説明

粉末組成物

【課題】体内抗酸化バランスをケアした成分を一度にとることができ、しかも吸収効率が良い。単成分のサプリメントを複数採る場合と比べ、飲む量は少なくて済み、また経時した際の成分の劣化が少ない、粉末組成物の提供。
【解決手段】油溶性抗酸化物質粉末、水溶性抗酸化物質粉末、及び、チオクト酸を含むことを特徴とする、粉末組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末組成物、より詳しくは抗酸化物質を含む粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性酸素は、生体内において生体防御や細胞間のシグナル系に深く係わる一方で、生体組織や成分に様々な酸化的損傷を与え、人の健康を害したり、老化のスピードを早める原因となることが明らかとなっている。
活性酸素としては、体内において細胞内でミトコンドリアが酸素の代謝によってエネルギーを作り出す時に酸素に一部が還元されてできるスーパーオキシドアニオン(・O2−)や、ヒドロキシルラジカル(・OH−)、ヒドロペルオキシルラジカル(・OOH)、アルコキシルラジカル(LO・)、アルキルペルオキシルラジカル(LOO・)などのラジカル種や、スーパーオキシドアニオンから生成された過酸化水素(H2O2)、一重項酸素(1O2)、ペルオキシナイトライト(ONOO−)、脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)、次亜塩素酸(HOCl)などのノンラジカル種がある。
これらの活性酸素は、DNAや体内組織に損傷を与えて悪性腫瘍を発症させたり、心筋梗塞や狭心症などの虚血性疾患、肝臓障害、脳血管障害、アルツハイマー型痴呆、糖尿病、痛風、腎炎、白内障、皮膚のシミ、しわ、ソバカスの一因になることが知られている。
この活性酸素の毒性の害を防ぐことはこれらの病気の予防にもつながるとして、多くの活性酸素除去能を持つ抗酸化物質が提案されている。
【0003】
しかし、2007年2月28日付で米医師会誌に発表された抗酸化サプリメント(ビタミンA,C,E,ベータカロチン、セレニウム)の摂取と死亡との関連の疫学的調査で、ビタミンC、セレニウム摂取者以外の摂取者の死亡率が却って高くなるとの報告があり、単独の抗酸化物質の連続摂取は体内の抗酸化バランスを崩しため良くないとの認識が広まりつつある(非特許文献1参照)。
人間の身体には、細胞膜に代表される油溶性の部分と細胞質及び血液などの水溶性の部分とに分かれており、抗酸化物質も複数を組み合わせると好ましい効果が得られるとの報告もある(特許文献1〜2)。
特に、体内には抗酸化のネットワークがあり、チオクト酸が中心になって水溶性及び油溶性抗酸化物質をリサイクルし効力を長持ちさせる働きがあると言われている(非特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−189102号公報
【特許文献2】特表2004−530407号公報
【非特許文献1】Journal of American Medical Association、Vol 297,NO.8
【非特許文献2】アンチオキシダントミラクル(レスター・パッカー著、2002年6月20日発行、講談社)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、油溶性抗酸化物質と水溶性抗酸化物質を組み合わせて使用することが求められている。しかしながら、本来混ざるものではない油溶性抗酸化物質と水溶性抗酸化物質をそのまま混合しソフトカプセル等に封入しても、体内で分散されず吸収が悪くなることがわかった。また、反応性の高い異なる抗酸化成分を混在させると、抗酸化成分同士が反応し劣化するなどの新たな問題が生じた。
本発明は、油溶性抗酸化物質と水溶性抗酸化物質とを使用した際の抗酸化物質の体内への吸収性と保存安定性を改善するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、性質の異なる抗酸化物質を、それぞれ別々の粉末とすることで、上記諸問題が解決した。
本発明は、下記の構成よりなる。
【0006】
<1>
油溶性抗酸化物質粉末、水溶性抗酸化物質粉末、及び、チオクト酸を含むことを特徴とする、抗酸化粉末組成物。
<2>
前記油溶性抗酸化物質粉末が、カロチノイド色素、脂溶性ビタミン類、または、脂溶性ビタミン様物質であることを特徴とする、上記<1>に記載の粉末組成物。
<3>
前記カロチノイド色素が、アスタキサンチンまたはそのエステルを含有する天然抽出物であることを特徴とする、上記<1>または<2>に記載の粉末組成物。
<4>
前記脂溶性ビタミン様物質が、ユビデカレノンであることを特徴とする、上記<1>〜<3>のいずれかに記載の粉末組成物。
<5>
前記油溶性抗酸化物質が、(a)ショ糖脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル、(b)リン脂質を含有し、かつ、(a)と(b)の質量組成比が同じか又は(a)の方が多いエマルション組成物を乾燥して得られた粉末組成物であることを特徴とする、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の粉末組成物。
<6>
前記水溶性抗酸化物質が、ビタミンCまたはカテキン類またはフラボノイド類であることを特徴とする、上記<1>〜<5>のいずれかに記載の粉末組成物。
<7>
前記水溶性抗酸化物質が、オイルコートされた粉末であることを特徴とする、上記<1>〜<6>のいずれかに記載の粉末組成物。
<8>
チオクト酸が、シクロデキストリン包接されていることを特徴とする、上記<1>〜<7>のいずれかに記載の粉末組成物。
<9>
上記<1>〜<8>のいずれかに記載の粉末組成物を含む食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、抗酸化物質の体内への吸収性と保存安定性が改善された、抗酸化物質を含む粉末組成物が提供される。
即ち、本発明の粉末組成物により、体内抗酸化バランスをケアした成分を一度にとることができ、しかも吸収効率が良い。単成分のサプリメントを複数採る場合と比べ、飲む量は少なくて済み、また経時した際の成分の劣化が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の粉末組成物は、(A)油溶性抗酸化物質粉末、(B)水溶性抗酸化物質粉末、及び、(C)チオクト酸を含む。
【0009】
(A)油溶性抗酸化物質粉末
本発明の粉末組成物は、油溶性抗酸化物質の少なくとも1種を含む。
本発明に用いられる油溶性抗酸化物質としては、カロチノイド類(カロチノイド色素)、その他の抗酸化活性を有する脂溶性ビタミン類、脂溶性ビタミン様物質(ユビキノン類、ω−3油脂類(EPA、DHA、リノレン酸等を含む油脂))等が上げられる。
油溶性抗酸化物質を粉末状で含有ことにより、水溶性抗酸化物と混ぜても分散性・吸収性が改善し、また、経時保存時の安定性も改善する。好ましくは微細乳化して粉末化する。
【0010】
カロチノイド類
本発明におけるカロチノイド類としては、天然色素を含むカロチノイド類を好ましく挙げることができ、これには、黄色から赤のテルペノイド類の色素であり、植物類、藻類、及びバクテリアのものが含まれる。
また、天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものも、本発明におけるカロチノイドに含まれる。例えば、後述のカロチノイド類のカロチン類の多くは合成によっても製造されており、市販のβ−カロチンの多くは合成により製造している。
【0011】
このようなカロチノイド類としては、炭化水素類(カロチン類)及びそれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられ、中でも、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−アポ−8’−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロチン、β−カロチン、”カロチン”(α−及びβ−カロチン類の混合物)、γ−カロチン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類を好ましく挙げることができる。特に好ましくはアスタキサンチンまたはそのエステルを含有する天然抽出物が挙げられる。
【0012】
カロチノイド類の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばラセミ混合物である。
カロチノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロチノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮フ及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
【0013】
本発明において用いられるカロチノイド類としては、ハンドリングの観点から、好ましくは常温で油状のものであり、特に好ましくは、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果などを有し、黄色から赤色の範囲の着色料として知られるアスタキサンチン及びアスタキサンキチンのエステル等の誘導体(以下、「アスタキサンチン類」と総称することがある。)から選択された少なくとも1種である。
【0014】
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でカロチノイドの一種キサントフィルに属している(Davies, B.H. : In “Chemistry and Biochemistry of Plant Pigments”, T. W. Goodwin ed., 2nd ed., 38-165, Academic Press, NY, 1976.)。アスタキサンチンの化学構造は3,3’−di
hydroxy−β,β−carotene−4,4’−dione (C40H52O4、分子量596.82)である。
【0015】
アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)−位の水酸基の立体配置により、3S,3S’−体、3S,3R’−体(meso−体)、3R,3R’−体の三種の異性体が存在する。また、さらに分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば全cis−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
【0016】
前記3(3’)−位の水酸基は脂肪酸とエステルを形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸二個結合したジエステル(Yamaguchi,K., Miki,W., Toriu, N., Kondo,Y., Murakami,M., Konosu,S., Satake,M., Fujita,T. : The composition of carotenoid pigments in the antarctic krill Euphausia superba, Bull. Jap. Sos. Sci. Fish., 1983, 49, p.1411-1415.)、H. pluvialisから得られるものは3S,3S’−体で、脂肪酸一個結合したモノエステル体が多く含まれている(Renstrom, B., Liaaen-Jensen, S. : Fatty acids of some esterified carotenols, Comp. Biochem. Physiol. B, Comp. Biochem., 1981, 69, p.625-627.)。
【0017】
また、Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは、3R,3R’−体(Andrewes, A.G., Starr, M.P. : (3R,3’R)-Asttaxanthin from the yeast Phaffa rhodozyma, Phytochem., 1976, 15, p.1009-1011.)であり、通常天然に見出される3S,3S’−体と反対の構造を持っている。また、これは脂肪酸とエステル形成していないフリー体で存在している(Andrewes, A.G., Phaffia, H.J., Starr, M.P. : Carotenids of Phaffia rhodozyma, a red pigmented fermenting yeast, Phytochem., 1976, 15, p.1003-1007.)。
【0018】
アスタキサンチン及び同エステル体はR.Kuhnらによってロブスター(Astacus gammarus L.)から初めて分離され、その推定構造が開示された(Kuhn, R., Soerensen, N.A. : The coloring matters of the lobster (Astacus gammarus L.), Z. Angew. Chem.,1938, 51, p.465-466.)。それ以来、アスタキサンチンが自然界に広く分布し、通常アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白(オボルビン、クラスタシアニン)としても存在することが明らかにされている(Cheesman, D.F. : Ovorubin, a chromoprotein from the eggs of the gastropod mollusc Pomacea canaliculata, Proc. Roy. Soc. B, 1958, 149, p.571-587.)。
【0019】
前記アスタキサンチン及びそのエステル(アスタキサンチン類)は、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然物から分離・抽出したアスタキサンチン含有オイルとして含まれていてもよい。このようなアスタキサンチン含有オイルとして、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物からの抽出物、南極オキアミ等からの抽出物を挙げることができる。
ヘマトコッカス藻抽出物(ヘマトコッカス藻由来色素)は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとは脂肪酸エステル体(モノエステル、ジエステルなど)の主成分の点で異なることが知られている。(http://www.astaxanthin.co.jp/chemical/basic.htm)
【0020】
本発明において用いることができるアスタキサンチン類は、前記抽出物、また更にこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また合成品であってもよい。前記アスタキサンチン類としては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0021】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
【0022】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻の培養方法は、特開平8−103288号公報等に開示された様々な方法を採用することができ、特に限定されるものではなく、栄養細胞から休眠細胞であるシスト細胞に形態変化していればよい。
【0023】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、上記の原料を、必要に応じて、例えば特開平5−68585号公報等に開示された方法により細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム及びアルコール(エタノール、メタノール等)等の有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えて抽出することによって得られる。
また、本発明では、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5 O、同−5 O、同−10 O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstin SCE7等が挙げられる。
【0024】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチン類の色素純分としての含有量は、好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。
なお、本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、特開平2−49091号公報記載の色素同様、色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含むが、エステル体を、一般的には50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90%モル以上含むものである。
さらに詳細な説明は「アスタキサンチンの化学」、平成17年、インターネット〈URL:http://www.astaxanthin.co.jp/chemical/basic.htm〉に記載されている。
【0025】
これらのアスタキサンチン類は、超臨界炭酸ガスを用いて抽出したものが、粉末としたときの臭気の点でより好ましい。
【0026】
脂溶性ビタミン類
本発明における脂溶性ビタミン類としては、脂溶性ビタミンE類、レチノイド類、ビタミンD類、アスコルビン酸及びエリソルビン酸の油溶化誘導体を挙げることができ、この内でも、抗酸化機能が高くラジカル捕捉剤としても使用可能な脂溶性ビタミンE類であることが好ましい。尚、ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、かつカロチノイドである。
脂溶性ビタミンE類には、特に限定されないが、トコフェロール及びトコトリエノール並びにこれらの誘導体などが含まれ、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等のトコフェロール及びその誘導体、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等を挙げることができる。これらは単独で用いても、複数併用して用いてもよいが、混合物の状態で使用する場合が好ましく、混合物の状態のものとしては抽出トコフェロール、ミックストコフェロールなどと呼ばれるものが含まれる。
【0027】
レチノイド類としては、レチノール,3−ヒドロレチノール,レチナール,3−ヒドロレチナール,レチノイン酸,3−デヒドロレチノイン酸,ビタミンAアセテート等のビタミンA類;α,β,γ−カロチン,β−クリプトキサンチン,エキネノン等のカロチノイドやキサントフィル等のプロビタミンA類を挙げることができる。ビタミンD類としては、ビタミンD2 乃至D7 等のビタミンD類を挙げることができる。
またその他の脂溶性ビタミン物質としては、ニコチン酸ビタミンE等のエステル類;ビタミンK1 乃至K3 等のビタミンK類を挙げることができる。
アスコルビン酸、エリソルビン酸などの油溶化誘導体には、ステアリン酸L−アスコルビルエステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸エリソルビルエステル、テトライソパルミチン酸エリソルビルエステル、ジオレイン酸アスコルビル等のビタミンCの脂肪酸エステル類、ジパルミチン酸ピリドキシン、トリパルミチン酸ピリドキシン、ジラウリン酸ピリドキシン、ジオクタン酸ピリドキシン等のビタミンB6の脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0028】
脂溶性ビタミン様物質
ビタミン様物質とは体内で合成できる物質でビタミンのように働く物質の一般呼称で、その中で脂溶性のものである。脂溶性ビタミン様物質としては、たとえばユビキノン類、ω−3油脂類(EPA、DHA、リノレン酸等を含む油脂)が挙げられる。
【0029】
ユビキノン類
