説明

粒子を製造するためのプラズマ・スパッタリング・プロセス

10μm以下のサイズを有する粒子を製造するための、高い生産速度の、プラズマ・スパッタリング・プロセスが開示される。このプロセスは、スパッタされたターゲット原子の少なくとも一部をイオン化させ、グレインの表面での、イオン化されスパッタされたターゲット原子の、ピックアップ可能性が高いようなパラメータで、実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く、小さい粒子を、即ち、10μm以下のサイズを有する粒子を、製造するためのプラズマ・スパッタリング・プロセスに係る。特に、本発明は、スパッタされたターゲット原子がプラズマによりイオン化される、プラズマ・スパッタリング・プロセスに係る。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は、超微細粒子であって、そのサイズは、1μm未満であり、しばしば、100nm未満である。それらは、それらの小さなサイズ及び高い表面対体積の比によりもたらされる、ユニークな性質のために、かなりの注目を集めている。ナノ粒子が、様々な技術分野において利用され、それは、半導体、ナノ複合材料、触媒、及び、バイオケミカルの用途に及んでいる。
【0003】
ナノ粒子を製造するために、多くの可能性があり、それは、例えば、ソル・ゲル法、化学的蒸着法(CVD)、及び、水熱(hydrothermal)及びスプレイ・パイロリシス(spray pyrolysis)法などである。近年、プラズマを使用して粒子を製造するための方法が、開発されている。これらのプロセスは、粒子の核形成、粒子の成長、及び粒子表面へのコーティングの堆積のために、使用されることが可能である。プラズマを使用するプロセスは、とりわけ、副生物の量が少なく、高純度の粒子が形成され、そして、キャリア・ガスからの粒子の分離が容易である、と言う優位性を有している。
【0004】
そのような方法の一つの例が、US−2008/0271987の中に開示されていて、その中で、プロセス・ガス及び雰囲気ガスを反応室の中に導入し、パルス・モードでプラズマを作用させることにより、ナノ粒子が形成されている。プラズマによりナノ粒子を製造するための方法の他の例が、例えば、US−7,297,619及びUS−2009/0014423の中に、開示されている。
【0005】
粒子を(特にナノ粒子を)製造するためにプラズマを使用する方法の特別な例は、プラズマ・スパッタリング・プロセスである。スパッタリングは、ターゲット表面からの原子の物理的な放出である。このプロセスにおいて、イオン、例えば、アルゴン・イオンが、プラズマの中で生成され、プラズマから引き出され、そして、カソードのダーク・スペースを横切って加速される。ターゲットは、プラズマが形成される領域と比べて低い電位を有していて、ターゲット表面は、それ故に、正のイオンを引き付ける。正のイオンは、高い速度でターゲットの方へ移動し、次いでターゲットに衝突し、原子をターゲット表面から物理的に引き離し、即ちスパッタする。
【0006】
このプラズマ・スパッタリング・プロセスは、とりわけ、粒子が固体のターゲットの材料から形成されると言う優位性を有している。ターゲットは、容易に製造され且つプロセスの中で容易に使用されることが可能である。粒子が金属材料から形成される場合には、固体のターゲットは、特に適切である。その理由は、それが、金属種を含むガスに対する必要性を取り除くからであり、そのようなガスは、しばしば、毒性を有し、且つ、複雑な製造方法を必要とする。
【0007】
DE 198 04 838 は、中空カソード・システムを使用して、コーティング材料を堆積するための、または、粒子の表面にラジカルを作り出すための、プラズマ・スパッタリング・プロセスを開示している。このプロセスは、0.01mbarから大気圧までの圧力で、好ましくは,0.01〜100mbarの圧力で、行われる。プラズマは、パルス・プラズマであっても良く、それは、圧力をコントロールすることにより、且つ、50〜60Hzの電力周波数で作動されることにより、実現されている。200〜500Vの電圧及び0.1〜2A電流が、プラズマを形成するために使用されている。
【0008】
粒子を製造するための、従来から知られているプラズマ・スパッタリング・プロセスについての問題は、粒子の表面への原子のピックアップの可能性が、一般的に低いと言うことである。それ故に、粒子および/またはコーティングは、遅い成長速度を有していて、それにより、粒子の低い生産速度がもたらされる。更に、生産速度がそのように低いので、これらの方法は、数マイクロメータの範囲内のサイズを有する粒子を製造するために、あまり適切ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公開第US−2008/0271987号公報
【特許文献2】米国特許第US−7,297,619号明細書
【特許文献3】米国特許公開第US−2009/0014423号公報
【特許文献4】独国特許公開第DE−198 04 838号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、10μm以下のサイズを有する粒子を製造するための、プラズマ・スパッタリング・プロセスを提供することであり、このプロセスは、改善された生産速度を有している。
【0011】
この目的は、独立請求項1に基づくプロセスにより実現される。好ましい実施形態は、従属請求項により規定されている。
【0012】
粒子を製造するためのプラズマ・スパッタリング・プロセスは、プラズマ発生装置の中にターゲットを供給することを有していて、ここで、このプラズマ発生装置は、特性長Lを有していて、但し、Lは、Lが前記プラズマ発生装置の中で生成されるプラズマの体積に等しくなるような値である。プロセス・ガスが装置の中に導入され、前記プラズマ発生装置の内側の圧力が、予め定められたプロセス・ガスの数密度nが得られるようにコントロールされる。プラズマが作り出され、このプラズマに供給されるエネルギーは、予め定められたプラズマ電子の数密度n及び予め定められたプラズマ電子の温度Tが得られるように、コントロールされる。原子は、プラズマによりターゲットからスパッタされ、スパッタされたターゲット原子は、前記プラズマ発生装置の中に存在するグレインの表面にピックアップされることが可能になる。
【0013】
前記プラズマ電子の数密度及びプラズマ電子の温度は、スパッタされたターゲット原子の少なくとも一部をイオン化させるために十分なものであって、それによって、グレインの表面での、イオン化されスパッタされたターゲット原子のピックアップ・フラックスが得られるようになる。
【0014】
更に、前記プロセス・ガスの数密度、プラズマ電子の数密度、及びプロセスのプラズマ電子の温度は、下記のような関係にある:
ITA/L≦0.5
但し、LITAは、前記プラズマの内側でのイオン化されスパッタされたターゲット原子平均自由行路である。
【0015】
プラズマ発生装置は、カソードを不必要に加熱することなく、または、望ましくない放電のリスクを伴うことなく、十分な電源を得るために、パルス電源により運転される。
【0016】
好ましい実施形態によれば、前記プロセス・ガスの数密度、プラズマ電子の数密度、及びプラズマ電子の温度は、下記のような関係にある:
ΓITA/(ΓITA+ΓNTA)≧0.5
好ましくは、ΓITA/(ΓITA+ΓNTA)≧0.66
より好ましくは、ΓITA/(ΓITA+ΓNTA)≧0.70
但し、ΓITAは、前記プラズマの中に存在するグレインの表面での、イオン化されたターゲット原子のピックアップ・フラックスであり、
ΓNTAは、グレインの表面での、前記プラズマの中に存在する中性ターゲット原子のピックアップ・フラックスである。
【0017】
他の好ましい実施形態によれば、前記プロセス・ガスの数密度、プラズマ電子の数密度、及びプラズマ電子の温度は、下記のような関係にある:
(1+3L/LITA)(1+4W/WITA)>10
但し、WITAは、前記プラズマの中の、イオン化されスパッタされた原子の平均運動エネルギーであり、
は、前記プラズマの内側の平均の電子運動エネルギーであって、W=(3/2)k を介して、Tに関係付けられる。
