説明

粉末状封止剤及び封止方法

【課題】電子デバイスを低温で緊密に封止可能な封止剤及び封止方法を提供する。
【解決手段】デバイスをモールドして封止するための封止剤は、共重合ポリアミド系樹脂の粉体で構成されている。共重合ポリアミド系樹脂は結晶性を有していてもよく、共重合ポリアミド系樹脂の融点又は軟化点は75〜160℃であってもよい。共重合ポリアミド系樹脂は、多元共重合体、例えば、二元又は三元共重合体であってもよい。さらに、共重合ポリアミド系樹脂は、C8−16アルキレン基を有する長鎖成分(C9−17ラクタム及びアミノC9−17アルカンカルボン酸から選択された少なくとも一種の成分)に由来する単位を含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装されたプリント基板などのデバイス(又は電子デバイス)を封止するのに適した粉末状封止剤、この粉末状封止剤を用いた封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水分、塵芥などから保護するため、半導体素子、プリント基板、太陽電池セルなどの精密部品(又は電子デバイス)を樹脂で封止することが行われている。この封止方法として、精密部品を金型キャビティ内に配置して樹脂を注入して封止する方法が知られている。この方法では、多くの場合、低粘度で流動性の高い熱硬化性の樹脂が使用されている。
【0003】
しかし、熱硬化性樹脂では、架橋剤などの添加剤が添加されるため、保存期間が短いだけでなく、金型キャビティ内に注入してから硬化までに比較的長時間を要し、生産性を向上できない。また、樹脂の種類によっては成形後に硬化処理が必要となり、生産性が低下する。
【0004】
また、熱可塑性樹脂を射出成形して精密部品を封止することも知られている。しかし、熱可塑性樹脂では比較的高温高圧でモールドする場合が多いため、基板や基板上に実装された電子部品が損傷しやすく信頼性を損なう。特開2000−133665号公報(特許文献1)には、金型キャビティ内に電子部品が実装されたプリント基板を配置し、160〜230℃に加熱溶融したポリアミド樹脂を2.5〜25kg/cmの圧力範囲で前記金型キャビティ内に注入し、電子部品が実装されたプリント基板を封止する方法が開示されている。この文献の実施例では、TRL社(フランス)のポリアミド樹脂・商品番号817を溶融温度190℃、圧力20kg/cmで金型内に注入してプリント基板を封止したことが記載されている。しかし、この方法でも電子部品に比較的高温高圧が作用するため、電子部品が損傷する場合がある。
【0005】
さらに、フィルム状の封止剤を用いてデバイスを封止することも知られている。特開2008−282906号公報(特許文献2)には、基板とフィルムとの間に太陽電池セルが樹脂で封止された太陽電池モジュールの製造方法に関し、前記基板と前記太陽電池セルとの間に前記基板の実質的に全面を覆う第1封止樹脂シートを配置し、前記フィルムと前記太陽電池セルとの間に前記基板の実質的に全面を覆う第2封止樹脂シートを配置して積層体を作製し、該積層体を複数段積み重ねるとともに、最上段の積層体の前記フィルムの外側に当て板を配置し、前記基板と前記フィルムとの間の空気を排出し、加熱して樹脂を溶融させて冷却して封止することが開示され、前記封止樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール及びポリウレタンからなる群から選択される一種の樹脂であることも記載されている。
【0006】
特開2009−99417号公報(特許文献3)には、前記基板上に形成された有機電子デバイスを封止するバリアフィルムを含み、前記有機電子デバイスと前記バリアフィルムとの間にホットメルト型部材が配置された有機電子デバイス封止パネルが開示され、前記ホットメルト型部材が水分捕捉剤及びワックスを含むこと、前記ホットメルト型部材の厚みが100μm以下の薄膜状であることが記載されている。また、特開2009−99805号公報(特許文献4)には、水分捕捉剤及びワックスを含む有機薄膜太陽電池用ホットメルト型部材が開示されている。これらの文献には、ホットメルト型部材の形状が、薄膜状、板状、不定形状などであってもよいことも記載されている。
【0007】
しかし、フィルム状の封止剤ではデバイスの凹凸部に対する追従性が劣るため、デバイスの細部を緊密に封止することが困難である。さらに、前記ホットメルト型部材はワックスを主要成分とするため、デバイスに対する密着性を高めて封止することが困難である。
【0008】
特開2001−234125号公報(特許文献5)には、塗装過程で高温の火炎に曝されても変色するのを防止するため、熱可塑性樹脂100重量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤およびフォスファイト系酸化防止剤をそれぞれ0.05〜2.0重量部の割合で含み、中位粒子径が50〜300μm、嵩比重が0.30g/ml以上、安息角が35度以下である溶射塗装用粉体塗料が開示されている。この文献には、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン−11樹脂、ナイロン−12樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、変性ポリエチレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂が例示され、ナイロン(ポリアミド)樹脂(EMS−CHEMIE AG社の商品名“グリルアミド”)を用いた例も記載されている。
【0009】
