説明

粒子の清浄化改善のためにガス流の方向転換濾過を用いる、ヘリウムで満たされたシールドHDD

【課題】 粒子の清浄化改善のためにガス流の方向転換濾過を用いる、ヘリウムで満たされたシールドHDDを提供する。
【解決手段】 実質的にヘリウムガスで満たされている、シールされた密閉容器内に含まれるハードディスクドライブ(HDD)に関するアプローチが提供されている。HDDは、磁気記録ディスクの周囲の大部分を取り囲む隔壁を含み得る。HDDは1つ以上の羽根を有する上流スポイラーもまた含み得る。上流スポイラーの形状は、磁気記録ディスクが回転するとき、循環するヘリウムガスの流れを磁気記録ヘッドからプレナムチャンバーへと方向転換させる。プレナムチャンバーは、ヘリウムガスの循環流の一部がその中に流れる口を有する。プレナムチャンバーの口は、ヘリウムガスの循環流において、上流スポイラーよりも手前にある隔壁内の隙間である。プレナムチャンバーの一部分は、隙間に対向する粒子フィルターを用いて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は全般的に、シールされ周囲空気よりも軽いガスで満たされた、ハードディスクドライブ(HDD)におけるガス濾過の改善に関し、より具体的にはシールされ実質上ヘリウムガスで満たされた、ハードディスクドライブ(HDD)におけるガス濾過の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
一定のコンピュータ装置の動作は、気中浮遊汚染物質のような環境障害の存在により悪影響を与えられ得る。この不都合の発生を防ぐため、幾つかの高感度の装置が気中浮遊汚染物質を遮断するように設計された密閉容器内に格納され得る。
【0003】
保護用の密閉容器内に格納された高感度の装置の一例はハードディスクドライブ(HDD)である。HDDは、デジタル的に符号化されたデータを、磁気面を有する1つ以上の円盤状の記録媒体上に記憶する、保護用の密閉容器内に格納された不揮発性の記憶装置である。HDDが動作しているとき、各円盤状記録媒体はスピンドルシステムにより急速に回転する。データは、アクチュエータにより円盤状記録媒体上の特定位置の上方に位置する読取り/書き込みヘッドを用いて、円盤状記録媒体から読み取られ、そこに書き込まれる。
【0004】
読取り/書き込みヘッドは、円盤状記録媒体の表面からデータを読み取り、そこにデータを書き込むために磁界を用いる。磁気双極子場は磁極からの距離に伴って急速に減少するため、読取り/書き込みヘッドと円盤状記録媒体の表面との間の空隙は、しっかりと管理されなければならない。読取り/書き込みヘッドと円盤状記録媒体の表面との間に一様な距離を与えるため、円盤状記録媒体が回転している間に、アクチュエータは、読取り/書き込みヘッドを円盤状記録媒体の表面から適切な距離に支持するように、自動式空気軸受によって生成される空気に依存する。それゆえ読取り/書き込みヘッドは、円盤状記録媒体の表面上方に「浮かぶ」と言われる。すなわち、回転している円盤状記録媒体により、それに沿って引かれる空気は、ヘッドを円盤状記録媒体の表面から離すように強制する。円盤状記録媒体が回転を止めるとき、読取り/書き込みヘッドは円盤状記録媒体上に「着地」するか、あるいは引き離されなければならない。
【0005】
10nm〜1000nm(1μm)のサイズのような、非常に小さい空中浮遊粒子は、読取り/書き込みヘッドのいずれの空気軸受面にも付着し、又は円盤状磁気記録媒体の表面上に堆積(ディスク堆積)し得る。読取り/書き込みヘッド又は円盤状記録媒体の表面に空中浮遊粒子が付着したとき、読取り/書き込みヘッドはデータを適切に読み取らず、又は円盤状記録媒体の表面を横切って擦る可能性が高く、それは円盤状記録媒体の薄い磁気膜を削り取り、データ損失を生じることがあり、そして潜在的にHDDを動作不可能にし得る。
【0006】
製作工程の自然な一部分として、一定量の空中浮遊粒子はHDDの密閉容器の内部に取り込まれ得る。それに加えて、作動中にHDD内部の一定の部品は、空中浮遊粒子を放出させるやり方で相互に擦り合い、又は衝突し得る。HDDの内部から空中浮遊粒子を取り除くために、密閉容器内部、及び密閉容器の内部と外部間の圧力を均衡させるのに使われる密閉容器内の空気通路の周りに、空中浮遊粒子フィルターが置かれ得る。これらの空中浮遊粒子フィルターは、一般的に円盤状記録媒体の回転によって引き起こされる空気の流れの中に位置する。空気が空中浮遊粒子フィルターを通って流れると、空気により運ばれる粒子は空中浮遊粒子フィルターによって捉えられ、それにより空気を清浄化し得る。
