説明

粒子付着防止装置及び方法並びに観測窓

【課題】流速計測精度の低下を招くことなく、観測窓に対するトレーサ粒子の付着を防止することが可能な粒子付着防止装置を提供する。
【解決手段】流体中に導入されたトレーサ粒子が流路壁に設置された観測窓に付着することを防止する粒子付着防止装置において、トレーサ粒子を帯電させる粒子帯電手段と、前記粒子帯電手段によって帯電させたトレーサ粒子に対し、前記観測窓から遠ざける方向の力を作用させる力発生手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子付着防止装置及び方法並びに観測窓に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、レーザドップラ流速計(LDV:Laser Doppler Velocimeter)とは、トレーサ粒子を散布した流体にレーザ光を照射してトレーサ粒子からの散乱光を受光し、その散乱光の周波数シフト量(ドップラシフト量)を演算することで流体の流速を求めるものである。このようなレーザドップラ流速計では、流路壁に設けた透明なガラス製の観測窓を通じて外部からレーザ光を照射するが、この観測窓の流路側表面にトレーサ粒子が付着してしまい流速計測の障害になるという問題があった。
【0003】
このような問題に対し、従来では以下のような対策方法を実施していた。
(1)観測窓を取り外して、付着したトレーサ粒子を拭き取る。
(2)観測窓の流路側表面にアルコールを噴射して、トレーサ粒子が付着した観測窓表面を洗浄する。
(3)観測窓の流路側表面に可動式のスポンジを設け、観測窓に付着したトレーサ粒子を拭き取る。
(4)観測窓の流路側表面へ乾燥空気を導入して、観測窓近傍へのトレーサ粒子の侵入を阻止する(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−14650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記(1)の方法は、観測窓に付着したトレーサ粒子を拭き取るために、流速計測を行う度に観測窓の組み替え作業を行う必要があり、作業者にとって大きな負担となる。また、上記(2)、(3)の方法は、観測窓の組み替え作業を行う必要がないので作業者の負担を軽減できるが、上記(1)の方法と同様に、既に観測窓に付着したトレーサ粒子を除去する措置であるため、実際に流速計測が可能となるのは、これらの措置を実施して再びトレーサ粒子が堆積するまでの期間に限定される。つまり、上記(1)〜(3)の方法は、作業者の負担の大小はあるものの、一定期間毎にトレーサ粒子の除去作業を行う必要があり、メンテナンス効率の低下を招く。
一方、上記(4)の方法は、観測窓に対するトレーサ粒子の付着そのものを防止する措置であるため、トレーサ粒子の除去作業を行う必要がなく、メンテナンス効率の低下という問題は生じないが、乾燥空気を流路内に導入するため、流路内部の流れ場を変化させてしまい、流速計測精度が低下する虞がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、流速計測精度の低下を招くことなく、観測窓に対するトレーサ粒子の付着を防止することが可能な粒子付着防止装置及び方法並びに観測窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る粒子付着防止装置は、流体中に導入されたトレーサ粒子が流路壁に設置された観測窓に付着することを防止する粒子付着防止装置であって、前記トレーサ粒子を帯電させる粒子帯電手段と、前記粒子帯電手段によって帯電させたトレーサ粒子に対し、観測窓から遠ざける方向の力を作用させる力発生手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る粒子付着防止装置において、前記力発生手段は、前記観測窓から遠ざける方向の力として前記トレーサ粒子にローレンツ力が発生するような磁場を形成することを特徴とする。
また、本発明に係る粒子付着防止装置において、前記力発生手段は、前記観測窓の観測側表面、流路側表面或いは内部の少なくとも1つに前記流体の流れ方向と平行に電流が流れるように形成されている導線と、前記トレーサ粒子に前記観測窓から遠ざける方向の力としてローレンツ力が発生するような磁場を形成する電流を前記導線に流す電源とを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る粒子付着防止装置において、前記力発生手段は、前記観測窓の観測側表面に対向して配置されると共に前記流体の流れ方向と平行に電流が流れるように配置される導線と、前記トレーサ粒子に前記観測窓から遠ざける方向の力としてローレンツ力が発生するような磁場を形成する電流を前記導線に流す電源とを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る粒子付着防止装置において、前記力発生手段は、前記観測窓から遠ざける方向の力として前記トレーサ粒子と前記観測窓との間にクーロン力を発生させることを特徴とする。
