説明

粉末用表面改質剤ならびにそれを含む磁性塗料および非磁性塗料

【課題】磁性塗料中の磁性粉末等の粉末の分散性を高めるために粉末表面を改質するための手段の提供。
【解決手段】下記化合物(a)および(b)からなる群から選ばれる少なくとも一種の環状化合物を含む粉末用表面改質剤。上記表面改質剤を含む磁性塗料および非磁性塗料。
化合物(a):下記置換基Aおよび置換基Bが置換したベンゼン
化合物(b):下記置換基Aおよび置換基Bが置換したシクロヘキサン
置換基A:ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基
置換基B:アルキル基および/またはアルコキシル基(但し、化合物(a)において、アルコキシル基は置換基Aに対しメタ位に置換し、メチル基を除く置換基Bは、置換基Aが置換する炭素原子と隣接する炭素原子に置換することはない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末用表面改質剤に関し、詳しくは、磁性塗料および非磁性塗料における粉末の分散性を改善し得る粉末用表面改質剤に関する。
更に本発明は、前記粉末用表面改質剤を含む磁性塗料および非磁性塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報を高速に伝達するための手段が著しく発達し、莫大な情報をもつ画像およびデータ転送が可能となった。このデータ転送技術の向上とともに、情報を記録、再生および保存するための記録再生装置および記録媒体には更なる高密度記録化が要求されている。
【0003】
高密度記録領域において良好な電磁変換特性を得るためには、微粒子磁性体を使用するとともに、微粒子磁性体を高度に分散させ、磁性層表面の平滑性を高めることが有効であることが知られている。また、磁性体の分散性を高めることにより、高い光沢度を有する磁気記録媒体を得ることもできる。更に、磁性層表面の平滑性を高める手段としては、磁性層の下層に位置する非磁性層に含まれる非磁性粉末の分散性を高めることも有効である。
【0004】
磁性粉末等の磁気記録媒体に使用される粉末の分散性を高める手段としては、例えば特許文献1に記載されているように、SO3Na基のような極性基を結合剤に含有させる方法が広く用いられている。また、分散効果を付与するための添加剤として、ホスホン酸、リン酸類等が知られている。
【特許文献1】特開2003−132531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分散性向上のためには、バインダー(高分子)を磁性粉末等の粉末表面に効率的に吸着させることが重要である。また、遊離バインダーは磁気記録媒体において走行時のヘッド汚れの原因となるため、ヘッド汚れを低減し走行耐久性を確保するためにもバインダーの粉末表面への吸着率を高めることが求められている。特許文献1に記載されているように結合剤へ極性基を導入することは、バインダーを磁性粉末等の粉末表面に効率的に吸着させるための有効な手段であるが、結合剤への極性基量が過剰になると、逆に分散性が低下するおそれがある。そこで、分散剤を使用することが考えられるが、前述のホスホン酸、リン酸類等による分散性向上効果は十分なものではない。
【0006】
そこで本発明の目的は、磁性塗料中の磁性粉末等の粉末の分散性を高めるために粉末表面を改質するための手段、より詳しくは、粉末表面を改質することにより粉末へのバインダー吸着量を高めることができる粉末用表面改質剤、ならびに上記粉末用表面改質剤を含む磁性塗料および非磁性塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
粉末と結合剤を含む系において粉末の分散性を高めるためには、粉末と結合剤との吸着性を高めることが重要である。しかし、磁性層に使用される結合剤は一般に疎水性が高いのに対し、磁性粉末表面は親水性が高いため磁性粉末表面に吸着しにくい。そこで本発明者らは、磁性粉末表面を疎水化する手段を見出すために鋭意検討を重ねた結果、ベンゼンおよびシクロヘキサンに親水性の極性基(ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基)と疎水性置換基(アルキル基および/またはアルコキシル基)を導入することにより、磁性粉末への結合剤吸着量を増加させ磁性粉末の分散性を向上できることを新たに見出した。この理由を、本発明者らは以下のように推察している。
上記環状化合物は、上記親水性極性基と磁性粉末表面との親水−親水相互作用により磁性粉末表面に高度に吸着し得る。更に、上記疎水性置換基と結合剤との疎水−疎水相互作用により結合剤に対し良好な親和性を示すことができる。ベンゼン環およびシクロヘキサン環は、それ自体が疎水性ではあるが、上記疎水性置換基を環部分に導入することにより、磁性粉末表面周辺のより広い空間を疎水化することが可能となり、結果として磁性粉末と結合剤との親和性を顕著に向上できると考えられる。また、前記環状化合物により非磁性粉末への結合剤の吸着量が増加させ得る理由も、上記と同様または類似の理由によるものと推察される。即ち、上記環状化合物は、粉末と結合剤との間で界面活性剤的な作用を示し粉末と結合剤との親和性を高めることができ、これにより粉末を高度に分散させることができると考えられる。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
【0008】
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]下記化合物(a)および(b)からなる群から選ばれる少なくとも一種の環状化合物を含む粉末用表面改質剤。
化合物(a):下記置換基Aおよび置換基Bが置換したベンゼン
化合物(b):下記置換基Aおよび置換基Bが置換したシクロヘキサン
置換基A:ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基
置換基B:アルキル基および/またはアルコキシル基(但し、化合物(a)において、アルコキシル基は置換基Aに対しメタ位に置換し、メチル基を除くアルキル基は、置換基Aが置換する炭素原子と隣接する炭素原子に置換することはない。)
[2]前記化合物(a)は、置換基Aを、置換基Bに対しメタ位またはパラ位に有する[1]に記載の粉末用表面改質剤。
[3]前記化合物(b)は、置換基Aを、置換基Bに対し4位に有する[1]に記載の粉末用表面改質剤。
[4]置換基Bは、分岐アルキル基である[1]〜[3]のいずれかに記載の粉末用表面改質剤。
[5]前記粉末は、磁性粉末である[1]〜[4]のいずれかに記載の粉末用表面改質剤。
[6]前記磁性粉末は、強磁性六方晶フェライト粉末または強磁性金属粉末である[5]に記載の粉末用表面改質剤。
[7]磁性塗料用分散剤として使用される[5]または[6]に記載の粉末用表面改質剤。
[8]前記粉末は、非磁性粉末である[1]〜[4]のいずれかに記載の粉末用改質剤。