しかし、上記粉体塗料は高温で溶融して溶射されるため、電子部品の封止に利用すると、電子部品が損傷されやすく、デバイスの信頼性を損なうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−133665号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2008−282906号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2009−99417号公報(特許請求の範囲、[0024])
【特許文献4】特開2009−99805号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2001−234125号公報(特許請求の範囲、[0008]、実施例6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、電子デバイスを低温で緊密に封止可能な粉末状封止剤、この封止剤を用いた封止方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、凹凸部や狭い間隙があったとしても緊密に封止できる粉末状封止剤、この封止剤を用いた封止方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、電子デバイスを、水分、塵芥や衝撃などから有効に保護できる粉末状封止剤、この封止剤を用いた封止方法を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、前記粉末状封止剤で封止された電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、粉末状の共重合ポリアミド系樹脂を用いると、(1)封止・成形サイクルを短縮でき、(2)表面に凹凸があっても容易に追従してモールドできるとともに、(3)デバイス又は基板のサイズに制約されることなく、(4)薄膜でも封止又はモールドでき、(5)高い密着性及び封止性でデバイスや基板をモールドできることを見いだし、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明の粉末状封止剤は、デバイスをモールドして封止するための封止剤であって、共重合ポリアミド系樹脂を含んでいる。共重合ポリアミド系樹脂の融点又は軟化点は75〜160℃程度、例えば、融点90〜160℃程度であってもよい。共重合ポリアミド系樹脂は結晶性を有していてもよい。共重合ポリアミド系樹脂は、多元共重合体、例えば、二元共重合体〜四元共重合体(例えば、二元又は三元共重合体)であってもよい。さらに、共重合ポリアミド系樹脂は、C8−16アルキレン基(例えば、C10−14アルキレン基)を有する長鎖成分、例えば、C9−17ラクタム及びアミノC9−17アルカンカルボン酸から選択された少なくとも一種の成分に由来する単位を含んでいてもよい。例えば、共重合ポリアミド系樹脂は、ポリアミド11,ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612及びポリアミド1010から選択されたアミド形成成分に由来する単位を含んでいてもよく、コポリアミド6/11、コポリアミド6/12、コポリアミド66/11、コポリアミド66/12、コポリアミド610/11、コポリアミド612/11、コポリアミド610/12、コポリアミド612/12、コポリアミド1010/12、コポリアミド6/11/610、コポリアミド6/11/612、コポリアミド6/12/610、及びコポリアミド6/12/612から選択された少なくとも一種であってもよい。また、共重合ポリアミド系樹脂は、ポリアミド11,ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612及びポリアミド1010から選択されたアミド形成成分に由来する単位を必要であればハードセグメントとして含むポリアミドエラストマー(ポリアミドブロック共重合体)であってもよい。さらに、共重合ポリアミド系樹脂は、ラウロラクタム、アミノウンデカン酸及びアミノドデカン酸から選択された少なくとも一種の成分に由来する単位を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の方法では、デバイスの少なくとも一部に前記粉末状封止剤を適用(又は散布)し、粉末状封止剤を加熱溶融して冷却することにより、共重合ポリアミド系樹脂で被覆又はモールドされたデバイスを製造できる。そのため、本発明は、粉末状封止剤が熱融着して形成された共重合ポリアミド系樹脂の被膜で、少なくとも一部が被覆又はモールドされたデバイスも包含する。
【0018】
なお、本明細書において、「共重合ポリアミド系樹脂」とは、それぞれホモポリアミドを形成する複数のアミド形成成分の共重合体(コポリアミド)のみならず、複数のアミド形成成分により形成され、かつ種類の異なる複数の共重合体(コポリアミド)の混合物をも含む意味で用いる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、粉末状共重合ポリアミド系樹脂を用いるため、電子デバイスを低温で緊密に封止でき、デバイスの信頼性を損なうことがない。また、封止剤が粉粒体の形態であるため、凹凸部や狭い間隙があったとしても緊密に封止できる。そのため、電子デバイスを、水分、塵芥や衝撃などから有効に保護できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の粉末状封止剤(又は粉粒状封止剤)は、共重合ポリアミド系樹脂を含んでいる。共重合ポリアミド系樹脂には、共重合ポリアミド(熱可塑性共重合ポリアミド)とポリアミドエラストマーとが含まれる。
【0021】