【0018】
他の実施形態によれば、プラズマに供給されるエネルギーは、前記プラズマの中のスパッタされた原子の、少なくとも20%を、好ましくは、少なくとも30%を、イオン化させるために十分な値である。粒子の生産速度は、イオン化されスパッタされたターゲット原子の量の増大に伴い増大する。
【0019】
プラズマ発生装置は、適切には、中空カソード装置またはマグネトロン・スパッタリング装置であっても良い。各パルスで得ることが可能な電力を最大にするために、パルスは、好ましくは、本質的に矩形パルスとして印加されるべきである。
【0020】
パルス電源を使用するとき、パルスは、好ましくは、少なくとも100Hzの周波数で、適切には、200〜2,000Hzの周波数で、印加されるべきであり、また、少なくとも5マイクロ秒の継続期間、好ましくは、10〜100マイクロ秒の継続期間を有しているべきである。
【0021】
好ましい実施形態によれば、前記プロセス・ガスの数密度n及び電子の数密度nは、下記の両方が満足されるような関係にある:
ITA/L≦0.5 及び WITA/W≦0.5
【0022】
プロセス・ガスは、不活性ガス、反応性ガス、不活性ガスのガス混合物、または、少なくとも一つの反応性ガスを有するガス混合物であっても良く、また、オプションとして、少なくとも一つの不活性ガスであっても良く、また、適切に、プラズマを生成するために使用されても良い。プロセス・ガスは、好ましくは、供給ガスとして使用されても良いが、プロセス・ガスが静止していて、何らかの種類の粒子状物質の移送のために意図されていないこともまた可能である。
【0023】
グレインは、プラズマ発生装置の中に導入されても良く、または、インサイチューに(in-situ)生成されても良い。
【0024】
このプラズマ・スパッタリング・プロセスは、ナノ粒子を製造するために、即ち、1μm未満のサイズを有する粒子を製造するために、特に、約5〜500nmのサイズを有する粒子を製造するために、特に適切である。しかしながら、このプロセスは、10μmのオーダーの粒子などのような、より大きな粒子を製造するために使用されても良い。
【0025】
このプロセスは、ターゲット材料が導電性または少なくとも半導電性である限りにおいて、全てのタイプのターゲット材料の粒子を製造するために使用されても良い。更に、例えば、酸化物、炭化物、窒化物などの、化合物材料の粒子が、プロセスの間に、反応性ガスを使用することにより、作り出されても良い。
【0026】
本発明に基づくプロセスは、粒子を凝集させるため、粒子を成長させるため、一つの材料の粒子を作り出すため、前記粒子を同一または異なる材料で被覆するため、多層構造を成長させるため、その他のために、使用されることが可能である。このようにして、このプロセスは、テーラーメイドの粒子の製造を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、イオン化されスパッタされたターゲット原子のピックアップ可能性に対する曲線を、中性のスパッタされたターゲット原子と比較して、WITA/W 及び LITA/L の関数として示している。
【図2a】図2aは、チタンの中空カソードを使用するプラズマ・スパッタリング・プロセスのための、光学的な分光器により得られたスペクトラムを示していて、ここで、プラズマは、パルス電源により生成されている。
【図2b】図2bは、チタンの中空カソードを使用するプラズマ・スパッタリング・プロセスに対する、光学的な分光器により得られたスペクトラムを示していて、ここで、プラズマは非パルス電源により生成されている。
【図2c】図2cは、チタンの中空カソードを使用するプラズマ・スパッタリング・プロセスに対する、イオンと中性粒子との間の比を、パルスの継続期間の関数として示していて、また非パルス電源を使用するプラズマ・スパッタリング・プロセスに対する、イオンと中性粒子との間の比を示している。
【図3a】図3aは、本発明に基づくプロセスの実施形態に基づいて作り出されたモリブデン粒子のSEM写真を示している。
【図3b】図3bは、異なる倍率で図3aの中に示された粒子のSEM写真を示している。
【図3c】図3cは、本発明に基づくプロセスの実施形態に基づいて作り出されたモリブデン粒子のTEM写真を示している。
【図3d】図3dは、本発明に基づくプロセスの実施形態に基づいて作り出されたモリブデン粒子のSEM写真を示している。
【図4a】図4aは、本発明に基づくプロセスの実施形態に基づいて作り出されたチタン粒子のTEM写真を示している。
【図4b】図4bは、本発明に基づくプロセスの一つの実施形態に基づいて作り出されたチタン粒子のTEM写真を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この開示において、“粒子を製造する”、“粒子の製造”、“作り出された粒子”との用語、または、同様な表現は、他の意味として明示的に開示されていない場合には、それらの最も広い意味で解釈されるべきである。このようにして、これらの用語は、粒子の成長、核形成、及び粒子の成長、予め形成された粒子または粒子核その他の上への材料の堆積、を含んでいる。
【0029】
更に、用語:“グレイン”は、まだその完成状態にない粒子のために使用され、この用語は、このようにして、完成された粒子を作り出すために材料がその上に堆積されるところの予め形成された粒子または粒子の核を含んでいる。
【0030】
用語:“粒子”は、他の意味として明示的に開示されていない場合には、プロセスから生じた完成された粒子に対して使用される。
【0031】
更に、温度(例えば、T,TITA及びT)がこの開示の中で言及されているとき、これは、広い意味で解釈されるべきであり;それらは、平均粒子エネルギーが真の平均粒子エネルギーに一致する温度であって、例えば、We=(3/2)kである。
【0032】
本発明に基づくプロセスは、小さい粒子を、即ち、10μm未満のサイズを有する粒子を、作り出すためにプラズマ・スパッタリングを使用する。スパッタリングは、ターゲット表面からの原子の物理的な放出である。プラズマ・スパッタリング・プロセスの中で、イオンは、例えばアルゴン・イオンは、プラズマの中で生成され、プラズマから引き出され、そして、カソードのダーク・スペースを横切って加速される。ターゲットは、プラズマがその中で形成される領域と比べて低い電位を有していて、ターゲット表面は、それ故に、正のイオンを引き付ける。正のイオンは、高い速度でターゲットの方へ移動し、次いで、ターゲットと衝突して、原子を、ターゲット表面から物理的に離脱させ、即ちスパッタする。
【0033】
プラズマは、このようにして、ターゲットの表面をエッチングして、原子を作り出し、これらの原子は、前記プラズマの中に存在するグレインの表面にピックアップされることにより、粒子を作り出すために使用される。原子の一部は、プラズマの中でイオン化されることになる。スパッタされ、イオン化される原子の量は、プラズマの密度、電子のエネルギー、及び原子のタイプに依存する。そのようなプラズマ・スパッタリングは、従来から知られているプロセスであって、それ故に、この開示の中でより詳細に説明されることはない。
【0034】
本発明に基づくプラズマ・スパッタリング・プロセスは、高い密度のプラズマを使用し、それは、ターゲットからスパッタされる原子のかなりの量が、プラズマの中でイオン化されることを確保する。イオン化される原子の量は、プラズマの密度に依存していて、プラズマ密度の増大に伴い増大する。
【0035】
原子がグレインと衝突するとき、グレインは、ターゲットからスパッタされた原子をピックアップすることが可能である。中性のスパッタされた原子は、それらがグレインの幾何学的な断面に衝突したときに、グレインの表面でピックアップされることのみが可能であり、衝突の可能性は、それ故に低い。しかしながら、グレインは、一般的に、プラズマにより負にチャージされるので、もし、スパッタされたターゲット原子がイオンの形態である場合には、グレインとスパッタされた原子との間の衝突の可能性が増大されることが可能である。
【0036】
