説明

粉末製剤用の吸入器

【課題】製造コスト、廃棄処分コストを低くし、必要十分な投与量の粉末製剤を収納することができる使い捨て可能な粉末製剤用の吸入器を提供する。
【解決手段】前後に長い中空の本体10と、本体10の後部に相対回転可能に連結する回転筒20と、回転筒20の後部に装着するキャップ30とを備えてなり、本体は、エア孔付きの仕切板を中間部に設け、仕切板の前部に吸引部51を形成するとともに後部外周にエア開口62を設け、回転筒は、本体の後部に差し込む筒部材22と、筒部材の前端に設ける開閉孔64付きの前板21と、筒部材の後部外周に形成する開閉開口とを有するとともに、正逆に回転させて準備位置と使用位置とにセット可能であり、準備位置では、筒部材の内部が気密の粉末製剤の収納部となり、使用位置では、開閉開口がエア開口と合致して前記収納部が外部と連通し、開閉孔がエア孔と合致して収納部が吸引部と連通する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定量の粉末製剤を肺などに吸引して投与する使い捨て可能な粉末製剤用の吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
所定量の粉末製剤を肺などに吸引して投与するために、使い捨て可能な吸入器が提案されている(たとえば特許文献1)。
【0003】
従来の吸入器は、前後に長い板状の上部材と、前後方向にエア通路を形成し、上部材と一体に組み合わせる下部材と、上部材、下部材の後端部に挟み込むプレートとを設け、粉末製剤は、プレートの中央部に形成する凹部に収納されている。なお、凹部の底には、通気口が開口されており、プレートの上面、下面は、それぞれ後方に引くことにより引剥し可能なシールテープを介してシールされている。そこで、プレートの上面、下面のシールテープを除去した上、エア通路が開口する下部材、上部材の共通の前端部を口にくわえて息を吸い込むことにより、プレートの凹部に収納されている粉末製剤を肺などに一挙に吸引して投与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−510412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、吸入器は、部品点数が多い上、プレートやシールテープは、たとえばアルミニウムフォイルとプラスチックフィルムとの複合材料を使用する必要があるから、製造コストや廃棄処分コストが過大になりがちであり、使い捨てにするには必ずしも適していないという問題があった。また、粉末製剤は、プレートに形成する凹部に収納するため、必要十分な投与量を収納することができないことがあるという問題もあった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、プラスチック材料によって一体成形可能な本体、回転筒、キャップを組み合わせることによって、製造コスト、廃棄処分コストを低くし、必要十分な投与量の粉末製剤を収納することができる使い捨て可能な粉末製剤用の吸入器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、前後に長い両端開放の中空の本体と、本体の後部に相対回転可能に連結する回転筒と、回転筒の後部に装着するキャップとを備えてなり、本体は、エア孔付きの仕切板を中間部に設け、仕切板の前部に吸引部を形成するとともに後部外周にエア開口を設け、回転筒は、本体の後部に差し込む筒部材と、筒部材の前端に設ける開閉孔付きの前板と、筒部材の後部外周に形成する開閉開口とを有するとともに、正逆に回転させて準備位置と使用位置とにセット可能であり、準備位置では、筒部材の内部が気密の粉末製剤の収納部となり、使用位置では、開閉開口がエア開口と合致して収納部が外部と連通し、開閉孔がエア孔と合致して収納部が吸引部と連通することをその要旨とする。
【0008】
なお、回転筒は、筒部材の周りに外筒を設け、外筒は、接続板を介して筒部材の後端に接続するとともに、外周の一部を径方向に突出させるエアダクトを開閉開口に対応させて前後方向に形成することができる。
【0009】
また、本体は、エアダクトを開閉する外フランジを設けてもよい。
【0010】
なお、筒部材は、前端部の断面積を狭める斜面を形成し、前板は、エア整流用の後向きの凸部を設けてもよく、仕切板は、エア整流用の前向きの凸部を設けてもよい。