また、本発明に係る粒子付着防止装置において、前記力発生手段は、前記観測窓の流路側表面を誘電分極により前記トレーサ粒子と同一の極性に帯電させることで前記トレーサ粒子と前記観測窓との間に前記観測窓から遠ざける方向の力としてクーロン力を発生させることを特徴とする。
また、本発明に係る粒子付着防止装置において、前記力発生手段は、前記観測窓の流路側表面に形成されている透明電極と、前記トレーサ粒子と前記観測窓との間に前記観測窓から遠ざける方向の力としてクーロン力を発生させるための電圧を前記透明電極に印加する電圧印加手段とを含むことを特徴とする。
【0008】
一方、本発明に係る粒子付着防止方法は、流体中に導入されたトレーサ粒子が流路壁に設置された観測窓に付着することを防止する粒子付着防止方法であって、帯電させたトレーサ粒子を前記流体中に導入し、当該トレーサ粒子と前記観測窓との間に前記観測窓から遠ざける方向の力を作用させることで前記トレーサ粒子が前記観測窓に付着することを防止することを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係る観測窓は、流体中に導入されたトレーサ粒子に対して外部から計測用のレーザ光を照射するために流路壁に設置される観測窓であって、観測側表面、流路側表面或いは内部の少なくとも1つに、前記流体の流れ方向と平行に電流を流すための導線が形成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る観測窓において、前記導線は、透明導電材料を用いて形成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る観測窓は、流体中に導入されたトレーサ粒子に対して外部から計測用のレーザ光を照射するために流路壁に設置される観測窓であって、流路側表面に、前記トレーサ粒子と前記観測窓との間に前記観測窓から遠ざける方向の力としてクーロン力を発生させるための電圧を印加するための透明電極が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来技術(特開平11−14650号公報)のように流路内部の流れ場を変化させることがないので、LDVの流速計測精度の低下を招くことなく、観測窓に対するトレーサ粒子の付着を防止することが可能となる。また、本発明は、観測窓に対するトレーサ粒子の付着そのものを防止するものであるため、当然、トレーサ粒子の除去作業を行う必要がなく、メンテナンス効率の低下という問題は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る粒子付着防止装置1の構成概略図である。
【図2】第1実施形態における力発生装置3の詳細説明図である。
【図3】第2実施形態における力発生装置3Aの詳細説明図である。
【図4】第3実施形態における力発生装置3Bの詳細説明図である。
【図5】第4実施形態における力発生装置3Cの詳細説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
まず、図1及び図2を参照して、本発明に係る粒子付着防止装置の第1実施形態について説明する。図1(a)は、第1実施形態に係る粒子付着防止装置1の構成概略図である。この図に示すように、粒子付着防止装置1は、流体F(気体でも液体でも良い)の流路10(配管など)の流路壁に設置された透明なガラス製の観測窓20に、レーザドップラ流速計(以下、LDVと称す)による流速計測を行うために流体F中に導入されたトレーサ粒子Pが付着することを防止する装置であり、粒子導入管2(粒子帯電手段)及び力発生装置3(力発生手段)を主要構成要素として備えている。
なお、流体Fの流れ方向をX軸、このX軸と直交して水平面を形成する軸をY軸、XY平面(水平面)に垂直な軸をZ軸と仮定する。
【0013】
