説明

粒子分級装置

【課題】簡易軽量可能な構造でもって、粗大ないし微小ないし超微小粒子までの粒子捕集が可能な粒子分級装置を提供すること。
【解決手段】本発明装置は、流体通過方向に順に配置される少なくとも2つの第1、第2慣性フィルタと、上記第1慣性フィルタを通過した後、第2慣性フィルタへと向かう流体のうちの一部をバイパスする流体バイパス制御機構と、を備え、当該両慣性フィルタ内においては、共に、慣性衝突効果で流体中の粒子を捕集することができると共に、上記第2慣性フィルタ内においては、上記捕集以外に、流体バイパス制御機構により上記バイパスされることで流体流速が制御され、これにより粒子ブラウン運動による拡散効果により粒子の捕集が可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体通過方向に少なくとも2つの慣性フィルタを配置した粒子分級装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カスケードインパクタ型粒子分級装置は、インパクタを上下方向複数段で直列に連ねてなる装置である(特許文献1の図1参照)。このカスケードインパクタ型粒子分級装置においては、下段側インパクタほど気流通過ノズル径を小さくすることで、順次に気流速度を高め、これにより各段のインパクタにより慣性質量が大きい粒径大の粒子から順次に捕集分級することができるようになっている。インパクタは、気流の向きを変えた際に慣性力によりその気流の向き変化に追随できない慣性質量を持つ粒子を捕集プレートに衝突させて捕集する装置であり、このようなインパクタを複数段連ねることで、粒径の大きい順に粒子を分級できるようになっている。
【0003】
このような粒子分級装置では、ポンプ吸引により、装置内圧を下げて装置外圧との間で生成する気圧差で装置内部に上記粒子を分級させる気流を発生させるようになっているが、粒径が微小な粒子では、ノズル径を高精度に制作することが困難化し、微小粒子の分級装置の実現化は困難であった。
【0004】
特許文献1には、上記カスケードインパクタ型粒子分級装置を上段側に配置して粒径の大きい粒子の分級を行う一方、下段側に特許文献1発明にかかる慣性フィルタ(特許文献1の図2参照)を配置し、微小粒子の分級を可能としたことが開示されている。
【0005】
この慣性フィルタは、気体が通過する貫通孔を持つフィルタサポート部と、この貫通孔内に当該貫通孔を塞ぐように配置した通気性多孔質部材であるSUS繊維(従来慣性フィルタ)とを含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−70222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の慣性フィルタの構造において、貫通孔内での金属繊維の充填率を高くして、貫通孔内での空隙率を微小化することで、ナノ粒子分級を行おうとする場合、貫通孔内における気流流通性が大きく低下して圧損が増大する結果、気流吸引ポンプとしても大型のものを使用する必要があり、装置全体が携行性に不便な大型となってしまう。
【0008】
一方、携行性を考慮し小流量の小型ポンプで吸引するには、空隙率の微小な貫通孔内では圧損により気流速度が低下してしまい、分級に必要とする粒子の慣性効果が低下し、目的とするナノ粒子の分級が困難となる。
【0009】
本願発明者らは、慣性フィルタを用いた粒子分級装置として、携帯型ポンプで内部に小流量の気流を吸引するなどして、装置全体の小型軽量化を図る一方、そのポンプで吸引しても圧損がそれほど大きくならず、貫通孔内においてナノ粒子を分級できる粒子分級装置を鋭意検討している。
【0010】