イオン化されスパッタされた原子は、グレインの周りの電場の結果として、グレインの周りの軌道の中に入り易い。それ故に、スパッタされた原子が正にチャージされている場合、グレインは、正のイオンを引き付けることが可能であり、それにより、グレインの表面での、スパッタされた原子のピックアップの可能性の増大をもたらす。グレインの表面での、原子のピックアップの可能性は、例えば、プラズマの密度の増大に伴い、即ち、プラズマ電子の数密度の増大に伴い、それ故に増大する。
【0037】
本発明に基づくプラズマ発生装置の中で使用される高い圧力は、即ち、プロセス・ガスの数密度は、とりわけ、スパッタされた原子の速度が、従来の運転圧力が使用される場合より低くなると言うことを確保する。スパッタされた原子の速度が、比較的低いので、グレインが、イオン化された原子を引き付けることが可能になり易く、とりわけ、原子が、プラズマの中でより長い滞留時間を有していて、衝突の可能性がそれ故に増大されているときに、そのようになる。それ故に、本発明に基づき使用される、予め定められたプロセス・ガスの数密度は、グレインの表面でのピックアップ可能性及び原子の速度を増大させ、それにより、粒子のより高い生産速度をもたらす。
【0038】
本発明に基づくプロセスにおいて、原子が、ターゲットからスパッタされて、グレインによりピックアップされる可能性は、通常使用されるプロセスの場合と同様に、中性粒子との衝突及び粒子の幾何学的な広がりに依存するのみでなく、イオン−イオン衝突に起因する経路の長さの増大に、そして、正のイオンと負の粒子との間の引力に起因するグレインの周りのトラッピング体積の増大にも依存する。このようにして、本発明に基づくプロセスにより粒子の生産速度が大幅に増大されると言うことが、明らかである。
【0039】
本発明のプラズマ・スパッタリング・プロセスに基づき、前記プラズマ電子の数密度n及びプラズマ電子の温度Tは、スパッタされたターゲット原子の少なくとも一部のイオン化を引き起こし、且つ、イオン化されスパッタされたターゲット原子の、グレインへのピックアップ・フラックスを作り出すために、十分なものである。好ましくは、前記プロセス・ガスの数密度n、プラズマ電子の数密度n、及びプラズマ電子の温度Tは、グレインの表面での、中性のスパッタされた原子のピックアップ・フラックス“ΓNTA”と比べて高い、グレインの表面での、イオン化されスパッタされたターゲット原子のピックアップ・フラックス“ΓITA”を、生じさせるために十分なものである。
【0040】
このプロセスは、下記のような関係が満足されるように行われる:
ITA/L≦0.5
好ましくは、このプロセスは、この基準:LIA/L≦0.5 に加えて、以下の三つの基準の内の少なくとも一つが満足されるように行われる:
ΓITA/(ΓITA+ΓNTA)≧0.5
ITA/W≦0.5 及び
(1+3L/LITA)(1+4W/WITA)>10
【0041】
但し、ΓITAは、グレインの表面での、イオン化されたターゲット原子のピックアップ・フラックスであり、
ΓNTAは、グレインの表面での、中性ターゲット原子のピックアップ・フラックスであり、
ITAは、前記プラズマの内側での、イオン化されスパッタされたターゲット原子の平均自由行路であり、
ITAは、前記プラズマの中での、イオン化されスパッタされた原子の平均運動エネルギーであり、
は、前記プラズマの内側での平均の電子運動エネルギーであって、W=(3/2)k を介して、Tに関係付けられる。
【0042】
大幅に増大された生産性が、本発明に基づくプラズマ・スパッタリング・プロセスにより実現されることが可能であることが、見出されている。これは、主として、グレインの表面での、イオン化されたターゲット原子のピックアップ可能性“ITA”が、中性ターゲット原子のピックアップ可能性“NTA”と比べて大幅に高いと言うことの結果である。
【0043】
イオン化されたターゲット原子の高いピックアップ・フラックスは、特定のパラメータ・レジュームの中でプラズマ・スパッタリング装置を運転することにより実現され、そのレジュームは、先に開示されているように、下記のパラメータにより規定される:プロセス・ガスの数密度n、プロセス・ガス温度T、プラズマの電子の数密度n、プラズマの電子の温度T、及び、特性長L。特性長Lは、“L”が前記装置の中で生成されるプラズマの体積に等しいような値であって、ここで、プラズマ体積は、下記の式のように、その中で、装置の壁面までの距離が、プラズマのデバイ長(Debye length)と比べて長い領域として規定される:
λ=√(ε/(n))
【0044】
そのような特定のパラメータ・レジュームで運転することにより、スパッタされたターゲット原子のかなりの量“TA”が、プラズマの中でイオン化されると言うこと、及び、イオン化されたターゲット原子のピックアップ効率“ITA”が、中性ターゲット原子のピックアップ効率“NTA”と比べて大幅に高いと言うことが確保される。
【0045】
イオン化の要求される程度 nITA/(nNTA+nITA) は、電子衝突によるターゲット原子のイオン化に対する可能性が、プラズマの中でのそれらの滞在時間の間に、かなり大きくなるように、十分に高いn及びTで運転することにより得られる。高いn及びTは、プラズマに十分に高いエネルギーを提供することにより実現される。
【0046】
イオン化されスパッタされたターゲット原子要求される高いピックアップ効率“ITA”は、二つの効果の組み合わせにより得られ、それらの効果は、ITA衝突の平均自由行路が、装置の特性長Lと比べて小さいときに、共に出現する。第一の効果は、ITAの平均運動エネルギー“WITA”が、平均の電子運動エネルギーWより低くなるときに、ピックアップ速度が、負にチャージされたグレインへのITAの静電的な引力を介して、ドラスチックに増大すると言うことである。但し、Wは、W=(3/2)k を介して、Tに関係付けられ、ここで、kはボルツマン定数である。要求される低い WITA は、プロセス・ガスとの熱運動化(thermalizing)衝突のためのITA平均自由行路が、Lと比べて遥かに小さくなるように、nを高く維持することにより実現される。
【0047】
第二の効果は、運動量交換衝突に対するより小さい平均自由行路が、ITAのより長い滞留時間を与え、それにより、プラズマ領域から出る前に、プラズマの中に存在するグレインにピックアップされることがあるITAのフラクションを増大させると言うことである。ITAと充填ガスとの間の衝突、及びITAとプラズマ・イオンとの間の衝突の両者は、プラズマの中でのITAのより長い滞留時間に寄与する。ITAとガスとの間のより高い衝突速度は、より高いプロセス・ガス密度により実現され、それは、プロセス・ガスの数密度nにより規定される。ITAとプラズマ・イオンとの間のより高い衝突速度は、より高いプラズマ密度(プラズマ電子の数密度nにより規定される)と、より低いITAの平均エネルギーWITAとの、組み合わせにより実現され、後者は、イオン−イオンのクーロン衝突断面積が、WITAの減少に伴い増大するためである。
【0048】
本発明のプラズマ・スパッタリング・プロセスによれば、パラメータn,T,n及びTは、このようにして、以下にまとめられているようにコントロールされる。
【0049】
プロセス・ガスの数密度nは、高くなければならず、それは、イオン化されスパッタされたターゲット原子“ITA”を効率良く熱運動化し、且つプラズマの中でのITAの滞留時間を増大させるためである。
【0050】
プロセス・ガス温度TGは、低くなければならず、それは、イオン化されスパッタされたターゲット原子“ITA”の低い平均運動エネルギーを得るためであって、それは、次に、グレインへのより効率の良い静電的なピックアップをもたらし、そして、クーロンのイオン−イオン衝突へのその影響を介して、ITAのより長い滞留時間に寄与する。
【0051】
プラズマの電子の数密度nは、高くなければならず、それは、スパッタされたターゲット原子を、プラズマの中でのそれらの滞在時間の間にイオン化して、イオン化されスパッタされたターゲット原子の、前記プラズマの中でのより長い滞留時間に寄与するためである。
【0052】
プラズマの電子の温度は、高くなければならず、それは、スパッタされたターゲット原子の、プラズマの中でのそれらの滞在時間の間でのイオン化を可能にして、ITA,WITAの平均運動エネルギーを平均電子熱エネルギーWより遥かに低くを維持するためである。
【0053】