図1(b)は、流路10及び観測窓20の水平断面図である。この図に示すように、観測窓20は、流路10の下流側の流路壁に設けられた貫通孔10aに、内壁面に対して面一となるように嵌め込まれ、観測窓固定治具21によって流路壁にネジ止め固定されている。この観測窓固定治具21の略中心部には開口部21aが設けられており、この開口部21a及び観測窓20を介して外部からLDVによる流速計測用のレーザ光を流体Fに照射可能な構成となっている。
【0014】
粒子導入管2は、一端がトレーサ粒子供給装置30と連結され、他端が流路10の上流側に挿入されて流体Fの流れ方向(X軸方向)を向くように屈曲した形状を有する金属管であり、トレーサ粒子供給装置30から供給されるトレーサ粒子Pを流体F中に導入する役割と、トレーサ粒子Pを帯電させる粒子帯電手段としての役割とを担っている。ここで、トレーサ粒子Pの成分をSiOとすることにより、トレーサ供給装置30から供給されるトレーサ粒子Pは、粒子導入管2内での移動中に金属製の管壁との静電摩擦によって正極性に帯電することになる。
また、粒子導入管2は流路10の流路壁に対して絶縁体2aを介して挿入されており、これにより電荷が流路壁に逃げてしまうことを防いでいる。
【0015】
なお、トレーサ粒子供給装置30の内部には、トレーサ粒子Pの貯蔵タンクと空気ポンプとが設けられており、オペレータの操作に応じて空気ポンプが作動して貯蔵タンク内のトレーサ粒子Pが粒子導入管2に供給される。また、トレーサ粒子供給装置30内に空気ポンプを設けず、外部から空気を供給することで貯蔵タンク内のトレーサ粒子Pを粒子導入管2に供給するような構成としても良い。
【0016】
力発生装置3は、観測窓20の観測側表面に対向して配置され、粒子導入管2によって流体F中に導入されて正極性に帯電したトレーサ粒子Pに対し、観測窓20から遠ざける方向の力を発生させる装置であり、より具体的には上記の観測窓20から遠ざける方向の力としてトレーサ粒子Pにローレンツ力が発生するような磁場を形成する装置である。
【0017】
このような力発生装置3は、図2に示すように、導線3a、電源3b、スイッチ3c及び可変抵抗器3dから概略構成されている。導線3aは、観測窓20の観測側表面に対向して配置されると共に、少なくともその一部が流体Fの流れ方向(X軸方向)と平行に電流が流れるように配置されており、その一端はスイッチ3cを介して電源3bの正極端子と接続され、他端は可変抵抗器3dを介して電源3bの負極端子と接続されている。
【0018】
電源3bは、トレーサ粒子Pにローレンツ力が発生するような磁場を形成する電流Iを導線3aに流す直流電源である。図2に示すように、正極性に帯電したトレーサ粒子Pの移動方向は流体Fの流れ方向(X軸方向)と一致するため、流体Fの流れ方向(X軸方向)と同じ向きの電流Iを導線3aに流してZ軸方向(垂直方向)と同じ向きの磁場Bを形成することにより、Y軸方向と同じ向きに、磁場Bとトレーサ粒子Pの移動速度Vに応じたローレンツ力Fを発生させることができる。
【0019】
スイッチ3cは、オペレータの操作によって開閉するスイッチであり、導線3aに電流Iを流すタイミング、つまりトレーサ粒子Pにローレンツ力Fを発生させるタイミングを手動制御するために使用される。可変抵抗器3dは、オペレータの操作によって抵抗値が変化する抵抗器であり、導線3aに流す電流Iの大きさ、つまりトレーサ粒子Pに発生するローレンツ力Fの大きさを手動調整するために使用される。
【0020】
次に、上記のように構成された粒子付着防止装置1を用いて観測窓20に対するトレーサ粒子Pの付着を防止する方法について説明する。
まず、オペレータは、LDVによる流速計測を行う前に、力発生装置3のスイッチ3cをオンにする。これにより、力発生装置3の導線3aに流体Fの流れ方向(X軸方向)と同じ向きの電流Iが流れる。なお、電流Iの大きさは、予め可変抵抗器3dの抵抗値を設定しておくことで、観測窓20にトレーサ粒子Pが付着しない程度のローレンツ力Fが発生するように調整されている。これにより、図2に示すような流路10中にZ軸方向(垂直方向)と同じ向きの磁場Bが形成される。
【0021】
続いて、オペレータは、LDVによる流速計測を行うために、トレーサ粒子供給装置30を操作してトレーサ粒子Pを流体F中に導入する。ここで、トレーサ粒子Pは粒子導入管2内を移動中に金属製の管壁との静電摩擦によって正極性に帯電する。このように正極性に帯電して流体F中に導入されたトレーサ粒子Pは、流体Fの流れに沿って下流側に設置された観測窓20へ移動する。そして、トレーサ粒子Pが観測窓20の近傍に到達すると、上記のように力発生装置3によって形成されている磁場Bとトレーサ粒子Pの移動速度Vに応じたローレンツ力Fが発生し、トレーサ粒子Pには観測窓20から遠ざける力が作用することになる。
