説明

粒子、粒子分散液、粒子分散樹脂組成物および樹脂成形体

【課題】優れた光学特性や優れた分散性を有する粒子、粒子分散液、粒子分散樹脂組成物および樹脂成形体を提供すること。
【解決手段】溶媒および/または樹脂中に1次粒子で分散することができ、1次粒子が、無機粒子の表面に有機基を有している有機無機複合粒子であって、負の複屈折性を有する粒子を、溶媒および/または樹脂中に分散させて、粒子分散液および/または粒子分散樹脂組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子、粒子分散液、粒子分散樹脂組成物および樹脂成形体、詳しくは、光学用途を含む種々の用途に用いられる粒子分散液、粒子分散樹脂組成物および樹脂成形体と、それらに分散される粒子とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ナノメーターサイズの粒子(ナノ粒子)が、光学材料に用いられることが知られている。
【0003】
例えば、SiOまたはTiOなどからなる金属酸化物微粒子と有機修飾剤とを水熱合成することにより、有機修飾微粒子を得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−194148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した用途に用いられる粒子には、優れた光学特性に加え、種々の特性が要求される。
【0006】
本発明の目的は、優れた光学特性や優れた分散性を有する粒子、粒子分散液、粒子分散樹脂組成物および樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の粒子は、溶媒および/または樹脂中に1次粒子で分散することができ、前記1次粒子が、無機粒子の表面に有機基を有している有機無機複合粒子であって、負の複屈折性を有することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の粒子では、前記無機粒子が、アルカリ土類金属を含む炭酸塩および/またはアルカリ土類金属を含む複合酸化物からなることが好適である。
【0009】
また、本発明の粒子では、前記1次粒子は、前記無機粒子が有機化合物により表面処理されることにより得られ、前記有機化合物は、前記無機粒子の表面と結合可能な結合基と、前記有機基である疎水基および/または親水基とを含むことが好適である。
【0010】
また、本発明の粒子では、アスペクト比が、1000以下であることが好適である。
【0011】
また、本発明の粒子では、最大長さが、200μm以下であることが好適である。
【0012】
また、本発明の粒子では、水熱合成により得られることが好適である。
【0013】
また、本発明の粒子では、前記無機粒子を形成する無機化合物と、前記有機化合物とを水熱合成させることが好適である。
【0014】
また、本発明の粒子では、アルカリ土類金属を含む金属水酸化物と、炭酸源と、前記有機化合物とを水熱合成させることが好適である。
【0015】
また、本発明の粒子では、前記炭酸源が、蟻酸および/または尿素であることが好適である。
【0016】
また、本発明の粒子では、アルカリ土類金属を含む金属水酸化物と、金属錯体と、前記有機化合物とを水熱合成させることが好適である。
【0017】
また、本発明の粒子では、pH調整剤の存在下で、水熱合成させることが好適である。
【0018】
また、本発明の粒子では、前記有機基を含む有機化合物中で、前記無機粒子を形成する無機化合物を高温処理することにより得られることが好適である。
【0019】
また、本発明の粒子では、前記溶媒によって湿式分級されていることが好適である。
【0020】
また、本発明の粒子分散液は、前記溶媒と、前記溶媒に、1次粒子で分散されている上記した粒子とを含むことを特徴としている。
【0021】
また、本発明の、粒子分散樹脂組成物は、前記樹脂と、前記樹脂に、1次粒子で分散されていることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の樹脂成形体は、上記した粒子分散樹脂組成物から形成されていることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の樹脂成形体は、光学フィルムであることが好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の粒子は、溶媒および/または樹脂中に1次粒子で分散することができるので、溶媒および/または樹脂に対する分散性が優れている。
【0025】
そのため、本発明の粒子分散液、粒子分散樹脂組成物および樹脂成形体では、粒子が良好な均一性で分散している。
【0026】
その結果、本発明の樹脂成形体は、優れた光学特性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、実施例1のFE−SEM写真の画像処理図を示す。
【図2】図2は、比較例2のFE−SEM写真の画像処理図を示す。
【図3】図3は、実施例17のTEM写真の画像処理図を示す。
【図4】図4は、実施例29のFE−SEM写真の画像処理図を示す。
【図5】図5は、比較例3のFE−SEM写真の画像処理図を示す。
【図6】図6は、実施例47のFE−SEM写真の画像処理図を示す。
【図7】図7は、実施例55のTEM写真の画像処理図を示す。
【図8】図8は、比較例4のTEM写真の画像処理図を示す。
【図9】図9は、実施例56のFE−SEM写真の画像処理図を示す。
【図10】図10は、調製例1の粒子分散液における粒子の粒度分布を示す。
【図11】図11は、実施例36の粒子が分散されている樹脂成形体の断面のFE−SEM写真の画像処理図を示す。
【図12】図12は、比較例2の粒子が分散されている樹脂成形体の断面のFE−SEM写真の画像処理図を示す。
【図13】図13は、実施例36の粒子が分散されている光学フィルムの断面のFE−SEM写真の画像処理図を示す。
【図14】図14は、比較例2の粒子が分散されている光学フィルムの断面のFE−SEM写真の画像処理図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の粒子は、溶媒および/または樹脂中に1次粒子で分散することができ、その1次粒子が、無機粒子の表面に有機基を有している有機無機複合粒子であって、負の複屈折性を有している。
【0029】
具体的には、1次粒子は、無機粒子が有機化合物により表面処理される有機無機複合粒子として得られる。
【0030】
すなわち、無機粒子を形成する無機化合物(無機原料)は、負の複屈折性(マイナス複屈折性)を有しており、例えば、アルカリ土類金属を含む炭酸塩、および/または、アルカリ土類金属を含む複合酸化物が挙げられる。
【0031】
アルカリ土類金属としては、例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)などが挙げられる。好ましくは、マグネシウム、ストロンチウムが挙げられる。アルカリ土類金属は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0032】
アルカリ土類金属を含む炭酸塩としては、具体的には、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸ラジウムなどが挙げられる。これら炭酸塩は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0033】
アルカリ土類金属を含む複合酸化物としては、例えば、チタン酸アルカリ土類金属塩、鉄酸アルカリ土類金属塩、スズ酸アルカリ土類金属塩、ジルコン酸アルカリ土類金属塩などの金属酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。複合酸化物は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、チタン酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0034】
チタン酸アルカリ土類金属塩としては、例えば、チタン酸ベリリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ラジウムなどが挙げられる。チタン酸アルカリ土類金属塩は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0035】
有機化合物は、例えば、無機粒子の表面に疎水性および/または親水性を付与する疎水化有機化合物および/親水化有機化合物であって、具体的には、無機粒子の表面と結合可能な結合基と、疎水基および/または親水基とを含んでいる。
【0036】
