説明

粉砕メディア及びこの粉砕メディアを用いた粉砕方法

【課題】鉱物等を微粉砕するために好適に用いられる粉砕メディア及びその粉砕メディアを用いた粉砕方法を提供する。
【解決手段】粉砕メディアは、鉄系材料からなり、平均粒径が0.2〜10.0mmであって、硬度がビッカース硬さ(Hv)で390〜700に形成されている。粉砕メディアを構成する鉄系材料として、炭素を0.80〜1.20質量%、珪素を0.4質量%以上、マンガンを0.35〜1.20質量%、リンを0.05質量%以下、硫黄を0.05質量%以下、を含有し、残部が鉄及び不可避不純物とからなる材料を好適に用いることができる。この粉砕メディアを用いた鉱物等の微粉砕において、粉砕メディアより外形寸法が大きい大径メディアと混合した混合メディアを用いる。混合メディアを用いると、大径メディアは寸法が大きな被粉砕物に作用し、迅速に荒粉砕を行い、小径メディアは寸法が小さな被粉砕物に作用し、微粉砕を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールミルや媒体攪拌型粉砕機等、被粉砕物と粉砕媒体との衝撃力により粉砕する粉砕機に用いる粉砕メディア及びこの粉砕メディアを使用した粉砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉱物、鉱石、岩石等を安価に粉砕する方法として、ボールミルや媒体攪拌型粉砕機等に被粉砕物と粉砕メディアとを投入し、粉砕メディアによる衝撃力で被粉砕物を粉砕する方法が用いられている。ここで用いられる粉砕メディアは、鉄系材料またはセラミックス系材料からなるものが広く用いられている(例えば、特許文献1の第5段落、非特許文献1の205頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−001351号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】竹内雍、川井利長、越智健二、佐藤忠正(1982)「解説化学工学」培風館
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、鉱物等を粒径10〜200μm以下に粉砕する微粉砕の要請が高くなっている。このような微粉砕を行うには、粉砕メディアを粉砕機に多く充填し、被粉砕物と粉砕メディアとの接触回数を多くする必要があるため、小径の粉砕メディアを用いることが好ましい。
粉砕メディアには耐摩耗性、耐衝撃性、高硬度等が要求されるが、セラミックス系材料、アモルファス金属、WC複合金属等からなる小径の粉砕メディアは高価であり、微粉砕に用いるには実用的ではないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、鉱物等を微粉砕するために好適に用いられる粉砕メディア及びその粉砕メディアを用いた粉砕方法を提供することを目的とする。ここで、被粉砕物である「鉱物等」とは岩石、鉱石、硫化物精鉱、工業用鉱物等である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記目的を実現するために、請求項1に記載の発明では、粉砕メディアが、平均粒径が0.2〜10.0mmであって、硬度がビッカース硬さで390〜700である鉄系材料からなる、という技術的手段を用いる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、粉砕メディアは、平均粒径が0.2〜3.0mmの略球状に形成されている、という技術的手段を用いる。
【0009】
請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、粉砕メディアの形状、硬度を適切に設定することにより、被粉砕物と粉砕メディアの接触回数を増加させて効率よく微粉砕を行うことができ、長寿命である鉱物等の微粉砕に好適に用いることができる粉砕メディアを提供することができる。
