説明

粉粒体移し替え用治具

【課題】粉粒体の収納された第一容器から該粉粒体の所定量を外気に極力接触させずに第二容器に移し替えるための治具を提供する。
【解決手段】粉粒体の収納された第一容器から、該粉粒体を第二容器に移し替えるための治具であって; 第一容器の口と第二容器の口に繋ぎ、それらの内腔を相互に連通し、前記粉粒体を移動させることができる管部材、 第一容器または第二容器の内腔から管部材の内腔に挿入可能な線状部材、および 前記第一容器または第二容器の外側から前記線状部材を操作する手段を有する、治具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体移し替え用治具に関する。より具体的に、本発明は、粉粒体の収納された第一容器から該粉粒体の所定量を外気に極力接触させずに第二容器に移し替えるための治具に関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体の水分測定などで試料を収納容器から測定用容器に小分けするような場合は、試料の水分含量の変化を防ぐために、試料を外気に極力接触させずに小分けする必要がある。そのような小分け方法としては、例えば、不活性ガスで置換されたグローブボックス中で小分け作業を行う方法を挙げることができるが、簡便でない。そのため、外気下で簡便に、試料を外気に極力接触させることなく一の容器から他の容器へ移し替えるための治具が求められている。
例えば、特許文献1には、第一容器と第二容器を、それぞれの蓋に固着された導管で連結し、第一容器を傾けることにより試料を移し替えることができる試料小分け用治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−4603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の試料小分け用治具は、粉粒体の種類によっては、導管に粉粒体がつまり、粉粒体の移動ができなくなるという問題や、所定量の移動が容易でないという問題あった。
本発明は、粉粒体の収納された第一容器から該粉粒体の所定量を外気に極力接触させずに第二容器に移し替えるための治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために検討した。その結果、第一容器の口と第二容器との間を繋ぐ管部材の内腔に挿入可能な線状部材を容器内部に入れ、該線状部材を容器の外側から操作するようにした治具を用いることによって、粉粒体の収納された第一容器から該粉粒体の所定量を外気に極力接触させずに第二容器に移し替えることができることを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕 粉粒体の収納された第一容器から、該粉粒体を第二容器に移し替えるための治具であって; 第一容器の口と第二容器の口に繋ぎ、それらの内腔を相互に連通し、前記粉粒体を移動させることができる管部材、 第一容器または第二容器の内腔から管部材の内腔に挿入可能な線状部材、および 前記第一容器または第二容器の外側から前記線状部材を操作する手段を有する、治具。
〔2〕 線状部材を操作する手段は、磁気による斥力および引力を利用するものである〔1〕に記載の治具。
〔3〕 線状部材は、その基部に円板状磁石が設置されている〔2〕に記載の治具。
〔4〕 管部材は、第一容器の口に繋ぐための接続部と、第二容器の口に繋ぐための接続部と、両接続部との間に連結された管とからなる〔1〕〜〔3〕のいずれかひとつに記載の治具。
〔5〕 線状部材は、管部材の内腔に挿入される部分が弦巻線になっている〔1〕〜〔4〕のいずれかひとつに記載の治具。
〔6〕 弦巻線は、巻き方がS巻きである〔5〕に記載の治具。
〔7〕 線状部材は、第一容器内で円錐形を描くように移動するものである〔1〕〜〔5〕のいずれかひとつに記載の治具。
【発明の効果】
【0007】
本発明の治具を用いると、粉粒体の収納された第一容器から該粉粒体の所定量を外気に極力接触させずに第二容器に移し替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の治具の一実施形態の分解図である。
【図2】図1に示した治具を組み立て状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好適な実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の治具は、粉粒体の収納された第一容器1から、該粉粒体を第二容器2に移し替えるための治具である。本発明の治具は、管部材、線状部材および該線状部材を操作する手段を有するものである。