[9]非磁性塗料用分散剤として使用される[8]に記載の粉末用表面改質剤。
[10][1]〜[4]のいずれかに記載の粉末用表面改質剤と、磁性粉末と、結合剤とを含む磁性塗料。
[11]前記磁性粉末は、強磁性六方晶フェライト粉末または強磁性金属粉末である[10]に記載の磁性塗料。
[12]前記結合剤は、スルホン酸基含有結合剤である[10]または[11]に記載の磁性塗料。
[13]磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液として使用される[10]〜[12]のいずれかに記載の磁性塗料。
[14][1]〜[4]のいずれかに記載の粉末用表面改質剤と、非磁性粉末と、結合剤とを含む非磁性塗料。
[15]前記結合剤は、スルホン酸基含有結合剤である[14]に記載の非磁性塗料。
[16]磁気記録媒体の非磁性層形成用塗布液として使用される[14]または[15]に記載の非磁性塗料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粉末の表面を改質し、粉末へのバインダー吸着量を高めることができ、これにより磁性塗料中の磁性粉末および非磁性塗料中の非磁性粉末の分散性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[粉末用表面改質剤]
本発明の粉末用表面改質剤は、下記化合物(a)および(b)からなる群から選ばれる少なくとも一種の環状化合物を含む。
化合物(a):下記置換基Aおよび置換基Bが置換したベンゼン
化合物(b):下記置換基Aおよび置換基Bが置換したシクロヘキサン
置換基A:ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基
置換基B:アルキル基および/またはアルコキシル基(但し、化合物(a)において、アルコキシル基は置換基Aに対しメタ位に置換し、メチル基を除くアルキル基は、置換基Aが置換する炭素原子と隣接する炭素原子に置換することはない。)
本発明の粉末用表面改質剤(以下、単に「表面改質剤」ともいう)は、前記環状化合物とともに他の表面改質効果を有する化合物を含むこともできるが、1種または2種以上の前記環状化合物からなることが好ましい。例えば、後述する実施例で示すように、本発明の表面改質剤の有無により塗料中の粉末への結合剤吸着量が変化することによって、本発明の表面改質剤が粉末表面を改質していることが確認できる。
以下、化合物(a)および(b)について更に詳細に説明する。
【0011】
化合物(a)
置換基Aは、ヒドロキシル基(−OH)および/またはカルボキシル基(−COOH)である。前記ベンゼン1分子あたりのヒドロキシル基およびカルボキシル基から選ばれる基の数は、少なくとも1つであり、好ましくは1〜3、より好ましくは1または2、最も好ましくは1である。
【0012】
置換基Bは、アルキル基および/またはアルコキシル基である。前記ベンゼン1分子中のアルキル基およびアルコキシル基から選ばれる基の数は、少なくとも1つであり、好ましくは1〜3、最も好ましくは1である。
【0013】
アルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、置換基を有していても無置換であってもよい。アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基を挙げることができる。更に、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
【0014】
前記アルキル基としては、結合剤と粉末との親和性を向上させるためには、立体障害が大きく広い空間を疎水化することが可能である分岐アルキル基、具体的には、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、sec−ブチル基等が好ましい。
【0015】
アルコキシル基としては、好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基を挙げることができる。
【0016】
但し、化合物Aにおいて、置換基Bがメチル基以外のアルキル基である場合、置換基Bは、置換基Aが置換する炭素原子と隣接する炭素原子に置換することはない。即ち、上記態様(置換基Bがメチル基以外のアルキル基である場合)において置換基Aは置換基Bに対しオルト位に置換することはない。これは、オルト位に置換した場合には疎水性基である置換基Aが粉末方向に向いてしまうため、粉末とベンゼンとの間に立体反発が生じ、結合剤との親和性を低下させてしまうからである。ただしメチル基は大きな立体障害はないため、置換基Aに対しオルト位に導入することも可能である。立体障害により広い空間を疎水化する点からは、アルキル基は置換基Bに対しパラ位に位置することが好ましい。
【0017】
但し、化合物(a)において置換基Bがアルコキシル基である場合、アルコキシル基は置換基Aに対しメタ位に置換するものとする。アルコキシル基は電子供与能が高い。したがって、ベンゼン環上でアルコキシル基が置換基Aに対しオルト位およびパラ位に位置すると置換基Aの酸性度を大きく低下させる。置換基Aの電子状態の変化は粉末表面との親和性に影響を及ぼすため、親水−親水相互作用の観点からアルコキシル基は置換基Aの電子状態を大きく変化させないメタ位に導入することとする。一方、アルキル基はアルコキシル基と比べて電子供与性が低く、置換基Aに対しオルト位またはパラ位に導入することにより粉末表面との親和性が大きく変化することは少ないが、置換基Aの酸性度を維持する点からは、メタ位に位置することが好ましい。
【0018】
化合物(b)
化合物(b)が有する置換基A、置換基Bの詳細は、化合物(a)が有する置換基A、Bと同様である。化合物(b)においては、置換基Aは、置換基Bに対しどの位置に置換していてもよいが、より広い空間を疎水化し粉末と結合剤との親和性を効果的に高めるためには、置換基Aは、置換基Bに対し4位に位置することが好ましい。
【0019】
化合物(a)および化合物(b)は、置換基A、B以外の置換基を有していてもよいが、立体反発の影響等を考慮すると、置換基A、B以外の置換基を有さないことが好ましい。
【0020】
前記環状化合物の好ましい具体例としては、後述の実施例で使用されている化合物を挙げることができる。
【0021】
前記環状化合物は、公知の方法により容易に合成可能であり、市販品として入手可能なものもある。
【0022】
粉末に対する前記環状化合物の使用量は適宜設定することができるが、粉末含有溶液中の粉末に対する環状化合物の添加量が過剰になると、粉末の機能を発揮し得る量の濃度を確保することが困難となる場合がある。また、磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液中に環状化合物を過剰量添加すると、膜が可塑化し、膜剥がれが生じる場合があるため過剰量の導入は好ましくない。この観点から、前記環状化合物の使用量は、好ましくは磁性粉末等の粉末100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは2〜8質量部である。本発明の表面改質剤と粉末との混合方法については後述する。