ここで「鉄系材料」とは、Feを主成分(50%以上含有)とするものだけでなく、Feと合わせてNi等の鉄族元素が主成分とするものも含む概念である。また、「略球状」とは真球状だけではなく外観形状がほぼ球状であることを示し、扁平状、楕円球状等を除く概念である。以下、明細書中の「球状体」も同様である。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の粉砕メディアにおいて、前記鉄系材料は、炭素を0.80〜1.20質量%、珪素を0.4質量%以上、マンガンを0.35〜1.20質量%、リンを0.05質量%以下、硫黄を0.05質量%以下、を含有し、残部が鉄及び不可避不純物とからなる、という技術的手段を用いる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の粉砕メディアにおいて、前記鉄系材料は、炭素を0.85〜1.15質量%、珪素を0.60〜1.00質量%、マンガンを0.60〜0.95質量%、リンを0.05質量%以下、硫黄を0.05質量%以下、を含有し、残部が鉄及び不可避不純物とからなる、という技術的手段を用いる。
【0012】
本発明の粉砕メディアを構成する鉄系材料は、請求項3に記載の組成、好ましくは請求項4に記載の組成とすることで、粉砕時の損耗が少なく、かつ粉砕効率が高い粉砕メディアを得ることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、請求項3または請求項4に記載の粉砕メディアにおいて、前記鉄系材料は、更にアルミニウムを0.04〜1.20質量%含有する、という技術的手段を用いる。
【0014】
請求項5に記載の発明によると、脱酸効果により、前記鉄系材料を球状に造粒しやすく、空隙率を低減することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、請求項3ないし請求項5のいずれか1つに記載の粉砕メディアにおいて、前記鉄系材料は、更にクロムを0.1〜1.2質量%含む、という技術的手段を用いる。
【0016】
請求項6に記載の発明によると、焼入れ性を向上させることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の粉砕メディアにおいて、水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法により造粒して製造された、という技術的手段を用いる。
【0018】
請求項7に記載の発明のように、水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法により造粒して粉砕メディアを製造すると、粒径が0.2〜3.0mmの造粒物については、概ね球状であるため、球状にするための加工が不要である。これにより、安価に球状の粉砕メディアを製造することができる。
粒径が3.0mm以上の造粒物には、扁平状、楕円球状、涙形状、大径粒子の周りに小径粒子が付着した形状、等球状以外の形状が含まれるが、この粒径の粉砕メディアは比較的粒径が大きな非粉砕物の粉砕に用いるため、球状以外のメディアが混在していてもよい。
以上より、粉砕メディアを水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法によって製造することにより、比較的粒径が小さな被粉砕物(例えば10mm未満)を粉砕するのに適した粉砕メディアと、比較的粒径が大きな被粉砕物(例えば10〜20mm)を粉砕するのに適した粉砕メディアと、をそれぞれ製造することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の粉砕メディアにおいて、水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法による造粒の後、焼入れ及び焼戻しを施して製造された、という技術的手段を用いる。
【0020】
請求項8に記載の発明のように水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法によって造粒した後、焼入れ及び焼戻しを行うことで、造粒物の硬度を所定の値に調整することができる。
【0021】
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の粉砕メディアにおいて、真比重が6.5g/cm3以上である、という技術的手段を用いる。
【0022】
請求項9に記載の発明のように、粉砕メディアの真比重が6.5g/cm3以上であるように構成すると、粉砕に必要な十分な衝突エネルギーを生じさせることができる。また、比重が高く、内部欠陥等が少ないため、長寿命の粉砕メディアとすることができる。
