説明

粉砕機能を有するポンプ装置および流体供給システム

【課題】トラップされる廃棄物量を激減でき、フィルター交換寿命を極めて長くでき、運転経費の削減に大きな貢献ができる粉砕機能を有するポンプ装置および流体供給システムを提供する。
【解決手段】固形成分を含有する流体を圧送する粉砕機能を有するポンプ装置であって、ケーシング10に吸込空間15と、吐出空間17と、一対の噛み合い歯車11,13とを備え、一対の噛み合い歯車11,13の回転により、吸込空間15に吸い込んだ流体を歯車11,13の外周部とケーシング10との間に閉じ込めて吐出空間17に圧送すると共に、吐出空間17に滞留する流体中の固形成分を、一対の噛み合い歯車11,13の回転により該歯車の噛み合い部30に引き込んで破砕し、粒径が小さい固形物にして吸込空間15に戻し、吸込空間15において固形物と吸い込んだ流体とを混在し、再びケーシング10と歯車11,13との間に閉じ込めて、吐出空間17に圧送可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕機能を有するポンプ装置および流体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶等の機器において、C重油や原油、あるいは廃油等には、液体中に固形成分であるスラッジ(粘土、微細岩石、微細SiO2等)の混在が避けられない。
これらスラッジは、硬度の低い成分と硬度の高い成分に区分される。この中でも、硬度の低い成分は、例えば、配管部やバーナー、噴射弁等の流路の狭い領域で、流路閉鎖等の障害を引き起こし、硬度の高い成分は、燃料噴射ポンプや燃料噴射弁の稼動部において、擦過痕や磨耗を引き起こして、装置寿命の短縮や、最悪、作動不良を招くこととなる。
このため、従来、これら固形成分を除去するべく、フィルターを配置し、該フィルターでスラッジを捕捉・分離してきた。
しかし、例えば、長期稼動する船舶等においては、フィルターで捕捉・分離された物質を、海上廃棄することが困難で、その処理が大きな問題となっていた。また、上記の船舶用では勿論のこと、工業用バーナーや農業バーナーにおいても、フィルター交換に要する費用、トラップされた物質の廃棄等が大きな問題となっていた。
【0003】
一方、流体(C重油等の燃料)中のスラッジ成分の破砕・微粒化を図るため、「粉砕(ミル)技術」を適用することが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
従来のミル技術を大別すると、(1)放射状に溝を配置した回転体で擂り潰す石臼方式、(2)軸方向に破砕(ミル)カッターを設けて、高速せん断する方式(剪定樹木破砕機等)、(3)半径方向に破砕(ミル)カッターを設けて、高速せん断する方式、あるいは、ビーズ(玉)と一緒に高速回転させて粉砕する方式等々がある。
【特許文献1】特開2004−330091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらを、流体(C重油等の燃料)中のスラッジ成分の破砕・微粒化にそのまま適用することは、以下の理由で困難である。
すなわち、(イ)スラッジ粒径を「≦10(μm)」に微細化しなければならないこと、(ロ)流体中のスラッジ成分割合が、「≦2(%)FS」と極めて少ないため、そのまま処理したのでは、流体の攪拌エネルギーが大きく、非効率であること、(ハ)通常の「ミル機械」は、粉砕される物体は、自由落下処理で、ポンプ機能を持たないため、外部空気で循環する等しなければならないこと等があり、所要の目的を遂行することが困難である。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、トラップされる廃棄物量を激減でき、フィルター交換寿命を極めて長くでき、運転経費の削減に大きな貢献ができる粉砕機能を有するポンプ装置および流体供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、固形成分を含有する流体を圧送する粉砕機能を有するポンプ装置であって、ケーシングに吸込空間と、吐出空間と、一対の噛み合い歯車とを備え、一対の噛み合い歯車の回転により、吸込空間に吸い込んだ流体を前記歯車の外周部と前記ケーシングとの間に閉じ込めて吐出空間に圧送すると共に、吐出空間に滞留する流体中の固形成分を、前記一対の噛み合い歯車の回転により該歯車の噛み合い部に引き込んで破砕し、粒径が小さい固形物にして吸込空間に戻し、吸込空間において固形物と吸い込んだ流体とを混在し、再びケーシングと歯車との間に閉じ込めて、吐出空間に圧送可能に構成したことを特徴とする。