ユビキノン類としては、コエンザイムQ10(ユビデカレノン)のようなコエンザイムQ類等が挙げられる。コエンザイムQ10は、日本において1974年に代謝性強心剤の医療用医薬品として承認・販売された。以後、OTCも含めて医薬品として扱われてきた。一方、海外(主に欧米)ではここ10年あまり、有効性・安全性の高い健康食品素材として需要が伸びてきた。そして日本においても、2001年厚生労働省医薬局長通知「医薬品の範囲に関する基準の改正について」(医薬発第243号)にて、コエンザイムQ10が「医薬品的効果効能を標ぼうしない限り食品と認められる成分本質(原材料)」リストに収載され、食品として扱ってもよいという規制緩和がなされた。国内でもこの食品素材が持つ、多様な機能性に注目が集まり、コエンザイムQ10を含有した一般食品(いわゆる健康食品)が数多く商品化されつつある。
【0030】
コエンザイムQ10がもつ機能を生かすために、脂溶性物質であるこの素材の水溶化が重要である。水溶化の目的は、脂溶性という物性では食事と共に摂取しないと生体内での吸収が低いことが考えられ、このようなマイナス点を改善するため、何時どこで摂取しても生体内での吸収性が確実に得られるようにすることである。これらは単独で用いても、複数併用して用いてもよい。
【0031】
ω−3油脂類
ω−3油脂類としては、リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)並びにこれらを含有する魚油などを挙げることができる。
【0032】
油溶性抗酸化物質粉末は、他の油性成分を含有してもよい。として使用可能な化合物には、常温で、液体の油脂(脂肪油)及び固体の油脂(脂肪)が挙げられる。
前記液体の油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油、スクワレン、スクワラン等が挙げられる。
また、前記固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0033】
また他の油性成分として、通常、紫外線吸収剤、抗炎症剤、保湿剤、毛髪保護剤、分散剤、溶剤、美白剤、抗シミ剤、細胞賦活剤、エモリエント剤、角質溶解剤、帯電防止剤、ビタミン類、メタボリックシンドローム改善剤、降圧剤、鎮静剤などとして使用されている他の成分も使用することができ、例えば、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリンなどのロウ類、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのエステル類、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、アラキドン酸などの脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノールなどの高級アルコール類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーン油、その他、高分子類、油溶性色素類、油溶性蛋白質などを挙げることができる。また、それらの混合物である各種の植物由来油、動物由来油も含まれる。
【0034】
上記油状性成分は、水への分散性をより高めるために、2種以上を併用することが好ましく、この目的で併用可能な油性成分としては、DHA、スクワレン、スクワランが好ましく、スクワレンが特に好ましい。特に、コエンザイムQ10のように常温で固体の油性成分の場合には、DHA、スクワレン、スクワランなどと併用することが特に好ましい
【0035】
油溶性抗酸化物質粉末中における油溶性抗酸化物質の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは0.2〜2質量%である。
油溶性抗酸化物質の含有量が前記0.1質量%以上のため、多量に用いることなく油溶性抗酸化物質による効果を得るには充分な量であり、一方、10質量%未満とすることによって粉末表面へ油溶性抗酸化物質が保存経時によるしみ出しを効果的に抑制して、取り扱い性の向上が可能となり、それぞれ好ましい。
本発明では上記油溶性抗酸化物質に加えて他の油性成分を併用する場合には、油性成分全体に対して油溶性抗酸化物成分は、好ましくは10質量%〜99質量%、より好ましくは50質量%〜99質量%で用いることができる。
【0036】
本発明において、油溶性抗酸化物質が、(a)ショ糖脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル、(b)リン脂質を含有し、(a)と(b)の組成比が、同じか又は(a)の方が多い比であるエマルション組成物を乾燥して得られた粉末組成物であることが好ましい。特に、油溶性抗酸化物質の中で、カロチノイド類、脂溶性ビタミン、ユビキノン類、ω−3油脂類、特に油溶性機能色素であるカロチノイド(カロテノイドとも言う)類を用いた場合にこのような粉末組成物とすると、水に分散した際に透明性が高く且つ保存安定性に優れるという顕著な効果を有する粉末組成物を得ることができる。
【0037】
(a)ショ糖脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル
本発明の油溶性抗酸化物質粉末は、ショ糖脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
これらはいずれも界面活性剤として作用すると共にエマルション組成物としたときのエマルション粒子の平均粒子径をより小さいものにすることができる。
【0038】
ショ糖脂肪酸エステルは、界面活性の観点から脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。炭素数12以上とすることにより、平均粒子径のより小さいエマルジョン粒子にすることができる場合がある。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの中でもショ糖モノエステルが好ましく、特に、ショ糖モノラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステルがより好ましい。本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0039】
市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステルS−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F−A50、F−20W、F−10、F−A10E、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150等が挙げられる。
【0040】
本発明に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸とのエステルを挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
これらの中でも、より好ましくは、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル(HLB=13)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=16)などである。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0041】
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL DGMS,NIKKOL DGMO−CV,NIKKOL DGMO−90V,NIKKOL DGDO,NIKKOL DGMIS,NIKKOL DGTIS,NIKKOL Tetraglyn 1−SV,NIKKOL Tetraglyn 1−O,NIKKOL Tetraglyn 3−S,NIKKOL Tetraglyn 5−S,NIKKOL Tetraglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Hexaglyn 1−SV,NIKKOL Hexaglyn 1−O,NIKKOL Hexaglyn 3−S,NIKKOL Hexaglyn 4−B,NIKKOL Hexaglyn 5−S,NIKKOL Hexaglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn PR−15,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,NIKKOL Decaglyn 2−SV,NIKKOL Decaglyn 2−ISV,NIKKOL Decaglyn 3−SV,NIKKOL Decaglyn 3−OV,NIKKOL Decaglyn 5−SV,NIKKOL Decaglyn 5−HS,NIKKOL Decaglyn 5−IS,NIKKOL Decaglyn 5−OV,NIKKOL Decaglyn 5−O−R,NIKKOL Decaglyn 7−S,NIKKOL Decaglyn 7−O,NIKKOL Decaglyn 10−SV,NIKKOL Decaglyn 10−IS,NIKKOL Decaglyn 10−OV,NIKKOL Decaglyn 10−MAC,NIKKOL Decaglyn PR−20,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステルL−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DP、DS13W、DS3、HS11、HS9、TS4、TS2、DL15、DO13、太陽化学(株)社製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)社製ポエムDO−100、ポエムJ−0021などが挙げられる。
【0042】
上記(a)成分は、全油溶性抗酸化物質粉末に対して、乳化安定性及び再溶解後の保存安定性の観点から好ましくは1質量%〜50質量%、より好ましくは5質量%〜50質量%でこれらの成分を含有することができるが、更に、油溶性抗酸化物質粉末の使用目的に応じてこの範囲内で適宜調整することができる。特に、体内吸収性の観点からは(a)成分の全油溶性抗酸化物質粉末に対する割合は上記範囲内で高いほど更に好ましく、一方、再溶解時のエマルション粒子の微細化の観点からは(a)成分の全粉末に対する割合は上記範囲内で低いほど更に好ましい。例えば、再溶解時の微粒子化の観点から好ましくは、(a)成分を油溶性抗酸化物質粉末に対して45質量%以下とすることができ、更に好ましくは40質量%以下とすることができる。一方、例えば良好な体内吸収性を示す油溶性抗酸化物質粉末とする場合には、(a)成分を油溶性抗酸化物質粉末に対して30質量%以上とすることができ、更に好ましくは40質量%以上とすることができる。