結合基としては、無機粒子の種類に応じて適宜選択され、例えば、カルボキシル基、リン酸基(−PO(OH)、ホスホノ基)、アミノ基、スルホ基などの官能基が挙げられる。
【0037】
これら結合基は、有機化合物に1つあるいは複数含まれていてもよい。
【0038】
疎水化有機化合物における疎水基として、例えば、炭素数4〜20の炭化水素基が挙げられ、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニルアルキレン基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
【0039】
アルキル基としては、例えば、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、2−エチルへキシル、3,3,5−トリメチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシルなどの、炭素数4〜20の直鎖または分岐アルキル基などが挙げられる。好ましくは、炭素数6〜18の直鎖または分岐アルキル基が挙げられる。
【0040】
アルケニル基としては、例えば、ヘキセニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、イコセニルなどの炭素数4〜20のアルケニル基が挙げられる。
【0041】
アルキニル基としては、例えば、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル、ヘプタデシニル、オクタデシニルなどの炭素数4〜20のアルキニル基が挙げられる。
【0042】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシルなどの炭素4〜20のシクロアルキル基が挙げられる。
【0043】
シクロアルケニルアルキレン基としては、例えば、ノルボルネンデシル酸(ノルボネリルデシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エニル−デシル)などが挙げられる。
【0044】
アリール基としては、例えば、フェニル、キシリル、ナフチル、ビフェニルなどの炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
【0045】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、ジフェニルメチル、フェニルブチル、フェニルペンチル、フェニルヘキシル、フェニルヘプチルなどの炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
【0046】
疎水基のうち、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニルアルキレン基、アラルキル基が挙げられる。
【0047】
疎水化有機化合物としては、具体的には、例えば、ヘキサン酸、3,3,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、デシルアミン、ラウリン酸、デシルホスホン酸、トリオクチルホスフィノキシドなどのアルキル基含有化合物、例えば、10−ウンデセン酸、オレイン酸などのアルケニル基含有化合物、例えば、シクロヘキサンペンタン酸(シクロヘキシルペンタン酸)、シクロペンタンデカン酸などのシクロアルキル基含有化合物、例えば、ノルボルネンデカン酸などのシクロアルケニルアルキレン基含有化合物、例えば、6−フェニルヘキサン酸などのアラルキル基含有化合物などが挙げられる。
【0048】
親水化有機化合物における親水基としては、ヒドロキシル基、カルボニル基などが挙げられる。親水基は、親水化有機化合物において1つあるいは複数含まれていてもよい。
【0049】
親水化有機化合物としては、具体的には、例えば、エチル−6−ヒドロキシヘキサノエイト、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸などのヒドロキシル基含有化合物(モノヒドロキシルカルボン酸またはそのエステル)、4−オキソ吉草酸などのカルボニル基含有化合物(つまり、モノカルボニルカルボン酸)などが挙げられる。
【0050】
上記した疎水基および/または親水基は、有機無機複合粒子における無機粒子の表面に存在する有機基とされている。
【0051】
本発明の粒子は、無機化合物と上記した有機化合物とを、反応処理、好ましくは、高温処理することによって得ることができる。
【0052】
具体的には、無機化合物および有機化合物を水中で高圧下において高温処理する(水熱合成:水熱反応)か、または、無機化合物を有機化合物中で高温処理(有機化合物中での高温処理)することにより、本発明の粒子を得る。つまり、無機化合物により形成される無機粒子の表面を有機基で表面処理することにより、本発明の粒子を得る。
【0053】
水熱合成では、例えば、上記した無機化合物と、有機化合物とを、高温および高圧下において、水の存在下で、反応させる(第1の水熱合成)。
【0054】
すなわち、まず、無機化合物、有機化合物および水を耐圧性の密閉容器に投入し、それらを加熱することにより、反応系を高温および高圧下に調製する。
【0055】
各成分の配合割合は、無機化合物100重量部に対して、有機化合物が、例えば、5〜160重量部、好ましくは、10〜110重量部であり、水が、例えば、200〜1000重量部、好ましくは、400〜700重量部である。
【0056】
有機化合物の配合割合が上記した範囲に満たないと、表面修飾反応の進行の度合いが小さく、溶媒および/または樹脂に対する分散性が低下する場合がある。一方、有機化合物の配合割合が上記した範囲を超えると、表面修飾反応が十分に進行する一方、有機化合物を過剰に使用するため、コストが上昇する場合がある。
【0057】
また、水の配合割合が上記した範囲に満たないと、反応は進行する一方、粗大(例えば、最大長さが0.2〜0.8mm程度の)粒子が得られ、光学用途に適さない場合がある。
【0058】
また、水の配合割合が上記した範囲を超えると、無機化合物の濃度が過度に高くなり、また、目的の粒子を生成できない場合がある。
【0059】
なお、有機化合物の密度が、通常、0.8〜1.1g/mLであることから、有機化合物の体積基準の配合割合は、無機化合物100gに対して、例えば、10〜150mL、好ましくは、20〜100mLである。
【0060】
また、有機化合物の配合モル数は、無機化合物に含まれる金属1モルに対して、例えば、0.01〜1000モル、好ましくは、0.1〜10モルに設定することもできる。
【0061】
また、水の密度が、通常、1g/mL程度であることから、水の体積基準の配合割合は、無機化合物100gに対して、例えば、200〜1000mL、好ましくは、400〜700mLである。
【0062】
有機化合物および水の配合割合が上記範囲内にあれば、無機粒子の表面を確実に表面処理することができる。
【0063】
水熱反応における反応条件は、具体的には、加熱温度が、例えば、100〜500℃、好ましくは、200〜400℃である。
【0064】
加熱温度が上記した範囲に満たないと、水熱反応が十分に進行せず、無機化合物が残存する場合がある。一方、加熱温度が上記した範囲を超えると、水熱反応は進行する一方、過剰な熱量を与えていることになり、コストが上昇したり、環境負荷が高くなる場合がある。
【0065】
また、圧力が、例えば、10〜50MPa、好ましくは、20〜40MPaである。
【0066】
圧力が上記した範囲に満たないと、水熱反応が十分に進行せずに、無機化合物が残存する場合がある。一方、圧力が上記した範囲内であると、水熱反応は進行し、しかも、安全性を向上させることができる。
【0067】
また、反応時間が、例えば、1〜200分間、好ましくは、3〜150分間である。
【0068】
反応時間が上記した範囲に満たないと、水熱反応が十分に進行せず、無機化合物が残存する場合がある。一方、反応時間が上記した範囲を超えると、水熱反応は進行する一方、粒子成長が進行し、粗大粒子が得られ、光学用途に適さない場合があり、また、長時間を要するため、コストが上昇する場合がある。
【0069】
水熱反応後、冷却した後、例えば、密閉容器の底壁に沈殿する沈殿物または密閉容器の内壁に付着する付着物を回収する。
【0070】
沈殿物は、例えば、反応物を、重力または遠心力場によって、沈降させる沈降分離によって得る。好ましくは、遠心力場によって沈降させる遠心沈降(遠心分離)によって、反応物の沈殿物として得られる。
【0071】
また、付着物は、例えば、へら(スパーテル)などによって、回収する。
【0072】
なお、反応物は、溶媒を加えて未反応の有機化合物を洗浄し(つまり、有機化合物を溶媒に溶解させ)、その後、溶媒を除去して、回収(分離)することもできる。