【0010】
(管部材)
本発明の治具を構成する管部材は、第一容器の口と第二容器の口に繋ぎ、それらの内腔を相互に連通し、第一容器に収納された粉粒体を第二容器に移動させることができるものである。該管部材としては、例えば、直管、曲管、ホース、これらと継ぎ手の組合せ、または、第一容器の口に繋ぐための接続部と、第二容器の口に繋ぐための接続部と、両接続部との間に連結された管とからなる部材などを挙げることができる。これらの中、第一容器の口に繋ぐための接続部と、第二容器の口に繋ぐための接続部と、両接続部との間に連結された管とからなる部材が好ましい。
【0011】
第一容器または第二容器の口に繋ぐための接続部としては、例えば、管の外径が第一容器または第二容器の口の内径と略等しく、嵌合できるものや、第一容器または第二容器の口の蓋であって、管が貫通したものなどを挙げることができる。
【0012】
図面に示した実施形態における管部材は、第一容器1の口に繋ぐための接続部としての第一容器の蓋3、第二容器2の口に繋ぐための接続部として管4の外径と略等しい内径の穴が開いたゴム栓、および両接続部との間に連結された管4を備えている。管4の一端は第一容器の蓋3の略中心部を貫通するように接続され、管4の他端は第二容器2のゴム栓の穴に差し込まれて接続されている。
【0013】
管部材の内径は、移し替える粉粒体の粒径より大きく且つ該線状部材を管部材の内腔に挿入可能な大きさであれば特に限定されない。管部材の材質は特に限定されない。管部材の材料として、例えば、金属、樹脂、ゴムなどを挙げることができる。第一容器または第二容器の口に嵌合によって接続される管部材は、その接続部が弾性を有することが好ましいので、例えば、塩化ビニール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂などの樹脂が材料として用いられる。
【0014】
(線状部材)
本発明の治具を構成する線状部材は、第一容器または第二容器の内腔から管部材の内腔に挿入可能な部材である。線状部材は、管部材の内腔に挿入される部分がスクリューやスターラーとしての機能を有する形状(例えば、弦巻形状、十字形状など)であることが好ましい。ここで、弦巻線とは、円柱面状を回りながら軸方向に所定の速度で進んでいくときにできる渦巻き状の空間曲線をいい、該円柱の直径が変化するものや、該軸方向の速度が変化するものも含む。弦巻線の巻き方は、S巻き、Z巻きが挙げられ、特に限定されない。ここで、S巻きとは、弦巻線を該円柱の軸方向を縦にして横から見た際に、手前側の線が、右下がりのものをいい、Z巻きとは、左下がりのものをいう。例えば、管部材の内腔に挿入される部分が弦巻線になっている場合には、線状部材を軸の周りで回転させたり、軸に沿って往復させることによって、管4を通して移動する粉粒体の量を調整することができる。
【0015】
線状部材を、線状部材を軸の周りで回転させるには、例えば、その基部を円板状磁石とし、基部を第一容器内で円錐形を描くように移動するようにする。そうすると、基部の円板が傾斜し、円板のエッジが第一容器の底に接しながら転がるので、基部が第一容器の縁に沿って回動し、かつ管部材の軸の周りで回転する。弦巻線が、S巻きである場合は、管部材をその管部材の軸の周りで基部側から見て右回りに回転させると、粉粒体を第二容器側に移動させることができる。弦巻線が、Z巻きである場合は、管部材をその管部材の軸の周りで基部側から見て左回りに回転させると、粉粒体を第二容器側に移動させることができる。
【0016】
線状部材の基部は、第一容器または第二容器の内腔に残っている。基部は、後述する操作手段から線状部材に上記のような動作を伝える機能を備えることが好ましい。例えば、操作手段と線状部材基部との間で磁気による引力または斥力を生じさせるような機構を設けることができる。
【0017】
図面に示した実施形態における線状部材5は、容器底に近い側(基部)に磁石6を備え且つ容器口に近い側に管4を貫通することができる弦巻線7を備えている。弦巻線7は第一容器1の内腔から管4の内腔に挿入可能になっている。基部は、その大きさが第一容器1の底の半径より小さいものであることが好ましい。基部には、磁石6を覆うように樹脂板8が設けられている。この樹脂板8によって第一容器の底を傷つけないようしている。また、基部を転がして線状部材の軸方向に回転させる第一容器の底との摩擦力を増やし、回転力が上げることができる。弦巻線7は、針金等で構成されている。図面では該弦巻線7は、管4の内腔の全範囲に及ぶ長さを有しているがこれに限定されない。
