説明

粒子分散体ならびに多孔質体およびその製造方法

【課題】製造に多くの時間を要せず、また、製造過程でマトリックス成分が酸化により劣化することが低減された、高品質な多孔質体の原材料を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物の粒子(A)と、高分子化合物(B1)および反応して前記高分子化合物(B1)を形成しうる成分(B2)から選ばれる少なくとも1種の成分(B)とを含有する粒子分散体であり、前記成分(B)100質量部に対して、前記粒子(A)を50〜500質量部の範囲で含有する粒子分散体。


[式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子または水酸基を示し、ただしR1〜R4のうちの少なくとも2つは水酸基を示す。nは0〜2の整数を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子分散体ならびに多孔質体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な多孔質体は、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリオレフィンフォーム、フェノールフォーム等のように、重合反応時に発生する炭酸ガスを利用する方法、発泡剤の熱分解反応時に発生する炭酸ガスや窒素ガスを利用する方法、低級炭化水素等の低沸点溶剤を気化させる方法、機械的撹拌によって空気や窒素ガスを原材料に混入する方法などにより、製造されている。
【0003】
例えば特許文献1には、レゾール樹脂と、炭化水素からなる発泡剤、界面活性剤および硬化触媒等とを均一に混合して発泡性組成物を得た後、前記組成物を型枠に注入し、加熱処理により発泡硬化を完了させる、フェノール樹脂発泡体の製造方法が開示されている。
【0004】
近年、多孔質体の形成方法として、高分子有機材料と低分子材料との混合物から、有機溶剤などで前記低分子材料を除去することにより、多孔質体を形成する方法が知られている。
【0005】
例えば特許文献2には、シンジオタクティックビニル系芳香族ポリマー1〜90質量%とエラストマー99〜10質量%とからなるポリマーブレンドに、低分子材料を混合してポリマー組成物を得て、適当な溶剤を用いて前記低分子材料を溶解抽出させた後、残留する溶剤を揮発乾燥する、ミクロ多孔質体の製造方法が開示されている。前記低分子材料としては、軟化剤、可塑剤、粘着付与剤、オリゴマー、滑剤が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−293033号公報
【特許文献2】特開平10−168236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の多孔質体の製造方法では、工程が煩雑であって、製造に多くの時間を要する等の問題がある。また、多孔質体を構成するマトリックス成分が酸化されやすい場合、多孔質体の製造過程、特に加熱処理時に当該成分が酸化により劣化して品質が低下する等の問題がある。
【0008】
本発明の課題は、製造に多くの時間を要せず、また、製造過程でマトリックス成分が酸化により劣化することが低減された、高品質な多孔質体の原材料を提供することにあり、また当該多孔質体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、多孔質体の原材料として下記構成を有する粒子分散体を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の[1]〜[9]に関する。
【0010】
[1]下記式(1)で表される化合物の粒子(A)と、高分子化合物(B1)および反応して前記高分子化合物(B1)を形成しうる成分(B2)から選ばれる少なくとも1種の成分(B)とを含有する粒子分散体であり、前記成分(B)100質量部に対して、前記粒子(A)を50〜500質量部の範囲で含有する粒子分散体。
【0011】
【化1】

[式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子または水酸基を示し、ただしR1〜R4のうちの少なくとも2つは水酸基を示す。nは0〜2の整数を示す。]
[2]前記成分(B)が、前記成分(B2)である前記[1]の粒子分散体。
[3]前記成分(B2)として、アルケニル基を有する化合物を少なくとも含有する前記[2]の粒子分散体。
[4]前記成分(B2)として、アルケニル基を有する化合物およびヒドロシリル基を有する化合物を少なくとも含有し、かつ、ヒドロシリル化触媒を含有する前記[3]の粒子分散体。
【0012】
[5]前記成分(B2)として、アルケニル基を有するポリシロキサン(b1)およびヒドロシリル基を有するポリシロキサン(b2)を少なくとも含有し、かつ、ヒドロシリル化触媒を含有する前記[4]の粒子分散体。
[6]前記[1]〜[5]のいずれか一項の粒子分散体を加熱することにより形成される多孔質体。
[7]下記式(1)で表される化合物を含有する多孔質体。
【0013】
【化2】

[式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子または水酸基を示し、ただしR1〜R4のうちの少なくとも2つは水酸基を示す。nは0〜2の整数を示す。]