熱可塑性共重合ポリアミドは、脂環族共重合ポリアミドであってもよいが、通常、脂肪族共重合ポリアミドである場合が多い。共重合ポリアミドは、ジアミン成分、ジカルボン酸成分、ラクタム成分、アミノカルボン酸成分を組み合わせて形成できる。なお、ジアミン成分及びジカルボン酸成分の双方の成分は、共重合ポリアミドのアミド結合を形成し、ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分はそれぞれ単独で共重合ポリアミドのアミド結合を形成可能である。そのため、一対の成分(ジアミン成分とジカルボン酸成分とを組合せた両成分)、ラクタム成分、及びアミノカルボン酸成分は、それぞれ、アミド形成成分ということもできる。このような観点から、共重合ポリアミドは、一対の成分(ジアミン成分とジカルボン酸成分とを組合せた両成分)、ラクタム成分、及びアミノカルボン酸成分から選択された複数のアミド形成成分の共重合により得ることができる。また、共重合ポリアミドは、一対の成分(ジアミン成分とジカルボン酸成分とを組合せた両成分)、ラクタム成分、及びアミノカルボン酸成分から選択された少なくとも一種のアミド形成成分と、このアミド形成成分と異種の(又は同種であって炭素数の異なる)アミド形成成分との共重合により得ることができる。また、ラクタム成分とアミノカルボン酸成分とは、炭素数及び分岐鎖構造が共通していれば等価な成分として取り扱ってもよい。そのため、ジアミン成分とジカルボン酸成分とを組合せた一対の成分を第1のアミド形成成分、ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分を第2のアミド形成成分とすると、例えば、共重合ポリアミドは、第1のアミド形成成分(ジアミン成分及びジカルボン酸成分)による共重合ポリアミドであって、ジアミン成分及びジカルボン酸成分のうち少なくとも一方の成分が炭素数の異なる複数の成分で構成された共重合ポリアミド;第1のアミド形成成分(ジアミン成分及びジカルボン酸成分)と、第2のアミド形成成分(ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分から選択された少なくとも一種の成分)との共重合ポリアミド;第2のアミド形成成分(ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分から選択された少なくとも一種の成分)で形成された共重合ポリアミドであって、ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分のうち一方の成分が炭素数の異なる複数の成分で構成された共重合ポリアミド;炭素数が同一又は互いに異なるラクタム成分とアミノカルボン酸成分との共重合ポリアミドなどであってもよい。
【0022】
ジアミン成分としては、脂肪族ジアミン又はアルキレンジアミン成分(例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ドデカンジアミンなどのC4−16アルキレンジアミンなど)などが例示できる。これらのジアミン成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいジアミン成分は、少なくともアルキレンジアミン(好ましくはC6−14アルキレンジアミン、さらに好ましくはC6−12アルキレンジアミン)を含んでいる。
【0023】
なお、必要であれば、ジアミン成分として、脂環族ジアミン成分(ジアミノシクロヘキサンなどのジアミノシクロアルカン(ジアミノC5−10シクロアルカンなど);ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4’−アミノシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロアルキル)アルカン[ビス(アミノC5−8シクロアルキル)C1−3アルカンなど];水添キシリレンジアミンなど)、芳香族ジアミン成分(メタキシリレンジアミンなど)を併用してもよい。ジアミン成分(例えば、脂環族ジアミン成分)は、アルキル基(メチル基、エチル基などのC1−4アルキル基)などの置換基を有していてもよい。
【0024】
アルキレンジアミン成分の割合は、ジアミン成分全体に対して、50〜100モル%、好ましくは60〜100モル%(例えば、70〜97モル%)、さらに好ましくは75〜100モル%(例えば、80〜95モル%)程度であってもよい。
【0025】
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸又はアルカンジカルボン酸成分(例えば、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸又はその水素添加物などの炭素数4〜36程度のジカルボン酸又はC4−36アルカンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいジカルボン酸成分は、C6−36アルカンジカルボン酸(例えば、C6−16アルカンジカルボン酸、好ましくはC8−14アルカンジカルボン酸など)を含んでいる。さらに、必要であれば、脂環族ジカルボン酸成分(シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などのC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)を併用してもよい。なお、ジアミン成分及びジカルボン酸成分として、脂環族ジアミン成分及び/又は脂環族ジカルボン酸成分と共に、前記例示の脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分を併用して得られた脂環族ポリアミド樹脂は、いわゆる透明ポリアミドとして知られており、透明性が高い。
【0026】
アルカンジカルボン酸成分の割合は、ジカルボン酸成分に対して、50〜100モル%、好ましくは60〜100モル%(例えば、70〜97モル%)、さらに好ましくは75〜100モル%(例えば、80〜95モル%)程度であってもよい。
