説明

粉末状凝集脱水剤及び有機汚泥の凝集脱水方法

【課題】
優れた凝集脱水率を発揮する凝集脱水剤を提供することを目的にする。
【解決手段】
70〜200mPa・sの塩粘度(4重量%塩化ナトリウム水溶液の0.5重量%溶液の粘度)を持つカチオン性又は両性の粉末状高分子凝集剤(A)と、
無機アンモニウム塩、無機グアニジン塩及び炭素数1〜6の有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる粉末状低分子化合物(B)とを含有してなり、
粉末状高分子凝集剤(A)及び粉末状低分子化合物(B)の重量に基づいて、粉末状高分子凝集剤(A)の含有量が60〜95重量%、粉末状低分子化合物(B)の含有量が5〜40重量%であることを特徴とする粉末状凝集脱水剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末状凝集脱水剤及び有機汚泥の凝集脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凝集脱水剤として、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物等とアクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウム塩化物等との2種のカチオン単量体5〜95モル%と、
(メタ)アクリル酸等のアニオン性単量体5〜50モル%と、
(メタ)アクリルアミド等の非イオン単量体0〜90モル%とを、高分子分散剤の存在下、硫酸アンモニウム水溶液中で分散重合して得られる粒径100μm以下の両性水溶性高分子分散液が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−145200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の凝集脱水剤では、凝集脱水率が十分ではなく、さらに高性能の凝集脱水剤が強く求められている。
そこで、本発明は、優れた凝集脱水率を発揮する凝集脱水剤を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の粉末状凝集脱水剤の特徴は、70〜200mPa・sの塩粘度(4重量%塩化ナトリウム水溶液の0.5重量%溶液の粘度)を持つカチオン性又は両性の粉末状高分子凝集剤(A)と、
無機アンモニウム塩、無機グアニジン塩及び炭素数1〜6の有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる粉末状低分子化合物(B)とを含有してなり、
粉末状高分子凝集剤(A)及び粉末状低分子化合物(B)の重量に基づいて、粉末状高分子凝集剤(A)の含有量が60〜95重量%、粉末状低分子化合物(B)の含有量が5〜40重量%である点を要旨とする。
【0006】
本発明の有機汚泥の凝集脱水方法の特徴は、上記の粉末状凝集脱水剤を水に溶解して溶解液を得る溶解工程(1)、
溶解工程(1)で得た溶解液を有機汚泥に添加する添加工程(2)、
添加工程(2)の後速やかに脱水機で脱水する脱水工程(3)を含む点を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粉末状凝集脱水剤は、優れた凝集脱水率を発揮する。すなわち、本発明の粉末状凝集脱水剤を用いると、汚泥粒子が大きく強固なフロックに成長し凝集するため、凝集脱水率が著しく向上する。したがって、凝集脱水剤の添加量が少なくても十分な凝集脱水率が得られる。
【0008】
本発明の有機汚泥の凝集脱水方法を適用すると、優れた凝集脱水率で有機汚泥を凝集脱水することができる。すなわち、本発明の有機汚泥の凝集脱水方法を用いると、有機汚泥粒子が大きく強固なフロックに成長し凝集するため、有機汚泥の脱水効率が向上する。したがって、凝集脱水剤の添加量が少なくても十分な凝集脱水率が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
カチオン性又は両性の粉末状高分子凝集剤(A)の塩粘度(mPa・s)は、70〜200であり、好ましくは80〜190、さらに好ましくは110〜180、つぎに好ましくは120〜175、特に好ましくは135〜175、最も好ましくは150〜170である。この範囲であると、さらに優れた凝集脱水率を発揮する。
【0010】
塩粘度(mPa・s)は、以下のようにして測定される値である。
回転計付き攪拌モーター、攪拌軸及びプロペラ型3枚羽根(直径5cm)からなる攪拌機で、500mlのガラスビーカーに入れたイオン交換水286.5gを攪拌しながら(回転数450rpm)、これに精秤した測定試料1.500gをママコにならないように少量づつ添加し、その後20℃で2時間攪拌して溶解させた後、食塩12.00gを加えて、さらに20℃で30分間撹拌してから、得られた溶解液を200mlトールビーカーに移し、恒温水槽中で25℃±0.5℃に調節し、JIS K5101−6−2:2004に準拠して、回転粘度を測定する。
