説明

粉末被覆組成物、中間光沢範囲被覆剤、関連する方法および基材

【課題】硬化可能な粉末被覆組成物を提供すること。
【解決手段】(a)第1のフィルム形成樹脂、(b)この第1のフィルム形成樹脂とは異なり、そしてこの第1のフィルム形成樹脂と適合しない第2のフィルム形成樹脂、および(c)上記第1のフィルム形成樹脂と適合する第1の部分および上記第2のフィルム形成樹脂と適合する第2の部分を含む適合化剤を含む、フィルム形成樹脂組成物を含む硬化可能な粉末被覆組成物が開示される。この適合化剤は、このような組成物に、基材の少なくとも一部分上に堆積され、そして硬化されるとき、中間光沢被覆を生じる被覆組成物を生じるに十分な量で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、硬化可能な粉末被覆組成物に関する。より詳細には、本発明は、(a)第1のフィルム形成樹脂、(b)この第1のフィルム形成樹脂とは異なり、そしてこの第1のフィルム形成樹脂と適合しない第2のフィルム形成樹脂、および(c)上記第1のフィルム形成樹脂と適合する第1の部分および上記第2のフィルム形成樹脂と適合する第2の部分を含む適合化剤を含む、フィルム形成樹脂組成物を含む硬化可能な粉末被覆組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
種々のタイプの基材を被覆することにおける使用のための粉末被覆組成物が、しばしば所望される。このような被覆組成物は、液体被覆組成物においてしばしば用いられる有機溶媒の使用を顕著に低減するか、またはなくしさえする。粉末被覆組成物が熱によって硬化されるとき、揮発性物質は周辺環境にほとんど放出されない。これは、被覆組成物が熱によって硬化されるとき、有機溶媒が周辺雰囲気中に揮発される液体被覆組成物に対する顕著な利点である。
【0003】
多くの戸外の適用のような多くの適用において、低減された光沢を有する被覆を生成する粉末被覆組成物が所望される。低光沢被覆は、円滑な肉眼的外観を保持しながら、顕微鏡スケールで粗い表面を生成し、それ故、ミクロ構造の表面上で入射光を散乱することによって達成され得る。
【0004】
液体被覆組成物では、光沢減少は、しばしば、高容量の色素および/または充填剤粒子の使用によって達成される。このアプローチは、粉末被覆組成物でときどき用いられるが、硬化の間のフィルム収縮の不在に起因して、大量の充填剤が、粉末被覆適用で所望の光沢レベルを達成するためにしばしば必要である。粉末被覆組成物中のこのような充填剤の量が増加するとき、硬化した被覆の機械的性質における顕著な損失がしばしば起こる。粉末被覆組成物から低光沢被覆を達成することにおける困難性は、低温硬化(<300゜F)が要求されるとき悪化される。
【0005】
いくつかの事例では、低光沢被覆は、互いと適合しないフィルム形成樹脂のような、不適合成分を含む粉末被覆組成物から生成されている。この機構で経験されている1つの困難性は、しかし、不可能ではないにしても、このような被覆から一貫して安定な光沢値を達成することが困難であることである。これら不適合成分間の乾燥温度および反応速度における差異は、制御するのが不可能ではないにしても困難であり、得られる被覆の光沢における変動を与える。結果として、粉末被覆組成物から安定な中間光沢範囲の被覆を生成することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、中間光沢被覆を生成し得る粉末被覆組成物を提供することが所望され得る。粉末被覆組成物から中間光沢被覆を生成する方法を提供することもまた所望され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
特定の局面で、本発明は、硬化可能な粉末被覆組成物に関する。これらの粉末被覆組成物は:(a)第1のフィルム形成樹脂、(b)この第1のフィルム形成樹脂とは異なり、そしてこの第1のフィルム形成樹脂と適合しない第2のフィルム形成樹脂、および(c)この第1のフィルム形成樹脂と適合する第1の部分およびこの第2のフィルム形成樹脂と適合する第2の部分を含む適合化剤を含むフィルム形成樹脂組成物を含む。この適合化剤は、上記組成物中に、基材の少なくとも一部分上に堆積され、そして硬化されるとき、中間光沢被覆を生じる被覆組成物を生じるに十分な量で存在する。
【0008】
その他の局面では、本発明は、中間光沢被覆を生成するために適切な低温で硬化可能な粉末被覆組成物を生成する方法に関し、ここで、この組成物は:(a)第1のフィルム形成樹脂、および(b)該第1のフィルム形成樹脂と適合しない第2のフィルム形成樹脂を含むフィルム形成樹脂組成物を含む。これらの方法は、上記被覆組成物中に、上記第1のフィルム形成樹脂と適合する第1の部分、および上記第2のフィルム形成樹脂と適合する第2の部分を含む適合化剤を含める工程を包含し、ここで、この適合化剤は、上記組成物中に中間光沢被覆を生成し得る被覆組成物を生じるに十分な量で存在する。
【0009】
本発明はまた、(a)第1のフィルム形成樹脂、(b)この第1のフィルム形成樹脂と適合しない第2のフィルム形成樹脂、および(c)この第1のフィルム形成樹脂と適合する第1の部分およびこの第2のフィルム形成樹脂と適合する第2の部分を含む適合化剤を含むフィルム形成樹脂組成物を含む硬化可能な粉末被覆組成物から堆積された中間光沢被覆で少なくとも部分的に被覆された基材に関する。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