【0018】
(線状部材を操作する手段)
本発明の治具を構成する線状部材操作手段は、容器の外側から容器内にある線状部材を操作することができるものであれば特に制限されない。線状部材操作手段としては、種々の方式を採用することができる。例えば、磁気による斥力および引力を利用するものが好ましいものとして挙げることができる。
【0019】
線状部材操作手段の一例として、図1に示すような回転力伝達部材9を挙げることができる。この回転力伝達部材は第一容器1の底を外側から被せることができる程度の大きさの円筒状のキャップ11と該キャップを回し易くするためにキャップの底面に固着された棒状の把持部12とを有する。キャップの内側の中心を外れた位置に磁石10が設置されている。把持部12を手でつまみキャップが回動するように操作できる。これによって磁石10が第一容器の縁に沿って回動し、基部が第一容器内で円錐形を描くように移動するようになっている。磁石10は、第一容器の底の内半径より小さいことが好ましい。
また、回転力伝達部材と第一容器の間にフッ素樹脂製などの円板13を配置することができる。この円板13の配置によって回転力伝達部材と第一容器との間の摩擦力を低減することができる。
【0020】
本発明の冶具の具体的操作例として以下のようなものを挙げることができる。
先ず、粉粒体の収納された第一容器1の口を上にした状態で、第一容器1に線状部材5を基部が下になるようにして入れる。弦巻線7が管4に差し込まれるようにして管部材の接続部(蓋3)を第一容器に嵌める。第一容器1を揺する。基部(磁石6)の重みによって線状部材は第一容器の底に移動する。管部材の他端の接続部を第二容器2の口に接続する。回転力伝達部材9を第一容器の底に外側から取り付ける。図2のように、第一容器1を上に、第二容器2を下にする。線状部材5は、磁石6と磁石10との間の引力により、吊り上げられる。線状部材5は、基部が容器底の縁側に位置して傾斜する。
回転力伝達部材9を回すと、それに追従して線状部材5の基部が容器底の縁に沿って回動して円錐形を描くように移動し、かつ樹脂板8が第一容器の底を転がって回転する。それによって、弦巻線7が回り、管4内の粉粒体をほぐしながら、第一容器から第二容器へ押し出すことができる。図2の把持部12を右手で回すには矢印方向に回すのが容易であるので、弦巻線7がS巻きであると、この回転方向で弦巻線7が管4内の粉粒体を第一容器から第二容器へ押し出すことができ、好ましい。
このようにして、粉粒体の収納された第一容器から、該粉粒体の所定量を第二容器に、外気に極力接触させずに移動させることができる。
【符号の説明】
【0021】
1・・第一容器
2・・第二容器
3・・第一容器の蓋
4・・管
5・・・線状部材
6・・・磁石
7・・・弦巻線
8・・・樹脂板
9・・回転力伝達部材
10・・・磁石
11・・・キャップ
12・・・把持部
13・・・円板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体の収納された第一容器から、該粉粒体を第二容器に移し替えるための治具であって;
第一容器の口と第二容器の口に繋ぎ、それらの内腔を相互に連通し、前記粉粒体を移動させることができる管部材、
第一容器または第二容器の内腔から管部材の内腔に挿入可能な線状部材、および
前記第一容器または第二容器の外側から前記線状部材を操作する手段を有する、治具。
【請求項2】
線状部材を操作する手段は、磁気による斥力および引力を利用するものである請求項1に記載の治具。
【請求項3】
線状部材は、その基部に円板状磁石が設置されている請求項2に記載の治具。
【請求項4】
管部材は、第一容器の口に繋ぐための接続部と、第二容器の口に繋ぐための接続部と、両接続部との間に連結された管とからなる請求項1〜3のいずれかひとつに記載の治具。
【請求項5】
線状部材は、管部材の内腔に挿入される部分が弦巻線になっている請求項1〜4のいずれかひとつに記載の治具。
【請求項6】
弦巻線は、巻き方がS巻きである請求項5に記載の治具。
【請求項7】
線状部材は、第一容器内で円錐形を描くように移動するものである請求項1〜6のいずれかひとつに記載の治具。

【図1】
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【図2】
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