【0007】
空中浮遊粒子フィルターを通って流れる空気の量が増えるにつれて、空中浮遊粒子フィルターにより捉えられる空中浮遊粒子の数もまた増加するであろう。しかしながら、HDDの密閉容器内を循環する空気流の速度が増大すると、循環する空気流が読取り/書き込み磁気ヘッドの動作を妨げるであろう可能性もまた増大する。従って、空中浮遊粒子フィルターは一般に、読取り/書き込み磁気ヘッドの適切な動作を妨げることなく、空気から出来る限り多くの空中浮遊粒子を収集するように設計される。
【0008】
ディスクドライブシステムは、一定の状況において、ヘリウムのような周囲空気以外のガスで満たされ得る。ヘリウムは周囲空気よりも軽いガスであり、ハードディスクドライブが作動中に、より少ない乱流及びディスクのフラッターしか生じないため、これは有利であり得る。しかしながら、ハードディスクドライブ内部において周囲空気よりも軽いガスを用いることは、粒子フィルターを横切って生み出される圧力差がより少なく存在するため、濾過の性能にマイナスの影響を与え得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
シールされ、実質上ヘリウムガスであるような周囲空気よりも軽いガスで満たされた、ハードディスクドライブ(HDD)におけるガスの濾過を改善するための技術が提供されている。1つの実施形態において、ハードディスクドライブ(HDD)は実質上ヘリウムガスで満たされているシールされた密閉容器内に含まれる。HDDは磁気記録ディスクの周囲の大部分を取り囲む隔壁を含み得る。HDDは1つ以上の羽根を有する上流スポイラーもまた含み得る。上流スポイラーの形状は、磁気記録ディスクが回転しているときに、磁気記録ディスクヘッドからプレナムチャンバーへと循環する、ヘリウムガスの流れを方向転換させる。プレナムチャンバーは、実質上ヘリウムガスである循環流の一部分が、その中へ流れることを可能にする口を有する。プレナムチャンバーの口は、ヘリウムガスの循環流において、上流スポイラーよりも手前にある隔壁内の隙間である。プレナムチャンバーの一部分は、隙間に対向する粒子フィルターを用いて形成される。
【0010】
ヘリウムガスは、粒子フィルターを通じた十分な圧力降下を確保するため、上流スポイラー及びプレナムチャンバーを用いて、粒子フィルターを通じて方向付けされ得る。例えば、プレナムチャンバーの使用は、粒子フィルターを横切って23パスカル(Pa)〜27パスカル(Pa)の圧力降下を生み出し得る。それに加えて、粒子フィルターの面積は粒子の清浄化割合を増加させるため最大化され得る。例えば、粒子フィルターの幅はプレナムチャンバーの口の幅よりも大きくなり得る。実際に、幾つかの実施形態において、粒子フィルターの幅はプレナムチャンバーの口の約1.25〜約10倍であり、幾つかの場合において望ましくはプレナムチャンバーの口の約2.3〜約5倍であり得る。
【0011】
発明の概要の節において議論された実施形態は、ここで議論されている全ての実施形態を示唆、記述、又は教示することを意味しない。従って、本発明の実施形態は、この節で議論されたもの以外の追加的な、又は異なる特徴を含み得る。
【0012】
本発明の実施形態は、添付図の図象において例として、そして制限としてではなく説明され、同様の参考番号は類似の要素に言及している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態によるHDDの平面図の図解である。
【図2】本発明の一実施形態によるヘッド−アーム組立品(HAA)の平面図の図解である。
【図3A】本発明の一実施形態による、粒子フィルターを有するHDDの図解である。
【図3B】図3Aに示される粒子フィルターの拡大図を描写する図解である。
【図4A】本発明の別の実施形態による、粒子フィルターを有するHDDの図解である。
【図4B】図4Aに示される粒子フィルターの拡大図を描写する図解である。
【図5A】本発明の一実施形態による粒子フィルターの側面図である。
【図5B】本発明の一実施形態による粒子フィルターの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