【0011】
カチオン性又は両性の粉末状高分子凝集剤(A)の重量平均粒子径(Da;μm)は、110〜2500が好ましく、さらに好ましくは300〜2300、つぎに好ましくは400〜2000、特に好ましくは500〜1800、最も好ましくは720〜1300である。この範囲であると、凝集脱水率及びハンドリングがさらに良好となる。
【0012】
粉末状低分子化合物(B)の重量平均粒子径(Db;μm)は、110〜2500が好ましく、さらに好ましくは300〜2300、つぎに好ましくは400〜2000、特に好ましくは500〜1800、最も好ましくは1200〜1300である。この範囲であると、凝集脱水率及びハンドリングがさらに良好となる。
【0013】
粉末状高分子凝集剤(A)の重量平均粒子径(Da)と粉末状低分子化合物(B)の重量平均粒子径(Db)との比(Da/Db)は、0.2〜5が好ましく、さらに好ましくは0.3〜4、つぎに好ましくは0.4〜3、特に好ましくは0.5〜2、最も好ましくは0.5〜1.1である。この範囲であると、凝集脱水率及びハンドリングがさらに良好となる。
【0014】
重量平均粒子径は、測定試料の粒度分布を測定し、対数確率紙{横軸:粒径、縦軸:累積含有量(重量%)}に、累積含有量と粒子径との関係をプロットし、累積含有量が50重量%に対応する粒子径を求めることにより得られる。粒度分布は、JIS Z8815−1994に準拠して測定され、たとえば、内径150mm、深さ45mmのふるい{目開き:2800μm、2000μm、1000μm、710μm及び500μmのふるい、又は目開き:355μm、250μm、180μm、125μm及び90μmのふるい}を、目開きの狭いふるいを下にして重ね、一番上の最も目開きの広い710μmのふるいの上に、測定試料50gを入れ、ふるい振動機にて10分間ふるい、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定される。
【0015】
粉末状高分子凝集剤(A)としては、次の水溶性エチレン性不飽和単量体(ノニオン性単量体、カチオン性単量体、アニオン性単量体)等を構成単量体とするカチオン性又は両性のポリマーからなる粒子が含まれる。
【0016】
(1)ノニオン性単量体
(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等}、(メタ)アクリルアミド{(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN−メチロール(メタ)アクリルアミド等}及び他のビニルモノマー{アクリロニトリル及びN−ビニル−2−ピロリドン等}等
【0017】
(2)カチオン性単量体
以下のアミノ基含有化合物のアミン塩{塩酸塩、硫酸塩及びリン酸塩等}及び第四級アンモニウム塩{メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩及びベンジルクロライド塩等}等
【0018】
アミノ基含有(メタ)アクリレート{N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等}、アミノ基含有(メタ)アクリルアミド{N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等}又はアミノ基含有ビニル化合物{p−アミノスチレン、2−ビニルピリジン、ビニルアニリン及び(メタ)アリルアミン等}
【0019】
(3)アニオン性単量体
不飽和カルボン酸{(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びビニル安息香酸等}、不飽和スルホン酸{ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルオキシメチルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルアミノメチルベンゼンスルホン酸等}及びこれらの塩{アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)塩、アンモニウム塩及びアミン(炭素数1〜20)塩等
【0020】
粉末状高分子凝集剤(A)は、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートの第4級アンモニウム塩を必須構成単量体としてなることが好ましい。
【0021】
粉末状高分子凝集剤(A)は、これらの水溶性エチレン性不飽和単量体を単独重合してもよく、共重合してもよい。また、水不溶性不飽和単量体や架橋性単量体を共重合してもよい。
【0022】
水不溶性不飽和単量体を共重合する場合、この使用割合(モル%)は、全ての単量体のモル数に基づいて、0.1〜40が好ましく、さらに好ましくは0.2〜20、特に好ましくは0.5〜10である。