【0022】
つまり、本実施形態に係る粒子付着防止装置1によれば、従来技術(特開平11−14650号公報)のように流路内部の流れ場を変化させることがないので、LDVの流速計測精度の低下を招くことなく、観測窓20に対するトレーサ粒子Pの付着を防止することが可能となる。また、本実施形態に係る粒子付着防止装置1は、観測窓20に対するトレーサ粒子Pの付着そのものを防止するものであるため、当然、トレーサ粒子Pの除去作業を行う必要がなく、メンテナンス効率の低下という問題は生じない。
【0023】
なお、流体Fの流れ方向(X軸方向)と同じ向きの電流Iを流す導線3aのZ軸方向の位置は、観測窓20の中心位置と略一致させることが望ましい。これにより、観測窓20の近傍を流れるトレーサ粒子Pに対して均一な磁場Bを与えることができ、トレーサ粒子Pの各々に均一なローレンツ力Fを発生させて、一部のトレーサ粒子Pが観測窓20に付着してしまうことを防止することができる。
【0024】
また、上記実施形態では、観測窓20に対向して設ける導線3aを1本としたが、これに限らず、複数本の導線3aを設けるようにしても良い。これにより、観測窓20の近傍を流れるトレーサ粒子Pに対して、より均一且つ強力な磁場Bを与えることができるようになり、観測窓20に対するトレーサ粒子Pの付着防止効果を向上することができる。
また、上記実施形態では、電流Iを用いて磁場Bを形成する場合を例示したが、例えば、流路10中にZ軸方向(垂直方向)と同じ向きの磁場Bが形成されるように永久磁石などを設けるようにしても良い。
【0025】
〔第2実施形態〕
次に、図3を参照して、本発明に係る粒子付着防止装置の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態に係る粒子付着防止装置は、上述した第1実施形態に係る粒子付着防止装置1における力発生装置3の構成が異なるだけであるので、以下ではその異なる点のみに着目して説明する。また、以下では第1実施形態と区別するために第2実施形態における力発生装置の符号を3Aとする。
【0026】
図3(a)に示すように、第2実施形態における観測窓20の観測側表面の中心位置には、流体Fの流れ方向と平行に電流Iが流れるように導線3eが形成されている。この導線3eは、LDVのレーザ光を透過させるために、ITOやIZO等の透明導電材料を用いて形成することが望ましいが、レーザ光の照射に支障が無いように銅やアルミニウム等の非透過導電材料(不透明導電材料)を用いて線幅を細くしても良い。
【0027】
図3(b)は、上記のように導線3eが形成された観測窓20を観測窓固定治具21によって流路10に固定した状態を示す図であり、図3(c)は、図3(b)におけるA−A’矢視断面図である。これら図3(b)及び(c)に示すように、観測窓固定治具21には、観測窓20に形成された導線3eの一端及び他端を外部に設けられた電源3hと電気的に接続するための外部接続端子3f、3gが設けられている。
【0028】
外部接続端子3fは、スイッチ3iを介して直流電源である電源3hの正極端子と接続され、外部接続端子3gは可変抵抗器3jを介して電源3hの負極端子と接続されている。なお、電源3h、スイッチ3i及び可変抵抗器3jは第1実施形態と同様な役割を担っているので説明を省略する。これら観測窓20に形成された導線3e、外部接続端子3f、3g、電源3h、スイッチ3i及び可変抵抗器3jによって第2実施形態における力発生装置3Aが構成されている。
【0029】
このような構成の力発生装置3Aにおいて、スイッチ3iをオンにすると、観測窓20に形成された導線3eに流体Fの流れ方向(X軸方向)と同じ向きの電流Iが流れ、第1実施形態と同様に、流路10中にZ軸方向(垂直方向)と同じ向きの磁場Bが形成され、正極性に帯電したトレーサ粒子Pにローレンツ力Fが発生することになる。
【0030】
すなわち、第2実施形態によってもLDVの流速計測精度の低下を招くことなく、観測窓20に対するトレーサ粒子Pの付着を防止することが可能となる。また、第1実施形態では、力発生装置3内に導線3aとその他の構成要素が一体化されているため、LDVによるレーザ光照射に支障がないように力発生装置3自体の設置位置を考慮する必要があるが、第2実施形態の力発生装置3Aでは、導線3eが独立して観測窓20に形成されているので、その他の構成要素(電源3h、スイッチ3i及び可変抵抗器3j)のみをレーザ光照射に支障がない位置に配置するだけで良く、使い勝手が良い。
【0031】
