説明

粉粒体搬送コンベヤ用チェーン

【課題】潤滑剤の乏しい環境下でローラと内リンクプレートの摺動接触を防止して摩擦抵抗を軽減し、ローラとブシュの間の偏磨耗を防止するとともに、堆積物によるローラの傾きを防止して、チェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持するとともに、摺接騒音を低減し円滑に走行する粉粒体搬送コンベヤ用チェーンを提供すること。
【解決手段】粉粒体搬送コンベヤ用チェーン100のブシュ120のローラ130の端面と左右一対の内リンクプレート110との間に円盤状スペーサ162が、ローラ130の内面とブシュ120の外面との間に円筒状スペーサ161が、それぞれ遊嵌されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体搬送コンベヤ用チェーンに関し、特に、潤滑剤の乏しい環境下で使用されるチェーンコンベヤとして好適な粉粒体搬送コンベヤ用チェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粉粒体搬送コンベヤ等において、使用されるチェーンコンベヤの潤滑剤が搬送される粉粒体に混入することによる搬送物に対する汚染の防止、潤滑剤の補給・交換等のメンテナンススペースの軽減、乾燥や高温環境における潤滑剤の劣化防止、使用済み潤滑剤による作業環境の汚染や廃棄物の処理問題の低減等の観点から、潤滑剤を大幅に削減、あるいは使用しない状態でのチェーンコンベヤの運転の要求が高まっている。
【0003】
一方、これらの潤滑剤の乏しい環境下では、摩擦抵抗の増加がチェーンの摺動音の増加につながり、作業環境の悪化や、周辺民家等への騒音問題を惹起することとなり、また、粉粒体が摩擦部に混入してチェーンコンベヤの摩擦や損傷が発生し、金属磨耗粉の発生が増加して粉粒体に混入する虞があるため、潤滑剤の乏しい環境下でも摩擦抵抗を低減して摺動音を低減し異物の混入を防止するチェーンコンベヤが求められている。
【0004】
そこで、潤滑剤の乏しい環境下で使用されるコンベヤ用のローラチェーンにおいて、ローラの内周面とブシュ、あるいはローラのローラ端面と内リンクプレートにおける摩擦抵抗を軽減するとともに、ローラのローラ端面と内リンクプレートの内側面との間の摺動接触に起因して生じる金属磨耗粉がローラの内周面とブシュの外周面との間に侵入して研磨材として作用しローラとブシュとの間で異常な偏磨耗を惹起させることを防止するために、ローラの内周面とブシュの外周面との間に耐磨耗性のスペーサを備え、該スペーサによってローラ端面と内リンクプレートの内側面との摺接を回避するものが知られている。
【0005】
この公知のローラチェーン500は、図6に示すように、左右一対で離間して配置された内リンクプレート510と、この内リンクプレート510のブシュ孔511に圧入嵌合されたブシュ520と、このブシュ520に回転自在に外嵌されたローラ530と、ブシュ520内に回転自在に挿通された連結ピン540と、この連結ピン540の両端をピン孔551に圧入嵌合して内リンクプレート510をチェーン長手方向に連結する左右一対で離間して配置された外リンクプレート550とを備え、耐磨耗性を備えたスリーブ状スペーサ560が、ローラ530とブシュ520との間に同芯状に配置されている。
【0006】
そして、スリーブ状スペーサ560の両端部は、ローラ530のローラ端面から左右の内リンクプレート510に向けて突出してローラ530のローラ端面と内リンクプレート510の内側面との摺動接触を回避し、摩擦抵抗を軽減するとともに金属磨耗粉の発生を阻止している。
【0007】
また、他の公知のローラチェーン600は、図7に示すように、左右一対で離間して配置された内リンクプレート610と、この内リンクプレート610のブシュ孔611に圧入嵌合されたブシュ620と、このブシュ620に回転自在に外嵌されたローラ630と、ブシュ620内に回転自在に挿通された連結ピン640と、この連結ピン640の両端をピン孔651に圧入嵌合して内リンクプレート610をチェーン長手方向に連結する左右一対で離間して配置された外リンクプレート650とを備え、耐磨耗性を備えたスペーサ660が、内リンクプレート610に向けてフランジ661aを突出させるとともにローラ630とブシュ620との間に遊嵌する左右一対のフランジ付スペーサ661、661から構成され、ローラ630とブシュ620との間に同芯状に配置されている。
【0008】
そして、フランジ付スペーサ661のフランジ661aがローラ630のローラ端面と内リンクプレート610の間に介在して摺動することにより、ローラ630のローラ端面と内リンクプレート610の内側面との摺動接触を完全に回避し、摩擦抵抗を軽減するとともに金属磨耗粉の発生を阻止している。