【0027】
第1のアミド形成成分において、ジアミン成分は、ジカルボン酸成分1モルに対して0.8〜1.2モル、好ましくは0.9〜1.1モル程度の範囲で使用できる。
【0028】
ラクタム成分としては、例えば、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、ω−ヘプタラクタム、ω−オクタラクタム、ω−デカンラクタム、ω−ウンデカンラクタム、ω−ラウロラクタム(又はω−ラウリンラクタム)などのC4−20ラクタムなどが例示でき、アミノカルボン酸成分としては、例えば、ω−アミノデカン酸、ω−アミノウンデカン酸、ω−アミノドデカン酸などのC6−20アミノカルボン酸などが例示できる。これらのラクタム成分及びアミノカルボン酸成分も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
好ましいラクタム成分は、C6−19ラクタム、好ましくはC8−17ラクタム、さらに好ましくはC10−15ラクタム(ラウロラクタムなど)を含んでいる。また、好ましいアミノカルボン酸は、アミノC6−19アルカンカルボン酸、好ましくはアミノC8−17アルカンカルボン酸、さらに好ましくはアミノC10−15アルカンカルボン酸(アミノウンデカン酸、アミノドデカン酸など)を含んでいる。
【0030】
なお、共重合ポリアミドは、少量のポリカルボン酸成分及び/又はポリアミン成分を用い、分岐鎖構造を導入したポリアミドなどの変性ポリアミドであってもよい。
【0031】
第1のアミド形成成分(ジアミン成分とジカルボン酸成分とを組合せた両成分)、第2のアミド形成成分(ラクタム成分、及びアミノカルボン酸成分から選択された少なくとも一種のアミド形成成分)との割合(モル比)は、前者/後者=100/0〜0/100の範囲から選択でき、例えば、90/10〜0/100(例えば、80/20〜5/95)、好ましくは75/25〜10/90(例えば、70/30〜15/85)、さらに好ましくは60/40〜20/80程度であってもよい。
【0032】
さらに、共重合ポリアミドは、長鎖脂肪鎖(長鎖アルキレン基又はアルケニレン基)を有する長鎖成分を構成単位として含む(又は長鎖成分に由来する単位を含む)のが好ましい。このような長鎖成分としては、炭素数8〜36程度の長鎖脂肪鎖又はアルキレン基(好ましくはC8−16アルキレン基、さらに好ましくはC10−14アルキレン基)を有する成分が含まれる。長鎖成分としては、例えば、C8−18アルカンジカルボン酸(好ましくはC10−16アルカンジカルボン酸、さらに好ましくはC10−14アルカンジカルボン酸など)、C9−17ラクタム(好ましくはラウロラクタムなどのC11−15ラクタム)及びアミノC9−17アルカンカルボン酸(好ましくはアミノウンデカン酸、アミノドデカン酸などのアミノC11−15アルカンカルボン酸)から選択された少なくとも一種の成分が例示できる。これらの長鎖成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの長鎖成分のうち、ラクタム成分及び/又はアミノアルカンカルボン酸成分、例えば、ラウロラクタム、アミノウンデカン酸及びアミノドデカン酸から選択された少なくとも一種の成分を用いる場合が多い。このような成分由来の単位を含む共重合ポリアミドは、耐水性が高いとともに、電子デバイスに対する密着性、耐摩耗性及び耐衝撃性に優れており、電子デバイスを有効に保護できる。
【0033】
長鎖成分の割合は、共重合ポリアミドを形成する単量体成分全体に対して、10〜100モル%(例えば、25〜95モル%)、好ましくは30〜90モル%(例えば、40〜85モル%)、さらに好ましくは50〜80モル%(例えば、55〜75モル%)程度であってもよい。
【0034】
さらに、共重合ポリアミドは、前記アミド形成成分の多元共重合体、例えば、二元共重合体〜五元共重合体などであってもよいが、通常、二元共重合体〜四元共重合体、特に二元共重合体又は三元共重合体である場合が多い。
【0035】
共重合ポリアミドは、例えば、ポリアミド11,ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612及びポリアミド1010から選択されたアミド形成成分を構成単位として含む(又は上記アミド形成成分に由来する単位を含む)場合が多い。共重合ポリアミドは、これらの複数のアミド形成成分の共重合体であってもよく、上記1又は複数のアミド形成成分と、他のアミド形成成分(ポリアミド6及びポリアミド66から選択された少なくとも1つのアミド形成成分など)との共重合体であってもよい。具体的には、共重合ポリアミドとしては、例えば、コポリアミド6/11、コポリアミド6/12、コポリアミド66/11、コポリアミド66/12、コポリアミド610/11、コポリアミド612/11、コポリアミド610/12、コポリアミド612/12、コポリアミド1010/12、コポリアミド6/11/610、コポリアミド6/11/612、コポリアミド6/12/610、コポリアミド6/12/612などが挙げられる。なお、これらの共重合ポリアミドにおいて、スラッシュ「/」で分離された成分はアミド形成成分を示している。
【0036】
ポリアミドエラストマー(ポリアミドブロック共重合体)としては、ハードセグメント(又はハードブロック)としてのポリアミドとソフトセグメント(又はソフトブロック)とで構成されたポリアミドブロック共重合体、例えば、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体、ポリアミド−ポリエステルブロック共重合体、ポリアミド−ポリカーボネートブロック共重合体などが挙げられる。
【0037】