本発明においては、慣性フィルタを用いた粒子分級装置に対する検討の過程の中で、慣性効果により、粗大粒子から微小粒子までの粒子捕集以外に、超微小粒子の捕集までを可能とした粒子分級装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による粒子分級装置は、流体通過方向に順に配置された少なくとも2つの第1、第2慣性フィルタと、上記第1慣性フィルタを通過した後、第2慣性フィルタへと向かう流体のうちの一部をバイパスする流体バイパス制御機構と、を備え、上記両慣性フィルタは共に非圧縮性繊維が充填された貫通孔を備えると共に、当該両慣性フィルタ内においては、共に、上記非圧縮性繊維への粒子衝突による慣性効果で該非圧縮性繊維上で流体中の粒子を捕集することができると共に、流体バイパス制御機構により上記第2慣性フィルタへの流量を減らすことで当該第2慣性フィルタでは粒子ブラウン運動による拡散効果により非圧縮性繊維上で粒子捕集を可能とした、ことを特徴とするものである。
【0012】
まず、本発明においては、流体通過方向に順に配置される少なくとも2つの第1、第2慣性フィルタを配置したので、第1慣性フィルタへ流入させる気流流量は一定として、上記両慣性フィルタにより、慣性効果で粗大ないし微小の各種粒径粒子の捕集ないし分級を行う一方で、流体バイパス制御機構により、第2慣性フィルタへの流体の一部をバイパスして当該第2慣性フィルタ内では粒子ブラウン運動による拡散効果により超微小粒子の粒子捕集をすることが可能となる。
【0013】
以上から本発明では、装置への流入流量一定でかつ少なくとも僅か2つの第1、第2慣性フィルタという簡易な構造でもって、粗大ないし微小ないし超微小に至る各種粒径の粒子捕集が可能な粒子分級装置を提供することができるようになった。
【0014】
本発明において、好ましい態様は、上記第1慣性フィルタの貫通孔内での非圧縮性繊維の繊維径を、第2慣性フィルタの貫通孔内での非圧縮性繊維の繊維径よりも大きくして、共に、慣性効果により、第1慣性フィルタでは粒径大の粒子捕集、第2慣性フィルタでは粒径小の粒子捕集を行うと共に、当該第2慣性フィルタでは、流体バイパス制御機構により拡散効果により粒子捕集を行うようになっている。
【0015】
本発明において、好ましい態様は、上記非圧縮性繊維がステンレス繊維である。
【0016】
本発明において、好ましい態様は、少なくとも第1慣性フィルタの貫通孔は、流体上流側の拡径貫通孔と、流体下流側の定径貫通孔とを含んだ構成になっており、拡径貫通孔は上流側から下流側方向に徐々に内径が拡径する貫通孔であり、定径貫通孔は、上流側から下流側方向に内径が一定の貫通孔であり、当該内部に上記非圧縮性繊維が充填してある。
【0017】
本発明において、好ましい態様は、上記両慣性フィルタそれぞれの貫通孔は、共に、流体上流側の拡径貫通孔と、流体下流側の定径貫通孔とを含んだ構成になっており、拡径貫通孔は上流側から下流側方向に徐々に内径が拡径する貫通孔であり、定径貫通孔は、上流側から下流側方向に内径が一定の貫通孔であり、当該内部に上記非圧縮性繊維が充填してある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易軽量可能な構造でもって、粗大ないし微小ないし超微小粒子までの粒子捕集が可能な粒子分級装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の実施の形態にかかる粒子分級装置を側面から見た概念構成を示す図である。
【図2】図2(a)は図1装置内の第1慣性フィルタを拡大して示す図、図2(b)は同装置内の第2慣性フィルタを拡大して示す図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、それぞれ、第1慣性フィルタと第2慣性フィルタそれぞれにおける、横軸が粒径(μm)、縦軸が粒子捕集効率(%)とする慣性フィルタ特性を示す図である。