(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−13278号公報(第4〜5頁、図2、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前段の公知のローラチェーン500では、ローラ530がスリーブ状スペーサ560に対して偏りが生じた場合、ローラ端面と内リンクプレートの内側面との間の摺動接触が生じて金属磨耗粉が発生してローラの内周面とブシュの外周面との間に侵入しローラとブシュとの間で異常な偏磨耗を惹起させる結果、チェーン摩耗を増大させてチェーン寿命を著しく損なうばかりでなく、チェーン稼動時の摺接音を著しく増大させるという問題があった。
【0011】
また、粉粒体搬送コンベヤ用チェーンとして用いる場合、潤滑剤の乏しい環境となるため、スリーブ状スペーサ560あるいはフランジ付スペーサ661が摺接する際の騒音や摩擦抵抗が大きく、さらに、粉粒体の中を走行することとなるため粉粒体の混入が多くなり摩擦や損傷が増大する。
特に搬送される粉粒体が、珪砂、石炭灰、スラグなど硬度の高いものである場合、その摩耗や損傷、騒音に与える影響は大きく、さらに、ローラがレール上を直接走行する場合はローラとブシュが常に摩擦摺動するため、摩耗や損傷、騒音に対する影響がさらに大きく、かつ、偏荷重やローラの傾きが円滑な走行を阻害するという問題があった。
【0012】
また、粉粒体や金属磨耗粉が内リンクプレート510、610のブシュ520、620周辺等のコーナー部に堆積物Tとして不均等に堆積しやすく、前述の公知のローラチェーン600では、図8に示すように、フランジ付スペーサ661が該堆積物Tに乗り上げてローラ630が傾き、ローラチェーン600に偏荷重が生じたり、フランジ付スペーサ661が偏摩耗したりする結果、チェーン摩耗を増大させてチェーン寿命を著しく損なうばかりでなく、チェーン稼動時の摺接音を著しく増大させるという問題があった(前述の公知のローラチェーン500でも同様である。)。
【0013】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、潤滑剤の乏しい環境下で粉粒体の混入を低減して摩擦や損傷を減少させるとともに、ローラ端面と内リンクプレートの内側面との間の摺動接触を防止して摩擦抵抗を軽減し、ローラの内周面とブシュの外周面との間の偏磨耗を防止するとともに、堆積物によるローラの傾きを防止して、チェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持するとともに、摺接騒音を低減し円滑に走行する粉粒体搬送コンベヤ用チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本請求項1に係る発明は、左右一対で離間配置された内リンクプレートと該内リンクプレートのブシュ孔に圧入嵌合されたブシュと該ブシュに回転自在に外嵌されたローラと前記ブシュ内に回転自在に挿通された連結ピンと該連結ピンの両端をピン孔に圧入嵌合して前記内リンクプレートをチェーン長手方向に連結する左右一対で離間配置された外リンクプレートとを備え、前記ブッシュにスペーサが遊嵌されている粉粒体搬送コンベヤ用チェーンにおいて、前記スペーサが、前記ローラの端面と左右一対の内リンクプレートとの間に設けられた一対の円盤状スペーサと、前記ローラの内面と前記ブシュの外面との間に設けられた円筒状スペーサとで構成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0015】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された粉粒体搬送コンベヤ用チェーンの構成に加えて、前記円盤状スペーサおよび円筒状スペーサが、グラファイトより形成されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0016】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載された粉粒体搬送コンベヤ用チェーンの構成に加えて、前記円筒状スペーサが、前記ローラの内周面側に一体とされていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0017】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された粉粒体搬送コンベヤ用チェーンの構成に加えて、前記円盤状スペーサが、厚みを薄くした段差部を有していることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0018】
本請求項5に係る発明は、請求項4に記載された粉粒体搬送コンベヤ用チェーンの構成に加えて、前記円盤状スペーサの段差部が、内リンクプレート側に設けられていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0019】