【0023】
本発明の表面改質剤は、磁性粉末や非磁性粉末等の粉末表面を改質することにより、より詳しくは、粉末と結合剤との親和性を高めることにより、塗料中の粉末の分散性を高めることができる。従って、本発明の表面改質剤は、磁気記録媒体形成用塗料における分散剤として使用することが好ましく、磁性塗料および非磁性塗料における分散剤として使用することが更に好ましく、磁性層形成用塗料または非磁性層形成用塗料として使用することが特に好ましい。本発明の表面改質剤を磁性塗料および非磁性塗料に適用する態様については後述する。
【0024】
[磁性塗料]
本発明の磁性塗料は、本発明の粉末用表面改質剤と、磁性粉末と、結合剤とを含む。前記表面改質剤は、親水性置換基と磁性粉末表面との親水−親水相互作用により磁性粉末表面に高度に吸着し得る。更に、疎水性の環部分または疎水性の置換基Bと結合剤の疎水−疎水相互作用により結合剤に対し良好な親和性を示すことができる。こうして本発明の表面改質剤は、磁性粉末と結合剤との間で界面活性剤的な作用を示し磁性粉末上の結合剤の吸着量を高めることができ、これにより磁性粉末を高度に分散させることができる。前記表面改質剤の詳細は、先に説明した通りである。
以下に、本発明の磁性塗料に含まれる各成分について説明する。
【0025】
磁性粉末
磁性粉末としては、一般に磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液に含まれ得る強磁性粉末を用いることができる。そのような強磁性粉末としては、強磁性六方晶フェライト粉末および強磁性金属粉末が好ましい。
【0026】
(i)六方晶フェライト粉末
六方晶フェライト粉末には、例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、それらのCo等の置換体等がある。より具体的には、マグネトプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、さらに一部にスピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト等が挙げられる。その他、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般には、Co−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加したものを使用できる。また原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
【0027】
六方晶フェライト粉末として、平均板径10〜50nmのものを使用することが好ましく、より好ましくは15〜40nm、更に好ましくは15〜30nmである。上記サイズの六方晶フェライト粉末は、高密度記録用磁気記録媒体に使用される磁性体として好適である。本発明によれば、上記平均板径を有する微粒子状の六方晶フェライト粉末の分散性を高めることができる。
【0028】
六方晶フェライトの平均板状比[(板径/板厚)の算術平均]は1〜15であることが好ましく、1〜7であることが更に好ましい。平均板状比が1〜15であれば、磁性層で高充填性を保持しながら充分な配向性が得られ、かつ、粒子間のスタッキングによるノイズ増大を抑えることができる。また、上記粒子サイズの範囲内におけるBET法による比表面積(SBET)は、40m2/g以上が好ましく、40〜200m2/gであることがさらに好ましく、60〜100m2/gであることが最も好ましい。
【0029】
六方晶フェライト粉末の粒子板径・板厚の分布は、通常狭いほど好ましい。粒子板径・板厚は、粒子TEM写真より、例えば500粒子を無作為に測定することで測定できる。粒子板径・板厚の分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すと、σ/平均サイズ=0.1〜1.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには、一般に、粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。例えば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。また、六方晶フェライト粉末のpHは、通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、一般に、媒体適用時の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。六方晶フェライト粉末に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
【0030】
六方晶フェライト粉末の製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。六方晶フェライト粉末は、必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性粉末に対し、例えば0.1〜10質量%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。六方晶フェライト粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。
【0031】
強磁性金属粉末としては、特に制限されるべきものではないが、α−Feを主成分とする強磁性金属粉末を用いることが好ましい。これらの強磁性金属粉末には、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。特に、Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つをα−Fe以外に含むことが好ましく、Co、Y、Alの少なくとも一つを含むことがさらに好ましい。Coの含有量はFeに対して0原子%以上40原子%以下であることが好ましく、さらに好ましくは15原子%以上35原子%以下、より好ましくは20原子%以上35原子%以下である。Yの含有量は1.5原子%以上12原子%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3原子%以上10原子%以下、特に好ましくは4原子%以上9原子%以下である。Alは1.5原子%以上12原子%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3原子%以上10原子%以下、より好ましくは4原子%以上9原子%以下である。
【0032】