【図4】図4は流体バイパス機構により第2慣性フィルタへの流体をバイパスさせた場合の慣性フィルタ特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る慣性フィルタを用いた粒子分級装置を説明する。なお、実施の形態において粒子は溶媒の一例として気体中に浮遊する粒子を想定するが、気体中に浮遊する粒子に限定されず、他の溶媒例えば液中やその他を浮遊する粒子を含むことができる。図1および図2(a)(b)を参照して、実施の形態の粒子分級装置1は、気流上流側から気流下流側にかけて、粒径大の粒子(粗大粒子)除去、捕集用フィルタである第1慣性フィルタ3、粒径小の粒子(微小粒子)捕集ないし分級用フィルタである第2慣性フィルタ5、および微小粒子捕集用のバックアップフィルタ7と、慣性フィルタ内部気流を外部に排気する排気部9と、気流一部を装置外にバイパスする流体バイパス制御機構11と、を備える。
【0021】
第1慣性フィルタ3は、円板状プレート3aと、円筒状プレート3bと、円柱状プレート3cと、を含むと共にこれらにより囲まれる内部にフィルタ空間3dを構成する。
【0022】
円板状プレート3aは、フィルタプレートとして、気流上流側に配置され、図示略の気流吸入孔を多数有し、気流下流側に配置した図示略の気流吸引ポンプの作用により、この気流吸入孔から内部に気流を吸入することができるようになっている。この円板状プレート3aは、必ずしも、必須ではなく、省略することもできる。
【0023】
円筒状プレート3bは、円板状プレート3aの外径と同じ外径を有する。
【0024】
円柱状プレート3cは、当該プレート中央に軸方向の貫通孔3eを有する。この貫通孔3eは、上側から下側へかけて内径が下方へ漸次拡径する拡径貫通孔3e1と、拡径貫通孔3e1の下端に連続し内径が一定である定径貫通孔3e2と、から構成される。
【0025】
この定径貫通孔3e2には非圧縮性繊維として高速気流が通過しても体積変化が殆どない金属繊維好ましくはSUS(ステンレス)繊維13が緻密に絡まった状態で充填されている。なお、金属繊維としてはSUS繊維に限定するものではなく、アルミ繊維、銅繊維、その他の金属繊維から選ばれる1種以上の金属繊維でもよい。また、非圧縮性で高速気流が通過しても体積変化が殆どない繊維であれば、金属繊維に限定しない。
【0026】
以上の第1慣性フィルタ3の構成において、実質のフィルタ部分は、定径貫通孔3e2内の金属繊維13である。この金属繊維13に対して気流中の粒子は主として慣性効果により、捕集されるようになっている。もちろん、捕集は、さえぎり(遮断)、その他によっても捕集される。
【0027】
第2慣性フィルタ5は、第1慣性フィルタ3に対して気流下流側直下に連続配置されて当該第1慣性フィルタ3に連結されている。第2慣性フィルタ5は、第1慣性フィルタ3外径と同じ外径の円筒状プレート5aと、円柱状プレート5bと、を含み、これらにより内部にフィルタ空間5cを構成する。円柱状プレート5bは、当該プレート中央に軸方向の貫通孔5dを有する。この貫通孔5dは、上側から下側へかけて内径が下方へ漸次拡径する拡径貫通孔5d1と、第1貫通孔部分5d1の下端に連続し内径が一定である定径貫通孔5d2と、から構成される。
【0028】
この第2慣性フィルタ5の定径貫通孔5d2には金属繊維好ましくはSUS(ステンレス)繊維15が充填されている。この場合も上記と同様、第2慣性フィルタ5の定径貫通孔5d2には非圧縮性繊維として高速気流が通過しても体積変化が殆どない金属繊維好ましくはSUS(ステンレス)繊維15が緻密に絡まった状態で充填されている。なお、金属繊維としてはSUS繊維に限定するものではなく、アルミ繊維、銅繊維、その他の金属繊維から選ばれる1種以上の金属繊維でもよい。また、非圧縮性で高速気流が通過しても体積変化が殆どない繊維であれば、金属繊維に限定しない。
【0029】