この場合において、一対の噛み合い歯車が回転数を可変に構成され、該回転数の制御により固形物の粒径を管理可能としてもよい。
また、吸入空間を下方重力方向に、吐出空間を上方反重力方向に備えてもよい。
歯車の硬度が、Hv≧1000であってもよい。
【0006】
また、本発明では、流体の供給源、フィード・ポンプ、流体を軽質成分/重質成分に分離するセパレーター、流体中の軽質成分が供給されるワークの順に接続し、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のポンプ装置の吸込空間を、前記セパレーターの底部に接続し、当該ポンプ装置の吐出空間を、前記セパレーターの上部、若しくは、セパレーター出口部に接続して、前記ワークに供給される固形成分の粒径を管理可能に構成した。
【0007】
この発明では、例えばバーナー等の燃焼器やエンジン分野に属し、C重油や原油、あるいは廃油中に含まれるスラッジ等を、バーナーやエンジン(ワーク)の稼動に支障の無い粒径レベルに粉砕することが可能であり、そのまま、当該機器に供給し、燃焼させることを可能とした。従って、従来から使用のフィルター負荷を軽減し、フィルター交換寿命を延長し、フィルターやトラップで捕捉される廃棄物を削減し、省資源・省エネルギー化が図られる。
「バーナー等の燃焼器やエンジン」等の機器により、許容される固形成分の粒径が異なる。そこで、例えばバーナー等の燃焼器やエンジンへの燃料供給系に、本発明をインラインで提供すれば、該機器に支障の無い粒径まで、インラインで、固形物等を粉砕し、そのまま、バーナー等の燃焼器やエンジンで燃焼させることができる。スラッジ成分には、環境汚染させる有害物質は含まれないため、フィルター寿命を大幅に延長させることが可能であり、特に船舶では、廃棄物の保管を最小とさせることが可能となる。
【0008】
この場合において、前記ポンプ装置の循環流量を「Qc(リットル/min)」、前記ポンプ装置の出口配管の最小流路内径を「φdc(mm)」、吐出平均流速を「Vc(cm/sec)」とした場合に、最小流路内径「φdc(mm)」は、以下の式で表され、
dc(mm)=√{1.5×10-4・Vc/(π・Qc)}
循環流量「Qc(リットル/min)」のとき、吐出平均流速「Vc(cm/sec)」近傍となるように、最小流路内径「φdc(mm)」を決定し、
許容吐出スラッジ外径を「φds(mm)」、スラッジの抗力係数を「Cd」、流体の比重量を「γf(kg/m3)」、スラッジ比重量を「γf(kg/m3)」とした場合に、吐出平均流速「Vc(cm/sec)」は、以下の式で表され、
Vc2≪1.065ds・g(γs/γf−1)/Cd
前記ポンプ装置から前記セパレーターに向かうスラッジ外径が、前記許容吐出スラッジ外径「φds(mm)」以下となるように、前記吐出平均流速「Vc(cm/sec)」を制御して、吐出粒径を制御するようにしてもよい。
【0009】
前記流体として超臨界二酸化炭素等の液体を用いることにより、粉砕時の発熱を抑制して、粉砕材料の品質・物性を毀損せずに、ナノ・サイズの粉砕を可能としてもよい。
その他の応用技術としては、薬剤成分やサプリメントの粉砕分野に属し、「C重油や原油」の代わりに、不活性な特徴を有する超臨界二酸化炭素等の液体を用い、粉砕時の発熱を抑制しつつ、被粉砕材料からの成分溶出を抑制して、ナノ・サイズの粉砕を可能としてもよい。
固形成分を粉砕する場合、破断応力や摩擦力が働くため、通常、発熱を伴う。