本請求項6に係る発明は、請求項4または請求項5に記載された粉粒体搬送コンベヤ用チェーンの構成に加えて、前記円盤状スペーサの段差部が、ローラ側に設けられ、前記円筒状スペーサが、前記ローラより内リンクプレート側に突出して前記円盤状スペーサの段差部に嵌合していることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の粉粒体搬送コンベヤ用チェーンは、左右一対で離間配置された内リンクプレートと該内リンクプレートのブシュ孔に圧入嵌合されたブシュと該ブシュに回転自在に外嵌されたローラと前記ブシュ内に回転自在に挿通された連結ピンと該連結ピンの両端をピン孔に圧入嵌合して内リンクプレートをチェーン長手方向に連結する左右一対で離間配置された外リンクプレートとを備え、ブッシュにスペーサが遊嵌されていることにより、スペーサが摺動抵抗を軽減し、チェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持するとともに、摺接騒音を低減することができるとともに、以下のような格別の効果を奏することができる。
【0021】
すなわち、本請求項1に係る発明の粉粒体搬送コンベヤ用チェーンは、スペーサが、ローラの端面と左右一対の内リンクプレートとの間に設けられた一対の円盤状スペーサと、ローラの内面とブシュの外面との間に設けられた円筒状スペーサとで構成されていることにより、粉粒体の混入を低減して摩擦や損傷を減少させ、潤滑剤の乏しい環境下でもローラ端面と内リンクプレートの内側面との間に円盤状スペーサが介在して直接摺動接触することがないため、摩擦抵抗が軽減され金属磨耗粉の発生が防止され、混入した粉粒体や金属磨耗粉によるローラの内周面とブシュの外周面との間の偏磨耗を防止するとともに、内リンクプレートのブシュ周辺のコーナー部に堆積物が不均等に堆積しても、円盤状スペーサが偏心するのみで円筒状スペーサおよびローラが傾くことがないため、粉粒体搬送コンベヤ用チェーンに偏荷重が生じたり、スペーサが偏摩耗したりすることがなく、チェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持することができるとともに、摺接騒音を低減し円滑に走行することができる。
【0022】
そして、本請求項2に係る発明の粉粒体搬送コンベヤ用チェーンは、請求項1に係る粉粒体搬送コンベヤ用チェーンが奏する効果に加えて、円盤状スペーサおよび円筒状スペーサがグラファイトより形成されていることにより、さらに潤滑剤の乏しい環境下でも摺動抵抗が軽減されるため、チェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持することができるとともに、摺接騒音を低減し円滑に走行することができる。
【0023】
また、本請求項3に係る発明の粉粒体搬送コンベヤ用チェーンは、請求項1または請求項2に係る粉粒体搬送コンベヤ用チェーンが奏する効果に加えて、円筒状スペーサがローラの内周面側に一体とされていることにより、ローラが円筒状スペーサの外周面上でチェーン幅方向にスキュー、揺動、若しくは、偏在することを完全に阻止できるので、ローラチェーン幅方向の蛇行を抑制して安定した走行を実現させることができ、さらにチェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持することができるとともに、摺接騒音を低減し円滑に走行することができる。
【0024】
また、本請求項4に係る発明の粉粒体搬送コンベヤ用チェーンは、請求項1乃至請求項3のいずれかに係る粉粒体搬送コンベヤ用チェーンが奏する効果に加えて、円盤状スペーサが厚みを薄くした段差部を有していることにより、摺接面積を小さくすることができるため、さらに摺動抵抗が軽減され、チェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持することができるとともに、摺接騒音を低減し円滑に走行することができる。
【0025】
また、本請求項5に係る発明の粉粒体搬送コンベヤ用チェーンは、請求項4に係るローラチェーンが奏する効果に加えて、円盤状スペーサの段差部が内リンクプレート側に設けられていることにより、円盤状スペーサと内リンクプレートの摺接面積を小さくすることができるため、摺動抵抗が軽減され、さらにチェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持することができるとともに、摺接騒音を低減し円滑に走行することができる。
【0026】
また、本請求項6に係る発明の粉粒体搬送コンベヤ用チェーンは、請求項4または請求項5に係る粉粒体搬送コンベヤ用チェーンが奏する効果に加えて、円盤状スペーサの段差部がローラ側に設けられ、円筒状スペーサがローラより内リンクプレート側に突出して円盤状スペーサの段差部に嵌合していることにより、円盤状スペーサとローラの間隙から粉粒体や金属磨耗粉等の侵入を阻止することができるため、摺動抵抗が軽減されるとともに、さらにチェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持することができるとともに、摺接騒音を低減し円滑に走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例であるローラチェーンの一部分解斜視図。