[8]前記式(1)で表される化合物の含有量が、0.001〜5質量%である前記[7]の多孔質体。
[9]前記[1]〜[5]のいずれか一項の粒子分散体を加熱する工程を有する多孔質体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造に多くの時間を要せず、また、製造過程でマトリックス成分が酸化により劣化することが低減された、高品質な多孔質体の原材料を提供することができ、また当該多孔質体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例4で得られた多孔質体の断面の電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の粒子分散体ならびに多孔質体およびその製造方法について説明する。
〔粒子分散体〕
本発明の粒子分散体は、(A)式(1)で表される化合物の粒子(以下「成分(A)」ともいう。)と、(B)高分子化合物(B1)および反応して前記高分子化合物(B1)を形成しうる成分(B2)から選ばれる少なくとも1種(以下「成分(B)」ともいう。)とを含有する。前記粒子分散体において、通常、成分(A)は分散質であり、成分(B)は成分(A)の分散媒である。
【0017】
また、本発明の粒子分散体は、成分(B)として高分子化合物(B1)を形成しうる成分(B2)を用いる場合、例えばその生成反応における重合開始剤や反応触媒などの成分(以下「成分(C)」ともいう。)を含有することが好ましい。
【0018】
[成分(A)]
成分(A)は、式(1)で表される化合物(以下「化合物(1)」ともいう。)の粒子である。化合物(1)およびその酸化体は、常圧下において昇華性を有する物質である。このため、本発明の粒子分散体(例:分散質である成分(A)が分散媒である成分(B)中に分散してなる粒子分散体)を適当な条件下で加熱することにより、化合物(1)が昇華し、当該粒子に対応する空孔が形成された多孔質体を得ることができる。また、化合物(1)は還元剤としても機能する。このため、多孔質体の製造過程においてその構成成分である高分子化合物からなるマトリックス成分の酸化を防ぐことができる。
【0019】
【化3】

式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子または水酸基を示し、ただしR1〜R4のうちの少なくとも2つは水酸基を示し、好ましくはR1〜R4のうちの2つが水酸基であり、残りの2つが水素原子である。nは0〜2の整数を示す。
【0020】
式(1)で表される化合物としては、例えば、レゾルシノール、ヒドロキノン、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,2−ジヒドロキシアントラセン、1,3−ジヒドロキシアントラセン、1,4−ジヒドロキシアントラセン、2,3−ジヒドロキシアントラセンが挙げられ、これらの中でも、還元剤としての性能および昇華性の観点から、レゾルシノール、ヒドロキノンおよびカテコールが好ましい。
【0021】
化合物(1)の粒子の50質量%平均粒子径(d50)は、多孔質体の空孔の径等に応じて適宜設定され、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは0.5〜100μm、更に好ましくは1〜50μmである。d50とは、粒度分布を有する粉末において、当該粉末を粒子径の小さいものから累積して、累積量が全粉末量の50質量%になる粒子径をいう。d50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される値である。
【0022】
化合物(1)の粒子は、化合物(1)の粉末等(市販品としては、例えば、保土ヶ谷化学(株)、住友化学(株)、三井化学(株)、米山薬品工業(株)、東京化成(株)等の製品が挙げられる。)を、例えば、粉砕機(例:ホソカワミクロン(株)製のイノマイザー、ジェットミル、ボールミル)を用いて調製される。
【0023】
本発明の粒子分散体は、成分(A)を1種単独でまたは2種以上含有してもよい。
本発明の粒子分散体において、成分(A)の含有量は、成分(B)100質量部に対して、通常50〜500質量部、好ましくは50〜300質量部、より好ましくは75〜200質量部である。成分(B)に対する成分(A)の含有量が前記範囲内にあると、機械的強度に優れた多孔質体が得られるので好ましい。
【0024】
[成分(B)]
成分(B)は、高分子化合物(B1)および前記高分子化合物(B1)を形成しうる成分(B2)から選ばれる少なくとも1種である。ここで、成分(B2)は、重合反応、付加反応等により高分子化合物(B1)を形成しうる成分であって、例えば低分子量単量体およびマクロモノマーが挙げられる。また、成分(B2)自体が高分子量体であってもよい。
【0025】
このように本発明では、化合物(1)の粒子が高分子化合物からなるマトリックス成分中に分散した状態から出発して、化合物(1)の昇華を進めることにより、多孔質体を形成してもよく、化合物(1)の粒子が高分子化合物を形成しうる成分中に分散した状態から出発して、当該成分の重合反応、付加反応等を進めて高分子化合物からなるマトリックス成分を形成するとともに化合物(1)の昇華を進めることにより、多孔質体を形成してもよい。化合物(1)の均一分散性や、分散体の粘度を前者の方法に比べて下げることができるため多孔質体の成型がしやすいことから、後者の方法が好ましい。
