説明

粉末香料製剤の製造方法

【課題】香気の強く持続的な放出に優れた粉末香料製剤を提供する。
【解決手段】ジェランガムの水溶液に、香料成分、乳化剤及び金属塩を添加混合し、生成したゲル化溶液を、凍結乾燥又は熱風乾燥により乾燥して、粉末香料製剤を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューインガムなどの食品に賦香した香料の、香気の強く持続的な放出に優れた粉末香料製剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、香気の持続的な放出に優れた、ジェランガムを用いた粉末香料製剤として、ジェランガムの水溶液に、金属塩、香料成分及び乳化剤を添加混合し、生成した乳状ゲル化溶液を乾燥する粉末香料製剤の製造方法が知られている(特許文献1)。この製造方法では、水にジェランガム、乳化剤(アラビアガム)、賦形剤(デキストリン)及び塩化カルシウムを添加混合して加熱溶解した溶液に、香料成分を添加混合し、乳化処理をした後、噴霧乾燥により粉末香料製剤を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−335691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、噴霧乾燥はジェランガムを用いた場合には、噴霧乾燥する溶液の粘度が高くなりすぎて、うまくスプレーができないという問題点があった。また、特許文献1には乾燥方法として真空乾燥も開示されているが、通常の真空乾燥では、対象物がゲル状になっているので、完全には乾燥がしにくいという問題点がある。さらに、特許文献1の製造方法で得られた粉末香料製剤は、香味の発現や香味の持続性において十分なものとはいえなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ジェランガムの水溶液に、香料成分、乳化剤及び金属塩を添加混合し、生成したゲル化溶液を、凍結乾燥又は熱風乾燥により乾燥することにより、上記の製造上の問題点を克服し、香気の強く持続的な放出に優れた粉末香料製剤が得られることを見出した。
【0006】
即ち、本発明はかかる知見に基いてなされたものであり、以下の態様を含むものである。
項1.ジェランガムの水溶液に、香料成分、乳化剤及び金属塩を添加混合し、生成したゲル化溶液を、凍結乾燥又は熱風乾燥により乾燥することを特徴とする粉末香料製剤の製造方法。
項2.金属塩が、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である項1記載の粉末香料製剤の製造方法。
項3.金属塩をジェランガム1重量部に対して0.01〜1重量部添加する項1又は2記載の粉末香料製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法により、香気の強く持続的な放出に優れた粉末香料製剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に使用するジェランガムは、Sphingomonas elodeaという微生物が産生する多糖類で、主鎖の1−3結合したグルコースにアセチル基とグリセリル基が存在している。この構造のまま回収し製品化したネイティブ型ジェランガムと、これからアシル基(アセチル基とグリセリル基)を除去したものが脱アシル型ジェランガムであり、本発明はこれら両方とも使用できるが、脱アシル型ジェランガムを用いることが好ましい。
これらのジェランガムは市販品を入手でき、ケルコゲル(ケルコ社製)などを用いることができる。ジェランガムの使用量は、通常1〜3重量%の水溶液にして用いることができる。
【0009】
本発明に用いる香料成分としては、油溶性香料、水溶性香料、合成香料、天然香料の区別なく使用することができる。
【0010】
本発明に用いる乳化剤としては、アラビアガム、ガティガム、レシチン、大豆多糖類、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムなどを使用することができる。粉末香料製剤中の乳化剤の添加量は、使用される香料成分の量や乳化剤の種類などによって異なるが、香料成分1重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。なお、予め上記の乳化剤を用いて香料成分を乳化した粉末乳化香料製剤を用いることもできる。
【0011】
本発明に用いる金属塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩や、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩が使用され、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウムなどを用いることができる。