強磁性金属粉末には少量の水酸化物、または酸化物が含まれてもよい。強磁性金属粉末は公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeまたはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性金属粉末には、公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施すこともできる。
【0033】
強磁性金属粉末のBET法による比表面積は、45〜100m2/gであることが好ましく、より好ましくは50〜80m2/gである。45m2/g以上であれば低ノイズであり、100m2/g以下であれば良好な表面性を有する磁性層を形成することができる。強磁性金属粉末の結晶子サイズは40〜180Åであることが好ましく、より好ましくは40〜150Å、更に好ましくは40〜110Åである。強磁性金属粉末の平均長軸長(平均粒子サイズ)は、好ましくは10〜50nmであり、より好ましくは10〜40nmであり、さらに好ましくは15〜30nmである。本発明によれば、上記平均長軸長を有する微粒子状の強磁性金属粉末の分散性を高めることができる。強磁性金属粉末の針状比は3以上15以下であることが好ましく、さらには3以上12以下であることが好ましい。
【0034】
強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2%とすることが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化することが好ましい。強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12とすることができ、好ましくは6〜10である。強磁性金属粉末は必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性金属粉末に対し0.1〜10%とすることができ、表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着量が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性金属粉末は可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特性に影響を与えることは少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は空孔が少ないほうが好ましく、その値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。また形状については先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、米粒状、紡錘状のいずれでもかまわない。
【0035】
結合剤
結合剤としては従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を使用することができる。熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000、重合度が約50〜1000程度のものを使用することができる。
【0036】
このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクルリ酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等が挙げられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネ−トを組み合わせたものが挙げられる。結合剤として使用する樹脂は、公知の方法で合成することができ、また市販品として入手することもできる。
【0037】
ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−COOM、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2(以上につきMは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウムを表す)、−OH、−NR2、−N+3(Rは炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CN、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は、例えば10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。上記Mで表されるアルキル基は好ましくは炭素数1〜18のアルキル基であり、直鎖構造であっても分岐構造であっても構わない。
【0038】
上記極性基の中でもスルホン酸基(−SO3M)は高い分散性向上効果を発揮し得るため、スルホン酸基含有結合剤は磁気記録媒体用結合剤として広く用いられている。本発明においてもスルホン酸基含有結合剤を使用することができる。本発明において使用されるスルホン酸基含有結合剤におけるスルホン酸基含有量は、好ましくは0.01〜0.7meq/g、より好ましくは0.04〜0.6meq/g、更に好ましくは0.06〜0.4meq/gである。
【0039】
本発明の磁性塗料には、磁性粉末に対し、例えば5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲で結合剤を用いることができる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20質量%、ポリイソシアネートは2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましい。但し、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合は、ポリウレタンのみまたはポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。
【0040】
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。これらは公知の方法で合成することができ、また市販品としても入手可能である。
【0041】
本発明の磁性塗料には、前記表面改質剤、磁性粉末、結合剤に加えて必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、一般に磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液に使用される研磨剤、潤滑剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。
【0042】