このようにして、以上に示されたパラメータをコントロールすることにより、中性ターゲット原子の、グレインの表面へのピックアップ・フラックスと比較して、イオン化されたターゲット原子の、大幅により高いピックアップ・フラックスを実現することが可能である。本発明に基づくプラズマ・スパッタリング・プロセスの生産性は、それ故に、従来の、粒子を製造するためのプラズマ・スパッタリング・プロセスの生産性と比べて大幅に高い。
【0054】
以上に規定されたパラメータの適切な特定の値が、使用されるプラズマ発生装置の種類、並びに、装置の寸法、及び粒子を製造するために使用される材料に依存することは、当業者にとって明白である。しかしながら、当業者は、選択されたプラズマ発生装置のためのパラメータの特定の値、及び粒子を製造するために使用される材料を、容易に決定することができるであろう。但し、それらは、イオン化されスパッタされたターゲット原子の、グレインの表面へのピックアップ・フラックスが得られるように、スパッタされたターゲット原子のかなりの量が、プラズマによりイオン化されると言う基準を満足していなければならない。
【0055】
本発明のプロセスによれば、下記の関係が満足される:
ITA/L≦0.5
この基準が満足されるとき、作り出されたITAは、粒子の成長のために効率良く使用される。より短い平均自由行路は、より遅い拡散、及び、イオン化されスパッタされたターゲット原子の、プラズマ体積の内側でのより長い滞在時間をもたらす。このようにして、装置の壁面へ逃れる可能性と比べて、グレインによりピックアップされるより大きな可能性が得られる。より短いLITAはまた、成長プロセスの間の、プラズマの中の高いグレイン密度に対する必要性を減少させる。その理由は、ITA滞在時間がより長くなり、ITAは、所与のグレイン密度でグレインにピックアップされるより大きな機会を有しているからである。先に論じられたように、イオン−中性(ITA−ガス)衝突と、イオン−イオン(ITA−プラズマ・イオン)衝突との両方が、より長い拡散時間に寄与する。
【0056】
本発明の一つの実施形態によれば、下記の関係が満足される:
ΓITA/(ΓITA+ΓNTA)≧0.5
フラックスΓITA及びΓNTAは、直接的に測定することは困難であるが、この基準によりカバーされるパラメータ範囲に到達することが現実的であると言うことが、間接的に示されることが可能である。スパッタされたターゲット原子のイオン化の高い程度は、スパッタされたターゲット原子の電子衝突によるイオン化に対する可能性が、プラズマの中でのそれらの滞在時間の間に、十分に高くなるような、高いn及びTで運転することにより得られることが可能である。十分に高いn及びTは、プラズマに十分に高いエネルギーを提供することにより得られる。
【0057】
これは、例えば、Helmersson et al., 2006, Thin Solid Films, 513, 1-24 の中に開示されているように、誘導結合プラズマ−マグネトロン・スパッタリング(ICP−MS)の中でのように、別個の誘導コイルを使用することにより、行われることが可能であり、あるいは、高電力インパルス・マグネトロン・スパッタリング装置(HiPIMS)の中でのように、パルス放電を使用することにより、行われることが可能である。HiPIMS装置の中で、放電のアクティブ・フェーズの間で90%を超えるスパッタされた金属イオンについて、幾つかの事例が報告されている; Bohlmark et al., 2005, J. Vac, Sci. Technol, A23, 18; Lundin et al., 2008, Plasma Sources Sci. Technol. 17, 1 25009。
【0058】
そのようなプラズマ環境の中のグレインを考慮すると、イオン化されたターゲット原子の密度が、中性ターゲット原子の密度と比べて高い場合;たとえ、正にチャージされたITAが、負にチャージされたグレインにより引き付けられなかった場合であっても、ΓITAは、ΓNTAより大きくなるであろう。基準:ΓITA/(ΓITA+ΓNTA)≧0.5 は、このようにして、満足されることになるであろう。それ故に、もし、グレインを、既存の且つ良く研究されたプラズマ装置の中に導入した場合に、この基準が満足されることがあることは、明らかである。
【0059】
本発明の更に他の実施形態によれば、下記の関係が満足される:
ITA/W≦0.5
この基準に対する理由は、所与の同一のグレイン密度に対して、 静電的な引力に起因して、グレインへのITAのピックアップ速度が、WITAのこの範囲でドラスチックに増大することである。要求される低いWITAは、ガスとの熱運動化(thermalizing)衝突に対する、ITA平均自由行路が、Lと比べて遥かに小さくなるように、nを高く維持することにより実現される。
【0060】
特別な場合が考慮されても良く、そこで、本発明に基づくプロセスが、カソードを介してのプロセス・ガスの流れを有する、縦方向に配置された中空カソード・プラズマ発生装置の中で行われる。プロセス・ガス、プラズマ及びグレインの、より低いカソード開口からの流れは、カソードの丁度下側の領域に拡がり、周囲を取囲むプロセス・ガスと混合され、それが、構成要素の温度が異なる状態で発現することを生じさせる。中性のプロセス・ガスは、より低い温度の雰囲気プロセス・ガスと混合され、その混合物は、共通の温度Tgmを得る。イオン化されスパッタされたターゲット原子“ITA”は、この中性のガスとの衝突により急速に冷却され、下記の状態に近づく:
ITA≒Tgm
【0061】
他方、電子は、遥かに遅くエネルギーを失う。その理由は、電子に対する、エネルギー損失を伴う衝突の平均自由行路が、ガス原子との弾性衝突を介して、下記のオーダーにあるからである:
λenergy≒λelastic(2mgas/m
電子の遥かに遅い冷却と結合した、ITAの急速な冷却は、それ故に、中空カソードの丁度下側の領域で、パラメータ範囲 WITA<0.5W の中の、プラズマを与える。
【0062】
プラズマ放電の中の粒子エネルギー分布は、通常、正確な熱的な“マックスウェル”分布から乖離している。電子の、高いエネルギーのテイル部は、幾つかの理由のために、マックスウェル分布から乖離することが可能である。テイル部の過密状態は、もし、電子が電場によりエネルギーが与えられ、クーロンのイオン−電子衝突により冷却される場合に、もたらされることが可能である。その理由は、そのような衝突は、電子エネルギーの増大に伴いドラスチックに減少する断面積により表されるからである。電子の高いエネルギーのテイル部の過疎状態は、中性粒子との衝突によるイオン化及び励起からもたらされることが可能であり、そのような衝突は、本発明に基づくプロセスに対する閾値を超えるエネルギーに対してのみ生ずる。イオンの熱的な分布からの乖離もまた、様々な理由により予想される。
【0063】
基準:LITA/L≦0.5 及び WITA/W≦0.5 は、独立していて、特別な場合を考慮することにより示されることが可能である。装置の壁面からの距離Lで開始する、熱的な速度UITAを有するITAを考える。拡散時間は、下記の式のオーダーである:
τdiff≒L/D≒(Lc/UITA)(1+3L/LITA
但し、拡散係数の表現:
D≒LITA・UITA/3
が使用されていて、衝突が無い場合において、L/UITAに近づく関数が選択されている。
【0064】
ITAが壁面へ逃れる前にグレインに遭遇すると言う可能性は、それ故に、下記の式にほぼ比例する:
(1+3Lc/LITA
そのような遭遇での収集の可能性は、グレインの電位、及びエネルギー、及びITAのチャージに依存する。これは、プラズマ物理において良く研究されている問題であって、その理由は、それが、ラングミュア・プローブ理論(Langmuir probe theory)と、ダスティ・プラズマ物理(dusty plasma physics)の両方の中央にあるからである。
【0065】
収集の可能性は、W>WITA の範囲の中で (1+4W/WITA) にほぼ比例する。W/WITA に対する依存性は、質的には理解することが容易である。グレインの負の電位は、電子エネルギーに比例していて、典型的には、 3k/e のオーダーである。所与の電位で、低いエネルギーのITAは、引き付けられることがより容易であり、それ故に、より大きな収集可能性により表される。これら二つのメカニズムは、ITAの、壁面からの距離Lcで開始して、壁面へ逃れることなくグレイン上に集められる可能性Pに対して、一つの近似式“式1”にまとめられることが可能である:
ITA-collection ∝ (1+3L/LITA)(1+4W/WITA) (式1)
【0066】
式1の効果は、図1に示されている。この曲線は、式1の右手側に対して等しい値を表わしている。より高い値は、イオン化されスパッタされたターゲット原子の、グレインの表面へのより効率の良い収集に対応している。各曲線は、パラメータ LITA/L 及び WITA/Wの特定の組み合わせに対して、式1の値を用いてマークされている。更に、この図面は、下記の基準を示している:
ITA/L≦0.5 及び WITA/W≦0.5。
【0067】
イオン化されスパッタされたターゲット原子の、グレインの表面へのピックアップ可能性が、LITAとLとの間の比の減少に伴い、並びに、WITAとWとの間の比の減少に伴い、増大すると言うことが、図1から明らかである。
【0068】
このようにして、プラズマ・スパッタリング・プロセスの好ましい実施形態に基づき、プロセス・ガスの数密度n、及び電子の数密度nは、下記の二つの基準の両方が満足されるような値である:
ITA/L≦0.5 及び WITA/W≦0.5
【0069】
基準:LITA/Lを減少させると、図1の中に示されているように、イオン化されたターゲット原子の、グレインの表面でのピックアップ速度が増大する。それ故に、LITA/Lは、好ましくは、0.4以下であり、より好ましくは、0.3以下である。
【0070】
更に、イオン化されたターゲット原子の、グレインの表面でのピックアップ速度は、図1の中に示されているように、WITA/Wの減少に伴い増大する。それ故に、WITA/Wは、好ましくは、0.4以下であって、より好ましくは、0.3以下である。
【0071】
スパッタされたターゲット原子の、グレインの表面での可能性、従って、生産性が、以上に示された基準の両方が満足される場合に、最高になると言うことが、図1から明らかである。
【0072】
本発明に基づくプロセスは、例えば、粒子を成長させるために使用されることが可能であり、それは、予め形成された粒子または粒子の核をプロセスの中に導入することにより、そして、予め形成された粒子または粒子粒子の核の表面に、スパッタされたターゲット原子を堆積させるために、プロセスを使用することにより行われる。予め形成された粒子または粒子の核は、従来から知られている方法に基づき、プラズマ・スパッタリング装置の中に導入されることが可能である。ここで留意すべきことは、用語“グレイン”が、前記予め形成された粒子または粒子の核に関係するような場合に、この開示において使用されていると言うことである。
【0073】
本発明のプロセスにより、既に形成された第一の材料の粒子を第二の材料で被覆することも可能であり、それは、第一の材料の粒子をプロセスの中に導入することにより、そして、第二の材料を有するターゲットを使用することにより、行われ、第一の材料の前記粒子は、このようにして、この開示において、グレインを構成する。第一の材料及び第二の材料は、同一の材料であっても良く、または異なる材料であっても良い。
【0074】
本発明に基づくプロセスは、粒子を製造するために使用されても良く、それは、粒子の核をインサイチューに(in-situ)を形成することにより、そして、前記粒子核を成長させて粒子を形成することにより行われる。
【0075】
更に、酸化物、炭化物、窒化物などのような、化合物の粒子を作り出すことが可能であり、それは、反応性ガスまたは反応性ガスを有するガス混合物を導入することにより行われ、ここで、反応性ガスは、化合物を形成する元素を有している。この開示において、反応性ガスとは、少なくとも一つの元素を有するガスであって、このガスは、グレインの表面、または形成された粒子の表面と反応することが可能であり、それにより、化合物を形成する。この開示に基づく反応性ガスは、グレインの上に集められる前に、スパッタされたターゲット原子と反応することが可能な元素を有するガスであっても良い。反応性ガスが、例えば、酸素を有するガスまたは窒素を有するガスである場合には、反応性ガスは、プロセス・ガスを構成し、そして、プラズマを生成するのために使用されることも可能である。
【0076】
反応性ガス、または反応性ガスを有するガス混合物は、その効果を最大にするために、好ましくは、プラズマ発生装置のプラズマ領域の中に導入される。しかしながら、反応性ガス、または反応性ガスを有するガス混合物を、プラズマ領域の丁度外側に、但し粒子が集められる前に、導入することも可能である。これは、もし、粒子の表面のみが、反応性ガスの反応性元素と反応されなければならない場合に、好ましい代替案である。
【0077】
更に、このプロセスは、当然、多層構造を有する粒子を製造するために使用されても良い。
【0078】
このようにして、このプラズマ・スパッタリング・プロセスが、テーラーメイドの粒子を製造するために使用されても良いと言うことが、以上から明らかである。
【0079】
プラズマ・スパッタリング・プロセスの生産性は、イオン化されスパッタされたターゲット原子の程度の増大に伴い、ドラスチックに増大する。それ故に、プラズマに供給されるエネルギーは、スパッタされたターゲット原子の、好ましくは、少なくとも20%のイオン化を得るために十分なものであるべきであり、より好ましくは、少なくとも30%であるべきである。
【0080】
特に好ましい実施形態によれば、スパッタされたターゲット原子の少なくとも45%が、プラズマの中でイオン化される。要求される高い密度のプラズマを得るための、様々な可能性がある。プラズマに印加される電力を増大させることにより、高い密度のプラズマが作り出されることが可能であると言うことが、広く知られている。しかしながら、電力を増大させることは、電気的なブレークダウンの条件を作り出すリスクを増大させる可能性があり、そのようなブレークダウンは、装置内での望ましくない放電をもたらす可能性がある。それ故に、本発明によれば、高い密度のプラズマが、パルス直流(DC)などのような、パルス電源を使用して形成される。パルス電力は、カソードを不必要に加熱することなく、パルスの中への高い電力供給を可能にする。これは、比較的大きな電力パルスが周期的に印加されている間に、平均放電電力が低いことによる結果である。
【0081】
パルスは、好ましくは、本質的に矩形パルスの形態で印加され、それは、各パルスにより得られる電力を最大にして、運転の間に、十分な電力がプラズマに印加されると言うことを確保するするためである。しかしながら、やや好ましくないが、正弦波パルスを使用することもまた考えられる。
【0082】
パルスの継続期間、周波数及び電力に対する、特定の条件は、好ましくは、材料、及び、カソード(即ちターゲット)のサイズ、並びに、使用されるプラズマ発生装置に、適合されるべきである。好ましくは、約200〜2,000Hzの周波数が使用され、そして、各パルスの継続期間は、適切には、約10〜100マイクロ秒であることが可能であり、好ましくは、約20〜70マイクロ秒である。しかしながら、当業者は、単なるルーティーンのテストにより、選択された材料及びカソードのサイズに対して、特定のパラメータを容易に決定することが可能である。
【0083】
例示の目的のみであるが、 5mmの内径及び50mmの長さを有するチタンの中空カソードが使用された場合には、約20〜50マイクロ秒パルスの継続期間、及び、約600Hzの反復周波数で、放電電流が、適切にも、約40Aであることが可能になる。更に、中空カソードモリブデンまたは銅で作られている場合には、ほぼ同一のパラメータが、同一の寸法の中空カソードに対して、使用されることが可能になる。
【0084】
好ましい実施形態によれば、本発明に基づくプロセスは、中空カソード・システムの中で実行される。そのようなシステムの中で、高い密度を有するプラズマを得ることが可能であると言うことが、広く知られている。中空カソード・システムは、本質的に、ターゲットからの全てのイオンを、非常に効率良く使用することが可能であり、それにより、非常に効率良いプロセスをもたらす。更に、中空カソード・システムを介して、ガスの流れをコントロールすることも容易であり、それは、次に、効率良いプロセス・コントロールを可能にする。例えば、粒子のサイズは、ガスの流れにより容易にコントロールされることが可能である。