【発明の効果】
【0011】
かかる発明の構成によるときは、本体の後部に相対回転可能に連結される回転筒は、キャップを介して後端が閉じられており、準備位置と使用位置とにセット可能である。また、本体の前部には、中空の吸引部が形成されている。そこで、回転筒は、準備位置では、筒部材の開閉開口と開閉孔とが外部に対して閉じられ、筒部材の内部が気密の粉末製剤の収納部を形成し、使用位置では、開閉開口の位置が本体の後部のエア開口の位置に合致して収納部が外部と連通し、同時に、開閉孔が本体のエア孔に合致し、収納部は吸引部側にも連通する。したがって、使用位置では、本体の後部のエア開口から、収納部を介して吸引部にまで連通するエアの流路が形成されるため、吸引部を口にくわえて息を吸い込むことにより、収納部に収納されている粉末製剤の全量を一気に吸引して肺などに投与することができる。
【0012】
なお、本体、回転筒は、それぞれポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどの硬質プラスチック材料により一体成形されている。そこで、部品点数も少なく、製造コスト、廃棄処分コストを低く抑えることができる。また、回転筒の筒部材の内部に形成する粉末製剤の収納部は、粉末製剤の1回分の投与量を収納するように、必要十分な容積に形成することができる。
【0013】
本体の仕切板上のエア孔、回転筒の前板上の開閉孔は、回転筒の使用位置において両者が合致することにより、粉末製剤を吸引する際に適切な吸気抵抗を発現し、吸引動作を円滑にするためののど部分を形成する。なお、のど部分の断面積は、0.1〜30mm2 、特に好ましくは1.0〜10mm2 に設定することが好ましい。のど部分の断面積が小さ過ぎると吸気抵抗が過大になり、断面積が大き過ぎると吸気抵抗が過小になり、いずれの場合も十分なエア量を吸引できず、必要な粉末製剤の投与量を一気に吸引することが難しくなる。
【0014】
のど部分の断面積は、エア孔、開閉孔が同形同大であるときは、それぞれの開口面積に等しく、両者が異なるときは、小さい方の開口面積相当となる。また、エア孔、開閉孔は、それぞれの形状を円形としてもよく、円形以外の多角形などとしてもよい。また、2組以上のエア孔、開閉孔を併設してもよく、そのときののど部分の断面積は、各エア孔、開閉孔の開口面積の合計を前記数値範囲内に設定することが好ましい。
【0015】
本体、回転筒は、その一方または双方を透明材によって一体成形することにより、吸引前に粉末製剤が収納部に正しく収納されていること、吸引後に粉末製剤が回転筒や本体の一部などに付着していないことなどを確認し、吸引動作が正しく完了したことを目視により確かめることができる。なお、透明材としては、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどの他、たとえば電気化学工業(株)製のスチレンブタジエン共重合体(商品名「クリアレン」)が好適である。
【0016】
回転筒の筒部材の周りに外筒を設け、外筒の一部にエアダクトを形成することにより、吸引用のエアは、エアダクトを介して後向きに流れ、本体のエア開口、回転筒の開閉開口に流入すると、回転筒の後部のキャップによって筒部材内に前向きに折り返すようにして流れるため、筒部材内の収納部に収納されている粉末製剤の全量を一層確実に吸引させることができる。
【0017】
本体に設ける外フランジは、使用位置では、エアダクトの前端を開放してスムースな吸引ができ、準備位置では、エアダクトを閉じ、エアダクト内を清潔に保つことができる。
【0018】
筒部材の前端部に形成する斜面は、前板に形成するエア整流用の後向きの凸部とともに、筒部材内に流れる吸引用のエアの流速を高め、有害なうずの発生を防止し、粉末製剤の残留をなくすることができる。本体の仕切板に設けるエア整流用の前向きの凸部についても、同様である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】全体分解斜視説明図
【図2】全体斜視説明図
【図3】本体の構成説明図
【図4】回転筒の構成説明図
【図5】回転筒の横断面説明図
【図6】要部拡大縦断面説明図
【図7】要部拡大横断面説明図
【図8】使用状態を示す全体縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0021】
