説明

粉砕機用の回転翼および粉砕機

【課題】回転翼を変形して被粉砕物を様々な粒子径に調整することができるとともに、メンテナンスのコストを抑制することができる粉砕機用の回転翼を提供することを課題とする。
【解決手段】粉砕室2内で被粉砕物を粉砕する粉砕機1に用いられる回転翼10A,10Bであって、外周部に羽根32が設けられた複数の翼部材30A〜30C(30D〜30F)を備え、各翼部材30A〜30C(30D〜30F)は、粉砕室2内に設けられた回転軸6(6´)に外嵌され、各翼部材30A〜30C(30D〜30F)は、回転軸6(6´)の周方向に角度をずらして積層可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物、食品、鉱物、医薬品等の被粉砕物を粉砕するための粉砕機用の回転翼および粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被粉砕物を細かく粉砕(微粒子化)する粉砕装置としては、湿式粉砕機と乾式粉砕機とがある。湿式粉砕機としては、スラリー状の被粉砕物同士を衝突させることで、被粉砕物を乳化や微粒子化するものがある。
【0003】
乾式粉砕機としては、粉砕室内に二つの回転翼を対向して配置し、両回転翼を回転させることで粉砕室内に気流を発生させ、被粉砕物同士、被粉砕物と回転翼、被粉砕物と粉砕室の内壁といった各種衝突を繰り返すことで、被粉砕物を粉砕する粉砕機を、本願出願人が考案している(特願2010−260316)。また、乾式粉砕機としては、投入側の回転翼および吐出側の回転翼の回転方向の前方に位置する側の総表面積と回転数との積の比率を条件化することで、粉砕効率を高めているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
その他の乾式粉砕機としては、回転翼の外周部と粉砕室の内壁との間隔を変えることで、粉砕室内の気流を調整するものがある(例えば、特許文献2参照)。また、回転翼のボスにスリットを形成し、このスリットに羽根の基部を取り付けることで、羽根が交換可能となっているものがある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3739303号公報
【特許文献2】特許第3701632号公報
【特許文献3】特開2008−296074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したような従来の乾式粉砕機では、回転翼の表面積や角部の数によって、処理後の被粉砕物の粒子径が定まる。したがって、被粉砕物を所望の粒子径に調整するために、粒子径ごとに複雑な形状の回転翼を用意しなければならないという問題があった。
【0007】
また、回転翼の羽根の一部が磨耗または損傷した場合でも、回転翼全体を交換することになるため、メンテナンスのコストが高くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、前記した問題を解決し、回転翼を変形して被粉砕物を様々な粒子径に調整することができるとともに、メンテナンスのコストを抑制することができる粉砕機用の回転翼および粉砕機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、粉砕室内で被粉砕物を粉砕する粉砕機に用いられる回転翼であって、外周部に羽根が設けられた複数の翼部材を備え、前記各翼部材は、前記粉砕室内に設けられた回転軸に外嵌され、前記各翼部材は、前記回転軸の周方向に角度をずらして積層可能であることを特徴としている。
【0010】
この構成では、一方の翼部材に対して他方の翼部材の角度をずらすことで、積層された各翼部材の羽根を相互にずらすことができる。そして、各翼部材の角度を変化させることで、回転翼の角部の数を増減することができ、被粉砕物に合わせて回転翼を変形させることができる。
また、羽根の一部が磨耗または損傷した場合には、その羽根が形成された翼部材のみを交換することができる。
【0011】
前記した粉砕機用の回転翼において、前記翼部材を前記回転軸に着脱自在に外嵌される筒状のボスに外嵌させ、前記ボスの外周面に形成されたフランジ部に固定部材によって固定した場合には、複数の翼部材を回転軸に簡単に着脱することができる。
【0012】
前記した粉砕機用の回転翼において、前記各翼部材は、前記粉砕室内の外側の領域に配置された前記翼部材の最大外径よりも、前記粉砕室内の内側の領域に配置された前記翼部材の最大外径を大きく形成することで、被粉砕物の処理能力を高めることが好ましい。
【0013】