【0023】
架橋性単量体を共重合する場合、この使用割合(モル%)は、全ての単量体のモル数に基づいて、0.0001〜5が好ましく、さらに好ましくは0.001〜1、特に好ましくは0.01〜0.5である。
【0024】
水不溶性不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ω−メトキシエチル(メタ)アクリレート及びω−メトリキシプロピル(メタ)アクリレート等が含まれる。
【0025】
架橋性単量体としては、架橋性(メタ)アクリルアミド{N,N−メチレンビスアクリルアミド等}、架橋性(メタ)アクリレート{エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(ポリ)(2〜4)(メタ)アクリレート等}、架橋性ビニル単量体{ジビニルアミン、トリビニルアミン、ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコール(重合度2〜50)ジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、グリセリンジビニルエーテル及びペンタエリスリトールテトラビニルエーテル等}、架橋性(メタ)アリル単量体{ジ(メタ)アリルアミン、N−アルキル(炭素数1〜20)ジ(メタ)アリルアミン、エチレングリコールジ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコール(重合度2〜50)ジ(メタ)アリルエーテル、グリセリンジ(メタ)アリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アリルエーテル及びテトラアリロキシエタン等}及び熱架橋性単量体{エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリントリグリシジルエーテル等}等が含まれる。
【0026】
粉末状高分子凝集剤(A)の製造方法に制限はないが、塩粘度等の観点から、水溶液光重合法又は逆相懸濁重合法で製造することが好ましい(たとえば、特開平1−138210号公報や特開2004−181449号公報が参考となる。)。
【0027】
粉末状低分子化合物(B)は、無機アンモニウム塩、無機グアニジン塩及び炭素数1〜6の有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種から構成されるものであり、次のものが含まれる。
【0028】
無機アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム及びスルファミン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
【0029】
無機グアニジン塩としては、硫酸グアニジン、炭酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、塩酸グアニジン及びリン酸グアニジン等が挙げられる。
【0030】
炭素数1〜6の有機酸アンモニウム塩としては、ギ酸アンモニウム塩、酢酸アンモニウム塩、シュウ酸アンモニウム塩、クエン酸アンモニウム塩、リンゴ酸アンモニウム塩、酒石酸アンモニウム塩及びアスコルビン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
【0031】
粉末状高分子凝集剤(A)の含有量(重量%)は、粉末状高分子凝集剤(A)及び粉末状低分子化合物(B)の重量に基づいて、60〜95が好ましく、さらに好ましくは65〜92、特に好ましくは75〜85である。
【0032】
粉末状低分子化合物(B)の含有量(重量%)は、粉末状高分子凝集剤(A)及び粉末状低分子化合物(B)の重量に基づいて、5〜40が好ましく、さらに好ましくは8〜35、特に好ましくは15〜25である。
【0033】
本発明の粉末状凝集脱水剤は、粉末状高分子凝集剤(A)及び粉末状低分子化合物(B)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、界面活性剤{ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル及びジオクチルスルホコハク酸ソーダ等}、ブロッキング防止剤{ポリエチレンオキシド変性シリコーン及びポリエチレンオキシド・ポリプロピレンオキシド変性シリコーン等}、及び酸化防止剤{ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテコール、クペロン、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン−1−オキシル、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオ尿素、テトラメチルチウラムジサルファイド、ジメチルジチオカルバミン酸、ピペラジン−ビス−ジチオカルバミン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、トリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム及び尿素等}等を含有することができる。