【0023】
請求項10に記載の発明では、粉砕方法であって、請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の粉砕メディアを当該粉砕メディアより外形寸法が大きい大径メディアとあらかじめ設定された混合比で混合した混合メディアを用いて前記粉砕機により被粉砕物を粉砕する、という技術的手段を用いる。
【0024】
請求項10に記載の発明のような混合メディアを用いると、大径メディアは寸法が大きな被粉砕物に作用し、粉砕力が大きいので粉砕メディアが粉砕可能な寸法まで迅速に荒粉砕を行うことができる。粉砕メディアは寸法が小さな被粉砕物に作用し、大径メディアよりも寸法が小さいため前記粉砕機への充填量を多くすることができ、被粉砕物と粉砕メディアの接触回数が増えるため効率よく微粉砕を行うことができる。これにより、鉱物等の微粉砕を迅速に行うことができる。
【0025】
請求項11に記載の発明では、請求項10に記載の粉砕方法において、前記大径メディアは、平均粒径が10〜30mmである、という技術的手段を用いる。
【0026】
請求項11に記載の発明のように大径メディアの平均粒径を設定することにより、十分な粉砕力を付与し粉砕時間を短縮することができるとともに、大径メディアによって被粉砕物を粉砕メディアで微粉砕を適切に行うことができる寸法まで粉砕することができる。
【0027】
請求項12に記載の発明では、請求項10または請求項11に記載の粉砕方法において、前記混合メディアにおける粉砕メディアの混合比は、容積比で15〜25%である、という技術的手段を用いる。
【0028】
請求項12に記載の発明のように混合メディアにおける粉砕メディアの混合比を設定することにより、粒度分布がシャープな粉砕物が得られるとともに、粉砕時間を短縮することができる。
【0029】
請求項13に記載の発明では、請求項10ないし請求項12のいずれか1つに記載の粉砕方法において、前記粉砕機は回転攪拌型粉砕機である、という技術的手段を用いる。
【0030】
回転攪拌型粉砕機は、円筒形の粉砕機本体内にモータ等の回転手段に連結された回転媒体(粉砕羽根や粉砕盤、等)を備えた粉砕機である。前記粉砕機本体内に粉砕メディアを投入し、回転媒体を高速で回転させることで前記粉砕メディアを該粉砕機本体内で激しく攪拌させると共に、該粉砕機本体内に投入された被粉砕物を該粉砕メディアとが接触することで粉砕が行われる。粉砕された被粉砕物は連続的に該粉砕機本体内より排出される。このような粉砕機は粉砕効率は高いが、微粉砕を行うためには被粉砕物の滞留時間を長くする必要がある。滞留時間を長くするには粉砕機が大型化する必要がある。請求項13に記載の発明によって、装置を大型化することがなく、かつ粉砕効率のよい粉砕方法を提供することができる。
【0031】
また、請求項13に記載の発明は、請求項14に記載の発明のように石灰石の粉砕に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(粉砕メディア)
本発明の粉砕メディアは、略球状の鉄系材料からなり、平均粒径が0.2〜3.0mmであって、硬度がビッカース硬さ(Hv)で390〜700に形成されている。このような粉砕メディアは、鉱物、鉱石、岩石等の被破砕物を、例えば平均粒径1mm以下に粉砕するような微粉砕に好適に用いることができる。
【0033】
粉砕メディアは、平均粒径が小さい方が粉砕機への充填量を多くすることができ、被粉砕物と粉砕メディアの接触回数が増えるため効率よく微粉砕を行うことができる。しかし、粉砕メディアの平均粒径が小さすぎると、粉砕メディア1個当たりの重量が減少し、粉砕に必要な十分な衝突エネルギーを生じさせることが困難になる。そこで、鉱物等の微粉砕を短時間で効率よく行うためには、粉砕メディアの平均粒径を0.2〜3.0mmとすることが好ましい。
【0034】
粉砕メディアの硬度が低すぎると被粉砕物を十分に粉砕することが困難であるとともに、粉砕メディアの損耗が激しくなり寿命が短くなってしまう。粉砕メディアの硬度が高すぎると粉砕メディアの靱性が低下しもろくなるため破損しやすくなってしまう。被粉砕物の十分な粉砕と粉砕メディアの長寿命とを両立させるためには、粉砕メディアの硬度をビッカース硬さ(Hv)で390〜700とすることが好ましい。
【0035】