粉末製剤用の吸入器は、本体10と、回転筒20と、キャップ30とを備えてなる(図1)。なお、図1(A)、(B)は、それぞれ後方側、前方側から見る全体分解斜視図である。
【0022】
回転筒20は、本体10の後部に連結され(図2)、回転筒20の後部には、キャップ30が装着されている。回転筒20は、本体10に対して正逆に相対回転可能になっており、一方の回転限において準備位置にセットされ、他方の回転限において使用位置にセットすることができる。なお、図2(A)、(B)は、それぞれ回転筒20の準備位置、使用位置を示している。
【0023】
本体10は、前後に長い両端開放の中空に形成されている(図1、図3)。ただし、図3(A)、(B)は、それぞれ図1(B)のX1 −X1 線矢視相当拡大断面図、図3(A)のX2 矢視相当図である。本体10の中間部には、エア孔65、65を形成する仕切板14が設けられ、仕切板14の前後には、それぞれ筒16、12が直線状に設けられている。なお、前部の筒16は、後部の筒12よりやや細く、長く形成され、筒16、12の外周は、前向きの斜面16cを介して連続している。
【0024】
前部の筒16の外周後半部には、前後方向のローレット16a、16a…が形成されている。筒16の内部は、前向きに開拡する短いテーパ部16bが仕切板14の直近前方に形成され、仕切板14の前方全部が中空の吸引部51となっている。
【0025】
仕切板14のエア孔65、65は、仕切板14の直径上に対称形に開口されている。また、仕切板14には、エア孔65、65に挟まれるようにして、エア整流用の前向きの円錐形の凸部14aが中心部に形成されている。
【0026】
後部の筒12の中間部外周には、外フランジ11が形成されている。また、筒12の外面には、浅い溝状のエア通路15が前後方向に形成されている。エア通路15は、外フランジ11を分断しており、エア通路15の後端には、エア開口62が形成されている。ただし、エア開口62は、筒12の後端を含む後部外周に設けることができる。エア通路15、エア開口62は、仕切板14上のエア孔65、65を通る筒12の直径上に配置されており、エア通路15の底面は、筒12の外径より僅かに小径の同心円状となっている。また、外フランジ11の前方には、エア通路15を両側から狭めるようにして左右一対のガイドリブ12b、12bが前後方向に立設されており、各ガイドリブ12bの前後両端は、それぞれ前向き、後向きの斜面に形成されている。
【0027】
外フランジ11は、前面側が前向きの斜面に形成され、後面側には、左右のストッパリブ11a、11aが筒12の外周上に対称形に設けられている。ストッパリブ11a、11aは、エア通路15の中心から、それぞれ筒12の周方向に90°の範囲に形成されている。また、一方のストッパリブ11aの先端付近には、低い外向きの係合リブ11a1 が形成されている。筒12の外周には、外フランジ11と後端との中間部に係合リブ12aが形成されている。筒12の内周と仕切板14との間には、後向きの斜面12cが形成されている。
【0028】
回転筒20は、筒部材22と、筒部材22の前端に設ける開閉孔64、64付きの前板21と、筒部材22の後部外周に形成する開閉開口63とを有する(図1、図4)。ただし、筒部材22の後半部には、エアダクト24を形成する外筒23が付設され、回転筒20の後部には、キャップ30用の装着部26が形成されている。開閉孔64、64、開閉開口63は、それぞれ本体10のエア孔65、65、エア開口62に対応しており、開閉開口63は、前板21上の開閉孔64、64を通る筒部材22の直径上に配置されている。なお、図4(A)、(B)は、それぞれ図1(B)のY1 −Y1 線、Y2 −Y2 線矢視相当拡大断面図であり、図4(C)、(D)は、それぞれ図4(A)のY3 、Y4 矢視相当図である。
【0029】
筒部材22は、前端部の断面積を狭める斜面22a、22aを対称形に形成し、前板21は、開閉孔64、64の間に挟むようにして、エア整流用の後向きの円錐形の凸部21aを設けている。すなわち、開閉孔64、64、凸部21aは、前板21の後面側において、斜面22a、22aに挟まれるようにして形成されている。筒部材22の前端には、面取り22c、22cが形成され、筒部材22は、本体10の後部の筒12に差し込むことができる。なお、開閉開口63は、筒部材22の後端に向けて開放され、開閉開口63の前端には、筒部材22の内側に向けて斜面63aが形成されている。また、開閉開口63の前端には、低いシールリブ63bが筒部材22の外周に沿って形成されている。