【0034】
本発明の粉末状凝集脱水剤の大きさは、粉末状高分子凝集剤(A)の重量平均粒子径と同じ程度であることが好ましい。すなわち、粉末状高分子凝集剤(A)の各粒子が二次凝集しておらず、粉末状低分子化合物(B)の重量平均粒子径が粉末状高分子凝集剤(A)と同程度であることが好ましい。
【0035】
本発明の粉末状凝集脱水剤は、粉末状高分子凝集剤(A)及び粉末状低分子化合物(B)が均一に混合されていれば製造方法に制限はなく、公知の方法で製造できる。
【0036】
本発明の粉末状凝集脱水剤を用いて有機汚泥を凝集脱水する方法としては、公知の方法が適用できるが、上記の粉末状凝集脱水剤を水に溶解して溶解液を得る溶解工程(1)、
溶解工程(1)で得た溶解液を有機汚泥に添加する添加工程(2)、
添加工程(2)の後速やかに脱水機で脱水する脱水工程(3)を含むことが好ましい。
【0037】
水としては、本発明の粉末凝集脱水剤を溶解できれば制限はなく、たとえば、工業用水、水道水、河川水、湖沼水、雨水及び汚泥を分離した場内処理水等が含まれる。
【0038】
溶解工程(1)において、粉末状凝集脱水剤が水に溶解していればよく、必ずしも粉末状凝集脱水剤のすべてが水に溶解している必要はなく、粉末状凝集脱水剤の一部が水に溶解していなくてもよい{ただし、一部が未溶解の場合、継粉(ままこ)の状態で未溶解である場合を除く}。
【0039】
溶解工程(1)で得た溶解液は、溶解後速やかに有機汚泥に添加することが好ましく、さらに好ましくは溶解後24時間以内(12時間以内が好ましく、さらに好ましくは8時間以内、特に好ましくは4時間以内)に添加することである。すなわち、溶解工程(1)と添加工程(2)との間が24時間以内であることが好ましい。
【0040】
添加工程において、粉末状高分子凝集剤(A)を水に溶解した溶解液と、粉末状低分子化合物(B)を水に溶解した溶解液とを、有機汚泥に別々に添加しても本発明の効果を奏し得ない。これは、これらを水に溶解する際、粉末状高分子凝集剤(A)に由来する高分子鎖と粉末状低分子化合物(B)とが互いに何らかの影響を及ぼしているものと推察される。
【0041】
有機汚泥としては、生物学的水処理によって生成する有機汚泥が含まれるが、本発明の凝集脱水剤及び凝集脱水方法は下水の混合生汚泥、し尿汚泥又は養豚場汚泥に特に効果的である。
【0042】
脱水機としては脱水できれば制限なく、非ろ布式脱水機(遠心脱水機、スクリュープレス及び毛細管脱水機等)及びろ布式脱水機(ベルトプレス及びフィルタープレス等)のいずれにも適用できる。これらのうち、非ろ布式脱水機及びベルトプレスに効果的であり、非ろ布式脱水機にさらに効果的であり、遠心脱水機に特に効果的である。
【0043】
粉末状凝集脱水剤の添加量は、有機汚泥の種類や設備等により適宜決定することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0045】
<製造例1>
塩化N,N,N−トリメチルアンモニオエチルアクリレート(N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩)の79%水溶液392部(1.6モル)及びアクリルアミドの50%水溶液341部(2.4モル)の混合液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換(気相酸素濃度10ppm以下)した後、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩の5%水溶液2.7重量部を均一混合し、モノマー水溶液を調製した。
【0046】
還流脱水配管、滴下漏斗、窒素導入管及び撹拌翼(マックスブレンド翼)を備えた反応槽にシクロヘキサン624部を仕込んだ後、アルケン−無水マレイン酸共重合体{三菱化学(株)製、商品名「ダイヤカルナ30」}18.7部を加えて、撹拌翼の回転数を300rpmで攪拌しながら、反応槽内を窒素置換(気相酸素濃度10ppm以下)し、内容物の温度を57℃まで昇温した。57℃に到達したところで、反応槽内を減圧(60kPa)にし、予め滴下漏斗からモノマー水溶液を反応槽中に120分間かけて滴下し、滴下終了後、さらに60分間57℃で攪拌を継続した。重合が進行すると共に、粒状物が生成し、最終的に樹脂スラリーが得られた。
【0047】
樹脂スラリーを減圧濾過して粒状物を得た後、順風乾燥機(50℃、4時間
)で乾燥して、粉末状高分子凝集剤(a1)を得た。粉末状高分子凝集剤(a1)の塩粘度は175mPa・s、またコロイド当量値は3.3meq./g、重量平均粒子径は1280μmであった。
【0048】
<製造例2>