硬化可能な粉末被覆組成物であって、以下:
(a)第1のフィルム形成樹脂、
(b)該第1のフィルム形成樹脂とは異なり、そして該第1のフィルム形成樹脂と適合しない第2のフィルム形成樹脂、および
(c)該第1のフィルム形成樹脂と適合する第1の部分および該第2のフィルム形成樹脂と適合する第2の部分を含む適合化剤、を含む、フィルム形成樹脂組成物を含み、
ここで、該適合化剤は、該組成物中に、基材の少なくとも一部分上に堆積され、そして硬化されるとき、中間光沢被覆を生じる被覆組成物を生じるのに十分な量で存在する、被覆組成物。
(項目2)
前記組成物が、低温硬化組成物である、項目1に記載の被覆組成物。
(項目3)
前記第1のフィルム形成樹脂が、酸基含有アクリル樹脂を含む、項目1に記載の被覆組成物。
(項目4)
前記酸基含有アクリル樹脂が、1500〜20,000の数平均分子量を有する、項目3に記載の被覆組成物。
(項目5)
前記第1のフィルム形成樹脂が、前記被覆組成物中に、該組成物中の樹脂固形分の総重量を基に、1〜30重量%の量で存在する、項目1に記載の被覆組成物。
(項目6)
前記第1のフィルム形成樹脂の溶解度パラメーターと前記第2のフィルム形成樹脂の溶解度パラメーターとの間の差異が少なくとも1である、項目1に記載の被覆組成物。
(項目7)
前記第2のフィルム形成樹脂が、ポリオキシ樹脂、エポキシ−ポリエステルハイブリッド樹脂、またはそれらの混合物から選択される、項目1に記載の被覆組成物。
(項目8)
前記第2のフィルム形成樹脂が、前記被覆組成物中に、該組成物中の樹脂固形分の総重量を基に、70〜96重量%の量で存在する、項目1に記載の被覆組成物。
(項目9)
前記適合化剤が、エポキシアミン付加物、脂肪酸、またはそれらの混合物から選択される、項目1に記載の被覆組成物。
(項目10)
前記脂肪酸が、以下の式
CH(CHCOOH
ここで、nは14〜22の範囲の値を有する整数を表す、を有する材料を含む、項目9に記載の被覆組成物。
(項目11)
基材を少なくとも部分的に被覆する方法であって、
該基材に項目1に記載の被覆組成物を付与する工程、および
該被覆組成物を硬化する工程、を包含する、方法。
(項目12)
項目11に記載の方法によって少なくとも部分的に被覆された基材。
(項目13)
中間光沢被覆を生成するために適切な低温で硬化可能な粉末被覆組成物を生成する方法であって、ここで、該組成物が:(a)第1のフィルム形成樹脂、および(b)該第1のフィルム形成樹脂と適合しない第2のフィルム形成樹脂を含むフィルム形成樹脂組成物を含み: 該被覆組成物中に、該第1のフィルム形成樹脂と適合する第1の部分、および該第2のフィルム形成樹脂と適合する第2の部分を含む適合化剤を含める工程を包含し、ここで、該適合化剤が、該組成物中に中間光沢被覆を生成し得る被覆組成物を生じるに十分な量で存在する、方法。
(項目14)
項目13に記載の方法であって、ここで、
(i)前記第1のフィルム形成樹脂が、酸基含有アクリル樹脂を含み、
(ii)前記第2のフィルム形成樹脂が、ポリエポキシ樹脂、エポキシ−ポリエステルハイブリッド樹脂、またはそれらの混合物から選択され、そして
(iii)前記適合化剤が、エポキシアミン付加物、脂肪酸、またはそれらの混合物から選択される、方法。
(項目15)
(a)第1のフィルム形成樹脂、(b)該第1のフィルム形成樹脂と適合しない第2のフィルム形成樹脂、および(c)該第1のフィルム形成樹脂と適合する第1の部分および該第2のフィルム形成樹脂と適合する第2の部分を含む適合化剤を含むフィルム形成樹脂組成物を含む硬化可能な粉末被覆組成物から堆積された中間光沢被覆で少なくとも部分的に被覆された基材。
(項目16)
項目15に記載の基材であって:
(i)前記第1のフィルム形成樹脂が、酸基含有アクリル樹脂を含み、
(ii)前記第2のフィルム形成樹脂が、ポリエポキシ樹脂、エポキシ−ポリエステルハイブリッド樹脂、またはそれらの混合物から選択され、そして
(iii)前記適合化剤が、エポキシアミン付加物、脂肪酸、またはそれらの混合物から選択される、基材。
(項目17)
前記第1のフィルム形成樹脂の溶解度パラメーターと前記第2のフィルム形成樹脂の溶解度パラメーターとの間の差異が少なくとも1である、項目15に記載の基材。
(項目18)
前記脂肪酸が、以下の式
CH(CHCOOH
ここで、nは14〜22の範囲の値を有する整数を表す、を有する材料を含む、項目16に記載の基材。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の実施形態の詳細な説明)
以下の詳細な説明の目的には、本発明は、明示して反対であることが特定される場合を除いて、種々の代替の改変例およびステップ順序をとり得ることが理解されるべきである。さらに、任意の操作例における以外、またはその他であることが示される場合、すべての数字の表示、例えば本明細書および請求項で用いられる成分の量は、すべての例において、用語「約」によって修飾されるとして理解されるべきである。従って、反対であることが示されなければ、以下の明細書および添付の請求項で提示される数字のパラメーターは、本発明によって得られるべき所望の性質に依存して変動し得る近似である。少なくとも、そして請求項の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数字のパラメーターは、報告された重要な桁の数を考慮して、そして通常の丸め技法を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0011】