【0085】
更に、中空カソード・システムは、グレインがターゲットにより取り込まれたプロセスをもたらす。中空カソード・システムの更なる優位性は、プロセスが連続的なプロセスになるようにデザインされることが可能であると言うことである。これは、当然に、バッチ式の運転システムに対する優位性であって、バッチ式の場合には、プロセスは、形成された粒子を取り除くためにシャット・ダウンされなければならず、且つ、その場合には、プラズマの内側でのグレインの滞留時間をコントロールすることが、より困難になるであろう。
【0086】
中空カソード・プラズマ発生装置の他の優位性は、装置の中に、例えばサイドから、プロセス・ガスを供給する代わりに、中空カソードを介してプロセス・ガスを流すとき、プロセス・ガスが、中空カソードの領域から出るときに膨張して、それにより、ガスの温度が低下すると言うことである。この効果は、それがグレイン及び形成された粒子を自動的に冷却するので、粒子の形成を容易にする。
【0087】
更に、中空カソード・ターゲット・システムを形成するために、複数の中空カソード・ターゲットを、次々に、配置することが可能である。システムの中の異なる中空カソードは、例えば、異なる材料で作られても良く、このようにして、多層構造の粒子が作り出されるプラズマ・スパッタリング・プロセスを可能にする。そのような中空カソード・システムは、それにより、各別個のレイヤーの堆積の後での、粒子の収集に対する必要性を取り除き、それにより、多層構造を有する粒子の生産性を、大幅に増大させる。
【0088】
しかしながら、当業者にとって明白であるように、本発明に基づくプロセスは、高い密度を有するプラズマを作り出すことが可能な、他のタイプのシステムの中で実行されることも可能である。例えば、本発明に基づくプロセスは、マグネトロン・スパッタリング・システムを使用して、適切に、実行されても良い。マグネトロン・スパッタリング・システムは、二次電子をトラップして、ターゲット表面の近傍に集中させるように形付けられた磁場を使用する。磁場は、電子の密度を増大させる、それ故に、ターゲット表面の近傍の領域内のプラズマ密度を増大させる。増大されたプラズマ密度は、スパッタの堆積速度を増大させる。
【0089】
プラズマ・スパッタリング・マグネトロン装置は、適切に、誘導結合プラズマ・マグネトロン・スパッタリング(ICP−MS)の中でのように、別個の誘導コイルを使用する装置であっても良く、あるいは、高電力インパルス・マグネトロン・スパッタリング装置 (HiPIMS)の中でのように、パルス放電を使用する装置あっても良い。これは、先に、Helmersson et al, 2006, Thin Solid Films, 513, p 1 -24, の中に開示されていて、それは、参照によりここに組み入れられる。
【0090】
本発明に基づくプロセス、全てのタイプの材料を有する粒子を製造するために、使用されることが可能である。カソード材料は、全ての導電性の、または少なくとも半導電性の、材料であって、導電性の化合物または複合材料を含んでいて、その場合、複合材料の成分の少なくとも一つが導電性である。
【0091】
本発明に基づくプラズマ・スパッタリング・プロセスにより作り出された粒子は、現状の技術に基づき、集められても良い。例えば、粒子は、基板上に集められても良く、あるいは、粒子がキャリア・ガスの中に浮遊するシステムにより集められても良い。
【0092】
しかしながら、粒子が基板の上に集められる場合には、そのような基板は、形成された粒子が、それらが集められる前に効率良く冷却されることを可能にするために、好ましくは、カソード及びプラズマから十分に離れて配置されるべきである、と言うことについて留意すべきである。適切な距離は、使用されるプラズマ発生装置、粒子が形成される材料、及び、プロセスのために選択される特定のパラメータに依存する。しかしながら、当業者は、ルーティーンのテストにより、適切な距離を決定することが可能である。もし望まれる場合には、収集の前に粒子の冷却を容易にするために、冷却ガスの流れが、収集のために、プラズマの下流であるが、基板の上流で、装置の中に導入されることが可能である。適切な冷却ガスの例は、ヘリウムである。
【0093】
先に論じられたように、プロセスにおいて使用されるパラメータの特定の値は、使用される装置、その寸法、及び、粒子が作り出される材料に依存する。しかしながら、大半の場合に対して、プラズマの電子の数密度nは、少なくとも1017−3、好ましくは、少なくとも1018−3であることが好ましい。また、大半の場合に対して、カソードに供給される電力は、少なくとも30,000W/m、好ましくは、少なくとも35,000W/mであることが好ましい。
【0094】
更に、大半の場合に対して、プロセス・ガスの数密度nは、少なくとも3*1021−3の、好ましくは、少なくとも1022−3の、プロセス・ガスの数密度に等しいことが好ましく、それは、プラズマ発生装置が中空カソード装置であって、中空カソードが5mmの内径を有している場合に対してである(約0.1トール(13.3Pa)圧力に対応している)。プロセス・ガスの数密度に対して規定される値は、特定の場合に対するプロセス・ガスの数密度に等しいとして、与えられていて、その理由は、それらが、使用される装置及びその寸法に依存するからであり、このため、各特定の場合に対して規定されることが可能でない。
【0095】
このようにして、規定された場合以外の、選択された装置及びその寸法に対して、プロセス・ガスの数密度の値は、使用される装置及びその寸法に対して、それらが、以上において規定された特定の場合に対応するように、再計算されることになる。例えば、600μmの内径を有する中空カソードに対して、プロセス・ガスの数密度は、好ましくは、約3*1024−3であるべきである(約100トール(13.3kPa)の圧力に対応している)。
【0096】
このプロセスは、約1nmから約10μmまでの範囲内のサイズを有する粒子を、製造するために使用されることが可能であり、特に、約5nmから500nmまでのサイズを有するナノ粒子を製造するために適切である。
【0097】
プラズマ・スパッタリング・プロセスにより作り出される粒子は、本質的に、球形であっても良い。しかしながら、それらの粒子は、本質的に楕円形などのような、他の形状を有していても良く、または、不規則な形状を有していても良く、それは、粒子が作り出される材料、及び、プロセスの間に使用される選択されたパラメータに依存する。
【0098】
*実験結果−イオン化の程度
チタン粒子が、パルス直流電源を使用して、本発明の一つの実施形態に基づく縦方向に配置された中空カソードを有する、プラズマ・スパッタリング装置の中で作り出された。パルスの継続期間は、50μsに設定され、パルスは、600Hzの周波数で、矩形パルスを使用して印加された。中空カソードへの平均電力供給は、約72Wであった。更に、プロセスは、約80Wで運転され一定の(非パルスの)直流電源により生成されたプラズマを使用して、同一の装置の中で繰り返された。
【0099】
両方の場合において、5mmの内径及び50mmの長さを有するチタンの中空カソードが使用された。アルゴンが、プロセス・ガスとして使用され、装置サイド及び中空カソードの下側から、装置の中に導入された。装置の内側の圧力は、装置へのプロセス・ガスの流れをコントロールすることにより、運転の間、約1トール(133Pa)で維持された。
【0100】
プラズマの中のイオン密度を調査するために、光学的な分光器が使用された。スペクトルは、中空カソードの上方から、且つ、その中央軸に沿って、検出された。図2aは、パルス電源を使用したプロセスの結果を示し、図2bは、非パルス電源を使用したときのプロセスの結果を示している。様々なピークが、図面中に示されていて、ここで、“Till”は、一価のイオン化されたチタン原子に関係し、“Til”は、励起された中性のチタン原子に関係し、“Arll”は、一価のイオン化されたアルゴン原子に関係し、“Arl”は、励起された中性のアルゴン原子に関係している。
【0101】