前記した回転翼を用いた粉砕機としては、前記粉砕室が形成されたケーシングと、前記粉砕室に前記被粉砕物を投入するための投入通路と、前記粉砕室から前記被粉砕物を吐出させるための吐出通路と、前記粉砕室内に設けられた前記回転軸と、前記回転軸を回転させるための駆動装置と、前記回転軸に取り付けられた前記回転翼と、を備えているものがある。
【0014】
この構成では、前記した本発明の回転翼を用いることで、回転翼の角部の数を増減することができるとともに、磨耗または損傷した羽根が形成された翼部材のみを交換することができる。
【0015】
前記した粉砕機では、前記回転軸に複数の前記回転翼を取り付けることで、被粉砕物の処理能力を高めることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粉砕機用の回転翼および粉砕機によれば、回転翼の角部の数を増減することで、被粉砕物に合わせて回転翼を変形させることができ、粉砕能力を高めるとともに、被粉砕物を様々な粒子径に調整することができる。
また、磨耗または損傷した羽根が形成された翼部材のみを交換することができるため、メンテナンスのコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の粉砕機を示した側断面図である。
【図2】本実施形態の第一回転翼を示した図で、(a)は内側から見た斜視図、(b)は外側から見た斜視図である。
【図3】本実施形態の第一回転翼を示した分解斜視図である。
【図4】本実施形態の第二回転翼を示した斜視図である。
【図5】他の実施形態の粉砕機を示した図で、一つの駆動装置を用いた構成の側断面図である。
【図6】他の実施形態の回転翼を示した図で、羽根の内側の面を保護するように翼部材を重ねた構成の斜視図である。
【図7】本発明の実施例の結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の粉砕機1は、図1に示すように、粉砕室2が形成されたケーシング3と、粉砕室2に被粉砕物を投入するための投入通路4と、粉砕室2から被粉砕物を吐出させるための吐出通路5と、粉砕室2内に設けられた二本の回転軸6,6´と、両回転軸6,6´を回転させるための二つの駆動装置7,7´と、両回転軸6,6´にそれぞれ取り付けられた第一回転翼10Aおよび第二回転翼10Bと、を備えている。
【0019】
本実施形態の粉砕機1は、二つの回転翼10A,10Bを回転させることで、粉砕室2内に気流を発生させ、粉砕室2内で被粉砕物同士、被粉砕物と回転翼10A,10B、被粉砕物と粉砕室2の内壁といった各種衝突を繰り返して、被粉砕物を粉砕するように構成された乾式粉砕機である。
【0020】
なお、被粉砕物としては、例えば、米、麦、茶葉等の農産物、かに甲羅、くま笹等の食品、医薬品、電池の原料等の工業用材料、鉱物である。つまり、被粉砕物は投入通路4に投入可能な大きさで、粉砕室2内で粉砕可能であれば限定されるものではない。
【0021】
ケーシング3は、内部に粉砕室2が形成された箱状の部材である。ケーシング3の上壁部には、粉砕室2に連通した投入通路4および吐出通路5が貫通している。
投入通路4および吐出通路5は、ケーシング3の上面に突設された投入側筒部4aおよび吐出側筒部5aの内部に連通している。また、吐出側筒部5aには、粉砕室2内の被粉砕物を吸引するための集塵装置5bが接続されている。
【0022】
粉砕室2は、ケーシング3の両側部(図1の左右両側)から中央部に向かうに従って拡径された空間となっている。また、ケーシング3の側壁部には、粉砕室2に連通している挿通穴3a,3aが貫通している。
【0023】
一方の回転軸6は、円形断面の軸部材であり、ケーシング3の挿通穴3aに内嵌された筒状の軸受部材8に挿通され、軸受部材8に回転可能に支持されている。
一方の回転軸6の内端部6aは、粉砕室2の中央部に配置され、基部6bは、ケーシング3の外方に突出して後記する一方の駆動装置7に連結されている。
【0024】
なお、他方の回転軸6´は、前記した一方の回転軸6と同じ部材であり、粉砕室2の中央部を挟んで同軸上に対称に配置されており、両回転軸6,6´の内端面が粉砕室2の中央部で対向している。また、他方の回転軸6´の基部6bは後記する他方の駆動装置7´に連結されている。
【0025】
両駆動装置7,7´は、両回転軸6,6´を軸回りに回転させるものである。本実施形態の粉砕機1では、両回転軸6,6´にそれぞれ対応させた二つの駆動装置7,7´がケーシング3の側方に配置されている。本実施形態では、回転軸6,6´の基部6bが駆動装置7,7のモータに連結されているが、駆動装置7,7´の構成は限定されるものではない。
【0026】
第一回転翼10Aは、図1の右側に配置された一方の回転軸6の内端部6aに取り付けられている。第一回転翼10Aは、一方の回転軸6に着脱自在に外嵌される円筒状のボス20と、ボス20に外嵌される三枚の翼部材30A〜30Cと、を備えている(図2参照)。