【0043】
本発明の油溶性抗酸化物質粉末は、これらのショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルとは、いずれか一方を含んでいればよく、より粉末の保存安定性を向上させる観点から併用することが好ましい。これらの(a)成分としてショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン酸エステルとを併用する場合には、特に制限はないが、粉末の保存安定性を向上させる観点からショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルの質量比は、10:90〜90:10であることが好ましく、20:80〜80:20であることがより好ましい。
【0044】
これらのショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、HLB8以上を有するものが好ましく、10以上を有する者がより好ましく、12以上を有するものが特に好ましい。HLB値の上限値は、特に限定されないが、一般的には18以下であり、17以下が好ましい。
【0045】
ここで、HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
HLB=7+11.7log(Mw/M0)
ここで、Mwは親水基の分子量、M0は疎水基の分子量である。
【0046】
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の界面活性剤を得ることができる。
【0047】
また本発明の油溶性抗酸化物質粉末は、上記(a)成分及び後述する(b)成分とは別に、以下に挙げる界面活性剤を含有していてもよい。本発明における界面活性剤としては、水性媒体に溶解する非イオン性の界面活性剤(親水性の界面活性剤)がエマルション組成物中の油相/水相の界面張力を大きく下げることができ、その結果、粒子径を細かくすることができる点で好ましい。
【0048】
本発明で使用することのできる非イオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。より好ましくは、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。また、上記の界面活性剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0049】
本発明に用いられるソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0050】
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL SL−10,SP−10V,SS−10V,SS−10MV,SS−15V,SS−30V,SI−10RV,SI−15RV,SO−10V,SO−15MV,SO−15V,SO−30V,SO−10R,SO−15R,SO−30R,SO−15EX,第一工業製薬(株)社製の、ソルゲン30V、40V、50V、90、110、花王(株)社製の、レオドールAS−10V、AO−10V、AO−15V、SP−L10、SP−P10、SP−S10V、SP−S30V、SP−O10V、SP−O30Vなどが挙げられる。
【0051】
本発明に用いられるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。またポリオキシエチレンのエチレンオキサイドの長さ(付加モル数)としては、2〜100が好ましく、4〜50がより好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ポリオキシエチレンモノカプリル酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセキステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0052】
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL TL−10、NIKKOL TP−10V、NIKKOL TS−10V、NIKKOL TS−10MV、NIKKOL TS−106V、NIKKOL TS−30V、NIKKOL TI−10V、NIKKOL TO−10V、NIKKOL TO−10MV、NIKKOL TO−106V、NIKKOL TO−30V、花王(株)社製の、レオドールTW−L106、TW−L120、TW−P120、TW−S106V、TW−S120V、TW−S320V、TW−O106V、TW−O120V、TW−O320V、TW−IS399C、レオドールスーパーSP−L10、TW−L120、第一工業製薬(株)社製の、ソルゲンTW−20、TW−60V、TW−80V等が挙げられる。
【0053】
これらの他の界面活性剤の量は、微細な粒子径の乳化物が容易に得るために、油溶性抗酸化物質の量に対して0.5倍量以下であることが好ましく、2倍量以下がより好ましく、1.5倍量以下が更に好ましく、1倍量以下が特に好ましい。前記界面活性剤量が2倍量以下とすることにより、泡立ちがひどくなる等の問題がなくなる傾向となる点で好ましい。
【0054】
これらの任意の界面活性剤の添加量は、油溶性抗酸化物質粉末全体に対して、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、1〜15質量%が更に好ましい。
前記界面活性剤量を0.01質量%以上とすることにより、エマルション組成物としたときの油相/水相間の界面張力を下げ易く、また、30質量%以下とすることにより、過剰量とすることがなくエマルション組成物の泡立ちがひどくなる等の問題を生じ難い点で好ましい。
【0055】
(b)リン脂質
本発明の油溶性抗酸化物質粉末は、(b)成分として、リン脂質を含有する。
ここでいうリン脂質とは、複合脂質の内、脂肪酸、アルコール、燐酸、窒素化合物からなるエステルで、リン酸エステル及び脂肪酸エステルを有する一群であり、グリセリンを含まないグリセロリン脂質、スフィンドシンを含むスフィンゴリン脂質をいう。
【0056】
本発明で用いることができるグリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジン酸、ビスホスアチジン酸、レシチン(ホスファチジルコリン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセリン、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等の成分が挙げられ、これらの成分を含む大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来のものや、卵黄、牛等の動物由来のもの及び大腸菌等の微生物等由来の各種レシチンを挙げることができる。
本発明で用いることができるスフィンゴリン脂質としては、例えば、スフィンゴミエリンを挙げることができる。
【0057】
また、本発明においては、グリセロリン脂質として、酵素分解した結果、1分子内に1つの脂肪酸残基を有するグリセロリン脂質、即ちリゾレシチンも含まれる。
このようなリゾレシチンは、酸、又はアルカリ触媒によるレシチンの加水分解により得られるが、ホスホリパーゼA1又はA2によるレシチンの加水分解により得ることがもできる。
このようなリゾレシチンとしては、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルグリセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルメチルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン(リゾレシチン)、リゾホスファチジルセリン等が挙げられる。
【0058】
また更に、上記のレシチンに代表されるグリセロリン脂質としては、水素添加又はヒドロキシル化されたものも、本発明において用いることができる。
前記水素添加は、例えば、レシチンを触媒の存在下に水素と反応させることにより行われ、脂肪酸部分の不飽和結合が水素添加される。水素添加により、レシチンの酸化安定性が向上する。
また、前記ヒドロキシル化は、レシチンを高濃度の過酸化水素と酢酸、酒石酸、酪酸などの有機酸と共に加熱することにより、脂肪酸部分の不飽和結合が、ヒドロキシル化される。ヒドロキシル化により、レシチンの親水性が改良される。
【0059】
上記の(b)リン脂質の中でも、粉末の保存安定性の観点から1分子内に2つの脂肪酸残基を有するものであることが好ましく、レシチンが特に好ましい。
【0060】
前記レシチンは、分子内に親水基と疎水基を有していることから、従来より、食品、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。
また、水素添加、ヒドロキシル化されたレシチンは、化粧品用途への応用に特に好ましい。
【0061】
前記レシチンの純度60質量%以上のものが産業的にはレシチンとして利用されているが、本発明においては、一般に「高純度レシチン」と称されるレシチン純度80質量%以上のものが好ましく、より好ましくは90質量%以上のものである。
このレシチン純度(質量%)は、レシチンがトルエンに溶解しやすくアセトンに溶解しない性質を利用して、トルエン不溶物とアセトン可溶物の重量を差し引くことにより求められる。高純度レシチンは、リゾレシチンに比べて親油性が高く、そのためレシチンと油溶性抗酸化物質との相溶性が高くなり、乳化安定性を向上させ得るため好ましい。
本発明で用いるリン脂質は、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0062】
本発明の油溶性抗酸化物質粉末において、リン脂質の含有量は、油溶性抗酸化物質粉末全体に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%、更に好ましくは0.5〜2質量%である。