本発明の粉砕メディアを構成する鉄系材料として、炭素を0.80〜1.20質量%、珪素を0.4質量%以上、マンガンを0.35〜1.20質量%、リンを0.05質量%以下、硫黄を0.05質量%以下、を含有し、残部が鉄及び不可避不純物とからなる材料を好適に用いることができる。更に好ましくは、炭素を0.85〜1.15質量%、珪素を0.60〜1.00質量%、マンガンを0.60〜0.95質量%、リンを0.05質量%以下、硫黄を0.05質量%以下、を含有し、残部が鉄及び不可避不純物とからなる材料である。上記の組成の鉄系材料は、焼入・焼戻処理によりビッカース硬さ(Hv)で390〜700に調整することが可能である。
【0036】
ここで、粉砕メディアの比重が6.5g/cm3以上であるように構成すると、鉱物等の粉砕に必要な十分な衝突エネルギーを生じさせることができるとともに、内部欠陥等が少ないため、粉砕メディアを長寿命とすることができる。
【0037】
炭素は、オーステナイトに固溶し硬化能を増加させるとともに、焼入れ性に寄与して素材の硬さを決定する。炭素の含有量は、十分に硬化するとともに、脆くならないようにするために、0.80〜1.20質量%とすることが好ましく、更に好ましくは、0.85〜1.15質量%である。
【0038】
珪素は、粉砕メディアを後述するアトマイズ法により製造する場合等に溶湯の流動性を良くする働きがあるため、0.4質量%以上とすることが好ましい。珪素の量が多すぎるとパーライト相が形成され粉砕メディアの硬度が低下するおそれがあるため、更に好ましくは、0.60〜1.00質量%である。
【0039】
マンガンは、オーステナイト相に固溶して、固溶強化を起こす。赤熱脆性を避けるとともに、靭性を低下させる不純物とならないように、0.35〜1.20質量%とすることが好ましく、更に好ましくは、0.60〜0.95質量%である。
【0040】
リン及び硫黄は量が多いと脆性の低下を引き起こすため、ともに0.05質量%以下とすることが好ましい。
【0041】
粉砕メディアを構成する鉄系材料は、更にアルミニウムを含有することができる。ここで、アルミニウムを添加することで脱酸効果により、後述する造粒工程において球状に造粒しやすく、空隙率も低減することができるが、含有量が多すぎると溶湯表面に酸化物が形成され造粒が困難になるため、アルミニウムの含有量は0.04〜1.20質量%とすることが好ましい。
【0042】
粉砕メディアを構成する鉄系材料は、更にクロムを含有することができる。ここで、クロムを添加することで後述する焼入れ工程において焼入れ性を向上させることができるが、含有量が多すぎると溶湯表面に酸化物が形成され造粒が困難になるため、クロムの含有量は0.1〜1.2質量%とすることが好ましい。
【0043】
(粉砕メディアの製造方法)
次に、粉砕メディアの製造方法の一例を説明する。
【0044】
まず、溶融工程では、所定の組成となるように秤量した鉄系材料の原料(Fe、C、Si、Mn)を溶解炉に投入し、1640〜1680℃に加熱して溶融する。
【0045】
続く造粒工程では、溶融した前記原料を水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法により造粒し造粒物を製造する。これらアトマイズ法を用いると、粒径が0.2〜3.0mmの造粒物については、概ね球状であるため、球状にするための加工が不要である。これにより、安価に球状の粉砕メディアを製造することができる。
粒径が3.0mm以上の造粒物には、扁平状、楕円球状、涙形状、大径粒子の周りに小径粒子が付着した形状、等球状以外の形状が含まれるが、この粒径の粉砕メディアは比較的粒径が大きな非粉砕物の粉砕に用いるため、球状以外のメディアが混在していてもよい。以上より、粉砕メディアを水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法によって製造することにより、比較的粒径が小さな被粉砕物(例えば10mm未満)を粉砕するのに適した粉砕メディアと、比較的粒径が大きな被粉砕物(例えば10〜20mm)を粉砕するのに適した粉砕メディアと、をそれぞれ製造することができる。
【0046】
水アトマイズ法による造粒工程を説明する。水アトマイズ法では、溶湯を溶解槽底部のノズルから流出させながらアトマイズガス(圧縮ガス)を噴射し、溶湯を粗砕し、表面張力により小径の球状となった溶湯を水中に投下し急冷し、球状体(造粒物)を得る。