【0030】
回転筒20は、筒部材22の後半部の周りに外筒23を設けている。外筒23は、後端部に内装する接続板25を介して筒部材22の後端に接続され、筒部材22に対し、互いに同心状に連結されている。また、外筒23は、外周の一部を径方向に突出させてトンネル状のエアダクト24を形成し、エアダクト24は、筒部材22の後部外周の開閉開口63に対応するとともに、外筒23の全長に亘って前後方向に形成されている。なお、筒部材22の後端は、開閉開口63を形成しない側の約半周が接続板25の前面に接続されており、開閉開口63を形成する側の約半周は、接続板25の前面から隙間dだけ離れ、開閉開口63の両側の端面22b、22bとなっている。外筒23の外径、エアダクト24の内径は、それぞれ本体10の外フランジ11の外径にほぼ一致し、エアダクト24の幅は、本体10のエア通路15の幅に一致している。また、エアダクト24の外面は、外筒23の外径より大径の同心円状に形成されている。
【0031】
外筒23の前端面には、本体10のストッパリブ11a、11aに対応するガイド溝23c、23cが形成されている。ガイド溝23c、23cは、エアダクト24の中心から外筒23の周方向にそれぞれ90°、180°の範囲に互いに逆方向に形成されており、長い方のガイド溝23cの先端付近には、本体10の係合リブ11a1 に対応する低い内向きの係合リブ23c1 が形成されている。また、外筒23の前部内周には、本体10の係合リブ12aに対応する係合リブ23aが形成され、接続板25の直近前方の内周には、小径部23bが形成されている。
【0032】
接続板25の後面側には、キャップ30の装着部26が形成されている。装着部26の輪郭は、筒部材22の外径よりやや大径の円弧部に対し、外筒23上のエアダクト24と同形の枠状部を滑らかに連結して楯状に形成されている。装着部26の前端面26bは、接続板25の厚さ方向のほぼ中間に位置しており、前端面26bの全体形状は、エアダクト24側がエアダクト24の内部形状に倣っており、エアダクト24の反対側が筒部材22の外径より小径で内径より大径の半円弧状であり、両者の中間には、装着部26内に露出する筒部材22の端面22b、22bに向けて前向きの段が形成されている。また、装着部26は、接続板25の後方に外筒23より短く突出し、装着部26の内面には、全周に亘って内向きの係合リブ26aが形成されている。
【0033】
外筒23、エアダクト24の横断面形状は、図5(A)、(B)に示されている。また、装着部26の全体形状は、図5(C)のとおりである。ただし、図5(A)〜(C)は、それぞれ図4(A)のY5 −Y5 線、Y6 −Y6 線、Y7 −Y7 線矢視相当断面図である。筒部材22の外周との間に形成されるエアダクト24の内部空間は、エアダクト24の前端から、筒部材22の開閉開口63上を通過して装着部26にまでストレートに貫通している。
【0034】
キャップ30は、装着部26と相似形の本体部31に対し、外筒23、エアダクト24に適合するフランジ32を付設して形成されている(図1)。本体部31の前面側は、装着部26の前端面26bの内側の形状に適合する形状で前方に突出しており、本体部31の全周には、係合リブ31aが形成されている。
【0035】
回転筒20は、筒部材22を本体10の後部の筒12に差し込むことにより、本体10の後部に相対回転自在に連結されている(図6)。ただし、このとき、本体10のストッパリブ11a、11aは、回転筒20の外筒23の前端のガイド溝23c、23cに対応させ、ガイド溝23c、23cに収納するものとする(図7)。なお、図6(A)、(B)は、それぞれ図2(A)のZ1 −Z1 線、Z2 −Z2 線矢視相当要部拡大断面図であり、図7(A)、(B)は、それぞれ図2(A)のZ3 −Z3 線、図2(B)のZ4 −Z4 線矢視相当拡大断面図である。
【0036】
回転筒20を本体10に連結すると(図6)、回転筒20は、外筒23の内面の係合リブ23aが本体10の筒12上の係合リブ12aを乗り越えることにより抜止めされる。また、筒部材22の前端の前板21は、本体10の仕切板14の後面に到達し、外筒23の前端は、本体10の外フランジ11の後面に近接する。さらに、本体10の筒12の後端は、外筒23の内周の小径部23bに挿入されて外周がシールされ、回転筒20の開閉開口63の前端は、シールリブ63bを介して筒12の内面との間がシールされる。