その使用量は、ジェランガムを難溶化できる量であれば良く、ジェランガム1重量部に対して、金属塩として、0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部添加することが好ましい。ジェランガム水溶液に上記金属塩を作用させて、ゲル化させた溶液を乾燥することで、難溶化したジェランガム組成物中に、香料成分が封じ込められる。
【0012】
さらに、本発明の粉末香料製剤では、製造時にゼラチン、デキストリン、寒天、乳糖、などの賦形剤を用いてもよい。その他所望により、色素や抗酸化剤などを添加することもできる。
【0013】
本発明の製造方法は、加熱した水にジェランガム及び乳化剤を添加し、攪拌溶解させ、これに香料成分を添加し混合溶解する。次いで、これに金属塩を添加し、混合溶解し、冷却して容器に移し、凍結乾燥機(東京理化製 FREEZER DRYER FD-1など)に取り付け、常法により凍結乾燥する。乾燥終了後、内容物を取り出し、粉砕して粉末香料製剤を得る。
【0014】
もう一つの製造方法として、上記の方法で得られた水、ジェランガム、乳化剤、香料成分及び金属塩の混合ゲル溶液を、ステンレスバットに入れ、覆いをして熱風乾燥機で乾燥する。乾燥温度としては60℃前後が好ましく、乾燥時間としては5〜20時間が好ましい。乾燥後に乾燥物を取り出し、粉砕して粉末香料製剤を得る。
【0015】
本発明により得られた粉末香料製剤は、例えばチューインガム、キャンディー、錠菓、チョコレート、飴などの菓子類や、水産加工食品などに用いることができる。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0017】
実施例1(凍結乾燥)
75〜85℃の水180gに脱アシル型ジェランガム3gを添加し、攪拌溶解した。これに粉末メントール乳化香料(メントール20%、アラビアガム20%、デキストリン60%の製剤)17gを添加し混合溶解した。次いで、これに乳酸カルシウム0.54gを添加し、混合溶解し、冷却して500ml容ナス型フラスコに移し、東京理化製のFREEZER DRYER FD-1に取り付け、冷凍器を24時間運転して凍結乾燥する(圧力0.8−0.4torr)。乾燥終了後、内容物を取り出し、粉砕して耐熱性徐放性粉末香料製剤19gを得た。
【0018】
実施例2(熱風乾燥)
実施例1と同様にして、脱アシル型ジェランガム、粉末メントール乳化香料、乳酸カルシウムを混合したゲル化液を調製し、これを200×250×30mmのステンレスバットに入れ、覆いをして熱風乾燥機(60℃)で18時間乾燥した。乾燥物を取り出し、粉砕して耐熱性徐放性粉末香料製剤19gを得た。
【0019】
比較例1(コントロール)
水150gにアラビアガム20g、デキストリン60gを添加混合して加熱溶解後、60℃に冷却した。これにメントール香料20gを添加し、攪拌混合後、TKホモミキサー(PRIMIX社製)で10分間処理して乳化し、スプレードライヤーにて噴霧乾燥し、メントール粉末香料90gを得た。
【0020】
比較例2
特許文献1の実施例1と同様にして、水100gに脱アシル型ジェランガム3g、アラビアガム20g、デキストリン60g及び塩化カルシウム1gを混合添加して60〜70℃で加熱溶解した。この溶液にメントール香料20gを添加混合し、TKホモミキサー(PRIMIX社製)で10分間処理して乳化し、スプレードライヤーにて噴霧乾燥し、メントール粉末香料91gを得た。
【0021】
官能試験
ガム生地10gに、上記のように調製した各粉末香料を0.2g添加して、常法によりチューインガムを調製し、専門パネラー8名が咀嚼(咀嚼回数 60−70回/分)して、以下の表1の基準により評価した。結果を表2に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
官能試験の結果から、本願発明の製造方法により得られた粉末香料製剤を用いて調整したチューインガムは、噴霧乾燥により得られた粉末香料製剤を用いて調整したチューインガムの比較例1、2に比べて、香味の発現がゆっくりで、発現の強さに優れ、香味の保持も長いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明により、香味の発現がゆっくりで、発現の強さに優れ、香味の保持も長い粉末香料製剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェランガムの水溶液に、香料成分、乳化剤及び金属塩を添加混合し、生成したゲル化溶液を、凍結乾燥又は熱風乾燥により乾燥することを特徴とする粉末香料製剤の製造方法。
【請求項2】
金属塩が、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である請求項1記載の粉末香料製剤の製造方法。
【請求項3】
金属塩をジェランガム1重量部に対して0.01〜1重量部添加する請求項1又は2記載の粉末香料製剤の製造方法。

【公開番号】特開2010−202737(P2010−202737A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48404(P2009−48404)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】