なお、上記実施形態では、観測窓20に形成する導線3eを1本としたが、これに限らず、図3(d)に示すように、複数本の導線3eを設けて端部で電気的に接続するようにしても良い。これにより、観測窓20の近傍を流れるトレーサ粒子Pに対して、より均一且つ強力な磁場Bを与えることができるようになり、観測窓20に対するトレーサ粒子Pの付着防止効果を向上することができる。
また、上記実施形態では、観測窓20の観測側表面に導線3eを形成する場合を例示したが、観測窓20の観測側表面、流路側表面或いは内部の少なくとも1つに導線3eを形成すれば良い。
【0032】
〔第3実施形態〕
次に、図4を参照して、本発明に係る粒子付着防止装置の第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態に係る粒子付着防止装置は、上述した第1実施形態に係る粒子付着防止装置1における力発生装置3の構成が異なるだけであるので、以下ではその異なる点のみに着目して説明する。また、以下では第1実施形態と区別するために第3実施形態における力発生装置の符号を3Bとする。
【0033】
第1実施形態の力発生装置3及び第2実施形態の力発生装置3Aは、正極性に帯電させたトレーサ粒子Pに観測窓20から遠ざける方向の力としてローレンツ力を発生させるものであるが、第3実施形態の力発生装置3Bは、正極性に帯電させたトレーサ粒子Pと観測窓20との間に観測窓20から遠ざける方向の力としてクーロン力を発生させるものである。
【0034】
具体的には、第3実施形態の力発生装置3Bは、図4に示すように、観測窓20の流路側表面を誘電分極によりトレーサ粒子Pと同一の極性に帯電(この場合、正極性に帯電)させることにより、トレーサ粒子Pと観測窓20との間に観測窓20から遠ざける方向の力としてクーロン力Fを発生させる。このような力発生装置3Bとしては、例えば観測窓20に対向する面を正極性に帯電させることが可能な帯電体(例えばコンデンサなど)を用いることができる。
なお、図4に示すように、観測窓20をOリング22を介して流路10の流路壁に嵌め込むことで観測窓20と流路壁との間に隙間を設けることにより、電荷が流路壁に逃げてしまうことを防いでいる。
【0035】
このような第3実施形態によってもLDVの流速計測精度の低下を招くことなく、観測窓20に対するトレーサ粒子Pの付着を防止することが可能となる。また、第1実施形態や第2実施形態のように、磁場Bを形成する電流Iを流すための導線3a或いは3eを設ける必要がないので、力発生装置3Bの構成を簡略化することができ、製造コストの削減を図ることができる。
【0036】
〔第4実施形態〕
次に、図5を参照して、本発明に係る粒子付着防止装置の第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態に係る粒子付着防止装置は、上述した第1実施形態に係る粒子付着防止装置1における力発生装置3の構成が異なるだけであるので、以下ではその異なる点のみに着目して説明する。また、以下では第1実施形態と区別するために第4実施形態における力発生装置の符号を3Cとする。
【0037】
第4実施形態の力発生装置3Cは、第3実施形態の力発生装置3Bと同様に、正極性に帯電させたトレーサ粒子Pと観測窓20との間に観測窓20から遠ざける方向の力としてクーロン力を発生させるものであるが、そのクーロン力を発生させる構成が異なるものである。
【0038】
具体的には、第4実施形態の力発生装置3Cは、図5に示すように、観測窓20の流路側表面に一様に形成された透明電極(例えばITO電極、またはIZO電極など)3kと、トレーサ粒子Pと観測窓20との間に観測窓20から遠ざける方向の力としてクーロン力を発生させるための電圧を透明電極3kに印加する電圧印加装置(電圧印加手段)3mとから構成されている。
なお、透明電極3kと流路10の流路壁とがショートしないように、透明電極3kと流路壁との間には隙間が設けられていると共に、流路壁はアースされている。
【0039】
電圧印加装置3mは、透明電極3kに対してトレーサ粒子Pと同一極性の電圧(つまり正極性の電圧)を印加する。これにより、トレーサ粒子Pと観測窓20との間に観測窓20から遠ざける方向の力としてクーロン力Fを発生させることができ、LDVの流速計測精度の低下を招くことなく、観測窓20に対するトレーサ粒子Pの付着を防止することが可能となる。
【0040】
以上、本発明に係る粒子付着防止装置の第1〜第4実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されず、帯電させたトレーサ粒子Pを流体F中に導入し、当該トレーサ粒子Pに対し、観測窓20から遠ざける方向の力を発生させることが可能な構成であれば、どのような構成も採用することができる。