以上の第2慣性フィルタ5の構成において、実質のフィルタ部分は、定径貫通孔5d2内の金属繊維15である。この金属繊維15に対して気流中の粒子は主として慣性効果により、捕集されるようになっている。もちろん、捕集は、さえぎり(遮断)、その他によっても捕集される。
【0030】
第2慣性フィルタ5は、第1慣性フィルタ3に対して気流下流側直下に連続配置されて当該第1慣性フィルタ3に連結されている。
【0031】
バックアップフィルタ7は、ナノ粒子捕集用として、第2慣性フィルタ5に対して気流下流側直下に連続配置されて当該第2慣性フィルタ5に連結されている。バックアップフィルタ7は、第2慣性フィルタ5の外径と同じ外径の円筒状プレート7aと、円板状プレート7bと、を含み、円板状プレート7bはフィルタプレートとして作用し、これらにより内部にフィルタ空間7cを構成する。
【0032】
排気部9は、上記装置内から外部へ気流を排気するものであり、図示略の吸引ポンプにより上記排気を行うようになっている。
【0033】
流体バイパス制御機構11は、バイパス管11aと、排気ポンプ11bと、ポンプ駆動制御部11cとを含む。バイパス管11aは、その一端側が第2慣性フィルタ5の円筒状プレート5aを内外に貫通して取り付けられる。バイパス管11aの他端側には排気ポンプ11bが装着される。排気ポンプ11bはポンプ駆動制御部11cにより駆動制御されるようになっている。なお、流体バイパス制御機構11は、上記構成に限定されるものではなく、第2慣性フィルタ5への流体の一部をバイパスすることができるものであればよい。
【0034】
以上の構成において、気流上流側の第1慣性フィルタ3から気流下流側の排気部9へかけて気流が矢印で示すように流れると共に各フィルタ3,5,7を通過する際に粗大粒子が捕集ないし除去され、微小粒子が分級捕集される。
【0035】
そして、実施の形態では、第1慣性フィルタ3の定径貫通孔3e2と、第2慣性フィルタ5の定径貫通孔5d2とのそれぞれに金属繊維13,15を充填している。この金属繊維13,15は実施の形態ではSUS繊維である。
【0036】
第1慣性フィルタ3の定径貫通孔3e2内の金属繊維13の繊維径(μm)をd1、第2慣性フィルタ5の定径貫通孔5d2内の金属繊維15の繊維径(μm)をd2とすると、これらにはd1>d2の関係がある。
【0037】
以上の構成においては、第1慣性フィルタ3の拡径貫通孔3e1は気流下流側方向へ直径が小さくなっていくので、気流は徐々に加速した後、定径貫通孔3e2を一定速度で通過し、この通過の際に粗大粒子を捕集する。また、第2慣性フィルタ5の定径貫通孔5d2も気流下流側方向へ直径が小さくなっていくので、気流は徐々に加速した後、定径貫通孔5d2を一定速度で通過し、この通過の際に微小粒子を捕集する。
【0038】
この定径貫通孔3e2,5d2は金属繊維13,15が層状になったフィルタ構造になっているので、気体の流速、繊維径の選択に用いることができるストークス数Stkと、ペクレ数Peと、を適用することができる。ストークス数Stkは、金属繊維構造のフィルタ内での、気体の流れに対する粒子の追従性を表す無次元の値である。その式は省略する。ストークス数Stkは、流速、粒子密度に比例し、粒径の2乗に比例し、繊維径に反比例する。
【0039】
ストークス数Stkの式によると、気体の流速が大きくなるに従い、粒径が大きい粒子から順に気体の運動に追従できなくなり、気体の流路から外れて金属繊維と衝突するようになる。このストークス数Stkを参考にしつつ、気体の流速を制御することと、繊維径を選択することとにより、捕集目的の粒子の粒径を選択することができる。
【0040】
実施の形態では金属繊維の繊維径は極めて小さいので、インパクタほど流速を大きくする必要がない。また、金属繊維は、粒子の慣性だけではなく、さえぎり、重力、静電気力、拡散などの捕集機構によっても粒子を捕集することができる。
【0041】