【0073】
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが用いられ、好ましくは、アルコールが用いられる。
【0074】
洗浄後における反応物は、例えば、濾過、デカンテーションなどによって、溶媒(上澄み液)から分離して、回収する。
【0075】
これにより、粒子を得る。
【0076】
また、アルカリ土類金属を含む金属水酸化物と、炭酸源と、有機化合物とを水熱合成させることにより、本発明の粒子を得ることもできる(第2の水熱合成)。
【0077】
アルカリ土類金属を含む金属水酸化物におけるアルカリ土類金属としては、上記した炭酸塩に含まれるアルカリ土類金属と同様のものが挙げられる。
【0078】
金属水酸化物としては、具体的には、例えば、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ラジウムなどが挙げられる。
【0079】
炭酸源としては、例えば、蟻酸および/または尿素が挙げられる。
【0080】
有機化合物は、上記した第1の水熱合成に用いられる有機化合物と同様のものが挙げられる。
【0081】
そして、第2の水熱合成では、上記した金属水酸化物と、炭酸源と、有機化合物とを、高温および高圧下において、水の存在下で、反応させる。
【0082】
各成分の配合割合は、金属水酸化物100重量部に対して、炭酸源が、例えば、5〜140重量部、好ましくは、10〜70重量部であり、有機化合物が、例えば、4〜550重量部、好ましくは、15〜330重量部であり、水が、例えば、150〜2500重量部、好ましくは、300〜500重量部である。
【0083】
炭酸源の配合割合が上記した範囲に満たないと、金属水酸化物の濃度が過度に低くなり、粒子を得られない場合がある。また、炭酸源の配合割合が上記した範囲を超えると、反応は進行する一方、粗大粒子が得られ、光学用途に適さない場合がある。
【0084】
また、有機化合物の配合割合が上記した範囲に満たないと、表面修飾反応が十分に進行せずに、溶媒および/または樹脂に対する分散性が低下する場合がある。また、有機化合物の配合割合が上記した範囲を超えると、表面修飾反応は十分に進行する一方、有機化合物を過剰に使用するため、コストが上昇する場合がある。
【0085】
また、水の配合割合が上記した範囲に満たないと、反応は進行する一方、粗大粒子が得られ、光学用途に適さない場合がある。また、水の配合割合が上記した範囲を超えると、金属水酸化物の濃度が過度に高くなり、また、目的の粒子を生成できない場合がある。
【0086】
なお、炭酸源の密度が、通常、1.1〜1.4g/mLであることから、炭酸源の体積基準の配合割合は、金属水酸化物100gに対して、例えば、5〜100mL、好ましくは、10〜50mLである。また、炭酸源の配合モル数を、金属水酸化物1モルに対して、例えば、0.4〜100モル、好ましくは、1.01〜10.0モル、さらに好ましくは、1.05〜1.30モルに設定することもできる。
【0087】
また、有機化合物の体積基準の配合割合は、金属水酸化物100gに対して、例えば、5〜500mL、好ましくは、20〜300mLであり、有機化合物の配合モル数は、金属水酸化物1モルに対して、例えば、0.01〜10000モル、好ましくは、0.1〜10モルに設定することもできる。
【0088】
また、水の体積基準の配合割合は、金属水酸化物100gに対して、例えば、150〜2500mL、好ましくは、300〜500mLである。
【0089】
有機化合物および水の配合割合が上記範囲内にあれば、無機粒子の表面を確実に表面処理することができる。
【0090】
第2の水熱合成における反応条件は、上記した第1の水熱合成における反応条件と同一である。
【0091】
さらに、本発明では、アルカリ土類金属を含む金属水酸化物と、金属錯体と、有機化合物とを水熱合成させることにより、本発明の粒子を得ることもできる(第3の水熱合成)。
【0092】
アルカリ土類金属を含む金属水酸化物は、上記した第2の水熱合成に用いられるアルカリ土類金属を含む金属水酸化物と同様のものが挙げられる。
【0093】
金属錯体の金属元素は、金属水酸化物に含まれるアルカリ土類金属と複合酸化物を構成する金属元素であり、例えば、チタン元素、鉄元素、スズ元素、ジルコニウム元素などが挙げられる。好ましくは、チタン元素が挙げられる。
【0094】
金属錯体の配位子としては、例えば、2−ヒドロキシオクタン酸などのモノヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0095】
金属錯体としては、例えば、2−ヒドロキシオクタン酸チタネートなどが挙げられる。なお、金属錯体は、上記した金属元素および配位子から、公知の方法によって、得ることができる。
【0096】
有機化合物は、上記した第1の水熱合成に用いられる有機化合物と同様のものが挙げられる。
【0097】
そして、第3の水熱合成では、上記した金属水酸化物と、金属錯体と、有機化合物とを、高温および高圧下において、水の存在下で、反応させる。
【0098】
各成分の配合割合は、金属錯体100重量部に対して、金属水酸化物が、例えば、1〜50重量部、好ましくは、5〜30重量部であり、有機化合物が、例えば、4〜550重量部、好ましくは、15〜330重量部であり、水が、例えば、200〜1000重量部、好ましくは、300〜700重量部である。
【0099】
金属水酸化物の配合割合が上記した範囲に満たないと、金属水酸化物の濃度が過度に低くなり、粒子を得られない場合がある。一方、金属水酸化物の配合割合が上記した範囲を超えると、表面修飾反応は進行する一方、粗大粒子が得られ、光学用途に適さない場合がある。
【0100】
また、有機化合物の配合割合が上記した範囲に満たないと、表面修飾反応が十分に進行せずに、溶媒および/または樹脂に対する分散性が低下する場合がある。また、有機化合物の配合割合が上記した範囲を超えると、表面修飾反応は十分に進行する一方、有機化合物を過剰に使用するため、コストが上昇する場合がある。
【0101】
また、水の配合割合が上記した範囲に満たないと、反応は進行する一方、粗大粒子が得られ、光学用途に適さない場合がある。また、水の配合割合が上記した範囲を超えると、金属水酸化物の濃度が過度に高くなり、また、目的の粒子を生成できない場合がある。
【0102】
なお、有機化合物の体積基準の配合割合は、金属錯体100gに対して、例えば、5〜500mL、好ましくは、20〜300mLであり、有機化合物の配合モル数は、金属水酸化物1モル数に対して、0.01〜1000に設定することもできる。
【0103】
また、水の体積基準の配合割合は、金属錯体100gに対して、例えば、200〜1000mL、好ましくは、300〜700mLである。
【0104】
有機化合物および水の配合割合が上記範囲内にあれば、無機粒子の表面を確実に表面処理することができる。
【0105】
第3の水熱合成の反応条件は、上記した第1の水熱合成における反応条件と同一である。
【0106】
さらにまた、上記した水熱合成(第1、第2および第3の水熱合成)を、pH調整剤の存在下で実施することもできる。
【0107】
好ましくは、第2の水熱合成を、pH調整剤の存在下で実施する。
【0108】
pH調整剤としては、アルカリ、酸が挙げられる。
【0109】
アルカリとしては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの無機アルカリ、例えば、アンモニアなどの有機アルカリなどが挙げられる。また、酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸などの無機酸、例えば、蟻酸、酢酸などの有機酸などが挙げられる。
【0110】
好ましくは、アルカリが用いられる。
【0111】
pH調整剤によって、反応系のpHを、例えば、8〜12に設定する。
【0112】
これによって、得られる粒子の平均粒子径を所望の範囲、より具体的には、より小さい値に設定することができる。そのため、平均粒子径(あるいは、長手方向長さLLおよび短手方向長さSL、後述。)が小さい粒子を、光学用途に好適に用いることができる。
【0113】
有機化合物中で高温処理に供される無機化合物は、上記した無機化合物と同様のものが挙げられる。
【0114】
有機化合物中での高温処理では、無機化合物と、有機化合物とを配合し、例えば、常圧下において、それらを加熱する。
【0115】
有機化合物の配合割合は、無機化合物100重量部に対して、例えば、10〜10000重量部、好ましくは、100〜1000重量部である。また、有機化合物の体積基準の配合割合は、無機化合物100gに対して、例えば、10〜10000mL、好ましくは、100〜1000mLである。
【0116】