シールされ、実質上ヘリウムガスであるような周囲空気よりも軽いガスで満たされた、ハードディスクドライブ(HDD)におけるガスの濾過を改善するためのアプローチが記述される。以下の記述において、説明の目的で、ここに示されている本発明の実施形態の深い理解を提供するため、多くの具体的な詳細が述べられている。しかしながら、ここに示されている本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細無しで実施され得ることは明らかであろう。他の例では、ここに示されている本発明の実施形態を不必要に分かりにくくするのを避けるため、良く知られた構造及び装置はブロック線図の形で示されている。
【0015】
本発明の例示的実施形態の物理的説明
本発明の一実施形態による図1に関して、HDD100の平面図が示されている。図1は、磁気記録ヘッド110aを含むスライダー110bを含んでいる、HDDの構成部品の機能的配置を図解する。HDD100は、ヘッド110aを含む少なくとも1つのHGA110、ヘッド110aに取り付けられた導線の懸架部110c、及びスライダー110bの遠位端部においてヘッド110aを含んでいる、スライダー110bに取り付けられたロードビーム110dを含む。スライダー110bは、ロードビーム110dの遠位端部において、ロードビーム110dのジンバル部分に取り付けられる。HDD100は、スピンドル124に回転可能に搭載された少なくとも1つの磁気記録ディスク120、及びディスク120を回転させるためのスピンドル124に取り付けられた(図示されていない)駆動モーターもまた含む。ヘッド110aは、HDD100のディスク120に記憶された情報をそれぞれ書き込み、読み取るための、ライターと呼ばれる書き込み要素、及びリーダーと呼ばれる読み取り要素を含む。ディスク120又は(図示されていない)複数のディスクは、ディスククランプ128を用いてスピンドル124に取り付けられ得る。HDD100はさらに、HGA110に取り付けられたアーム132、キャリッジ134、キャリッジ134に取り付けられたボイスコイル140を含んでいる、電機子136を含むボイスコイルモーター(VCM)、及び(図示されていない)ボイスコイルマグネットを含んでいる固定子144を含む。VCMの電機子136は、キャリッジ134に取り付けられ、そして間に置かれた旋回軸受組立品152を用いて、旋回軸148に搭載されているディスク120の部分にアクセスするために、アーム132及びHGA110を動かすように構成される。
【0016】
本発明の一実施形態による図1に更に関して、電気信号、例えばVCMのボイスコイル140への電流、PMRヘッド110aへの書き込み信号及びそこからの読み取り信号がフレキシブルな電線156により提供される。フレキシブルな電線156とヘッド110aとの間の相互接続は、読み取り信号用の機上の前置増幅器、及び別の読み取りチャンネルと書き込みチャンネルの電子部品を有し得る、アーム−電子装置(AE)モジュール160により提供され得る。フレキシブルな電線156は、HDDハウジング168により与えられる、(図示されていない)電気的貫通接続を通じて電気通信を提供する、電気コネクターブロック164に連結される。HDDハウジングが鋳造されるかどうかに応じて、鋳物としても見なされるHDDハウジング168は、(図示されていない)HDDカバーと併せて、HDD100の情報記憶部品用のシールされた保護密閉容器を提供する。
【0017】
更に本発明の一実施形態による図1に関して、ディスクコントローラと、デジタル信号プロセッサ(DSP)を含むサーボ電子装置とを含んでいる、(図示されていない)別の電子部品は、電気信号を駆動モーター、VCMのボイスコイル140、及びHGA110のヘッド110aに供給する。駆動モーターに供給された電気信号は、駆動モーターが回転することを可能にし、トルクをスピンドル124に供給し、それは次にディスククランプ128によってスピンドル124に取り付けられたディスク120に伝達される。その結果、ディスク120は172の方向に回転する。スライダー110bが、その中に情報が記録されているディスク120の薄い磁気記録媒体と接触せずに、ディスク120の表面の上方を飛ぶように、回転するディスク120は、その上にスライダー110bの空気軸受面(ABS)が乗る空気軸受として作用する空気を取り込む。VCMのボイスコイル140に供給される電気信号は、そこに情報が記録されているトラック176に、HGA110のヘッド110aがアクセスできるようにする。