本発明の広範な範囲を提示する数の範囲およびパラメーターが近似であるにもかかわらず、特定の例で提示される数の値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、任意の数の値は、それらの個々の試験する測定で見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0012】
また、本明細書中に記載される任意の数字範囲は、その中に含められるすべての小範囲を含むことが意図されることが理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、記載された最小値1と最大値10との間(そしてそれらを含む)のすべての小範囲を含むことが意図され、すなわち、1に等しいか、または1より大きい最小値および10に等しいかまたは10より小さい最大値を有する。
【0013】
本出願では、そうでないことが陳述されなければ、単数の使用は複数を含み、そして複数は単数を包含する。例えば、そして制限されることなく、本出願は、単数の「適合化剤」を含む被覆組成物に言及する。このような単数の「適合化剤」への言及は、1つの適合化剤、および2つの異なる適合化剤を含む被覆組成物のような1つ以上の適合化剤を含む被覆組成物を包含することが意味される。さらに、本出願では、「または」の使用は、たとえ「および/または」が特定の例で明示して用いられ得るとしても、そうでないことが特定して陳述されなければ「および/または」を意味する。
【0014】
先に示されたように、特定の実施形態では、本発明は、硬化可能な被覆組成物に関する。本明細書中で用いられるとき、用語「硬化可能」は、組成物が表面に都合よく付与され得る初期の粉末状態、およびそれが化学反応、熱または両方により連続した合体した状態に変形した最終状態を有する組成物をいう。特定の実施形態では、この化学反応は、反応基を有するフィルム形成樹脂、および架橋モノマーまたはオリゴマー、すなわち硬化剤を含む。特定に実施形態では、触媒が、より低い温度で架橋反応が実施されることを可能にするために採用される。特定の実施形態では、樹脂システムは、別個の硬化剤が必要でなくてもよい自己架橋性であり得る。本明細書中で用いられるとき、「硬化可能」は、コンポジット構造上に熱可塑的に固定されるような樹脂システムをまた含むことが意図され、この場合、「硬化」は、少なくともその変形温度に樹脂を加熱することを、任意の必須の化学反応を含むことなく、ともない得る。
【0015】
特定の実施形態では、本発明の硬化可能な粉末被覆組成物は、低温で硬化可能であり、すなわち、それらは、「低温硬化」組成物である。本明細書で用いられるとき、用語「低温硬化」組成物は、80℃〜125℃のような、80℃〜150℃の温度で硬化する組成物をいう。特定の実施形態では、それ故、本発明の被覆組成物は、125℃より高い温度に適切には曝されない基材上で用いられ得る。このような材料の例は、熱硬化性および熱可塑性組成物のようなプラスチック、ならびに木材を含むが、これらに限定されるわけではない。また適切なのは、金属およびゴム成分の両方を含むモーターのような種々の基材を含む製造の物品である。
【0016】
本明細書で用いられるとき、用語「粉末被覆組成物」は、液体形態にある被覆組成物に対して、固体粒子の形態にある被覆組成物をいう。このような組成物は、小さな粒子サイズ(10ミクロンより小さい)を有し得るか、または顆粒およびその他の粒子状物質のようなより大きな粒子サイズであり得る。特定の実施形態では、本発明の粉末被覆組成物は、1〜100ミクロンのような、0.3〜300ミクロンの粒子サイズを有する固形粒子の形態である。
【0017】
本発明の粉末被覆組成物は、フィルム形成樹脂組成物を含む。本明細書で用いられるとき、用語「フィルム形成樹脂組成物」は、フィルムを形成し得るポリマー(すなわち、フィルム形成樹脂)、硬化剤(存在する場合)、およびこのフィルム形成樹脂と硬化剤との間の反応を容易にするために含められ得る触媒または硬化促進剤(accelerator)(存在する場合)を含む組成物を含むことが意味される。
【0018】
特定の実施形態では、本発明の被覆組成物内に含まれるフィルム形成樹脂組成物は、第1のフィルム形成樹脂を含む。特定の実施形態では、この第1のフィルム形成樹脂は、酸基含有アクリル樹脂を含む。本明細書中で用いられるとき、用語「酸基含有アクリル樹脂」は、少なくとも2つのカルボン酸基を含むアクリル樹脂を含むことを意味する。特定の実施形態では、このような樹脂は、重合可能なα、β−エチレン性不飽和カルボン酸を、ビニル芳香族モノマーのようなビニルモノマーのような別のα、β−エチレン性不飽和モノマーおよびα、β−エチレン性不飽和カルボン酸のエステルと反応することにより形成される。適切なカルボン酸基含有モノマー、ビニル芳香族化合物、およびα、β−エチレン性不飽和酸、およびそれらの個々の量の非制限的な例は、米国特許第4,921,913号のカラム2、33〜68行に開示され、この引用部分は、本明細書中に参考として援用される。このような樹脂を調製する際に用いる適切なその他のモノマーおよびこのような樹脂を調製する際に用いる適切な手順は、米国特許第4,921,913号のカラム3、1〜38行に開示され、この引用部分は、本明細書中に参考として援用される。
【0019】