ハードセグメントを構成するポリアミドとしては、1又は複数の前記アミド形成成分の単独又は共重合体(ホモポリアミド、コポリアミド)であってもよい。ハードセグメントとしてのホモポリアミドは、前記例示の長鎖成分を構成単位として含んでいてもよく、好ましい長鎖成分は前記と同様である。代表的なホモポリアミドは、ポリアミド11,ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012などが挙げられる。また、ハードセグメントとしてのコポリアミドは、前記例示のコポリアミドと同様である。これらのポリアミドのうち、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010、ポリアミド1012などのホモポリアミドが好ましい。
【0038】
代表的なポリアミドエラストマーは、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体である。ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体において、ポリエーテル(ポリエーテルブロック)としては、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリC2−6アルキレングリコール、好ましくはポリC2−4アルキレングリコール)などが挙げられる。
【0039】
このようなポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体としては、例えば、反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの共重縮合により得られるブロック共重合体、例えば、ポリエーテルアミド[例えば、ジアミン末端を有するポリアミドブロックとジカルボキシル末端を有するポリアルキレングリコールブロック(又はポリオキシアルキレンブロック)とのブロック共重合体、ジカルボキシル末端を有するポリアミドブロックとジアミン末端を有するポリアルキレングリコールブロック(又はポリオキシアルキレンブロック)とのブロック共重合体など]、ポリエーテルエステルアミド[ジカルボキシル末端を有するポリアミドブロックとジヒドロキシ末端を有するポリアルキレングリコールブロック(又はポリオキシアルキレンブロック)とのブロック共重合体など]などが挙げられる。なお、市販のポリアミドエラストマーは、通常、アミノ基をほとんど有していない場合が多い。
【0040】
ポリアミドエラストマー(ポリアミドブロック共重合体)において、ソフトセグメント(ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリカーボネートブロックなど)の数平均分子量は、例えば、100〜10000程度の範囲から選択でき、好ましくは300〜6000(例えば、300〜5000)、さらに好ましくは500〜4000(例えば、500〜3000)、特に1000〜2000程度であってもよい。
【0041】
また、ポリアミドエラストマー(ポリアミドブロック共重合体)において、ポリアミドブロック(ポリアミドセグメント)と、ソフトセグメントブロックとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=75/25〜10/90、好ましくは70/30〜15/85、さらに好ましくは60/40〜20/80(例えば、50/50〜25/75)程度であってもよい。
【0042】
共重合ポリアミド系樹脂の数平均分子量は、例えば、5000〜200000程度の範囲から選択でき、例えば、6000〜100000、好ましくは7000〜70000、さらに好ましくは8000〜40000程度であってもよい。共重合ポリアミド系樹脂の分子量は、HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)を溶媒とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定できる。
【0043】
共重合ポリアミド系樹脂は、非晶性であってもよく、結晶性を有していてもよい。
【0044】
なお、非晶性共重合ポリアミド系樹脂の熱溶融性は、示差走査熱量計により軟化温度として測定でき、結晶性の共重合ポリアミド系樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0045】
共重合ポリアミド系樹脂(又は共重合ポリアミド又はポリアミドエラストマー)の融点又は軟化点は、75〜160℃(例えば、80〜150℃)、好ましくは90〜140℃(例えば、95〜135℃)、さらに好ましくは100〜130℃程度であってもよく、通常、90〜160℃(例えば、100〜150℃)程度である。共重合ポリアミド系樹脂が低い融点又は軟化点を有するため、溶融してデバイス表面の凹凸部(段差のコーナー部など)などの表面形状に追従させるのに有用である。なお、共重合ポリアミド系樹脂の融点は、各成分が相溶し、DSCで単一のピークが生じる場合、単一のピークに対応する温度を意味し、各成分が非相溶であり、DSCで複数のピークが生じる場合、複数のピークのうち高温側のピークに対応する温度を意味する。
【0046】
共重合ポリアミド系樹脂は、デバイス表面の凹凸部などの表面形状に追従するとともに、隙間などに侵入可能とするため、高い溶融流動性を有するのが好ましい。共重合ポリアミド系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、温度160℃及び荷重2.16kgにおいて、1〜350g/10分、好ましくは3〜300g/10分、さらに好ましくは5〜250g/10分程度であってもよい。
【0047】
共重合ポリアミド系樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、共重合ポリアミド系樹脂には、密着性などの特性を損なわない範囲で、ホモポリアミドを添加してもよい。ホモポリアミドの割合は、共重合ポリアミド系樹脂100重量部に対して、30重量部以下(例えば、1〜25重量部)、好ましくは2〜20重量部、さらに好ましくは3〜15重量部程度であってもよい。