このため、成分によっては、化学反応を起こしたりして、被粉砕材質の品質低下を招く恐れがあったが、超臨界二酸化炭素を含む液体と共に、固形成分の粉砕処理を行うことにより、この問題が解消された。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、例えばバーナー等の燃焼器やエンジン分野において、C重油や原油、あるいは廃油中に含まれるスラッジ等を、バーナーやエンジン(ワーク)の稼動に支障の無い粒径レベルに粉砕することが可能であり、そのままワークに供給し、燃焼させることができる。従って、フィルター負荷を軽減し、フィルター交換寿命を延長し、フィルターやトラップで捕捉される廃棄物を削減し、省資源・省エネルギー化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態を示す系統図である。
図1Aは、流体供給システムを示す。
図1Aにおいて、1は燃料タンクを示す。燃料タンク1にはフィード・ポンプ3が接続され、フィード・ポンプ3にはセパレーター5が接続されている。フィード・ポンプ3は、燃料タンク1から固形物(スラッジ等)を含む混在流体を吸引し、セパレーター5に吐出する。セパレーター5では、混在流体を軽質成分と重質成分に分離する。セパレーター5は、上部5Aを大口径φDとし、下部5Bを小口径φdとした円錐状に集束する構造を有している。セパレーター5の底部には、マイクロ・ミルポンプ(ポンプ装置)7の吸入口7Aが接続され、その吐出口7Bは、セパレーター5の上部5Aの再入口5Cに接続されている。
この構造では、セパレーター5で分離、沈降した重質成分が、ミルポンプ7で吸引、粉砕され、セパレーター5の再入口5Cからセパレーター5の上部5Aに再流入する。そして、このセパレーター5では、再入口5Cから流入した、ミルポンプ7からの流体と、上部5Aの入口5Dから流入した、フィード・ポンプ3からの流体とが混合し、沈降した重質成分が、ミルポンプ7に再び向かい、残りの軽質成分が、セパレーター5の天部中央に設けた出口5Eを通じて、バーナー等の燃焼器やエンジン(ワーク)に供給される。
【0012】
セパレーター5は、上述したように、粒径の大きなスラッジ(重質成分)と、スラッジを含有しない流体(軽質成分)とを分離させる。ここで、流体の比重量を「γf」、スラッジの比重量を「γs」、スラッジ粒径を「φds」とすると、流速「V」が同じ時、同じ容積を有する、スラッジと流体の運動エネルギー差は、次式で与えられる。
運動エネルギー差=4π・ds3(γs−γf)V2/3 …(1)
本構成では、この運動エネルギー差の分離効果を作用させるため、図1Bに示すように、フィード・ポンプ3に連なる流入口5Dに挿入したパイプの端部9を曲げ、本来の流入方向と90度異なる「水平方向」、若しくは、180度異なる「逆方向」とさせる。すなわち、この端部9は、セパレーター5の内壁に沿って、セパレーター5の出口5Eの出口方向軸に対して直角の板状渦流を形成するように構成されている。
この構成では、混在流体が、4π・ds3(γs−γf)/3の重量差により、沈降効果を受けながら、重力方向に分離されて、粒径の大きなスラッジを沈降させることができる。スラッジ(固形成分)の分粒効果を更に高める場合には、端部9の軸方向の向きを、水平面よりも、セパレーター5の下部に向けて配置すればよい。
【0013】
図1Bにおいて、パイプの端部9の噴出し孔内径を「φdj(mm)」とすると、セパレーター5の内部で発生する渦流の初期速度「Vj(cm/sec)」は、フィード・ポンプ3の供給流量「Qf(リットル/min)」と、次の関係式で表される。
Vj=Qf×1000/60/(πDj2/4)
=21.22Qf・Dj2 …(2)
セパレーター5に形成された渦流「Vj」により、スラッジ(固形成分)は、流体に対して、「4πds3(γs−γf)Vj2/3」の慣性効果を有するため、流体がセパレーター5の上部5Aの出口E方向に流れ方向を変えるのに対し、スラッジ(固形成分)は遠心効果と慣性効果で、セパレーター5の内壁に沿って、浮力と自重差である「4πds3(γs−γf)/3」の沈降効果を受けながら、セパレーター5の下部に分離される。
渦流速度の減衰を抑制しつつ、スラッジの捕集・分離効果を維持するために、このセパレーター5は、上述したように、上部の大口径φDから、下部に向かって、小口径φdに、円錐状に集束する構造とし、その底部に、マイクロ・ミルポンプ7の吸入口7Aが接続され、この吸入口7Aに向けて、スラッジ混在量の多い流体が供給される。