【0027】
ボス20は、図3に示すように、円筒状の部材であり、外端部の外周面にはフランジ部21が突設されている。ボス20は、キーなどの部材によって一方の回転軸6に対して回転不可に外嵌されている。また、フランジ部21には、ボス20の軸方向に貫通した六つのねじ穴21aが周方向に等間隔に形成されている。
【0028】
また、一方の回転軸6には、ボス20よりも外側にスペーサ6eが外嵌され、内端面にはキャップ6fが被せられている。ボス20は、スペーサ6eおよびキャップ6fに挟まれることで、一方の回転軸6の軸方向に位置決めされている。
【0029】
第一回転翼10Aでは、一方の回転軸6の軸方向において、内端部6a側(先端側)から基部6b側(駆動装置7に連結される基端側)に向けて、第一翼部材30A、第二翼部材30B、第三翼部材30Cの順で、三枚の翼部材30A〜30Cが積層されている(図2参照)。
【0030】
第一翼部材30Aは、図3に示すように、中心部に円形の嵌合穴31が形成された円板状の部材である。第一翼部材30Aの外周部には、周方向に等間隔に配置された複数の羽根32が突設されている。
第一翼部材30Aを形成する材料は、特に限定されるものではないが、腐食性や耐摩耗性を考慮して、セラミックス、超硬合金、析出硬化系ステンレス材を用いることが好ましい。
【0031】
第一翼部材30Aには、嵌合穴31の周縁部に沿って等間隔に六つの取付穴33が形成されている。各取付穴33は、第一翼部材30Aをボス20に外嵌したときに、ボス20の各ねじ穴21aに連通可能な位置に形成されている。取付穴33は、円形の貫通穴である。
羽根32は、第一翼部材30Aの半径方向に直線状に形成されており、本実施形態では十二枚の羽根32が周方向に等間隔に形成されている。
【0032】
第二翼部材30Bおよび第三翼部材30Cは、第一翼部材30Aと略同様の構成であり、羽根32が短く形成されている点が異なっている。第二翼部材30Bの各羽根32は、第一翼部材30Aの各羽根32よりも短く形成されている。さらに、第三翼部材30Cの各羽根32は、第二翼部材30Bの各羽根32よりも短く形成されている。
つまり、図1に示すように、粉砕室2内の外側の領域に配置される第三翼部材30Cの最大外径よりも、粉砕室2内の内側の領域に配置される第一翼部材30Aの最大外径が大きく形成されている。
【0033】
各翼部材30A〜30Cに形成された取付穴33は、各翼部材30A〜30Cの各取付穴33を連通させたときに、各翼部材30A〜30Cが相互に周方向に角度をずらして積層されるように配置されている。
つまり、第一翼部材30Aの羽根32に対して、第二翼部材30Bの羽根32が周方向にずれて積層される。同様に、第二翼部材30Bの羽根32に対して、第三翼部材30Cの羽根32が周方向にずれて積層される。
【0034】
図2に示すように、各翼部材30A〜30Cは積層された状態でボス20に外嵌され、第三翼部材30Cがフランジ部21に当接している。
また、各翼部材30A〜30Cの取付穴33(図3参照)とボス20の各ねじ穴21a(図3参照)とを連通させ、各取付穴33に第一翼部材30A側からボルトである固定部材40を挿入し、各固定部材40の先端部を各ねじ穴21aに螺合させることで、各翼部材30A〜30Cがボス20に固定されている。
【0035】
各翼部材30A〜30Cは、図1に示すように、ボス20を介して一方の回転軸6の内端部6aに取り付けられる。三枚の翼部材30A〜30Cは、一方の回転軸6に第一回転翼10Aを取り付けた状態で、一方の回転軸6の軸方向の外側から内側(図1の右側から左側)に向かうに従って、粉砕室2の内壁の傾斜に沿って拡径されるように、各羽根32の長さが設定されている。
【0036】
また、各翼部材30A〜30Cは相互に周方向に角度をずらして積層される。本実施形態の第一回転翼10Aでは、各翼部材30A〜30Cが相互に周方向に5度の角度をずらして積層される。そして、第一翼部材30Aの羽根32と羽根32との間に、他の翼部材30B,30Cの各羽根32の一部が露出している。
このように、各翼部材30A〜30Cをそれぞれ周方向に角度をずらして配置することで、第一回転翼10Aの角部の数を増減することができる。
【0037】
第二回転翼10Bは、図1の左側に配置された他方の回転軸6´の内端部6aに取り付けられており、粉砕室2内で第一回転翼10Aに対向している。第二回転翼10Bは、前記した第一回転翼10Aを左右対称に配置した構成であり、図4に示すように、ボス20に三枚の翼部材30D〜30Fが外嵌されている。
【0038】