前記リン脂質の含有量を0.1質量以上とすることにより、エマルション組成物の乳化安定性が良好となる傾向がある。また、前記含有量を10質量%以下とすることにより、過剰なリン脂質が油溶性抗酸化物質から離れて水中にリン脂質分散体を形成することなく、エマルション組成物の乳化安定性の点から好ましい。
【0063】
本発明の油溶性抗酸化物質粉末は、更に、(a)と(b)の組成比が、同じか又は(a)成分の方が多いものである。(a)成分が(b)成分と同じかそれ以上の量で油溶性抗酸化物質粉末中に存在するので、微細な粒子径を得ることができると共に、粒子径の保存安定性及びエマルションの保存安定性をも良好なものにすることができる。
(a)成分及び(b)成分の組成比は、粒子の微細化及び乳化安定性に適切な量という観点から、またエマルション組成物としたときの泡立ちの調整の観点から、(a)成分が(b)成分の1倍〜100倍であることが好ましく、5倍を超え、80倍以下であることが更に好ましい。
【0064】
(d)賦形剤
油溶性抗酸化物質粉末は、粉末化の容易性の観点から好ましくは(d)成分として賦形剤を含む。
賦形剤は、本油溶性抗酸化物質粉末中の油溶性抗酸化物質を安定して粒子化させるために一般的に用いられている水溶性物質であればよく、グルコース、果糖、乳糖、麦芽糖、ショ糖、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、イヌリン、トレハロースなどの単糖及び多糖類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクトース、マルトトリイトール、キシリトールなどの糖アルコール;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩;アラビアガム、グアーガム、ペクチン、プルラン、アルギン酸ナトリウムなどの増粘多糖類;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体;デンプンにエステル化、エーテル化処理、末端還元処理を施したデンプン誘導体;その他に加工澱粉、ゼラチン分解物、寒天、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。この中でも、溶解性の面から単糖、多糖類、糖アルコール、無機塩が好ましく、吸湿性、粒子形成性の観点から、アラビアガム、イヌリン、デキストリン、糖アルコール、無機塩が更に好ましく、アラビアガム、イヌリン、デキストリンが特に好ましく、イヌリンが最も好ましい。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの賦形剤は、油溶性抗酸化物質を効率よく良好に保持する観点から、油溶性抗酸化物質粉末全体に対して、好ましくは20質量%〜95質量%、より好ましくは30質量%〜85質量%で用いられる。
【0065】
なお、油溶性抗酸化物質粉末は、必要に応じて、その他の添加剤を適宜添加することができるが、粉末化の容易性の観点から常温で液体の多価アルコールを含まないことが好ましい。ここでいう多価アルコールとは、二価以上のアルコールを意味し、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、これらを、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
本発明において「常温で液体の多価アルコールを含まない」とは、油溶性抗酸化物質粉末全体に対して1質量%以下を意味し、好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%、最も好ましくは0質量%である。
【0066】
油溶性抗酸化物質粉末は、上述した(a)成分、(b)成分を含むエマルション組成物を製造し、これを乾燥することによって得ることが好ましい。
即ち、油溶性抗酸化物質粉末は、油溶性抗酸化物質、(a)ショ糖脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル、(b)リン脂質を含有し、(a)と(b)の組成比が、同じか又は(a)の方が多い比であるエマルション組成物を製造する製造工程と、得られたエマルション組成物を乾燥する工程を含む製造方法によって得ることができる。
【0067】
<エマルション組成物の製造方法>
エマルション組成物の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、I)水性媒体(水等)に、界面活性剤を溶解させて、水相を得る工程、II)前記油溶性抗酸化物質及びリン脂質を混合・溶解して、油相を得る工程、III)攪拌下で水相と油相を混合して、乳化分散を行い
、エマルション組成物を得る工程を含む製造方法が好ましい。
前記製造方法における油相、水相に含有される成分は、前述の油溶性抗酸化物質粉末の構成成分と同様であり、好ましい例及び好ましい量も同様であり、好ましい組合せがより好ましい。
【0068】
前記乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、一般的には油相/水相比率が小さい方が、粒子径は小さくなるが、油相/水相比率が小さすぎると、有効成分が低くなるため実用上の問題を生じたり、また、界面活性剤濃度が薄くなるため、エマルション組成物の乳化安定性が悪化することがある。
以上の観点から、油相/水相比率(質量%)は0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70が好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
このとき、エマルション組成物における水の割合は、エマルション粒子の微細化の観点から80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。
【0069】
前記乳化分散は、1ステップの乳化操作を行うことでもよいが、2ステップ以上の乳化操作を行うことが均一で微細な乳化粒子を得る点から好ましい。
具体的には、剪断作用を利用する通常の乳化装置(例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等)を用いて乳化するという1ステップの乳化操作に加えて、高圧ホモジナイザー等を通して乳化する等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることができる。また、更に均一な粒子径の液滴とする目的で複数回行ってもよい。
【0070】
本発明における乳化分散する際の温度条件は、特に限定されるものでないが、油溶性抗酸化物質の安定性の観点から10〜100℃であることが好ましく、取り扱う油溶性抗酸化物質の融点などにより、適宜好ましい範囲を選択することができる。
【0071】
前記高圧ホモジナイザーとしては、処理液の流路が固定されたチャンバーを有するチャンバー型高圧ホモジナイザー及び均質バルブを有する均質バルブ型高圧ホモジナイザーが挙げられる。これらの中でも、均質バルブ型高圧ホモジナイザーは、処理液の流路の幅を容易に調節でき、操作時の圧力及び流量を任意に設定できるため、その操作範囲が広く、特に本発明にかかるエマルション組成物の製造方法にとって好ましい。
また、操作の自由度は低いが、圧力を高める機構が作りやすいため、超高圧を必要とする場合、チャンバー型高圧ホモジナイザーも好適に用いることができる。
【0072】
前記チャンバー型高圧ホモジナイザーとしては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)等が挙げられる。
前記均質バルブ型高圧ホモジナイザーとしては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソ
アビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
【0073】
本発明において、前記高圧ホモジナイザーの圧力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは50〜250MPa、更に好ましくは100〜250MPaで処理することが好ましい。
また、乳化分散された組成物である乳化液はチャンバー通過直後30秒以内、好ましくは3秒以内に何らかの冷却器を通して冷却することが、分散粒子の粒子径保持の観点から好ましい。
【0074】
このような工程によって得られたエマルション組成物は、油溶性抗酸化物質を含有する乳化粒子が水性媒体中に分散しているO/Wエマルションである。
特に、本発明では、微細なエマルション粒子が均一に分散したエマルション組成物を得ることができる。
ここで得られたエマルション組成物の粒子径は、粒子安定性及び透明性の観点から、200nm以下であることが好ましく、透明性の観点から、より好ましくは130nm以下、最も好ましくは90nm以下である。
【0075】
本発明においてエマルション組成物の粒子径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルションの粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における粒子径範囲及び測定の容易さから、本発明でのエマルション粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
本発明における粒子径の測定方法は、たとえば、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株)の場合、エマルション組成物の場合には10質量%の水溶液を調製し、同装置の標準測定条件で測定する。一方、油溶性抗酸化物質粉末の場合には、1質量%の水溶液を調製し、上記エマルション組成物と同じ条件で、測定する。
前記エマルション組成物の粒子径は、エマルション組成物の成分以外に、製造方法における攪拌条件(せん断力・温度・圧力)や、油相と水相比率、などの要因によって調整することができる。
【0076】
上記のようにして得られたエマルション組成物は、次いで乾燥工程で乾燥に供される。
本製造方法に適用可能な乾燥方法としては、通常、この用途で使用される方法であればいずれのものであってもよく、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、棚乾燥、ベルト乾燥、ドラム乾燥などを挙げることができる。このうち、粉体の取り扱いの観点から、噴霧乾燥、凍結乾燥が好ましい。