加熱温度は、例えば、100℃を超過する温度、好ましくは、125℃以上、さらに好ましくは、150℃以上であり、通常、例えば、300℃以下、好ましくは、275℃以下である。
【0117】
加熱時間は、例えば、1〜60分間、好ましくは、3〜30分間である。
【0118】
このようにして得られる粒子(1次粒子)は、主として針状形状をなし、その長手方向長さ(最大長さ)LLが、例えば、200μm以下、好ましくは、5nm〜200μm、さらに好ましくは、10nm〜50μm、とりわけ好ましくは、40nm〜10μmであり、短手方向長さ(最小長さ)SLが、例えば、1nm〜20μm、好ましくは、3nm〜10μm、さらに好ましくは、5nm〜5μmである。
【0119】
とりわけ、pH調整剤の存在下で水熱合成されることにより得られる粒子(1次粒子)は、その長手方向長さLLが、例えば、1nm〜20μm、好ましくは、10nm〜10μmであり、短手方向長さSLが、例えば、0.5nm〜2μm、好ましくは、1nm〜1μmである。
【0120】
長手方向長さLLが上記した範囲に満たないと、粒子が過度に小さくなり、物理強度が低下する場合がある。また、長手方向長さLLが上記した範囲を超えると、光学特性は良好である一方、樹脂などと混合する際に破砕される場合がある。
【0121】
また、短手方向長さSLが上記した範囲に満たないと、粒子が過度に小さくなり、物理強度が低下する場合がある。また、短手方向長さSLが上記した範囲を超えると、十分なアスペクト比が得られない場合がある。
【0122】
また、粒子のアスペクト比は、例えば、1000以下、具体的には、1〜1000、好ましくは、3〜100、さらに好ましくは、5〜30である。
【0123】
アスペクト比が上記した範囲に満たないと、光学特性が低下し、一方、上記した範囲を超えると、光学特性は良好である一方、樹脂などと混合する際に破砕される場合がある。
【0124】
このようにして得られる粒子は、乾燥状態で、凝集しにくくなっており、たとえ、乾燥状態で見かけ上凝集しても、次に説明する粒子分散液および/または粒子分散樹脂組成物において、凝集(2次粒子の形成)が確実に防止され、溶媒および/または樹脂中に1次粒子としてほぼ均一に分散される。
【0125】
また、上記により得られた粒子を、湿式分級することもできる。
【0126】
すなわち、粒子に溶媒を加えて、それらを攪拌後、静置し、その後、上澄みと沈殿物とに分離する。溶媒としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0127】
その後、上澄みを回収することにより、粒子径が小さい粒子を得ることができる。
【0128】
湿式分級により、得られる粒子の長手方向長さLLを、例えば、10nm〜400nm、好ましくは、20nm〜200nmに調製し、短手方向長さSLを、例えば、1nm〜100nm、好ましくは、5nm〜50nmに調製することができる。
【0129】
長手方向長さLLが上記した範囲に満たないと、粒子が過度に小さくなり、物理強度が低下する場合がある。また、長手方向長さLLが上記した範囲を超えると、光学特性は良好である一方、樹脂などと混合する際に破砕される場合がある。
【0130】
また、短手方向長さSLが上記した範囲に満たないと、粒子が過度に小さくなり、物理強度が低下する場合がある。また、短手方向長さSLが上記した範囲を超えると、十分なアスペクト比が得られない場合がある。
【0131】
そして、上記により得られる粒子が分散される溶媒としては、特に限定されず、例えば、上記した洗浄で用いられる溶媒が挙げられ、さらには、それら以外に、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどのアルカン、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサンなどのシクロアルカン、例えば、酢酸エチルなどのエステル、例えば、エチレングリコール、グリセリンなどのポリオール、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル類、例えば、N−メチルピロリドン、ピリジン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物などが挙げられる。
【0132】
これら溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0133】
溶媒の配合割合は、特に限定されず、粒子分散液における粒子の濃度が、例えば、0.1〜70重量%、好ましくは、1〜50重量%となるように、調整される。
【0134】
粒子分散液中の粒子の濃度が上記した範囲に満たないと、希薄すぎるため、樹脂などに混合した際に十分な光学特性が得られない場合があり、一方、上記した範囲を超えると、分散性が低下する場合がある。
【0135】
粒子を溶媒中に分散させるには、粒子および溶媒を配合し、それらを攪拌する。
【0136】
これにより、粒子分散液では、粒子が溶媒中に1次粒子で、つまり、粒子同士が凝集することなく、均一に分散される。
【0137】
また、粒子が分散される樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0138】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂(熱硬化性ポリイミド樹脂)、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂(熱硬化性ウレタン樹脂)などが挙げられる。
【0139】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、アクリル(例えば、ポリメタクリル酸メチルなど)、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド(PA;ナイロン)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル(例えば、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルスルホン、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー、ポリアリレート、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)などが挙げられる。
【0140】
これら樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0141】
樹脂のうち、好ましくは、熱可塑性樹脂、さらに好ましくは、ポリエーテルイミド、ポリエステルが挙げられる。
【0142】
また、上記した樹脂(具体的には、熱可塑性樹脂)の溶融温度は、例えば、200〜300℃であり、軟化温度は、例えば、150〜280℃である。
【0143】
粒子を樹脂中に分散させるには、例えば、少なくとも粒子および樹脂を配合して、それらを攪拌する。
【0144】
好ましくは、粒子、溶媒および樹脂を配合して、それらを攪拌して、粒子分散樹脂液を得、その後、粒子分散樹脂液における溶媒を除去する。溶媒を配合することにより、粒子を樹脂中により一層均一に分散させることができる。
【0145】
具体的には、溶媒に溶解および/分散された樹脂溶液および/または樹脂分散液と、上記した粒子分散液とを配合する。
【0146】
樹脂溶液および/または樹脂分散液の調製に用いられる溶媒としては、上記と同様のものが挙げられ、その配合割合は、樹脂溶液および/または樹脂分散液の樹脂100重量部に対して、例えば、40〜2000重量部、好ましくは、50〜1000重量部となるように、調整される。
【0147】
溶媒の配合割合が上記した配合割合に満たないと、樹脂溶液または樹脂分散液の粘度が過度に増加し、塗布するのが困難になる場合があるとともに、粒子の分散性が低下する場合がある。一方、溶媒の配合割合が上記した範囲を超えると、希薄過ぎるため、樹脂溶液または樹脂分散液の粘度が過度に低下し、厚い厚みで塗布するのが困難になる場合がある。
【0148】
また、樹脂溶液および/または樹脂分散液と、粒子分散液との配合割合は、樹脂(固形分)100重量部に対して、粒子の配合割合が、例えば、0.1〜240重量部、好ましくは、5〜100重量部となるように、調整される。換言すれば、粒子分散樹脂組成物における粒子の濃度は、0.1〜70重量%、好ましくは、1〜50重量%となるように、調整される。
【0149】
粒子の配合割合が上記した範囲に満たないと、希薄すぎるため、粒子分散樹脂組成物において十分な光学特性が得られない場合があり、一方、上記した範囲を超えると、粒子の分散性が低下する場合がある。
【0150】