従って、VCMの電機子136は、アーム132により電機子136に取り付けられるHGA110が、ディスク120上の様々なトラックにアクセスできるようにする、円弧180を通って振れる。情報は、ディスク120のセクター、例えばセクター184内に配置された(図示されていない)複数の同心トラックにおいて、ディスク120に記憶される。それに見合って、各トラックは例えば扇形のトラック部分188である、複数の扇形のトラック部分から構成される。各々の扇形のトラック部分188は、記録されたデータ及び、サーボバースト信号パターン、例えばABCD−サーボバースト信号パターン、トラック176を識別する情報、及びエラー修正コード情報を含むヘッダーから成る。トラック176にアクセスする際、HGA110のヘッド110aの読み取り要素は、VCMのボイスコイル140に供給される電気信号を制御し、ヘッド110aがトラック176をトレースできるようにする、サーボ電子装置への位置エラー信号(PES)を供給するサーボバースト信号パターンを読み取る。トラック176を見出し、特定の扇形のトラック部分188を識別するに当たり、ディスクコントローラにより受信される、外部の動作主体、例えばコンピュータシステムのマイクロプロセッサからの指令に応じて、ヘッド110aはトラック176からデータを読み取るか、又はデータをトラック176に書き込む。
【0018】
本発明の実施形態はHGA110を含むHDD100もまた包含し、ディスク120はスピンドル124に回転可能に搭載され、アーム132はヘッド110aを含んでいる、スライダー110bを含むHGA110に取り付けられる。
【0019】
HDD100は、さらに密閉容器190を含む。密閉容器190は任意の気密密閉容器により具現化され得る。1つの実施形態において、密閉容器190は気密環境を提供するために密閉されている。ハードディスクドライブが製作され、満足度のために試験された後で、密閉容器190はHDDハウジング168及びHDD100の正規カバーの全体にわたり溶接、例えばレーザー溶接され得る。
【0020】
密閉容器190の目的は、周囲空気よりも軽いガスを収容することである。ここで議論されている特定の例において、密閉容器190内に収容されるガスは実質的にヘリウムガスである。本発明の別の実施形態において、密閉容器190は周囲空気よりも軽い、ヘリウム以外のガスを収容し得る。
【0021】
ここで、本発明の一実施形態による図2に関して、HGA110を含むヘッド−アーム組立品(HAA)の平面図が示されている。図2はHGA110に関するHAAの機能的配置を例証する。HAAはアーム132と、ヘッド110aを含むスライダー110bを含んでいるHGA110とを含む。HAAはキャリッジ134にアーム132の所で取り付けられている。複数のディスク、又はディスクとしての複数の円盤状記録媒体を有するHDDの場合は、この技術分野において時々言及され、キャリッジが櫛の外観を与えるアームの群れをなす配列を担うように配置されるため、キャリッジ134は「Eブロック」又は櫛と呼ばれる。図2に示すように、VCMの電機子136はキャリッジ134に取り付けられ、ボイスコイル140は電機子136に取り付けられる。AE160は図示されているようにキャリッジ134に取り付けられ得る。キャリッジ134は、中間に置かれた旋回軸受組立品152を伴う旋回軸148に搭載される。
【0022】
周囲空気よりも軽い環境におけるガス濾過の改善
1つの実施形態において、HDD100の密閉容器190はシールされ、ヘリウムのような周囲空気よりも軽いガスで満たされる。密閉容器190はヘリウム以外の周囲空気よりも軽いガスで満たされ得るが、具体例を提供する目的で、ヘリウムで満たされた密閉容器190に関して実施形態が議論されるであろう。
【0023】
HDD100が実質上ヘリウムの環境において動作するとき、ヘリウムガスによって伝達される、より低いエネルギーの結果として、乱流及びディスクのフラッターは大幅に低減される。しかしながら、同時に濾過はマイナスの影響を受ける。例えば、周囲空気において7200RPMで動作するハードディスクドライブ内では、毎分0.6リットル(L/min)の粒子清浄化割合を有し得るが、その一方、ヘリウムで満たされて動作する同じドライブは、0.15L/minの粒子清浄化割合を有し得る。粒子はまた表面に対して衝突することにより除去される可能性があり、従ってこのドライブの周囲空気における全体の清浄化割合は、各種のフィルターを用いて1.2〜1.4L/minであり得る。しかしながら、ヘリウムにおいて、全体の粒子清浄化割合は、その半分未満であり得る。粒子がハードディスクドライブのカバー又はベースに着地してその後に除去されない場合、これらの粒子は次に効果的に取り除かれる。しかしながら、粒子がディスク上に着地した場合、これはヘッド/ディスクのインターフェースに潜在的な危険性を与える。それゆえ、HDD100がヘリウム内で動作するとき、全体の粒子除去割合及び濾過により捕捉される粒子の割合の両方を増大させることが有利である。
