説明

粒子光学部品

【課題】マルチビームを用いた荷電粒子線装置においてビーム間の結像誤差を補正する簡便な方法を実現する。
【解決手段】複数の一次電子ビームレットの焦点を形成する粒子光学部品605に於いて、第1の多孔プレート613と第2の多孔プレート614の複数の対応する開孔が互いに整列配置されており、第1の開孔615の位置における第1の幅W1を第2の開孔615’の位置における第2の幅W2よりも少なくとも5%大きく形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のビームレットを操作するための粒子光学部品、並びに、このような粒子光学部品を含む粒子光学装置及び電子ビーム検査システムに関する。さらに、本発明は、荷電粒子ビームレットの操作方法、複数の荷電粒子ビームレットの集束方法及び前記粒子光学部品において用いられるのに適した多孔プレートを製造するための方法に関する。また、本発明は、荷電粒子マルチビームレットリソグラフィシステム、及び基板上へのパターン描画方法に関する。
【0002】
本発明は、電子、陽電子、ミュー粒子、イオン(荷電原子又は分子)等の、いかなるタイプの荷電粒子にも適用することができる。
【背景技術】
【0003】
より一層小さく、かつ、複雑な微細構造装置に対する需要の増加及びこれらの装置の製造・検査プロセスにおけるスループットの増加に対する継続的な要望が、単一の電子ビームの代わりに複数の一次電子ビームレットを用いる電子顕微鏡システムを開発し、これによって、このようなシステムのスループットを大幅に向上させる動機となっている。しかし、多数のビームレットの使用により、顕微鏡やリソグラフィシステムなどの電子光学部品、電子光学装置、検査システム及び処理システムの設計に対するあらゆる新たな課題が生じている。本譲受人に譲渡された国際公開第2005/024881号(米国特許仮出願第60/500,256号)(特許文献1)には、アレイパターン状に配置された複数の荷電粒子ビームレットを形成するための粒子光学装置が記載されている。
【0004】
一般に、このような粒子光学装置、並びに、同装置を含む検査システム及びリソグラフィシステムは、被検査試料上に集束される複数の荷電粒子ビームレットを用いる。例えば、荷電粒子として電子を用いる検査システムの実施の形態の場合、電子源によって一次電子の単一のビーム(又は、粒子源のアレイからの多数のビームレット)を形成し、このビームは、複数の開孔が形成された多孔プレートに入射して、この単一の電子ビームのうちの、多孔プレートの開孔を通過する電子から複数のビームレットが生成される。複数の電子ビームレットは、一般に、多孔プレートの下流側の集束粒子光学レンズによって基板上に集束される。このようにして、一次電子スポットのアレイが基板上に形成される。一次電子が衝突することによって放出された二次電子は、CCD電子検出器の複数の検出器画素のそれぞれ1つに対して二次電子ビーム経路を通り、一次電子ビームレットのビーム経路と二次電子ビームレットのビーム経路とは、ウィーン型フィルタなどのビーム分離器によって分離されている。この装置により、単一の電子光学カラムを使用することが可能となる。このようなシステムは、本譲受人に譲渡された前記国際公開第2005/024881号に詳細に記載されている。
【0005】
このような一次電子ビームレットのアレイ、すなわち、パターンを使用するには、これらのビームレットを、強度のばらつき、アレイ内の所定位置からのずれ、収差等の光学特性のばらつきを、あったとしてもほとんど示さないように確実にかつ正確に生成する電子光学システムが必要となる。ビームレットのアレイの質、及びこれに応じて像平面に形成される一次電子スポットのアレイの質は、使用される多孔プレートの特性及び電子光学装置におけるその他の部品あるいは素子の特性の両方に依存することになる。多孔プレートの上流側の部品は、特に、単一の電子ビームの質に影響を及ぼすことになり、これにより、当該ビームから生成されるビームレットにも影響を及ぼすことになる。多孔プレートの下流側の部品は、特に、いかに良好にビームレットのアレイが試料に転写され、一次電子スポットを形成するかに影響を及ぼすことになる。荷電粒子として電子を用いるシステムに対する前記の記載は、他の種類の荷電粒子に対しても同様に適用が可能である。
【0006】
システム全体として満足な性能を実現するためには、正確に規定された荷電粒子ビームレットのアレイを形成する必要があるので、このような粒子光学システムの性能を向上させることが常に必要とされている。
【0007】
本譲受人に譲渡された前記の米国特許仮出願第60/500,256号において、様々な構成の多孔プレートが開示されている。1つの局面において、多孔プレート上の位置によって大きさ又は形状が異なる開孔を有するか、又は厳密に規則的なパターンにおけるそれぞれの位置からずれた開孔を有する多孔プレートが開示されている。開孔の大きさ/形状及び位置をこのように変化させることにより、歪曲収差等の結像誤差を補正することが可能となる。また、抵抗器ネットワークが配置された多孔プレートが記載されており、この抵抗器ネットワークは、多孔プレートに印加される電圧によって、異なる電位を有する開孔群が形成されるように構成されている。開孔に印加される電位は、当該開孔によって得られる集束効果に関連しているので、開孔は、粒子光学システムの像面湾曲が補正可能となるような異なる集束効果を有するように構成することができる。
【0008】
前記多孔プレートによって良好な結果が実現されるが、粒子光学システムの結像誤差を補正するための前記手法には、形状、大きさ及びパターンのうちの少なくとも1つが様々である開孔を有するか、又は抵抗器ネットワークを有する多孔プレートが必要であり、このことは、製造プロセスがより複雑となることにつながる場合が多い。また、結像誤差の補正能力は、粒子光学システムの結像誤差が変化する場合には、典型的には、動的補正を適切に行なうことができない、すなわち、特性の異なる別のシステムに部品を移動する必要がある。例えば、結像光学部品によって生じた像面湾曲は、空間電荷効果により、光学システムによって透過された合計ビーム電流の変化に伴って動的に変化し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/024881号(米国特許仮出願第60/500,256号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、荷電粒子のビーム及びビームレットを操作するための粒子光学部品及び粒子光学装置であって、当該粒子光学部品/装置を含む粒子光学システムの全般的な性能を高める粒子光学部品及び粒子光学装置を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、ビーム又はビームレットを操作するための粒子光学部品及び粒子光学装置であって、当該粒子光学部品/装置を含むシステムの少なくとも1つの結像誤差を補正するように構成された粒子光学部品及び粒子光学装置を提供することをさらなる目的とする。好ましくは、この1つ以上の結像誤差は、場依存性を有する、すなわち、それぞれの場の内部での位置に依存する1つ以上の収差を特に含む。結像誤差としては、像面湾曲、及びコマ収差などの他のあらゆる幾何学的収差が挙げられる。
【0012】
本発明は、粒子光学部品及び粒子光学装置であって、これを含む粒子光学システムの結像誤差を高い自由度で補正するように構成された粒子光学部品及び粒子光学装置を提供することを別の目的とする。
【0013】
本発明は、粒子光学部品及び粒子光学装置であって、これを含む粒子光学システムの結像誤差を補正するように構成され、得られる補正の程度を調整することができる粒子光学部品及び粒子光学装置を提供することも目的とする。
【0014】
本発明は、前記の目的のいずれかを達成する粒子光学部品及び粒子光学装置を含む荷電粒子検査システム及び荷電粒子リソグラフィシステムを提供することをさらなる目的とする。基板上にパターンを描画する改良された方法を提供することも目的とする。
【0015】
本発明は、静電気環境及び磁気環境の両方で用いられるのに適した、粒子光学収差の補正を行なうことができる粒子光学部品を提供することをさらなる目的とする。
【0016】
本発明は、荷電粒子ビームレットの操作方法、及び粒子光学収差の補正を行なうのに適した荷電粒子ビームレットの集束方法を提供することをさらなる目的とする。
【0017】
さらに、本発明は、粒子光学システムの改良された動作方法及び本発明に係る粒子光学部品において用いられるのに適した多孔プレートの製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
本発明は、荷電粒子ビームレットの開孔数の調整を可能にする粒子光学部品を提供することをさらなる目的とする。本発明は、多孔プレートの位置もしくは他の特性及び/又は粒子光学システムの他の光学部品の光学特性の検査を可能にする粒子光学部品を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下においてより詳細に説明されるように、一次電子などの荷電粒子ビームレットのより良好なアレイを被露光/検査試料に供給するように構成された粒子光学部品、粒子光学装置及び粒子光学システムが提供される。加えて、複数のビームレットを操作するための方法、粒子光学システムの動作方法、荷電粒子ビームレットの集束方法、並びに、本発明に係る粒子光学部品の一部として用いられる部品の製造方法及び基板上にパターンを描画する方法が本発明によって提供される。
【0020】
また、本発明の粒子光学部品は、装置内部及び/又は少なくとも近傍において、所望の幾何学的配置の電場又は磁場、特に、収差などの1つ以上の結像誤差を補正するように構成された電場又は磁場を生成し、かつ、操作することを可能にする装置を提供する。
【0021】
第1の局面において、本発明は、複数の荷電粒子ビームレットを操作するための粒子光学部品であって、
複数の開孔を有する第1の多孔プレートと、複数の開孔を有し、前記第1の多孔プレートとの間に間隙が形成されるように前記第1の多孔プレートから離間した第2の多孔プレートとを備え、
前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔は、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の各開孔が、前記第2の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔と整列されるように配置され、
前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の第1の開孔の位置における前記間隙の第1の幅は、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の第2の開孔の位置における前記間隙の第2の幅よりも少なくとも5%だけ大きいことを特徴とする粒子光学部品を提供する。
【0022】
例示的な実施の形態において、前記第1の幅は、前記第2の幅よりも、少なくとも10%大きくてもよく、又は少なくとも20%大きくてもよい。さらなる例示的な実施の形態において、前記第1の幅は、前記第2の幅よりも、少なくとも50%、100%、200%、300%、又は数百パーセント大きくてもよい。
【0023】
前記複数の開孔は、典型的には、開孔パターンを形成し、この開孔パターンは、規則的であっても不規則であってもよい。一般に、対称的なパターンなどの規則的な開孔パターンが好ましい。このパターンは、例えば、多数の開孔が行と列に配置された、高度に規則的な矩形の開孔グリッドであってもよく、行又は列において互いに隣接して配置される開孔は、一般に、同じ距離だけ離間しており、これらの開孔は、一般に、同じ直径を有する。他の適したパターンの様々な例が、本譲受人に譲渡された国際公開第2005/024881号(PCT/US2004/029079)において開示されている。
【0024】
開孔パターンは、一般に、それに対応付けられた中心を有し、この中心は、当該パターンの特性を示すための基準点としての機能を果たし得る。
【0025】
本明細書における開孔は、貫通孔又は貫通穴であり、すなわち、これらは、前記プレートの厚さ全体(開孔の位置において)を通って延びており、従って、これらが含まれるプレートの前側及び裏側の両方において開口部を有する。本明細書におけるプレートは、薄い箔、又は薄い箔を形成する1つ以上の区分を有するプレートも含む。
【0026】
第1及び第2の多孔プレートには、第1及び第2の多孔プレートを互いに隣接して位置づけてこれらの間に間隙を形成する際に、これらが互いに適切に整列され得るか、あるいは正しく位置合わせされ得るように構成されたそれぞれの大きさ、形状及び位置を有するそれぞれの複数の開孔が形成されている。第1の多孔プレートの複数の開孔の各開孔は、対応付けられた整列開孔対を形成するように当該開孔に対応付けられた、第2の多孔プレートの対応付けられた開孔を有する。好適な実施の形態において、これらの開孔は、第1の多孔プレートにおける開孔断面の中心を通って延びる軸が、第2の多孔プレートの対応する整列開孔断面の中心を通って延びる軸と一致するように、例えば、第1の多孔プレートの開孔の直径の0.05倍の範囲であり得る少なくとも所定の整列精度内で整列されている。他の例示的な実施の形態において、整列は、第1の多孔プレートの開孔を通過する荷電粒子ビームレットが第2の多孔プレートの整列開孔を第2の多孔プレートに衝突することなく通過することができるように、互いに整列された開孔を配置することを含み得る。さらなる開孔プレートの開孔の整列についても同じことが当てはまる。
【0027】
他の実施の形態において、開孔は、それぞれの中心が、互いにわずかにずれるように整列されてもよい。本実施の形態は、例えば、衝突ビームレット/荷電粒子源等の方向の傾斜を補正するのに特に有用である。
【0028】
開孔にビーム操作性を付与するのに加えて、ビーム操作用開孔の形状を、多孔プレートによって生成される電場の所望の電場からのずれを補償するように設計してもよい。特に、ビーム操作用開孔の形状を、電場操作用開孔の基本の形状にさらなる形状特徴が付加されるように設計してもよい。基本の形状は、開孔を通過するビームレットに対して所望のビーム操作効果を得るために、粒子光学設計の規則にしたがって設計される。例えば、基本の形状は、円形レンズの効果を得るために円形としてよく、又は、基本の形状は、乱視用レンズの効果を得るために楕円形としてもよい。
【0029】
前記間隙の第1及び第2の幅は、第1の多孔プレートの2つの異なる開孔の2つの異なる位置において測定される。当然ながら、それぞれの幅は、第2の多孔プレートの対応する位置で測定した場合でも同じになる。間隙の幅は、開孔の位置、最も好ましくは、第1の多孔プレートの第1の面の円形開孔の開口部断面の周辺上の点などの、開孔の縁端部において求められる。しかし、異なる基準点を用いることも考えられる。第1の多孔プレートの第1の面の平面における開孔の開口部の表面は、一般に、幾何学的中心を有することになり、これも基準点として用いることができる。
【0030】
本発明の例示的な実施の形態において、第1の多孔プレートには、これと整列された第2の多孔プレートの複数の開孔のそれぞれの開孔と形状、大きさ及び相対位置が実質的に同一である複数の開孔が形成されている。他の例示的な実施の形態において、互いに整列された第1及び第2の多孔プレートの開孔は、形状及び/又は大きさにおいて異なっていてもよいし、及び/又は、互いにわずかにずれるように配置されていてもよい。但し、これらの差異は、結像特性の変化が所定の限度内にとどまるように、すなわち、このような非対称性が結像性能に及ぼす作用が最小限にとどまるように選択するのがよい。前記複数の開孔に加えて、第1又は第2の多孔プレート又はこれらの両方は、それぞれの他の多孔プレートにおいて対応物、すなわち、対応付けられた開孔を有しない開孔を含み得る。一般に、これらのさらなる開孔は、荷電粒子を通過させる以外の目的でしかるべく用いられる。これらは、本譲受人に譲渡された国際公開第2005/024881号に記載されているように、いわゆる縁効果等を補正するために設けられてもよい。
【0031】
本発明の第1の局面に係る粒子光学部品は、粒子光学収差などの1つ以上の結像誤差の補正に特に有利であることが分かっている。
【0032】
本発明の粒子光学部品によって補正されるのに特に適した結像誤差は、例えば、像面湾曲又は他の幾何学的収差である。本発明の粒子光学部品を用いて、非点収差、歪曲収差等の他の様々な結像誤差を補正してもよい。
【0033】
本発明者らは、特定の形状及び/又は互いに対する向きを有し、整列開孔を有する2つの多孔プレートを用いることにより、多孔プレートに適切な電位を印加するか、又は、多孔プレートに適切な磁束を誘導する際に、多孔プレートの間の間隙に特定の形状の電場又は磁場を生成することが可能となり、この電場又は磁場は、少なくとも1つの結像誤差を補償するように適切に構成することができることを見出した。
【0034】
前記間隙における電場又は磁場の補正特性又は補償特性は、例えば、多孔プレートのレイアウト、特に、これらの形状及び対称性、これらの互いに対する配置、異なる位置において結果として生じる間隙幅、これらに誘導される磁束、印加される電位、及び粒子光学システム内の粒子光学部品の位置によって制御することが可能である
尚、本発明の粒子光学部品は、補正装置のみとして用いてもよいし、又は、システム全体における位置や、上流側及び下流側の電場又は磁場の有無及び形態等によっては、同部品のビームレット生成特性及び/又は集束特性と組み合わせて用いてもよい。
【0035】
また、第1及び第2の多孔プレート間に電位差が生じていないか、これらに磁束が誘導されていない場合には、電場又は磁場によってそれぞれ間隙において得られる補償効果あるいは補正効果は、実質的に、オフに切り換わり、補正が一時的にでも不要な場合には、第1及び第2の多孔プレートは、代わりに、単一の多孔プレートとして用いることができる。
【0036】
さらに、本発明に係る1つ以上の粒子光学部品を、粒子光学システムにおいて用いることが可能である。複数の粒子光学部品が用いられている場合、各粒子光学部品は、所定のタイプの収差などの所定のタイプの結像誤差を補正するように個々に構成してもよい。その場合、各粒子光学部品は、1つの特定の結像誤差を補正するために用いることができる。そうすれば、これらの粒子光学部品によって得られる個々の補正効果が合わさり、総合的な補正効果が得られることになる。
【0037】
簡単な例示的な実施の形態において、前記粒子光学部品は、一方の多孔プレートが他方に対して傾斜している、2つの平面平行な多孔プレートを含み得る。このような構成の間隙における電束密度又は磁束密度は、間隙幅が減少するにしたがって徐々に増加することになる。
【0038】
第1及び第2の多孔プレートがこれらの間に間隙が形成されるように配置され、前記第1の多孔プレートは、前記第2の多孔プレートに対向する第1の面を有し、前記第2の多孔プレートは、前記第1の多孔プレートに対向する第1の面を有する。
【0039】
第1及び第2の多孔プレートの第1の面は、前記それぞれの複数の開孔の複数の開孔を含む領域をそれぞれ有し、一般には、(開孔の)第1及び第2の位置を含む。この領域は、例えば、それぞれの複数の開孔のうちのいくつかの開孔、大部分の開孔、又は全ての開孔を含み得る。
【0040】
本発明の例示的な実施の形態において、各第1の面は、前記それぞれの複数の開孔の複数の開孔を含む領域を有し、前記第1の面のうちの少なくとも一方は、前記領域内の平面である。
【0041】
第1及び第2の多孔プレートの第1の面の領域は、互いに対応している、すなわち、対応する、好ましくは同じ形状及び大きさを有し、かつ、同じ整列開孔を含むことが好ましい。別の例示的な実施の形態において、第1の多孔プレートの第1の面の領域は、第2の多孔プレートの第1の面の領域とは少なくとも部分的に異なる大きさ、形状及び/又は位置を有し得る。
【0042】
本明細書における平面状の面は、任意の2つの隣接点を通って適用される接線の傾きが、大きい急激な変化(存在する場合)ではなく段階的変化のみを示すようなものである。例えば、第1及び第2の多孔プレートの第1の面は、深い溝、段、へこみ等を含まないものであってもよい。平面状という特徴は、表面の平滑性の程度を示す尺度を指すのではなく、当該面に平行な方向から見て、1ナノメートル超のオーダーである尺度を指し、平坦面及び曲面の両方に適用される。平面状の面により、第1及び第2の多孔プレートに電位を印加した際に前記間隙に生成される電場を良好に制御することが可能となる。同じことが、磁場用途にも同様に適用される。この例示的な実施の形態において、第1の面の表面は、少なくとも、第1及び第2の幅が求められる開孔の位置を含む領域内においてのみ平面状であってもよく、又は、より広い領域にわたって平面状であってもよい。
【0043】
さらなる例示的な実施の形態において、前記少なくとも一方の第1の面は、前記領域内の曲面である。例えば、前記領域は、それぞれの複数の開孔の全ての開孔を含み、全ての開孔が曲面上に位置していてもよい。他の例示的な実施の形態において、前記領域は、前記複数の開孔の一部のみを含み、その開孔部分が曲面上に配置されていてもよい。
【0044】
例えば、前記少なくとも一方の第1の面は、前記領域内の凸面であってもよい。別の例示的な実施の形態において、前記少なくとも一方の第1の面は、前記領域内の凹面である。例えば、凸面形状又は凹面形状は、球面形状であってもよいし、又は非球面形状であってもよい。本明細書における非球面形状は、球面形状からのあらゆる可能なずれを意味する。
【0045】
例示的な実施の形態において、前記粒子光学部品は、2つの平凸面状の多孔プレートを含んでいてもよい。
【0046】
例えば、第1の多孔プレートの第1の面は、前記領域において凸面形状であってもよく、一方、第2の多孔プレートの第1の面は、凹面形状、平坦、又はランダムな曲面状であってもよく、その結果、前記2つの多孔プレートが全体として非対称の配置になっていてもよい。
【0047】
例示的な実施の形態において、第1及び第2の多孔プレートの前記第1の面の形状は、少なくとも前記領域内において、特に、前記第1及び第2の多孔プレート間に延びる平面、すなわち、対称面に対して、互いに関して対称である。特に、第1の多孔プレートの第1の面の前記領域の形状は、好ましくは、第2の多孔プレートの第1の面の対応する領域の形状に対して鏡面反転していてもよい。
【0048】
光軸を有する実施の形態においては、前記対称面は、好ましくは、当該光軸に直交して配置される。
【0049】