【0026】
〈高分子化合物(B1)〉
高分子化合物(B1)としては、例えば、シリコーンエラストマー、ウレタンエラストマー、フッ素ゴムなどのエラストマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリルモノマーおよび/またはビニルモノマー(アクリルモノマーを除く。以下同じ。)の単独または共重合体、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)などの熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0027】
前記シリコーンエラストマーは、例えば、後述する付加反応硬化型の液状シリコーンから形成される。前記単独または共重合体は、例えば、後述するアクリルモノマーおよび/またはビニルモノマーから形成される。
【0028】
〈高分子化合物(B1)を形成しうる成分(B2)〉
高分子化合物(B1)を形成しうる成分(B2)としては、例えば、アルケニル基を有する化合物が挙げられ、具体的には、アクリルモノマー、ビニルモノマー、後述するアルケニル基を有するポリシロキサン等が挙げられる。
【0029】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基が挙げられる。
【0030】
アクリルモノマーおよびビニルモノマーとしては、例えば、特開2007−206268号公報に挙げられている単量体や、多官能性単量体が挙げられる。アルケニル基を有するポリシロキサンについては、後述する。
【0031】
高分子化合物(B1)を形成しうる成分(B2)としては、黒ずみ等のない良好な多孔質体が得られることから、アルケニル基を有する化合物とヒドロシリル基を有する化合物との組合せが好ましく用いられる。アルケニル基を有する化合物とヒドロシリル基を有する化合物との組合せとしては、例えば、加熱等により硬化してシリコーンエラストマー等を形成する、いわゆる付加反応硬化型の液状シリコーンが挙げられる。
【0032】
《付加反応硬化型の液状シリコーン》
付加反応硬化型の液状シリコーンは、特開2008−180979号公報、特開2009−18254号公報または特開2008−255227号公報などに記載されているように、主剤となるアルケニル基を有するポリシロキサン(b1)と、硬化剤となるヒドロシリル基を有するポリシロキサン(b2)とを含有する。前記液状シリコーンは、ポリシロキサン(b1)とポリシロキサン(b2)とのヒドロシリル化反応により硬化する。なお、液状シリコーンは、主剤と硬化剤とを含む1液として調製することもできるし、主剤と硬化剤との2液に分けて調製し、使用時に2液を混合して使用することもできる。
【0033】
ポリシロキサン(b1)
ポリシロキサン(b1)は、アルケニル基を有するポリシロキサンである。アルケニル基は、ポリシロキサン(b1)の両末端に導入されていてもよく、および/または側鎖として導入されていてもよい。
【0034】
ポリシロキサン(b1)におけるアルケニル基の含有量は、ポリシロキサン(b1)中に含まれる全Si原子の数を100モルとするとき、好ましくは3〜50モル、より好ましくは5〜40モル、さらに好ましくは10〜30モルである。アルケニル基の含有量が前記範囲内にあると、ポリシロキサン(b1)とポリシロキサン(b2)とのヒドロシリル化反応が好適範囲で起こり、強度の高い硬化物が得られる。
なお、ポリシロキサン(b1)におけるアルケニル基の含有量は、29Si NMRおよび13C NMRにて算出することができる。
【0035】
ポリシロキサン(b2)
ポリシロキサン(b2)は、ヒドロシリル基を有するポリシロキサンである。
ポリシロキサン(b2)は、1分子当たり少なくとも2個のヒドロシリル基(Si−H基)を有し、アルケニル基を有するポリシロキサン(b1)に対して硬化剤として作用する。
【0036】
付加反応硬化型の液状シリコーンにおいて、ポリシロキサン(b1)および(b2)の配合量は、ポリシロキサン(b1)中のアルケニル基量に対するポリシロキサン(b2)中のヒドロシリル基量のモル比(ヒドロシリル基/アルケニル基)が0.1〜5となる量であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2となる量である。あるいは、ポリシロキサン(b1)とポリシロキサン(b2)との質量比(b1:b2)が、6:4〜4:6であることが好ましい。ポリシロキサン(b1)および(b2)の配合量が前記範囲内にあると、液状シリコーンの硬化が充分に進行し、また、充分な耐熱性を有する硬化物が得られる。
【0037】
付加反応硬化型の液状シリコーンは、市販されている。市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製のKE−1950−10、KE−1950−20、KE−1950−30、KE−1950−35、KE−1950−40、KE−1950−50、KE−1950−60、KE−1950−70、東レ・ダウコーニング(株)製の3E6905、DY35−1289、DY35−1307、DY35−1322、DY35−1377、DY35−2147が挙げられる。