【0077】
このようにして得られた油溶性抗酸化物質粉末は、目的とする製品に応じた水性媒体に再溶解することによって、粒子径、色素及びエマルション粒子の分散性において良好な保存安定性を有するエマルション組成物を構成することができる。
再溶解後に得られたエマルション組成物における粒子径は、1質量%の水溶液としたときに平均粒子径が透明性や吸収性の観点から200nm以下にものとすることができ、良好な透明性や分散安定性並びに上記各種保存安定性の観点から、1nm以上、130nm未満のものであることが好ましい。
【0078】
(B)水溶性抗酸化物質粉末
水溶性抗酸化物質としては、食品、医薬品分野等において使用されているものが使用でき、例えばアスコルビン酸またはその誘導体、エリソルビン酸またその塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ亜硫酸塩類、抗酸化能力を持つ植物エキス(茶エキス、りんごエキスなど)などを用いることが出来る。これらのうち複数種を用いても良い。
水溶性抗酸化物質のうち、ビタミンC(アスコルビン酸)、カテキン類、フラボノイド類等が好ましい。
より好ましくは、ビタミンC、ケルセチン、プロアントシアニジン、松樹皮抽出物、アントシアニン、エピガロガテキンガレートがあげられる。
水溶性抗酸化物質は、オイルコートされた粉末であることが好ましい。これにより他の抗酸化物質との接触による反応を防止し、経時安定性の上で好ましい。

【0079】
水溶性抗酸化物質としては、ラジカル捕捉剤が好ましい。ラジカル捕捉剤とは、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である(出典:「油化学便覧 第4版」、日本油化学会編 2001)。
【0080】
前記ラジカル捕捉剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
本発明においては、以下の実験条件下で、油脂の自動酸化反応を利用して、油脂の過酸化物価(POV値)を60meq/kgに引き上げるまでに要する時間が、ブランクに対し2倍以上である化合物を「ラジカル捕捉剤」と定義する。油脂の過酸化物価(POV値)は常法により測定する。
【0081】
<条件>
油脂:オリーブ油
検体添加量:油脂に対し0.1質量%
試験方法:試料を190℃にて加熱し、時間を追ってPOV値を常法により測定し、60meq/kgとなる時間を算出した。
【0082】
本発明におけるラジカル捕捉剤は、エマルションの酸化に対する安定性の観点から、前記POV値60meq/kgになるまでに要する時間がブランクに対し5倍以上であるラジカル捕捉剤が好ましい。
【0083】
本発明のラジカル捕捉剤として使用できる化合物は、「抗酸化剤の理論と実際」(梶本著、三書房 1984)や、「酸化防止剤ハンドブック」(猿渡、西野、田端著、大成社 1976)に記載の各種酸化防止剤のうち、ラジカル捕捉剤として機能するものであれば良く、具体的には、フェノール性OHを有する化合物、フェニレンジアミン等のアミン系化合物、また、アスコルビン酸及びエリソルビン酸の油溶化誘導体等を挙げることができる。
【0084】
以下に好ましいラジカル捕捉剤を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のエマルジョン組成物および高濃度エマルジョンは、ラジカル捕捉剤として化合物群(I)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはその塩、あるいはアスコルビン酸誘導体またはエリソルビン酸誘導体またはその塩からなる化合物群、(II)ポリフェノール類からなる化合物群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含有することが好ましい。
本発明のエマルジョン組成物におけるラジカル捕捉剤の含有量は一般的には0.001〜5.0質量%であり、好ましくは0.01〜3.0質量%、より好ましくは0.1〜2.0質量%である。
以下、化合物群(I)〜(II)の具体的な化合物例を挙げるが、本発明に使用できる化合物を制限するものではない。
【0085】
(I)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはその塩
アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはその塩として、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸K、L−アスコルビン酸Ca、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビル等が挙げられる。これらのうち、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルが特に好ましい。
【0086】
エリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはその塩として、エリソルビン酸、エリソルビン酸Na、エリソルビン酸K、エリソルビン酸Ca、エリソルビン酸リン酸エステル、エリソルビン酸硫酸エステル、エリソルビン酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸エリソルビル、等が挙げられる。これらのうち、エリソルビン酸、エリソルビン酸Naが特に好ましい。
【0087】
本発明に用いる化合物群(I)に属するラジカル捕捉剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、L−アスコルビン酸(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、L−アスコルビン酸Na(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、アスコルビン酸2−グルコシド(商品名 AA−2G:林原生物化学研究所)、L−アスコルビン酸燐酸Mg(商品名 アスコルビン酸PM「SDK」(昭和電工)、商品名 NIKKOL VC−PMG(日光ケミカルズ)、商品名 シーメート(武田薬品工業))、パルミチン酸アスコルビル(DSM ニュートリション ジャパン、金剛薬品、メルク、ほか)等が挙げられる。
【0088】
(II)ポリフェノール類からなる化合物群
ポリフェノール類からなる化合物群として、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができる。また、これらの化合物は、以下のような天然物由来の抽出物中に多く含まれるため、抽出物という状態で利用することができる。
【0089】
例えば、カンゾウ抽出物、キュウリ抽出物、ケイケットウ抽出物、ゲンチアナ(リンドウ)抽出物、ゲンノショウコ抽出物、コレステロール及びその誘導体、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、ニンジン抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、サンペンズ(カワラケツメイ)抽出物、トルメンチラ抽出物、パセリ抽出物、ボタン(ボタンピ)抽出物、モッカ(ボケ)抽出物、メリッサ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、レタス抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、微生物醗酵代謝産物、羅漢果抽出物等が挙げられる(かっこ内は、植物の別名、生薬名等を記載した。)。これらのポリフェノール類のうち、特に好ましいものとしては、カテキン、ローズマリー抽出物、グルコシルルチン、エラグ酸、没食子酸を挙げることができる。
【0090】
本発明に用いる化合物群(II)に属するラジカル捕捉剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、エラグ酸(和光純薬ほか)、ローズマリー抽出物(商品名 RM−21A、RM−21E:三菱化学フーズほか)、カテキン(商品名 サンカトールW−5、No.1:太陽化学、ほか)、没食子酸Na(商品名 サンカトール:太陽化学、ほか)、ルチン・グルコシルルチン・酵素分解ルチン(商品名 ルチンK−2、P−10:キリヤ化学、商品名 αGルチン:林原生物化学研究所、ほか)等が挙げられる。
【0091】
水溶性抗酸化物質粉末の粒子径等は特に制限されず、市販されているものを利用することも出来るし、常法で調製することもできる。
【0092】
(C)チオクト酸
チオクト酸としては、一般的に用いられている合成物および天然成分由来の抽出物等とくに限定されない。
チオクト酸はそのまま粉体として用いてもよいが、乳化剤共存させて水溶液に容易に分散可能とすることが好ましい。乳化剤を用いた分散方法としては、特開2007−16000号公報に記載の方法などをとることができる。乳化剤としては、HLB(Hydrophilic Lipophilic Balance)で9以上、好ましくは12以上、さらに好ましくは14以上のものが好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、ポリオキシエチレン誘導体、脂肪酸塩といった合成乳化剤や、酵素分解レシチン、水素添加酵素分解レシチン、ヒドロキシレシチン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、アセチル化レシチンといった天然由来のレシチン類を化学的あるいは酵素処理することで得られたレシチンの誘導体、ダイズサポニンやキラヤサポニン等の天然由来のサポニン類等が挙げられる。乳化剤を用いる場合の使用量は適宜調整できるが、一般的にはチオクト酸の質量の0.1〜10倍程度用いられる。
チオクト酸はシクロデキストリン包接したものを用いることが好ましい。これにより他の抗酸化物質との接触による反応を防止し経時安定性が改善される。
シクロデキストリン包接の方法としては、たとえば特開2006−169253号公報に記載のような一般的な方法を用いることができる。
【0093】
<配合比率>
油溶性抗酸化物質粉末は粉末組成物全量に対して6〜70質量%、水溶性抗酸化物質は粉末組成物全量に対して10〜80質量%、チオクト酸は粉末組成物全量に対して2〜60質量%含有することが更に好ましい。