【図2】本発明の第1実施例であるローラチェーンの一部断面平面図。
【図3】本発明の第1実施例であるローラチェーンの堆積物が発生した場合の説明図。
【図4】本発明の第2実施例であるローラチェーンの一部断面平面図。
【図5】本発明の第3実施例であるローラチェーンの一部断面平面図。
【図6】従来のローラチェーンの一部断面平面図。
【図7】従来の他のローラチェーンの一部断面平面図。
【図8】従来のローラチェーンの堆積物が発生した場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の粉粒体搬送コンベヤ用チェーンは、左右一対で離間配置された内リンクプレートと該内リンクプレートのブシュ孔に圧入嵌合されたブシュと該ブシュに回転自在に外嵌されたローラとブシュ内に回転自在に挿通された連結ピンと該連結ピンの両端をピン孔に圧入嵌合して内リンクプレートをチェーン長手方向に連結する左右一対で離間配置された外リンクプレートとを備え、ブッシュにスペーサが遊嵌されているローラチェーンにおいて、スペーサが、ローラの端面と左右一対の内リンクプレートとの間に設けられた一対の円盤状スペーサと、ローラの内面とブシュの外面との間に設けられた円筒状スペーサからなり、粉粒体の混入を低減して摩擦や損傷を減少させるとともに、潤滑剤の乏しい環境下でもローラ端面と内リンクプレートの内側面との間の摺動接触を防止し摩擦抵抗が軽減されローラの内周面とブシュの外周面との間の偏磨耗を防止するとともに、堆積物によるローラの傾きを防止して、チェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持するとともに、摺接騒音を低減し円滑に走行することができるものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0029】
すなわち、本発明の粉粒体搬送コンベヤ用チェーンのスペーサの具体的材料については、耐磨耗性および自己潤滑性を備えたものであれば、グラファイト、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどの如何なるものであっても良い。
【0030】
そして、本発明の粉粒体搬送コンベヤ用チェーンの円筒状スペーサは、ローラのローラ端部から突出した周面部分に摺接磨耗度合いを判別するための環状溝等を設けると、磨耗している円筒状スペーサの交換時期を、計測器等を使用することなく目視判別できるので、チェーン保守メンテナンス上、より好ましい。
【0031】
また、本発明の粉粒体搬送コンベヤ用チェーンのローラの具体的素材については、ステンレス、鉄、アルミニウムなどの如何なるものであっても良い。
【実施例1】
【0032】
以下に、本発明の実施例であるローラチェーンについて図面を基づいて説明する。
まず、本発明の第1実施例であるローラチェーン100は、図1及び図2に示すように、左右一対で離間して配置された内リンクプレート110と、この内リンクプレート110のブシュ孔111に圧入嵌合されたブシュ120と、このブシュ120に回転自在に外嵌されたローラ130と、ブシュ120内に回転自在に挿通された連結ピン140と、この連結ピン140の両端をピン孔151に圧入嵌合して内リンクプレート110をチェーン長手方向に連結する左右一対で離間して配置された外リンクプレート150とを備えている。
【0033】
そして、円筒状スペーサ161および2枚の円盤状スペーサ162がブシュ120に遊嵌されており、円筒状スペーサ161はローラ130と回転軸方向に同一幅で、ローラ130の内周面とブシュ120の外周面の間に配置され、2枚の円盤状スペーサ162はローラ130および円筒状スペーサ161の回転軸方向の両側のローラ130と内リンクプレート110との間に配置されている。
【0034】
このようにして得られた本実施例のローラチェーン100は、円筒状スペーサ161をローラ130とブシュ120との間に同芯状に設けたことにより、粉粒体搬送コンベヤなどの潤滑剤の乏しい環境下でもローラ130の内周面とブシュ120の外周面との間の摺接騒音を低減して静粛なチェーン稼動環境を確保しつつ、粉粒体の混入を低減して摩擦や損傷を減少させることができる。
【0035】
また、2枚の円盤状スペーサ162をその両側のローラ130と内リンクプレート110との間に設けたことにより、ローラ130の端面と内リンクプレート110の内側面との摺動接触を完全に回避できるため、ローラ130の端面と内リンクプレート110の内側面との間に生じがちな金属磨耗粉を阻止し、粉粒体や金属磨耗粉によるローラ130の内周面とブシュ120の外周面との間での偏磨耗を生じることなく円滑な摺動接触を維持でき、チェーン摩耗を大幅に抑制して長期にわたってチェーン寿命を維持することができ、しかも、ローラ130の内周面とブシュ120の外周面との間の摺接騒音を低減して静粛なチェーン稼動環境を確保することができる。