特定の実施形態では、本発明の被覆組成物内に含められる酸基含有アクリル樹脂は、ポリスチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定されるとき、2000〜40,000のような、1500〜40,000の数平均分子量を有する。特定の実施形態では、本発明の被覆組成物内に含められる酸基含有アクリル樹脂は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定されるとき、50℃〜80℃のような、40℃〜150℃のガラス転移温度(Tg)(1分間あたり10℃の加熱速度、最初の変曲点でとったTg)を有する。
【0020】
特定の実施形態では、第1のフィルム形成樹脂は、被覆組成物中に、この組成物中の樹脂固形分の総重量を基に、4〜10重量%のような、1〜30重量%の量で存在する。
【0021】
特定の実施形態では、本発明の被覆組成物は、上記第1のフィルム形成樹脂とは異なり、そしてそれと適合しない第2のフィルム形成樹脂を含む。本明細書で用いられるとき、「第1のフィルム形成樹脂と適合しない第2のフィルム形成樹脂」と陳述されるとき、それは、第1および第2のフィルム形成樹脂の混合の自由エネルギー(ΔG、ここで、ΔG=ΔH−TΔS、ここで、Gはギブスの自由エネルギー、Hはエンタルピー、Sはエントロピー、そしてTは温度である)が正の値であることを意味する。
【0022】
特定の実施形態では、上記第1のフィルム形成樹脂と第2のフィルム形成樹脂の、しばしば本明細書中では「χ」と称される熱動力学的相互作用パラメーターは、少なくとも0.5である。当業者によって理解されるように、この熱動力学的相互作用パラメーターは、ポリマー分子と、溶媒または別のポリマー分子との間の相互作用エネルギーを特徴付ける無限の値である。(Flory、Principles of Polymer Chemistry、Cornell University Press(1953)、507〜511頁および541〜545ページ)。この熱動力学的相互作用パラメーターは、小角度中性子走査(Lohse、Polymer Preprints、(2001)、42(1)、259頁)によって直接測定され得る。
【0023】
さらに、材料間の熱動力学的相互作用パラメーターχは、ときどき、以下の等式:
χ=V(δ−δ/RT
に従って、材料の溶解度パラメーター、δにおける差異を参照して規定される。
ここで、δは、ヒルデブランド溶解度パラメーターをいう(これは、ときどき、ポリマーシステムで粘着力パラメーターとして言及される)。ポリマーシステムについて溶解度パラメーターを決定する種々の方法がある。例えば、溶解度パラメーターは、「Prediction of Polymer Properties」、第3版、Bicerano(2002)Marcel Dekker,Inc.,N.Y.、に記載されるように、Van Krevelen(「VK」)およびFedorsのような基加算性方法によってポリマーシステムに対して割り当てられ得、その関連する部分は、本明細書中に参考として援用される。本明細書中で報告される溶解度パラメーター値は、このような方法によって決定され、そして本明細書中では、それぞれ、「VK溶解度パラメーター」および「Fedors溶解度パラメーター」と称される。溶解度パラメーターは、1立方センチメートルあたりのジュールの平方根で表される((J/cm1/2)。特定の実施形態では、第1のフィルム形成樹脂の溶解度パラメーター(VKまたはFedorsのいずれか)、δと、第2のフィルム形成樹脂の溶解度パラメーター(VKまたはFedorsのいずれか)、δとの差異(δ−δ)は、1.5のような少なくとも1であるか、またはいくつかの場合には少なくとも2である。
【0024】
特定の実施形態では、第2のフィルム形成樹脂は、ポリエポキシ樹脂を含む。本明細書で用いられるとき、用語「ポリエポキシ樹脂」は、1分子あたり少なくとも2つの1,2−エポキシド基を含むもののような、1分子あたり少なくとも2つのエポキシ基を含む樹脂をいう。特定の実施形態では、このような樹脂のエポキシ当量重量は、500と1000との間のような、ポリエポキシ樹脂の固形分を基に180〜4000の範囲である。ポリエポキシド樹脂は、飽和または不飽和であり得、そして脂肪族、脂環式、芳香族またはヘテロ環であり得る。それらは、ハロゲン、水酸基、およびエーテル基のような置換基を含み得る。
【0025】
ポリエポキシド樹脂の適切なクラスは、制限されずに、アルカリの存在下、エピクロロヒドリンのようなエピハロヒドリンをポリフェノールと反応することによって得られるエポキシエーテルを含む。適切なポリフェノールは、制限されずに、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)−メタン、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、および1,5−ジヒドロキシナフタレンを含む。
【0026】
その他の適切なポリエポキシド樹脂は、多価アルコールのポリグリシジルエーテルを含む。これらの化合物は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、およびペンタエリトリトールのような多価アルコールに由来し得る。これらの化合物はまた、ポリプロピレングリコールのようなポリマーポリオールに由来し得る。
【0027】