【0037】
本体10に対する回転筒20の正逆の相対回転範囲は、ストッパリブ11a、11aの一方がガイド溝23c、23cの一方の先端に当接することにより、90°に制限されている(図7)。そこで、本体10のエア通路15に対して回転筒20のエアダクト24が本体10の周方向に90°ずれる位置を準備位置(図2(A)、図7(A))とし、両者が一致する位置を使用位置(図2(B)、図7(B))とする。なお、準備位置では、一方のガイド溝23c内の係合リブ23c1 が一方のストッパリブ11aの係合リブ11a1 を乗り越えることにより、回転筒20を準備位置に軽くロックするとともに、準備位置に正しくセットされたことを示すクリック感を発現させている。ただし、係合リブ23c1 、11a1 は、それぞれ他方のガイド溝23c、ストッパリブ11aにも設け、使用位置においても、同様に回転筒20を軽くロックし、クリック感を発現させてもよい。
【0038】
一方、準備位置において、回転筒20の前端の開閉孔64、64、後部外周の開閉開口63は、それぞれ本体10の仕切板14、筒12によって閉じられている(図6(B))。また、前者のエアダクト24の前端は、後者の外フランジ11によって閉じられている。そこで、回転筒20の筒部材22内には、1回分の投与量相当の粉末製剤Pを収納して装着部26にキャップ30を装着することにより、粉末製剤P用の気密の収納部52を形成することができる。
【0039】
なお、キャップ30は、本体部31の前面側が装着部26の前端面26bを越えて筒部材22の端面22b、22bに当接するとともに、本体10の筒12の後端にも同時に当接して収納部52を気密にシールする。また、キャップ30は、本体部31の係合リブ31aが装着部26の内面の係合リブ26aを乗り越えることにより装着部26に取外し不能に装着され、フランジ32を介し、エアダクト24の後端、外筒23の後端を含む回転筒20の後部を全部閉じることができる。ただし、キャップ30は、たとえば超音波接着などにより装着部26にシール装着してもよい。
【0040】
粉末製剤Pを吸引するときは、本体10の外面のローレット16a、16a…の部分を指で摘んで、回転筒20を前方側から見て反時計方向に90°回転させ(図2(A)の矢印K1 方向)、回転筒20を使用位置にセットする(図2(B)、図7(B))。なお、使用位置では、エアダクト24が本体10のエア通路15、ガイドリブ12b、12bの位置に移動し、エアダクト24の前端が開放されるので、セット動作を誤るおそれがない。
【0041】
一方、このようにしてエアダクト24の前端が開くと(図8)、同時に、回転筒20の開閉開口63が本体10のエア開口62と合致して収納部52がエアダクト24を介して外部と連通し、筒部材22の前端の開閉孔64、64が仕切板14上のエア孔65、65と合致して収納部52が本体10の前部の吸引部51に連通する。すなわち、吸入器の内部には、エアダクト24から、収納部52を介して吸引部51にまで連通するエアの流路が形成される(図2(B)、図8)。また、このとき、エアダクト24によりエア開口62、開閉開口63の上方が覆われているため、エア開口62、開閉開口63を誤って下向きにしても、収納部52内の粉末製剤Pが外部にまでこぼれてしまうことがない。
【0042】
そこで、使用位置の吸入器の吸引部51を口にくわえて息を吸い込むと、収納部52内の粉末製剤Pの全量を一気に吸引して肺などに投与することができる。吸引用のエアは、本体10の外周のガイドリブ12b、12bに案内され、エア通路15に沿ってエアダクト24に流入してキャップ30に突き当たることにより、エア開口62、開閉開口63を経て収納部52の後端部に流れ込み、収納部52内の粉末製剤Pとともに、開閉孔64、64、エア孔65、65を通り、吸引部51を経て口内に吸引されるからである(図8の矢印方向)。
【0043】
なお、開閉開口63の前端の斜面63aは、エアダクト24から収納部52に流入するエアの流れを滑らかにする。また、筒部材22の斜面22a、22aは、筒部材22の前端部におけるエアの流速を高めることにより、前板21上のエア整流用の後向きの凸部21a、仕切板14上のエア整流用の前向きの凸部14aがエアの流れを整えてうずの発生を少なくすることと相俟って、粉末製剤Pが吸入器の内部に残留することなく、全量を円滑に吸引させることに貢献する。ただし、エアダクト24の断面積、使用位置におけるエア開口62、開閉開口63の開口面積は、それぞれ吸気抵抗を決定する使用位置の開閉孔64、64、エア孔65、65の開口面積より大きいものとする。