本発明の磁性塗料は、前記表面改質剤、磁性粉末、結合剤、および任意に使用される添加剤を混合することにより得ることができ、具体的には、一般的な磁性層塗布液の調製方法によって得ることができる。製造工程は、例えば、混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性塗料を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0043】
本発明の表面改質剤の添加効果を効果的に得るためには、磁性粉末と結合剤とが接触する段階で、前記表面改質剤が存在することが好ましい。これは、本発明の表面改質材が磁性粉末表面に付着する前に、結合剤が磁性粉末表面と接触することを回避するためである。従って、本発明の磁性塗料は磁性粉末、結合剤、および本発明の表面改質剤を同時に混合することにより、または磁性粉末と表面改質剤とを混合して得られた混合物に、結合剤を混合することによって調製することが好ましい。具体的には、以下の方法により前記成分を混合することが好ましい。
(1)予め磁性粉末と表面改質剤とを乾式で15〜30分間程度分散した後、有機溶媒へ添加する。結合剤は、前記分散物と同時に添加してもよく、前記分散物添加後に添加してもよい。
(2)磁性粉末と表面改質剤を有機溶剤中で15〜30分間程度分散した後、乾固する。乾固した混合物を適宜粉砕して有機溶媒中に添加する。結合剤は、前記混合物と同時に添加してもよく、前記混合物添加後に添加してもよい。
(3)磁性粉末と表面改質剤とを有機溶剤中で15〜30分間程度分散した後。結合剤を添加する。
(4)磁性粉末、表面改質剤および結合剤を有機溶媒中に同時に添加し、分散する。
【0044】
有機溶剤としては、公知のものが使用できる。有機溶媒としては、具体的には、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を使用することができる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50質量%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
【0045】
本発明の磁性塗料は、磁性粉末が高度に分散されているため、高い分散性が求められる磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液として好適である。
【0046】
[非磁性塗料]
本発明の非磁性塗料は、本発明の粉末用表面改質剤と、非磁性粉末と、結合剤とを含む。本発明の非磁性塗料は、前記表面改質剤の作用により非磁性粉末と結合剤との吸着性が良好となり、これにより非磁性粉末を高度に分散させることができる。このような非磁性塗料は、高度な分散性が求められる磁気記録媒体の非磁性層形成用塗布液として好適である。前記表面改質剤の詳細は、先に説明した通りである。
以下に、本発明の非磁性塗料に含まれる各成分について説明する。
【0047】
上記非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。表面改質効果の点では、非磁性金属粉末への適用が有効である。
【0048】
具体的には二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタンなどが単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。好ましいものは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
【0049】
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもあってもよい。非磁性粉末の結晶子サイズは、4nm〜500nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。これら非磁性粉末の平均粒径は、5nm〜500nmが好ましく、10〜200nmが更に好ましい。上記サイズを有する非磁性粉末は、高い表面平滑性が求められる高密度記録用磁気記録媒体の非磁性層塗布液に使用する非磁性粉末として好適である。本発明の表面改質剤によれば、上記サイズの非磁性粉末を非磁性塗料中で良好に分散させることができる。
【0050】
非磁性粉末の比表面積は、例えば1〜150m2/gであり、好ましくは20〜120m2/gであり、さらに好ましくは50〜100m2/gである。比表面積が1〜150m2/gの範囲内にあれば、好適な表面粗さを有する磁気記録媒体を形成することができ、かつ、所望の結合剤量で分散できるため好ましい。ジブチルフタレート(DBP)を用いた吸油量は、例えば5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。比重は、例えば1〜12、好ましくは3〜6である。タップ密度は、例えば0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。タップ密度が0.05〜2g/mlの範囲であれば、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなる傾向がある。非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましく、6〜9の間が特に好ましい。pHが2〜11の範囲にあれば、高温、高湿下または脂肪酸の遊離により摩擦係数が大きくなることを防ぐことができる。非磁性粉末の含水率は、例えば0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、さらに好ましくは0.3〜1.5質量%である。含水量が0.1〜5質量%の範囲であれば、分散も良好で、分散後の塗料粘度も安定するため好ましい。強熱減量は、20質量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
【0051】
また、非磁性粉末が無機粉体である場合には、モース硬度は4〜10のものが好ましい。モース硬度が4〜10の範囲であれば磁気記録媒体の耐久性を確保することができる。非磁性粉末のステアリン酸吸着量は、好ましくは1〜20μmol/m2であり、さらに好ましくは2〜15μmol/m2である。非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は、200〜600erg/cm2(200〜600mJ/m2)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは、3〜9の間にあることが好ましい。これらの非磁性粉末の表面には表面処理が施されることによりAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOが存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、さらに好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0052】