さらなる例示的な実施の形態において、第1の面のうちの少なくとも一方の形状は、第1及び第2の多孔プレートを横切って延びる軸、例えば、光軸に対して対称である。従って、このような実施の形態においては、前記面は、回転対称となる。
【0050】
場依存性を有する結像誤差は、一般に径方向依存性を示し、すなわち、それらの程度は半径の中心からの距離に依存し、対称中心は、粒子光学部品の光軸に典型的に一致しているので、前記に説明した対称的な例示的な実施の形態は特に有利である。
【0051】
好適な実施の形態において、両方の第1の面は、凸面であり、かつ、互いに鏡面反転している。従って、前記凸面の頂点において最小幅を有する間隙が形成され、この間隙の幅は、前記頂点からの距離が増加するにしたがって増加する。本実施の形態は、第1及び第2の多孔プレートの両方における、それぞれの頂点に一致する中心を有する開孔パターンに関連して用いられるのが最も好ましく、この開孔パターンは、好ましくは、当該パターンの中心を中心とした回転対称性も有する。また、前記頂点及び対称中心は、光軸に一致しているのも好ましい。本実施の形態は、例えば、像面湾曲の補正に非常に有利であることが分かっている。
【0052】
実用性の観点から、同一の第1及び第2の多孔プレートを用いることが実質的な利点をもたらすことが分かっている。前記多孔プレートの製造のためのフォトリソグラフィ処理において用いられるマスクが、例えば、欠陥を有している場合、この欠陥は、同じマスクが使用される製造プロセスから得られた個々の多孔プレートを、第1の多孔プレートに結果として生じる欠陥が第2の多孔プレートにおける同様の欠陥と向かい合う、すなわち、整列されるように配置すれば、良好に補償することができ、これにより、この欠陥は実質的に相殺される。
【0053】
本発明の例示的な実施の形態において、前記第2の幅は、前記第1の多孔プレートの複数の開孔の前記第2の開孔の直径の100%〜1000%、例えば、約150%〜約800%、又は約200%〜約750%の範囲内にある。第2の開孔が円形ではなく、例えば、楕円形あるいは不規則な形状である実施の形態においては、第1の面の平面における開孔の領域を測定し、そして、前記間隙の幅を求めるために、前記領域を円形であるかのようにみなして、この領域から直径を算出する。第2の幅が測定され、第2の開孔は、前記複数の開孔の中央に位置することが好ましい。また、第1の幅が測定され、第1の開孔は、周辺に位置する、好ましくは、複数の開孔の他の開孔の距離と比べて、複数の開孔の中央から最も遠い距離に位置することが好ましい。
【0054】
さらなる例示的な実施の形態において、前記第1の幅は、前記第1の開孔の直径の約150%〜約1500%、例えば、約250%〜約1300%又は約400%〜約1000%の範囲内にある。第1の開孔が円形でない場合、直径を導き出すために、第1の開孔に関連して前記に説明された方法が適用される。
【0055】
前記粒子光学部品のさらなる例示的な実施の形態において、開孔の中心がピッチPだけ離間した開孔パターンの中心からN番目の開孔の位置における第1及び第2の多孔プレートの間の間隙の幅wは、以下の関係
【0056】
【数1】

【0057】
によって表すことができ、
式中、
Pは、第1の多孔プレートのピッチ、すなわち、隣接する開孔の中心間の距離をmm単位で示し、
Nは、開孔パターンの中心から数えられ、絶対値が当該中心からの距離が増加するにしたがって増加する開孔数を示しているので、
(P×|N|)は、開孔パターンの中心からの開孔Nの距離をmm単位で示している。
【0058】
他の実施の形態において、定数c=0.08mm及び定数k=0.0551/mm2は、より小さい値を有していてもよいし、又は、より大きい値を有していてもよい。
【0059】
好適な実施の形態において、前記第1の多孔プレートの開孔の直径は、前記第1の多孔プレートの前記開孔と整列された前記第2の多孔プレートの対応する開孔の直径に実質的に等しい。さらなる例示的な実施の形態において、第1の多孔プレートには、開孔が形成されており、当該開孔は、これらと整列された第2の多孔プレートのそれぞれの開孔と形状、大きさ及び相対位置のうちの少なくとも1つが実質的に同一である。これらの実施の形態は、第1の多孔プレートの開孔を出射するビームレットが、荷電粒子強度を大きく失うことなく第2の多孔プレートの対応する開孔に入射することが可能であるという点で有利である。さらに、第1の面の開孔及び第1の面における形状の対称性が高いほど、2つの整列開孔の列による結像誤差の発生を防止することがより容易となる。例えば、第1の面が鏡面反転した対称性を有する場合、第1の多孔プレートの開孔を通過するビームレットは、第2の多孔プレートの対応する開孔において鏡面反転した環境と向かい合うので、第1の多孔プレートによって当該ビームレットに及ぼされるあらゆる影響が実質的に反転され、従って、第2の多孔プレートによって無効化される。
【0060】
他の例示的な実施の形態において、第1及び第2の多孔プレートの互いに整列された開孔は、異なる形状又は大きさを有していてもよいし、あるいは、互いにわずかにずれて配置されていてもよい。但し、この差異又はずれは、このような非対称性によって、許容できないほど有害な影響が及ぼされることがないように選択するのがよい。
【0061】
それぞれの複数の開孔の開孔は、全て同じ直径を有していてもよいし、あるいは異なる直径を有していてもよい。開孔の直径が多孔プレートにわたって様々である多孔プレートは、本譲受人に譲渡された前記に引用した国際公開公報に記載されている。例えば、開孔が中心を有するパターン状に配置されている場合、多孔プレートに形成される開孔の直径は、開孔パターンの中心からの距離が増加するにしたがって変化してもよい。直径は、開孔パターンの中心からの距離が増加するにしたがって増加するか又は減少してもよく、この増加又は減少は、漸進的、すなわち、段階状あってもよいし、あるいは、他の適した形態であってもよい。開孔の直径は、開孔プレートの一方の側から他方の側に向かって変化、例えば、増加し、その後減少してもよく、この逆もまた同様である。開孔の直径は、結像誤差を補償するための手段として用いてもよいし、さらに、もしくは、又は、多孔プレートに入射する荷電粒子ビーム又はビームレットの電子密度におけるばらつきに対応するために用いてもよい。開孔は、楕円形状を有していてもよい。このような実施の形態において、開孔のピッチは、変化、例えば、開孔パターンの中心からの距離が増加するにしたがって増加してもよく、及び/又は、楕円形状は、対応する楕円の軸のうちの少なくとも1つの方向に対して変化してもよい。
【0062】
本発明の粒子光学部品の例示的な実施の形態において、第1の多孔プレートの複数の開孔の隣接する開孔間の距離、すなわち、ピッチPは、約5μm〜約200μmの範囲内にあってもよい。ピッチとは、1つの開孔の中心から隣接する開孔の中心に向かって測定された、隣接する開孔間の距離を意味する。多孔プレートの第1の方向において互いに隣接する開孔間の距離は、各隣接する開孔対に対して同じ距離であってもよいし、あるいは、異なっていてもよい。例えば、隣接する開孔間の距離は、開孔パターンの中心からの距離が増加するかあるいは減少するにしたがって連続的に減少してもよい。
【0063】
開孔の直径Dは、0.1×P〜0.5×P、0.3×P〜0.6×P、0.4×P〜0.7×P、0.5×P〜0.7×P、0.5×P〜0.6×P、0.6×P〜0.7×P、0.7×P〜0.8×P及び/又は0.8×P〜0.9×Pの範囲内にあってもよい。
【0064】
前記複数の開孔の開孔は、同じ形状を有していても、あるいは、異なる形状を有していてもよい。形状は、円形、例えば、楕円形であっても、あるいは、他の任意の適した形状であってもよい。
【0065】
前記第1及び第2の多孔プレートのうちの少なくとも一方は、例えば、シリコンからなっていてもよい。シリコンは、例えば、シリコンを精度よく加工する方法が十分に確立されており、また、信頼性が高いという点において、幅広い利点をもたらす。また、シリコンの半導体特性は、本発明の用途に適した電位を印加することを可能にするため、本発明に係る部品に非常に適している。
【0066】
第1もしく第2の多孔プレート、又は両方の、好ましくはその第2の側、すなわち、それぞれの他方の多孔プレートから離れる方向に向いた側に、チタン、金、白金もしくは他の任意の貴金属の薄膜などの薄膜を設けてもよい。別の実施の形態においては、第1及び/又は第2の多孔プレートの第2の側に均一な炭素薄膜を用いてもよい。この薄膜のほかに、接着剤を用いて、多孔プレートの表面に対する薄膜の接着性を高めてもよく、例えば、プレート表面と金属薄膜との間に接着剤の薄膜を用いてもよい。例としては、Cr、W、Pt又はこれらの任意の適した組み合わせを接着剤として用いることができる。これらの例示的な実施の形態は、特に、多孔プレートに電位が印加される際に、それぞれの多孔プレートを異物混入から保護するために有利であると共に、温度及び/又は各表面において蓄積される電荷の減少や当該表面の酸化を防止するのに役立ち得る。
【0067】
例示的な実施の形態において、前記粒子光学部品は、前記第1の多孔プレートを前記第2の多孔プレートに対して取り付けるための取付構造をさらに含む。例示的な実施の形態において、取付構造は、多孔プレートのそれぞれの縁端部に配置された1つ以上のスペーサ素子を含むスペーサ装置を備える。スペーサ素子は、第1及び第2の多孔プレートをしかるべき位置に固定しつつ、それらの間に所定の幅の間隙を形成するのに適した寸法を有する。これに加え、又はこの代わりに、取付構造は、それぞれの固定素子が多孔プレートの一方を別の固定素子によって保持される他方の多孔プレートから所定の距離をおいて保持する固定素子を有するフレームを含んでいてもよい。第1及び第2の多孔プレートは、互いに電気的に絶縁されるように取り付けられるのが最も好ましい。他の実施の形態において、多孔プレートは、それぞれの周辺において互いに適切に接着されていてもよい。
【0068】
前記取付構造は、例えば、前記第1の多孔プレートの位置を前記第2の多孔プレートに対して(従って、当然この逆の場合も同様に)調整するための少なくとも1つのアクチュエータを含んでいてもよい。前記位置は、水平位置であっても、垂直位置であっても、あるいは回転位置であってもよく、垂直位置を調整することにより、多孔プレート間に形成される間隙の幅を調整することが可能となり、水平位置又は回転位置を調整することにより、第1の多孔プレートの開孔を第2の多孔プレートの対応する開孔と整列させることが可能となる。
【0069】
一方の多孔プレートの開孔と他方の多孔プレートの対応する開孔の整列は、約100nmよりも良好な整列精度で行なわれることが好ましい。例えば、整列精度は、約1000nm〜約2μmの範囲内にあってもよい。必要とされる整列精度は、個々の粒子光学システム及び粒子光学部品に大きく左右されることが当業者には明らかである。同様に、第1及び第2の多孔プレートの間の間隙の幅は、例えば、約0.5μm又は1μmの所定の精度値に設定され得ることが好ましい。
【0070】
前記取付構造が、特に多孔プレートの垂直方向の調整のためのアクチュエータを形成する実施の形態においては、アクチュエータは、荷電光学ビーム又はビームレットの動作パラメータ又は特性が変化した際に容易に調整を可能にし、様々な動作条件又は環境変化などを許容するように構成されてもよい。
【0071】
例えば、多孔プレートの互いに対する整列は、多孔プレートに対応付けられた部品によって反射又は透過された光によるモアレパターン又はインターフェログラムを生成することによって光学的に制御され得る。高精度整列の背景情報及び例は、以下の文献に示されている。マイクロ光学部品及びMEMSを用いた微細化システムについてのSPIE会議の一部(1999年9月、サンタクララ)においてのA.Tuantranontらによる「マイクロミラーを有するマイクロレンズアレイの自己整列組立体(Self−Aligned Assembly of Microlens Arrays with Micromirrors)」、SPIE Vol.3878、90〜100頁、及びマイクロマシニング及び微細加工処理技術についてのSPIE会議IVの一部(1998年9月、カリフォルニア州サンタクララ)においてのM.B.コーン(Cohn)らによる「MEMのためのマイクロアセンブリ技術(Microassembly Technologies for MEMS)」、SPIE Vol.3511、2〜16頁。これらは、参照により本明細書に援用される。
【0072】
例示的な実施の形態において、前記粒子光学部品は、複数の開孔が形成された第3の多孔プレートであって、前記第1の多孔プレートが前記第3の多孔プレートと前記第2の多孔プレートとの間に配置されるように配置された第3の多孔プレートをさらに備え、前記第3の多孔プレートの前記複数の開孔は、前記第3の多孔プレートの前記複数の開孔の各開孔が前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔とそれぞれ実質的に位置合わせされるか整列されるように配置されている。他の例示的な実施の形態において、第3の多孔プレートは、第2の多孔プレートが第1及び第3の多孔プレート間に配置されるように用いられてもよい。
【0073】
第3の多孔プレートは、当該プレートに入射する1つ以上の荷電粒子ビームから複数の荷電粒子ビームレットを生成するために有利に用いることができる。第3の多孔プレートの複数の開孔は、第1及び第2の多孔プレートのうちの少なくとも一方の開孔パターンと少なくとも部分的に対応するパターン状に配置されることが好ましい。第1、第2及び第3の多孔プレートは、共通の開孔パターン(又はサブパターン)を有することが好ましい、すなわち、複数の開孔は、開孔が互いに整列された一定の開孔パターン状に配置される。
【0074】
第3の多孔プレートを設けると、第1の多孔プレートに入射する、特にその第2の面に入射する荷電粒子の数が減少(第1の多孔プレートに衝突する単一の荷電粒子ビームに比べて)するような数の荷電粒子ビームレットを生成することができ、これにより、加熱作用及び帯電作用、並びに、異物混入による破損などが最小限になるという利点が生じる。
【0075】
第3の多孔プレートを含む前記粒子光学部品の例示的な実施の形態において、第3の多孔プレートの開孔の直径は、第3の多孔プレートの開孔と整列された第1の多孔プレートの対応する開孔の直径よりも小さくてもよい。これは、互いに整列された第3及び第1の多孔プレートの複数の開孔のうちの1つ又はそれ以上、好ましい全てに対して当てはまり得る。本発明の本実施の形態において、ビームレットは、第1の多孔プレートの対応する整列開孔の直径よりも、また好ましくは、第2の多孔プレートの対応する整列開孔の直径よりも小さい直径を有する第3の多孔プレートによって生成し、第1及び/又は第2の多孔プレートの開孔に近接する表面に衝突する電子による損失及び結果として生じる加熱作用、異物混入などが実質的に防止されるか、又は最小限にされるようにしてもよい。本発明の本実施の形態により、荷電粒子ビームレットの開口数を変化させることも可能となる。例えば、第1の大きさの直径を有する開孔を含む第3の多孔プレートが第1の開口数を有する荷電粒子ビームレットを生成し、第1の大きさよりも小さい第2の大きさを有する開孔を含む第3の多孔プレートが第1の開口数よりも小さい第2の開口数を有する荷電粒子ビームレットを生成する。前記例示的な実施の形態において、第3の多孔プレートの開孔の直径は、好ましくは、第3の多孔プレートの当該開孔と整列された第1の多孔プレートの対応する開孔の直径の約100%〜約50%未満、例えば、約99%〜約50%、又は約99%〜約75%である。第1(及び/又は第2)の多孔プレートの複数の開孔の開孔が大きさにおいて様々である場合、第3の多孔プレートの対応する整列開孔は、例えば、個々の開孔の所定の割合だけ小さいか、又は、全開孔に対して一定量だけ小さい(第1の多孔プレートの整列開孔の大きさに対して)大きさを有し得る。
【0076】
第1及び第2の多孔プレートの前記実施の形態は、開孔及びそのアレイに関連する大きさ、形状、配置及び多様性に関して、第3の多孔プレートにも同様に適用される。
【0077】
例示的な実施の形態において、第3の多孔プレートは、第1の多孔プレートの第2の面から、約0からおよそ数ミリーメートルの範囲の距離をおいて配置される。
【0078】
第3の多孔プレートは、第1の多孔プレートから第2の多孔プレートよりもさらに離間していてもよく、例えば、第1の多孔プレートと第3の多孔プレートとの間の距離は、第1の多孔プレートが第3及び第2の多孔プレート間に配置される実施の形態においては、第1の幅の少なくとも2倍、又は第1の幅の3〜5倍であってもよい。第2の多孔プレートが第1及び第3の多孔プレート間に配置される実施の形態においては、これは第1の多孔プレートの代わりに第2の多孔プレートに当てはまり、逆もまた同様である。
【0079】
第3の多孔プレートを含む例示的な実施の形態は、好ましくは、前記第3の多孔プレートを前記第1の多孔プレートに対して取り付けるための取付構造をさらに含み、前記取付構造は、好ましくは、前記第3の多孔プレートの位置を前記第1の多孔プレートに対して調整するための少なくとも1つのアクチュエータを含む。
【0080】
例示的な実施の形態において、第3の多孔プレートは、それぞれが複数の開孔を含み得る多数の開孔アレイを含んでいてもよい。例えば、第3の多孔プレートは、一方のアレイの開孔が他方のアレイの対応する開孔の直径よりも小さい直径を持つ2つの開孔アレイを有していてもよい。開孔の大きさ、形状、配置(例えば、ピッチ、位置)、数などに関しての特性が異なる、従って、透過率などの粒子光学特性が異なる開孔アレイを一方の多孔プレートに含んでいてもよい。特定の要件又は粒子光学システムにおける粒子光学パラメータの変更に応じて、特定の用途に対して異なる開孔アレイを用いることができるように、適当な取付装置を用いて第3の多孔プレートを移動してもよく、すなわち、第3の多孔プレートを荷電粒子の1つ以上のビームの経路に配置し、この荷電粒子を次いで第1及び第2の多孔プレートに導く。これにより、例えば、第3の多孔プレートの透過率を変化させることが可能となり、これは、発生するクーロン作用に対して有利に用いられることができる。また、歪曲収差作用を補償するために、第3の多孔プレートを、当該プレートのそれぞれの複数の開孔が第1及び第2の多孔プレートの対応する開孔に対してわずかにずれて配置されるようにずらしてもよい。
【0081】
例示的な実施の形態において、第3の多孔プレートは、第3の多孔プレートを所望の温度に維持するための温度制御装置、例えば、第3の多孔プレートを所望の温度に加熱するための加熱装置に接続される。多孔プレートの温度を1℃などの一定の精度で制御することは、多孔プレートの互いに対する正確な整列を維持するのに役立つ。さらに、多孔プレートを加熱することは、当該プレートへの異物混入を低減するのに役立ち得る。
【0082】
前記実施の形態に加えて、又はこれに代えて、前記粒子光学部品の例示的な実施の形態は、少なくとも1つの開孔を有する第4の開孔プレートであって、前記第1の多孔プレートが前記第4の開孔プレートと前記第2の多孔プレートとの間に配置される第4の開孔プレートをさらに含んでいてもよく、第1の位置において、前記第4の開孔プレートの前記少なくとも1つの開孔の1つの開孔が前記第1の多孔プレートの第1の開孔と整列され、かつ、前記第1の位置とは異なる第2の位置において、前記1つの開孔が前記第1の多孔プレートの前記第1の開孔とは異なる第2の開孔と整列されるように、前記第4の開孔プレートを前記第1の多孔プレートに対してずらすための少なくとも1つのアクチュエータを含む取付構造をさらに備えていてもよい。
【0083】
例示的な実施の形態において、第4の開孔プレートの取付構造は、第4の開孔プレートを水平方向においてずらすかあるいは軸を中心に回転させ、第4の開孔プレートの前記少なくとも1つの開孔を第1の多孔プレートの異なる開孔と整列させることができるように構成されている。第4の開孔プレートは、垂直方向に変位可能か、又は傾斜可能等であってもよい。第4の開孔プレートは、少なくとも1つの開孔を有し、例えば、2つ又はそれ以上の開孔を有していてもよい。例示的な実施の形態において、第4の開孔プレートは、少なくとも第1の多孔プレートの複数の開孔のパターンの少なくとも一部に対応し得る開孔パターンを有していてもよい。例えば、第4の開孔プレートは、第1の多孔プレートの開孔パターンの一部に対応する、すなわち、第1の多孔プレートの開孔パターンのサブパターンである、3つの開孔で形成されるパターンを有し、第4の開孔プレートのサブパターンの開孔と第1の多孔プレートのパターンの対応する開孔とが前記1つ以上の粒子ビームの経路方向において互いに整列され得るようにしてもよい。
【0084】
前記少なくとも1つの開孔は、第1及び第2、そして、設けられている場合は第3の多孔プレートのうちの少なくとも1つの複数の開孔のうち、第1の開孔といった、1つの開孔の直径よりも小さい直径を有していてもよい。例えば、第4の開孔プレートの前記少なくとも1つの開孔のうちの少なくとも1つは、前記複数の開孔の平均開孔直径よりも小さい直径、又は、前記複数の開孔の最小開孔直径を有する。第4の開孔プレートは、異なる直径及び異なるパターンの開孔、又は同じもしくは異なる開孔を有する開孔サブパターンのうちの少なくとも一方を(サブ)パターン内に含んでいてもよい。
【0085】
第3の多孔プレート及び第4の開孔プレートの両方が設けられている場合、第4の開孔プレートは、例えば、第3の多孔プレートが第4の開孔プレートと第1及び第2の多孔プレートとの間に配置されるように配置されていてもよい。他の例示的な実施の形態において、第3の開孔プレート及び第4の開孔プレートは、1つのプレート上に配置されるか、あるいは組み合わされて第3及び第4の開孔プレートの両方の特性を有する単一のプレートを形成してもよく、本実施の形態においては、前記1つのプレートの第3の開孔プレートを保持する部分又は第4の開孔プレートを保持する部分のいずれかを前記1つ以上の荷電粒子ビームのビーム経路に配置するために、少なくとも1つのアクチュエータを含む取付構造が設けられているのが好ましい。
【0086】
第4の多孔プレートを含む本発明の実施の形態は、第1及び第2の多孔プレートの整列性の検査、又は例えば第1又は第2の多孔プレートの個々の開孔の特性の検査に有利に用いることができる。すなわち、第4の開孔プレートは、検査用開孔プレートとして用いることができる。また、第4の開孔プレートは、粒子光学システムの他の部品の光学特性の検査に用いることができる。
【0087】
従って、第2の局面において、本発明は、粒子光学システムの動作方法であって、
少なくとも1つの開孔を有する検査用開孔プレートを、複数の開孔を含む多孔部品に対して第1の位置に、前記第1の位置において前記検査用開孔プレートの第1の組の開孔が前記多孔の第1の組の開孔と整列されるように配置する工程であって、前記それぞれの組の開孔が、それぞれ少なくとも1つの開孔を有する、工程と、