塩化N,N,N−トリメチルアンモニオエチルアクリレート(N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩)の79%水溶液の使用量を「392部(1.6モル)」から「118部(0.48モル)」に変更したこと、及びアクリルアミドの50%水溶液の使用量を「341部(2.4モル)」から「500部(3.52モル)」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、粉末状高分子凝集剤(a2)を得た。粉末状高分子凝集剤(a2)の塩粘度は136mPa・s、またコロイド当量値は1.2meq./g、重量平均粒子径は720μmであった。
【0049】
塩粘度及び重量平均粒子径は上記のようにして測定した。また、コロイド当量値(meq./g)は、コロイド滴定法(ポリビニル硫酸カリウム溶液で滴定する方法)により測定した。
【0050】
<実施例1>
製造例1で得た粉末状高分子凝集剤(a1)75部と、粉末状低分子化合物(b1){硫酸アンモニウム、和光純薬工業株式会社、重量平均粒径1300μm}25部とを均一混合して、本発明の粉末状凝集脱水剤(1)を得た。
粉末状高分子凝集剤(a1)の重量平均粒子径(Da)と粉末状低分子化合物(b1)の重量平均粒子径(Db)との比(Da/Db)は、1である。
【0051】
<実施例2>
製造例1で得た粉末状高分子凝集剤(a1)85部と、粉末状低分子化合物(b1){硫酸アンモニウム、和光純薬工業株式会社、重量平均粒子径1300μm}15部とを均一混合して、本発明の粉末状凝集脱水剤(2)を得た。
粉末状高分子凝集剤(a1)の重量平均粒子径(Da)と粉末状低分子化合物(b1)の重量平均粒子径(Db)との比(Da/Db)は、1である。
【0052】
<実施例3>
製造例1で得た粉末状高分子凝集剤(a1)75部と、粉末状低分子化合物(b2){硝酸アンモニウム、宇部興産株式会社、重量平均粒子径1200μm}25部とを均一混合して、本発明の粉末状凝集脱水剤(3)を得た。
粉末状高分子凝集剤(a1)の重量平均粒子径(Da)と粉末状低分子化合物(b2)の重量平均粒子径(Db)との比(Da/Db)は、1である。
【0053】
<実施例4>
製造例2で得た粉末状高分子凝集剤(a2)75部と、粉末状低分子化合物(b1){硫酸アンモニウム、和光純薬工業株式会社、重量平均粒子径1300μm}25部とを均一混合して、本発明の粉末状凝集脱水剤(4)を得た。
粉末状高分子凝集剤(a2)の重量平均粒子径(Da)と粉末状低分子化合物(b1)の重量平均粒子径(Db)との比(Da/Db)は、0.6である。
【0054】
<実施例5>
製造例2で得た粉末状高分子凝集剤(a2)85部と、粉末状低分子化合物(b1){硫酸アンモニウム、和光純薬工業株式会社、重量平均粒子径1300μm}15部とを均一混合して、本発明の粉末状凝集脱水剤(5)を得た。
粉末状高分子凝集剤(a2)の重量平均粒子径(Da)と粉末状低分子化合物(b1)の重量平均粒子径(Db)との比(Da/Db)は、0.6である。
【0055】
<比較例1>
製造例1で得た粉末状高分子凝集剤(a1)をそのまま比較用の凝集脱水剤(H1)とした。
【0056】
<比較例2>
製造例2で得た粉末状高分子凝集剤(a2)をそのまま比較用の凝集脱水剤(H2)とした。
【0057】
<比較例3>
製造例1で得た粉末状高分子凝集剤(a1)85部と、スルファミン酸{日産化学工業株式会社、重量平均粒子径1500μm}15部とを均一混合して、比較用の凝集脱水剤(H3)を得た。
【0058】
<比較例4>
製造例1で得た粉末状高分子凝集剤(a1)85部と、硫酸ナトリウム{朝日化学工業株式会社、重量平均粒子径800μm}15部とを均一混合して、比較用の凝集脱水剤(H4)を得た。
【0059】
<比較例5>
硫酸アンモニウムをそのまま比較用の凝集脱水剤(H5)とした。
【0060】
実施例又は比較例で得た凝集脱水剤を水道水で0.2%となるように希釈・溶解させて、評価用の各希釈水溶液を得た。
希釈・溶解させてから1時間後に、300mLビーカーに採った余剰・凝沈混合汚泥{Hし尿処理場から採取したもの;pH6.7、TS2.5%、有機分73%、総アルカリ度450mg/L}200mLに、高分子凝集剤の量が1.25%/TSとなるように評価用の希釈水溶液を添加し、ジャーテスター(宮本理研工業株式会社製、形式JMD−6HS−A)で攪拌混合し、以下の方法により、フロック粒径、ろ液量、ろ液SS及びケーキ含水率を測定し、下表に示した。
【0061】
なお、pH、TS、有機分、総アルカリ度は、「下水試験方法」(社団法人日本下水道協会、1997年発行)に記載された方法に準拠して測定した。
【0062】
<フロック粒径>