【0048】
共重合ポリアミド系樹脂の粉末状混合物は、各ポリアミド粒子の混合物であってもよく、各ポリアミドの溶融混合体の粒子の混合物であってもよい。このような混合物の形態の共重合ポリアミド系樹脂において、各ポリアミドは互いに相溶性を有していてもよい。
【0049】
本発明の粉末状封止剤の共重合ポリアミド系樹脂粒子は、必要により、種々の添加剤、例えば、フィラー、安定剤(耐熱安定剤、耐候安定剤など)、着色剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、熱伝導剤などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの添加剤のうち、安定剤、熱伝導剤などが汎用される。
【0050】
上記のように、本発明の粉末状封止剤は、共重合ポリアミド系樹脂、複数の共重合ポリアミド系樹脂の混合物、又は共重合ポリアミド系樹脂と他の成分(ホモポリアミド、添加剤など)とを含む混合物(共重合ポリアミド系樹脂組成物)の粉粒体であってもよい。
【0051】
粉末状封止剤(又は粉粒状封止剤)の共重合ポリアミド系樹脂粒子の形態は特に制限されない。また、粉末状封止剤の共重合ポリアミド系樹脂粒子の平均粒子径は、デバイス表面で流動可能な粉体流動性を有している限り特に制限されず、例えば、1〜500μm(例えば、5〜300μm)、好ましくは10〜250μm(例えば、25〜200μm)、さらに好ましくは50〜200μm(例えば、75〜150μm)程度であってもよく、通常80〜90μm程度である。なお、平均粒子径は、レーザー回折法(光散乱法)を利用した測定装置、例えば、LA920(HORIBA製)を用いて測定できる。
【0052】
粉体状又は粉粒状封止剤は、慣用の方法、例えば、凍結粉砕法などの方法で粉砕し、必要により篩いなどを用いて分級することにより製造してもよい。
【0053】
粉体状封止剤は共重合ポリアミド系樹脂を含んでいればよく、必要であれば、他の樹脂、例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂などを含んでいてもよく、これらの樹脂粒子との混合物であってもよい。他の樹脂の割合は、例えば、共重合ポリアミド系樹脂100重量部に対して、100重量部以下(例えば、1〜80重量部程度)、好ましくは2〜70重量部、さらに好ましくは2〜50重量部、特に30重量部以下(例えば、3〜20重量部程度)であってもよい。
【0054】
共重合ポリアミド系樹脂を粉粒体の形態で封止剤として用いると、(1)熱硬化性樹脂に比べて封止・成形サイクルを短縮できる。また、(2)フィルム状封止剤では表面の凹凸(特に、激しい表面の凹凸)に追従できないのに対して、粉末状の封止剤では表面の凹凸に容易に追従して被覆又は封止でき、(3)射出成形(特に低圧射出成形)やホットメルト樹脂を用いた成形では、金型との関係で、デバイス又は基板のサイズに制約があり、せいぜい10cm×10cm程度のサイズのデバイス又は基板しか封止できないのに対して、粉末状の封止剤ではデバイスのサイズに制約されることなく封止できる。さらに、(4)前記射出成形やホットメルト樹脂を用いた成形と異なり、粉末状の封止剤では薄膜を形成してモールドでき、軽量でコンパクト化でき、(5)高い密着性及び封止性でデバイスをモールドできる。そのため、電子デバイスなどに熱融着させて、電子デバイスを防水・防湿でき、塵芥の付着による汚染などが保護できる。特に、粉末状封止剤が共重合ポリアミド系樹脂を含むため、デバイスに対する密着性を向上でき、デバイスに対して高い耐衝撃性及び耐摩耗性を付与でき、デバイスに対する保護効果を高めることができる。
【0055】
本発明の方法では、デバイスの少なくとも一部に前記粉末状封止剤を適用(又は散布)する工程と、粉末状封止剤を加熱溶融する工程と、冷却する工程とを経ることにより、共重合ポリアミド系樹脂で被覆又はモールドされたデバイスを製造できる。
【0056】
前記デバイスとしては、モールド又は封止が必要な種々の有機又は無機デバイス、例えば、半導体素子、エレクトロルミネッセンス(EL)素子、発光ダイオード、太陽電池セルなどの精密部品、各種電子部品又は電子素子などの部品を搭載した配線回路基板(プリント基板)などの電子部品(特に、精密電子部品又は電子デバイスなど)が例示できる。
【0057】
適用工程において、粉末状封止剤は、デバイス全体に適用又は散布してもよく、必要によりマスキングして所定の部位だけに適用又は散布してもよい。粉末状封止剤は、デバイスを粉末状封止剤中に浸漬してデバイスに付着させてもよく、所定部材上に載置したデバイスに粉末状封止剤を散布することによりデバイスに付着させてもよい。さらに、デバイスの所定部、例えば、立ち上がり部又はコーナー部などには散布量又は付着量を多くしてもよい。デバイスは、粉末状封止剤を一時的に保持するため、揮発性液体で被覆してもよい。また、必要によりデバイスを加熱し(例えば、封止剤の融点又は軟化点以上の温度に加熱し)、粉末状封止剤を付着(又は部分的に融着)させてもよい。この場合、過剰な粉末状封止剤は、振動、回転、風力などの方法で除去してもよい。また、デバイスに均一に粉末状封止剤を付着させるため、容器底部の多孔板から空気を送り、容器中の粉末状封止剤を流動状態に保ち、この流動床に、必要により加熱したデバイスを浸漬させることにより、粉末状封止剤を散布又は付着してもよい。さらには、デバイスの細部にも粉末状封止剤を付着させるため、デバイスを回転させながら粉末状封止剤を散布又は付着させてもよい。粉末状封止剤の使用量は、モールド又は被覆量に応じて選択でき、例えば、0.1〜100mg/cm、好ましくは0.5〜50mg/cm、さらに好ましくは1〜30mg/cm程度であってもよい。