一組の荷電粒子ビームレットを、前記検査用開孔プレートの前記第1の組の開孔及びそれと整列された前記多孔部品の前記第1の組の開孔に透過させる工程と、
所定の平面における前記透過ビームレットの位置、形状及び寸法、並びに、前記透過ビームレットの合計強度又は個々の強度のうちの少なくとも1つを求める工程と、
前記検査用開孔プレートの前記第1の組の開孔が前記多孔部品の第2の組の開孔と整列されるように、前記検査用開孔プレートを前記多孔部品に対して第2の位置に配置する工程と、
一組の荷電粒子ビームレットを、前記検査用開孔プレートの前記第1の組の開孔及びそれと整列された前記多孔部品の前記第2の組の開孔に透過させる工程と、
前記所定の平面における前記透過ビームレットの位置、形状及び寸法、並びに、前記透過ビームレットの合計強度又は個々の強度のうちの少なくとも1つを求める工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0088】
それぞれの組の開孔は、少なくとも1つの開孔をそれぞれ含む。同様に、一組のビームレットは、少なくとも1つのビームレットを含む。好適な実施の形態において、一組のビームレットにおけるビームレットの数は、それぞれの組の開孔における開孔の数に対応している。すなわち、1つの開孔に1度につき1つのビームレットを透過させる。他の実施の形態においては、1つの開孔に2つ以上のビームレットを透過させることも考えられる。
【0089】
例示的な実施の形態において、検査用開孔プレートは、前記の第4の開孔プレートであってもよく、例えば、上述の第3の多孔プレートと組み合わせたものであってもよい。第1、第2、第3及び第4の開孔プレートに関連して説明された実施の形態は、例えば、開孔のパターン、形状及び寸法に関して、一般に、検査用開孔プレートにも適用可能である。
【0090】
1つ以上の透過ビームレットの位置、形状、寸法及び強度の測定は、従来の方法、例えば、適当な検出器を前記所定の平面に配置することによって行なってもよい。この所定の平面は、例えば、前記粒子光学システムの光軸に対して垂直な平面であってもよい。
【0091】
前記多孔部品は、単一の多孔プレート、互いに整列された複数の多孔プレート、又は、最も好ましくは、本発明に係る粒子光学部品であってもよい。
【0092】
一組の荷電粒子ビームレットを検査用開孔プレートの第1の組の開孔に透過させる工程は、1つ以上の荷電粒子ビーム又は一組の荷電粒子ビームレットを検査用開孔プレートの第1の組の開孔に導き、一組の荷電粒子ビームレットが前記一組の開孔によって形成され、かつ、前記一組の開孔を透過するようにする工程を含んでいてもよい。
【0093】
さらなる例示的な実施の形態において、前記方法は、前記所定の平面における前記透過ビームレットの位置、形状及び寸法、並びに、前記透過ビームレットの個々の強度の合計強度のうちの前記少なくとも1つに基づいて、前記多孔部品の光学特性及び位置のうちの少なくとも1つを調整する工程をさらに含む。
【0094】
例えば、前記多孔部品の光学特性又は位置のうちの少なくとも1つを調整する工程は、粒子光学システムにおける多孔プレートの位置を変更する工程、多孔部品の1つ以上の開孔の特性を変更する工程、一方の多孔プレートを他方に対して回転、傾斜又はずらすことによって本発明に係る粒子光学部品における第1の多孔プレートの位置を第2の多孔プレートに対して調整する工程等を含んでいてもよい。さらに、当業者に明らかなように、他の例示的な実施の形態において、前記方法は、前記所定の平面における透過ビームレットの位置、形状及び寸法、並びに、透過ビームレットの個々の強度の合計強度のうちの少なくとも1つに基づいて、例えば、粒子光学システムの他の粒子光学部品のパラメータ及び位置のうちの少なくとも1つ、従って、光学特性を調整することにより、例えば、前記粒子光学システムの偏向器の励起を、このようなシステムに含まれる非点収差補正装置の励起を調整するか、又は、前記荷電粒子光学システムの1つ以上の他の部品の1つ以上の他の光学特性を調整することによって粒子光学システムの少なくとも1つの光学特性を調整する工程を含む。多孔部品が、複数の開孔のそれぞれに偏向器が接続された多孔プレート含む実施の形態においては、透過した荷電粒子ビームレットを偏向するための偏向装置(一般にブランキングアレイとも呼ばれる偏向装置)は、例えば、米国特許第5,369,282号及び第5,399,872号に記載されており、これらの内容の全ては、参照によって本明細書に援用される。前記検査は、例えば、検査用開孔プレートの同じ開孔を、検査すべき異なる個々の開孔及び対応付けられた偏向装置と順次整列させ、これに粒子を透過させ、透過した荷電粒子ビームレットの強度及び位置の少なくとも一方を検出することによって行なうことができる。当業者に容易に理解されるように、所定の位置又は強度からの、検出された位置もしくは検出された強度のずれ、又はこれらの両方のずれは、検査された開孔/偏向装置の誤差、整列不良などを示す可能性がある。
【0095】
他の例示的な実施の形態において、前記粒子光学部品は、第5の開孔プレートであって、第1及び/又は第3の多孔プレートの複数の開孔のうちの所定数の開孔のみが第5の開孔プレートを通過する荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームレットの荷電粒子で照射されるように構成された直径を有する単一の開孔を含む第5の開孔プレートを含んでいてもよく、前記所定数は、例えば、複数の開孔の開孔の2分の1又は他の任意の分数倍含んでいてもよい。前記単一の開孔の直径を適切に選択することにより、荷電粒子の透過率及び第1の多孔プレートに衝突する荷電粒子の強度を適切に制御することができる。
【0096】
第3の局面において、本発明は、少なくとも1つの荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子源と、前記第1の多孔プレートの下流側において前記第2の多孔プレートが前記荷電粒子のビーム経路に配置された、少なくとも1つの前記の粒子光学部品とを備えたことを特徴とする粒子光学装置を提供する。本明細書において説明される実施の形態において、第2の多孔プレートは、特に示さない限り、参照を容易にするために第1の多孔プレートの下流側に配置されている。
【0097】
荷電粒子源は、本発明に用いるのに適した任意の従来の粒子源であってもよい。荷電粒子が電子である実施の形態においては、荷電粒子源は、熱電界放出(TFE)型の電子源などの電子源となる。荷電粒子としてイオンを用いる実施の形態においては、例えば、イオン銃が適した荷電粒子源となる。本発明に用いるのに適した荷電粒子源は、当該技術分野においては周知であり、これらには、タングステン(W)フィラメントを用いる粒子源、LaB6粒子源及びその他様々なものがある。さらに、荷電粒子源は、荷電粒子の単一ビーム源、荷電粒子の単一ビーム源のアレイ、又はマルチビーム源であってもよい。
【0098】
本発明に係る粒子光学装置の例示的な実施の形態は、前記第1及び第2の多孔プレートに異なる電位を印加するように構成された電圧源システムをさらに含む。
【0099】
電圧源は、当該技術分野において公知の任意の適した電圧源であってよい。電圧源は、0から数百kVの範囲の電圧を供給するように構成してもよい。電圧源は、可変電圧源であることが好ましい。多孔プレートに印加される電位、特に、第1の多孔プレートに印加される電位と第2の多孔プレートに印加される電位との間の電位差を調整することにより、本発明の粒子光学部品の集束効果及び/又は補正効果を調整することが可能となる。
【0100】
本発明に係る粒子光学装置の例示的な実施の形態は、前記粒子光学部品の下流側の複数の荷電粒子ビームレットの合計ビーム電流に基づいて前記電圧源システムを制御するように構成された第1の制御部を有する制御器をさらに含む。荷電粒子は、一次電子荷電粒子、すなわち、荷電粒子源によって生成される荷電粒子であってもよく、あるいは、粒子光学装置が、試料の検査のために一次粒子が試料に導かれる検査システムの一部である実施の形態においては、検査されている試料から発せられる二次粒子の電流を合計ビーム電流の測定値として用いてもよい。一般に公知であるシステムにおける粒子光学部品の透過特性を考慮すると、荷電粒子源の出力信号を、複数の荷電粒子ビームレットの合計ビーム電流の測定値として用いることもできる。システムの粒子光学部品に蓄積される電荷の測定といった、合計ビーム電流を直接的あるいは間接的に測定する他の方法も考えられる。
【0101】
さらなる例示的な実施の形態において、前記粒子光学装置は、前記複数の荷電粒子ビームレットの前記合計ビーム電流を検出するための電流検出器をさらに含む。前記制御器は、前記複数の荷電粒子ビームレットのビーム電流を調整するための第2の制御部を有していてもよく、前記第1の制御部は、前記第2の制御部の設定に対して応答性を有する。本実施の形態は、第1又は第2の多孔プレートの少なくとも1つの開孔が、各開孔を透過する荷電粒子ビームレットを偏向するための偏向装置を含む実施の形態において特に有用である。このような実施の形態においては、第2の制御部は、偏向装置、特に、それぞれの開孔の少なくとも1つに対応付けられた偏向/非偏向位置を、偏向装置を通過するビームレットのビーム電流が制御され得るように制御し、第2の制御部の設定を示す信号を、この信号に応答して電圧源を調整する第1の制御部に送信してもよい。これにより、調整すべき粒子光学部品の補正/補償特性を荷電粒子の密度の影響、及び粒子光学部品によって補償されるべき粒子光学収差に対して結果として生じる電荷反発作用を考慮に入れたビーム電流に調整することが可能となる。
【0102】
前記の例示的な実施の形態に加えて、又はこれに代えて、本発明の粒子光学装置は、別の例示的な実施の形態において、前記第1の多孔プレートの上流側において前記荷電粒子の前記ビーム経路に配置された第1の電極と、前記第2の多孔プレートの下流側において前記荷電粒子の前記ビーム経路に配置された第2の電極と、前記第1及び第2の多孔プレート、並びに、前記第1及び第2の電極に異なる電位を印加するように構成された電圧源システムとをさらに含んでいてもよい。前記に示され、以下においてさらに説明される多孔プレートに対する電極の配置は、第1の多孔プレートが第2の多孔プレートの上流側に配置された本発明の実施の形態を指しており、多孔プレートの配置がこれと逆である本発明の実施の形態においては、同様のことが適用される。
【0103】
第1及び第2の電極を含む本発明の粒子光学装置の例示的な実施の形態において、前記電圧源システムは、前記第1の多孔プレートの上流側において該プレートの近傍に生成される電場が前記荷電粒子ビームの前記荷電粒子に対する減速電場となるような電圧を前記第1の電極及び前記第1の多孔プレートに印加するように構成されていてもよい。あるいは、前記電圧源システムは、前記第1の多孔プレートの上流側において該プレートの近傍に生成される電場が前記荷電粒子ビームの前記荷電粒子に対する加速電場となるような電圧を前記第1の電極及び前記第1の多孔プレートに印加するように構成されていてもよい。
【0104】
これに代えて、又はこれに加えて、本発明に係る粒子光学装置の例示的な実施の形態においては、前記電圧源システムは、前記第2の多孔プレートの下流側において該プレートの近傍に生成される電場が前記荷電粒子ビームの前記荷電粒子に対する加速電場となるような電圧を前記第2の電極及び前記第2の多孔プレートに印加するように構成されていてもよい。あるいは、前記電圧源システムは、前記第2の多孔プレートの下流側において該プレートの近傍に生成される電場が前記荷電粒子ビームの前記荷電粒子に対する減速電場となるような電圧を前記第2の電極及び前記第2の多孔プレートに印加するように構成されていてもよい。
【0105】
第1の多孔プレート、第2の多孔プレート、並びに、第1、第2及び第3の電極のうちの少なくとも1つに、種々の異なる方法で電位を印加することができる。本発明の粒子光学部品内の上流側及び下流側において印加される電位ひいては電場を適切に選択することにより、例えば、基板に入射させるべきビームレットに対する集束効果及び/又は補正効果を与えるための、例えば、種々の異なるモードを実現することが可能となる。1つの例示的な実施の形態において、例えば、前記電位は、集束効果の主要な部分を実現する電場が本発明の部品の上流側に位置し、補正効果の主要な部分を実現する電場が前記部品の下流側に位置するように選択してもよく、この逆もまた同様である。前記電位は、例えば、前記部品の上流側近傍又は下流側近傍の領域に実質的にいかなる電場も存在しないように選択してもよい。様々なこのようなモードの例示的な実施の形態は、図面を参照しながらより詳細に説明される。
【0106】
さらなる例示的な実施の形態において、前記粒子光学装置は、第1及び第2の電極に加えて、前記第1の電極と前記第1の多孔プレートとの間において前記荷電粒子の前記ビーム経路に配置された第3の電極をさらに含み、前記電圧源システムは、前記第3の電極に電位を印加するようにさらに構成されている。
【0107】
さらなる例示的な実施の形態において、前記粒子光学装置は、第1及び第2の電極に加えて、前記第2の多孔プレートと前記第2の電極との間において前記荷電粒子の前記ビーム経路に配置された第4の電極をさらに含み、前記電圧源システムは、前記第4の電極に電位を印加するようにさらに構成されている。
【0108】
第1から第4の電極は、例えば、単開孔電極であってもよい。
【0109】
さらなる例示的な実施の形態において、電圧源は、粒子光学部品の上流側の電場が、その近傍において実質的に均一な電場となり、粒子光学部品の下流側の電場が、その近傍において実質的に均一な電場となり、かつ、粒子光学部品の上流側の電場の電場強度とは異なる電場強度を有するような電圧を第1、第2、第3及び第4の電極のうちの1つ以上に印加するように構成されていてもよい。
【0110】
本発明の装置は、例えば、前記荷電粒子ビームの前記ビーム経路に配置された少なくとも1つの集束粒子光学レンズをさらに含んでいてもよい。本発明の本実施の形態において、前記装置は、好ましくは、前記第1及び第2の多孔プレートに異なる電位を印加して、前記少なくとも1つの集束粒子光学レンズの像面湾曲及び球面収差のうちの少なくとも1つを補償するように構成された電圧源システムをさらに含む。前記少なくとも1つの集束粒子光学レンズは、本発明の部品の上流側又は下流側に配置することができる。
【0111】
少なくとも1つの集束粒子光学レンズを含む本発明の実施の形態においては、電圧源システムは、第1及び第2の電極に電位を与え、第1及び第2の多孔プレートを通るビームレットが第2の多孔プレートの下流側の集束領域においてそれぞれ焦点を生成するように構成されているのが好ましく、荷電粒子のビーム経路における第2の多孔プレートの下流側に配置された少なくとも1つの集束粒子光学レンズをさらに含み、電圧源システムは、第1及び第2の多孔プレートに異なる電位を印加して、前記少なくとも1つの集束粒子光学レンズの少なくとも1つの粒子光学収差を補償するようにさらに構成されている。前記少なくとも1つの粒子光学収差を補償することは、前記少なくとも1つの集束粒子光学レンズの像面湾曲又は球面収差のうちの少なくとも一方を補償することを含み得る。
【0112】
第4の局面において、本発明は、本発明に係る粒子光学部品を備えたことを特徴とするマルチビーム電子検査システムを提供する。
【0113】
前記マルチビーム電子検査システムの例示的な実施の形態において、前記粒子光学部品は、前記システムの一次電子ビーム経路に配置されている。
【0114】
第5の局面において、本発明により、マルチビーム電子検査システムが提供され、このマルチビーム電子検査システムは、一次電子の少なくとも1つのビームを生成するための電子源と、被検査試料のための台と、前記電子源の下流側において前記少なくとも1つの電子ビームのビーム経路に配置された本発明に係る粒子光学部品と、前記粒子光学部品の前記第1及び第2の多孔プレートに電位を印加するための電圧源システムと、前記粒子光学装置の下流側において前記少なくとも1つの電子ビームの前記ビーム経路に配置された少なくとも1つの集束粒子光学レンズと、二次粒子のうちの少なくとも1つ、及び前記電子に露光されたことによって前記試料から発せられる放射を検出するための検出器装置とを備えたことを特徴とする。
【0115】
本発明に係る個々の粒子光学部品及び粒子光学装置に関連して説明された前記の例示的な実施の形態、考慮及び特徴は、当然ながら、本明細書に記載されるシステム又は方法において用いられる際にも前記部品又は装置に同様に適用が可能である。
【0116】
第6の局面において、本発明は、荷電粒子ビームレットの操作方法であって、荷電粒子ビーム及び複数の荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも一方を生成する工程と、前記荷電粒子ビーム及び前記複数の荷電粒子ビームレットの前記少なくとも一方を、本発明に係る粒子光学部品に透過させる工程と、前記第1の多孔プレート及び第2の多孔プレートに所定の電位をそれぞれ印加する工程と、前記荷電粒子ビーム及び前記複数の荷電粒子ビームレットの前記少なくとも一方を、前記少なくとも1つの集束粒子光学レンズに透過させる工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0117】
第1及び第2の多孔プレートに所定の電位を印加する工程は、第1の多孔プレートに第1の電位を印加し、第2の多孔プレートに第2の電位を印加する工程を好ましくは含み、ここで、第1及び第2電位は異なっている。本明細書における、電位を印加する工程は、それぞれの多孔プレート又は電極が接地される実施の形態も含むように意図されている。
【0118】
前記少なくとも1つの集束粒子光学レンズは、本発明に係る部品の上流側又は下流側に配置されていてもよく、従って、電子などの荷電粒子は、本発明による前記部品を通過する前に前記レンズを通過してもよく、この逆もまた同様である。但し、典型的には、前記少なくとも1つのレンズは、本発明の部品の下流側に配置されることになる。
【0119】
本発明の例示的な実施の形態において、本発明の部品は、補正効果及び集束効果の両方を得るために用いられてもよいし、あるいは、補正効果のみを、非常に小さい集束効果と共に得るために用いられてもよい。
【0120】
さらなる第1、第2もしくは第3の電極、第3の多孔プレート、又はこれらの任意の組み合わせが設けられている本発明の実施の形態において、前記方法は、これらの電極及び多孔プレートのそれぞれに適当な電位を印加する工程をさらに含む。電極の配置場所の選択及び印加される電位の選択により、本発明の部品の上流側及び下流側において集束、集束ずれ又は無電場状態の様々な変形例及び組み合わせが可能となり、主要な集束効果が本発明の部品の上流側もしくは下流側の電場、又は両方の電場の組み合わせによって得ることができるようになる。
【0121】
前記の方法において、第1及び第2の多孔プレートのうちの少なくとも一方に印加される前記所定の電圧又は電位は、例えば、0〜5000Vの範囲内にあってもよい。
【0122】
本発明の方法のさらなる例示的な実施の形態において、前記印加される所定の電圧は、前記少なくとも1つの集束粒子光学レンズの少なくとも1つの粒子光学収差が補償される、例えば、像面湾曲又は球面収差のうちの少なくとも一方が補償され得るように選択される。
【0123】
実際には、前記少なくとも1つの集束レンズは、単独で又は粒子光学システムの他の部品と共に、平坦な焦点面に位置するビームレットの焦点が試料表面付近の湾曲した平面に結像されるような、粒子光学システムの像面湾曲に一般に寄与する。従って、結果として生じる湾曲した像平面は、試料の平坦面に一致せず、ビームレットの焦点を試料表面に完全に結像することができない。
【0124】
本発明の部品は、このような像面湾曲を補正するために有利に用いることができる。前記少なくとも1つの集束レンズが本発明の部品の下流側に配置されている実施の形態においては、前記部品は、荷電粒子ビームレットの焦点が形成される平面又は領域(焦点面又は焦点領域)が、湾曲した焦点領域となるようにその設計(第1の面の形状、間隙の幅等)及び印加される電位差に関して適切に構成することが可能である。この湾曲した焦点領域の曲率は、前記少なくとも1つの集束粒子光学レンズがこの湾曲した平面を平坦な像平面に結像して、平坦な像平面に一致するように試料の平面状の面を配置することができるように調整され得る。
【0125】
静電場用途においては、一般に、集束効果、より正確には、単一の多孔プレートの各開孔によって形成される焦点距離fは、以下の式
【0126】
【数2】

【0127】
によって推定することができ、
式中、
kinは、多孔プレートにおける荷電粒子の運動エネルギーであり、
qは、荷電粒子の電荷であり、
ΔEは、多孔プレートの上流側の電場と下流側の電場との電場強度の差(E2−E1)を表している。
【0128】
本発明に係る粒子光学部品において、第1又は第2の多孔プレートは、それぞれ、主要な集束を与え得る多孔装置(MAA)であると考えることができ、第1及び第2の多孔プレートの組み合わせ、並びに、特にこれらの間の間隙に生成される電場は、集束効果が弱い液浸MLA(多レンズ装置)であると考えることができる。
【0129】
前記を考慮すると、組み合わせられた集束力は、粒子光学部品のMAA(多孔アレイ)相当物の集束力に対して、項
【0130】
【数3】

【0131】
を、
MLA相当物の集束力に対して、項
【0132】
【数4】

【0133】
を含むことになり、式中
ΔUは、第1の多孔プレートに印加される電位(U1)と第2の多孔プレートに印加される電位(U2)との間の差であり、
wは、第1及び第2の多孔プレートのそれぞれの開孔における位置の間の間隙幅である。
【0134】
組み合わせると、前記項は、
【0135】
【数5】

【0136】
となり、これにより、前記組み合わせられた集束効果の推定値が得られる。
【0137】
幅wは本発明の粒子光学部品における第1及び第2の多孔プレート間の間隙にわたって様々であるので、第1及び第2の多孔プレートの間の間隙における電場によって得られる比較的小さい集束効果は、前記幅によって異なり、従って、異なる間隙幅の位置における開孔に対して異なり、これにより、ビームレットの焦点領域を、粒子光学収差を補償することができるような形状にすることが可能となることは明らかである。
【0138】
第7の局面において、本発明は、複数の荷電粒子ビームレットの集束方法であって、