その後、粒子分散樹脂組成物を、例えば、40〜60℃の加熱により乾燥させて、溶媒を除去して、粒子分散樹脂組成物を得る。
【0151】
その後、粒子分散樹脂組成物を金型などに注入し、その後、例えば、熱プレスなどの熱成形によって、本発明の樹脂成形体を得ることができる。
【0152】
熱プレスでは、例えば、真空プレスが用いられ、その条件は、温度が、樹脂の溶融温度または軟化温度またはそれら以上の温度であり、具体的には、100〜300℃、好ましくは、150〜250℃であり、プレス圧は、例えば、20〜1000MPa、好ましくは、40〜80MPaである。
【0153】
加熱温度が上記した範囲に満たないと、樹脂を軟化させることができない場合があり、一方、上記した範囲を超えると、樹脂が熱分解する場合があり、また、熱を過剰に与えていることになるため、コストが上昇する場合がある。
【0154】
また、プレス圧が上記した範囲に満たないと、樹脂を十分に変形させる(成形する)ことができない場合があり、一方、上記した範囲を超えると、十分に成形できる条件である一方、プレス圧が過度に高く、コストが上昇する場合がある。
【0155】
なお、粒子分散樹脂液を支持板上に、例えば、スピンコート、ロールコートなどの塗布方法によって塗布し、続いて、上記と同様の温度で溶媒を除去し、その後、必要により加熱硬化させることにより、粒子分散樹脂組成物からなる塗膜を得、その後、必要により、さらに乾燥させること(塗布方法)によって、本発明の樹脂成形体を得ることができる。
【0156】
さらに、上記した粒子分散樹脂組成物を押出成形機などによって押出成形する押出成形方法によって、本発明の樹脂成形体を得ることもできる。
【0157】
これにより、樹脂成形体では、粒子が樹脂中に1次粒子で、つまり、粒子同士が凝集することなく、均一に分散されている。
【0158】
そして、本発明の樹脂成形体は、種々の用途に用いられ、例えば、光学用途、電子・電気用途、機械用途などに用いられる。電子・電気用途に用いられる場合には、例えば、フレキシブル基板などに用いられる。
【0159】
好ましくは、光学用途に用いられ、具体的には、光ファイバー、光ディスク、導光板、光学フィルムなどに用いられる。
【0160】
光学フィルムの厚みは、例えば、1〜100μm、好ましくは、5〜50μmである。
【0161】
光学フィルムの厚みが上記した範囲に満たないと、十分な光学特性が得られない場合があり、一方、上記した範囲を超えると、十分な光学特性が得られる一方、均一な膜を得るのが困難になる場合があり、また、コストが上昇する場合がある。
【0162】
なお、樹脂成形体を光学フィルムとして用いる場合には、上記した塗布方法によって、光学用途に適したフィルム状の樹脂成形体、つまり、光学フィルムを得る。
【0163】
そして、上記した本発明の粒子は、溶媒および/または樹脂中に1次粒子で分散することができるので、溶媒および/または樹脂に対する分散性が優れている。
【0164】
そのため、本発明の粒子分散液および粒子分散樹脂組成物では、粒子が良好な均一性で分散している。
【0165】
しかも、本発明の粒子は、負の複屈折性を有している。
【0166】
従って、本発明の樹脂成形体は、優れた光学特性を確保することができ、光学部材、とりわけ、光学フィルムとして、有用に用いられる。
【0167】
つまり、本発明の粒子は、本発明の樹脂成形体において、光の波長(例えば、可視光線で380〜800nm)より小さい粒子径(長手方向長さLLおよび短手方向長さSL)で分散しているので、負の複屈折性を光学フィルムに優れた信頼性で付与することができる。
【0168】
そのため、本発明の光学フィルムは、プラスマディスプレイパネルまたは液晶テレビの位相差板または偏光板などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0169】
以下に実施例、比較例、調製例および作製例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。
【0170】
なお、得られた粒子、粒子分散液および樹脂成形体(光学フィルムを含む)の評価方法を以下に記載する。
(1)X線回折法(XRD)
粒子をガラスフォルダーに充填し、下記の条件でX線回折を実施した。その後、得られたピークから、データベース検索による1次粒子成分を帰属する。
【0171】
X線回折装置:D8 DISCOVER with GADDS、Bruker AXS社製
(入射側光学系)
・X線源:CuKα(λ=1.542Å)、45kV、360mA
・分光器(モノクロメータ):多層膜ミラー
・コリメータ直径:300μm
(受光側光学系)
・カウンタ:二次元PSPC(Hi−STAR)
・粒子およびカウンタ間距離:15cm
・2θ=20、50、80度、ω=10、25、40度、Phi=0度、Psi=0度
・測定時間:10分
・帰属(半定量ソフトウェア):FPM EVA、Bruker AXS社製
(2)フーリエ変換赤外分光光度法(FT−IR)
下記の装置を用いるKBr法によって、フーリエ変換赤外分光光度測定を実施する。
【0172】
フーリエ変換赤外分光光度計:FT/IRplus、JASCO社製
(3)電解放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)による観察
(a)粒子の表面観察と、長手方向長さ(最大長さ)LLおよび短手方向長さ(最小長さ)LSの測定
粒子を試料台の上に分散させ、その後、オスミウムコーティングして、サンプルを作製する。次いで、作製したサンプルを下記の電解放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)によって写真撮影する。
【0173】
また、得られたFE−SEM写真から、各粒子の長手方向長さ(最大長さ)LLおよび短手方向長さ(最小長さ)SLを測定し、それらの算術平均から粒子全体の長手方向長さLLおよび短手方向長さSLを算出する。
【0174】
FE−SEM:JSM−7500F、日本電子社製
加速電圧:2kV
(b)樹脂成形体(光学フィルムを含む)の断面観察
樹脂成形体(光学フィルムを含む)を、クロスセクションポリッシャー(SM−08010、日本電子社製)によって切削して、サンプルを作製する。その後、作製したサンプルを、オスミウムコーティングし、その断面を下記の電解放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)にて観察する。
【0175】
FE−SEM:JSM−7001F、日本電子社製
加速電圧:5kV
(4)透過型電子顕微鏡(TEM)による観察
粒子を、マイクログリッド支持膜付きCuメッシュの上に分散させ、これを透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察する。
【0176】
TEM:HF−2000、日立ハイテクマニファクチャ&サービス社製
加速電圧:200kV
(5)粒度分布測定
粒子分散液を、石英セルに入れ、下記の粒度分布測定装置により、粒度分布を測定する。
【0177】
粒度分布測定装置:Zetasizer Nano−ZS、Marvern Instruments社製
実施例1
5mLの高圧反応器(AKICO社製)に、水酸化ストロンチウム八水和物(和光純薬工業社製)0.5g、蟻酸(和光純薬工業社製)0.0896mL、デカン酸(和光純薬工業社製)0.2332mLおよび純水2.032mLを仕込んだ。
【0178】
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて400℃に加熱し、高圧反応器内を40MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した。
【0179】
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
【0180】
次いで、エタノールにはデカン酸が溶解することから、エタノール(和光純薬工業社製)を加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで10分間遠心分離して、その後、沈殿物(反応物)を上澄みから分離した(洗浄工程)。この洗浄操作を5回繰り返すことにより、残存するデカン酸を除去することにより、粒子を得た。
【0181】
その後、得られた粒子について、(1)XRD、(2)FT−IRおよび(3)FE−SEMをそれぞれ評価した。
【0182】
実施例1の各成分の配合処方および評価を表1に示し、FE−SEM写真の画像処理図を図1に示す。
【0183】
その結果、(1)XDRでは、無機粒子を形成する無機化合物がSrCOであることを確認した。
(2)FT−IRでは、2800〜3000cm−1のC−H伸縮振動を確認し、無機粒子の表面にC−H結合の存在を確認した。