ジャーテスター(宮本理研工業株式会社製、形式JMD−6HS−A)に、塩化ビニル樹脂製の板状攪拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字状に上下に取り付け、300mLビーカーに余剰・凝沈混合汚泥200mLを入れ、300mLビーカーをジャーテスターにセットして、評価用の希釈水溶液を添加した後、700rpmで20秒間攪拌してから攪拌を止めて、目視にて、フロック粒径(1)(mm)を測定した。
引き続き、再度700rpmで20秒間攪拌してから攪拌を止めて、目視にて、フロック粒径(2)(mm)を測定した。
【0063】
<ろ液量、ろ液SS>
フロック粒径を測定した後、引き続き、ろ布(敷島カンバス株式会社製、T−1189、直径9cmの円形状)をヌッチェ漏斗に敷いて、ろ液を受けるための300mlメスシリンダをセットして、フロック粒径を測定した後の余剰・凝沈混合汚泥をろ過して、60秒間のろ液を計測した。
また、得られたろ液のSS(ppm)を「下水試験方法」(社団法人日本下水道協会、1997年発行)に記載された方法に準拠して測定した。
【0064】
<ケーキ含水率>
ろ液量、ろ液SSを測定した後、引き続き、ろ布上に残った汚泥を小型遠心分離器(2000G)で3分間脱水して、ケーキを得た。このケーキ約3gをシャーレに秤量(w1)してから、順風乾燥機内(105±5℃で8時間)で乾燥した後、乾燥ケーキの重量(w2)を測定して、次式からケーキ含水率(%)を算出した。
(ケーキ含水率)=(w1−w2)×100/w1
【0065】
【表1】


【0066】
粘土状*;フロックを形成せず、全体が粘土状となり、フロック粒径を測定できなかった。
凝集せず*;凝集せず、フロックを形成しないため、フロック粒径を測定できなかった。したがって、ケーキを得ることができず、ケーキ含水率も測定できなかった。
【0067】
本発明の凝集脱水剤(または本発明の凝集脱水方法)を用いると、最初の20秒間の攪拌で大粒径のフロックを形成し、さらに20秒間の攪拌をしてもフロック粒径は小さくならないことを確認できた。すなわち、本発明の凝集脱水剤(または本発明の凝集脱水方法)を用いると、機械的強度が高い大粒径のフロックを形成することを確認した。この結果、ろ液量が多く、またろ液SSも小さく、ケーキ含水率も低い結果が得られた。
【0068】
一方、比較用の凝集脱水剤を用いた場合、大きなフロックを形成することができず、この結果、ろ液量も少なく、またろ液SSも大きく、ケーキ含水率も高い結果となった。また、比較例1、2、5の結果から、粉末状高分子凝集剤(A)又は低分子化合物(B)の一方を用いても本発明の効果を奏し得なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
70〜200mPa・sの塩粘度(4重量%塩化ナトリウム水溶液の0.5重量%溶液の粘度)を持つカチオン性又は両性の粉末状高分子凝集剤(A)と、
無機アンモニウム塩、無機グアニジン塩及び炭素数1〜6の有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる粉末状低分子化合物(B)とを含有してなり、
粉末状高分子凝集剤(A)及び粉末状低分子化合物(B)の重量に基づいて、粉末状高分子凝集剤(A)の含有量が60〜95重量%、粉末状低分子化合物(B)の含有量が5〜40重量%であることを特徴とする粉末状凝集脱水剤。
【請求項2】
粉末状高分子凝集剤(A)の重量平均粒子径(Da)が110〜2500μm、粉末状低分子化合物(B)の重量平均粒子径(Db)が110〜2500μmであり、これらの重量平均粒子径の比(Da/Db)が0.2〜5である請求項1に記載の粉末状凝集脱水剤。
【請求項3】
粉末状高分子凝集剤(A)が、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートの第4級アンモニウム塩を必須構成単量体としてなる請求項1又は2に記載の粉末状凝集脱水剤。
【請求項4】
粉末状高分子凝集剤(A)が、水溶液光重合法又は逆相懸濁重合法で製造される粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の粉末状凝集脱水剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載された粉末状凝集脱水剤を水に溶解して溶解液を得る溶解工程(1)、
溶解工程(1)で得た溶解液を有機汚泥に添加する添加工程(2)、
添加工程(2)の後速やかに脱水機で脱水する脱水工程(3)を含むことを特徴とする有機汚泥の凝集脱水方法。
【請求項6】
有機汚泥が、下水の混合生汚泥、し尿汚泥又は養豚場汚泥である請求項5に記載の有機汚泥の凝集脱水方法。

【公開番号】特開2012−86117(P2012−86117A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233023(P2010−233023)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(597127948)友岡化研株式会社 (2)
【Fターム(参考)】