荷電粒子ビーム及び複数の荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも一方を、それぞれが複数の開孔を有し、中心が距離w0だけ離間した第1の多孔プレート及び第2の多孔プレートに透過させる工程と、
前記第1の多孔プレートに第1の電位U1を印加する工程と、
前記第2の多孔プレートに前記第1の電位とは異なる第2の電位U2を印加する工程と、
前記第1の多孔プレートの上流側において前記ビーム経路が通る電場及び前記第2の多孔プレートの下流側において前記ビーム経路が通る電場のうちの少なくとも一方を生成し、前記第1の多孔プレートの上流側近傍の電場の第1の電場強度E1が、前記第2の多孔プレートの下流側近傍の電場の第2の電場強度E2と、少なくとも約200V/mm、例えば、少なくとも約500V/mm、他の実施の形態においては、少なくとも750V/mm、さらなる例示的な実施の形態においては、少なくとも1000V/mmだけ異なるようにする工程とを含み、
電荷qを有し、かつ、前記第1の多孔プレートを通る際に運動エネルギーEkinを有する荷電粒子に対して、以下の関係
【0139】
【数6】

【0140】
が満たされることを特徴とする方法を提供する。
【0141】
換言すると、電場強度E1及びE2、電位U1及びU2、第1及び第2の多孔プレート間の距離w(又はw0)、並びに、荷電粒子の運動エネルギーは、第2の多孔プレートによって形成される多孔アレイ(MAA)が荷電粒子システムにおいて主要な集束を実現し、第1及び第2の多孔プレートの組み合わせによって形成される液浸多レンズアレイが、MAAの主要な集束効果に重ね合わされる比較的弱い集束効果のみを実現するように選択される。第1の多孔プレートと第2の多孔プレートとの間の間隙幅が様々である本発明の好適な実施の形態において、第2の多孔プレートから出射するビームレットの集束点は、それぞれのビームレットが出射する整列開孔の位置における間隙の幅wによって異なる。例示的な実施の形態において、MLAの主要な集束の焦点距離は、MAAによって得られる集束効果よりも約5%、10%又は20%だけ短くすることができる。MLAの焦点距離は、2mよりも大きいことが好ましい。
【0142】
特に、第1及び第2の多孔プレートに印加される電位を選択し、調整することにより、前記部品によって得られる補償効果のレベルを容易に調整することが可能であるため、前記部品は、広範囲の動作条件システムレイアウトに適している。
【0143】
本局面に係る方法においては、本発明の粒子光学部品を有利に用いることができ、また、第1及び第2の多孔プレート間の幅は、これらの中心からの距離が増加するにしたがって増加し、第1及び第2の多孔プレート間に第1及び第2の電位U1及びU2を印加することによって生成される電場の電場強度が中心からの距離が増加するにしたがって減少することが好ましい。例えば、これらの実施の形態において、幅w0は、上述の第1の幅であってもよい。
【0144】
例示的な実施の形態において、例えば、前記式において、適切な下限は0.05又は0.08であってもよく、上限は0.18又は0.15であってもよい。
【0145】
第8の局面において、本発明は、少なくとも1つの荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子源と、前記少なくとも1つのビームの経路において第1の磁場を生成するように構成された少なくとも1つの磁気レンズと、複数の開孔を有する少なくとも1つの第1の多孔プレートであって、前記少なくとも1つの荷電粒子ビームのビーム経路が通るように配置された第1の多孔プレートと、前記少なくとも1つの第1の多孔プレートにおける磁束密度が実質的にゼロとなるような第2の磁場を生成するように構成された少なくとも1つのコイル装置とを備えたことを特徴とする粒子光学装置を提供する。当業者に容易に理解されるように、実質的にゼロとは、磁場が前記システムの結像特性に対して、透過率の低下といった悪影響を与えない限りにおいて、無視できるほど小さい磁場が前記少なくとも1つの第1の多孔プレートの近傍に存在する実施の形態を含むようにも意図されている。
【0146】
例示的な実施の形態において、前記粒子光学装置は、複数の開孔を有する第2の多孔プレートであって、前記第1の多孔プレートとの間に間隙が形成されるように前記第1の多孔プレートから離間した第2の多孔プレートをさらに備え、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔は、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の各開孔が、前記第2の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔と整列されるように配置され、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の第1の開孔の位置における前記間隙の第1の幅は、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の第2の開孔の位置における前記間隙の第2の幅よりも少なくとも5%だけ大きい、例えば、少なくとも10%又は20%だけ大きい、さらなる例示的な実施の形態においては、少なくとも50%、100%、200%、500%又は700%(数百%)だけ大きい。また、これらの実施の形態においては、前記第1の多孔プレートは、前記第2の多孔プレートに対向する第1の面を有し、前記第2の多孔プレートは、前記第1の多孔プレートに対向する第1の面を有し、各第1の面は、前記それぞれの複数の開孔の複数の開孔を含む領域を有し、前記第1の面のうちの少なくとも一方は、前記領域内の平面状の曲面(planar curved surface)である。本発明の第8の局面に係る装置における第1の多孔プレートは、上述した本発明の荷電粒子光学部品の一部であることが好ましい。あるいは、本発明の荷電粒子部品及び荷電粒子装置の実施の形態の1つ以上の特徴を含んでいてもよい。
【0147】
第9の局面において、本発明は、荷電粒子ビームレットの操作方法であって、
荷電粒子ビーム及び複数の荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも一方を生成する工程と、
前記荷電粒子ビーム及び前記複数の荷電粒子ビームレットの前記少なくとも一方を、第1の磁場を生成する少なくとも1つの磁気レンズに透過させる工程と、
前記荷電粒子ビーム及び前記複数の荷電粒子ビームレットの前記少なくとも一方を、複数の開孔を有する少なくとも1つの多孔プレートに透過させる工程と、
前記複数の荷電粒子ビームレットが通るコイル装置に所定の電流を印加することによって第2の磁場を生成し、前記第2の磁場が前記第1の磁場を少なくとも部分的に補償し、前記少なくとも1つの多孔プレートにおける磁束密度が実質的にゼロになるようにする工程とを含むことを特徴とする方法も提供する。
【0148】
前記少なくとも1つの多孔プレートあるいは本発明の粒子光学部品の位置における磁場を実質的に消去することは、荷電粒子が前記磁場によって及ぼされる回転力に曝されることがなく、その経路を変えないという点で有益である。このような回転力に曝されると、例えば、個々の荷電粒子が第2の多孔プレートの開孔を透過しなくなるということが起こり得る。その代わりに、荷電粒子は、開孔間の空間に衝突し、その結果、透過率に損失が生じる。
【0149】
本発明の第10の局面において、さらなる粒子光学装置が提供され、この装置は、その実施の形態が本明細書に記載されている本発明に係る粒子光学部品と、第1の磁極片、第2の磁極片、並びに、前記第1及び第2の磁極片に磁束を誘導するためのコイルを含む磁気レンズ装置とを備え、前記第1の多孔プレートは、前記磁気レンズ装置の前記第1の磁極片と磁気的に結合されるか又は一体的に形成され、前記第2の多孔プレートは、前記磁気レンズ装置の前記第2の磁極片と磁気的に結合されるか又は一体的に形成されていることを特徴とする。
【0150】
第1及び第2の多孔プレート間に形成される間隙の幅が様々であることにより、間隙の長さにわたって様々である磁場強度を有する磁場が生じる。前記磁気レンズの異なる磁極として機能する第1及び第2の多孔プレートの異なる整列開孔対に対し、磁場は、対応付けられた1つの開孔対を通過するビームレットが対応付けられた別の開孔対を通過するビームレットよりも強いか又は弱い磁場を受けることができるように、互いに異なっている。前記間隙の幅が、中心からの距離が増加するにしたがって、すなわち、径方向外側に増加する実施の形態においては、前記間隙に生成される磁場の磁束密度は、間隙の幅が増加するにしたがって減少する。原則として、静電場に対するものと同様のことがここでも適用される。
【0151】
第11の局面において、本発明は、基板上にパターンを描画するための荷電粒子マルチビームレットリソグラフィシステムであって、前記基板を載置するための台と、少なくとも1つの荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子源と、本発明に係る粒子光学部品と、前記荷電粒子ビームレットを前記基板上に集束させるための対物レンズとを備えたことを特徴とするシステムも提供する。
【0152】
本発明の第12の局面において、基板上にパターンを描画する方法であって、
少なくとも1つの荷電粒子ビームを生成する工程と、
前記少なくとも1つの荷電粒子ビームを本発明に係る粒子光学部品に透過させる工程と、
前記第1の多孔プレートに所定の第1の電位を印加し、第2の多孔プレートに前記所定の第1の電位とは異なる所定の第2の電位を印加する工程と、
前記粒子光学部品から出射する荷電粒子ビームレットを前記基板上に集束させる工程とを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0153】
第13の局面において、本発明は、曲面を有する多孔プレートの製造方法であって、
基板に、穴のパターンを穴の深さが前記基板の厚さよりも小さくなるように前記基板の前面からエッチングする工程と、
前記基板の背面を、前記基板の前記背面の少なくとも一部が曲面形状を有するように加工する工程と、
前記基板の前記背面を、前記基板の前記前面から前記基板にエッチングされた穴の少なくとも一部が前記基板の厚さ全体を通って延びて開孔を形成するまでエッチングする工程とを含むことを特徴とする方法に関する。
【0154】
基板の厚さが様々であり得るため、基板の厚さ全体を貫通して穴をエッチングする工程とは、前記穴の位置における基板の厚さを貫通してエッチングが行なわれ、開孔が形成されることを意味する。本明細書において、穴という用語は、この穴は、一方の側だけに開いている、すなわち、開口部を1つだけ有し、他方の側の開口部は閉じていることを意味する。
【0155】
例示的な実施の形態において、基板に穴を基板の前側からエッチングする工程及び基板の裏側を加工して曲面を形成する工程を、前記に示したものと逆の順序で行ない、前記基板の前記背面を加工する前記工程が、前記基板に前記基板の前記前面から前記穴のパターンをエッチングする前記工程の前に行なわれるようにしてもよい。
【0156】
本発明の第14の局面において、曲面を有する少なくとも1つの領域を有する多孔プレートのさらなる製造方法であって、
基板に、穴のパターンを前記基板の前面からエッチングする工程と、
前記基板の前記前面を、前記基板の前記前面の少なくとも一部が曲面形状を有するように加工する工程と、
前記基板の前記背面を、前記基板にエッチングされた穴の少なくとも一部が前記基板全体を通って延びて開孔を形成するまで加工及びエッチングの少なくとも一方を行なう工程とを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0157】
第13及び14の局面に係る方法は、前記それぞれの表面を加工して曲面を形成する前記工程の前に、前記穴を少なくとも部分的に充填剤で充填する工程をさらに含むことが好ましい。
【0158】
第15の局面において、本発明は、曲面を有する少なくとも1つの領域を有する多孔プレートの製造方法であって、
開孔パターンを基板にエッチングする工程と、
前記基板の一方の表面を、前記表面が曲面又は曲面を有する少なくとも1つの領域を有するように加工する工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0159】
第15の局面に係る方法は、前記基板の一方の表面を加工する前記工程の前に、前記エッチングされた開孔パターンの開孔を少なくとも部分的に充填剤で充填する工程をさらに含むことが好ましい。
【0160】
前記基板はシリコンウエハであることが好ましい。
【0161】
本発明に係る多孔プレートの製造方法の例示的な実施の形態において、前記加工工程は、機械研磨によって前記基板の前記表面から材料を除去する工程を含む。適した研削材が当該技術分野において周知である。除去すべき材料の量及び許容可能な加工粗さによっては、例えば、シリコンの場合は、グリセリンと酸化アルミニウム粒子もしくは炭化ケイ素粒子との混合物、又は適当な溶液中の酸化ケイ素粒子もしくはダイアモンド粒子といった、異なる研削材又は研磨材を用いてもよい。
【0162】
前記基板に前記孔又は開孔をエッチングする前記工程は、好ましくは反応性イオンエッチング、最も好ましくは深い反応性イオンエッチングを含むことが好ましい。
【0163】
一般に、基板に穴又は開孔をエッチングする工程には、フォトリソグラフィ技術が用いられ、この技術において、基板はフォトレジストで被覆され、被覆された基板は、フォトレジストに転写されるパターン(この場合には、穴/開孔のパターン)を保持するマスクを介して露光され、露光された基板は、露光された基板を基板現像液に接触させることによって現像される。ポジレジストの場合は、露光された材料が現像液によって除去され、ネガレジストの場合は、未露光の材料が現像液によって除去される。
【0164】
このようにして用意された基板に穴/開孔がエッチングされるフォトリソグラフィ手順もあるが、基板が材料層で被覆され、この材料層が次いでエッチングされて、後に続く実際の基板のエッチング用のマスクを形成する手順もある。
【0165】
シリコン基板に用いられる例示的なフォトリソグラフィ手順においては、シリコンウエハは、洗浄され、次に酸化されてSiO2薄膜がその上に形成され、次に、フォトレジストで被覆される。フォトレジストは露光され、次に現像されてSiO2層が(所与のパターン状に)除去され、例えば反応性イオンエッチングによってSiO2層がエッチングされて、シリコンのエッチング用のマスクが形成される。残りのフォトレジストが除去され、次いで、例えば深い反応性イオンエッチング(DRIE)によってシリコン基板がエッチングされる。
【0166】
一般に、ドライエッチング手順においては、気体が高周波磁場によって低圧で励起される。不活性ガスの場合は、磁場によって発生した気体イオンが基板に対して加速され、物理的相互作用によって材料が除去される。反応ガスの場合は、基板からの材料の除去は、化学的相互作用によって行なわれるが、物理的現象をさらに含み得る。一般に、ドライエッチング技術には、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング及びイオンビームエッチングが含まれる。
【0167】
一般に、反応性イオンエッチング手順は、高周波を利用して気体を反応種に解離させてイオン化し、エッチングされる基板にイオン衝撃を誘導するようにバイアスをかける。反応性イオンエッチング処理に適したガスとしては、炭素(C)を含む化合物、及びフッ素(F)、塩素(Cl)又は臭素(Br)などのハロゲン元素がある。圧力、高周波出力、ガス流量、電極及び基板の温度、並びに、使用される特定のガスの選択といった処理パラメータを制御することにより、結果として得られるエッチングプロファイルの形状を制御することが可能となる。
【0168】
前記エッチング処理の異方性/等方性は、一般に、物理的処理及び化学的処理が支配する程度によって制御される。
【0169】
深い反応性イオンエッチングにより、アスペクト比の高い、すなわち、幅に対する深さの比が高い開孔又は穴を製造することが可能となる。DRIEは、しばしば「ボッシュ法」(この種の方法に対する最初の特許をボッシュが有していたため)とも呼ばれ、重合化学反応とエッチング化学反応とを頻繁に切り換えるプラズマエッチング処理を含む。基板表面をポリマーで被覆する工程(パッシベーション)が等方性イオンエッチング工程と交互に行なわれ、エッチングされた構造の底部からポリマーが除去される。ボッシュ法のほかに、(DRI)エッチングが−100℃未満の極低温で一段階処理として行なわれる、いわゆる「クライオ」処理を用いることができる。高アスペクト比のほかに、DRIEによって、基板に深い構造をエッチングすることが可能となり、また、エッチング速度が高いため、高速エッチングか可能となる。
【0170】
実際、同じマスクを用いて製造され、従って、実質的に同一の開孔アレイを有する多孔プレートを用いることが有利であることが分かっている。本実施の形態は、マスクにおいて、当該マスクを用いて製造される開孔アレイに転写される小さな欠陥が存在する場合に特に有用である。このような場合、同じマスク位置を用いて製造された開孔を有利に重ね合わせ、これにより、開孔アレイにおける欠陥による有害な影響を排除することができる。
【0171】
さらに、実際の経験から、開孔が、少なくとも荷電粒子が衝突する面において平滑な縁端部を有し、かつ、前記粒子が当該開孔を通過する際に最初に通る開孔体積の、少なくとも最初の3分の1において平滑な面を有することが有益であることが示されており、前記開孔体積の少なくとも一部における平滑な開孔縁端部及び平滑な内面は、エッチング工程中のエッチングパラメータを適切に選択することによって得ることができる。特に、平滑な面を得るためには、より低いエッチング速度が好ましい。
【0172】
前記の製造方法の好適な実施の形態において、曲面形状を有する基板のそれぞれの側(本発明の方法においては、一般に裏側と呼ばれる)をエッチングする工程は、それぞれの側のいかなる場所においても等しい量の材料が除去され、前記加工工程によって得られたそれぞれの表面の形状を実質的に維持するように基板をエッチングする工程を含む。このようにして、それぞれの表面の曲率は、実質的に維持される。これは、例えば、当該技術分野において公知のウエットエッチング処理又はプラズマエッチング処理によって行なうことができる。他の実施の形態において、前記曲面形状を有するそれぞれの表面を加工する工程は、それぞれの表面が第1の曲率を有するように行なってもよく、次いで、当該表面が、所望の最終曲率である第2の曲率を有するようにエッチングが行なわれる。このような実施の形態においては、エッチング工程は、表面全体にわたって同じ速度で行なわれる必要はない。
【0173】
好適な実施の形態において、前記方法は、前記穴又は開孔を、最も好ましくはそれぞれの表面に対してさらなるエッチング及び加工が行なわれる前に、1つ以上の充填材料で少なくとも部分的に充填する工程をさらに含む。従って、これらの実施の形態は、すなわち、それぞれの表面をエッチングする前記工程の後に、前記開孔から前記1つ以上の充填材を除去する工程も好ましくは含む。
【0174】
前記製造方法において用いることができる充填材料あるいは充填剤としては、例えば、窒化ケイ素などの、適当なポリマー、接着剤及び樹脂がある。
【0175】
第16の局面において、本発明は、複数の荷電粒子ビームレットの集束方法であって、複数の開孔を有する第1の多孔プレートと前記第1の多孔プレートから少なくとも1mmの距離だけ離間した第1の電極との間に、前記第1の多孔プレートが第1の集束力F1を有するように最大で5000V/mmの電場を生成する工程と、荷電粒子ビーム及び複数の荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも一方を、前記電場、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔及び前記第1の電極に透過させる工程と、前記荷電粒子ビーム及び前記複数の荷電粒子ビームレットの前記少なくとも一方を、複数の開孔を有する少なくとも1つの第2の多孔プレートを備えた粒子光学部品であって、第2の集束力F2を与えるように構成及び動作される粒子光学部品の開孔に透過させる工程とを含み、前記粒子光学部品の前記第2の集束力F2は、前記第1の集束力F1の5分の1以下であることを特徴とする方法を提供する。
【0176】
他の例示的な実施の形態において、第1の多孔プレートと第1の電極との間に生成される電場は、最大で2500V/mm、最大で1000V/mm、又は最大で500V/mmの電場強度を有し得る。さらなる例示的な実施の形態において、第1の電極と第1の多孔プレートとの間の距離は、少なくとも5mmであり、あるいは、少なくとも10mmもしくは少なくとも20mmであってもよい。
【0177】
本明細書において、集束力とは、焦点距離:F=1/fの逆数を意味する。多孔アレイ及び多レンズアレイの集束力を与える式の例は、本明細書において前記に示されている。
【0178】
第16の局面に係る方法における多孔部品は、前記に特徴及び実施の形態が記載されている本発明に係る多孔部品であることが好ましい。第1の電極は、例えば、単開孔プレートであってもよい。第1の電極は、例えば、第1の多孔プレートと第2の多孔プレートとの間に配置されてもよい。他の実施の形態においては、第1の電極は、第2の多孔プレートから離れる方向に向いた第1の多孔プレートの側に配置されてもよい。
【0179】
第17の局面において、本発明は、複数の開孔を有する第1の多孔プレートと、少なくとも1つの開孔を有する第4の開孔プレートと、前記第4の開孔プレートを、前記第1の多孔プレート対して第1の位置及び前記第1の位置とは異なる第2の位置にずらすための少なくとも1つのアクチュエータを含む取付構造とを含むことを特徴とする粒子光学部品を提供する。
【0180】
例示的な実施の形態においては、前記第1の位置において、前記第4の開孔プレートの前記少なくとも1つの開孔のうちの1つの開孔は前記第1の多孔プレートの第1の開孔と整列され、前記第2の位置において、前記1つの開孔は前記第1の多孔プレートの第2の開孔と整列され、前記第1及び第2の開孔は異なっている。
【0181】
例示的な実施の形態において、前記粒子光学部品は、複数の開孔を有する第2の多孔プレートであって、前記第1の多孔プレートとの間に間隙が形成されるように前記第1の多孔プレートから離間した第2の多孔プレートをさらに備え、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔は、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の各開孔が、前記第2の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔と整列されるように配置され、前記第1の多孔プレートは、前記第4の開孔プレートと前記第2の多孔プレートとの間に配置されている。