スパッタされたチタン原子が、プロセスの間にイオン化されたことは、図2aから明らかである。しかしながら、一定の電源を使用するプロセスにおいて、イオン化されたチタン原子の量は、図2bの中に示されているように、かなり低かった。
【0102】
更に、パルスの継続期間の効果が、調べられた。図2cは、イオンと中性粒子との間の比を、パルスの継続期間の関数として、示している。“Arll/Arl”で示された線は、イオン化されたアルゴン・イオンと中性のアルゴン原子の比を示し、“Till/Til”で示された線は、それぞれ、パルスプラズマが使用されたときの、イオン化されたチタン原子と中性のチタン原子の比を示している。“DC Arll/Arl”及び“DC Till/Til”で示された線は、それぞれ、非パルスのプラズマが使用されたときの比を示している。
【0103】
この図は、20μmパルスが使用されとき、チタン・イオンとチタンの中性粒子との間の比が約1であることを示していて、それは、約50%のイオン化の程度に対応している。しかしながら、非パルス電源の場合には、イオンと中性粒子との間の比は、0.2より小さく、それは、スパッタされたターゲット原子のイオン化の程度が、約17%より小さいと言うことを意味している。
【0104】
この図はまた、20μmより長いパルスを使用したとき、スパッタされたチタン原子のイオン化の程度が、いくらかより低いと言うことも示しているが、しかしながら、アルゴン原子のイオン化の程度が、増大されている。
【0105】
ここで留意すべきことは、上記の結果は、比較的大雑把なものであって、それは、イオン密度が最高である場合に、スペクトルが決定されたと言うことが確かではないからである。しかしながら、パルス電源を使用してプラズマを作り出すときに、スパッタされたターゲット原子の大幅に高いイオン化の程度が可能であると言うことを、明らかに示している。更に、スパッタされたチタン原子の、50%のオーダーのイオン化の程度を得ることが可能であると言うことは、明らかである。これは、スパッタされたターゲット原子の、グレインの表面へのかなり多くのピックアップ・フラックスをもたらすことになる。
【0106】
*実験結果−モリブデン粒子
モリブデンの粒子が、縦方向に配置された中空カソードを有するプラズマ・スパッタリング装置の中で作り出された。カソードは、5mmの内径及び50mmの長さを有していた。アルゴンが、プロセス・ガスとして使用され、中空カソードを介して流された。圧力は、約1.0トール(133Pa)でコントロールされた。プラズマは、40μmのパルスの継続期間で、且つ500Hzの周波数で、パルス電源を使用して作り出された。平均電力は、約110Wであって、約50Aの最大電流、及び約−640Vの最大電圧を使用することにより得られた。
【0107】
粒子は、中空カソードの下側の約10cmに配置された、SiのTaで被覆された基板の上に集められた。約+30Vの電圧が、粒子を効率良く集めるために、基板に印加された。
【0108】
図3aは、プロセスにより得られた粒子の、走査型電子顕微鏡(SEM)で、59,780倍の倍率で撮影された写真を示している。粒子の直径は、約450nmから約600nmまでの範囲にある。図から分かるように、粒子は、本質的に球形であって、僅かに凹凸のある表面を有していて、それは、それらが比較的低い温度で形成されたと言うことを示している。
【0109】
図3bは、粒子の対応するSEM写真(輝いている点)を、1,130倍の倍率で示している。粒子は、良く分散されていて、即ち、凝集されておらず、且つ、比較的狭いサイズ分布を有していると言うことが、この写真から明らかである。
【0110】
イオン化されスパッタされたターゲット原子の平均自由行路は、1mmより小さいと理論的に評価され、基準:LITA/L<0.5 は、L がプラズマの体積に等しいと言うことを前提にして、このようにして、少なくともファクター10のマージンで満足された。たとえ、装置の特性長Lがカソードの内径であることを考慮したとしても、基準:LITA/L<0.5 が、少なくともファクター2.5のマージンで満足されることになる。このようにして、本発明に基づくプロセスの基準に基づき、粒子を作り出すこと可能であると言うことが明らかである。
【0111】
第二のテストにおいて、モリブデン粒子が、主として同一の装置の中で、前項のテストの中と同様に、作り出された。同一の、パルスの継続期間、周波数、中空カソードの寸法、プロセス・ガス及び圧力が、前項のテストの中と同様に使用され、プロセス・ガスがカソードを介して流された。しかしながら、平均電力は、この場合には80Wであって、約35Aの最大電流及び約−600Vの最大電圧を使用することにより得られた。約+40Vの電圧が、粒子を集めるために使用された基板に印加された。更に、プラズマが、この第二のテストにおいて、粒子が集められる基板の近傍の方へ伸びることが可能にされ、それは、例えば、基板が、プラズマへの最も近いアース接続となることを可能にすることにより、実現されても良い。
【0112】
図3cは、第二のテストで得られた粒子の、透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影された写真を示している。左側の下のコーナーにある白い線は、20nmの距離を示していて、このようにして、粒子のサイズが、約200nmオーダーにあると言うことを示している。図3dは、粒子のSEM写真を、2,510倍の倍率で示している。図3c及び3dの中に示されているように、粒子は、本質的に球形であって、平滑な表面を有していて、且、単結晶である。更に、粒子は、凝集されておらず、このようにして、微細に分散されている。更に、得られた粒子の、前項のテストと比較して高い濃度が、観察されている。
【0113】
図3aの中に示された粒子を、図3cの中に示され粒子と比較すると、第一のテスト及び第二のテストからの粒子の表面の外観が、それぞれ、異なっていると言うことが、明らかに示されている。これは、異なるテストの中の粒子が、異なる温度で形成されたと言うことを示している。
【0114】
*実験結果−チタン粒子
チタンの粒子が、パルス直流電源を使用して、縦方向に配置された中空カソード・プラズマ発生装置により、作り出された。パルスの継続期間は、30μmに設定され、パルスが、600Hzの周波数を有する矩形パルスを使用して印加された。中空カソードへの平均電力供給は、約88Wであって、最大約50A及び最大約−536Vを使用して印加された。
【0115】
カソードは、5mmの内径及び50mmの長さを有している。アルゴンが、プロセス・ガスとして使用され、中空カソードの下側で、サイドから装置の中に導入された。圧力は、約1.0トール(133Pa)にコントロールされた。
【0116】
これらの粒子は、電圧が基板に印加されることなく、基板の上に集められた。
【0117】
図4aは、得られた粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影された写真を示していて、ここで、下側の左コーナーにある白い線は、50nmの距離を示している。図4b、幾つかの粒子の対応するTEM写真を示していて、ここで、下側の左のコーナーにある白い線は、5μmの距離を示している。粒子は、単結晶であることが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10μm未満のサイズを有する粒子を製造するためのプラズマ・スパッタリング・プロセスであって、
プラズマ発生装置の中にターゲットを供給し、このプラズマ発生装置は、特性長Lcを有していて、但し、Lcは、このプラズマ発生装置の中で生成されるプラズマの体積に等しく、
前記プラズマ発生装置の中にプロセス・ガスを導入し、プロセス・ガスの数密度nを得るために、プラズマ発生装置の内側の圧力をコントロールし、
前記プラズマ発生装置の内側にプラズマを生成し、プラズマ電子の数密度n及びプラズマ電子の温度Tを得るために、前記プラズマに供給されるエネルギーをコントロールし、
前記プラズマにより、前記ターゲットから原子をスパッタリングし、
スパッタされた原子が、前記プラズマ発生装置の中に存在するグレインの表面にピックアップされることを可能にし、このようにして、粒子を作り出す、