【0038】
[成分(C)]
例えば、成分(B)としてアクリルモノマーやビニルモノマー等のアルケニル基を有する化合物を用いる場合、本発明の粒子分散体は、さらにラジカル重合開始剤等の重合開始剤を含有することが好ましい。
【0039】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレートなどの有機過酸化物;および過酸化水素が挙げられる。
【0040】
重合開始剤は、ラジカル重合反応が現実的に進行する量(通常、アルケニル基を有する化合物100質量部に対して、0.001〜10質量部)で用いることができる。
例えば、成分(B)としてアルケニル基を有する化合物とヒドロシリル基を有する化合物との組合せを用いる場合、これらの硬化反応を促進させるために、本発明の粒子分散体は、さらにヒドロシリル化触媒を含有することが好ましい。
【0041】
ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金触媒、ロジウム触媒、パラジウム触媒が挙げられ、これらの中でも、硬化促進の観点から、白金触媒が好ましい。白金触媒としては、例えば、白金−アルケニルシロキサン錯体が挙げられる。アルケニルシロキサンとしては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサンが挙げられ、これらの中でも、錯体の安定性の観点から、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。
【0042】
ヒドロシリル化触媒は、アルケニル基を有する化合物とヒドロシリル基を有する化合物とのヒドロシリル化反応が現実的に進行する量で用いることができる。例えば白金触媒を用いる場合、その使用量は、白金原子として、ヒドロシリル化反応が現実的に進行する量(通常、アルケニル基を有する化合物に対して1〜100質量ppm程度)である。
【0043】
[粒子分散体の調製方法]
本発明の粒子分散体は、上述の各成分をミキサー等の公知の方法により均一に混合することによって調製することができる。本発明の粒子分散体は、1液として調製することもできるし、2液に分けて調製し、使用時に2液を混合して使用することもできる。この場合、通常、多孔質体を製造する直前に2液と化合物(1)の粒子とを混合して粒子分散体を調製する。
【0044】
〔多孔質体およびその製造方法〕
本発明の多孔質体は、例えば、上述の粒子分散体を適当な条件下で加熱することにより得ることができる。本発明の多孔質体の形状は特に限定されず、例えば、シート状物、ロール状物が挙げられる。
【0045】
本発明の多孔質体は、上述の化合物(1)を含有しており、その量は通常0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%である。多孔質中の化合物(1)の含有量は、ガスカラムクロマトグラフィーにて測定される。化合物(1)の含有量は、例えば、多孔質体製造時の粒子分散体の加熱温度・時間等により調整することができる。
【0046】
本発明の多孔質体は還元性を有する化合物(1)を含有しており、しかもその空孔の形成面に化合物(1)が分布していると考えられるので、多孔質体を構成するマトリックス成分の酸化を良好に防ぐことができる。
【0047】
本発明の多孔質体は、上記のような特性を有しており、例えば、Low−kかつデスミアフリーのプリプレグ、化学機械研磨法に使われるパッド、プリンター等における転写ローラー、防眩性膜(表示材)、断熱材、吸着膜、電池のセパレーターとして好適に用いることができる。
【0048】
本発明の多孔質体の製造方法は、上述の粒子分散体を加熱する工程を有する。
前記加熱工程において、粒子分散体の加熱温度は通常50〜300℃、好ましくは70〜250℃であり、加熱時間は通常0.25〜3時間、好ましくは0.5〜2時間であり、前記工程は通常、常圧下で行うが、減圧下で行うこともできる。加熱工程は、例えばオーブンを用いて行うことができる。急激な加熱による過剰な発泡等を防ぐため、加熱工程を多段階で行ってもよい。例えば、1段目の加熱を50〜120℃で0.1〜1時間行い、2段目の加熱を120〜300℃で0.1〜2時間行ってもよい。
【0049】
例えばシート状の多孔質体を製造する場合は、本発明の粒子分散体を離型シート上に塗布して例えば膜厚10〜1000μmの塗膜を形成し、当該塗膜を上記条件下で加熱すればよい。
【0050】
本発明の多孔質体の製造方法では、化合物(1)の粒子が高分子化合物からなるマトリックス成分中に分散した状態から出発して、化合物(1)の昇華を進めることにより、多孔質体を形成してもよく、化合物(1)の粒子が高分子化合物を形成しうる成分中に分散した状態から出発して、当該成分の重合反応、付加反応等を進めて高分子化合物からなるマトリックス成分を形成するとともに化合物(1)の昇華を進めることにより、多孔質体を形成してもよい。化合物(1)の均一分散性の観点から、後者の方法が好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されない。以下の説明において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を意味する。