【0182】
前記粒子光学部品の例示的な実施の形態、利点及び特徴は、特に本発明の第1の局面に関連して前記において説明されている。第4の開孔プレートは、第1の開孔プレートの位置及び/又は粒子光学システムの他の部品の光学特性の検査に有利に用いることができる。
【0183】
第18の局面において、本発明は、複数の開孔を有する第1の多孔プレートと、複数の開孔を有する第3の多孔プレートであって、前記第3の多孔プレートの前記複数の開孔は、前記第3の多孔プレートの前記複数の開孔の各開孔が、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔と整列されるように配置され、前記第3の多孔プレートの開孔の直径は、前記第3の多孔プレートの前記開孔と整列された前記第1の多孔プレートの対応する開孔の直径よりも小さい、第3の多孔プレートとを備えたことを特徴とする粒子光学部品を提供する。
【0184】
例示的な実施の形態において、前記粒子光学部品は、複数の開孔を有する第2の多孔プレートであって、前記第1の多孔プレートとの間に間隙が形成されるように前記第1の多孔プレートから離間した第2の多孔プレートをさらに備え、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔は、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の各開孔が、前記第2の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔と整列されるように配置され、前記第1の多孔プレートは、前記第3の開孔プレートと前記第2の多孔プレートとの間に配置されている。
【0185】
例示的な実施の形態において、前記第3の多孔プレートの開孔の直径は、前記第3の多孔プレートの前記開孔と整列された前記第1の多孔プレートの対応する開孔の直径の99%以下、例えば、95%以下である。さらなる例示的な実施の形態、特徴及び利点は、本発明の第1の局面に係る粒子光学部品に関連して前記に説明されている。
【0186】
上述のように、整列は、上流側の開孔プレートの開孔を通過する荷電粒子ビームレットが、下流側の多孔プレートに衝突又は接触することなく、下流側の多孔プレートの整列開孔を通過することができるように、整列開孔を互いに配置することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】本発明に係る粒子光学検査システムの基本的な特徴及び機能を概略的に示す図
【図2】試料上に焦点面を結像する際の粒子光学素子によって生じる像面湾曲作用を示す図
【図3】図2に示される像面湾曲を補償するように構成された粒子光学部品の実施の形態の一部を示す図
【図4】本発明の粒子光学部品の第1の実施の形態における、第1の多孔プレートの第2の多孔プレートに対する配置を示す図
【図5】本発明の粒子光学部品の第2の実施の形態における、第1の多孔プレートの第2の多孔プレートに対する配置を示す図
【図6】本発明の粒子光学部品の第3の実施の形態における、第1の多孔プレートの第2の多孔プレートに対する配置を示す図
【図7】本発明の粒子光学部品の第3の実施の形態における像面湾曲の補償効果を概略的に示す図
【図8a】第1、第2、第3及び第4の電極のうちの少なくとも1つ、並びに、異なる電場構成を有する本発明の粒子光学部品の実施の形態を示す図
【図8b】第1、第2、第3及び第4の電極のうちの少なくとも1つ、並びに、異なる電場構成を有する本発明の粒子光学部品の実施の形態を示す図
【図8c】第1、第2、第3及び第4の電極のうちの少なくとも1つ、並びに、異なる電場構成を有する本発明の粒子光学部品の実施の形態を示す図
【図8d】第1、第2、第3及び第4の電極のうちの少なくとも1つ、並びに、異なる電場構成を有する本発明の粒子光学部品の実施の形態を示す図
【図8e】第1、第2、第3及び第4の電極のうちの少なくとも1つ、並びに、異なる電場構成を有する本発明の粒子光学部品の実施の形態を示す図
【図9】第3の多孔プレートを有する本発明の粒子光学部品の実施の形態を示す図
【図10a】第4の開孔プレートを含む本発明の粒子光学部品の実施の形態、及び本発明の第2の局面に係る多孔部品の動作の実施の形態の工程を示す図
【図10b】第4の開孔プレートを含む本発明の粒子光学部品の実施の形態、及び本発明の第2の局面に係る多孔部品の動作の実施の形態の工程を示す図
【図11】磁気レンズにおいて用いられている本発明に係る粒子光学部品の実施の形態を示す図
【図12a】コイル装置を含む本発明に係る粒子光学部品及び粒子光学装置の実施の形態を示す図
【図12b】図12aに示される装置の動作中のz方向における磁束密度を示すグラフ
【図13a】本発明の第10の局面に係る粒子光学装置の実施の形態の一部を示す図
【図13b】図13aに示される装置の動作中の異なる開孔の位置におけるz方向の磁束密度を示すグラフ
【図14】本発明に係る粒子光学装置のさらなる実施の形態を示す図
【図15a】本発明に係る粒子光学部品の第1及び第2の多孔プレートの整列不良による歪曲収差作用を示す図
【図15b】図15aに示される第1及び第2の多孔プレートの整列不良の補償に適したを照射モードを示す図
【図16】図15aの歪曲収差作用を示す、像平面における一次電子ビームレットスポットのアレイの立面図
【図17】本発明の第15の局面に係る成形多孔プレートの製造方法の実施の形態を示す図
【図18】本発明の第13の局面に係る成形多孔プレートの製造方法の実施の形態を示す図
【図19】本発明の第13の局面に係る成形多孔プレートの製造方法の別の実施の形態を示す図
【図20】本発明の第14の局面に係る成形多孔プレートの製造方法の実施の形態を示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0188】
本発明の前記及びその他の有利な特徴は、添付図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態の以下の詳細な説明からより明らかとなる。尚、本発明の可能な実施の形態の全てが、本明細書において示す利点の全て又はいずれかを示すとは限らない。
【0189】
図1は、本発明に係る粒子光学検査システムの基本的な特徴及び機能を概略的に示し、
図2は、試料上に焦点面を結像する際の粒子光学素子によって生じる像面湾曲作用を示し、
図3は、図2に示される像面湾曲を補償するように構成された粒子光学部品の実施の形態の一部を示し、
図4は、本発明の粒子光学部品の第1の実施の形態における、第1の多孔プレートの第2の多孔プレートに対する配置を示し、
図5は、本発明の粒子光学部品の第2の実施の形態における、第1の多孔プレートの第2の多孔プレートに対する配置を示し、
図6は、本発明の粒子光学部品の第3の実施の形態における、第1の多孔プレートの第2の多孔プレートに対する配置を示し、
図7は、本発明の粒子光学部品の第3の実施の形態における像面湾曲の補償効果を概略的に示し、
図8a、図8b、図8c、図8d、図8eは、第1、第2、第3及び第4の電極のうちの少なくとも1つ、並びに、異なる電場構成を有する本発明の粒子光学部品の実施の形態を示し
図9は、第3の多孔プレートを有する本発明の粒子光学部品の実施の形態を示し、
図10a、図10bは、第4の開孔プレートを含む本発明の粒子光学部品の実施の形態、及び本発明の第2の局面に係る多孔部品の動作の実施の形態の工程を示し、
図11は、磁気レンズにおいて用いられている本発明に係る粒子光学部品の実施の形態を示し、
図12aは、コイル装置を含む本発明に係る粒子光学部品及び粒子光学装置の実施の形態を示し、
図12bは、図12aに示される装置の動作中のz方向における磁束密度を示すグラフであり、
図13aは、本発明の第10の局面に係る粒子光学装置の実施の形態の一部を示し、
図13bは、図13aに示される装置の動作中の異なる開孔の位置におけるz方向の磁束密度を示すグラフであり、
図14は、本発明に係る粒子光学装置のさらなる実施の形態を示し、
図15aは、本発明に係る粒子光学部品の第1及び第2の多孔プレートの整列不良による歪曲収差作用を示し
図15bは、図15aに示される第1及び第2の多孔プレートの整列不良の補償に適したを照射モードを示し、
図16は、図15aの歪曲収差作用を示す、像平面における一次電子ビームレットスポットのアレイの立面図を示し
図17は、本発明の第15の局面に係る成形多孔プレートの製造方法の実施の形態を示し、
図18は、本発明の第13の局面に係る成形多孔プレートの製造方法の実施の形態を示し、
図19は、本発明の第13の局面に係る成形多孔プレートの製造方法の別の実施の形態を示し、
図20は、本発明の第14の局面に係る成形多孔プレートの製造方法の実施の形態を示している。
【0190】
図1は、本発明に係る粒子光学装置、粒子光学システム及び電子マルチビーム検査システム、並びに、荷電粒子ビームレットの操作方法の一実施の形態である電子顕微鏡システム1の基本的な機能及び特徴を記号を用いて示す概略図である。電子顕微鏡システム1は、複数の一次電子ビームレット3を用いて、対物装置100の対物レンズ102の像平面101に配置される被検査試料7の表面に一次電子ビームスポット5を生成する走査電子顕微鏡型(SEM)のものである。
【0191】
一次電子ビームレット3は、電子源装置301と、コリメータレンズ303と、粒子光学部品305(2つの多孔のうちの1つのみが示される、簡略化された形式で示されている)と、視野レンズ307とを含むビームレット生成装置300によって生成される。
【0192】
電子源装置301は、発散電子ビーム309を生成し、発散電子ビーム309は、コリメータレンズ303によって平行にされ、粒子光学部品305を照射するためのビーム311を形成する。
【0193】
図1の挿入図I3は、粒子光学部品305の一部を形成する第1の多孔プレート313の立面図を示している。第1の多孔プレート313(及び図示されない第2の多孔プレートも同様)には、複数の開孔315が形成されている。開孔315の中心317は、像平面101に形成される一次電子ビームスポット5のパターン103に電子光学的に対応するパターンすなわちアレイ319に配置されている。
【0194】
アレイ319のピッチP3は、例えば、約5μm〜約200μmの範囲にあってもよい。開孔315の直径Dは、例えば、0.1×P3〜0.5×P3の範囲、0.3×P3〜0.6×P3の範囲、0.4×P3〜0.7×P3の範囲、0.5×P3〜0.7×P3の範囲、0.5×P3〜0.6×P3の範囲、0.6×P3〜0.7×P3の範囲、0.7×P3〜0.8×P3の範囲及び/又は0.8×P3〜0.9×P3の範囲にあってもよい。
【0195】
照射電子ビーム311は、開孔315(及び図示されない第2の多孔プレートの対応する整列開孔)を通過して、一次電子ビームレット3を形成する。第1の多孔プレート313に衝突した照射電子ビーム311は、一次電子ビームレットビーム経路13から遮断され、一次電子ビームレット3の形成には寄与しない。
【0196】
図1に示される実施の形態において、照射電子ビーム311から複数の一次電子ビームレット3を形成することは、粒子光学部品305の機能の1つである。図示される本実施の形態の粒子光学部品305のさらなる機能は、焦点323が焦点領域すなわち焦点面325に形成されるように各一次電子ビームレット3を集束することである。図1の焦点領域325は、説明を容易にするために平面状の面として示されている。粒子光学部品305によって補償あるいは補正される粒子光学収差が像面湾曲である本発明の実施の形態においては、焦点領域325は、一般に、図3に示すような曲面形状を有するものとなる。図1には、第1及び第2の多孔プレートのうちの少なくとも一方に電位を供給するための電圧源330も概略的に示されている。
【0197】
本発明の他の実施の形態においては、照射電子ビーム311のビーム経路において第1及び第2の多孔プレートの上流側に第3の多孔プレートを配置してもよい。このような実施の形態においては、第3の多孔プレートは、複数の一次電子ビームレットを形成する機能を有するものとなる。第3の多孔プレートが第1の多孔プレートと適切に整列されていれば、一次電子ビームレット3は、第1及び第2の多孔プレートの開孔を通過することになり、これは、特に、第1の多孔プレートの第1の面が、衝突する一次電子によって破損することがないという利点を有する。例えば、特に、第1の多孔プレートの昇温作用、帯電作用及び異物混入を防止するか、あるいは実質的に低減することができる。
【0198】
図1の挿入図I4は、パターン327状に配置された焦点323を有する焦点面325の立面図を示している。このパターンのピッチP4は、下記の記載からも理解されるように、第1の多孔プレート313(及び図示されない第2の多孔プレート)のパターン319のピッチP3と同じであってもよいし、異なっていてもよい。焦点323の直径は、例えば、約1nm〜約1μmの範囲にあってもよい。
【0199】
視野レンズ307及び対物レンズ102は一緒になって、焦点面すなわち領域325を像平面101に結像し、検出器装置209によって二次電子ビームレット9の強度を検出することによって高解像度の二次電子像を得るための直径の小さい一次電子ビームスポット5のアレイ103を試料7上に形成する機能を果たす。
【0200】
ビームスプリッタ/コンバイナ装置400は、ビームレット生成装置300と対物装置100との間の一次電子ビーム経路313、並びに、対物装置100と検出装置200との間の二次電子ビーム経路11に設けられている。
【0201】
図1の挿入図I1は、一次電子ビームスポット5の規則的な矩形のアレイ103が形成された像平面101の立面図を示している。図1においては、5×5のアレイ103に配置された25個の一次電子ビームスポット5が示されている。一次電子ビームスポット5の数は、電子顕微鏡システム1の原理を説明し易くするために、このように比較的少なく示されている。実際には、一次電子ビームスポット5の数は、30×30、100×100又は他の任意の数など、かなり大きい数値に選択することができる。
【0202】
図示される実施の形態において、一次電子ビームスポット5のアレイ103は、例えば、約1μm〜約10μmの範囲のほぼ一定のピッチP1を有するほぼ規則的な矩形のアレイである。但し、アレイ103は、変形した規則的なアレイでも、不規則なアレイでもよく、また、六角形アレイなどの別の対称形のアレイとすることもできる。
【0203】
像平面101に形成された一次電子ビームスポット5の直径は、例えば、約5nm〜約200nmの範囲にあってもよい。対物装置100は、一次電子ビームレット3を集束し、一次電子ビームスポット5を形成する。
【0204】
一次電子ビームスポット5において試料7に入射する一次電子により、試料7の表面から発する二次電子が生成される。二次電子は、対物レンズ102に入射する二次電子ビームレット9を形成する。
【0205】
電子顕微鏡システム1は、複数の二次電子ビームレット9を検出装置200に供給するための二次電子ビーム経路11を与える。検出装置200は、検出器装置209の電子感受性検出器207の表面平面211に二次電子ビームレット9を投射するための投射レンズ装置205を含む。検出器207としては、固体CCD又はCMOS、シンチレータ装置、マイクロチャネルプレート、PINダイオードアレイ等から選択される1つ又は複数とすることができる。
【0206】
図1の挿入図I2は、像平面211、及び二次電子ビームスポット213がアレイ217として形成される検出器207の表面の立面図を示している。アレイ217のピッチP2は、例えば、約10μm〜約200μmの範囲にあってもよい。検出器207は、複数の検出画素215を含む位置感受性検出器である。画素215は、各画素215がそれに入射する二次電子ビームレット9の強度を検出できるように、二次電子ビームスポット213のアレイ217に対応するアレイ状に配置されている。
【0207】
本発明の前記実施の形態に関連して寸法や電圧などの物理的特性に対して示される全ての数値は、例示のためのものに過ぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0208】
電子源装置301及び粒子光学部品305は、共に本発明に係る粒子光学装置の実施の形態を形成している。
【0209】
図1に示されるように、電子顕微鏡システム1の特徴の1つは、一次電子ビームレットの焦点323が粒子光学部品305によって形成される焦点領域325が、被検査試料7の表面が位置する像平面101に結像されることである。粒子光学部品305は像面湾曲などの粒子光学収差を補償することができるので、像平面101と試料7の表面は一致するのが理想的である。
【0210】
実際には、図2にMという記号で示される電子光学素子は、電子光学システムの像面湾曲に典型的に寄与することが分かっている。これにより、図2に示されるように、平坦な焦点面325が試料7の表面に近接した湾曲した像平面101に結像される。そのため、湾曲した像平面101が試料7の平坦な面に一致することは不可能であり、従って、焦点323は、試料7の表面に完全に結像することはない。
【0211】
図3は、焦点領域325を試料7の表面に結像する際に使用される電子光学素子Mによって生じる像面湾曲の問題に対する1つの解決策を実現するように構成された本発明に係る粒子光学部品の実施の形態を示している。本実施の形態の粒子光学部品は、一次電子ビームレット3の焦点323が生成される焦点領域325が湾曲した領域あるいは曲面となるように設計されている。焦点領域325の曲率は、電子光学素子Mが焦点領域325を平坦な像平面101に結像するように設定される。従って、試料7の平面状の面を平坦な像平面101に一致するように配置することができる。
【0212】
このような効果の大きさについて概略的に示すと、例としては、複数の開孔によって形成される開孔パターンの周辺に生成された一次電子ビームレット3の焦点323aは、焦点323aに対応する結像点101aが試料7の表面から約12μmの距離だけ離れて試料表面付近の湾曲した平面101に結像される。従って、粒子光学部品305は、焦点領域325が、周辺の一次電子ビームレット3の焦点323aが、図2に示されるように、像面湾曲補正を行なうことなく、多孔プレートの平坦な焦点面323から約5.3mmの距離に、言い換えると、中央の一次電子ビームレット3の焦点323よりも5.3mmの距離だけさらに下流側に配置されるような湾曲した焦点領域となるように構成することができる。このように、焦点領域の試料への結像処理において所定の縮小を行なうことにより、結果として形成される像平面101は、一次電子ビームスポットすなわち結像点101aが試料表面に一致する平坦な像平面101となる。
【0213】
図4において、第1の多孔プレート413の第2の多孔プレート414に対する1つの可能な配置が、本発明に係る粒子光学部品の第1の実施の形態405として示されている。第1及び第2の多孔プレート413、414の両方は、それぞれの複数の開孔によって開孔パターンが形成された、実質的に平面平行であるプレートである。第2の多孔プレート414は、第1の多孔プレート413に対して傾斜している、すなわち、第1の多孔プレート413に対して角度γで配置され、これによって、両者の間に間隙が形成されている。この間隙は、第1の開孔415の位置において第1の幅w1を有し、第2の開孔415'の位置において第2の幅w2を有しており、ここで、w1>w2である。第1の多孔プレートの各開孔は、対応付けられた開孔対415及び415a、並びに、415'及び415’aが形成されるように、第2の多孔プレート414の対応する開孔と整列されている。図4の矢印は、荷電粒子ビームの方向を示している。第1の多孔プレート413は、荷電粒子ビームのビーム経路に対して直角に配置されている。第1及び第2の多孔プレート413、414の配置は、互いに対称である。
【0214】
図5において、第1の多孔プレート513の第2の多孔プレート514に対するさらなる可能な配置及び第1の多孔プレート513の可能な設計が、本発明に係る粒子光学部品の第2の実施の形態505として示されている。図5に示されるように、第1の多孔プレート513は様々な厚さを有しており、第1の多孔プレート513の厚さが右側から左側へ増加するように、第1の多孔プレート513の第1の面513aが第2の面513bに対して角度αで配置されている。第1の多孔プレート513の第2の面513bは、図5において矢印で示される衝突する荷電粒子ビームのビーム経路に対して直角に配置されている。第2の多孔プレート514は、平面平行プレートであり、その第1及び第2の面は、第1の多孔プレート513の第2の面513bと平行に、従って、第1の多孔プレート513の第1の面513aに対して角度αで配置されている。従って、第1及び第2の多孔プレート513、514の間に形成された間隙は、第1の開孔515の位置において第1の幅w1を有し、第2の開孔515'の位置において第2の幅w2を有しており、ここで、w1>w2である。
【0215】
図6において、本発明の粒子光学部品の第3の好適な実施の形態605が示されている。第1の多孔プレート613は、凸面状の非球面形状を有する第1の面613a及び平面(平坦な)形状を有する第2の面613bを有している。第2の多孔プレート614は、第1の多孔プレート613と実質的に同一である。第1及び第2の多孔プレート613、614は、互いに鏡面反転して配置され、対称平面MIPが第1及び第2の多孔プレート613、614間に形成された間隙を通って延びている。第1及び第2の多孔プレート613、614の第1の面613a、614aは、互いに対向して配置されている。第1及び第2の多孔プレート613、614は、それぞれの複数の開孔を含む同一の開孔パターンを有しており、第1の多孔プレート613の各開孔は、第2の多孔プレート614の対応する開孔と整列されている。ここでも、第1及び第2の多孔プレート613、614間に形成された間隙は、開孔パターンの周辺に位置する、第1の開孔615の位置において第1の幅w1を有し、開孔パターンの中心に位置する、第2の開孔615'の位置において第2の幅w2を有しており、ここでw1>w2である。好適な実施の形態において、第2の幅w2は、例えば、約80μmであってもよく、開孔パターン(説明を容易にするため、図6においては開孔を9つだけ含んでいるが、一般には、これよりも多い数の開孔を含む)の縁端部おける第1の幅w1は、例えば、約290μmであってもよい。
【0216】