【0014】
セパレーター5の上部内径φD(mm)は、流体の上昇流速をVf(cm/sec)とすると、供給流量Qf(リットル/min)と、次の関係式で表される。
Vf=Qf×1000/60/(πD2/4)
φD≒√{21.22(Qs/Vf)} …(3)
ここで、「Vf(cm/sec)」を、例えば、「Vf≦1(cm/sec)」となるように、内径φD(mm)を大きく設計することが重要で、上述の式(3)で、「Vc=Vf」と置いて、スラッジ粒径「φds」に付いて式を解くと、次式が得られる。
ds≫0.939Cd・Vf2/g(γs/γf−1) …(4)
すなわち、「Vf2」を小さくすることに比例して、「φds」より大きな粒径のスラッジ(固形成分)が沈降する。このため、セパレーター5の上部の内径「φD(mm)」を大きくすることは、吐出される(バーナーやエンジンに供給される)スラッジ粒径「φds」を小さくさせることと、同義であることが分かる。
【0015】
例えば、流体の比重量を「γf≒800(kg/m3)」、スラッジの比重量を「γs≒2200(kg/m3)」として、「Cd≒0.3」、「g≒9.8(m/sec2)」を代入すると、次式が得られる。
ds≫5.03×10-2・Vf2 …(5)
ここで、(イ)「Vf≦1(cm/sec)」の場合は「φds≒0.0503(mm)=50.3(μm)」、(ロ)「Vf≦0.5(cm/sec)」の場合は「φds≒0.0126(mm)=12.6(μm)」、(ハ)「Vf≦0.2(cm/sec)」の場合は「φds≒0.002(mm)=2(μm)」と概算される。
セパレーター5の上部における内径「φD(mm)」の高さ「H(mm)」は、スラッジ(固形成分)混在流体の滞留時間t(sec)に比例し、この高さが大きければ大きいだけ、スラッジ分離効果を大きくすることができる。すなわち、
H=Vf・t …(6)
の関係にあるので、仮に、「Vf=1(cm/sec)」として設計した場合、t=10(sec)の場合は、「H=10(cm)」と求められる。
【0016】
マイクロ・ミルポンプ7は、図2に示すように、ケーシング10の内側に、吸込空間15と、吐出空間17と、一対の噛み合い歯車11,13とを備え、駆動モーター18(図1参照)により、左の歯車11が右回り、右の歯車13が左回りに設定されている。
吸込空間15はケーシング10の下部に位置し、例えば、重力方向に開口する吸入口7Aに連通し、吐出空間17はケーシング10の上部に位置し、例えば、反重力方向に開口する吐出口7Bに連通する。この吐出口7Bは、十分な配管内径を持つ出口配管19で、上記セパレーター5の上部5Aに接続されている。
【0017】
本構成では、まず、一対の噛み合い歯車11,13の回転により、吸入口7Aから吸込空間15にスラッジ混在量の多い流体が吸い込まれる。スラッジ混在量の多い流体は、歯車11,13の外周部とケーシング10との間に閉じ込められて、吐出空間17に送られる。吐出空間17では、吐出口7Bが反重力方向に開口するため、自重によって、重質成分のスラッジが吐出空間17の下部に滞留し、液体中の軽質成分だけが、吐出口7Bおよび出口配管19を経て、セパレーター5の上部5Aに送られる。吐出空間17の下部に滞留した重質成分は、一対の噛み合い歯車11,13の回転により、歯車の噛み合い部30に引き込まれ、噛み合い部30で破砕され、粒径が小さい固形物となって吸込空間15に戻される。
この吸込空間15では、噛み合い部30から落下する固形物と、新たに吸い込んだ流体とが混在し、混在流体は、再びケーシング10と歯車11,13との間に閉じ込められて、吐出空間17に圧送され、上記と同様に、軽質成分のみがセパレーター5の上部5Aに送られ、重質成分は、再度、噛み合い部30に引き込まれる。
【0018】
ミルポンプ7の吐出流量を「Qc(リットル/min)」、出口配管19の内径を「φdc(mm)」とすると、出口配管19内の平均流速「Vc(cm/sec)」は、次式で与えられる。
Vc(cm/ sec)=1000Qc/60(πdc2/400)
=(2/3)×104Qc(π・dc2