図1に示すように、本実施形態の粉砕機1では、投入通路4を通じて粉砕室2内に被粉砕物を投入し、両駆動装置7,7´を駆動させて両回転翼10A,10Bを回転させると、粉砕室2内に気流が発生する。なお、両回転翼10A,10Bの回転数としては、例えば、3000〜10000min-1である。
粉砕室2内に発生した気流によって被粉砕物が浮遊し、被粉砕物同士、被粉砕物と各回転翼10A,10B、被粉砕物と粉砕室2の内壁といった各種衝突を繰り返すことで、被粉砕物が粉砕される。
【0039】
また、粉砕機1の第一回転翼10Aおよび第二回転翼10Bは、粉砕された被粉砕物が、所望の粒子径に調整されるように角部の数が設定されている。したがって、被粉砕物は粉砕室2内で所望の粒子径に調整された後に、吐出通路5を通じて集塵装置5bに吸引されて回収される。
【0040】
以上のような第一回転翼10Aおよび第二回転翼10Bを用いた粉砕機1では、各翼部材30A〜30C(30D〜30F)を回転軸6(6´)の周方向にずらす角度を変化させることで、第一回転翼10Aおよび第二回転翼10Bの角部の数を増減することができる。このように、被粉砕物に合わせて、両回転翼10A,10Bを変形することで、粉砕能力を高めるとともに、被粉砕物を様々な粒子径に調整することができる。
【0041】
また、羽根32の一部が磨耗または損傷した場合には、その羽根32が形成された翼部材30A〜30Fのみを交換することができるため、メンテナンスのコストを抑制することができる。
【0042】
各翼部材30A〜30C(30D〜30F)は、回転軸6(6´)に着脱自在に外嵌されるボス20に外嵌されているため、各翼部材30A〜30C(30D〜30F)を回転軸6(6´)に簡単に着脱することがきる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
図1に示す回転翼10A,10Bにおいて、翼部材の枚数、羽根の数および形状など、回転翼10A,10Bの形状は限定されるものではなく、被粉砕物の材質や粉砕後の粒子径に応じて適宜に設定するものである。例えば、翼部材の枚数は三枚から十枚の間で設定される。また、両回転翼10A,10Bの翼部材の枚数が異なっていてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、図3に示すように、各翼部材30A〜30Cに形成された取付穴33が円形の貫通穴となっているが、取付穴を各翼部材30A〜30Cの周方向に湾曲した長穴に形成してもよく、その形状は限定されるものではない。
さらに、回転翼10Aを回転させたときに、遠心力によって自動的に各翼部材30A〜30Cが相互に周方向の角度がずれた状態となるように、取付穴の周方向の長さを設定することもできる。
【0045】
また、本実施形態では、各翼部材30A〜30C(30D〜30F)を回転軸6(6´)の周方向に5度の角度をずらしているが、0度から20度の間の角度でずらすことができる。そして、各翼部材30A〜30C(30D〜30F)を回転軸6(6´)の周方向にずらすことなく、各翼部材30A〜30C(30D〜30F)の各羽根32を完全に重ねてもよい。また、複数の翼部材のうち、一部の翼部材は回転軸6(6´)に対して周方向に回動不可に構成してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、二本の回転軸6,6´にそれぞれ回転翼10A,10Bを取り付け、一本の回転軸6(6´)を一つの駆動装置7(7´)によって回転させているが、一本の回転軸に複数の回転翼を取り付けてもよい。
【0047】
図5に示す粉砕機1Aのように、粉砕室2内に一本の回転軸6を設け、この回転軸6に第一回転翼10Aおよび第二回転翼10Bを取り付けてもよい。この構成では、ケーシング3の一方の側部のみに挿通穴3aが形成されており、挿通穴3aに内嵌された軸受部材8に回転軸6の基部が回転可能に支持されている。すなわち、回転軸6は片持ち式に支持されている。また、粉砕機1Aでは、回転軸6を一つの駆動装置7によって回転させるように構成されている。
【0048】
また、本実施形態では、図2および図4に示すように、各翼部材30A〜30C(30D〜30F)を直接積層しているが、各翼部材30A〜30C(30D〜30F)の間にスペーサを挟んで積層してもよい。
【0049】
また、各翼部材30A〜30C(30D〜30F)の羽根32において、各翼部材30A〜30C(30D〜30F)の回転方向の前側に対応する角部は、被破砕物との接触によって磨耗し易いため、羽根32において回転方向の前側に対応する角部に対して重点的に補強材をコーティングして硬度を高めることが好ましい。なお、補強材は限定されるものではないが、被破砕物との接触によって削られた粉が被破砕物に混ざっても問題がない材料を用いている。
【0050】