前記非磁性粉末の具体的な例としては、例えば、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX、石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、T−600B、T−100F、T−500HDなどが挙げられる。堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOPおよびそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
【0053】
前記非磁性塗料に添加される結合剤の詳細は、本発明の磁性塗料に含まれる結合剤と同様である。前記非磁性塗料は、更に磁気記録媒体に使用される各種添加剤や溶剤を含むことができる。前記非磁性塗料の各成分、それらの混合方法、添加量等の詳細は、本発明の磁性塗料に関する後述の記載と同様である。
【0054】
本発明の非磁性塗料は、非磁性粉末が高度に分散されているため、高い分散性が求められる磁気記録媒体の非磁性層形成用塗布液として好適である。
【実施例】
【0055】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、ここに示す成分、割合、操作、順序等は本発明の精神から逸脱しない範囲で変更し得るものであり、下記の実施例に制限されるべきものではない。
【0056】
1.強磁性六方晶フェライト粉末使用の実施例・比較例(1)
【0057】
[実施例1]
下記バリウムフェライト粉末7.3質量部、スルホン酸基含有ポリウレタン(スルホン酸基含有量:3.3×10-4モル/g)1質量部、4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部をシクロヘキサノン11.9質量部、2−ブタノン17.7質量部から成る溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)90質量部を添加し、6時間分散させた。分散させた液のポリウレタンのバリウムフェライト粉末表面/溶液中の存在比率を以下の方法で測定したところ、100/1以上であった。
強磁性六方晶バリウムフェライト粉末
酸素を除く組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9/0.2/1
Hc:176kA/m(2200Oe)、平均板径:25nm、平均板状比:3
BET比表面積:65m2/g
σs:49A・m2/kg(49emu/g)
pH:7
【0058】
〔測定方法〕
日立製分離用小型超遠心機CS150GXLにて100,000rpm, 80分の条件で磁性体と溶液を遠心分離した。上澄み液3mlをはかりとり質量を測定した。40℃、18時間の条件で乾燥させた後、140℃、3時間真空条件下で乾燥した。乾燥したものの質量を結合剤非吸着固形分とし、バリウムフェライト粉末表面/溶液中の結合剤の存在比を計算した。
【0059】
[実施例2]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて4−tertブチル安息香酸0.47質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、55.6/1であった。
【0060】
[実施例3]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて5−tertブチルイソフタル酸0.56質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、100/1以上であった。
【0061】
[実施例4]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて4−isoイソプロピルフェノール0.33質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、100/1以上であった。
【0062】
[実施例5]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて4−secブチルフェノール0.36質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、100/1以上であった。
【0063】
[実施例6]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて4−シクロヘキシルフェノール0.43質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、100/1以上であった。
【0064】
[実施例7]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて4−isoプロピル安息香酸0.40質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、100/1以上であった。
【0065】
[実施例8]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて4−シクロヘキシル安息香酸0.46質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、100/1以上であった。
【0066】
[実施例9]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて4−トリフルオロメチル安息香酸0.46質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、11.9/1であった。
【0067】
[実施例10]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて3−tertブチルフェノール0.36を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、10.0/1であった。
【0068】
[実施例11]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて4−tertブチルフェノール0.33質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、10.0/1であった。
【0069】
[実施例12]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて2−メチル安息香酸0.33質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、16.8/1であった。
【0070】
[実施例13]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて3−メチル安息香酸0.33質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、19.0/1であった。