その他の適切なポリエポキシド樹脂の例は、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステルを含む。これらの化合物は、エピクロロヒドリンまたは別のエポキシ材料を、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、および/またはトリメリト酸のような脂肪族または芳香族ポリカルボン酸と反応することにより形成され得る。約36の炭素原子を含むダイマー化不飽和脂肪酸(ダイマー酸)、およびカルボキシ末端アクリロニトリル−ブタジエンゴムのようなポリマーポリカルボン酸もまた、ポリカルボン酸のこれらのポリグリシジルエステルの形成で用いられ得る。
【0028】
オレフィン性不飽和脂環式化合物のエポキシ化由来のポリエポキシド樹脂もまた、本発明の被覆組成物における使用のために適切である。これらのポリエポキシド樹脂は、非フェノール性であり、そして脂環式オレフィンの、例えば、酸素、過安息香酸、酸−アルデヒドモノペルアセテート、または過酢酸とのエポキシ化によって得られる。このようなポリエポキシド樹脂は、当該技術分野で公知のエポキシ脂環式エーテルおよびエステルを含む。
【0029】
その他の適切なポリエポキシド樹脂は、エピハロヒドリンを、アルデヒドと一価または多価フェノールとの縮合産物と反応することにより得られるエポキシノボラック樹脂を含む。代表的な例は、エピクロロヒドリンのフェノール−ホルムアルデヒド縮合物との反応産物である。
【0030】
本発明の被覆組成物は、1つのポリエポキシド樹脂または2つ以上の異なるポリエポキシド樹脂の混合物を含み得る。
【0031】
特定の実施形態では、上記第2のフィルム形成樹脂は、エポキシ−ポリエステルハイブリッド樹脂を含む。このような実施形態では、このハイブリッドのエポキシ成分は、例えば、平均3〜3.5の水酸基置換プロポキシビスフェノールA単位を有する「タイプ3−3.5」樹脂のような(以下の構造で平均n=3〜3.5)、730〜820のエポキシ当量重量を有するビスフェノールAベースのエポキシ樹脂であり得る:
【0032】
【化1】

このエポキシ樹脂は、Dow Chemical Companyから「D.E.R.(登録商標)663U」の名の下で入手可能である。このエポキシ−ポリエステルハイブリッド中のポリエステル樹脂は、70〜85の酸数、および56℃のガラス転移温度を有する飽和カルボキシル化(すなわち、カルボキシ官能化)ポリエステル樹脂であると考えられる。このポリエステル樹脂は、DSM Resins BVから「URALAC(登録商標)P 5127」の名の下で入手可能である。このエポキシ−ポリエステルハイブリッドの硬化反応は、エポキシ−カルボキシル反応を含むと考えられ、カルボキシル末端ポリエステルがエポキシ樹脂を硬化する。エポキシ基とカルボン酸基との間の反応は、高められた温度で容易に進行し、エステルおよびヒドロキシ官能性を生成する。この反応は、ときどき、例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドおよび2−メチルイミダゾールのような適切な触媒を利用する。
【0033】
特定の実施形態では、上記第1のフィルム形成樹脂とは異なり、そしてそれと適合しない上記第2のフィルム形成樹脂は、上記被覆組成物中に、この組成物中の樹脂固形分の総重量を基に、70〜96重量%のような、50〜99重量%の量で存在する。
【0034】
特定の実施形態では、本発明の被覆組成物中に含まれるフィルム形成樹脂はまた、適合化剤を含む。本発明の特定の実施形態において、この適合化剤として利用される正確な材料は、この物質が上記第1のフィルム形成樹脂と適合する第1の部分および第2のフィルム形成樹脂と適合する第2の部分を含む限り重要ではない。本明細書で用いられるとき、適合化剤の部分が、被覆組成物中に含まれるフィルム形成樹脂と「適合」すると陳述されるとき、それは、この適合化剤の部分と、それに比較されるフィルム形成樹脂との混合の自由エネルギー(先に記載のようなΔG)が負の値であることを意味する。特定の実施形態では、論議されている適合化剤の部分とフィルム形成樹脂との熱動力学的相互作用パラメーター「χ」が0.5より小さい。特定の実施形態では、論議されている適合化剤の部分の溶解度パラメーター(VKまたはFodorsのいずれか)、δと、比較されているフィルム形成樹脂の溶解度パラメーター(VKまたはFodorsのいずれか)δとの間の差異(δ−δ)は、1.5より小さいように、2より小さい。
【0035】
先に記載のように、第1のフィルム形成樹脂が酸基含有アクリル樹脂を含み、そして先に記載のように、第2のフィルム形成樹脂がポリエポキシ樹脂および/またはエポキシ−ポリエステルハイブリッド樹脂を含むときのような特定の実施形態では、適合化剤は、エポキシアミン付加物を含み得る。このような付加物は、先に記載のポリエポキシ樹脂のようなポリエポキシ樹脂のエポキシ末端基をキャップすること、すなわち、ケチミン、二級アミンおよび/または一級アミンと反応することにより形成され得る。
【0036】
ケタミンは、ケトンを一級アミンと反応することにより形成される。この反応中に形成される水は、例えば、協沸蒸留により除去される。有用なケトンは、例えば、ジアルキル、ジアリール、および3〜13の炭素原子を有するアルキルアリールケトンを含む。これらのケチミンを形成するために用いられ得るケトンの特定の例は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアリールケトン、エチルイソアミルケトン、エチルアミルケトン、アセトフェノン、およびベンゾフェノンを含む。適切なジアミンは、例えば、エチルジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、4,9−ジオキサドデカンおよび1,12−ジアミンなどを含む。1つの代表的な有用ケチミンは、ジエチレントリアミンおよびメチルイソブチルケトンのケチミンであるジケチミンである。