また、図6に示す回転翼10Cのように、一方の翼部材30Gの羽根32において、粉砕室2(図1参照)の中央側に面した磨耗し易い領域を覆うように、他方の翼部材30Hの羽根32´を一方の翼部材30Gの羽根32に重ねることで、一方の翼部材30Gの羽根32の磨耗を防ぐことができる。なお、羽根32において磨耗を生じ易い部位を保護するように、各翼部材を重ねる構成は、図6の構成に限定されるものではなく、各種のパターンを採用することができる。例えば、翼部材の羽根の磨耗し易い部位を、回転方向の前側となる領域、粉砕室の内面に面した領域、粉砕室の中央側に面した領域に分割し、羽根の磨耗を防止するのに適した領域を他の羽根で覆ったり、コーティングして補強したりしてもよい。
【実施例】
【0051】
次に、本発明の効果を確認した実施例について説明する。
実施例に用いた本発明の粉砕機は、図1に示す本実施形態の粉砕機1の両回転翼10A,10Bの翼部材と同じ構成であり、十二枚の羽根が形成された翼部材を三枚積層している。また、各翼部材を回転軸の周方向に5度の角度で相互にずらしている。この両回転翼を5000min−1と8000min−1で回転させて米を粉砕したときの米のメジアン径および標準偏差を、レーザ回析/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した。なお、分散溶媒はイオン交換水とし、分散後に超音波照射を1min行った後に測定した。さらに、相対屈折率は1.12−0.00iとした。
【0052】
また、実施例における本発明の粉砕機に対して、十二枚の羽根が形成された一枚の翼部材によって回転翼が構成された粉砕機と、六枚の羽根が形成された一枚の翼部材によって回転翼が構成された粉砕機とによって、米を粉砕したときの米のメジアン径および標準偏差も、実施例における本発明の粉砕機と同じ条件で測定し、その結果を図7の表に示して比較した。
【0053】
図7の表に示すように、翼部材を三枚積層した回転翼を用いた本発明の粉砕機によって粉砕された米が最も小さいメジアン径および標準偏差となることが確認された。このような実施例によって、本発明の回転翼および粉砕機によれば、粉砕処理能力を高めるとともに、被粉砕物を所望の粒子径に調整することができることがわかった。
【符号の説明】
【0054】
1 粉砕機
2 粉砕室
3 ケーシング
4 投入通路
5 吐出通路
5b 集塵装置
6 一方の回転軸
6´ 他方の回転軸
7 一方の駆動装置
7´ 他方の駆動装置
8 軸受部材
10A 第一回転翼
10B 第二回転翼
20 ボス
21 フランジ部
21a ねじ穴
30A〜30C 翼部材(第一回転翼)
30D〜30F 翼部材(第二回転翼)
31 嵌合穴
32 羽根
33 取付穴
40 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕室内で被粉砕物を粉砕する粉砕機に用いられる回転翼であって、
外周部に羽根が設けられた複数の翼部材を備え、
前記各翼部材は、前記粉砕室内に設けられた回転軸に外嵌され、
前記各翼部材は、前記回転軸の周方向に角度をずらして積層可能であることを特徴とする粉砕機用の回転翼。
【請求項2】
前記翼部材は、前記回転軸に着脱自在に外嵌される筒状のボスに外嵌され、前記ボスの外周面に形成されたフランジ部に固定部材によって固定されることを特徴とする請求項1に記載の粉砕機用の回転翼。
【請求項3】
前記各翼部材は、前記粉砕室内の外側の領域に配置された前記翼部材の最大外径よりも、前記粉砕室内の内側の領域に配置された前記翼部材の最大外径が大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粉砕機用の回転翼。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された回転翼を用いた粉砕機であって、
前記粉砕室が形成されたケーシングと、
前記粉砕室に前記被粉砕物を投入するための投入通路と、
前記粉砕室から前記被粉砕物を吐出させるための吐出通路と、
前記粉砕室内に設けられた前記回転軸と、
前記回転軸を回転させるための駆動装置と、
前記回転軸に取り付けられた前記回転翼と、を備えていることを特徴とする粉砕機。
【請求項5】
前記回転軸には、複数の前記回転翼が取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−702(P2013−702A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136673(P2011−136673)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000132161)株式会社スギノマシン (144)
【Fターム(参考)】