(3)FE−SEMでは、図1から、1次粒子の短手方向長さSLが0.1〜0.5μmであり、長手方向長さLLが0.8〜6μm程度の針状形状であることを確認した。また、1次粒子のアスペクト比は、図1より算出して、8〜60であることを確認した。
【0184】
実施例2〜実施例16
表1の配合処方および処理条件に準拠して、実施例1と同様にして、粒子を得、これを、実施例1と同様にして、評価した。それらの結果を、表1に示す。
【0185】
比較例1
5mLの高圧反応器(AKICO社製)に、水酸化ストロンチウム八水和物(和光純薬工業社製)0.5gおよび純水2.355mLを仕込んだ。
【0186】
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて400℃に加熱し、高圧反応器内を40MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した。
【0187】
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
【0188】
次いで、純水を加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで10分間遠心分離することにより、沈殿物を、上澄みから分離し、乾燥することにより、粒子を得た。
【0189】
その後、得られた粒子について、上記した(1)XRDについて評価した。
【0190】
比較例1の各成分の配合処方および評価を表1に示す。
(1)XDRでは、無機粒子を形成する無機化合物がSrCOであることを確認した。
【0191】
比較例2
5mLの高圧反応器(AKICO社製)に、水酸化ストロンチウム八水和物(和光純薬工業社製)0.5g、蟻酸(和光純薬工業社製)0.0896mLおよび純水2.265mLを仕込んだ。
【0192】
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて400℃に加熱し、高圧反応器内を40MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した。
【0193】
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
【0194】
次いで、エタノール(和光純薬工業社製)を加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで10分間遠心分離して、その後、沈殿物(反応物)を上澄みから分離した(洗浄工程)。この洗浄操作を5回繰り返すことにより、粒子を得た。
【0195】
その後、得られた粒子について、上記した(1)XRD、(2)FT−IRおよび(3)FE−SEMをそれぞれ評価した。
【0196】
比較例2の各成分の配合処方および評価を表1に示し、FE−SEM写真の画像処理図を図2に示す。
(1)XDRでは、無機粒子を形成する無機化合物がSrCOであることを確認した。
(2)FT−IRでは、2800〜3000cm−1のC−H伸縮振動を確認できなかった。
(3)FE−SEMでは、図2から、1次粒子の短手方向長さSLが200nm〜1μmであり、長手方向長さLLが0.8〜7.5μm程度の針状形状であることを確認した。また、1次粒子のアスペクト比は、図2より算出して、4〜37であることを確認した。
【0197】
【表1】

【0198】
実施例17
5mLの高圧反応器(AKICO社製)に、水酸化ストロンチウム八水和物(和光純薬工業社製)0.5g、蟻酸(和光純薬工業社製)0.0896mL、オレイン酸(和光純薬工業社製)0.3737mLおよびアンモニア水1.892mLを仕込んだ。なお、アンモニア水の配合量は、上記により仕込まれた反応系のpHが10となるように調整した。
【0199】
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて400℃に加熱し、高圧反応器内を40MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した。
【0200】
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
【0201】
次いで、エタノールにはオレイン酸が溶解することから、エタノール(和光純薬工業社製)を加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで10分間遠心分離して、その後、沈殿物(反応物)を上澄みから分離した(洗浄工程)。この洗浄操作を5回繰り返すことにより、残存するオレイン酸を除去することにより、粒子を得た。
【0202】
その後、得られた粒子について、上記した(1)XRD、(2)FT−IRおよび(4)TEMをそれぞれ評価した。
【0203】
実施例17の各成分の配合処方および評価を表2に示し、TEM写真の画像処理図を図3に示す。
(1)XDRでは、無機粒子を形成する無機化合物がSrCOであることを確認した。
(2)FT−IRでは、2800〜3000cm−1のC−H伸縮振動を確認し、無機粒子の表面にC−H結合の存在を確認した。
(4)TEMでは、図3から、1次粒子の短手方向長さSLが20〜100nmであり、長手方向長さLLが60〜280nm程度の針状形状であることを確認した。また、1次粒子のアスペクト比は、図3より算出して、3〜14であることを確認した。
【0204】
実施例18〜28
表2の配合処方および処理条件に準拠して、実施例17と同様にして、粒子を得、これを、実施例17と同様にして、評価した。それらの結果を、表2に示す。
【0205】
【表2】

【0206】
実施例29
5mLの高圧反応器(AKICO社製)に、炭酸ストロンチウム(本荘ケミカル社製)0.5g、デカン酸(和光純薬工業社製)0.2332mLおよび純水2.122mLを仕込んだ。
【0207】
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて400℃に加熱し、高圧反応器内を40MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した。
【0208】
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
【0209】
次いで、エタノールにはデカン酸が溶解することから、エタノール(和光純薬工業社製)を加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで10分間遠心分離して、その後、沈殿物(反応物)を上澄みから分離した(洗浄工程)。この洗浄操作を5回繰り返すことにより、残存するデカン酸を除去することにより、粒子を得た。
【0210】
その後、得られた粒子について、上記した(1)XRD、(2)FT−IRおよび(3)FE−SEMをそれぞれ評価した。
【0211】
実施例29の各成分の配合処方および評価を表3に示し、FE−SEM写真の画像処理図を図4に示す。
【0212】
その結果、(1)XDRでは、無機粒子を形成する無機化合物がSrCOであることを確認した。
(2)FT−IRでは、2800〜3000cm−1のC−H伸縮振動を確認し、無機粒子の表面にC−H結合の存在を確認した。
(3)FE−SEMでは、図4に示す画像処理図から、1次粒子の短手方向長さSLが140〜210nmであり、長手方向長さLLが400nm〜1μm程度の針状形状であることを確認した。また、1次粒子のアスペクト比は、図4に示す画像処理図より測定して、3〜5であることを確認した。
【0213】
実施例30〜実施例46
表3の配合処方および処理条件に準拠して、実施例29と同様にして、粒子を得、これを、実施例29と同様にして、評価した。それらの結果を、表3に示す。
【0214】
比較例3
5mLの高圧反応器(AKICO社製)に、炭酸ストロンチウム(本荘ケミカル社製)0.5gおよび純水2.355mLを仕込んだ。
【0215】
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて400℃に加熱し、高圧反応器内を40MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した。
【0216】
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
【0217】
次いで、エタノール(和光純薬工業社製)を用いて反応物を回収し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで10分間遠心分離して、その後、沈殿物を、上澄みから分離し、乾燥することにより、粒子を得た。
【0218】
その後、得られた粒子について、上記した(1)XRD、(2)FT−IRおよび(3)FE−SEMをそれぞれ評価した。