【0047】
続く焼入れ工程では、造粒工程で製造した球状体をロータリーキルン等により乾燥させた後に、800〜900℃に加熱し、1時間程度保持した後、水中に投下して焼入れを行う。これにより、球状体の硬度を増大させることができる。
【0048】
続く焼戻し工程では、焼入れ工程を経た球状体を500〜600℃で1時間程度加熱し、その後徐冷することにより焼戻を行い、球状体の硬度がビッカース硬さ(Hv)で390〜700となるように調整する。これにより、球状体を所望の硬度に調整することができるとともに、焼入れ工程により低下した球状体の靭性を向上させることができる。
【0049】
続く篩分工程では、振動篩等を用いて球状体の分級を行う。
【0050】
そして、形状、硬度、内部欠陥を検査する検査工程を経て、所定の粒径の粉砕メディアを得る。
【0051】
例えば、形状は非球状粒子率により評価し、球状体をガラス平板に広げて拡大鏡によって観察した時に、球状体の長径が短径の2倍以上の粒子の割合を求める。硬度は、球状体を樹脂中に埋め込んで研磨し、該球状体の断面のビッカース硬さを測定した。試験荷重は9.8N、荷重負荷時間は12秒とし、有効な20個の測定値の平均値を求める。内部欠陥は、空孔率により評価した。球状体を樹脂中に埋め込んで研磨し、拡大鏡によって該球状体の断面を観察した時に、その断面積に対して空孔が占める面積が10%以上の該球状体の割合を求める。
【0052】
水アトマイズ法によって得られた造粒物において、所定の粒径より小さい粒子にのみ焼入れ工程及び焼入れ工程が必要な場合や、所定の粒径より小さい粒子と所定の粒径より大きい粒子とについてそれぞれ別の条件にて焼入れ工程及び焼戻し工程を行う場合は、水アトマイズ法により造粒した後、所定の粒径で分級してもよい。
【0053】
(粉砕メディアを用いた粉砕方法)
本発明の粉砕メディアは単体で使用することもできるが、単体では粉砕力が小さいため、鉱物を微粉砕するためには長時間を要してしまう。そこで、本発明では、粉砕メディアより外形寸法が大きい大径メディアと混合した混合メディアを用いて微粉砕を行う。ここで、大径メディアは材質、形状は問わないが、本実施形態では球状アルミナからなるメディアを用いる。
【0054】
鉱物等の微粉砕は、被粉砕物を所定の容積比で混合された混合メディアとともに、ボールミル、媒体攪拌型粉砕機、振動粉砕機等公知の粉砕機の容器に投入し、回転、攪拌することにより行う。粉砕機として、湿式、乾式のいずれの方式も採用することができる。
【0055】
混合メディアを用いると、大径メディアは寸法が大きな被粉砕物に作用し、粉砕力が大きいので粉砕メディアが粉砕可能な寸法まで迅速に荒粉砕を行うことができる。粉砕メディアは寸法が小さな被粉砕物に作用し、大径メディアよりも寸法が小さいため回転粉砕機への充填量を多くすることができ、被粉砕物と粉砕メディアの接触回数が増えるため効率よく微粉砕を行うことができる。これにより、鉱物等の微粉砕を迅速に行うことができる。
【0056】
混合メディアの構成は以下の観点に基づき、適宜設定される。
【0057】
大径メディアの径については、径が大きすぎると大径メディアによって粉砕された被粉砕物の寸法が大きく、粉砕メディアで微粉砕を適切に行うことができる寸法まで粉砕されないとともに、大径メディアによって粉砕メディアが破壊されるおそれがある。
また、径が小さすぎると、大径メディアによる粉砕力が不足し、粉砕時間を短縮する効果が得られない。
そこで、被粉砕物の材質、寸法等を勘案して大径メディアの材質、大きさを設定する。例えば、被粉砕物の粉砕前の粒度が小さければ、大径メディアの寸法を小さくすることができる。粒径10mmの石灰石を平均粒径200μmまで粉砕する場合には、大径メディアの径を20mm程度とするとよい。
【0058】
粉砕メディアと大径メディアとの混合比については、粉砕メディアが多いと微粉砕が適切に行われ、粒度分布がシャープな粉砕物が得られるが、粉砕に長時間を要する。被破砕物の粉砕前の粒度が小さければ、粉砕メディアの混合比を増大させることができる。混合メディアにおける粉砕メディアの容積比は、目的とする粒度分布と許容される粉砕時間とを勘案して設定され、10〜30%が好適である。例えば、粒径10mmの石灰石を平均粒径200μmまで粉砕する場合には、混合メディアにおける粉砕メディアの容積比を20%程度とするとよい。