≒2122(Qc/dc2) …(7)
ここで、スラッジ外径を「φds(mm)」、抗力係数を「Cd」、流体の比重量を「γf(kg/m3)」とすると、流体により上昇させられる力「Fc(kg)」は、次式で与えられる。
Fc(kg)=Cd・γf・(πds2/400)・Vc2/2000g
≒3.93×10-6Cd・γf・ds2・Vc2/g …(8)
一方、スラッジの沈降する力「Fd(kg)」は、スラッジの重量とその容積相当の浮力の差から成るため、以下の式で与えられる。
Fd(kg)=4πds3(γs−γf)/3×106
≒4.19×10-6ds3(γs−γf) …(9)
【0019】
スラッジが沈降するには、Fc≪Fdであることが必要のため、次式が成り立つ。
3.93×10-6Cd・γf・ds2・Vc2/g≪4.19×10-6ds3(γs−γf)
Vc2≪1.065ds・g(γs/γf−1)/Cd …(10)
スラッジの平均成分を「SiO2」と考えて「γs≒2200(kg/m3)」、「γf≒800(kg/m3)」、「Cd≒0.3」、「g≒9.8(m/sec2)」を代入すると、次式が得られる。
Vc≪√(60.88ds) …(11)
【0020】
上記出口配管19の内径「φdc(mm)」は、流体の上昇流速を「Vc(cm/sec)」とすると、吐出流量「Qc(リットル/min)」と、次の関係式で表される。
Vc=Qc×1000/60/(πdc2/4)
φdc≒√{21.22(Qc/Vc)} …(12)
吐出流体中のスラッジは、浮力と自重差である「4πds3(γs−γf)/3」の沈降効果と、流体の速度エネルギーによる吐出効果「Cd・πds・Vc2/2g」とを受けて、前述の式(4)と同様に、「Vc」の二乗に比例した粒径以上のスラッジが沈降し、再度、歯車の噛み合い部30で、粉砕処理を受ける。
ds≫0.939Cd・Vc2/g(γs/γf−1) …(13)
【0021】
一定の外径「φds」のスラッジを生成させる場合は、スラッジ外形「φds」に見合った流体の上昇流速「Vc」となるように、ミルポンプ7の回転速度を決定し、吐出流量「Qc(リットル/min)」を確定し、これに基づいて出口配管19の内径「φdc」を設計する。
「バーナー等の燃焼器やエンジン」等々、それぞれの機器によって最適な外径「φds」のスラッジを生成させる場合には、ミルポンプ7の駆動モーター18に可変速モーターを使用して、流体の上昇流速「Vc」を変えることで、ナノ・レベルに至る、自由な外径「φds」のスラッジを生成させることが可能である。
【0022】
スラッジの平均粒径が「≦10(μm)」〜「≦100(μm)」の範囲での、スラッジを沈降させる吐出流速条件は、図3の表に示すように概算される。これによると、「バーナーやエンジン」等の要求に合わせ、ミルポンプ7の回転速度を可変制御することで、スラッジ外径「φds」を許容される粒径以下となるように管理できる。
【0023】
上記構成では、ミルポンプ7の出口配管19を、セパレーター5の上部5Aに接続し、再循環させる構造を採用したが、駆動モーター18に可変速モーターを使用した場合には、「モーター回転速度」で、排出スラッジの粒径管理が可能になる。この場合、ミルポンプ7の出口配管19を、直接、セパレーター5の出口5Eに合流させ、再循環させることなく、「バーナー等の燃焼器やエンジン」に供給してもよい。
【0024】
C重油や原油等のスラッジ成分の中で、エンジンの噴射ポンプや燃料噴射弁を損傷させる「SiO2」等の硬度は、Hv=600〜1000程度である。
本構成では、歯車11,13の表面処理を行って、その硬度を、Hv≧1000とし、「SiO2」等を破砕した場合の摩滅を防止している。摩滅防止の機能を更に向上するためには、歯車11,13の硬度を「Hv≧2200」とすることが望ましい。
なお、粉砕時の駆動トルク軽減のため、歯車11,13にはモジュールの小さい歯車を選定することが望ましい。粉砕対象の硬度が低い場合は、モジュールの大きい、例えばルーツ・ポンプや、ねじ式ポンプ等、種々の形式の採用が可能である。
【0025】
