いることができる。
【0015】
必要に応じてクエン酸をさらに添加することもできる。クエン酸は、上述したアミノ酸やラクトフェリンと同様に重炭酸金属塩及び炭酸金属塩と反応して液体中にて炭酸ガスを生成するので、クエン酸を添加することで液状シャンプーの泡立ち性がより向上する。
【0016】
本例の粉末状シャンプー組成物は、前記ラクトフェリンを0.1〜0.4重量%、アミノ酸を1〜7重量%、増粘剤を3〜7重量%、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウム含む主成分たるアルカリ性無機塩を87〜93重量%含有する。また、必要に応じて塩素除去性能を有する亜硫酸ナトリウムを0.5〜1.5重量%、抗炎症性能を有するグリチルリチン酸ジカリウムを0.002〜0.008重量%、クエン酸を2〜6重量%含有してもよい。
【0017】
そして、本例の粉末状シャンプー組成物は洗髪の使用に供されるまでは粉末状とされ、使用に際し温水に溶かして液状シャンプーとされる。使用するまでは粉末状シャンプー組成物としているので、防腐剤などの添加物が不要となり、安全性や保存性が向上する。
【0018】
洗髪の使用に際しては、180〜220ccの攪拌容器を準備し、これに38〜42℃の温水と、温水100重量部に対し8〜16重量部の粉末状シャンプー組成物とを入れ、攪拌容器を封止した状態でよく振り、攪拌する。これにより、重炭酸金属塩及び炭酸金属塩と、アミノ酸及びラクトフェリン並びに必要に応じて添加されたクエン酸とが反応し炭酸ガスが発生する。発生した炭酸ガスは増粘剤の作用によって発泡し、さらに消泡が抑制されて維持されることになる。そして、泡立ちした状態の液状シャンプーを頭髪に滴下し、頭皮をマッサージするように手で洗う。
【0019】
シャンプーを終えたら温水で頭皮及び頭髪をすすぐことで洗髪を終了するが、本例のシャンプー組成物は界面活性剤を含有せず、アルカリ性無機塩を主成分としているため、成分の残留を気にすることなく少量のすすぎ湯で足りる。
【0020】
また、本例のシャンプー組成物はラクトフェリンを含有し界面活性剤を含有しないので、免疫調整作用、抗菌、抗ウイルス活性に優れるとともに、アミノ酸を含有するので保湿性に優れる。さらに、上述したように洗髪に際しては、ラクトフェリン及びアミノ酸が炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムと反応して炭酸ガスを発生し、この炭酸ガスが増粘剤の作用により泡化して消泡を抑制するので、シャンプー液の泡立ち性も良好となる。しかも、洗髪又は洗顔するまでは粉末状であるため防腐剤が不要となり、より安全性が向上する。
【実施例】
【0021】
《洗浄性の確認》
本例の粉末状シャンプー組成物の洗浄性能を確認するために、下記表1の配合の粉末状シャンプー組成物を作製し、それぞれを40℃の温水に溶解して液状シャンプーとした。これを用いてJIS湿式人口汚染布(人工襟垢汚れ)をターゴトメータ(攪拌式洗浄力試験機)で洗浄し、洗浄率を測定した。洗浄率(%)は、(洗浄後の白度−洗浄前の白度)/(元布白度−洗浄前の白度)×100にて算出した。比較例5として市販の液体シャンプー(花王社製メリット(登録商標))を用いて同様の条件で洗浄率を測定した。この結果を表1に示す。
【0022】
また、上記実施例1〜4について、液状シャンプーとした際の泡立ち性を目視評価した結果を表1に示す。「○」は泡立ち性が良好で洗髪作業性に問題がない状態、「△」は泡立ち性がやや悪く洗髪作業性に難がある状態、「×」は泡立ちが皆無又は殆んど泡立ちが観察されず洗髪作業性に問題がある状態をそれぞれ示す。
【0023】
【表1】

【0024】
《アレルギー体質のユーザへの影響》
上記実施例2の粉末状シャンプー組成物を温水に溶かし、アトピー症の男性の患者Aの頭髪洗浄と全身洗浄に使用したところ、使用開始から2日目に、それまで真っ赤だった頭皮や背中がきれいになり始め、就寝中に頻繁に頭や背中を掻くこともなくなった。使用開始から3ヶ月を経過すると、頭皮や背中をはじめ全身のアトピー症状がなくなり、また痒みもなくなった。
【0025】
同じく実施例2の粉末状シャンプー組成物を温水に溶かし、アトピー症の男子の患者Bの頭髪洗浄と全身洗浄に使用したところ、使用開始から5ヶ月経過した時点で頭皮の赤くボツボツとした湿疹がなくなった。さらに、8ヶ月経過した時点で、頭皮の痒みや痛みがなくなり、その状態も大幅に改善した。
【0026】
同じく実施例2の粉末状シャンプー組成物を温水に溶かし、アトピー症の男性の患者Cの頭髪洗浄と全身洗浄に使用したところ、使用開始から1ヶ月も経たないうちに、頭皮をはじめ発汗し易い部分の痒みや痛みがなくなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含む主成分たるアルカリ性無機塩と、ラクトフェリンと、アミノ酸と、キサンタンガム又はプルランを含む増粘剤とを含有し、
界面活性剤を含有しないことを特徴とする粉末状シャンプー組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の粉末状シャンプー組成物において、
前記ラクトフェリンを0.1〜0.4重量%、前記アミノ酸を1〜7重量%、前記増粘剤を3〜7重量%、前記アルカリ性無機塩を87〜93重量%含有することを特徴とする粉末状シャンプー組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粉末状シャンプー組成物において、
2〜6重量%のクエン酸をさらに含有することを特徴とする粉末状シャンプー組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉末状シャンプー組成物において、
前記アミノ酸は、アスパラギン酸,アラニン,イソロイシン,グリシン,グルタミン酸,シスチン,セリン,チロシン,トリプトファン,トレオニン,バリン,ヒスチジン,フェニルアラニン,プロリン,メチオニン,リシン及びロイシンからなる群より選ばれる1又はそれ以上のアミノ酸であることを特徴とする粉末状シャンプー組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉末状シャンプー組成物と、38〜42℃の温水とを攪拌容器に入れて攪拌し、攪拌された液状シャンプーを頭髪に塗布して洗髪することを特徴とする洗髪方法。
【請求項6】
請求項5に記載の洗髪方法において、
前記温水100重量部に対し、前記粉末状シャンプー組成物を8〜16重量部添加して攪拌することを特徴とする洗髪方法。

【公開番号】特開2012−6916(P2012−6916A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115332(P2011−115332)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(503214689)株式会社ライトウェーブ (1)
【Fターム(参考)】