【0024】
密閉容器190内のヘリウムガスの濾過を改善するため、複数の実施形態において周囲空気よりも軽いガスの中で動作するように特別に設計された粒子フィルターを採用し得る。1つの実施形態において、粒子フィルターを通じた十分な圧力降下を確保するため、ヘリウムガスはプレナムチャンバーを用いて粒子フィルターを通って方向付けられ得る。例えば、プレナムチャンバーの使用は、粒子フィルターを横切って23パスカル(Pa)〜27パスカル(Pa)の圧力降下を生み出し得る。それに加えて、粒子フィルターの面積は、粒子清浄化割合を増加させるために最大化され得る。例えば、粒子フィルターの幅はプレナムチャンバーの口の幅よりも大きくなり得る。粒子フィルターは、プレナムチャンバーの口の長さに少なくとも等しい幅を持つべきである。実際、幾つかの実施形態において、粒子フィルターの幅はプレナムチャンバーの口の約1.25倍〜約10倍であり得る。或る実施形態において、粒子フィルターはプレナムチャンバーの口の約2.3倍〜約5倍であり得る。ヘリウムは周囲空気よりも低い密度を有するため、粒子フィルターのサイズはそれを横切る十分な圧力降下を確実にし、そして濾過のための十分な面積を持つように選定されるべきである。また、粒子フィルターのサイズはHDDの設計の制約に対応すべきであり、例えば粒子フィルターが一旦HDD内に取り付けられると、粒子フィルターは収容され得るものよりも大きくあってはならない。ここで述べられる特定のサイズ範囲は、典型的なHDDの形状係数に不適合となるように大き過ぎることなく、これらの利点を達成するように示されている。
【0025】
プレナムチャンバーを通して利用できるガス流を完全に利用するため、粒子フィルターはプレナムチャンバーの口よりも大幅に広い面積を持つべきである。これは圧力が低い、ヘリウム内での動作のために望ましい。プレナムチャンバーの口における何らかの抵抗を伴わない、又は伴うヘリウムの圧力における比較的小さい差は、利用できる大量のガスが存在することを示す。従って、大きなフィルターはより多くのガスを濾過し、増強された粒子清浄化割合を生み出すであろう。
【0026】
図3Aは、本発明の一実施形態による粒子フィルター310を有するHDD300の図解である。明確化のため、図1及び2に描かれているハードディスクドライブの構成部品の全てが図3Aに示されているわけではない。図3Aにおいて、HDD300は2つのフィルター、すなわち粒子フィルター310及び11時フィルター320を持つとして描かれている。11時フィルター320は、時計面の11時に相当するその位置から、名前が由来する。粒子フィルター310の効率が、或る実施形態において、HDD100内に11時フィルター320を含む費用を不要にする位に十分であるため、11時フィルター320はオプションであることに注意されたい。
【0027】
図3Aは上流スポイラー330もまた描いている。上流スポイラー330は、HDD100の1つ以上の磁気記録ディスク120の間に挟まれた、1つ以上の羽根又は突起を有する。上流スポイラー330の形状は、1つ以上の磁気記録ディスク120が、図3Bにおいてプレナムチャンバー360として描かれている、プレナムチャンバーに対して回転しているときに循環する、ヘリウムガスの流れを方向付ける。上流スポイラーの羽根又は突起は、実質的に真直ぐで、羽根の位置とディスクスピンドルの中心との間の軸に沿って向けられているか、実質的に真直ぐで、羽根の位置とディスクスピンドルの中心との間の軸よりも、さらにディスクの回転方向に位置するように向けられているか、又は湾曲形状を持つような、様々な実施形態において異なって形作られ得る。上流スポイラー330の羽根はまた、1つ以上の磁気記録ディスク120の間で、1つの実施形態におけるディスクの外径(OD)から内径(ID)迄の距離の0.1倍以上で0.95倍以下だけ延び得る。代わりに、上流スポイラー330の羽根はまた、1つ以上の磁気記録ディスク120の間で、1つの実施形態におけるディスクの外径(OD)から内径(ID)迄の距離の0.2倍以上で0.75倍以下だけ延び得る。