ペクレ数Peは、気流により粒子が運ばれる効果と、拡散によって粒子が運ばれる効果との比率を表す数であり、流速、繊維径に比例し、拡散係数に反比例する。拡散の影響を少なくするには、ペクレ数Peを大きくする必要がある。粒径が小さいほど、拡散係数が大きくなり、繊維径は小さい値が選択されているので、流速を高めることが粒径の選択性を高めることに好ましいことがわかる。以上から、流速、繊維径等を選択することで、目的とする粒子を金属繊維により捕集ないし分級することができる。
【0042】
図3(a)および図3(b)それぞれに第1慣性フィルタ3と、第2慣性フィルタ5とにおける、横軸が粒径(μm)、縦軸が粒子捕集効率(%)とする粒径(μm)対捕集効率(%)の関係を示す。気流吸引ポンプにより吸引されることにより、発生する気流の流量Q0,Q1は共に同じ流量とする。
【0043】
図3(a)で示すように第1慣性フィルタ3では例えば0.5μm前後を粒子分離径とすることができ、また、図3(b)で示すように第2慣性フィルタ5では例えば0.1μmを粒子分離径とすることができる。
【0044】
以上においての第1慣性フィルタ3および第2慣性フィルタ5での粒子捕集ないし分級では、気流流量は小流量であるが、図3(a)および図3(b)で示すように粒子捕集はストークス数Stkが支配的である。実施の形態では、上記以外にも、第2慣性フィルタ5での粒子捕集をペクレ数Peが支配的とすることを可能とするため、第1慣性フィルタ3を通過した後、第2慣性フィルタ5へ向かう気流の一部を流体バイパス制御機構11により装置外へバイパスするようにしている。
【0045】
すなわち、図1中の矢印においてQ0は第1慣性フィルタ3の定径貫通孔3e2に流入する気流流量を示す。Q1は第2慣性フィルタ5の定径貫通孔5d2に流入する気流流量を示す。第2慣性フィルタ5の定径貫通孔5d2通過以降の気流流量はQ1である。流体バイパス制御機構11の排気ポンプ11bが非駆動状態のときは、第1慣性フィルタ3の定径貫通孔3e2を通過した気流の流量Q0と、第2慣性フィルタ5の定径貫通孔5d2に流入する気流流量Q1とは等しい(Q1=Q2)。そして、流体バイパス制御機構11の排気ポンプ11bが駆動して、バイパス流量がQxとなると、第1慣性フィルタ3の定径貫通孔3e2を通過した気流の流量Q0であるが、第2慣性フィルタ5の定径貫通孔5d2に流入する気流流量Q1はQ0−Qxとなる。このバイパス流量Qxを増大させて一定の値を超えると、第2慣性フィルタ5の定径貫通孔5d2内での粒子捕集は、主として慣性効果による粒子捕集の形態から粒子ブラウン運動に基づく拡散効果による粒子捕集の形態に変化する。図4では、図3と同様、横軸を粒径(μm)、縦軸を粒子捕集効率(%)とする第2慣性フィルタ5のフィルタ特性を代表的に示す。
【0046】
実線1は、バイパス流量Qxが0のときであり、第2慣性フィルタ5への流量Q1はQ1=Q0−Qx=Q0となり、慣性効果で粒子捕集を行う。
【0047】
実線2はQx=Qx1であり、第2慣性フィルタ5への流量Q1はQ0よりもQx1分だけ減少する。この流量低下により慣性効果が低下し、粒子捕集される粒子分離径が大きくなる。
【0048】
実線3はQx=Qx2(>Qx1)であり、第2慣性フィルタ5への流量Q1はさらに減少する。この流量低下により、慣性効果が減り、粒子ブラウン運動による拡散効果が大きくなり、粒子捕集される粒子分離径が小さくなる。
【0049】
実線4はQx=Qx3(>Qx2)であり、第2慣性フィルタ5への流量Q1はさらに減少する。この流量低下により、粒子ブラウン運動による拡散効果がより大きくなり、粒子捕集される粒子分離径がより小さくなる。
【0050】
以上説明したように本実施の形態では、気流上流側と気流下流側との上下2段で、第1、第2慣性フィルタ3,5を直列に連結配置し、第1慣性フィルタ3の貫通孔3e2内の金属繊維の繊維径を第2慣性フィルタ5の貫通孔5d2内のそれより大きく調整することで、第1慣性フィルタ3では粗大粒子の捕集を効率的に行えると共に、第2慣性フィルタ5では微小粒子の分級を効率的に行えるようになり、結局、小型軽量、低吸引流量のポンプを用いても、圧損を可能な限り小さく抑制して、粗大粒子から微小粒子までを分離捕集できる。