また、第1〜第4実施形態を通じて、トレーサ粒子Pを帯電させる粒子帯電手段として金属製の粒子導入管2を採用したが、この他、物体を帯電させるために一般的に使用される帯電器(例えば、プリンタ等の電子写真方式を採用した画像形成装置において感光体を帯電させるために使用される帯電器など)を粒子帯電手段として用いても良い。
【符号の説明】
【0041】
1…粒子付着防止装置、2…粒子導入管(粒子帯電手段)、3、3A、3B、3C…力発生装置(力発生手段)、10…流路、20…観測窓、21…観測窓固定治具、30…トレーサ粒子供給装置、F…流体、P…トレーサ粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に導入されたトレーサ粒子が流路壁に設置された観測窓に付着することを防止する粒子付着防止装置であって、
前記トレーサ粒子を帯電させる粒子帯電手段と、
前記粒子帯電手段によって帯電させたトレーサ粒子に対し、前記観測窓から遠ざける方向の力を作用させる力発生手段と、
を備えることを特徴とする粒子付着防止装置。
【請求項2】
前記力発生手段は、前記観測窓から遠ざける方向の力として前記トレーサ粒子にローレンツ力が発生するような磁場を形成することを特徴とする請求項1記載の粒子付着防止装置。
【請求項3】
前記力発生手段は、
前記観測窓の観測側表面、流路側表面或いは内部の少なくとも1つに前記流体の流れ方向と平行に電流が流れるように形成されている導線と、
前記トレーサ粒子に前記観測窓から遠ざける方向の力としてローレンツ力が発生するような磁場を形成する電流を前記導線に流す電源と、
を含むことを特徴とする請求項2記載の粒子付着防止装置。
【請求項4】
前記力発生手段は、
前記観測窓の観測側表面に対向して配置されると共に前記流体の流れ方向と平行に電流が流れるように配置される導線と、
前記トレーサ粒子に前記観測窓から遠ざける方向の力としてローレンツ力が発生するような磁場を形成する電流を前記導線に流す電源と、
を含むことを特徴とする請求項2記載の粒子付着防止装置。
【請求項5】
前記力発生手段は、前記観測窓から遠ざける方向の力として前記トレーサ粒子と前記観測窓との間にクーロン力を発生させることを特徴とする請求項1記載の粒子付着防止装置。
【請求項6】
前記力発生手段は、前記観測窓の流路側表面を誘電分極により前記トレーサ粒子と同一の極性に帯電させることで前記トレーサ粒子と前記観測窓との間に前記観測窓から遠ざける方向の力としてクーロン力を発生させることを特徴とする請求項5記載の粒子付着防止装置。
【請求項7】
前記力発生手段は、
前記観測窓の流路側表面に形成されている透明電極と、
前記トレーサ粒子と前記観測窓との間に前記観測窓から遠ざける方向の力としてクーロン力を発生させるための電圧を前記透明電極に印加する電圧印加手段と、
を含むことを特徴とする請求項5記載の粒子付着防止装置。
【請求項8】
流体中に導入されたトレーサ粒子が流路壁に設置された観測窓に付着することを防止する粒子付着防止方法であって、
帯電させたトレーサ粒子を前記流体中に導入し、当該トレーサ粒子と前記観測窓との間に前記観測窓から遠ざける方向の力を作用させることで前記トレーサ粒子が前記観測窓に付着することを防止することを特徴とする粒子付着防止方法。
【請求項9】
流体中に導入されたトレーサ粒子に対して外部から計測用のレーザ光を照射するために流路壁に設置される観測窓であって、
観測側表面、流路側表面或いは内部の少なくとも1つに、前記流体の流れ方向と平行に電流を流すための導線が形成されていることを特徴とする観測窓。
【請求項10】
前記導線は、透明導電材料を用いて形成されていることを特徴とする請求項9記載の観測窓。
【請求項11】
流体中に導入されたトレーサ粒子に対して外部から計測用のレーザ光を照射するために流路壁に設置される観測窓であって、
流路側表面に、前記トレーサ粒子と前記観測窓との間に前記観測窓から遠ざける方向の力としてクーロン力を発生させるための電圧を印加するための透明電極が形成されていることを特徴とする観測窓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−276405(P2010−276405A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127627(P2009−127627)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)