より好ましくは、油溶性抗酸化物質粉末は粉末組成物全量に対して20〜50質量%、水溶性抗酸化物質は粉末組成物全量に対して20〜60質量%、チオクト酸は粉末組成物全量に対して10〜50質量%含有することが更に好ましい。
また、粉末組成物中が賦形剤を含む場合、粉末組成物全量に対して5〜60質量%含有することが更に好ましい。
【0094】
<粉末>
(A)油溶性抗酸化物質粉末、(B)水溶性抗酸化物質粉末、及び、(C)チオクト酸は、各々別の粉体として含まれることが好ましい。
【0095】
本発明の粉末組成物の服用される形態は特に制限されず、例えば散剤として粉のままでも、オブラートやカプセルに封入されても良い。
【0096】
本発明の抗酸化物質粉末をカプセル製剤とする場合、硬カプセル、軟カプセル、マイクロカプセル、シームレスカプセルなどの形態であってもよく、カプセル皮膜が、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーの一種又は二種以上によって構成されていることが好ましい特徴とする。これらのカプセル皮膜は周知慣用の方法で製することができる。ここで、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーで構成されているとは、カプセル皮膜全体重量に対して、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーの総量が30重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であるものを意味する。なお、本発明の効果を損なわない限り牛皮ゼラチンなどの他の材料をカプセル皮膜に含んでもよい。
【0097】
天然親水性ポリマーは、天然の動植物等を由来として精製又は合成して得られる親水性ポリマー又はその加工ポリマーであって、アルギン酸又はその塩、寒天ゴム、グアーゴム、イナゴマメゴム、タラゴム、ガッティゴム、カーヤグランディフォリアゴム、トラガントゴム、カラヤゴム、ペクチン、アラビアゴム、キサンタンゴム、ジェランゴム、デンプン、コンニャクマンナン、ガラクトマンナン、フノラン、アセタンゴム、ウエラン、ラムサン、フルセラン、スクシノグリカン、スクレノグリカン、スキゾフィラン、タマリンドゴム、カードラン、カラギナン、プルラン又はデキストランから選ばれる少なくとも一種等が例示できる。これらを二種以上を組み合わせて用いてもよく、上記した豚皮ゼラチンなどと組み合わせることもできる。これらの親水性ポリマーは天然物を加工したものであったもよい。なかでも特に好ましくは、プルラン、カラギナン、デキストランであり、特に好ましくはカラギナンである。
豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチンは、豚皮や豚骨や魚を原料として得られる蛋白質を温水抽出した蛋白質をいう。本発明の豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチンは、例えば、豚皮や、豚骨、スズキ目、鱈、鮪、深海魚などを酸又はアルカリで処理した後に、水中で加温して抽出を行い、イオン交換処理工程を経て精製することができる。
【0098】
本発明の豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーは、酵素処理などによって低分子化することができ平均分子量を適宜選択することができるが、通常1〜500万、好ましくは1万〜500万、より好ましくは1万〜250万、さらに好ましくは1万〜100万、特に好ましくは1万〜50万程度である。
【0099】
本発明のカプセル製剤に用いるカプセル皮膜には、上記した特定の動植物等を由来とする原料のみならず、さらに油脂、多価アルコール、界面活性剤、酸化防止剤、着色料、香料等が含まれてもよい。油脂としては、例えば、月見草油、大豆油、サフラワー油、オリーブ油、胚芽油、菜種油、ヒマワリ油、落花生油、綿実油、米ぬか油、ココアバターなどの天然油やこれらの硬化油、脂肪酸のグリセリド(グリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドなど)など、多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールなど、界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤など、色素としては、カロチノイド系色素、アントシアニン系色素、カカオ色素、アントラノン系色素、カラメル色素などが挙げられる。なかでも、カプセル製剤の安定化をより向上することができる点で、カプセル皮膜への油脂、多価アルコール、界面活性剤、天然色素の添加が好適である。
【0100】
抗酸化物質粉末は、このように透明性、分散安定性のみならず、含有成分の保存安定性、粒子径の保存安定性、エマルションとしての保存安定性が良好なものであるため、食品、化粧品、医薬品に適用することが好ましい。
【0101】
ここで、食品としては、飲料、冷菓など、化粧品としてはスキン化粧料(化粧水、美容液、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧料、メークアップ化粧料など、医薬品としては、栄養ドリンク、滋養強壮剤などを挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
また、前記食品、化粧品、医薬品は、抗酸化物質粉末と、所望の目的を達成するための添加可能な任意の成分とを、常法により混合等して、得ることができる。
ここで本抗酸化物質粉末は、目的とする各種製品組成物の形態に応じて、粉末化の状態で、又は水性媒体に再溶解して、他の成分と混合すればよい。
【0102】
食品、化粧品、医薬品などに対して用いられる抗酸化物質粉末の添加量は、製品の種類や目的などによって異なり一概には規定できないが、製品に対して、0.01〜10質量%、好ましくは、0.05〜5質量%の範囲となるように添加して用いることができる。
添加量が0.01質量%以上であれば目的の効果の発揮が期待でき、10質量%以下であれば、適切な効果を効率よく発揮できることが多い。
【0103】
抗酸化物質粉末は、粉末として長期保存が可能であり、特に再溶解して水溶性製品、例えば飲料(食品の場合)や化粧水、美容液、乳液、クリームパック・マスク、パック、洗髪用化粧品、フレグランス化粧品、液体ボディ洗浄料、UVケア化粧品、防臭化粧品、オーラルケア化粧品等(化粧品の場合)などに使用した場合には、透明感のある製品が得られ、且つ、長期保存又は滅菌処理などの苛酷条件下での不溶物の析出、沈殿又はネックリングなどの不都合な現象の発生を抑制することができる。
【0104】
本発明の抗酸化物質粉末の内容物には、さらに他の成分を含有していてもよい。例えば、油脂、多価アルコール、有機酸、界面活性剤、酸化防止剤、保存料、糖類、澱粉、結晶セルロース、甘味料、着色料、香料等を含有しうる。なかでも、油脂及び多価アルコールが有用である。油脂としては、例えば、月見草油、大豆油、サフラワー油、オリーブ油、胚芽油、菜種油、ヒマワリ油、落花生油、綿実油、米ぬか油、ココアバターなどの天然植物油等やこれらの硬化油、脂肪酸のグリセリド(グリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドなど)等が挙げられるが、特に好ましくは月見草油であり、多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールなど、有機酸としては、クエン酸、コハク酸、酒石酸、アスパルギン酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸など、酸化防止剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、亜硫酸水素塩、次亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、EDTAカルシウム二ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウムなど、保存料としては、安息香酸又はその塩、ソルビン酸又はその塩、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチルなどが挙げられる。
【0105】
また、例えば、ビタミンK類、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン、タウリン、コラーゲン、グルコサミン、アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸、ビオチン、ホエーペプチド、ダイズペプチド、ローヤルゼリー、γ−オリザノール、オロチン酸、ルチン、ヘスペリジン、カルニチン、塩化カルニチン又はそれらの塩から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することができる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」と「%」表示してあるものは、特に断らない限り質量基準である。
【0107】
[実施例1]
エマルション組成物EM−1の調製
エマルション組成物EM−1を下記に示す組成及び下記製法で調製した。
【0108】
<組成>
(成分) (質量%)
(1)ヘマトコッカス藻色素(アスタキサンチン類含有率 20質量%)*1
2.8
(2)ミックストコフェロール*2 0.7
(3)ショ糖ラウリン酸エステル*3 2.6
(4)ラウリン酸ポリグリセリル−10*4 0.8
(5)レシチン*5 0.7
(6)イヌリン*6 12.0
(7)HO 80.4
*1:ASTOTS−S:武田紙器(株)製
*2:理研Eオイル800:理研ビタミン(株)製
*3:リョートーシュガーエステルL−1695:三菱化学フーズ(株)製
*4:NIKKOL Decaglyn 1−L:日光ケミカルズ(株)製
*5:レシオンP:理研ビタミン(株)製
*6:フジFF:フジ日本精糖(株)
【0109】
油溶性抗酸化物質粉末PW−1の調製
(A) 上記成 分(1)〜(2)を、容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合したことを確認し、70℃に保ち、混合物Aを得た。