【0058】
加熱工程では、デバイスの耐熱性に応じて粉末状封止剤を加熱して溶融することにより前記共重合ポリアミド系樹脂をデバイスに溶着できる。加熱温度は、共重合ポリアミド系樹脂の融点や軟化点に応じて、例えば、75〜200℃、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは100〜175℃(例えば、110〜150℃)程度であってもよい。加熱は、空気中、不活性ガス雰囲気中で行うことができる。加熱はオーブン中で行うことができ、必要であれば、超音波加熱、高周波加熱(電磁誘導加熱)を利用してもよい。加熱溶融工程は、常圧又は加圧下で行ってもよく、必要であれば、減圧条件下で行い脱泡してよい。
【0059】
さらに、必要であれば、前記適用工程と加熱工程とを繰り返してもよい。また、上記のようにしてデバイスの一方の面(例えば、上面)に共重合ポリアミド系樹脂被膜を形成した後、デバイスの他方の面(例えば、底面)に粉末状封止剤を適用又は散布して加熱融着させ、デバイスの端面も含めて両面を共重合ポリアミド系樹脂被膜でモールドして封止してもよい。
【0060】
冷却工程では、融着した共重合ポリアミド系樹脂を自然冷却してもよく、段階的又は連続的に冷却したり、急冷してもよい。
【0061】
このような工程を経ることにより、粉末状封止剤が熱融着して形成された共重合ポリアミド系樹脂の被膜で、少なくとも一部が被覆又はモールドされたデバイスを得ることができる。デバイスのモールド部位は、通常、損傷しやすい部位、例えば、電子素子の搭載部位、配線部位である場合が多い。
【0062】
本発明では、比較的低温で粉末状封止剤を融着できるため、デバイスに熱的損傷を与えることが少なく、デバイスの信頼性を向上できる。また、射出成形などと異なり、高い圧力がデバイスに作用しないため、圧力によりデバイスが損傷することがない。そのため、高い信頼性でデバイスをモールド及び封止することができる。しかも、短時間内に加熱・冷却できるため、モールド又は封止デバイスの生産性を大きく向上できる。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における各評価項目の評価方法は以下の通りである。
【0064】
[密封性]
フラットな基板面での密封性、及びフラットな基板面から直角に立ち上がる側面(高さ:2mm又は20mm)を有する凸部での密封性を、それぞれ以下の基準で評価した。
5:完全に被覆されている
4:ほぼ完全に被覆されているが、一部空気の進入が見られる
3:半分が浮いている
2:一部被塗物と接着しているが、殆どが浮いている
1:塗膜が完全に浮いている。
【0065】
[剥離試験]
実施例及び比較例の封止剤で封止されたガラスエポキシ製基板を用いて、碁盤目剥離試験により接着性を評価した。
【0066】
[耐水試験]
実施例及び比較例の封止剤で封止されたガラスエポキシ製基板を、23℃の恒温層に100時間浸漬した後、碁盤目剥離試験により耐水性を評価した。
【0067】
実施例1
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1038p1、エボニック・デグサ社製、C10−14アルキレン基を含有、平均粒子径80μm、粒度0.5〜160μm、融点125℃(DSC)、メルトフローレート15g/10分(温度160℃及び荷重2.16kg))を、金網(開口径200μm)を用い、ガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に均等に散布した後、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0068】
実施例2
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1051、エボニック・デグサ社製、C10−14アルキレン基を含有、融点130℃(DSC)、メルトフローレート15g/10分(温度160℃及び荷重2.16kg))を粉砕し、篩いで分級し、平均粒子径80μm、粒度0.5〜160μmの粉末状樹脂粒子を得た。この樹脂粒子を金網(開口径250μm)を用い、ガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に均等に散布した後、温度180℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0069】
実施例3
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1333p1、エボニック・デグサ社製、C10−14アルキレン基を含有、平均粒子径80μm、粒度0.5〜160μm、融点105℃(DSC)、メルトフローレート15g/10分(温度160℃及び荷重2.16kg))を、金網(開口径200μm)を用い、ガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に均等に散布した後、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0070】
実施例4
共重合ポリアミド(VESTAMELT 4680、エボニック・デグサ社製、C10−14アルキレン基を含有、平均粒子径80μm、粒度0.5〜160μm、融点105℃(DSC)、メルトフローレート35g/10分(温度160℃及び荷重2.16kg))を、金網(開口径200μm)を用い、ガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に均等に散布した後、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0071】
実施例5