【0059】
このように、大径メディアの寸法、粉砕メディアの混合比等を適切に設定した混合メディアを用いると、被粉砕物を短時間で微粉砕することができる。
【0060】
粉砕機として、回転攪拌型粉砕機を好適に用いることができる。回転攪拌型粉砕機は、円筒形の粉砕機本体内にモータ等の回転手段に連結された回転媒体(粉砕羽根や粉砕盤、等)を備えた粉砕機である。前記粉砕機本体内に粉砕メディアを投入し、回転媒体を高速で回転させることで前記粉砕メディアを該粉砕機本体内で激しく攪拌させると共に、該粉砕機本体内に投入された被粉砕物を該粉砕メディアとが接触することで粉砕が行われる。粉砕された被粉砕物は連続的に該粉砕機本体内より排出される。このような粉砕機は粉砕効率は高いが、微粉砕を行うためには被粉砕物の滞留時間を長くする必要がある。滞留時間を長くするには粉砕機が大型化する必要がある。これにより、装置を大型化することがなく、かつ粉砕効率のよい粉砕方法を提供することができる。また、回転攪拌型粉砕機は、石灰石の粉砕に好適に適用することができる。
【0061】
[実施形態の効果]
(1)本発明の粉砕メディアによれば、上述した形状及び硬度とすることにより、また上述した組成からなるものとすることにより、長寿命で鉱物の微粉砕に好適な粉砕メディアを提供することができる。
【0062】
(2)粉砕メディアより外形寸法が大きい大径メディアと混合した混合メディアを用いて粉砕を行うことにより、鉱物等の微粉砕を迅速に行うことができる。
【実施例】
【0063】
表1に示す粉砕メディアを用いて、粉砕メディアの耐久性を示す損耗率の評価と石灰石の粉砕実験を行った。各試料の硬度はビッカース硬さ(Hv)が500〜520程度となるように調整されている。
【0064】
【表1】

【0065】
粉砕装置は、内寸がφ200×L200mmの容器回転型ボールミルを用いた。大径メディアとしてφ30mmのアルミナボールを用いた。
【0066】
(損耗率の評価)
以下の手順で損耗率の評価をおこなった。
1.容器回転型ボールミル内に上記の大径メディアと粉砕メディアを容積比8:2となるように混合し、これを該ボールミルの容積の1/2に相当する量を投入し、水と粉砕メディアが該ボールミルの容積の1/2となるように投入する。
2.該ボールミルの臨界回転数の60〜70%の回転数(本実施例では回転数64min−1)にて、24h運転を行う。
3.磁力選別にて粉砕メディアを取り出して乾燥させた後、粉砕メディアの重量を測定し、運転前の粉砕メディアの重量と比較することで、損耗率を評価した。損耗率((1−運転後の重量/運転前の重量)×100)が20%未満を◎、20%以上50%未満を○、50%以上80%未満を△、80%以上を×で評価し、◎、○、△評価を合格とした。
【0067】
(粉砕による評価)
また、以下の手順で粉砕による評価をおこなった。
1.大径メディアと粉砕メディアを容積比8:2となるように混合し該ボールミルの1/2投入する。
2.平均粒径5mmの石灰石を40質量%となるように水に投入し、これを該ボールミルの1/2となるように投入する。
3.該ボールミルの臨界回転数の60〜70%の回転数(本実施例では回転数64min−1)にて、運転を行い8時間後に被粉砕物の粒度分布を測定する。
4.0.5mmの粗大粒子の含有率が1%未満を◎、1%以上20%未満を○、20%以上80%以下を△、80%以上を×として評価し、◎、○、△評価を合格とした。
【0068】
評価結果を表2に示す。いずれの場合も×評価はなく、実用上問題なく被粉砕物を良好に粉砕できることが分かった。また、粒子径が炭素を0.80〜1.20質量%、珪素を0.4質量%以上、マンガンを0.35〜1.20質量%、リンを0.05質量%以下、硫黄を0.05質量%以下であり、かつ比重が7.0g/cm以上である場合は◎または○評価となり、粉砕メディアの損耗率が小さく、また粉砕後の被粉砕物中への粗大粒子の混在が少なく粉砕を行うことができた。更に、炭素を0.85〜1.15質量%、珪素を0.60〜1.00質量%、マンガンを0.60〜0.95質量%、リンを0.05質量%以下、硫黄を0.05質量%以下であり、かつ比重が7.0g/cm以上である場合は◎評価となり、粉砕メディアの損耗率がより小さく、また粉砕後の被粉砕物中への粗大粒子の混在がより少なく粉砕を行うことができた。
【0069】
【表2】