【0028】
図3Bは、図3Aに示される粒子フィルター310の拡大図を描いている図解である。図3Bは、1つ以上の磁気記録ディスク120の周囲の大部分を取り囲む環状要素である、隔壁350を表現する。プレナムチャンバー360は、ヘリウムガスの循環流の一部分が、その中に流れることを可能にする口を有する。1つの実施形態において、プレナムチャンバー360の口は、HDD100が作動中に循環するヘリウムガスの流れにおいて、上流スポイラー330の手前に位置する隔壁350内の隙間380である。代わりに、プレナムチャンバー360の口は隔壁350及び上流スポイラー330の中の隙間380であり得る。言い換えれば、プレナムチャンバー360の口は隔壁350からのみ形成される必要はなく、1つ以上の隔壁350及び上流スポイラー330を用いてもまた形成され得る。1つの実施形態において、隙間380の長さは隔壁350との不必要な途切れを避けるため、最小化され得る。
【0029】
図3Bに示すように、粒子フィルター310は湾曲形状を有する。粒子フィルター310の各端部は、図3Bに描かれるように、隔壁350及び/又は上流スポイラー330のような、隙間380の両側にある構造に取り付けられ得る。粒子フィルター310は、1つ以上の磁気記録ディスク120に比べて、隔壁350の反対側にある。
【0030】
図3Bに示すように、プレナムチャンバー360の一部分は、隙間380に対向している粒子フィルター310を用いて形成される。粒子フィルター310の幅は隙間380の幅よりも広い。実際、粒子フィルター310の幅は、隙間380の幅の1.25倍〜5倍であり得る。
【0031】
図4Aは、本発明の一実施形態による粒子フィルター410を有するHDD400の図解である。前のように、明確化のため、図1及び2に描かれているハードディスクドライブの構成部品の全ては図4Aに示されていない。図4Bは、図4Aに示される粒子フィルター410の拡大図を描いている図解である。
【0032】
図4Bに示すように、粒子フィルター410は直線形状を有する。粒子フィルター410の各端部は、隔壁450及び/又は上流スポイラー430から延びる突起470に取り付けられている。粒子フィルター410は、1つ以上の磁気記録ディスク120に比べて、隔壁450の反対側にある。粒子フィルター410の両端は様々な異なる機構を用いて突起470に取り付けられ得る。例えば、1つの実施形態において、突起470及び粒子フィルター410のうちの1つは、その中に溝又は窪みを有し得る。そして、もう1つの突起470及び粒子フィルター410は、溝又は窪みの中に適合するように形作られた延長部又は突起を有し得る。このように、粒子フィルター410は、粒子フィルター410を所定位置に固定するために、延長部又は突起を溝又は窪み内へと位置決めすることにより、突起470に取り付けられ得る。同様に、粒子フィルター310は、隔壁350又は上流スポイラー330に対して同じやり方で取り付けられ得る。代わりに、粒子フィルター310又は410は、例えば(加熱カシメなどの)接合によるか又は接着剤を用いるような、異なるアプローチを使って構成部品に対して取り付けられ得る。
【0033】
図4Bに描かれていないが、粒子フィルター310が図3Bにおいて湾曲形状を持って示されているように、粒子フィルター410もまた湾曲形状を有し得る。言い換えれば、一定の実施形態において、湾曲形状を有する粒子フィルターがやはり突起470に取り付けられ得る。
【0034】
図5A及び5Bは、本発明の一実施形態による粒子フィルター500の側面図及び上面図である。図5の粒子フィルター500は、或る実施形態において粒子フィルター310又は粒子フィルター410として使用され得る。粒子フィルター500は、高透磁率のスクリム550により、両側を囲まれた活性炭層又は炭素成分555を含む。代わりに又は追加として、層555は汚染物質の強化された捕捉を可能にする、追加の処理を含み得る。代わりに又は追加として、層555は静電フィルター媒体を含むか、又はそれに相当し得る。
【0035】