【0219】
比較例3の各成分の配合処方および評価を表3に示し、FE−SEM写真の画像処理図を図5に示す。
(1)XDRでは、無機粒子を形成する無機化合物がSrCOであることを確認した。
(2)FT−IRでは、2800〜3000cm−1のC−H伸縮振動を確認できなかった。
(3)FE−SEMでは、図5から、1次粒子の短手方向長さSLが140〜210nmであり、長手方向長さLLが400nm〜1μm程度の針状形状であることを確認した。また、1次粒子のアスペクト比は、図5より算出して、3〜5であることを確認した。
【0220】
【表3】

【0221】
実施例47
5mLの高圧反応器(AKICO社製)に、炭酸ストロンチウム(本荘ケミカル社製)0.5gおよびオレイン酸(和光純薬工業社製)3.5mLを仕込んだ。
【0222】
次に、高圧反応器の蓋を締めることなく、高圧反応器を振とう式加熱炉(AKICO社製)にて250℃に加熱しながら、15分間振とうした。
【0223】
加熱後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
【0224】
次いで、エタノールにはオレイン酸が溶解することから、エタノール(和光純薬工業社製)を加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで10分間遠心分離して、その後、沈殿物(反応物)を上澄みから分離した(洗浄工程)。この洗浄操作を5回繰り返すことにより、残存するオレイン酸を除去することにより、粒子を得た。
【0225】
その後、得られた粒子について、上記した(1)XRD、(2)FT−IRおよび(3)FE−SEMをそれぞれ評価した。
【0226】
実施例47の各成分の配合処方および評価を表4に示し、FE−SEM写真の画像処理図を図6に示す。
【0227】
その結果、(1)XDRでは、無機粒子を形成する無機化合物がSrCOであることを確認した。
(2)FT−IRでは、2800〜3000cm−1のC−H伸縮振動を確認し、無機粒子の表面にC−H結合の存在を確認した。
(3)FE−SEMでは、図6から、1次粒子の短手方向長さSLが140〜210nmであり、長手方向長さLSが400nm〜1μm程度の針状形状であることを確認した。また、1次粒子のアスペクト比は、図6より算出して、3〜5であることを確認した。
【0228】
実施例48〜実施例54
表4の配合処方および処理条件に準拠して、実施例47と同様にして、粒子を得、これを、実施例47と同様にして、評価した。それらの結果を、表4に示す。
【0229】
【表4】

【0230】
実施例55
(合成例1)
(チタン錯体の合成)
500mLのビーカーに、30体積%過酸化水素水100mLと、25重量%アンモニア25mLとを氷冷下で加えた。さらに、それらにチタン粉末1.5gを加え、完全に溶解するまで氷冷下で3時間攪拌した。次に、エタノール25mLに溶解させた2−ヒドロキシオクタン酸15.5gを加え攪拌した。全ての成分が溶解した後、攪拌を止め一昼夜静置した。その後、乾燥機で75℃で3時間乾燥させることにより、水溶性のチタン錯体(2−ヒドロキシオクタン酸チタネート)を得た。
【0231】
(チタン酸マグネシウムの調製)
5mLの高圧反応器(AKICO製)に、水酸化マグネシウム(和光純薬工業社製)0.0612g、チタン錯体(合成例1)0.5g、デカン酸(和光純薬工業社製)0.5181mLおよび純水2.098mLを仕込んだ。
【0232】
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて400℃に加熱し、高圧反応器内を40MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した。
【0233】
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
【0234】
次いで、エタノール(和光純薬工業社製)を加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで10分間遠心分離して、その後、沈殿物(反応物)を上澄みから分離した(洗浄工程)。この洗浄操作を5回繰り返すことにより、残存するデカン酸を除去することにより、粒子を得た。
【0235】
その後、得られた粒子について、上記した(1)XRD、(2)FT−IRおよび(4)TEMをそれぞれ評価した。
【0236】
実施例55の各成分の配合処方および評価を表5に示し、TEM写真の画像処理図を図7に示す。
【0237】
その結果、(1)XDRでは、無機粒子を形成する無機化合物がチタン酸マグネシウムであることを確認した。
(2)FT−IRでは、2800〜3000cm−1のC−H伸縮振動を確認し、無機粒子の表面にC−H結合の存在を確認した。
(4)TEMでは、図7に示す画像処理図から、1次粒子の短手方向長さSLが10〜30nmであり、長手方向長さLLが20〜200nm程度の針状形状であることを確認した。また、1次粒子のアスペクト比は、図7に示す画像処理図より測定して、2〜20であることを確認した。
【0238】
比較例4
5mLの高圧反応器(AKICO製)に、水酸化マグネシウム(和光純薬工業社製)0.0612g、チタン錯体(合成例1)0.5gおよび純水を2.617mLを仕込んだ。
【0239】
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて400℃に加熱し、高圧反応器内を40MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した。
【0240】
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
【0241】
次いで、エタノール(和光純薬工業社製)を加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで10分間遠心分離し、乾燥することにより、粒子を得た。
【0242】
その後、得られた粒子について、上記した(1)XRD、(2)FT−IRおよび(4)TEMをそれぞれ評価した。
【0243】
比較例4の各成分の配合処方および評価を表5に示し、TEM写真の画像処理図を図8に示す。
【0244】
その結果、(1)XDRでは、無機粒子を形成する無機化合物がチタン酸マグネシウムであることを確認した。
(2)FT−IRでは、2800〜3000cm−1のC−H伸縮振動を確認し、無機粒子の表面にC−H結合の存在を確認できなかった。
(4)TEMでは、図8から、1次粒子の短手方向長さSLが20〜30nmであり、長手方向長さLLが30〜200nm程度の針状形状であることを確認した。また、1次粒子のアスペクト比は、図8より算出して、1.5〜10であることを確認した。
【0245】
比較例5および比較例6
表5の配合処方および処理条件に準拠して、比較例4と同様にして、粒子を得、これを、比較例4と同様にして、評価した。それらの結果を、表5に示す。
【0246】
実施例56
50mLのスクリュー管瓶に、実施例26で得られた粒子0.1gとクロロホルム30gとを仕込んだ。
【0247】
次いで、スパーテルでそれらを攪拌した後、一昼夜静置することにより、上澄みと沈殿物に分離させた(沈降分離、湿式分級)。
【0248】
次に、上澄みを取り出し、これを乾燥させることによって、粒子径が小さい粒子を得た。
【0249】
その後、得られた粒子について、上記した(1)XRD、(2)FT−IRおよび(3)FE−SEMをそれぞれ評価した。
【0250】
実施例56の各成分の配合処方および評価を表5に示し、FE−SEM写真の画像処理図を図9に示す。
【0251】
その結果、(1)XDRでは、無機粒子を形成する無機化合物がSrCOであることを確認した。
(2)FT−IRでは、2800〜3000cm−1のC−H伸縮振動を確認し、無機粒子の表面にC−H結合の存在を確認した。
(3)FE−SEMでは、図9から、1次粒子の短手方向長さSLが20〜50nmであり、長手方向長さLLが30〜200nm程度の針状形状であり、実施例26の粒子(湿式分級前の粒子)の大きさより小さくなっていることを確認した。また、1次粒子のアスペクト比は、図9より算出して、1.5〜10であることを確認した。
【0252】
【表5】

【0253】
調製例1
(粒子分散液の調製)
50mLのスクリュー管瓶に、実施例48で得られた粒子0.1gおよびシクロヘキサン10gを仕込み、スパーテルで攪拌することにより、粒子がシクロヘキサン中に分散されている粒子分散液を調製した。
【0254】
この粒子分散液について、(5)粒度分布測定を実施した。
【0255】
得られた粒度分布を図10に示す。
【0256】