【0070】
以上より、硬度、粒径、組成を適切に設定した本発明の粉砕メディアは長寿命で効率的に鉱物等の微粉砕を行うことができることが確認された。
【0071】
実施例2では、石灰石の粉砕について説明したが本発明の粉砕メディアによって、本発明による粉砕の対象物はこれに限定されない。岩石(例えば、シリカ等)、鉱石(例えば、ニッケル鉱石、銅鉱石、亜鉛鉱石、鉄鉱石、金鉱石、等)、硫化物精鉱、工業用鉱物等を好適に粉砕することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被粉砕物と粉砕メディアとの衝撃力により粉砕する粉砕機に使用する粉砕メディアであって、
平均粒径が0.2〜10.0mmであり、かつ硬度がビッカース硬さで390〜700である鉄系材料からなることを特徴とする粉砕メディア。
【請求項2】
前記粉砕メディアは、平均粒径が0.2〜3.0mmの略球状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の粉砕メディア。
【請求項3】
前記鉄系材料は、炭素を0.80〜1.20質量%、珪素を0.4質量%以上、マンガンを0.35〜1.20質量%、リンを0.05質量%以下、硫黄を0.05質量%以下、を含有し、残部が鉄及び不可避不純物とからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粉砕メディア。
【請求項4】
前記鉄系材料は、炭素を0.85〜1.15質量%、珪素を0.60〜1.00質量%、マンガンを0.60〜0.95質量%、リンを0.05質量%以下、硫黄を0.05質量%以下、を含有し、残部が鉄及び不可避不純物とからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の粉砕メディア。
【請求項5】
前記鉄系材料は、更にアルミニウムを0.04〜1.20質量%含有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の粉砕メディア。
【請求項6】
前記鉄系材料は、更にクロムを0.1〜1.2質量%含むことを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1つに記載の粉砕メディア。
【請求項7】
水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法により造粒して製造されたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の粉砕メディア。
【請求項8】
水アトマイズ法またはディスクアトマイズ法による造粒の後、焼入れ及び焼戻しを施して製造されたことを特徴とする請求項7に記載の粉砕メディア。
【請求項9】
真比重が6.5g/cm3以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の粉砕メディア。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の粉砕メディアを当該粉砕メディアよりの外形寸法が大きい大径メディアとあらかじめ設定された混合比で混合した混合メディアを用いて前記粉砕機により被粉砕物を粉砕することを特徴とする粉砕方法。
【請求項11】
前記大径メディアは、平均粒径が10〜30mmであることを特徴とする請求項10に記載の粉砕方法。
【請求項12】
前記混合メディアにおける粉砕メディアの混合比は、容積比で15〜25%であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の粉砕方法。
【請求項13】
前記粉砕機は回転攪拌型粉砕機であることを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれか1つに記載の粉砕方法。
【請求項14】
前記被粉砕物は石灰石であることを特徴とする請求項13に記載の粉砕方法。

【公開番号】特開2013−63380(P2013−63380A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202876(P2011−202876)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】