共重合ポリアミド(VESTAMELT Z2131、エボニック・デグサ社製、C10−14アルキレン基を含有、平均粒子径80μm、粒度0.5〜160μm、融点90℃(DSC)、メルトフローレート160g/10分(温度160℃及び荷重2.16kg))を、金網(開口径300μm)を用い、ガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に均等に散布した後、温度130℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0072】
実施例6
電子部品(高さ20mm)が実装されたガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)を170℃で2分間加熱した後、共重合ポリアミド(VESTAMELT X1038p1、エボニック・デグサ社製、C10−14アルキレン基を含有、平均粒子径80μm、粒度0.5〜160μm、融点125℃(DSC)、メルトフローレート15g/10分(温度160℃及び荷重2.16kg))を、金網(開口径200μm)を通じて散布し、過剰の樹脂粒子を取り除き、温度170℃の雰囲気中で2分間加熱し、電子部品も含め、透明な樹脂でコーティングされた実装基板を得た。
【0073】
比較例1
ポリアミド12(DAIAMID A1709、エボニック・デグサ社製、平均粒子径80μm、粒度0.5〜160μm、融点178℃(DSC)、メルトフローレート70g/10分(温度190℃及び荷重2.16kg))を、ガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に均等に散布した後、温度220℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0074】
実施例及び比較例の封止剤に関し、密封性、剥離性、及び耐水性を評価した。結果を表1に示す。なお、表中、剥離試験及び耐水試験における各数値は、碁盤目剥離試験において100個の碁盤目のうち剥離した碁盤目の数を示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例では、平坦部及び凸部における高い密封性を示し、密着性及び耐水性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、半導体素子、EL素子、太陽電池セルなどの電子素子又は電子部品、各種電子部品又は電子素子を搭載したプリント基板などを低温でモールド又は封止するのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスをモールドして封止するための封止剤であって、共重合ポリアミド系樹脂を含む粉末状封止剤。
【請求項2】
共重合ポリアミド系樹脂の融点又は軟化点が75〜160℃である請求項1記載の粉末状封止剤。
【請求項3】
共重合ポリアミド系樹脂が結晶性を有する請求項1又は2記載の粉末状封止剤。
【請求項4】
共重合ポリアミド系樹脂が結晶性を有するとともに、融点90〜160℃を有する請求項1〜3のいずれかに記載の粉末状封止剤。
【請求項5】
共重合ポリアミド系樹脂が多元共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の粉末状封止剤。
【請求項6】
共重合ポリアミド系樹脂が二元共重合体〜四元共重合体である請求項1〜5のいずれかに記載の粉末状封止剤。
【請求項7】
共重合ポリアミド系樹脂が、C8−16アルキレン基を有する長鎖成分由来の単位を含む請求項1〜6のいずれかに記載の粉末状封止剤。
【請求項8】
共重合ポリアミド系樹脂が、C9−17ラクタム及びアミノC9−17アルカンカルボン酸から選択された少なくとも一種の成分由来の単位を含む請求項1〜7のいずれかに記載の粉末状封止剤。
【請求項9】
共重合ポリアミド系樹脂が、ポリアミド11,ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612及びポリアミド1010から選択されたアミド形成成分に由来する単位を含む請求項1〜8のいずれかに記載の粉末状封止剤。
【請求項10】
共重合ポリアミド系樹脂が、コポリアミド6/11、コポリアミド6/12、コポリアミド66/11、コポリアミド66/12、コポリアミド610/11、コポリアミド612/11、コポリアミド610/12、コポリアミド612/12、コポリアミド1010/12、コポリアミド6/11/610、コポリアミド6/11/612、コポリアミド6/12/610、及びコポリアミド6/12/612から選択された少なくとも一種である請求項1〜9のいずれかに記載の粉末状封止剤。
【請求項11】
共重合ポリアミド系樹脂が、ラウロラクタム、アミノウンデカン酸及びアミノドデカン酸から選択された少なくとも一種の成分に由来する単位を含む請求項1〜10のいずれかに記載の粉末状封止剤。
【請求項12】
デバイスの少なくとも一部に請求項1〜11のいずれかに記載の粉末状封止剤を適用し、粉末状封止剤を加熱溶融して冷却し、共重合ポリアミド系樹脂で被覆又はモールドされたデバイスを製造する方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の粉末状封止剤が熱融着して形成された共重合ポリアミド系樹脂の被膜で、少なくとも一部が被覆又はモールドされたデバイス。

【公開番号】特開2012−67176(P2012−67176A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212536(P2010−212536)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000108982)ダイセル・エボニック株式会社 (31)
【Fターム(参考)】