【0037】
エポキシ−アミン付加物を形成するために用いられる得る有用な一級および二級アミンは、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ベンジルアミンなど;およびジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミンなどを含む。アルカノールアミンもまた、用いられ得、例えば、エタノールアミン、メタノールアミン、プロパノールアミンなど;およびメチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、フェニルエタノールアミン、ジエタノールアミンなどがある。用いられ得るアミンは、米国特許第4,419,467号のカラム4、43行〜カラム5、15行に提示されるものを含み、この引用部分は、本明細書中に参考として援用される。
【0038】
先に記載のように、第1のフィルム形成樹脂が酸基含有アクリル樹脂を含み、そして先に記載のように、第2のフィルム形成樹脂がポリエポキシ樹脂および/またはエポキシ−ポリエステルハイブリッド樹脂を含むときのような特定の実施形態では、適合化剤は、脂肪酸および/または脂肪酸アルコールエステルのようなモノカルボン酸を含み得る。適切な脂肪酸は、式:
CH(CHCOOH
を有する材料を含み、ここでnは、4〜30、またはいくつかの場合には14〜22の範囲の値を有する整数である。これらの脂肪酸は、飽和または不飽和であり得、そして直鎖または分岐であり得る。また含まれるのは、二塩基酸、三塩基酸、およびその他の多塩基酸である。また適切なのは、これら脂肪酸の塩である。適切な脂肪酸の非制限的な例は、制限されずに、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサノン酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソトリデカノン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロゼリン酸、リノール酸、リノレン酸、エラエオステアリン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、ベヘン酸およびエルカ酸を含む。
【0039】
特定の実施形態では、上記適合化剤は、上記組成物中に、基材の少なくとも一部分上に堆積され、そして硬化されるとき、中間光沢被覆を生成する被覆組成物を生じるに十分な量で存在する。本明細書中で用いられるとき、用語「中間光沢被覆」は、以下に記載のように測定されるとき、20〜70、20〜60のような10〜80、またはいくつかの場合には、30〜60の光沢単位の60゜の光沢を有する被覆をいう。特定の実施形態では、本発明の被覆組成物は、20ミル(mil)までの厚みで基材の少なくとも一部分上に堆積され、そして硬化されるとき、中間光沢の被覆を生成する。
【0040】
本明細書中で用いられるとき、用語「光沢」は、光を反射する被覆の能力をいい、より大きな光沢値は、反射されるより大きな量の光に対応する。当業者によって理解されるように、光沢測定は、Gardner Instrument Company,Inc.から入手可能なBYK/Haze Glossメーターを用いてなされ得る。本明細書中で用いられるとき、用語「60゜光沢」は、このようなBYK/Haze Glossメーターを用いて60゜の角度で決定される被覆された基材の光沢をいう。
【0041】
特定の実施形態では、本発明の被覆組成物中に含まれるフィルム形成樹脂組成物はまた、上記第1および/または第2のフィルム形成樹脂の反応基(単数または複数)と反応する反応基を有する材料を含む硬化剤を含む。本明細書で用いられるとき、用語「硬化剤」は、フィルム形成樹脂の硬化を促進する物質をいう。
【0042】
当業者に公知の任意の種々の硬化剤が用いられ得る。例えば、カルボン酸反応基含有材料のための硬化剤としてポリエポキシドが当該技術分野で周知であり、そして本発明の粉末被覆組成物における使用に適切である。適切なポリエポキシド硬化剤の例は、本明細書によって参考として援用される米国特許第4,681,811号のカラム5、33〜58行に記載されるもの含む。エポキシ反応基含有材料のための硬化剤としての多塩基酸は、当該技術分野で周知であり、そして本発明の粉末被覆組成物における使用に適切である。適切な多塩基酸の例は、本明細書によって参考として援用される米国特許第4,681,811号のカラム6、45行〜カラム9、54行に記載されるもの含む。所望されるとき、硬化剤の適切な混合物が用いられ得る。
【0043】
特定の実施形態では、この硬化剤は、被覆組成物中に、この組成物中の樹脂固形分の総重量を基に、5〜20重量%のような、1〜50重量%の量で存在する。
【0044】
特定の実施形態では、しかし、本発明の被覆組成物は、硬化剤を実質的に含まないか、またはいくつかの場合には、まったく含まない。本明細書中で用いられるとき、用語「実質的に含まない」は、この材料が、組成物中に、あったとしても偶発的な不純物として存在することを意味する。換言すれば、この材料は、組成物の性質に影響しない。本明細書で用いられるとき、用語「まったく含まない」は、この材料が、組成物中にまったく存在しないことを意味する。