【0052】
1.粒子分散体の調製
[実施例1]
アルケニル基を有するポリシロキサンとヒドロシリル基を有するポリシロキサンと白金触媒とを含有する付加反応硬化型の液状シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名「KE−1950−30A」、商品名「KE−1950−30B」)を100部と、レゾルシノールの粒子(d50=20μm)を100部とを、ミキサーにて混合することにより、粒子分散体を得た。
【0053】
[実施例2]
アルケニル基を有するポリシロキサンとヒドロシリル基を有するポリシロキサンと白金触媒とを含有する付加反応硬化型の液状シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名「KE−1950−50A」、商品名「KE−1950−50B」)を100部と、レゾルシノールの粒子(d50=20μm)を100部とを、ミキサーにて混合することにより、粒子分散体を得た。
【0054】
[実施例3]
アルケニル基を有するポリシロキサンとヒドロシリル基を有するポリシロキサンと白金触媒とを含有する付加反応硬化型の液状シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名「KE−1950−30A」、商品名「KE−1950−30B」)を100部と、レゾルシノールの粒子(d50=20μm)を150部とを、ミキサーにて混合することにより、粒子分散体を得た。
【0055】
2.多孔質体の製造および評価
〔分析〕
多孔質体を細かく粉砕し、得られた粉砕物をガスカラムクロマトグラフィーにて分析することにより、多孔質体中に含まれるレゾルシノールの含有量を測定した。
【0056】
[実施例4]
実施例1の粒子分散体を、離型シート上に塗布し、オーブンにて90℃で30分間、さらに220℃で1時間加熱した。離型シートを剥離して、厚さ0.5mmの多孔質体を得た。得られた多孔質体の断面を電子顕微鏡にて撮影した結果を図1に示す。
【0057】
得られた多孔質体を光学顕微鏡で観察したところ、黒ずみ等なく良好に多孔質体が製造されていることが確認できた。また、得られた多孔質体中に含まれるレゾルシノールの含有量は、0.5質量%であった。
【0058】
[実施例5〜6]
実施例4において、実施例2の粒子分散体(実施例5)または実施例3の粒子分散体(実施例6)を用いたこと以外は実施例4と同様に行った。得られた多孔質体を光学顕微鏡で観察したところ、黒ずみ等なく良好に多孔質体が製造されていることが確認できた。また、得られた多孔質体中に含まれるレゾルシノールの含有量は、0.5質量%(実施例5)、0.7質量%(実施例6)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物の粒子(A)と、
高分子化合物(B1)および
反応して前記高分子化合物(B1)を形成しうる成分(B2)
から選ばれる少なくとも1種の成分(B)と
を含有する粒子分散体であり、前記成分(B)100質量部に対して、前記粒子(A)を50〜500質量部の範囲で含有する粒子分散体。
【化1】

[式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子または水酸基を示し、ただしR1〜R4のうちの少なくとも2つは水酸基を示す。nは0〜2の整数を示す。]
【請求項2】
前記成分(B)が、前記成分(B2)である請求項1の粒子分散体。
【請求項3】
前記成分(B2)として、アルケニル基を有する化合物を少なくとも含有する請求項2の粒子分散体。
【請求項4】
前記成分(B2)として、アルケニル基を有する化合物およびヒドロシリル基を有する化合物を少なくとも含有し、かつ、ヒドロシリル化触媒を含有する請求項3の粒子分散体。
【請求項5】
前記成分(B2)として、アルケニル基を有するポリシロキサン(b1)およびヒドロシリル基を有するポリシロキサン(b2)を少なくとも含有し、かつ、ヒドロシリル化触媒を含有する請求項4の粒子分散体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項の粒子分散体を加熱することにより形成される多孔質体。
【請求項7】
下記式(1)で表される化合物を含有する多孔質体。
【化2】

[式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子または水酸基を示し、ただしR1〜R4のうちの少なくとも2つは水酸基を示す。nは0〜2の整数を示す。]
【請求項8】
前記式(1)で表される化合物の含有量が、0.001〜5質量%である請求項7の多孔質体。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項の粒子分散体を加熱する工程
を有する多孔質体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−40295(P2013−40295A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178984(P2011−178984)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】