【0071】
[実施例14]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えて3−メトキシ安息香酸0.37質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、16.8/1であった。
【0072】
[比較例1]
4−tertブチルシクロヘキサンカルボン酸0.47質量部に代えてフェニルホスホン酸0.40質量部を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、3.6/1であった。
【0073】
[比較例2]
フェニルホスホンを使用しない点以外は比較例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、2.6/1であった。
【0074】
[比較例3]
フェニルホスホン酸0.40質量部に代えて4−クロロ安息香酸0.40質量部を使用した点以外は比較例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、4.8/1であった。
【0075】
[比較例4]
フェニルホスホン酸0.40質量部に代えて4−フルオロ安息香酸0.35質量部を使用した点以外は比較例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、4.9/1であった。
【0076】
[比較例5]
フェニルホスホン酸0.40質量部に代えて2−tertブチルフェノール0.36質量部を使用した点以外は比較例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、4.0/1であった。
【0077】
[比較例6]
フェニルホスホン酸0.40質量部に代えて2−メトキシ安息香酸0.33質量部を使用した点以外は比較例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、3.8/1であった。
【0078】
[比較例7]
フェニルホスホン酸0.40質量部に代えて4−メトキシ安息香酸0.33質量部を使用した点以外は比較例1と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、3.8/1であった。
【0079】
2.強磁性六方晶フェライト粉末使用の実施例・比較例(2)
【0080】
[実施例15]
下記バリウムフェライト粉末7.3質量部、スルホン酸基含有ポリウレタン(スルホン酸基含有量:0.6×10-4モル/g)1質量部、3−tertブチルフェノール酸0.33質量部をシクロヘキサノン11.9質量部、2−ブタノン17.7質量部から成る溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)90質量部を添加し、6時間分散させた。分散させた液のポリウレタンのバリウムフェライト粉末表面/溶液中の存在比率を以下の方法で測定したところ、1.6/1であった。
強磁性六方晶バリウムフェライト粉末
酸素を除く組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9/0.2/1
Hc:176kA/m(2200Oe)、平均板径:25nm、平均板状比:3
BET比表面積:65m2/g
σs:49A・m2/kg(49emu/g)
pH:7
【0081】
[実施例16]
3−tertブチルフェノール酸0.33質量部に代えて4−tert安息香酸0.47質量部を使用した点以外は実施例15と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、1.7/1であった。
【0082】
[実施例17]
3−tertブチルフェノール酸0.33質量部に代えて5−tertブチルイソフタル酸0.56質量部を使用した点以外は実施例15と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、1.6/1であった。
【0083】
[実施例18]
3−tertブチルフェノール酸0.33質量部に代えて4−シクロヘキシル安息香酸0.46質量部を使用した点以外は実施例15と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、2.0/1であった。
【0084】
[実施例19]
3−tertブチルフェノール酸0.33質量部に代えて2−メチル安息香酸0.33質量部を使用した点以外は実施例15と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、1.3/1であった。
【0085】
[実施例20]
3−tertブチルフェノール酸0.33質量部に代えて3−メチル安息香酸0.33質量部を使用した点以外は実施例15と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、1.3/1であった。
【0086】
[比較例8]
3−tertブチルフェノール酸0.33質量部に代えてフェノール0.21質量部を使用した点以外は実施例15と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、1.0/1であった。
【0087】
[比較例9]
3−tertブチルフェノール酸0.33質量部に代えてフェニルホスホン酸0.40質量部を使用した点以外は実施例15と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、0.6/1であった。
【0088】
[比較例10]
3−tertブチルフェノール酸を使用しなかった点以外は実施例15と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、0.5/1であった。
【0089】
3.強磁性金属粉末使用の実施例・比較例
【0090】
[実施例21]
下記メタル粉末7.3質量部、スルホン酸基含有ポリウレタン(スルホン酸基含有量:3.3×10-4モル/g)1質量部、4−t−ペンチルフェノール0.40質量部をシクロヘキサノン11.9質量部、2−ブタノン17.7質量部から成る溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)90質量部を添加し、6時間分散させた。分散させた液のポリウレタンのバリウムフェライト粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、0.85/1以上であった。
メタル粉末
組成 Co/Fe:23.7 atomic%、Y/Fe:15.3 atomic%、Al/Fe:9.3 atomic%
Hc:194kA/m(2400Oe)、長軸長:45nm、針状比:4.2
BET比表面積:67m2/g
σs:A・m2/kg(110emu/g)
pH:9
【0091】