【0045】
特定の実施形態では、本発明の被覆組成物中に含まれるフィルム形成樹脂組成物はまた、このフィルム形成樹脂と硬化剤との間の反応の速度を増加するために触媒または硬化促進剤を含む。採用される触媒は、採用されるフィルム形成樹脂および硬化剤に依存する。代表的な触媒は、錫触媒、イミダゾール、環状アミジン、アルキル/アリールアンモニウムハロゲン化物、および亜鉛アルキル/アリールチオカルバメートを含む。特定の実施形態では、この触媒は、米国特許第6,737,163号のカラム3、3行〜カラム4、55行に記載される材料のような、三級アミノウレア化合物、三級アミノウレタン化合物、またはそれらの混合物を含み、この引用部分は、本明細書中に参考として援用される。
【0046】
特定の実施形態では、触媒は、被覆組成物中に、この組成物の総重量を基に、3〜5重量%のような、0.5〜10重量%の量で存在する。
【0047】
特定の実施形態では、本発明の被覆組成物はまた、流れおよび湿潤化のためのワックスのようなその他の添加物、ポリ(2−エチルヘキシル)アクリレートのような流れ制御剤、ベンゾインおよびMicro Wax Cのような脱気添加物、被覆性質を改変および最適化するアジュバント樹脂、Ciba−Geigyから商標名IRGANOX(登録商標)およびTINUVIN(登録商標)の下で入手可能であり市販されるもののような抗酸化剤およびUV光吸収剤を含む。これらの必要に応じた添加物は、用いられるとき、しばしば、この被覆組成物の総重量を基に、20重量%までの量で存在し、そして用いられるとき、被覆組成物の総重量を基にしばしば1〜5重量%を含む。
【0048】
さらに、粉末被覆の技術分野で標準的に用いられる任意の種々の色素もまた含められ得る。いくつかの場合には、色素重量は、全体の被覆組成物の重量の80%までであり得、そして、しばしば、被覆組成物の約35重量%である。
【0049】
本発明の被覆組成物は、有機もしくは無機粒子、またはそれらの混合物のような、被覆のきず耐性および/または引っ掻き耐性に寄与し得る複数の粒子をさらに含み得る。このような粒子は、米国特許出願公開番号第20020137872号の[0022]〜[0038]に記載され、この引用部分は、本明細書中に参考として援用される。
【0050】
本発明の被覆組成物は、当該技術分野で公知の標準的な方法によって調製され得る。例えば、上記成分は、最初完全に混合され得、成分間の空間的均一性を確実にする。この組成物は、次いで、押出し成形機中で緊密に溶融混練され得る。押出し成形の間共通のゾーン温度は、45℃〜100℃のような40℃〜125℃の範囲である。出てくる押出し成形物は、次いで、急速に冷却され、重合を最小にする。得られるチップは、次いで、1〜100ミクロンのような0.1〜300ミクロンの平均粒子サイズをもつ粉末に微粉にされ得る。粉砕は、例えば、空気類別ミル、衝撃ミル、ボールミル、またはその他の破砕誘導機構によって達成され得る。粉末塊の流動を改善し、そして/または衝撃融合に対する耐性を改善する後の添加物が、微粉化の前後に最終産物中に取り込まれ得る。
【0051】
本発明の粉末被覆組成物は、いくつかの方法で基材上に付与され得、最もよく静電噴霧により付与され得る。粉末被覆は、単一の掃射またはいくつかの通過で付与され得、硬化後、約1〜10ミル(25〜250ミクロン)、通常2〜4ミル(50〜100ミクロン)の厚みを有するフィルムを提供する。被覆付与のためのその他の標準的な方法もまた、採用され得る。
【0052】
適用後、本発明の組成物は、80℃〜125℃のような、80℃〜150℃の温度に、15〜20分のような、3分〜30分の範囲の期間の間加熱することにより硬化され得る。加熱は、当該技術分野で公知の任意の手段によって行われ得、代表的には、オーブン中に被覆された基材を配置することによる。IR照射もまた、被覆された基材を加熱硬化するために用いられ得る。
【0053】
従って、本発明は、さらに、基材を被覆するための方法に関し、基材に、本明細書中に記載される1つ以上の被覆組成物を付与する工程および被覆組成物を硬化する工程を包含する。多くの基材が、本発明の方法に従う被覆のために適切であり、熱硬化性または熱可塑性のようなプラスチック、厚紙、紙、木、金属、パーティクルボードおよび中間密度ファイバーボードまたはそれらの混合物を含む。本発明の方法に従って被覆された基材もまた、本発明の範囲内にある。
【0054】
本発明はまた、中間光沢被覆を生成するために適切な低温硬化粉末被覆組成物を生成するための方法に関し、ここで、この組成物は:(a)第1のフィルム形成樹脂、および(b)この第1のフィルム形成樹脂とは適合しない第2のフィルム形成樹脂を含む、フィルム形成樹脂組成物を含む。これらの方法は、上記被覆組成物中に、上記第1のフィルム形成樹脂と適合する第1の部分、および上記第2のフィルム形成樹脂と適合する第2の部分を含む適合化剤を含める工程を包含し、ここで、この適合化剤は、上記組成物中に、中間光沢被覆を生成し得る被覆組成物を生じるに十分な量で存在する。
【0055】
本発明はまた、硬化可能な粉末被覆組成物から堆積された中間光沢被覆で少なくとも部分的に被覆された基材に関し:(a)第1のフィルム形成樹脂、(b)この第1のフィルム形成樹脂とは適合しない第2のフィルム形成樹脂、および(c)上記第1のフィルム形成樹脂と適合する第1の部分および上記第2のフィルム形成樹脂と適合する第2の部分を含む適合化剤を含む、フィルム形成樹脂組成物を含む。
【0056】