1つの実施形態において、粒子フィルター500は上流スポイラーを含む組立品に取り付けられ得る。そのような場合、上流スポイラーを含む組立品は、組み立て中にHDD内へ挿入される別の構成部品であり得る。代わりに、粒子フィルター500が上流スポイラーを含む組立品の中のスロットへと挿入され得る。HDDの内側に粒子フィルターを取り付けるための別のオプションは、粒子フィルター500を上流スポイラーに対して正しく方向付けるように、粒子フィルター500をHDDのベースのメタルへと鋳造された形の中へ挿入することであろう。
【0036】
前述の明細書において、本発明の実施形態は、実施ごとに変化し得る数多くの具体的な詳細に関連して記述されている。従って、何が本発明であり、何が本発明となるために出願者により意図されているかの唯一で独特の指標は、その後に続くあらゆる修正を含む、そのような請求項が公表する特定の形態における、この出願から公表する請求項のセットである。そのような請求項に含まれる用語に関して、ここで明確に述べられている、あらゆる定義は、請求項において使われるそのような用語の意味を支配するものとする。それゆえ、請求項の中で明確に列挙されていない、限定、要素、特性、特徴、利点、又は属性は、どんな種類でもそのような請求項の範囲を制限すべきではない。明細書及び図面は、従って制限的な感覚よりもむしろ説明的感覚で考えられるべきである。
【符号の説明】
【0037】
100 HDD
110 HGA
110a ヘッド
110b スライダー
110c 導線の懸架部
110d ロードビーム
120 ディスク
124 スピンドル
128 ディスククランプ
132 アーム
134 キャリッジ
136 電機子
140 ボイスコイル
144 固定子
148 旋回軸
152 旋回軸受組立品
156 フレキシブルな電線
160 アーム−電子装置(AE)モジュール
164 電気コネクターブロック
168 HDDハウジング
172 方向
176 トラック
180 円弧
184 セクター
188 扇形のトラック部分
190 密閉容器
300 HDD
310 粒子フィルター
320 11時フィルター
330 上流スポイラー
350 隔壁
360 プレナムチャンバー
380 隙間
400 HDD
410 粒子フィルター
420 11時フィルター
430 上流スポイラー
450 隔壁
460 プレナムチャンバー
470 突起
500 粒子フィルター
550 高透磁率のスクリム
555 層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードディスクドライブであって、
実質的にヘリウムガスで満たされているシールされた密閉容器と、
磁気記録ヘッドと、
スピンドルに回転可能に搭載された磁気記録ディスクと、
前記磁気記録ディスクを回転させるための前記スピンドルに取り付けられたモーター軸を有する駆動モーターと、
前記磁気記録ディスクの部分にアクセスするため、前記磁気記録ヘッドを動かすように構成されたボイスコイルモーターと、
前記磁気記録ディスクの周囲の大部分を取り囲む隔壁と、
1つ以上の羽根を有する上流スポイラーであって、前記上流スポイラーの形状が、前記磁気記録ディスクが回転するとき、循環する前記ヘリウムガスの流れをプレナムチャンバーへと方向付ける、上流スポイラーと、
前記プレナムチャンバーであって、前記ヘリウムガスの循環流の一部が内部に流れ込むことを可能にする口を有し、当該口が前記ヘリウムガスの循環流の中で前記上流スポイラーの手前にある前記隔壁の隙間である、プレナムチャンバーと、
を備え、
前記プレナムチャンバーの一部が、前記隙間に対向する粒子フィルターからなる、
ハードディスクドライブ。
【請求項2】
前記粒子フィルターが湾曲形状を有し、前記粒子フィルターの端部が前記隔壁に取り付けられる、
請求項1に記載のハードディスクドライブ。
【請求項3】
前記粒子フィルターが前記隙間よりも大きな面積を有する、
請求項1に記載のハードディスクドライブ。
【請求項4】
前記粒子フィルターが前記隙間の2.3〜5倍の幅を有する、
請求項1に記載のハードディスクドライブ。
【請求項5】
前記粒子フィルターが直線形状を有し、前記粒子フィルターの前記端部が前記隔壁から延びる突起に取り付けられ、前記粒子フィルターが前記隔壁に対して前記磁気記録ディスクとは反対側にある、
請求項1に記載のハードディスクドライブ。
【請求項6】
前記粒子フィルターが湾曲形状を有し、前記粒子フィルターの前記端部が前記隔壁から延びる突起に取り付けられ、前記粒子フィルターが前記隔壁に対して前記磁気記録ディスクとは反対側にある、
請求項1に記載のハードディスクドライブ。