【0036】
さらに、内リンクプレート110のブシュ120周辺のコーナー部に堆積物Tが不均等に堆積した場合でも、図3に示すように、円盤状スペーサ162が偏心するのみで円筒状スペーサ161およびローラ130が傾くことがないため、ローラチェーンに偏荷重が生じたり、各部材が偏摩耗したりすることがなく、チェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持することができるとともに、摺接騒音を低減し円滑に走行することができる。
【0037】
また、円盤状スペーサ162および円筒状スペーサ161が、グラファイトよりなることにより、潤滑剤の乏しい環境下でもさらに摺動抵抗が軽減されるため、チェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持することができるとともに、摺接騒音を低減し円滑に走行することができる。
【0038】
さらに、円筒状スペーサ161をローラ130の内周面側に一体とすることにより、チェーン稼働時にローラ130が円筒状スペーサ161でチェーン幅方向にスキュー、揺動、若しくは、偏在することを完全に阻止できるので、チェーン幅方向のチェーン蛇行を抑制して安定したチェーン走行を実現させることができるなど、その効果は甚大である。
【実施例2】
【0039】
本発明の第2実施例であるローラチェーン200は、図4に示すように、第1実施例と同様に、左右一対で離間して配置された内リンクプレート210と、この内リンクプレート210のブシュ孔211に圧入嵌合されたブシュ220と、このブシュ220に回転自在に外嵌されたローラ230と、ブシュ220内に回転自在に挿通された連結ピン240と、この連結ピン240の両端をピン孔251に圧入嵌合して内リンクプレート210をチェーン長手方向に連結する左右一対で離間して配置された外リンクプレート250とを備えている。
【0040】
そして、円筒状スペーサ261および2枚の円盤状スペーサ262がブシュ220に遊嵌されており、円筒状スペーサ261はローラ230と回転軸方向に同一幅で、ローラ230の内周面とブシュ220の外周面の間に配置され、2枚の円盤状スペーサ262はローラ230および円筒状スペーサ261の回転軸方向の両側のローラ230と内リンクプレート210との間に配置されている。
【0041】
さらに、2枚の円盤状スペーサ262は、内リンクプレート210側の内周側に段差部263が設けられており、内リンクプレート210との摺接面積が小さくなるように形成されている。
【0042】
このようにして得られた本第2実施例のローラチェーン200は、第1実施例と同様に、粉粒体搬送コンベヤなどの潤滑剤の乏しい環境下でも摺接騒音を低減して静粛なチェーン稼動環境を確保することができ、ローラ230の端面と内リンクプレート210の内側面との間に生じがちな金属磨耗粉を阻止し、粉粒体や金属磨耗粉によるローラ230の内周面とブシュ220の外周面との間での偏磨耗を生じることなく円滑な摺動接触を維持でき、内リンクプレート210のブシュ220周辺のコーナー部に堆積物Tが不均等に堆積した場合でも、第1実施例と同様に、ローラチェーンに偏荷重が生じたり、各部材が偏摩耗したりすることがなく、チェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持することができ、摺接騒音を低減し円滑に走行することができるとともに、2枚の円盤状スペーサ262と内リンクプレート210側の内周側との摺接面積が小さくなることで、さらに摺動抵抗が軽減され、静粛なチェーン稼動環境を確保することができる。
【0043】
また、円盤状スペーサ262および円筒状スペーサ261が、グラファイトよりなること、円筒状スペーサ261をローラ230の内周面側に一体とすることにより、第1実施例と同様の効果を奏する。
【実施例3】
【0044】
本発明の第3実施例である粉粒体搬送コンベヤ用チェーン300は、図5に示すように、第1実施例と同様に、左右一対で離間して配置された内リンクプレート310と、この内リンクプレート310のブシュ孔311に圧入嵌合されたブシュ320と、このブシュ320に回転自在に外嵌されたローラ330と、ブシュ320内に回転自在に挿通された連結ピン340と、この連結ピン340の両端をピン孔351に圧入嵌合して内リンクプレート310をチェーン長手方向に連結する左右一対で離間して配置された外リンクプレート350とを備えている。
【0045】
円筒状スペーサ361および2枚の円盤状スペーサ362がブシュ320に遊嵌されており、円筒状スペーサ361はローラ330より回転軸方向に長く形成されており、ローラ330の内周面とブシュ320の外周面の間に配置され、2枚の円盤状スペーサ362はローラ330および円筒状スペーサ361の回転軸方向の両側のローラ330と内リンクプレート310との間に配置されている。