C重油や原油、あるいは廃油等の燃料成分に含まれるスラッジ量は、最大でも、2(%)FS程度である。したがって、本構成を燃料供給系に適用する場合には、「バーナー等の燃焼器やエンジン」に必要な流量「Qf(リットル/min)」を、フィード・ポンプ3にて供給し、重質成分(スラッジ混在流体)の循環ポンプには、その約20(%)FS以下に相当する供給能力Qc(リットル/min)の小型ミルポンプ7を用いることが可能である。
また、C重油や原油、あるいは廃油等に含まれる遊離炭素(煤成分)や水に関しては、従来、フィルターで捕捉分離していた。
しかし、遊離炭素は、C+O2=CO2+燃焼熱、として発熱量の向上に寄与すること、水は、燃焼温度の低下によるNOxの改善に有益であること、さらに、遊離炭素(煤成分)や水程度の大きさの微粒子では、「バーナー等の燃焼器やエンジン」へ悪影響を及ぼさないこと等から、フィルターで捕捉分離することなく、そのまま燃焼させることが望ましい。これによれば、フィルター(不図示)負荷を大幅に軽減できる。
【0026】
C重油や原油、あるいは、廃油等を「バーナー等の燃焼器やエンジン」に供給する際に、従来は、「フィルター」や「トラップ」により、「100(μm)フィルター」「50(μm)フィルター」「10(μm)フィルター」のように多段で処理し、スラッジ等の有害成分の除去を図ってきた。
これに対し、上記構成では、スラッジ等を機器に影響しないレベルの粒径に粉砕し、(イ)「多段フィルター・システム」を不要とし、(ロ)「フィルターの交換寿命の大幅な延長」、(ハ)「廃棄物の大幅削減」を可能とした。
【0027】
通常のスラッジ成分やトラップ成分が、天然由来の「砂、粘度、岩石、SiO2、C、水」等の非環境汚損物質からなることに着目し、「砂、粘度、岩石、SiO2」の硬度の高い成分に関しては、燃料供給ラインの中に粉砕装置を構成し、機器に損傷を与えない粒径となるように粉砕管理することで、フィルター負荷の低減が図られる。
【0028】
図4は、流体供給システムの別の実施の形態を示す。
上記のように、残渣(廃棄物)を出さない特徴を活用し、飲用液体中の固体成分を微細化して例えば飲料中にマイクロ・ナノ・レベルで有用固形成分を含有できる。
図4において、41は飲用液体等の材料タンクを示す。材料タンク41にはフィード・ポンプ43が接続され、フィード・ポンプ43にはセパレーター45が接続されている。フィード・ポンプ43は、材料タンク41から固形物混在流体を吸引し、セパレーター45に吐出する。セパレーター45では、混在流体を軽質成分と重質成分に分離する。セパレーター45の底部には、マイクロ・ミルポンプ(ポンプ装置)47の吸入口47Aが接続され、その吐出口47Bは、セパレーター45の上部45Aの再入口45Cに接続されている。セパレーター45の天部には出口45Eが設けられ、出口45Eは材料タンク41に接続されている。
なお、フィード・ポンプ43、セパレーター45、マイクロ・ミルポンプ47は、上記実施の形態のものとほぼ同様の構成である。
【0029】
この構造では、「液体」と「固形物」が混在した食品材料が、フィード・ポンプ43でセパレーター45に供給され、規定粒径よりも大きい固形成分(重質成分)は、セパレーター45で分離、沈降し、ミルポンプ47で吸引、粉砕され、セパレーター45に戻される。規定以内の粒径に至った固形物は、飲用液体と共に、軽質成分として、出口45Eから管路48を経て材料タンク41に戻される。これを繰り返すと、材料タンク41中の固形成分は、すべて規定粒径以下となり、例えばミルポンプ47の回転数を制御すること等で、飲用液体中の固体成分を微細化して飲料中に、マイクロ・ナノ・レベルで有用固形成分を、残渣ゼロで含有できる。
なお、上記構成では、セパレーター45の出口45Eから材料タンク41に戻すシステムとしたが、例えば、セパレーター45の出口45Eから、直接、「瓶詰やボトル充填工程」に供給するようにしてもよい。セパレーター45の出口45Eからは、セパレーター45の上部の流速に対応した粒径の固形物しか吐出されないため、規定の粒径の固形物が混在する飲料等の製造を容易におこなうことができる。
【0030】
図5は、流体供給システムの別の実施の形態を示す。
この実施の形態は、固形成分の粉砕過程で、超臨界二酸化炭素を媒体に利用して、発熱を抑制した粉砕処理システムである。