図10の粒度分布は、実施例48の粒度分布(つまり、短手方向長さSLおよび長手方向長さLLから算出される粒径、平均粒子径400μm)と一致することが分かった。
【0257】
従って、調製例1の粒子分散液において、粒子が、1次粒子でシクロヘキサン中に分散されていることが確認された。
【0258】
また、実施例1〜47、49〜56および比較例2〜6で得られた粒子について、上記と同様にして、粒子分散液を調製した。次いで、それらについて、(5)粒子径測定を評価した。
【0259】
その結果、実施例1〜47、49〜56の粒子から調製された粒子分散液においては、粒子が、1次粒子でシクロヘキサンまたはクロロホルム中に分散されていた。
【0260】
一方、比較例2〜6の粒子から調製された粒子分散液については、粒度分布測定によって、粒子がシクロヘキサンまたはクロロホルム中で互いに凝集して、2次粒子(平均粒子径0.8μm以上)を形成していることが確認された。
【0261】
作製例1
(樹脂成形体の作製)
100mLのスクリュー管瓶に、実施例36で得られた粒子0.5gおよびクロロホルム4.5gを仕込み、スパーテルで攪拌することにより、粒子がクロロホルム中に分散されている粒子分散液Aを調製した。
【0262】
次いで、ポリアリレート(Mw=60,000〜80,000、軟化温度:200℃)4.5gをクロロホルム40.5gに溶解させた樹脂溶液と、分散液Aとを混合して粒子含有樹脂液を調製し、その粒子含有樹脂液を乾燥機で50℃で、1時間乾燥させて、クロロホルムを除去することにより、粒子分散樹脂組成物を得た。
【0263】
その後、得られた粒子分散樹脂組成物を、直径10mm、深さ5mmの金型に注入し、次いで、条件200℃、60MPaの真空プレスで成形することにより、樹脂成形体を作製した。
【0264】
この樹脂成形体について、(3)電解放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)によって断面観察した。
【0265】
実施例36の粒子が分散されている樹脂成形体の断面のFE−SEM写真の画像処理図を図11に示す。
【0266】
図11から分かるように、粒子が、ポリアリレート中で、1次粒子で均一に分散されていることを確認した。
【0267】
また、実施例1〜35、37〜42、47〜56および比較例2〜6で得られた粒子についても、上記と同様にして、樹脂成形体を作製した。次いで、それらについて、(3)電解放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)によって断面観察した。
【0268】
比較例2の粒子が分散されている樹脂成形体の断面のFE−SEM写真の画像処理図を図12に示す。
【0269】
その結果、実施例1〜35、37〜42、47〜56の粒子から作製された樹脂成形体については、粒子が、ポリアリレート中で、1次粒子で均一に分散されていた。
【0270】
一方、比較例2〜6の粒子から調製された樹脂成形体については、粒子が、ポリアリレート中で、凝集して、2次粒子を形成していることが確認された。
【0271】
作製例2
(光学フィルムの作製)
100mLのスクリュー管瓶に、実施例36で得られた粒子0.1gおよびクロロホルム0.9gを仕込み、スパーテルで攪拌することにより、粒子がクロロホルム中に分散されている粒子分散液Bを調製した。
【0272】
次いで、ポリアリレート(Mw=60,000〜80,000、軟化温度:200℃)0.9gをクロロホルム8.1gに溶解させた樹脂溶液と、分散液Bとを混合して粒子分散樹脂液を調製し、その粒子分散樹脂液を、スピンコートで支持板上に塗布後、乾燥機で、50℃、1時間乾燥させて、クロロホルムを除去することにより、粒子分散樹脂組成物からなる塗膜を得た。
【0273】
続いて、得られた塗膜を、100℃で、10分間乾燥させることにより、厚み20μmの光学フィルムを作製した。
【0274】
この光学フィルムについて、(3)電解放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)によって断面観察した。
【0275】
実施例36の粒子が分散されている光学フィルムの断面のFE−SEM写真の画像処理図を図13に示す。
【0276】
図13から分かるように、粒子が、ポリアリレート中で、1次粒子で均一に分散されていることを確認した。
【0277】
また、実施例1〜35、37〜42、47〜56および比較例2〜6で得られた粒子についても、上記と同様にして、光学フィルムを作製した。次いで、それらについて、(3)電解放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)によって断面観察した。
【0278】
比較例2の粒子が分散されている光学フィルムの断面のFE−SEM写真の画像処理図を図14に示す。
【0279】
その結果、実施例1〜35、37〜42、47〜56の粒子から作製された光学フィルムについては、粒子が、ポリアリレート中で、1次粒子で均一に分散されていた。
【0280】
一方、比較例2〜6の粒子から調製された光学フィルムについては、粒子が、ポリアリレート中で、凝集して、2次粒子を形成していることが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒および/または樹脂中に1次粒子で分散することができ、
前記1次粒子が、無機粒子の表面に有機基を有している有機無機複合粒子であって、
負の複屈折性を有することを特徴とする、粒子。
【請求項2】
前記無機粒子が、アルカリ土類金属を含む炭酸塩および/またはアルカリ土類金属を含む複合酸化物からなることを特徴とする、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記1次粒子は、前記無機粒子が有機化合物により表面処理されることにより得られ、
前記有機化合物は、
前記無機粒子の表面と結合可能な結合基と、
前記有機基である疎水基および/または親水基と
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の粒子。
【請求項4】
アスペクト比が、1000以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の粒子。
【請求項5】
最大長さが、200μm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の粒子。
【請求項6】
水熱合成により得られることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の粒子。
【請求項7】
前記無機粒子を形成する無機化合物と、前記有機化合物とを水熱合成させることを特徴とする、請求項6に記載の粒子。
【請求項8】
アルカリ土類金属を含む金属水酸化物と、炭酸源と、前記有機化合物とを水熱合成させることを特徴とする、請求項6に記載の粒子。
【請求項9】
前記炭酸源が、蟻酸および/または尿素であることを特徴とする、請求項8に記載の粒子。
【請求項10】
アルカリ土類金属を含む金属水酸化物と、金属錯体と、前記有機化合物とを水熱合成させることを特徴とする、請求項6に記載の粒子。
【請求項11】
pH調整剤の存在下で、水熱合成させることを特徴とする、請求項6〜10のいずれかに記載の粒子。
【請求項12】
前記有機基を含む有機化合物中で、前記無機粒子を形成する無機化合物を高温処理することにより得られることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の粒子。
【請求項13】
前記溶媒によって湿式分級されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の粒子。
【請求項14】
前記溶媒と、
前記溶媒に、1次粒子で分散されている請求項1〜13のいずれかに記載の粒子と
を含むことを特徴とする、粒子分散液。
【請求項15】
前記樹脂と、
前記樹脂に、1次粒子で分散されている請求項1〜13のいずれかに記載の粒子と
を含むことを特徴とする、粒子分散樹脂組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の粒子分散樹脂組成物から形成されていることを特徴とする、樹脂成形体。
【請求項17】
光学フィルムであることを特徴とする、請求項16に記載の樹脂成形体。

【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−236111(P2011−236111A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172310(P2010−172310)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】