【0046】
さらに、2枚の円盤状スペーサ362は、ローラ330側の内周側に段差部363が設けられており、円筒状スペーサ361のローラ330より飛び出した端部が遊嵌するように形成されている。
また、円筒状スペーサ361が遠ざかる方向に移動しても、円筒状スペーサ361のローラ330より飛び出した端部が段差部363に遊嵌されるように寸法を設定することで、摺動部への異物の混入をより有効に防止できる。
【0047】
このようにして得られた本第3実施例の粉粒体搬送コンベヤ用チェーン300は、第1実施例と同様に、粉粒体搬送コンベヤなどの潤滑剤の乏しい環境下でも摺接騒音を低減して静粛なチェーン稼動環境を確保することができ、ローラ330の端面と内リンクプレート310の内側面との間に生じがちな金属磨耗粉を阻止し、粉粒体や金属磨耗粉によるローラ330の内周面とブシュ320の外周面との間での偏磨耗を生じることなく円滑な摺動接触を維持でき、内リンクプレート310のブシュ320周辺のコーナー部に堆積物Tが不均等に堆積した場合でも、第1実施例と同様に、ローラチェーンに偏荷重が生じたり、各部材が偏摩耗したりすることがなく、チェーン摩耗を低減しチェーン寿命を維持することができ、摺接騒音を低減し円滑に走行することができるとともに、2枚の円盤状スペーサ362が円筒状スペーサ361のローラ330より飛び出した端部を嵌合することで、粉粒体や金属磨耗粉等の侵入を阻止することができさらに摺動抵抗が軽減され、静粛なチェーン稼動環境を確保することができる。
【0048】
また、円盤状スペーサ362および円筒状スペーサ361が、グラファイトよりなること、円筒状スペーサ361をローラ330の内周面側に一体とすることにより、第1実施例と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0049】
100、200、300、500、600 ・・・粉粒体搬送コンベヤ用チェーン
110、210、310、510、610 ・・・内リンクプレート
111、211、311、511、611 ・・・ブシュ孔
120、220、320、520、620 ・・・ブシュ
130、230、330、530、630 ・・・ローラ
140、240、340、540、640 ・・・連結ピン
150、250、350、550、650 ・・・外リンクプレート
151、251、351、551、651 ・・・ピン孔
560 ・・・スペーサ
661 ・・・フランジ付スペーサ
161、261、361 ・・・円筒状スペーサ
162、262、362 ・・・円盤状スペーサ
263、363 ・・・段差部
T ・・・堆積物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対で離間配置された内リンクプレートと該内リンクプレートのブシュ孔に圧入嵌合されたブシュと該ブシュに回転自在に外嵌されたローラと前記ブシュ内に回転自在に挿通された連結ピンと該連結ピンの両端をピン孔に圧入嵌合して前記内リンクプレートをチェーン長手方向に連結する左右一対で離間配置された外リンクプレートとを備え、前記ブッシュにスペーサが遊嵌されているローラチェーンにおいて、
前記スペーサが、前記ローラの端面と左右一対の内リンクプレートとの間に設けられた一対の円盤状スペーサと、前記ローラの内面と前記ブシュの外面との間に設けられた円筒状スペーサとで構成されていることを特徴とする粉粒体搬送コンベヤ用チェーン。
【請求項2】
前記円盤状スペーサおよび円筒状スペーサが、グラファイトより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の粉粒体搬送コンベヤ用チェーン。
【請求項3】
前記円筒状スペーサが、前記ローラの内周面側に一体とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粉粒体搬送コンベヤ用チェーン。
【請求項4】
前記円盤状スペーサが、厚みを薄くした段差部を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の粉粒体搬送コンベヤ用チェーン。
【請求項5】
前記円盤状スペーサの段差部が、内リンクプレート側に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の粉粒体搬送コンベヤ用チェーン。
【請求項6】
前記円盤状スペーサの段差部が、ローラ側に設けられ、
前記円筒状スペーサが、前記ローラより内リンクプレート側に突出して前記円盤状スペーサの段差部に遊嵌していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の粉粒体搬送コンベヤ用チェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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