本発明を例示することは、以下の実施例であるが、これらは、それらの詳細に本発明を制限するとして考慮されるべきではない。他であることが示されなければ、以下の実施例、および明細書の全体におけるすべての部および%は、重量による。
【実施例】
【0057】
(実施例1:エポキシアミン付加物の調製)
エポキシアミン付加物を、漏斗、機械的攪拌および窒素ブランケットを装備したガラス反応容器中で調製した。1600重量部のEpon 2002(Resolution Performance Productsから入手可能であり、そして22.22(J/cm1/2のVK溶解度パラメーターを有する(21.92(J/cm1/2のFodors溶解度パラメーター))を上記反応容器に添加し、そして155℃に加熱した。19.22のVK溶解度パラメーター(19.43(J/cm1/2のFodors溶解度パラメーター)を有する154重量部のN−メチルエタノールアミンを、添加漏斗中に載せ、そしてこの添加漏斗中の材料を、1時間に亘って反応容器中に滴下した。反応温度は、添加の終わりに164℃に達し、そしてこの反応物は、温度を150℃に維持してさらに1時間の間攪拌した。深い黄色の反応産物を金属パンに注ぎ出し、そして冷却および固化した。最終産物は、フラスコ中に粉砕した。最終産物を滴定により分析し、そしてエポキシ当量重量は、1681グラム/当量であると決定された。
【0058】
最終産物は、以下に描写されるような、頭部基部分と2つの尾部基部分を含む構造を有し、ここで、この頭部基部分(I)は、22.22(J/cm1/2のVK溶解度パラメーター(21.92(J/cm1/2のFodors溶解度パラメーター)を有し、そして尾部部分(II)は、19.22のVK溶解度パラメーター(19.43(J/cm1/2のFodors溶解度パラメーター)を有していた。
【0059】
【化2】

(実施例2:被覆組成物の調製)
表1に示される成分および量(グラムで重量部)を用いて組成物A〜Pを調製した。被覆は、3500rpmで回転する3つのブレードのミキサー中で成分を予備混合することにより調製された。この予備混合物を、次いで、80℃の温度で作動する19mmの二重スクリュー押出し成形機中で押出し成形した。押出し成形物を、急速に冷却し、そしてチップにプレスした。このチップを、Hosokawa Air−Classifying
Mill(ACM)を用いて平均粒子サイズ35ミクロンに微粉化した。被覆を、Bonderite 1000スチールパネル上に噴霧し、そして137.8℃で20分間硬化した。得られる被覆の光沢は、Gardner Instrument Company,Inc.から入手可能なBYK/Haze Glossメーターを用いて60゜の角度で測定された。結果は、表2に提示される。
【0060】
【表1−1】

【0061】
【表1−2】

【0062】
【表1−3】

1 Resolution Performance Productsから市販され入手可能であり、そして22.22(J/cm1/2のVK溶解度パラメーター(21.92(J/cm1/2のFodors溶解度パラメーター)を有するエポキシ樹脂。
2 Resolution Performance Productsから市販され入手可能であり、そして22.22のVK溶解度パラメーター(21.92(J/cm1/2のFodors溶解度パラメーター)を有するエポキシ樹脂。
3 Resolution Performance Productsから入手可能なフェノール性硬化剤。
4 Rhodiaから入手可能な流れ添加物。
5 Solutia,Inc.から入手可能。
6 Cabot Corp.から入手可能なカーボンブラック色素。
7 Millenium Chemicals,Hunt Valley,MDから入手可能な二酸化チタン色素。
8 硫酸バリウム。
9 85部のJoncryl 843(S.C.Johnson&Sons、Racine、Wis.から入手可能な、204の酸数および18.93(J/cm1/2のVK溶解度パラメーター(20.59(J/cm1/2のFodors溶解度パラメーター)を有するカルボキシル官能アクリル樹脂)と、15部のThixcin R(Elementisから入手可能な腐食阻害剤)とを3500rpmで回転する3つのブレードのミキサー中で混合することにより調製された。この混合物は、110℃の温度で作動する19mmの二重スクリュー押出し成形機中で押出し成形された。押出し成形物は、迅速に冷却され、そしてチップにプレスされた。
【0063】
【表2】

本発明の特定の実施形態が、例示の目的のために上記に記載されたが、本発明の詳細の多くの改変が、添付の請求項で規定されるような本発明から逸脱することなくなされ得ることが当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2011−246717(P2011−246717A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−128472(P2011−128472)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【分割の表示】特願2008−518325(P2008−518325)の分割
【原出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ,インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】