第1及び第2の多孔プレート613、614の開孔パターンが同じであり、かつ、一定のピッチP6を有する場合、N番目の開孔の位置における間隙の幅は、例えば、
【0217】
【数7】

【0218】
によって表すことができる。N=0となる中央の開孔が80(mの第2の幅w2を有する場合、既に述べたように、N=±70である最も外側の開孔における間隙の幅は、P6が48μmであれば、約290μmとなる。図6に示される、N=−4である開孔における第1の幅w1は、前記式にしたがって計算した場合、当該ピッチP6に対して、約81μm未満となる。
【0219】
図7において、図6に示される粒子光学部品の実施の形態605の像面湾曲の補償効果あるいは補正効果が概略的に示されている。一次電子ビーム311は、第1の多孔プレート613の第2の面613bに衝突する。第1及び第2の多孔プレート613、614に形成された開孔615を通過する電子は、一次電子ビームレット3を形成する。第1及び第2の多孔プレート613、614に、第1の多孔プレート613の上流側近傍の第1の電場E1が実質的にゼロとなるような電位U1、U2が印加される。電位U1、U2は、第1及び第2の多孔プレート613、614間の間隙に電場E2が生成されるようにも選択される。図示される実施の形態において、これは、例えば、第1の多孔プレート613に約500V(U1)を印加し、第2の多孔プレート614を接地する(U2)ことによって行なうことができる。このようにして、第1及び第2の多孔プレート613、614間に、いわゆる液浸型レンズが形成される。適切な電位を供給するように構成された電圧源は、図7において「630」で示されている。図7に示される実施の形態において、第3の電場E3が第2の多孔プレート614の下流側に設けられ、この電場は、粒子光学部品が、一次電子ビームレット3が焦点領域625に集束されるような集束効果を第1及び第2の多孔プレート613、614の開孔を通過する電子(荷電粒子)に対して有するように構成されている。これは、例えば、20kV〜30kV(接地された第2の多孔プレート614に対して)といった適切な電圧が供給された単開孔プレート(図示せず)としての電極によって集束電場E3を生成することにより容易に実現することができる。本実施の形態において、主要な集束は、電場強度の異なる2つの電場E1及びE3の縁端部に配置された第2の多孔プレート614によって実現され、比較的小さい集束効果である像面湾曲の補正効果は、第1及び第2の多孔プレート613、614間の間隙において生成される電場E2によって実現される。従って、焦点領域623は、開孔パターンの中心において粒子光学部品を通過する一次電子ビームレット3の焦点距離が開孔パターンの周辺に位置する開孔を通過する一次電子ビームレット3の焦点距離に比べて約5%だけ短い、湾曲した焦点領域である。これにより、上述したように、例えば、粒子光学部品の下流側の粒子光学素子Mによって生じた像面湾曲を補正することが可能となる。また、図示される部品により、非点収差や歪曲収差などの他の結像誤差を補正することができる。
【0220】
本発明の粒子光学部品の結像誤差の補正あるいは補償効果は、間隙の幅wを調整することによって、又は、第1及び第2の多孔プレート間の電位差ΔUを調整することによって、様々なものとすることができ、これにより、粒子光学部品を別のものに交換することなく調整を行なうことが可能となる。また、多孔プレートの前記の特定の設計、特に、第1の面の形状及び他の要因を粒子光学システムの特定の設計に合わせることができる。第1の面のうちの一方又は両方の形状は、それぞれ、選択される間隙幅又は間隙幅の範囲、また、達成すべき補償効果に影響されることになる。
【0221】
図6及び図7に示される実施の形態において、第1及び第2の多孔プレート613、614間に印加される電位差ΔUは、例えば、0〜800Vの範囲にあってもよく、これは、電気的破壊を防止するための真空環境において十分に低い、10,000V/mm未満の電場強度に対応する。ゼロの電位差が印加された場合、像面湾曲の補償効果が得られないので、ΔU>0である実施の形態が好ましい。
【0222】
図8a〜図8dにおいて、本発明の粒子光学部品の実施の形態605の内部及び周囲における多数の電場構成が概略的に示されている。
【0223】
荷電粒子の運動エネルギーが粒子光学部品の第1の多孔プレート613の第2の面613bに衝突する照射電子ビーム311の断面にわたって実質的に一定であるとすると、粒子光学部品に近接する電場E2、、並びに、必要に応じて電場E1及びE3は、それぞれの開孔によって形成される焦点距離fが、照射電子ビーム311にわたる開孔位置に依存するような形状とすることができる。電場E2の整形は、例えば、対向する表面の曲率及び/又はそれらの互いに対する配置、それらの間に形成された間隙の結果として生じる形状及び寸法、並びに、第1及び第2の多孔プレート613、614に印加される電位などの多孔プレート613、614の設計によって行なうことができる。必要に応じたさらなる粒子光学収差の補正効果を実現するための電場E1及びE3の整形は、粒子光学部品の上流側又は下流側に距離をおいて配置された、好ましくは単開孔プレートとしての1つ又は複数の電極によって行なうことができる。
【0224】
図8aに示される構成において、開孔611を有する単開孔電極としての第1の電極665は、第1の多孔プレート613の上流側に距離をおいて設けられ、同様に、第1の電極665の開孔と実質的に同一の開孔661を有する単開孔プレートである第2の電極670は、第2の多孔プレート614の下流側に距離をおいて設けられている。図示される構成において、第2の多孔プレート614に500Vの電位が印加されるのに対し、第1の多孔プレート613は接地され、その結果、第1及び第2の多孔プレート613、614間に0.5kVの電位差ΔUが生じる。これらの電位を供給するように構成された電圧源は、説明を容易にするため、図8においては図示されていない。粒子光学部品の本実施の形態605は、図6及び図7に示されるものと実質的に同じであり、すなわち、第1及び第2の多孔プレート613、614は、これらの間に形成される間隙の幅が、多孔プレートの中心において最小となり、かつ、径方向外向きに増加するように互いに対向する凸面形状の第1の面を有する。従って、電場強度は、各電場発生電極に印加される電位差と、電場発生電極、すなわち、この場合は第1及び第2の多孔プレートの互いからの距離との比によって得られるので、間隙内で結果として生じる電場E2は、中心において最も高い電場強度を有し、これもまた、径方向外向きに減少する。
【0225】
図8aに示される実施の形態において、第1の電極665は接地されるのに対し、第2の電極には第2の多孔プレート614と同じく500Vの電位が印加されるため、粒子光学部品605の上流側の電場E1及び下流側の電場E3はゼロである。従って、粒子光学部品605は、粒子光学部品の上流側及び/又は下流側の電場の十分な差異又は勾配によってそれぞれ全体的に強い集束効果が得られる場合とは異なり、開孔の中心を中心として径方向外向きに変化して像面湾曲の補償効果をもたらす、非常に弱い集束効果のみを与える。従って、前記部品によって得られるこの弱い集束効果は、図示されない集束装置によって得られる主要な集束効果に重ね合わせることができる。荷電粒子ビーム311として粒子光学部品605上に向けられた荷電粒子は、第1及び第2の多孔プレート613、614の開孔615を透過し、荷電粒子ビームレット3を形成し、形成された荷電粒子ビームレット3の数は、第1及び第2の多孔プレート613、614の開孔615の数に対応している。同ビームレットは、図示されていない集束素子(比較的大きい主要な集束効果を与える)によって主に集束されて、焦点領域625に焦点623を形成するものと考えられ、焦点領域625は、粒子光学部品605の周辺領域を透過して比較的弱い電場E2に曝されたビームレットよりも強い電場E2を受けた、粒子光学部品605の中央領域において透過したビームレットによる曲面形状を有しているため、これらは、異なる合計集束効果を受け、その結果、異なる焦点距離、及び、これに応じた焦点領域625の曲率が生じる。この湾曲した焦点領域625により、粒子光学部品605のさらに下流側の粒子光学素子によって生じる像面湾曲を補償することが可能となる。第1及び第2の電極665、670の開孔611及び661は、粒子光学部品によって生成されるビーム311又はビームレット3がそれぞれ通過できるような寸法にされている。
【0226】
別の構成において、電場E1及びE3は、ゼロとは異なるように選択してもよい。これらの場合において、電場E1及びE3が同じである場合は、粒子光学部品内では主要な強い集束は行なわれず、電場E2による弱い集束効果のみがもたらされ、粒子光学部品の補正効果が実現されることになる。従って、E1及びE3が異なる及び/又は不均一である場合は、さらなる集束効果を与えてもよい。
【0227】
尚、図8a又はその他の図面に示される焦点領域325の位置は、単に説明の目的で示されている。焦点領域は、前記システムの他の任意の位置、例えば、使用される集束方法の種類、位置及び程度によっては、さらに下流側にあってもよい。
【0228】
図8bの実施の形態において、さらなる主要な集束効果をもたらす電場構成が示されている。粒子光学部品、並びに、第1及び第2の電極665及び670の配置は、図8aに示されるものに実質的に対応しており、同様に単開孔プレートとしての第3の電極680が、第2の電極680の下流側に距離をおいて配置されている。本実施の形態において、第3の電極680の開孔661は、第1及び第2の電極665、670の開孔611、661と実質的に同じである。第1の多孔プレート613の上流側近傍に等電位線によって示されるような均一な電場E1が存在するように、第1の電極に30kVの電位を印加し、粒子光学部品605の第1の多孔プレート613に9kVの電位を印加することにより、第1の電極665と粒子光学部品605との間に電場E1が生成される。第1及び第2の多孔プレート613、614の間の間隙内の電場E2は、第2の多孔プレート614に9.5kVの電位を印加することによって0.5kVの電位差ΔUが印加されることを除いて、図8aに示される実施の形態と同様にして生成される。第2の多孔プレート614と第2の電極670との間の電場E3がゼロとなるように、第2の多孔プレート614の下流側の第2の電極670に、同じく9.5kVの電位が印加される。このように、粒子光学部品605の上流側の電場E1と下流側の電場E3とは異なり、これにより、荷電粒子ビーム311の荷電粒子が焦点領域625に集束されるような主要な集束効果がもたらされ、従って、焦点領域625は、図8aの実施の形態と比べて、粒子光学部品605のより近くに位置しており、本実施の形態においては、第3の電極680に19.5kVの電位を印加することによって生成される、図示される等電位線によって示されるような実質的に均一な電場E4内に位置する。本実施の形態は、本発明の第7の局面に係る複数の荷電粒子ビームレットの集束方法の例でもある。
【0229】
図8cに示されるさらなる実施の形態において、粒子光学部品605の上流側及び下流側の異なる電場E1、E3による主要な集束効果、並びに、粒子光学部品605による補償効果に加えて、電場強度が光軸に直交する平面における所与の領域において様々となるように電場(図8cの実施の形態においては電場E4)を整形することにより、さらなる粒子光学収差の補正効果を得ることができ、この電場強度は、例えば、径方向依存性を示してもよい。E1は、第1の多孔プレート613の近傍の位置における照射ビーム311の断面にわたって実質的に一定である。第2の電極670の開孔661から(湾曲した等電位線によって示されるように、単開孔プレート670、680間の空間から)第2の多孔プレート614と単開孔プレート670との間の空間に貫通する電場E4によって、不均一な電場E3が生じる。従って、開孔パターンの中心に位置する開孔は、開孔パターンの周辺に位置する開孔よりも短い焦点距離fを形成することになり、その結果、ビームレット3の焦点623は、図8cの一点鎖線で示されるように、湾曲した焦点領域625上に位置することになる。このように、本発明に係る粒子光学部品による像面湾曲の補正効果又は幾何学的収差の補償効果に加えて、同部品の下流側の電極の配置及びこれらに対する適切な電位の印加も、像面湾曲の補償に寄与する。
【0230】
別の実施の形態において、均一な電場、例えば、電場E4は、電極の開孔(例えば、電場E4の場合は、開孔661)の適切な直径を適切に選択することによって生成してもよい。例えば、電極680の開孔661の直径は、電極670の開孔661の直径と異なっていてもよい。さらなる実施の形態においては、均一な電場E4が得られるように、電極670及び680の厚さを適切に選択してもよい。電極670又は680の開孔の直径のパラメータ、並びに、電極670、680の開孔直径比、電極670の厚さ及び電極670に印加される電圧を適切に調整して、実質的に均一な電場をこれらの間に形成してもよい。当業者には容易に明らかであるように、他の電極対及びこれらの間に形成される電場に対しても同じことが適用される。
【0231】
図8dは、図8cに示されるものと実質的に逆の構成を示している。図8dにおいて、第1の電極665の上流側に距離をおいて配置された単開孔プレート660と第1の電極665との間にあり、第1の電極665と第1の多孔プレート613との間の空間に膨出する電場E1によって、第1の多孔プレート613の上流側に不均一な電場E2が形成されている。粒子光学部品605内での電場E3の生成及び粒子光学部品605の構成は、図8a〜図8cに関連して説明された実施の形態と実質的に同じである。第2の多孔プレート614に9.5kVの電位が印加されるのに対して、単開孔プレート670に30kVの電位を印加することにより、第2の多孔プレート614の下流側に電場E4が生成される。このように、粒子光学部品605の上流側の電場E2と下流側の電場E4とは異なり、これにより、粒子光学部品605又はその単一の多孔プレートによって、それぞれ、主要な集束効果が得られる。また、粒子光学部品605は、多孔プレート613、614の中心又は中央の開孔に対するそれぞれの開孔の位置に焦点距離を依存させることにより、補正効果をもたらす。さらに、粒子光学部品605の上流側に不均一な電場E2を設けることにより、さらなる像面湾曲の補正効果がもたらされる。
【0232】
多孔プレートの上流側又は下流側に特定の形状の電場を設けることによって得られるさらなる集束効果は、虚焦点にも関連して、本譲受人に譲渡された前記の国際公開第205024881号において詳細に記載されている。
【0233】
図8eに示される実施の形態は、第1及び第2の多孔プレート613、614の開孔パターンと同様に配置された開孔パターンを含むさらなる多孔プレート618が第2の多孔プレート614の下流側に設けられていることを除いて、図8dに示されるものと実質的に同一である。第2及びさらなる多孔プレート613、618の間には電場が存在しないように、このさらなる多孔プレート618に同じく9.5kVの電位が印加される。別の実施の形態において、第2の多孔プレート614に印加された電位とは異なる電位をさらなる多孔プレート618に印加し、これらの間に電場E4を生成してもよい。好ましくは、電場E4は、電場E3と同じ大きさ及び異なる向き(加速/減速)を有しないのがよい。図8eに示される実施の形態は、特に実用的な理由で有利である。なぜなら、既存の多孔プレートの製造方法での経験によると、多くの場合、多孔プレートの一方の表面のみが平滑であり、他方は一定の粗さを有することが示されているからである。図8eに示される実施の形態において、多孔プレート613、614及び618は、これらのそれぞれの平滑な表面が、電場(図示される場合においては、E3及びE5)が存在する領域に対向するように配置されるのが有利であり、これは、電場及びシステム全体の粒子光学特性にとって有益であることが分かっている。
【0234】
図9において、第3の多孔プレート619が第1の多孔プレート613の上流側に、すなわち、第1の多孔プレート613が第3の多孔プレート619と第2の多孔プレート614との間に配置されるように配置されている本発明の実施の形態が示されている。図示される実施の形態において、第3の多孔プレート619は、第1及び第2の多孔プレート(それぞれ、開孔615、615aを有する)と同じ数及びパターンの開孔615cを有する。開孔615cは、対応する第1の多孔プレート613の開孔615及び第2の多孔プレート614の開孔615aと整列されている。図9に示されるように、第3の多孔プレート619の開孔615cは、第1及び第2の多孔プレートの対応する開孔よりも小さい直径を有する。本実施の形態は、荷電粒子ビーム311の荷電粒子が開孔615cの間の第3の多孔プレート619の表面に衝突することにより、第1の多孔プレート613ではなく、第3の多孔プレート619が、加熱され、また、電荷及び汚染物質を捕集する、すなわち、第3の多孔プレート619が劣化するという点で有利である。第3の多孔619は、第1及び第2の多孔プレート613、614の開孔615、615aを実質的に完全に透過したビームレット3を形成する、すなわち、荷電粒子が表面に衝突し、散乱することによる荷電粒子の損失が実質的にない。図9において、第1の多孔プレート613に対して第2の多孔プレート614をずらすための取付構造690も概略的に示されている。
【0235】
図10a及び図10bにおいて、第1の多孔プレート613の上流側に配置された第4の開孔プレート620を有する本発明さらなる実施の形態が示されている。本実施の形態において、第4の開孔プレート620は、第1及び第2の多孔プレート613、614の開孔615、615aの直径に直径が対応している単一の開孔615dを有する。第4の開孔プレート620は、第4の開孔プレート620を第1及び第2の多孔プレート613、614に対して、特に、平行にずらすためのアクチュエータ(図示せず)を含む取付構造691によって保持されている。このような第4の開孔プレート620は、例えば、多孔部品を検査するのに適している。多孔部品は、例えば、単一の多孔プレート、2つの多孔プレートからなる一組のプレート又は本発明に係る粒子光学部品であってもよい。本実施の形態において、多孔部品の動作方法は、本発明に係る粒子光学部品の第1及び第2の多孔プレート613、614の整列性を検査する工程を含む。図10aに示される第1の工程S1において、検査用開孔プレートである第4の開孔プレート620は、検査用開孔プレート620の開孔615dが、透過する荷電粒子ビームの方向、すなわち、荷電粒子光学システムの光軸の方向において、第1の多孔プレート613の第1の開孔615P1及び第2の多孔プレート614の対応する開孔615aP1と整列されるような第1の位置に、第1及び第2の多孔プレート613に対して配置される。荷粒子ビームレット3は、開孔615d、615P1及び615aP1を透過し、検出器装置Dによって検出器表面の位置DP1において検出され、例えば、ビームレット3の強度、形状もしくは位置、又はこれら全てを検出することができる。第2の工程S2においては、第4のすなわち検査用開孔プレート620が、第1の多孔プレート613に対して平行にずらされ、これによって、検査用開孔プレート620の開孔615dが、第1の多孔プレート613の別の開孔615P2及び第2の多孔プレート614のこれと整列された開孔615aP2と整列されるような第2の位置に、第1の多孔プレート613に対して配置される。ビームレット3は、次に、開孔615d、615P2及び615aP2を透過し、位置、形状又は強度、好ましくは、第1の工程S1におけるものと同じパラメータ又はパラメータ集合に関して、検出器装置Dの第2の位置DP2において検出される。ビームレット3が透過した開孔の大きさが両方の位置で同じであるが、ビームレット3の強度が第1及び第2の位置で異なる場合、この強度差は、第1及び第2の多孔プレートの整列不良を示す可能性があり、この場合、前記方法は、第1の多孔プレート613の位置を第2の多孔プレート614に対して調整する工程をさらに含んでいてもよい。
【0236】
図11において、磁気レンズ700において用いられる本発明に係る荷電粒子部品の実施の形態が示されている。この磁気レンズ700は、4つの磁極701〜704を含み、二対の隣接する磁極701及び702、並びに、703及び704は、それらの間にそれぞれの間隙705、706を形成し、これにより、磁極対又は間隙705、706の間の空間をそれぞれ貫通する磁場が形成されている。図11に示される実施の形態において、粒子光学部品は、複数の開孔615を有する第1の多孔プレート613と、複数の開孔615を有する第2の多孔プレート614と、第1の多孔プレート613の上流側に配置され、複数の開孔615が形成された第3の多孔プレート619とを含む。3つの多孔プレート613、614、619は、これらの間においてそれぞれの多孔プレートの外周リング部の周りに配置された多数のスペーサSPを用いて取り付けられており、これにより、多孔プレートは整列され、互いに所定距離をおいて固定される。スペーサSPは絶縁性材料からなる。また、電極管710が第3の多孔プレート619の上流側に設けられ、もう1つの電極管711が第2の多孔プレート614の下流側に配置されている。図示される実施の形態は、球面収差、又は磁気レンズの中心からの距離に対する依存性を示すその他のあらゆる収差の補正に有利に用いることができる。特に、径方向依存性を示す収差を有利に補正することができる。一実施の形態においては、補償効果をもたらすために、電極管710に0kVが印加され、第3及び第1の多孔プレート613、619にも同様に0kVが印加されるのに対し、第2の多孔プレートには0.5kVという小さな電圧が印加され、第1及び第2の多孔プレート613、614間に小さい集束補正電場が形成される。電極管711の上部縁には、0.5kVを供給するのが便利であり、一方、さらに下流側には(図示されていないが、矢印によって示されている)、10kVの電位を適切に供給してもよい。
【0237】
図11において、粒子光学部品は、間隙705、706の領域、従って、磁場の領域に配置されているように示されているが、他の実施の形態においては、ゼロ又はごく小さい磁束密度の領域に配置されるように磁気レンズ700内に配置されることがより有利であり得る。
【0238】