本システムは、密封した流路構造となっており、回収・超臨界二酸化炭素タンク51と、フィード・ポンプ53と、セパレーター55と、マイクロ・ミルポンプ(ポンプ装置)57とを有している。超臨界二酸化炭素タンク51には、流量制御弁60A,60B、高圧圧縮機61、二酸化炭素が充填された高圧ボンベ63が接続され、フィード・ポンプ53とセパレーター55との間には、粉末対象となる固形成分を貯留した固形成分供給器65が接続されている。
回収・超臨界二酸化炭素タンク51や、密封した流路内には、高圧圧縮機61、流量制御弁60を介して、高圧ボンベ63に充填された二酸化炭素が充填されている。
二酸化炭素は、図6に示すように、充填圧力≧7.38(MPa)、温度≧31.1(℃)の条件下で、超臨界状態に移行する。
【0031】
フィード・ポンプ53の駆動で、回収・超臨界二酸化炭素タンク51からセパレーター53に超臨界二酸化炭素が循環し、該超臨界二酸化炭素中に、セパレーター53の直前で、固形成分供給器65から粉末対象の固形成分が適量供給される。
固形成分と超臨界二酸化炭素は、セパレーター53に入って分離し、重質成分が、マイクロ・ミルポンプ57に至って粉砕され、セパレーター53に再び戻される。このセパレーター53で分離した、マイクロ・ナノ・レベルの粒径の小さい固形成分を一部含んだ軽質成分は、回収・超臨界二酸化炭素タンク51に戻される。
これを繰り返すと、回収・超臨界二酸化炭素タンク51中に回収された固形成分が、すべてマイクロ・ナノ・レベルの粒径の粉末となる。この構成によれば、超臨界二酸化炭素(あるいは、液体等)を用いて、粉砕時の発熱を抑制し、固形成分の変性等の物性を変化させることなく、ナノ・レベルの粉砕が可能となる。
【0032】
フィード・ポンプ53の循環流量、すなわち循環流速を遅くすれば、粒径の大きい固形成分が、より多くセパレーター53により捕捉され、セパレーター53の下部に沈降し、沈降した固形成分が、超臨界二酸化炭素と共に、ミルポンプ57に吸入・粉砕される。従って、粒径小の粉末体が、回収・超臨界二酸化炭素タンク51に回収される。一方、フィード・ポンプ53の循環流量、すなわち循環流速を早くすれば、粒径大の粉末体を、回収・超臨界二酸化炭素タンク51に回収できる。この構成では、フィード・ポンプ53の循環流量に対応した「規定の粒径の固形物」が回収・超臨界二酸化炭素タンク51に回収できる。また、ミルポンプ57の回転速度を、変速モーター18で管理することにより、ミルポンプ57からセパレーター53に供給する固形成分の粒径を適正に管理することが可能である。このように、本構成では、媒体に超臨界二酸化炭素(あるいは、液体等)を用いるため、粉砕時の発熱を抑制し、固形成分の変性等の物性を変化させることなく、ナノ・レベルの粉砕を可能とする。
【0033】
粉砕作業の終了後には、流量制御弁60A,60Bの開閉状態を切り替えることにより、高圧圧縮機61で、回収・超臨界二酸化炭素タンク51等の流路内に充填された二酸化炭素を吸引(=減圧)し、高圧ボンベ63に充填する。これにより、超臨界二酸化炭素は、気体・二酸化炭素に変わる。二酸化炭素には溶剤性がないため、粉砕処理後は、超臨界二酸化炭素を減圧するのみで、乾燥した粉末を製造できる。媒体に水等を用いた場合と異なり、乾燥工程が不要となり、簡易な工程で、粉末物質を得ることができる。このことから、本構成では、非粉砕材料の物性変化なしでの粉末薬剤等の製造にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態を示すシステム図であり、Aはシステム系統図、Bは、図1AのB−B断面図である。
【図2】ポンプ装置の断面図である。
【図3】許容スラッジ外径に対する吐出速度を表す図である。
【図4】別の実施の形態を示すシステム系統図である。
【図5】別の実施の形態を示すシステム系統図である。
【図6】二酸化炭素における圧力、温度の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 燃料タンク
3 フィード・ポンプ
5 セパレーター
5C 再入口
7 マイクロ・ミルポンプ(ポンプ装置)
7A 吸入口
7B 吐出口
10 ケーシング