【0044】
以上の説明において、回転筒20を準備位置、使用位置にセットするためのストッパリブ11a、11a、ガイド溝23c、23cは、本体10に対して回転筒20を所定の角度範囲だけ正逆に回転させることができればよく、図3(B)、図4(D)の形態以外に設定することも可能である。また、準備位置、使用位置にセットするとき、回転筒20を90°以外の角度範囲に回転させるようにしてもよい。さらに、ストッパリブ11a、ガイド溝23cは、それぞれ回転筒20側、本体10側に設けてもよい。
【0045】
なお、エア開口62、開閉開口63は、必ずしも同形同大に形成する必要がない。各エア孔65、開閉孔64についても同様である。また、エア開口62の幅は、エア通路15の幅、エアダクト24の幅と揃えて形成してもよい。
【0046】
一方、開閉孔64、64、エア孔65、65は、それぞれ2個とするに代えて、1個としてもよい。また、本体10に対する回転筒20の抜止めは、本体10の係合リブ12aと回転筒20の外筒23の係合リブ23aで行うに代えて、本体10の筒12の内側と筒部材22の外側に係合リブを設けることもできる。さらに、本体10の外フランジ11を分断するエア通路15を設ける代わりに、外フランジ11に通気孔を設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明は、粉末製剤Pの1回分の投与量を吸引して肺などに投与する使い捨ての用途に対して広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
P…粉末製剤
10…本体
11…外フランジ
14…仕切板
14a…凸部
20…回転筒
21…前板
21a…凸部
22…筒部材
22a…斜面
23…外筒
24…エアダクト
25…接続板
30…キャップ
51…吸引部
52…収納部
62…エア開口
63…開閉開口
64…開閉孔
65…エア孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に長い両端開放の中空の本体と、該本体の後部に相対回転可能に連結する回転筒と、該回転筒の後部に装着するキャップとを備えてなり、前記本体は、エア孔付きの仕切板を中間部に設け、該仕切板の前部に吸引部を形成するとともに後部外周にエア開口を設け、前記回転筒は、前記本体の後部に差し込む筒部材と、該筒部材の前端に設ける開閉孔付きの前板と、前記筒部材の後部外周に形成する開閉開口とを有するとともに、正逆に回転させて準備位置と使用位置とにセット可能であり、準備位置では、前記筒部材の内部が気密の粉末製剤の収納部となり、使用位置では、前記開閉開口が前記エア開口と合致して前記収納部が外部と連通し、前記開閉孔が前記エア孔と合致して前記収納部が前記吸引部と連通することを特徴とする粉末製剤用の吸入器。
【請求項2】
前記回転筒は、前記筒部材の周りに外筒を設け、該外筒は、接続板を介して前記筒部材の後端に接続するとともに、外周の一部を径方向に突出させるエアダクトを前記開閉開口に対応させて前後方向に形成することを特徴とする請求項1記載の粉末製剤用の吸入器。
【請求項3】
前記本体は、前記エアダクトの前端を開閉する外フランジを設けることを特徴とする請求項2記載の粉末製剤用の吸入器。
【請求項4】
前記筒部材は、前端部の断面積を狭める斜面を形成し、前記前板は、エア整流用の後向きの凸部を設けることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の粉末製剤用の吸入器。
【請求項5】
前記仕切板は、エア整流用の前向きの凸部を設けることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の粉末製剤用の吸入器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−10724(P2012−10724A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147107(P2010−147107)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)