図12aにおいて、本発明に係る粒子光学部品の近傍において磁場が実質的に無効化される本発明に係る粒子光学装置及び粒子光学システムの実施の形態、並びに、本発明のさらなる局面に係る荷電粒子ビームレットの操作方法の実施の形態が示されている。実施の形態の粒子光学システムは、荷電粒子源装置801と、コリメータレンズ803と、本発明に係る粒子光学部品805と、視野レンズ807と、対物レンズ1102と、試料台1007とを含む。これらの部品の機能は、特に、図1及び図7を参照しながら上述の実施の形態において説明されたものに概ね対応している。本実施の形態のレンズ803、807及び1102のうちの少なくとも1つは、磁気レンズ、例えば、コリメータレンズ803である。本実施の形態の粒子光学装置は、レンズ803、807及び1102のうちの1つ又はそれ以上によって生成される磁場が、粒子光学部品805の近傍において、特に、粒子光学部品805の第1及び第2の多孔プレートの間隙の間において実質的に無効化されるような磁場を、粒子光学部品805の領域に生成するためのコイルを含むコイル装置880をさらに含む。図12aに示されるに実施の形態おいて、レンズ803は、所与の磁束密度及び向きを有する磁場を生成する磁気レンズである。図12aの粒子光学装置の実施の形態の軸zにおける磁束密度が図12bに示されている。レンズ803によって生成される正の磁束密度を有する磁場は、粒子光学部品805の少なくともある領域において生成される第2の磁場によって減少し、多孔プレート間の間隙は、図12bに示される軸z上の位置z1の近くに位置している。第2の磁場は、位置z1において磁場Bzを実質的に無効化するように構成された向き及び磁束密度を有する。磁場は、粒子光学部品全体を含む領域においては無効化されないかもしれないが、粒子光学部品内のある1つの位置において実質的に無効化されることが好ましい。当業者に容易に理解されるように、第2の磁場の磁束密度及び位置は、コイル装置880のレイアウト及び/又は位置、当該装置のコイルを流れる電流、及び他の適切なパラメータによって決定することができる。荷電粒子ビームレットの操作方法の対応する実施の形態において、荷電粒子ビーム311は、粒子源装置801によって生成され、荷電粒子ビーム311のビーム経路において、第1の磁場を生成する磁気コリメータレンズ803によって平行にされ、粒子光学部品805上に導かれる。荷電粒子ビーム311の荷電粒子は、粒子光学部品805の開孔を透過し、これによって、ビームレット3(説明を容易にするために図12aにおいては単一のビームとして示されている)が形成される。次に、コイル装置880によって第2の磁場が生成され、この磁場は、コリメータレンズ803によって生成された第1の磁場を粒子光学部品805の領域において実質上無効化する。
【0239】
図13aにおいて、第1の多孔プレート613が磁気レンズ装置の第1の磁極片753と一体的に形成され、第2の多孔プレート614がこの磁気レンズ装置の第2の磁極片754と一体的に形成されている、本発明の第10の局面に係る粒子光学装置の実施の形態が示されている。図13aに示されるように、第1及び第2の磁極片753、754は、軸zで方向が示されている荷電粒子のビーム経路に関して対称に配置されている。磁気レンズ装置の内部はトロイド形状をなしているように示されているが、磁極片753、754の他の構造も考えられる。第1及び第2の多孔プレート613、614は、ビーム経路が通るように配置されている。第1及び第2の磁極片753、754の磁極片装置750の内部に配置されたコイル751を流れる電流によって一般に誘導される磁束が磁極片753、753に生成される際、軸zに対向する側の第1及び第2の磁極片753、754間の間隙、並びに、第1及び第2の多孔プレート613、614間の間隙に磁場が生成される。間隙は様々な幅を有しているので、間隙内部の磁束密度もそれに応じて様々なものとなる。従って、多孔プレート613、614の中心において開孔615a’を通る荷電粒子は、多孔プレートの周辺寄りに位置する開孔を通る粒子と比べてより強い磁場を通って移動することになる。図13bに示されるグラフにおいて、対応付けられた異なる整列開孔対615a’(B’)、615a’’(B’’)、615a’’’(B’’’)の間の間隙内の軸z方向における磁束密度Bzが概略的に示されている。このグラフから分かるように、最大磁束密度Bzは、第1及び第2の多孔プレート613、614間の間隙幅の増加と共に軸からの距離が増加するにしたがって減少する。磁束密度のこのような径方向依存性、及び径方向に減少する磁束密度が荷電粒子に及ぼす影響は、このような装置を含むシステムにおいて粒子光学収差を補正あるいは補償するために有利に用いられる。
【0240】
図14において、本発明に係る粒子光学装置又は粒子光学システムのさらなる実施の形態が示されている。本実施の形態は、図12aに示される実施の形態と同様に、荷電粒子源装置801’と、粒子光学部品805'の第1及び第2の多孔プレートに異なる電位を印加するように構成された電圧源システム830を含む本発明に係る粒子光学部品805'とを含む。本実施の形態の粒子光学装置は、粒子光学部品805'の下流側において複数の荷電粒子ビームレットの合計ビーム電流に基づいて電圧源システム830を制御するように構成された第1の制御部841を有する制御器840をさらに含む。これにより、粒子光学部品によって得られる補正効果をシステムにおける荷電粒子の合計電流に応じて調整することが可能となる。なぜなら、粒子光学収差の程度は荷電粒子間のクーロン相互作用に影響される傾向があるからである。荷電粒子源装置801’が高電流の荷電粒子を放出するように設定されているか、又は電子などの二次粒子を大量に生成する開孔数の高い多孔プレートが被検査試料に対して用いられている場合、粒子光学部品805'の下流側の粒子ビームレットにおける荷電粒子の密度は増加するので、前記部品によって得られる補償効果の調整を行なうことが望ましい。図14に示される実施の形態において、粒子光学装置は、複数の荷電粒子の合計ビーム電流を検出するための電流検出器848をさらに含む。図14に示される実施の形態において、合計ビーム電流は、荷電粒子源装置801'と、荷電粒子ビームレットの合計ビーム電流に応じて電荷を捕集する試料台1007'との間の電位差を測定することによって求められる。特に、第2の多孔プレートが多孔プレートの個々の開孔を効果的に開閉し、試料台1007'に載置された試料上に導かれた荷電粒子ビームレットの合計電流を制御するための偏向装置を含む場合には、制御器は、荷電粒子ビームレットのビーム電流を制御するための第2の制御部842も含んでいてもよい。これは、第2の制御部に、荷電粒子部品805'の第2の多孔プレート上に配置された偏向装置の制御ユニット849に信号を送信させることによって実現することができる。第1の制御部841が第2の制御部842の設定に対して応答性を有しているのも有利である。すなわち、第2の制御部842が荷電粒子ビームレットの電流を増加又は減少させるように設定されている場合、第1の制御部841は、前記増加又は減少を示す第2の制御部842による信号に対して、電圧源システム830をこれにしたがって調整することによって応答して、ビーム電流の変化に対応してもよい。第1及び第2の制御部841、842は、例えば、荷電粒子源装置801'に接続されて、生成されるビーム電流の変化を示し得る信号入力装置845からの信号入力といった、他の信号源からの他の信号入力装置に対して応答性を有していてもよいし、又は、別の例においては、二次電子検出装置に対する応答性を有していてもよい。図14の実施の形態のシステムは、コリメータレンズ803'と、視野レンズ807'と、対物レンズ1102'と、試料台1007'とをさらに含む。これらの部品の機能は、特に図1及び図7を参照しながら上述の実施の形態において説明されたものに概ね対応している。
【0241】
図14に示される粒子光学システムは、例えば、基板上にパターンを描画するためのリソグラフィシステムとして、使用され、構成されてもよい。
【0242】
本発明に係る粒子光学部品においては、一般に、第1及び第2の多孔プレートは、できる限り正確に互いに整列されることが望ましい。前記2つの多孔プレート、又はこれらの対応づけられた開孔の整列性は、100nmよりも良好であることが望ましい。わずかな整列不良が、像平面において結果として生成される一次電子ビームスポットアレイの歪曲収差を引き起こす。このような歪曲収差作用は図15aに示されており、同図は、第1及び第2の多孔プレート613、614間の整列不良によって生じた、焦点面625における一次電子ビームレット3のスポット623のずれを示しており、このずれは像平面における対応する歪曲収差となる。特に、隣接する焦点623間の距離は、図15aにおいて右側から左側に向かって減少する。図16は、これに起因する、像平面における一次電子ビームスポットのスポットアレイパターンの立面図を示している。
【0243】
但し、多孔プレートのわずかな整列不良が許容される必要がある場合、それに起因する誤差、特に、歪曲収差は、傾斜した照射モードを使用することによって容易に補償され得ることが分かっている。図15bは、直角からわずかにずれる角度で(典型的には2〜3mradの範囲で)第1の多孔プレート613に衝突する荷電粒子ビーム311を、整列不良によって生じる歪曲収差を補償するためにどのように用いることができるかを示している。このような効果は、それぞれの電場の局所的強度に応じて、荷電粒子ビーム又はビームレットをそれぞれ偏向させることによるものであってもよい。図示される多孔プレート613、614の中心においては、より強い電場が生成される。従って、偏向は、多孔プレート613、614の周辺側よりも中心においての方が高く、これによって、歪曲収差を補償するための補正効果が得られる。従って、図15bに示されるような傾斜した照射モードを使用することにより、一次電子ビームレット3の焦点が焦点面625において等間隔となる。
【0244】
あるいは、例えば、第1及び第2の多孔プレートの上流側にさらなる多孔プレートが用いられている実施の形態においては、このさらなる多孔プレートは、上述の整列不良に対する補償を実現するために、このさらなる多孔プレートの開孔の中心が第1及び第2の多孔プレートの対応する開孔の中心に対してずれるように第1及び第2の多孔プレートに対して配置されていてもよい。
【0245】
図17において、本発明の第15の局面に係る成形多孔装置の製造方法の実施の形態が示されている。第1の工程S1において、ウエハ厚さWTを有するシリコンウエハ900に開孔905がエッチングされる。シリコンウエハへの開孔のエッチングは、シリコン技術の分野において周知である。開孔905の形成は、例えば、シリコン表面の最上部に酸化ケイ素薄膜が形成された単結晶シリコンウエハ900を用意し、酸化ケイ素の表面に薄い金属層を設け、シリコンウエハの少なくとも一方の側に配置された金属層上にフォトレジストの薄い層を設けることによって行なうことができる。露光されたフォトレジスト部分のパターンが形成されるように放射線露光を行なうことによって、所望のパターンがフォトレジストに適切に形成される。露光されたフォトレジスト部分は除去され(又は、除去されたフォトレジストの未露光の部分が陰画のパターンを形成する)、次いで、その下にある露光された金属層が適切なエッチング処理によって除去される。このようにして、フォトレジストに形成されたパターンが金属層に複製される。その後、深い反応性イオンエッチングによる酸化ケイ素及びシリコンのエッチングなどの適切なエッチング処理によってシリコンウエハ900に開孔905がエッチングされるが、この方法は、ウエハの厚さWT全体を貫通する高アスペクト比の開孔を得るのに適しているという点で有利である。一旦、ウエハの厚さWT全体を通って延びる開孔905が形成され、ウエハの両側901、902から接触可能になると、これらの開孔は、前記方法の実施の形態の第2の工程S2において、適当な接着剤又は樹脂などの適当な充填剤で充填される。第3の工程S3において、ウエハ900の側(すなわち面)902は、開孔905の全てを含む領域910に曲面形状が生じるまで、ダイヤモンドなどの適当な研磨材又は研削材をそれぞれ用いて、旋盤上で旋削され、研磨される。このような旋削・研磨は、ガラス、石英ガラス、フッ化カルシウム等からなる従来の光学レンズ素子の製造から周知である。成形表面領域910に隣接する領域920(中心対称であるパターンの場合には、成形表面領域910の周囲にフレームを形成することになる)は、実質的に平坦になるように加工される。シリコンウエハ上の縁930は、旋削・研磨工程S3から除外され、従って、実質的に元のウエハ厚さWTを有する。この縁930は、例えば、適当な絶縁性材料を塗布し、次いで接着を行なうことによって2つの多孔プレートを互いに接着するための接着面を設けるために有利に用いることができる。
【0246】
本発明の第13の局面に係る、成形表面を有する多孔プレートの製造方法の実施の形態においては、第1の工程S1において、図18に示されるように、穴904のパターンがシリコンウエハ900にその前側901からエッチングされる。図17に示される実施の形態とは対照的に、この特定の実施の形態において、穴904は、ウエハ厚さWT全体を通って延びるのではなく、ウエハ厚さWTの約2分の1に相当する深さに達しているに過ぎない。他の実施の形態においては、前記穴は、ウエハ厚さWT全体を通って延びていない限り、異なる深さまで延びていてもよい。穴904のエッチングは、図17の前記実施の形態における開孔905のエッチングと同じ方法で行なうことができる。第2の工程S2において、ウエハの他方の側902、すなわち、前側901と反対のシリコンウエハ900の裏側902が加工される。前記方法と同様に、シリコンウエハは、ダイアモンド旋削され、すなわち、研削材としてダイアモンド材料を用いて旋削され、シリコンウエハ900の裏側902から、当該裏側に曲面形状を与えるのに十分な材料が除去されるまで研磨される。旋削・研磨は、シリコンウエハ900の裏側902の表面が開孔パターンの中心の周りに湾曲した領域910を有するように行なわれる。最後に、第3の工程S3において、裏側902から穴904を開くように裏側902がエッチングされ、これによって、ウエハ900の厚さ全体を通って延びる開孔905が形成される。等方性エッチングによって、ウエハの裏側のいかなる位置からも同量の材料が実質的に除去され、これによって、旋削・研磨工程によって得られた形状が実質的に維持される。このエッチングは、プラズマエッチングなどの物理エッチング法によって行なうことができる。このようにして、多孔プレートが形成される。曲面の形状は、使用される旋削・研磨用工具を適切に設定し、エッチング液又はエッチング法を適切に選択することにより、かなり広い範囲で容易に選択することができる。別の実施の形態においては、適当なエッチング液を用いて、エッチング工程を調整して、旋削・研磨工程によって得られた形状を所望の方法で変化させることができる。
【0247】
図19において、一方の側に曲面を形成し、他方の側に穴をエッチングする工程が図18に示される実施の形態とは逆になっている、本発明の第13の局面に係る多孔プレートの製造方法のさなる実施の形態が示されている。従って、第1の工程においては、シリコンウエハ900の背面が旋盤上でダイアモンド材を用いて旋削され、シリコンウエハ900の背面902が少なくとも所定の領域において曲面CSを有するように材料が研磨され、除去される。第2の工程S2においては、多数の穴904が他方の側、すなわち、シリコンウエハ900の前面901にエッチングされる。第3の工程においては、ウエハの厚さ全体を通って延びず、従って、前面901にのみ開いた穴904が、適当な充填材料Fで充填される。第4の工程S4においては、穴904を露光し、前面及び背面901、902の両方に開いた開孔905を形成するのに十分な材料が除去され、また、背面902の曲面形状CSの曲率が維持されるように、曲面CSを含む裏側902が、図18に関連して説明されたものと同じ又は類似した方法で、プラズマエッチングによってエッチングされる。第5の工程S5においては、開孔905から充填材料Fが除去される。
【0248】
本発明の第14の局面に係る多孔プレートの製造方法の実施の形態においては、第1の工程S1において、前面901及び背面902を有するシリコンウエハ900が形成される。第2の工程S2において、シリコンウエハ900の前面901に穴904がエッチングされる。続く第3の工程S3において、前面901は、穴904が位置する領域において少なくとも部分的に位置する曲面CSが形成されるように加工される。第4の工程S4において、シリコンウエハ900の背面902は、穴904が背面902に開かれて開孔905を形成するように研磨、切削又はエッチングを行なうことによって加工される。最後の第6の工程S6において、充填材料Fは開孔905から除去される。エッチング工程及び加工工程、並びに、充填材料は、前記他の実施の形態において説明されたものと同様である。
【0249】
本発明を一部の具体的な実施の形態に関しても説明したが、当業者には、多くの代替例及び変形例が明らかとなるであろう。従って、本明細書に記載の本発明の好ましい実施の形態は、説明を意図したものであって、いかなる意味においても限定的なものではない。特許請求の範囲に定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の荷電粒子ビームレットを操作するための粒子光学部品であって、
複数の開孔を有する第1の多孔プレートと、複数の開孔を有し、前記第1の多孔プレートとの間に間隙が形成されるように前記第1の多孔プレートから離間した第2の多孔プレートとを備え、
前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔は、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の各開孔が、前記第2の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔と整列されるように配置され、
前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の第1の開孔の位置における前記間隙の第1の幅は、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の第2の開孔の位置における前記間隙の第2の幅よりも少なくとも5%だけ大きいことを特徴とする粒子光学部品。
【請求項2】
前記第1の多孔プレートは、前記第2の多孔プレートに対向する第1の面を有し、前記第2の多孔プレートは、前記第1の多孔プレートに対向する第1の面を有し、各第1の面は、前記それぞれの複数の開孔の複数の開孔を含む領域を有し、前記第1の面のうちの少なくとも一方は、前記領域内の平面状の面である、請求項1に記載の粒子光学部品。
【請求項3】
前記少なくとも一方の第1の面は、前記領域内の曲面である、請求項2に記載の粒子光学部品。
【請求項4】
前記少なくとも一方の第1の面は、前記領域内の凸面である、請求項2に記載の粒子光学部品。
【請求項5】
前記少なくとも一方の第1の面は、前記領域内の凹面である、請求項2に記載の粒子光学部品。
【請求項6】
前記第1の多孔プレートは、前記第2の多孔プレートに対向する第1の面を有し、前記第2の多孔プレートは、前記第1の多孔プレートに対向する第1の面を有し、前記第1の面の形状は、前記第1及び第2の多孔プレートの間に延びる平面に対して、互いに関して対称である、請求項1〜5のいずれかに記載の粒子光学部品。
【請求項7】
前記第1の多孔プレートは、前記第2の多孔プレートに対向する第1の面を有し、前記第2の多孔プレートは、前記第1の多孔プレートに対向する第1の面を有し、前記第1の面のうちの少なくとも一方の形状は、前記第1及び第2の多孔プレートを横切って延びる軸に対して対称である、請求項1〜6のいずれかに記載の粒子光学部品。
【請求項8】
前記第2の幅は、前記第2の開孔の直径の約100%〜約1000%の範囲内にある、請求項1〜7のいずれかに記載の粒子光学部品。
【請求項9】
前記第1の幅は、前記第1の開孔の直径の約150%〜約1500%の範囲内にある、請求項1〜8のいずれかに記載の粒子光学部品。
【請求項10】
前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の実質的に各開孔に対し、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の前記開孔の直径は、前記第1の多孔プレートの前記開孔と整列された前記第2の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔の直径に実質的に等しい、請求項1〜9のいずれかに記載の粒子光学部品。
【請求項11】
前記複数の開孔の開孔の直径は、約0.5μm〜約180μmの範囲内にある、請求項1〜10のいずれかに記載の粒子光学部品。
【請求項12】
前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の隣接する開孔の中心間の距離は、約5μm〜約200μmの範囲内にある、請求項1〜11のいずれかに記載の粒子光学部品。
【請求項13】
前記第1及び第2の多孔プレートのうちの少なくとも一方はシリコンからなる、請求項1〜12のいずれかに記載の粒子光学部品。
【請求項14】
前記第1の多孔プレートを前記第2の多孔プレートに対して取り付ける取付構造をさらに備えた、請求項1〜13のいずれかに記載の粒子光学部品。
【請求項15】
前記取付構造は、前記第1の多孔プレートの位置を前記第2の多孔プレートに対して調整するための少なくとも1つのアクチュエータを含む、請求項14に記載の粒子光学部品。
【請求項16】
複数の開孔を有する第3の多孔プレートであって、前記第1の多孔プレートが前記第3の多孔プレートと前記第2の多孔プレートとの間に配置されるように配置された第3の多孔プレートをさらに備え、前記第3の多孔プレートの前記複数の開孔は、前記第3の多孔プレートの前記複数の開孔の各開孔が前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔と整列されるように配置されている、請求項1〜15のいずれかに記載の粒子光学部品。
【請求項17】
前記第3の多孔プレートの開孔の直径は、前記第3の多孔プレートの前記開孔と整列された前記第1の多孔プレートの対応する開孔の直径よりも小さい、請求項16に記載の粒子光学部品。
【請求項18】
前記第3の多孔プレートの開孔の直径は、前記第3の多孔プレートの前記開孔と整列された前記第1の多孔プレートの対応する開孔の直径の99%以下である、請求項16に記載の粒子光学部品。
【請求項19】
前記第3の多孔プレートを前記第1の多孔プレートに対して取り付ける取付構造をさらに備えた、請求項16〜18のいずれかに記載の粒子光学部品。
【請求項20】
前記取付構造は、前記第3の多孔プレートの位置を前記第1の多孔プレートに対して調整するための少なくとも1つのアクチュエータを含む、請求項19に記載の粒子光学部品。
【請求項21】