プラズマ・スパッタリング・プロセスにおいて、
前記プラズマ電子の数密度n及びプラズマ電子の温度Tは、スパッタされたターゲット原子の少なくとも一部のイオン化を引き起こすために十分なものであって、それにより、グレインの表面での、イオン化されスパッタされたターゲット原子のピックアップ・フラックスをもたらすこと、及び、
下記の基準が満足されること、
ITA/Lc≦0.5
但し、LITAは、前記プラズマの内側のイオン化されスパッタされたターゲット原子の平均自由行路であり、
前記プラズマ発生装置は、パルス電源により運転されること、
を特徴とするプラズマ・スパッタリング・プロセス。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
ΓITA/(ΓITA+ΓNTA)≧0.5 であり、
好ましくは、ΓITA/(ΓITA+ΓNTA)≧0.66 であり、
より好ましくは、ΓITA/(ΓITA+ΓNTA)≧0.70 であり、
但し、
ΓITAは、グレインの表面での、イオン化されたターゲット原子のピックアップ・フラックスであり、
ΓNTAは、グレインの表面での、中性ターゲット原子のピックアップ・フラックスである。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項1または2に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
前記プラズマに供給されるエネルギーは、前記プラズマの中のスパッタされた原子の少なくとも20%を、好ましくは、少なくとも30%を、イオン化させるために十分なものである。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項1から3の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
前記プラズマ発生装置は、中空カソード装置である。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項1から3の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
前記プラズマ発生装置は、マグネトロン・スパッタリング装置である。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1から5の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
(1+3L/LITA)(1+4W/WITA)>10 であり、
但し、
ITAは、前記プラズマの中の、イオン化されスパッタされた原子の平均運動エネルギーであり、
は、前記プラズマの内側の平均の電子運動エネルギーであって、W=(3/2)k を介して、Tに関係付けられる。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項1から6の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
電力は、本質的に矩形パルスの形態で供給される。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項1から7の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
前記パルス電源は、少なくとも100Hzの、好ましくは200〜2,000Hzの周波数で、且つ、少なくとも5マイクロ秒の、好ましくは10〜100マイクロ秒のパルスの継続期間で、印加される。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項1から8の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
カソードに印加される平均電力は、少なくとも30,000W/mである。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項1から9の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
前記プロセス・ガスの数密度n及び電子の数密度nは、
ITA/W≦0.5 の関係にあり、
但し、
ITAは、前記プラズマの中のイオン化されスパッタされた原子の平均運動エネルギーであり、
は、前記プラズマの内側の平均の電子運動エネルギーであって、W=(3/2)kを介して、Tに関係付けられる。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項1から10の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
ITA/L≦0.4 であり、好ましくは、LITA/L≦0.3 である。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項10または11に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
ITA/W≦0.4 であり、好ましくは、WITA/W≦0.3 である。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項1から12の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
前記プロセス・ガスは、不活性ガス、反応性ガス、不活性ガスのガス混合物、または、少なくとも反応性ガスを有するガス混合物である。
【請求項14】
下記特徴を有する請求項1から13の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
前記プラズマは、前記プロセス・ガスから、少なくとも部分的に作り出される。
【請求項15】
下記特徴を有する請求項1から14の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
前記プロセス・ガスは、不活性ガスであり、且つ、
当該プロセスは、反応性ガスまたは反応性ガスを有するガス混合物を、前記プラズマ発生装置の中に導入することを、更に有している。
【請求項16】
下記特徴を有する請求項1から15の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
前記グレインは、前記プラズマ発生装置の中に導入される。
【請求項17】
下記特徴を有する請求項1から16の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
前記グレインは、前記プラズマ発生装置の中で、インサイチューに形成される。
【請求項18】
下記特徴を有する請求項1から17の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
前記プラズマ電子の数密度nは、少なくとも1017−3である。
【請求項19】
下記特徴を有する請求項1から18の何れか1項に記載のプラズマ・スパッタリング・プロセス、
前記プラズマ発生装置が中空カソード装置である場合に対して、前記プロセス・ガスの数密度nは、少なくとも3*1021−3のプロセス・ガスの数密度に等しく、
ここで、この中空カソードは、5mmの内径を有している。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2013−520573(P2013−520573A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554964(P2012−554964)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/SE2011/050201
【国際公開番号】WO2011/105957
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512215336)ティア・エービー (1)
【氏名又は名称原語表記】TiA AB
【住所又は居所原語表記】Vinkelvaegen 59, 590 45 Brokind, Sweden
【Fターム(参考)】