[実施例22]
4−t−ペンチルフェノール0.40質量部に代えて4−secBu−フェノール0.37質量部を使用した点以外は実施例21と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、0.83/1であった。
【0092】
[実施例23]
4−t−ペンチルフェノール0.40質量部に代えて4−Isoプロピルフェノール0.33質量部を使用した点以外は実施例21と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、0.83/1であった。
【0093】
[実施例24]
4−t−ペンチルフェノール0.40質量部に代えて4−Isoプロピル安息香酸0.40質量部を使用した点以外は実施例21と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、0.57/1であった。
【0094】
[比較例11]
4−t−ペンチルフェノールを使用しない点以外は実施例21と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、0.52/1であった。
【0095】
[比較例12]
3−tertブチルフェノール0.33質量部に代えてフェノール0.21質量部を使用した点以外は実施例21と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、0.49/1であった。
【0096】
4.非磁性粉末使用の実施例・比較例
【0097】
[実施例25]
下記非磁性粉末3.7質量部、スルホン酸基含有ポリウレタン(スルホン酸基含有量:3.3×10-4モル/g)1質量部、3−tertブチルフェノール0.33質量部をシクロヘキサノン7.8質量部、2−ブタノン10.3質量部からなる溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)90質量部を添加し、6時間分散させた。分散させた液のポリウレタンの非磁性粉末表面/溶液中の存在比率を前記方法で測定したところ、0.39/1であった。
非磁性粉末
α−酸化鉄
表面処理層:Al23、SiO2
平均長軸長:0.15μm
平均針状比:7
BET法による比表面積:52m2/g
PH:8
【0098】
[実施例26]
3−tertブチルフェノール0.33質量部に代えて4−tertブチルフェノール0.33質量部を使用した点以外は実施例25と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの強磁性体粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、0.51/1であった。
【0099】
[比較例13]
3−tertブチルフェノールを添加しなかった点以外は実施例25と同様の処理を行い得られた分散液のポリウレタンの非磁性粉末表面/溶液中の存在比率を上記方法で測定したところ、0.22/1であった。
【0100】
評価結果
実施例におけるポリウレタンの粉末表面の存在比率が、比較例におけるポリウレタンの粉末表面の存在比率より高かったことから、実施例で使用した環状化合物が粉末の表面を改質しポリウレタン吸着量を高める作用を示したことがわかる。塗料中での粉末への結合剤吸着量を高めることは、粉末の分散性改善につながるため、実施例で使用した環状化合物が各種塗料において分散剤として機能し得ることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の表面改質剤は、磁性塗料用分散剤および非磁性粉末用分散剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物(a)および(b)からなる群から選ばれる少なくとも一種の環状化合物を含む粉末用表面改質剤。
化合物(a):下記置換基Aおよび置換基Bが置換したベンゼン
化合物(b):下記置換基Aおよび置換基Bが置換したシクロヘキサン
置換基A:ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基
置換基B:アルキル基および/またはアルコキシル基(但し、化合物(a)において、アルコキシル基は置換基Aに対しメタ位に置換し、メチル基を除くアルキル基は、置換基Aが置換する炭素原子と隣接する炭素原子に置換することはない。)
【請求項2】
前記化合物(a)は、置換基Aを、置換基Bに対しメタ位またはパラ位に有する請求項1に記載の粉末用表面改質剤。
【請求項3】
前記化合物(b)は、置換基Aを、置換基Bに対し4位に有する請求項1に記載の粉末用表面改質剤。
【請求項4】
置換基Bは、分岐アルキル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末用表面改質剤。
【請求項5】
前記粉末は、磁性粉末である請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末用表面改質剤。
【請求項6】
前記磁性粉末は、強磁性六方晶フェライト粉末または強磁性金属粉末である請求項5に記載の粉末用表面改質剤。
【請求項7】
磁性塗料用分散剤として使用される請求項5または6に記載の粉末用表面改質剤。
【請求項8】
前記粉末は、非磁性粉末である請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末用改質剤。
【請求項9】
非磁性塗料用分散剤として使用される請求項8に記載の粉末用表面改質剤。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末用表面改質剤と、磁性粉末と、結合剤とを含む磁性塗料。
【請求項11】
前記磁性粉末は、強磁性六方晶フェライト粉末または強磁性金属粉末である請求項10に記載の磁性塗料。
【請求項12】
前記結合剤は、スルホン酸基含有結合剤である請求項10または11に記載の磁性塗料。
【請求項13】
磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液として使用される請求項10〜12のいずれか1項に記載の磁性塗料。
【請求項14】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末用表面改質剤と、非磁性粉末と、結合剤とを含む非磁性塗料。
【請求項15】
前記結合剤は、スルホン酸基含有結合剤である請求項14に記載の非磁性塗料。
【請求項16】
磁気記録媒体の非磁性層形成用塗布液として使用される請求項14または15に記載の非磁性塗料。

【公開番号】特開2010−49754(P2010−49754A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214238(P2008−214238)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】