11,13 歯車
15 吸込空間
17 吐出空間
19 出口配管
41 材料タンク
51 回収・超臨界二酸化炭素タンク
60A,60B 流量制御弁
61 高圧圧縮機
63 高圧ボンベ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形成分を含有する流体を圧送する粉砕機能を有するポンプ装置であって、
ケーシングに吸込空間と、吐出空間と、一対の噛み合い歯車とを備え、
一対の噛み合い歯車の回転により、吸込空間に吸い込んだ流体を前記歯車の外周部と前記ケーシングとの間に閉じ込めて吐出空間に圧送すると共に、
吐出空間に滞留する流体中の固形成分を、前記一対の噛み合い歯車の回転により該歯車の噛み合い部に引き込んで破砕し、粒径が小さい固形物にして吸込空間に戻し、
吸込空間において固形物と吸い込んだ流体とを混在し、再びケーシングと歯車との間に閉じ込めて、吐出空間に圧送可能に構成したことを特徴とする粉砕機能を有するポンプ装置。
【請求項2】
一対の噛み合い歯車が回転数を可変に構成され、
該回転数の制御により固形物の粒径を管理可能としたことを特徴とする請求項1に記載の粉砕機能を有するポンプ装置。
【請求項3】
前記吸込空間を下方重力方向に、前記吐出空間を上方反重力方向に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の粉砕機能を有するポンプ装置。
【請求項4】
前記歯車の硬度が、Hv≧1000であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の粉砕機能を有するポンプ装置。
【請求項5】
流体の供給源、フィード・ポンプ、流体を軽質成分/重質成分に分離するセパレーター、流体中の軽質成分が供給されるワークの順に接続し、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のポンプ装置の吸込空間を、前記セパレーターの底部に接続し、当該ポンプ装置の吐出空間を、前記セパレーターの上部、若しくは、セパレーター出口部に接続して、前記ワークに供給される固形成分の粒径を管理可能に構成したことを特徴とする流体供給システム。
【請求項6】
請求項5に記載の流体供給システムにおいて、
前記ポンプ装置の循環流量を「Qc(リットル/min)」、前記ポンプ装置の出口配管の最小流路内径を「φdc(mm)」、吐出平均流速を「Vc(cm/sec)」とした場合に、最小流路内径「φdc(mm)」は、以下の式で表され、
dc(mm)=√{1.5×10-4・Vc/(π・Qc)}
循環流量「Qc(リットル/min)」のとき、吐出平均流速「Vc(cm/sec)」近傍となるように、最小流路内径「φdc(mm)」を決定し、
許容吐出スラッジ外径を「φds(mm)」、スラッジの抗力係数を「Cd」、流体の比重量を「γf(kg/m3)」、スラッジ比重量を「γf(kg/m3)」とした場合に、吐出平均流速「Vc(cm/sec)」は、以下の式で表され、
Vc2≪1.065ds・g(γs/γf−1)/Cd
前記ポンプ装置から前記セパレーターに向かうスラッジ外径が、前記許容吐出スラッジ外径「φds(mm)」以下となるように、前記吐出平均流速「Vc(cm/sec)」を制御して、吐出粒径を制御することを特徴とする流体供給システム。
【請求項7】
前記流体として超臨界二酸化炭素等の液体を用いることにより、粉砕時の発熱を抑制して、粉砕材料の品質・物性を毀損せずに、ナノ・サイズの粉砕を可能としたことを特徴とする請求項5または6に記載の流体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−51884(P2010−51884A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218551(P2008−218551)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(391043505)アイスマン株式会社 (13)
【出願人】(591160338)株式会社技術開発総合研究所 (12)
【Fターム(参考)】