【請求項7】
加熱カシメ、接合、若しくは接着剤を用いることにより、又は突起若しくは延長部を溝若しくは窪みの中へスライドさせることにより、前記粒子フィルターが固定される、
請求項1に記載のハードディスクドライブ。
【請求項8】
前記粒子フィルターが静電フィルター媒体を含む、
請求項1に記載のハードディスクドライブ。
【請求項9】
前記粒子フィルターが、静電フィルター媒体の層の間に配置された活性炭層又は炭素成分を含む、
請求項1に記載のハードディスクドライブ。
【請求項10】
前記隔壁がバイパス流路を持たない、
請求項1に記載のハードディスクドライブ。
【請求項11】
前記ハードディスクドライブが11時フィルターを有する、
請求項1に記載のハードディスクドライブ。
【請求項12】
前記粒子フィルターは、前記ヘリウムガスの循環流がそこを通り抜けるとき、23〜27パスカル(Pa)の圧力降下を示す、
請求項1に記載のハードディスクドライブ。
【請求項13】
ハードディスクドライブであって、
実質的にヘリウムガスで満たされているシールされた密閉容器と、
ディスクと、
隔壁と、
1つ以上の羽根を有するスポイラーであって、前記スポイラーの形状が、前記ディスクの回転時に、循環する前記ヘリウムガスの流れをプレナムチャンバーへと方向転換させる、スポイラーと、
前記プレナムチャンバーであって、前記ヘリウムガスの循環流の一部が内部に流れることを可能にする口を有する、プレナムチャンバーと、
を備え、
前記プレナムチャンバーの一部が、前記隙間に対向する粒子フィルターからなり、
前記粒子フィルターが前記隙間の2.3〜5倍の幅を有する、
ハードディスクドライブ。
【請求項14】
前記粒子フィルターが湾曲形状を有し、前記粒子フィルターの端部が前記隔壁に取り付けられる、
請求項13に記載のハードディスクドライブ。
【請求項15】
前記粒子フィルターが直線形状を有し、前記粒子フィルターの前記端部が前記隔壁から延びる突起に取り付けられ、前記粒子フィルターが前記隔壁に対して前記磁気記録ディスクとは反対側にある、
請求項13に記載のハードディスクドライブ。
【請求項16】
前記粒子フィルターが湾曲形状を有し、前記粒子フィルターの前記端部が前記隔壁から延びる突起に取り付けられ、前記粒子フィルターが前記隔壁に対して前記磁気記録ディスクとは反対側にある、
請求項13に記載のハードディスクドライブ。
【請求項17】
前記粒子フィルターが静電フィルター媒体を含む、
請求項13に記載のハードディスクドライブ。
【請求項18】
前記粒子フィルターが、静電フィルター媒体の層の間に配置された活性炭層又は炭素成分を含む、
請求項13に記載のハードディスクドライブ。
【請求項19】
前記隔壁がバイパス流路を持たない、
請求項13に記載のハードディスクドライブ。
【請求項20】
前記ハードディスクドライブが11時フィルターを有する、
請求項13に記載のハードディスクドライブ。
【請求項21】
前記粒子フィルターが、前記ヘリウムガスの循環流がそこを通り抜けるとき、23〜27パスカル(Pa)の圧力降下を示す、
請求項13に記載のハードディスクドライブ。
【請求項22】
ハードディスクドライブであって、
周囲空気よりも軽いガスで満たされているシールされた密閉容器と、
ディスクと、
隔壁と、
1つ以上の羽根を有するスポイラーであって、前記スポイラーの形状が、前記ディスクの回転時に、循環する前記ガスの流れをプレナムチャンバーへと方向転換させる、スポイラーと、
前記プレナムチャンバーであって、循環する前記ガスの流れの一部が内部に流れることを可能にする口を有する、プレナムチャンバーと、
を備え、
前記プレナムチャンバーの一部が、前記隙間に対向する粒子フィルターからなり、
前記粒子フィルターが前記隙間の2.3〜5倍の幅を有する、
ハードディスクドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2013−84340(P2013−84340A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−226076(P2012−226076)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【出願人】(503116280)エイチジーエスティーネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】