少なくとも1つの開孔を有する第4の開孔プレートであって、前記第1の多孔プレートが前記第4の開孔プレートと前記第2の多孔プレートとの間に配置される第4の開孔プレートをさらに備え、第1の位置において、前記第4の開孔プレートの前記少なくとも1つの開孔の1つの開孔が前記第1の多孔プレートの第1の開孔と整列され、かつ、前記第1の位置とは異なる第2の位置において、前記1つの開孔が前記第1の多孔プレートの第2の開孔と整列されるように、前記第4の開孔プレートを前記第1の多孔プレートに対してずらすための少なくとも1つのアクチュエータを含む取付構造をさらに備えた、請求項1〜20のいずれかに記載の粒子光学部品。
【請求項22】
粒子光学システムの動作方法であって、
少なくとも1つの開孔を有する検査用開孔プレートを、複数の開孔を含む多孔部品に対して第1の位置に、前記第1の位置において前記検査用開孔プレートの第1の組の開孔が前記多孔部品の第1の組の開孔と整列されるように配置する工程であって、前記それぞれの組の開孔が、それぞれ少なくとも1つの開孔を有する、工程と、
一組の荷電粒子ビームレットを、前記検査用開孔プレートの前記第1の組の開孔及びそれと整列された前記多孔部品の前記第1の組の開孔に透過させる工程と、
所定の平面における前記透過ビームレットの位置、形状及び寸法、並びに、前記透過ビームレットの合計強度又は個々の強度のうちの少なくとも1つを求める工程と、
前記検査用開孔プレートの前記第1の組の開孔が前記多孔部品の第2の組の開孔と整列されるように、前記検査用開孔プレートを前記多孔部品に対して第2の位置に配置する工程と、
一組の荷電粒子ビームレットを、前記検査用開孔プレートの前記第1の組の開孔及びそれと整列された前記多孔部品の前記第2の組の開孔に透過させる工程と、
前記所定の平面における前記透過ビームレットの位置、形状及び寸法、並びに、前記透過ビームレットの合計強度又は個々の強度のうちの少なくとも1つを求める工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記所定の平面における前記透過ビームレットの位置、形状及び寸法、並びに、前記透過ビームレットの前記合計強度又は個々の強度のうちの前記少なくとも1つに基づいて、前記多孔部品の光学特性及び位置のうちの少なくとも1つを調整する工程、並びに、前記粒子光学システムの光学特性を調整する工程のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子源と、
前記第1の多孔プレートの下流側において前記荷電粒子のビーム経路が前記第2の多孔プレートを通るように配置された、少なくとも1つの請求項1〜21のいずれかに記載の粒子光学部品とを備えたことを特徴とする粒子光学装置。
【請求項25】
前記第1及び第2の多孔プレートに異なる電位を印加するように構成された電圧源システムをさらに備えた、請求項24に記載の粒子光学装置。
【請求項26】
前記粒子光学部品の下流側の複数の荷電粒子ビームレットの合計ビーム電流に基づいて前記電圧源システムを制御するように構成された第1の制御部を有する制御器をさらに備えた、請求項25に記載の粒子光学装置。
【請求項27】
前記複数の荷電粒子ビームレットの前記合計ビーム電流を検出するための電流検出器をさらに備えた、請求項26に記載の粒子光学装置。
【請求項28】
前記制御器は、前記複数の荷電粒子ビームレットのビーム電流を調整するための第2の制御部を有し、前記第1の制御部は、前記第2の制御部の設定に対して応答性を有する、請求項26又は27に記載の粒子光学装置。
【請求項29】
前記第1の多孔プレートの上流側において前記荷電粒子の前記ビーム経路が通る第1の電極と、前記第2の多孔プレートの下流側において前記荷電粒子の前記ビーム経路が通る第2の電極と、前記第1及び第2の多孔プレート、並びに、前記第1及び第2の電極に異なる電位を印加するように構成された電圧源システムとをさらに備えた、請求項24に記載の粒子光学装置。
【請求項30】
前記電圧源システムは、前記第1の多孔プレートの上流側において該プレートの近傍に生成される電場が前記荷電粒子ビームの前記荷電粒子に対する減速電場となるような電圧を前記第1の電極及び前記第1の多孔プレートに印加するように構成されている、請求項29に記載の粒子光学装置。
【請求項31】
前記電圧源システムは、前記第1の多孔プレートの上流側において該プレートの近傍に生成される電場が前記荷電粒子ビームの前記荷電粒子に対する加速電場となるような電圧を前記第1の電極及び前記第1の多孔プレートに印加するように構成されている、請求項29に記載の粒子光学装置。
【請求項32】
前記電圧源システムは、前記第2の多孔プレートの下流側において該プレートの近傍に生成される電場が前記荷電粒子ビームの前記荷電粒子に対する加速電場となるような電圧を前記第2の電極及び前記第2の多孔プレートに印加するように構成されている、請求項29に記載の粒子光学装置。
【請求項33】
前記電圧源システムは、前記第2の多孔プレートの下流側において該プレートの近傍に生成される電場が前記荷電粒子ビームの前記荷電粒子に対する減速電場となるような電圧を前記第2の電極及び前記第2の多孔プレートに印加するように構成されている、請求項29に記載の粒子光学装置。
【請求項34】
前記第1の電極と前記第1の多孔プレートとの間において前記荷電粒子の前記ビーム経路が通る第3の電極をさらに備え、前記電圧源システムは、前記第3の電極に電位を印加するようにさらに構成されている、請求項29に記載の粒子光学装置。
【請求項35】
前記第2の多孔プレートと前記第2の電極との間において前記荷電粒子の前記ビーム経路が通る第4の電極をさらに備え、前記電圧源システムは、前記第4の電極に電位を印加するようにさらに構成されている、請求項29に記載の粒子光学装置。
【請求項36】
前記荷電粒子ビームの前記ビーム経路に配置された少なくとも1つの集束粒子光学レンズをさらに備えた、請求項24に記載の粒子光学装置。
【請求項37】
前記第1及び第2の多孔プレートに異なる電位を印加して、前記少なくとも1つの集束粒子光学レンズの少なくとも1つの粒子光学収差を補償するように構成された電圧源システムをさらに備えた、請求項36に記載の粒子光学装置。
【請求項38】
前記少なくとも1つの粒子光学収差は、像面湾曲及び球面収差のうちの少なくとも1つである、請求項37に記載の粒子光学装置。
【請求項39】
前記電圧源システムは、前記第1の多孔プレートの上流側において第1の電場が生成され、前記第2の多孔プレートの下流側において前記第1の電場とは異なる第2の電場が生成されるような電位を前記第1及び第2の電極に印加するように構成され、
前記荷電粒子の前記ビーム経路において前記第2の多孔プレートの下流側に配置された少なくとも1つの集束粒子光学レンズをさらに備え、
前記電圧源システムは、前記第1及び第2の多孔プレートに異なる電位を印加して、前記少なくとも1つの集束粒子光学レンズの少なくとも1つの粒子光学収差を補償するようにさらに構成されている、請求項29に記載の粒子光学装置。
【請求項40】
請求項1〜21のいずれかに記載の粒子光学部品を備えたことを特徴とするマルチビーム電子検査システム。
【請求項41】
前記粒子光学部品は、前記システムの一次電子ビーム経路に配置されている、請求項40に記載のマルチビーム電子検査システム。
【請求項42】
一次電子の少なくとも1つのビームを生成するための電子源と、
被検査試料のための台と、
前記電子源の下流側において前記少なくとも1つの電子ビームのビーム経路に配置された請求項1〜21のいずれかに記載の粒子光学部品と、
前記粒子光学部品の前記第1及び第2の多孔プレートに電位を印加するための電圧源システムと、
前記粒子光学部品の下流側において前記少なくとも1つの電子ビームの前記ビーム経路に配置された少なくとも1つの集束粒子光学レンズと、
二次粒子のうちの少なくとも1つ、及び前記電子に露光されたことによって前記試料から発せられる放射を検出するための検出器装置とを備えたことを特徴とするマルチビーム電子検査システム。
【請求項43】
荷電粒子ビームレットの操作方法であって、
荷電粒子ビーム及び複数の荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも一方を生成する工程と、
前記荷電粒子ビーム及び前記複数の荷電粒子ビームレットの前記少なくとも一方を、請求項1〜21のいずれかに記載の粒子光学部品に透過させる工程と、
前記第1の多孔プレートに所定の第1の電位を印加し、第2の多孔プレートに前記所定の第1の電位とは異なる所定の第2の電位を印加する工程と、
前記荷電粒子ビーム及び前記複数の荷電粒子ビームレットの前記少なくとも一方を、少なくとも1つの集束粒子光学レンズに透過させる工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項44】
前記所定の電位は、0〜約5000Vの範囲内にある、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記印加される所定の電位は、前記少なくとも1つの集束粒子光学レンズの少なくとも1つの粒子光学収差が少なくとも低減されるように選択される、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
曲面を有する少なくとも1つの領域を有する多孔プレートの製造方法であって、
基板に、穴のパターンを前記基板の前面からエッチングする工程と、
前記基板の背面を、前記基板の前記背面の少なくとも一部が曲面形状を有するように加工する工程と、
前記基板の前記背面を、前記基板にエッチングされた穴の少なくとも一部が前記基板全体を通って延びて開孔を形成するまでエッチングする工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項47】
前記基板の前記背面を加工する前記工程は、前記基板に前記基板の前記前面から前記穴のパターンをエッチングする前記工程の前に行なわれる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
曲面を有する少なくとも1つの領域を有する多孔プレートの製造方法であって、
基板に、穴のパターンを前記基板の前面からエッチングする工程と、
前記基板の前記前面を、前記基板の前記前面の少なくとも一部が曲面形状を有するように加工する工程と、
前記基板の前記背面を、前記基板にエッチングされた穴の少なくとも一部が前記基板全体を通って延びて開孔を形成するまで加工及びエッチングの少なくとも一方を行なう工程とを含むことを鍍朽ち様とする方法。
【請求項49】
前記それぞれの表面を加工して曲面を形成する前記工程の前に、前記穴を少なくとも部分的に充填剤で充填する工程をさらに含む、請求項46又は48に記載の方法。
【請求項50】
曲面を有する少なくとも1つの領域を有する多孔プレートの製造方法であって、
開孔パターンを基板にエッチングする工程と、
前記基板の一方の表面を、前記表面が曲面を有するように加工する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項51】
前記基板の一方の表面を加工する前記工程の前に、前記エッチングされた開孔パターンの開孔を少なくとも部分的に充填剤で充填する工程をさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記加工工程は、機械研磨によって前記基板の前記表面から材料を除去する工程を含む、請求項46、48又は50のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記穴又は開孔をエッチングする前記工程は、それぞれ、反応性イオンエッチングを含む、請求項46、48又は50のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記穴又は開孔をエッチングする前記工程は、それぞれ、深い反応性イオンエッチングを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
少なくとも1つの荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子源と、
前記少なくとも1つのビームの経路において第1の磁場を生成するように構成された少なくとも1つの磁気レンズと、
複数の開孔を有する少なくとも1つの第1の多孔プレートであって、前記少なくとも1つの荷電粒子ビームのビーム経路が通るように配置された第1の多孔プレートと、
前記少なくとも1つの第1の多孔プレートにおける磁束密度が実質的にゼロとなるような第2の磁場を生成するように構成された少なくとも1つのコイル装置とを備えたことを特徴とする粒子光学装置。
【請求項56】
複数の開孔を有する第2の多孔プレートであって、前記第1の多孔プレートとの間に間隙が形成されるように前記第1の多孔プレートから離間した第2の多孔プレートをさらに備え、
前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔は、前記第1の多孔プレートの各開孔が、前記第2の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔と整列されるように配置され、
前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の第1の開孔の位置における前記間隙の第1の幅は、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の第2の開孔の位置における前記間隙の第2の幅よりも少なくとも5%だけ大きい、請求項55に記載の粒子光学装置。
【請求項57】
前記第1の多孔プレートは、前記第2の多孔プレートに対向する第1の面を有し、前記第2の多孔プレートは、前記第1の多孔プレートに対向する第1の面を有し、各第1の面は、前記それぞれの複数の開孔の複数の開孔を含む領域を有し、前記第1の面のうちの少なくとも一方は、前記領域内の曲面である、請求項56に記載の粒子光学装置。
【請求項58】
荷電粒子ビームレットの操作方法であって、
荷電粒子ビーム及び複数の荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも一方を生成する工程と、
前記荷電粒子ビーム及び前記複数の荷電粒子ビームレットの前記少なくとも一方を、第1の磁場を生成する少なくとも1つの磁気レンズに透過させる工程と、
前記荷電粒子ビーム及び前記複数の荷電粒子ビームレットの前記少なくとも一方を、複数の開孔を有する少なくとも1つの多孔プレートに透過させる工程と、
前記複数の荷電粒子ビームレットが通るコイル装置に所定の電流を印加することによって第2の磁場を生成し、前記第2の磁場が前記第1の磁場を少なくとも部分的に補償し、前記少なくとも1つの多孔プレートにおける磁束密度が実質的にゼロになるようにする工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項59】
複数の荷電粒子ビームレットの集束方法であって、
荷電粒子ビーム及び複数の荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも一方を、それぞれが複数の開孔を有し、中心が距離w0だけ離間した第1の多孔プレート及び第2の多孔プレートに透過させる工程と、
前記第1の多孔プレートに第1の電位U1を印加する工程と、
前記第2の多孔プレートに前記第1の電位とは異なる第2の電位U2を印加する工程と、
前記第1の多孔プレートの上流側において前記ビーム経路が通る電場及び前記第2の多孔プレートの下流側において前記ビーム経路が通る電場のうちの少なくとも一方を生成し、前記第1の多孔プレートの上流側近傍の電場の第1の電場強度E1が、前記第2の多孔プレートの下流側近傍の電場の第2の電場強度E2と、少なくとも約200V/mmだけ異なるようにする工程とを含み、
電荷qを有し、かつ、前記第1の多孔プレートを通る際に運動エネルギーEkinを有する荷電粒子に対して、以下の関係
【数8】

が満たされることを特徴とする方法。
【請求項60】
前記第1及び第2の多孔プレート間の距離は、それらの中心からの距離が増加するにしたがって増加し、前記第1及び第2の多孔プレート間に前記第1及び第2の電位U1及びU2を印加することによって生成された電場の電場強度は、前記中心からの距離が増加するにしたがって減少する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
請求項1〜21のいずれかに記載の粒子光学部品と、
第1の磁極片、第2の磁極片、並びに、前記第1及び第2の磁極片に磁束を誘導するためのコイルを含む磁気レンズ装置とを備え、
前記第1の多孔プレートは、前記磁気レンズ装置の前記第1の磁極片と磁気的に結合されるか又は一体的に形成され、前記第2の多孔プレートは、前記磁気レンズ装置の前記第2の磁極片と磁気的に結合されるか又は一体的に形成されていることを特徴とする粒子光学装置。
【請求項62】
基板上にパターンを描画するための荷電粒子マルチビームレットリソグラフィシステムであって、
前記基板を載置するための台と、
少なくとも1つの荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子源と、
請求項1〜21のいずれかに記載の粒子光学部品と、
前記荷電粒子ビームレットを前記基板上に集束させるための対物レンズとを備えたことを特徴とするシステム。
【請求項63】
基板上にパターンを描画する方法であって、
少なくとも1つの荷電粒子ビームを生成する工程と、
前記少なくとも1つの荷電粒子ビームを請求項1〜21のいずれかに記載の粒子光学部品に透過させる工程と、
前記第1の多孔プレートに所定の第1の電位を印加し、第2の多孔プレートに前記所定の第1の電位とは異なる所定の第2の電位を印加する工程と、
前記粒子光学部品から出射する荷電粒子ビームレットを前記基板上に集束させる工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項64】
複数の荷電粒子ビームレットの集束方法であって、
複数の開孔を有する第1の多孔プレートと前記第1の多孔プレートから少なくとも1mmの距離だけ離間した第1の電極との間に、前記第1の多孔プレートが第1の集束力(focusing power)F1を有するように最大で5000V/mmの電場を生成する工程と、
荷電粒子ビーム及び複数の荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも一方を、前記電場、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔及び前記第1の電極に透過させる工程と、
前記荷電粒子ビーム及び前記複数の荷電粒子ビームレットの前記少なくとも一方を、複数の開孔を有する少なくとも1つの第2の多孔プレートを備えた粒子光学部品であって、第2の集束力F2を与えるように構成及び動作される粒子光学部品の開孔に透過させる工程とを含み、
前記粒子光学部品の前記第2の集束力F2は、前記第1の集束力F1の5分の1以下であることを特徴とする方法。
【請求項65】
複数の開孔を有する第1の多孔プレートと、
少なくとも1つの開孔を有する第4の開孔プレートと、
前記第4の開孔プレートを、前記第1の多孔プレート対して第1の位置及び前記第1の位置とは異なる第2の位置にずらすための少なくとも1つのアクチュエータを含む取付構造とを備えたことを特徴とする粒子光学部品。
【請求項66】
前記第4の開孔プレートの前記少なくとも1つの開孔のうちの1つの開孔は、前記第1の位置において前記第1の多孔プレートの第1の開孔と整列され、前記1つの開孔は、前記第2の位置において前記第1の多孔プレートの第2の開孔と整列されている、請求項65に記載の粒子光学部品。
【請求項67】
複数の開孔を有する第2の多孔プレートであって、前記第1の多孔プレートとの間に間隙が形成されるように前記第1の多孔プレートから離間した第2の多孔プレートをさらに備え、
前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔は、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の各開孔が、前記第2の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔と整列されるように配置され、前記第1の多孔プレートは、前記第4の開孔プレートと前記第2の多孔プレートとの間に配置されている、請求項65又は66に記載の粒子光学部品。
【請求項68】
複数の開孔を有する第1の多孔プレートと、
複数の開孔を有する第3の多孔プレートであって、前記第3の多孔プレートの前記複数の開孔は、前記第3の多孔プレートの前記複数の開孔の各開孔が、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔と整列されるように配置され、前記第3の多孔プレートの開孔の直径は、前記第3の多孔プレートの前記開孔と整列された前記第1の多孔プレートの対応する開孔の直径よりも小さい、第3の多孔プレートとを備えたことを特徴とする粒子光学部品。
【請求項69】
複数の開孔を有する第2の多孔プレートであって、前記第1の多孔プレートとの間に間隙が形成されるように前記第1の多孔プレートから離間した第2の多孔プレートをさらに備え、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔は、前記第1の多孔プレートの前記複数の開孔の各開孔が、前記第2の多孔プレートの前記複数の開孔の対応する開孔と整列されるように配置され、前記第3の多孔プレートは、前記第1の多孔プレートが、前記第3の多孔プレートと前記第2の多孔プレートとの間に配置されるように配置されている、請求項68に記載の粒子光学部品。
【請求項70】
前記第3の多孔プレートの開孔の直径は、前記第3の多孔プレートの前記開孔と整列された前記第1の多孔プレートの対応する開孔の直径の99%未満である、請求項68又は69に記載の粒子光学部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−234827(P2012−234827A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168303(P2012−168303)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2008−529537(P2008−529537)の分割
【原出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【出願人】(508070345)アプライド マテリアルズ イスラエル, エルティーディー. (4)
【Fターム(参考)】