【0051】
そして、本実施の形態では、両慣性フィルタ3,5により、慣性衝突効果で流体中の粒子を捕集することができること以外に、第2慣性フィルタ5内においては、流体バイパス制御機構11により、第1慣性フィルタ3を通過した後、第2慣性フィルタ5へと向かう流体のうちの一部をバイパスすることができるようにしたので、当該第2慣性フィルタ5でより超微小粒子の捕集が可能となる。
【0052】
以上から、本実施の形態では、装置1への流入流量一定でかつ少なくとも僅か2つの第1、第2慣性フィルタ3,5という簡易な構造でもって、粗大ないし微小ないし超微小に至る各種粒径の粒子捕集が可能な粒子分級装置を提供することができるようになった。
【符号の説明】
【0053】
3 第1慣性フィルタ
3e 貫通孔
13 金属繊維
5 第2慣性フィルタ
5d 貫通孔
15 金属繊維
11 流体バイパス制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通過方向に順に配置された少なくとも2つの第1、第2慣性フィルタと、
上記第1慣性フィルタを通過した後、第2慣性フィルタへと向かう流体のうちの一部をバイパスする流体バイパス制御機構と、
を備え、
上記両慣性フィルタは共に非圧縮性繊維が充填された貫通孔を備えると共に、
当該両慣性フィルタ内においては、共に、主として上記非圧縮性繊維への粒子衝突による慣性効果で該非圧縮性繊維上で流体中の粒子を捕集することができると共に、
流体バイパス制御機構により上記第2慣性フィルタへの流量を減らすことで当該第2慣性フィルタでは粒子ブラウン運動による拡散効果により非圧縮性繊維上で粒子捕集を可能とした、
ことを特徴とする粒子分級装置。
【請求項2】
上記第1慣性フィルタの貫通孔内での非圧縮性繊維の繊維径を、第2慣性フィルタの貫通孔内での非圧縮性繊維の繊維径よりも大きくして、共に、慣性効果により、第1慣性フィルタでは粒径大の粒子捕集、第2慣性フィルタでは粒径小の粒子捕集を行うと共に、当該第2慣性フィルタでは、流体バイパス制御機構により拡散効果により粒子捕集を行うようになっている、ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項3】
上記非圧縮性繊維がステンレス繊維であることである請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも第1慣性フィルタの貫通孔は、流体上流側の拡径貫通孔と、流体下流側の定径貫通孔とを含んだ構成になっており、拡径貫通孔は上流側から下流側方向に徐々に内径が拡径する貫通孔であり、定径貫通孔は、上流側から下流側方向に内径が一定の貫通孔であり、当該内部に上記非圧縮性繊維が充填してある、請求項1ないし3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
上記両慣性フィルタそれぞれの貫通孔は、共に、流体上流側の拡径貫通孔と、流体下流側の定径貫通孔とを含んだ構成になっており、拡径貫通孔は上流側から下流側方向に徐々に内径が拡径する貫通孔であり、定径貫通孔は、上流側から下流側方向に内径が一定の貫通孔であり、当該内部に上記非圧縮性繊維が充填してある、請求項1ないし3のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−12974(P2011−12974A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154801(P2009−154801)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】