(B) 上記成分(3)〜(7)を、容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合したことを確認し、加熱混合し、70℃に保ち、混合物Bを得た。
(C) 混合物Bに混合物Aを加えて混合し、均一に乳化した。乳化装置は、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、10000回転にて5分間攪拌し、混合物Cを得た。
(D) 混合物Cを高圧ホモジナイザー(アルティマイザーHJP−25003:(株)スギノマシン製)を使用し、圧力240MPa、液温45℃にて乳化操作を行い、エマルション組成物を得た。
得られたエマルション組成物を、スプレードライヤ(ADL310:ヤマト科学(株)製)にて毎分10mLの速度で送液し、140℃の送風にて噴霧乾燥させ、抗酸化物質粉末PW−1を調製した。
【0110】
水溶性抗酸化物質粉末の調製
L−アスコルビン酸(V.C.、和光純薬製) 80,食用精製加工油脂 20の割合で混合したものを微粉化及びマイクロカプセル化処理を行い、30メッシュの分級処理をしてオイルコーティング型ビタミンCを調製した。
【0111】
シクロデキストリン包接チオクト酸の調整 55gのシクロデキストリン粉末、20gの水飴を100mlの蒸留水に溶解し、ホモジナイザーで攪拌しながら、20gのチオクト酸(99%:和光純薬製)を徐々に加え、更に水酸化ナトリウム4gを加えて30分攪拌して、ろ過した液を乾燥してシクロデキストリン包接チオクト酸を調製した。
【0112】
粉末組成物の調製
表1に示す割合(質量%)で水溶性抗酸化物質粉末(L−アスコルビン酸(V.C.)およびオイルコーティング型V.C.)とチオクト酸およびシクロデキストリン包接チオクト酸と粉末PW−1を混合して作成した粉末組成物101〜107及び粉末化していない油溶性抗酸化物質(OIL-A:アスタキサンチン類含有オイル、含有率3質量%:武田紙器製10質量%OILをオリーフ゛油で3質量%まで薄めたもの)との混合物108を作成した。
【0113】
【表1】

【0114】
試料101〜106の各特性について以下の通り評価した。
(1)分散性
日本薬局方記載の方法で、塩化ナトリウム2.0gに塩酸7.0mlと水を加えて溶かし1000mlとした人工胃液を調製した。ここに各試料20gを攪拌しながら添加し溶解性・分散性を見た。
分散性は以下の基準で評点を付け、その結果を表2に示した。
4:均一に分散
3:若干の不溶成分が見えるが分散している
2:分散しているが不溶成分粒が多い
1:分離して全く分散しない
【0115】
(2)保存安定性
試料101〜108をそれぞれ2つに分け、一方を10gガラス瓶に充填し、50℃にて7日間保存した。その後、粉末組成物1gを水999gに溶解した試料101〜107について、分光吸収測定を、分光光度計(ND−1000:ナノドロップ社製)で行った。
試料108については組成物1gを60%エタノール水溶液に溶解し分光吸収測定を行った。
保存前の479nmでの吸光度をAb0、保存後の479nmでの吸光度をAb1とし、次式にて変化率を求めた。保存安定性が悪い場合、Ab1はAb0よりも大きくなるため、変化率は大きい方に振れる。
式:変化率(%)=(Ab0−Ab1)/Ab0 ×100
以下の基準で評点をつけ、その結果を表2に示した。
4:10%以内
3:10%を超え、20%以内(実用的に許容)
2:20%を超え、50%以内
1:50%超え
【0116】
(3)体内吸収性
上記試料101〜108を、アスタキサンチン濃度0.2%となるように水で溶解した被験液を調製した。
この溶液を、体重あたり一定量(10ml/kg)となるようにラットに経口投与し、投与後24時間以内の血液を2〜4時間おきに採取した。採取後、アスタキサンチン血中濃度を高速液体クロマトグラフィーにて測定し、体内吸収量を算出した。血中濃度の時間に対する積分値を、試料101のときを100として、表2に相対値にて示した。
【0117】
(4)経時後の体内吸収性
更に試料101〜108を10gガラス瓶に充填し、50℃にて7日間保存した。その後、同様にラットに経口投与し体内吸収量を算出し、表2に血中濃度の時間に対する積分値を、試料101の保存前の値を100とした相対値にて示した。
【0118】
(5)抗酸化物質服用前後の尿中8−ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)の測定
尿中に排出される8−ヒドロキシデオキシグアノシンは、活性酸素による生体変化を反映するバイオマーカーとして用いられている方法である。
健康的な成人男子5名ずつに、試料101〜108を1日あたり各1gを4週間服用してもらい、服用前後での排出8−OHdG(8−ヒドロキシデオキシグアノシン)の排出量を測定した。尿中の8−OHdGの分析にはELISAキット(日本老化制御研究所)を用いた。4週間服用後の8−OHdG排出量の服用前の値に対する割合(%)を表2に示した。この値が小さいほど抗酸化成分によって活性酸素のダメージが小さくなったことを示すと考えられる。
【0119】
【表2】

【0120】
表2から明らかなように、試料101〜103はいずれも、油溶性抗酸化物質が粉末ではない試料108に対し、分散性及び体内への吸収性で明らかに優れている。また、比較試料104〜107に対しても、保存後の体内吸収性が改良されていた。
本発明の試料の中でも、水溶性抗酸化物質をオイルコーティングした試料102や水溶性抗酸化物質をオイルコーティングしチオクト酸をシクロデキストリン包接した試料103が最も保存後の体内吸収性が良好であった。
4週間服用後の8−OHdG排出量は本発明の油溶性抗酸化物質と水溶性抗酸化物質とチオクト酸を混合した粉末組成物が最も減っており、体内の活性酸素処理効果が明らかに高い結果となった。
【0121】
[実施例2]
油溶性抗酸化成分の種類をそれぞれコエンザイムQ10(10%:和光純薬製)、β−カロテン(10%:和光純薬製)に変更し含有率が10%になるように調整した抗酸化物質粉末PW−2およびPW−3をPW−1と同様の方法で調製した。
【0122】
表1に示す割合で水溶性抗酸化物質粉末とチオクト酸と粉末PW−1〜PW−3を混合して作成した粉末組成物111〜113及び粉末化していない油溶性抗酸化物質(OIL−A、OIL−B(コエンザイムQ10含有オイル、含有率10質量%)、およびOIL−C(βカロテン含有オイル、含有率10質量%))との混合物121〜123を作成した。
【0123】
【表3】

【0124】
試料101〜106の各特性について以下の通り評価した。
【0125】
(1)分散性
日本薬局方記載の方法で、塩化ナトリウム2.0gに塩酸7.0mlと水を加えて溶かし1000mlとした人工胃液を調製した。ここに各試料20gを攪拌しながら添加し溶解性・分散性を見た。
分散性は以下の基準で評点を付け、その結果を表4に示した。
4:均一に分散
3:若干の不溶成分が見えるが分散している
2:分散しているが不溶成分粒が多い
1:分離して全く分散しない
【0126】
(2)保存安定性
試料111〜113,121〜123をそれぞれ2つに分け、一方を10gガラス瓶に充填し、50℃にて7日間保存した。その後、粉末組成物1gを水999gに溶解した試料111〜113について、分光吸収測定を、分光光度計(ND−1000:ナノドロップ社製)で行った。
試料121〜123については組成物1gを60%エタノール水溶液に溶解し分光吸収測定を行った。
保存前の吸光度をAb0、保存後の吸光度をAb1とし、次式にて変化率を求めた。保存安定性が悪い場合、Ab1はAb0よりも大きくなるため、変化率は大きい方に振れる。
式:変化率(%)=(Ab0−Ab1)/Ab0 ×100
以下の基準で評点をつけ、その結果を表4に示した。
4:10%以内
3:10%を超え、20%以内(実用的に許容)
2:20%を超え、50%以内
1:50%超え
【0127】
【表4】

【0128】
表4から明らかなように、試料111〜113はいずれも、油溶性抗酸化物質が粉末ではない試料121〜123に対し、分散性及び保存安定性で明らかに優れている。中でも、本発明の資料112は保存後の安定性で最も良い結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油溶性抗酸化物質粉末、水溶性抗酸化物質粉末、及び、チオクト酸を含むことを特徴とする、粉末組成物。
【請求項2】
前記油溶性抗酸化物質粉末が、カロチノイド色素、脂溶性ビタミン類、または、脂溶性ビタミン様物質であることを特徴とする、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項3】
前記カロチノイド色素が、アスタキサンチンまたはそのエステルを含有する天然抽出物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の粉末組成物。
【請求項4】
前記脂溶性ビタミン様物質が、ユビデカレノンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項5】
前記油溶性抗酸化物質が、(a)ショ糖脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル、(b)リン脂質を含有し、かつ、(a)と(b)の質量組成比が同じか又は(a)の方が多いエマルション組成物を乾燥して得られた粉末組成物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項6】
前記水溶性抗酸化物質が、ビタミンCまたはカテキン類またはフラボノイド類であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項7】
前記水溶性抗酸化物質が、オイルコートされた粉末であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項8】
チオクト酸が、シクロデキストリン包接されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の粉末組成物を含む食品。

【公開番号】特開2009−62331(P2009−62331A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232794(P2007−232794)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】